OJTトレーナー向いていない人の特徴5選|向いていない人への対処策7選もご紹介

更新日:

作成日:2023.10.13

OJTトレーナー 向いていない人 特徴

「OJTトレーナーに向いていない人ってどんな人なんだろう…?」
「OJTトレーナーを選出するときに、こう言う人だけは避けた方がいいってわかっていたら、もう少し考えやすくなるんだけど…」

このようなお悩みをお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

OJTは育成コストが追加でかからず、トレーニーの成長に合わせた育成が行えて関係性の構築にも期待ができるため、多くの企業で取り入れられている育成方法です。
しかし、中にはOJT制度があるだけで育成を行えていない状態にある組織もよく伺います。
その原因の一つとして考えられるのが、適切なOJTのトレーナーを選出できていないことです。
OJTはトレーナーのスキルや育成へのモチベーションによって、育成の質に大きな差が生まれるためです。

そこで本記事では、期待はずれが起きないようにするために、OJTトレーナーに向いていない人の特徴を具体的にお伝えします。
ただ、とわいえ、その人にお願いするしかないという状態の時もあるかと思います。そのため、期待に応えてもらえるOJTトレーナーになってもらうために組織ができる施策も紹介します。

本記事を読むことで、OJTトレーナーに向いていない人の特徴がわかり、トレーナー選出の負担を減らすことができます。OJTの質を高め、社員の成長を促し、組織の成長につなげられるようにしましょう。

※トレーナー:社員の成長のために仕事で必要なスキルや知識を教える役割の人を指します。
※トレーニー:育成を受ける側の人のことを指します。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

1)OJTトレーナーに向いていない人の5つの特徴

OJTトレーナーに向いていない人は、一言で言うと「トレーニーの模範となってほしくない人」です。OJTトレーナーはトレーニーとの関わりが多く、無意識のうちにもトレーニーはOJTトレーナーの仕事の仕方や考えに影響を受けることになるためです。
「トレーニーの模範となってほしくない人」を細分化してどのような特徴を持っているのかをお伝えします。

【OJTのトレーナーに向いていない人の特徴】

特徴 仕事での様子
受動的に仕事をしている人 ・言われたことしかやらず、主体的に動こうとしない

・最低限のことだけやり、より良くしていこうという意識が弱い

相手の背景を考えられない人 ・一緒に仕事をしているメンバーの背景を確認せずに一方的に自分の意見を伝える

・自分と価値観が合わない人について愚痴をよく言っている

振り返る習慣がない人 ・感覚で仕事を行なっている

・何度も同じミスを繰り返す

ポジティブフィードバックができない人 ・周囲の人に対して「それいいね!」「この資料とても読みやすくて助かりました」など、相手への感謝やポジティブフィードバックがない

・改善箇所を見つけることが得意

自分の評価を優先する人 ・共創の意識が弱い

・自分に優位な取引をすることが得意

現在の仕事に対する姿勢を見て、これらの特徴に当てはまっている人はOJTトレーナーには向いていない可能性が高いです。
これらの特徴について、具体的に説明します。

受動的に仕事をしている人

受動的に仕事をしている人は、OJTトレーナーに向いていない人の一つの特徴です。OJTでは事細かく教えることが決まっているわけではなく、トレーナーが自ら考えて育成する必要があるためです。

普段の仕事で言われたことしかやらず、主体的に動こうとしない人は、OJTトレーナーになっても、組織から言われた最低限のことしかやらず、トレーニーの成長は弱くなります。

また、受動的な人は、自分なりの仕事の意図や意義を持っていない人が多いです。仕事をやる理由が「言われたからやる」になってしまっていて、「クライアントに満足してもらいたい」とか「チームのために貢献したい」など、自分なりの仕事の意義がありません。
そのような人がOJTトレーナーになると、その仕事への向き合い方をトレーニーが見ることになります。するとトレーニーは組織として求められているレベルがこの程度かと認識してしまい、トレーニーの主体性も低くなってしまいます。また、トレーニーがより成長するために、ということを考えることをしないため、成長を促し続けることも難しいです。

このように、仕事に主体性を持って取り組んでおらず、受動的な仕事をしている人は、OJTトレーナーには向いていない人と言うことができます。

相手の背景を考えられない人

相手の背景を考えられない人は、OJTトレーナーに向いていない人の一つの特徴です。OJT育成はトレーナーとトレーニーで経験値や知識量が異なり、OJTトレーナーはトレーニーの状態を考えながら関わる必要があるためです。
場合によっては育ってきた環境も異なるため、持っている価値観も全く異なる可能性もあります。そのようなOJTトレーナーとトレーニーの違いを意識するために背景を考えることが必要です。

普段の仕事で一緒に仕事をしているメンバーの背景を確認せずに一方的に自分の意見を伝える人は、OJTトレーナーになるとトレーニーに寄り添えないため、トレーニーとの関係性作りに苦戦するでしょう。

背景を考えないと、トレーニーが知らない専門用語を多用して説明をしたり、トレーニーのアウトプットに対して修正点だけ伝える、ということが起きます。そうすると、トレーニーはトレーナーの話を理解しきれず同じミスを繰り返してしまい、成長をすることが難しくなります。

特にアウトプットに対して、どうしてこのような資料にしたのかという背景を聞かずに、「ここをやり直して」とだけ言われると、自分なりに考えても聞いてくれないと、トレーニーの主体性がなくなってしまう可能性があります。

OJTトレーナーは、ただ自分が知っていることを伝えることが役割ではありません。トレーニーが知識やスキルを理解し、身につけられる状態が求められます。それができて、初めてトレーニーの成長を促すことにつながるためです。
そのためには、トレーニーが何につまずいていて、どのような説明をすれば理解してもらえるか、というトレーニーの立場になって背景や状況を考えながら関わる必要があります。

このように、相手の状態や背景を理解せずに一方的な考え方や価値観で仕事をしている人は、OJTトレーナーには向いていない人と言うことができます。

振り返る習慣がない人

振り返る習慣がない人は、OJTトレーナーに向いていない人の一つの特徴です。OJTトレーナーは自身の仕事や経験を言語化できていないと、OJTで一番のポイントとなる「教えること」ができないためです。

普段の仕事で自身の仕事の振り返りをせず、なんとなくで仕事を行なっている人が当てはまります。このような人はどのように仕事を進めていくと、相手に満足してもらえる仕事ができるのか、などのノウハウが蓄積されていないため、トレーニーにわかりやすく教えることができません。

どのように仕事を進めたら成功確立が上がるのかを言語化できていないOJTトレーナーは、「自分の背中を見て学べ」という教え方になる可能性があります。自分が仕事の仕方を教えられない、という状況を見ないようにするためです。
しかし、特に新入社員は若手社員は、背中を見て学べと言われても、一体何を学べばいいかわかりません。

トレーニーに教えるためには、仕事の仕方や自分の経験、コツを言語化して伝えることが必要です。そして、OJTトレーナーが自分で言語化できるようになるためには日々の仕事を振り返り、なぜ今日の打ち合わせはうまくいったのか、なぜ受注できなかったのか、という仮説を考え、仮説をもとに実行し、結果をもとにノウハウと見つけていくことが必要です。

そのため、日々の仕事の振り返りをせずになんとなくで仕事をしている人は、OJTトレーナーには向いていない人ということができます。

ポジティブフィードバックができない人

ポジティブフィードバックができない人は、OJTトレーナーに向いていない人の一つの特徴です。改善案に関するフィードバックだけになってしまうと、トレーニーが精神的に耐えられなくなってしまう可能性があるためです。

普段の仕事で、「それいいね!」「この資料とても読みやすくて助かりました」など、相手への感謝やポジティブフィードバックがない人が当てはまります。トレーニーは初めはできないことの方が多いです。その間に、できないことにしか目を向けず、できるようになったことを無視していると、トレーニーは褒めてもらうことができません。そして「自分はいつになっても仕事ができるようにならない」と自分を責めて精神的に苦しんでしまう人がいるという話を最近はよく聞きます。

改善できるところがたくさんある、ということは、その分成長できる伸び代があるということでもあるため、客観的に見るとトレーニーを苦しめているようには見えないと思います。しかし、トレーニーの立場に立ってみると、褒められることがないまま、より良くするための方法を教えられるだけだと、自分が組織にいる価値を見いだすことが難しくなってしまいます。

特にコロナ禍で大学入学・大学生活を過ごした24卒は対面のコミュニケーション経験を積める機会が少なくなりました。対面経験不足から、上の立場の人からのフィードバック・指摘に対する免疫が低いです。そのため、特に意識的にポジティブフィードバックをして、トレーニーが成長していることを認め、期待していることを伝える必要があります。

【参考コラム】
2024年卒新入社員育成は最難関の予感|カギを握る入社後3ヵ月の育成のコツ【東京経済大学准教授 小山氏インタビュー】
23・24卒新入社員の傾向|受け入れ側のポイントは「体感・伴走・細分化」【ネオキャリア橋本氏:インタビュー】

このように、改善案のフィードバックだけでポジティブフィードバックをしない人は、トレーニーの精神をケアしきれないため、OJTトレーナーには向いていない人といえます。

自分の評価を優先する人

自分の評価を優先する人は、OJTトレーナーに向いていない人の一つの特徴です。自分の仕事の時間を優先し、育成の時間を最小限に抑えようとするためです。

このような人は、普段の仕事でも自分の仕事の評価しか気にせずに共創の意識が弱かったり、自分優位な取引をすることが多いです。そのため、自分の評価として反映されづらかったり、成長するまでに一定の時間がかるOJT育成は自分にとって面白いものではなく、モチベーションが低くなってしまいます。

できる限りOJT育成の時間を少なくしようとすると、「教える」ではなく「指示」が多くなったり、そもそも教えるのが面倒そうな仕事を依頼しなくなります。そうするとトレーニーは成長機会を奪われてしまい成長できません。

他にも、トレーニーが自分より優秀そうだと思ったら、自分より良い成績を出されないように成長を邪魔する言動をするようにもなってしまう可能性があります。

このように、周囲との関わりを大切にせず自分の評価ばかりを気にしている人は、トレーニーの成長機会を奪うため、OJTトレーナーには向いていない人といえます。

今回紹介した特徴を持っている人は、OJTトレーナーに向いていない可能性が高いです。このことを意識してOJTトレーナーの選出を行うことで、OJT全体の質を高めることができます。

2)OJTトレーナーに向いていないが、なってもらう必要がある時に組織がすべきこと7選

OJTトレーナーに向いていない特徴に当てはまっていたとしても、どうしてもその人にしかお願いできない場合もあるかと思います。そのようなケースにおいて、組織として行うべき7つの施策をご紹介します。

育成に対する想い・当事者意識を醸成する

OJTトレーナーとして主体的に関わってもらうめには、トレーナーの育成に対する想いと当事者意識を醸成することが重要です。トレーナーの育成に対するモチベーションによって、育成の質が変わってくるためです。

トレーナーの想いや当事者意識を醸成するためには、トレーナー自身が自分なりの答えがある状態を作れることが大切です。そのためには下記のような内容について考える機会を設けましょう。

・そもそもなぜOJTをする必要があるのか
・OJTによってトレーナーが得られるメリットは何か
・OJTを行うことで自分は組織に対してどのような貢献ができるのか
・OJTを行うことによってどのようなキャリアが開かれるのか

これらに自分なりの意味を見い出せていると、育成に対して想いを持って取り組みやすくなります。

アーティエンスの育成担当者・OJTトレーナー研修は、OJTの重要性やトレーナーとしての役割を、単に「新人・部下を育成するため」だけではなく、「組織力強化のため」という観点から理解します。どんなに知識・スキルを学んでも、育成担当者が「育てる意義」を見いだせていなければ、OJTの高い効果は期待できないためです。

このようにOJTトレーナーの育成に対する想いと当事者意識を醸成することで、トレーニーの育成に対する意欲を高め、主体的に育成を促せる状態を作ることができます

関係性の構築方法を学ぶ機会をつくる

OJTトレーナーとして相手の背景を考えて指導してもらうように促すためには、関係性の構築方法を学ぶ機会を作ることがおすすめです。OJTトレーナーとトレーニーが信頼関係を築けていると、トレーニーの成長も促しやすいためです。

具体的には認知の捉え方の違いを理解したり、価値観の違いを理解するようなワークを行う、ということが挙げられます。

アーティエンスの関係性構築力研修では、これまでの業務においてOJTトレーナー自身が今まで受けたOJTでネガティブに感じた一場面を丁寧に振り返り、その時の自分、上司・トレーナーはどのように捉えていたのか、を考えるワークを行なっています。

このワークを行うと、同じ出来事であっても、自分と相手では捉え方が異なる・見えている世界が異なる、ということに気がつきます。研修の詳しい様子は、関係性構築力研修ー公開講座研修レポートからもご覧いただけます。
自分と相手で見えている世界が違うことがわかると、そのことを意識したコミュニケーションを取れるようになっていくため、関係性構築力を高めることにつながります。

価値観の違いを理解するワークとしては、当社の関係性構築力研修内で、自分が大切にしている価値観を探すワークを行なっています。ワークシートをもとに自分が大切にしている価値観を探し、それらの価値観によって周囲にポジティブな影響を与えた経験とネガティブな影響を与えた経験をフラットに振り返ります。そして、グループで対話をおこなうことで、人によって大切にしている価値観は多種多様だということに気づき、OJTトレーナーの言動に変化が見られやすくなります。

このように関係性の構築方法を学ぶことで、相手と自分が違うということを認識するため、相手の背景や考え方などを含めて、相手のことを知ろうという意欲が高まります。相手のことを理解していくことで、相手にあった伝え方ができるようになり、トレーニーの成長を促しやすくなります

振り返りの大切さを伝える

OJTトレーナーが経験してきたことをトレーニーにわかりやすく伝えられるようにするためには、振り返りの大切さを知り、振り返りの時間を作ってもらうことが必要です。自分なりのノウハウをトレーニーに教えてあげられるようにするためです。

人は、「経験」をして、その経験を「振り返り」、「気付き」を得て、新しい場面において気付きをもとに「行動」することを繰り返して、学んでいきます。これは、デイビット・コルブが提唱した経験学習モデルで明らかになっています。

振り返りをしなければ、ナレッジは積みあがらず、なぜ成果を出せたのか/出せなかったのかが分からないため、ノウハウとしてトレーニーに伝えることができません。

1日の中で時間を決めて、今日の仕事でポジティブな影響を与えたこと、ネガティブな影響を与えたことを書き出し、今日の経験をもとに明日に生かすことを決めて実行することを繰り返しましょう。

このように日々、振り返りを行いナレッジを積み上げていくことで、最終的にノウハウとしてトレーニーに教えられます

【参考資料】チーム学習を促すための内省ツール

OJTトレーナーのための育成をおこなう

OJTトレーナーがトレーニーに対して適切なコミュニケーションを行えるようにするために、OJTトレーナーの育成スキルを高めることが重要です。育成スキルは知識があることで強化しやすいためです。

アーティエンスでは大きく4つのスキルが必要になると考えています。

・育成計画作成スキル
・ティーチングスキル
・フィードバックスキル
・コーチングスキル

育成計画作成スキル

育成計画は、トレーニーに目指して欲しいところを明確にし、そのためにどのような指導を行い、どのような仕事を渡せばいいのかという道筋となります。目指すべきところとそのためにやるべきことが明確になっていると、指導が行いやすくなります。

ティーチングスキル

ティーチングは、スキルを渡したり、仕事の進め方を説明するときに必要です。伝え方がうまくないと、トレーニーが理解しきれず、修正の回数が多くなったり、指導に時間がかかってしまいます。

フィードバックスキル

フィードバックは、トレーニーの行動を改善・強化するために必要です。トレーニーが行った言動に対して、どのようなフィードバックを行うかで、トレーニーの成長やモチベーションへの影響が変化します。

このときに、トレーナーは自分の価値観だけで物事を判断するのではなく、トレーニーの背景を理解しようとする意識を持ちましょう。トレーナーとトレーニーで持っている価値観が異なる場合があるためです。価値観が異なっている場合は、お互いの意見を理解することが難しいです。お互いの価値観は全く異なっているという前提を持って接し、価値観が異なることに出会ったとき、その言動に至った背景を考えたり確認して歩み寄ることが大切です。

また、改善案が多くなりがちな場合、ポジティブフィードバックをすることも意識しましょう。

コーチングスキル

コーチングは、トレーニーを自律・自走させるために必要です。トレーニーに対していつまでも指導をし続けるのではなく、自律して一人でも仕事を任せられるようになってもらう必要があるためです。一方的に答えを「与える」のではなく、トレーニーから答えを「引き出す」機会を持ち、かつ行動に移させることが大切です。

このように4つのスキルを高めることで、トレーニーとのコミュニケーションを場面によって使い分け、トレーニーの成長を適切に支援できるようになります。

弊社では、上記スキルを習得するための トレーナー研修を提供しています。

組織内でOJTトレーナーの価値を高める

OJTトレーナーが自分にもメリットを感じられるようにするために、組織の中でトレーナーが評価される立場である状態を作り、トレーナーに選ばれたことに対して誇りを持てる状態にすることは一つの方法です。評価を気にする人にとってのモチベーションとなるためです。

組織によっては、OJTトレーナーを行うことで、手当を渡したり、評価制度(人事制度)と連動しているケースもあります。しかし、アーティエンスとしては、「手当をもらっているからやっている」、「評価されるために行う」という文脈にすることは、賛成ではありません。自利利他の風土や共に学びあう風土創りを行う事に対して、阻害しかねないためです。

具体的な方法としては、トレーナーであることをステータスにする、という方法があります。
当社のお客様では、OJTトレーナーに対して社長による任命式を行い、さらに社内報で顔写真入りで紹介することでステータスを感じてもらえるようにしている方もいらっしゃいます。

このように、組織内でOJTトレーナー=ハイパフォーマーという認識になると、トレーナーとして選出されたことに喜びを感じ、前向きに育成に向き合ってくれるようになります

「チームで育成する」仕組みを構築する

OJTトレーナーとして組織が期待する働きを促すためには、OJT制度を構築できていることが必要です。目的がなかったり、OJTトレーナーに任せっきりにしてしまうと、人事や組織が期待しているような効果が出なかったりOJTの質に差が出たりしてしまうためです。

OJT制度を構築する際に、以下のポイントがクリアされていると、OJTで質の良い育成を行えます。

ポイント チェック欄
1 育成のコンセプトは明確になっているか?
2 OJT終了後の目指す姿・目標が明確になっているか?
3 他の育成と連動性があり、目指す姿・目標から逆算された育成スケジュールがあるか?
4 基本的なOJTの指導ガイドやマニュアル等が用意されているか?
5 トレーナーに対して定期的なフィードバックやサポート体制があるか?
6 OJTに対して周囲(トレーナー以外)の協力体制は構築できているか?

1:育成のコンセプトは明確になっているか?

自社における「育成コンセプト」を明確にしましょう。育成コンセプトは、OJT実施有無に関わらず、人材育成において重要な項目です。育成コンセプトを設定する理由は下記の通りです。

・軸がぶれにくくなり、考え方に一貫性を持ちやすくなるため
・OJTだけでなく、Off-JTの企画も検討しやすく連動性を考えやすくなるため
・現場社員への展開時、育成コンセプトがあるとイメージがしやすくなるため

育成コンセプトというのは例えば、「自ら考えて、周囲と学び合い続け、成長を楽しむ人材へ」などです。これはアーティエンスが、とあるクライアント様とご一緒に考えた育成のコンセプトです。(文言の一部を変更しています)

このような育成コンセプトがあると、OJTだけでなく、OFF-JTなどの全体設計をしやすくなります。育成コンセプトは階層によって内容が変わってくるため、階層ごとに設定することをおすすめします。

2:OJT終了後の目指す姿・目標が明確になっているか?

OJT終了後、「何を、どの程度身に付け、どのような状態を目指すのか」という目標を設定しましょう。目標を設定しなければ、OJT終了後に正しく振り返りができません。

目標を設定する場合は、具体的でイメージしやすい内容にすることをおすすめします。そうすることで目標に対して現在地を確認しやすいです。また、OJTが終了した後に、目標を達成できたかを確認しやすいです。

例えば、営業部の新入社員に対する目標の設定として、「3月末までに〇〇サービスに関して、初回訪問(会社説明・ヒアリング)から提案・受注・納品プロセスを、一人で遂行できるようになる」という内容だと明確になっていてわかりやすいです。

【参考】目標を明確にするために意識したいSMARTの法則
SMARTの法則というのは、ジョージ・T・ドラン氏が提唱した理論で、5つの成功因子によって構成されています。目標を設定する際には、このすべての要素が含まれているかを、チェックします。SMARTの法則

3:他の育成との連動性があり、目指す姿・目標から逆算された育成スケジュールがあるか?

育成スケジュールを作りましょう。「いつまでに・何を・どの程度まで・どのように教え、どのような状態を目指すか?」が決まっていることで、調整しやすくなります。

スケジュールを考える時は、他の育成との連動性を考えるとそれぞれの育成効果を最大化しやすくなります。基本的には、OFF-JTの研修などで基本的なスキルの原則や考え方、型などを学んだ後に、OJTで実践していくと学びが定着しやすくおすすめです。

また、スケジュールはトラブルやイレギュラーが発生しても対応できるように最初から余裕を持ったスケジュール設計にしておきましょう。

【参考コラム】
【新入社員研修のスケジュール】新入社員が最大限の学びを得るために
【新入社員研修のカリキュラム】事例をもとに研修のプロが徹底解説

4:基本的なOJTの指導ガイドやマニュアル等が用意されているか?

基礎となる指導内容はマニュアルやガイドに落とし込み、育成の標準化・時間短縮を図りましょう。指導にばらつきが出やすいOJTですが、最低限のレベルを揃えることができます。

例えば、OJTとしての育成時間を毎日30分は確保する、など実施時間に関するルールを設けることも良いでしょう。他には、トレーニーからよくある質問に対する答え方や答える時の注意点をまとめておくことで、トレーナーの負担を減らすことができます。

【参考コラム】新入社員の意識と行動が変わるマニュアルの作り方│一つ上の活用方法も説明

5:トレーナーに対して定期的なフィードバックやサポート体制があるか?

トレーナーに対して、定期的なサポートを行いましょう。トレーナーとしてどのように育成していけばいいのかわからなくなってしまう、という不安や悩みを抱えることがあります。また、業務との兼ね合いで負担が大きくなりすぎてしまっている可能性もあります。

定期的なフォローやサポートの一例としては下記があります。

・トレーナー同士での勉強会
・現場管理職との定期的な1on1
・人事担当者との定期面談

例えば、「トレーナー同士での勉強会」では、トレーナー同士が育成に関する悩みや工夫していることなどを共有し合い、トレーナー同士で学び合える環境の醸成を支援します。定期的に実施することが大切なため、自組織の中でできることから実施しましょう。

6:OJTに対して周囲(トレーナー以外)の協力体制は構築できているか?

トレーニーの育成をトレーナーだけに任せっきりにするのではなく、チームや部署、組織全体で協力的に行えるようにしましょう。

トレーナーがどうしても自分の仕事に追われて育成時間が取れない時に変わってもらえると心強いです。また、トレーナー以外の仕事の進め方を知ることで、トレーニーが自分なりの仕事を見つけやすくもなります。
トレーニーの育成は最終的には組織の成長のため、という組織全体に関わることです。そのために互いに協力し合う意識を醸成しましょう。

このようなOJT制度を構築できていると、OJTトレーナーは何をすればいいかが明確になり、また負担感も軽減できます。OJTトレーナーだけがトレーニーの育成をするのではなく、組織全体でトレーニーを育てる意識を持てるようにしましょう

OJTトレーナーの状況に応じてフォローを行う

OJTトレーナーが問題なくOJT育成を行えているか確認するためには、状況に応じたフォローを行うことが必要です。OJTトレーナーが日々育成を行う中で感じる難しさや不安、モヤモヤを吐き出して、負担を軽減したりモチベーションを落とさないようにするためです。

具体的には、次のような方法があります。

・業務量の確認と調整をする
・1on1などで話を話を聞く機会を創る
・パルスサーベイを実施する
・合同研修を実施する

業務量の確認と調整をする

OJTトレーナーの業務量を確認して見ましょう。時間に余裕がないと、トレーニーの育成は後回しにしてしまいがちだからです。OJTトレーナーが自分の仕事のみで業務時間がいっぱいになってしまっている状態の場合は、トレーニーの育成を行うための時間を作るために、OJTトレーナーの業務量の調整を行いましょう。

1on1などで話を話を聞く機会を創る

1on1などで話を話を聞く機会を創りましょう。話す機会を設けることでOJTトレーナーが抱えているモヤモヤや悩み、不安や不満がわかり、フォローできるようになるためです。月に1回は1on1などで状況を確認できることが望ましいです。

【参考コラム】
新入社員が辞める「5つのギャップ」|入社前・入社後にできる予防策10選

パルスサーベイを実施する

パルスサーベイを実施しましょう。OJTトレーナーとトレーニーの状態を把握するためです。OJTトレーナーとトレーニーの認知の違いを確認することで、新たな気づきが生まれやすくなります。

アーティエンスで開発したパルスサーベイを実施すると、多くの場合でOJTトレーナーとトレーニーで認識の差が起きています。

※ パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施し、その推移結果から組織や従業員の状態を把握する調査手法のことです。

見えなかったことをこのように視覚的にすることで、ズレを認識でき、調整していくことができます。

合同研修を実施する

OJTトレーナーとトレーニーが合同で行う研修を実施するのも一つの方法です。お互いに本音を伝える機会を設けることで、お互いへの感謝や気づきを得ることができるためです。

アーティエンスでは、新入社員・OJTトレーナー合同研修を実施しています。その様子を見ていると、OJTトレーナーはトレーニーがそんなことを気にしていたのか、ということに気づきを得ていることが多いです。一方トレーニーは今まで意識していなかったけど自分のために頑張ってくれていることに気づいたり、細かい成長を見てくれていることを知り、感謝を感じていることが多いです。このような経験をすることで関係性が見直され、お互いの成長を促すことができます。

このようにOJTトレーナーの状況を都度確認してフォローしやすくすることで、OJTトレーナーとトレーニーがお互いに気持ちよく働き共に成長していけるOJTを行えます。

【参考コラム】
OJTトレーナーと新入社員の関係性の作り方について、人事ができることとは
新入社員の教育担当者が知っておくべき4つのこと|よくある悩みと対処法も解説

OJTの質が低くならないためにもこれらの施策を組織として実施し、OJTトレーナーの育成に期待できる状態を作りましょう。

3)まとめ〜アーティエンスはOJTへの主体性を高める研修を実施〜

本記事では、期待はずれが起きないようにするために、OJTトレーナーに向いていない人の特徴と、期待に応えてもらえるOJTトレーナーになってもらうために組織ができる施策を紹介しました。

OJTのトレーナーに向いていない人は、一言で言うと「トレーニーの模範となってほしくない人」です。そのような人を細分化すると、次の5つの特徴が見えてきます。

特徴 仕事での様子
受動的に仕事をしている人 ・言われたことしかやらず、主体的に動こうとしない

・最低限のことだけやり、より良くしていこうという意識が弱い

相手の背景を考えられない人 ・一緒に仕事をしているメンバーの背景を確認せずに一方的に自分の意見を伝える

・自分と価値観が合わない人について愚痴をよく言っている

振り返る習慣がない人 ・感覚で仕事を行なっている

・何度も同じミスを繰り返す

ポジティブフィードバックができない人 ・周囲の人に対して「それいいね!」「この資料とても読みやすくて助かりました」など、相手への感謝やポジティブフィードバックがない

・改善箇所を見つけることが得意

自分の評価を優先する人 ・共創の意識が弱い

・自分に優位な取引をすることが得意

現在の仕事に対する姿勢を見て、これらの特徴に当てはまっている人はOJTトレーナーには向いていない可能性が高いです。

ただ、OJTのトレーナーに向いていないけど、なってもらう必要がある組織もあるでしょう。その時に組織ができることとしては、次の施策です。

・育成に対する想い・当事者意識を醸成する
・関係性の構築方法を学ぶ機会をつくる
・振り返りの大切さを伝える
・OJTトレーナーのたための育成をおこなう
・組織内でOJTトレーナーの価値を高める
・「チームで育成する」仕組みを構築する
・OJTトレーナーの状況に応じてフォローを行う

OJTの質が低くならないためにもこれらの施策を組織として実施し、OJTトレーナーの育成に期待できる状態を作りましょう。

アーティエンスでは、OJTトレーナーへの育成をサポートしています。

サポート①
育成担当者・OJTトレーナー研修を通して、OJTトレーナーの育成スキルの向上をサポートします。本研修では、Z世代とも呼ばれる今の若手社員の傾向・特徴をふまえた育成方法・考え方をお伝えします。一方通行な指導ではなく、新人・部下の主体性と当事者意識を引き上げ、最終的にはかれらの自律自走を促していけるような育成スキルの習得を目指します。

サポート②
「周囲から応援される『やり抜く』新入社員の育成」がコンセプトの新入社員研修の公開講座を5日間以上実施頂いた企業様、もしくは講師派遣型の新入社員研修を実施頂いたお客様に対して、

・育成担当者対象:『24年卒の傾向と育成のコツがわかる動画』の提供
・24年5月15日開催 公開講座:育成担当者・OJTトレーナー研修へ2名様無料ご招待
の特典をご用意
しています。

新入社員の育成と共に育成担当者へのサポートを実施できるサービスとなっています。本サービスについて詳しく知りたい方は、お気軽に、お問い合わせよりご連絡ください。