23・24卒新入社員の傾向|受け入れ側のポイントは「体感・伴走・細分化」【ネオキャリア橋本氏:インタビュー】

更新日:

作成日:2023.8.17

新入社員の傾向について、就職エージェントとして日々学生と向き合っている株式会社ネオキャリアの橋本さんにお伺いしました。

株式会社ネオキャリア 就職エージェント事業部ソーシャルメディアマーケ責任者
橋本 健一(はしもと けんいち)
関西外国語大学を卒業後、新卒で金融業界に入社。営業を経験したのち、人事を経験する。2004年通信業界で人事として勤務したのち、2005年就職エージェント株式会社の創業に関わり事業の拡大を担う。現在は大学生向けの就活セミナーや企業の新人研修などの講師の他YouTubeやTwitter(@hashimoto_sa)で学生向けに就活お役立ち情報を発信している。

インタビュアー:アーティエンス株式会社 山下 絢加
2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。

ネオキャリア 橋本氏、以下、橋)
弊社山下、以下、山)

23卒・24卒新入社員の傾向:再現性は高いが、初めてのことは想像以上に苦手

山)本日はインタビューのご協力ありがとうございます。早速本題ですが、新入社員(23卒や現在大学4年生の24卒)にどのような傾向を感じますか?

橋)
最近の新入社員は、一回やったことに対する再現性がとても高い傾向がありますね。一度経験したら、勝手に進めていけます。情報収集能力も高いです。

一方で…初めてのことへの抵抗がとても強い!これも大きな傾向ですね。

「初めて=今まで取り組んだことのない全てのこと」です。本人達は気付いていないかもしれませんが、「こんなことで⁉」ということでも、初めてのことはどうしたら良いか分からず抵抗を感じるみたいです。

山)具体的なエピソードはありますか?

橋)
そうですね。思い出されるのは、就職活動中の学生からの質問です。面談に向けての質問で「ドアをノックするじゃないですか…その後って、どうしたらいいんですか?」と聞かれたんです。「入ったらいいじゃん!」って思いますけど、そうした小さなことでも「初めてのこと」になるみたいです。

山)確かにそうですね…。一つ一つの手順が分からないと、先に進めない。そうした傾向を感じますね。弊社のお客様からも、新入社員に「毎週水曜日に、ゴミをまとめておいてね!」と依頼したものの、当日になって「ゴミ出しの日という認識はあったが、ごみのまとめ方が分からないから、できなかった」と言われた。そんなエピソードも聞きました…。そうした傾向には、どんな背景があると思いますか?

橋)
二つ考えられるように思います。

一つ目は、「評価される場」の経験が少ないことが影響していると思います。

これはコロナ禍で行動の制約があったことも関係していると思います。アルバイト等もできなかったため、バイト先の上司や先輩に指導されたり、お客様に怒られたりする、といった「誰かに評価される場」をリアルに経験できる機会は、少なくなっていました…。あとは、その他にも部活やサークルといった、上下関係のあるコミュニティでの接触頻度も、全体的に少ないようです。

「評価される場」の経験の少なさに比例して、そうした場で発生する「失敗して指導を受ける」といった経験も少なくなりますよね。ですので、「失敗」や「他者からの指摘」を受け止めた経験が少なく、不安を感じるのだと思います。

だからこそ、これらを引き起こす可能性の高い「初めてのこと」に対して抵抗が強くなっているのでは無いでしょうか。

二つ目はSNSやyoutubeによって、あらゆることを予見できることです。

「流れを把握してから進める」という手順に慣れてしまっているのだと思います。タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する彼らにとっては、とても相性の良い進め方だとは思います。
手っ取り早く知れる情報等は、結構知ってますしね!失敗するのが怖いので、知識を実践に移していない場合が多くある印象ですが…笑

予見して進める手順に慣れているので、予見できない「初めてのこと」への抵抗はかなり強いと感じますね。

更に厄介なのが、今の新入社員は「聞く」ことに対しても苦手意識が強い傾向があることです。これもまた、「こんなこと聞いたら怒られるのでは…」といった評価・失敗への苦手意識が関係しています。

山)失敗することへの過度な恐れは、社会人として仕事を進める上で足かせになりそうですね…。

橋)
そう思います。「え、こんなことが⁉」という失敗が、新入社員にとっては大きな挫折になるかもしれません…。それほど、失敗経験が少なくなってしまっているのです。

23卒・24卒の傾向に向き合い、成長へ導くには「体感・伴走・細分化」が重要

山)受け入れ側は、新入社員の「情報収集能力の高さ」や「初めてのことへの苦手意識」に対してどのように対応すると良いと思いますか?

橋)
個人的には3つのことが重要だと思っています。

一つ目は「リアルを体感してもらう」です。

情報収集能力が高い分、情報を表層的に捉えることに慣れている今の新入社員には、言葉だけでの情報伝達では、表層的に捉えられる可能性が高いです。実際に触れてみて分かることって、沢山あるじゃないですか。例えば製造業であれば、工場を見てもらう、等でも良いと思います。

リアルを体感することでゆくゆく発生するギャップも少なくなると思っています。表層的に捉えた情報で創り上げられたイメージと、現実との乖離が少なくなりますからね。

二つ目は、「やってみせる、伴走する」意識です。

苦手な”初めてのこと”に対して、少しでも進め方のイメージが付く伝え方をすると良いと思います。”初めてのこと”への抵抗感は短期間で変えられるものでは有りません。経験を積み重ねて、払拭されていくものですから、そこを変えようとするよりも、伝え方を変える方がまずは良いのかなと感じますね。

三つ目は、「依頼内容を細分化し、ステップごとに褒めること」です。

様々なことで経験値の少ない新入社員なので、上司の想像もつかないポイントでの「え、そこでつまずく⁉」みたいな現象が多く発生すると思います。ですので、依頼をざっくり投げるのではなく、細分化して伝え、進捗確認をしてほしいですね。「ちゃんと進んでる?」という感じで。

そして重要なのは「褒める」です。今の新入社員は大人から「褒められる」経験が少なかった背景が有ります。なので、褒められる経験自体がすごく新鮮なようで、とても素直に受け止めてくれます。ある意味「褒められることを受け入れる土壌ができている」と言えるかもしれません。この土壌をチャンスとして、上司・先輩は新入社員にポジティブなフィードバックをしてもらえると良いと思います!

山)経験の少なさを前向きに捉えて、育成に活かす!ということですね。しかし「褒める」というのもなかなか難しいですよね。

橋)
そうなんですよ!育成側の「褒める力」を上げことも、重要なポイントです。新入社員を育成している年代は、怒られて育った人がほとんどだと思うんです。私もそうでした…笑
こっぱずかしいのでしょうね。でも、褒められたら誰しも嬉しいじゃないですか!別に嘘はつかなくて良いんですよ。素直に感じた「良い」と思った点を、言葉にして伝えてもらえたらと思います。

山)「褒める力」ぜひ、発揮してほしいですね。ちなみに、新入社員が嫌がるコミュニケーションはどのようなものがありますか?

橋)
背景を伝えないコミュニケーションは嫌がる傾向にあると思います。

「これやっておいて。」とか、まるっと投げられるのは嫌いだと思います。先述した通り、「初めてのこと」は特に嫌がると思います。それをやる意味とか背景、ゴールやポイント等も、伝えられることをシンプルで良いので伝えて欲しいです。1分もあればできるコミュニケーションです。その1分が、その後の新入社員の成長や成果に大きく関わってくると思うので、面倒だと思わず実施して欲しいです。

もちろん、新入社員から聞きにきてもらえたら良いですが、今の新入社員は「尋ねること」も苦手な方が多いですから、初めは育成側から伝えてもらえたら良いかと思います。関係性ができてきたら「自ら尋ねてくる」ことも増えるでしょう。

山)育成者側は、初期の負担はかなり大きくなりそうですね。

橋)
そう思います。ただし、入社後3ヵ月程度は投資だと思ってしっかり取り組んでほしいと思います。

初期に良好な関係性を作り、成功体験を積み上げられると、その後の成長はかなり早いと思いますから。関係性が良好であれば、フィードバックを受け入れる土壌はもっと広がりますし、一度経験したことの再現性は高いはずです!

たとえ育成負担が大きくなったとしても、私としては「例年通りの育成を実施して、辞めてしまう可能性」を考えると、真剣に取り組むべき課題であると思います。

山)入社後三ヵ月の育成を充実化していくことが、企業・新入社員の両者にとって、大変重要であることを実感しました…。インタビューへのご協力、誠にありがとうございました。

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