コラム

新入社員が育つフィードバックとは?基本となる考え方や方法を詳しく解説

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2022/12/09作成ー

新入社員へのフィードバックに悩んで、このコラムに辿り着いた方もいるのではないでしょうか。そんな皆さんに、突然ですが一つ質問です。

「フィードバック」という言葉を聞いて、どんなイメージが思い浮かびますか?

・ダメ出しや小言?
・改善のためのアドバイス?
・評価面談で伝えられること?

人によって思い浮かべたイメージは様々かと思いますが、どちらかと言えばネガティブなイメージを連想された方が多いのではないでしょうか。

実は、「フィードバック」という言葉を聞くだけで、人間は不安や居心地の悪さを感じ、「闘争・逃走反応」といったストレス反応が起こることが、脳科学的にも証明されています。そのような負のイメージを持つフィードバックですが、新入社員育成には欠かせない存在です。

そこで、本コラムでは、新入社員育成にフィードバックが不可欠な背景や効果的にフィードバックを行うためのポイント・具体例を解説していきます。

新入社員に関わらず、部下育成に課題を感じている管理職やトレーナーの方、育成企画を検討中の人事担当の方まで、是非ご参考いただければと思います。

目次

1)新入社員育成におけるフィードバックとは

フィードバックとは何か?

本コラムを読み進めていくにあたって、改めて、フィードバックの定義についてお伝えします。
当社では、フィードバックの定義を次のように考えています。

受け手自身が自らの力に気付き、小さな進歩を実感できるもの
双方が心から願う未来に向けた成長を支援するために、提供されるもの

上記定義を見て、ご自身のフィードバックに対するイメージとは少し異なっているために戸惑いを感じている方もいらっしゃるかもしれません。そこで、もう少し本定義のイメージを膨らませていくため、「フィードバックと、そうでないもの」を対比した表をお見せいたします。

フィードバックとは、
こんなものです。
フィードバックとは、
こんなものではありません。
ツール 凶器
コミュニケーション 非難
信頼に基づく 疑いに基づく
文脈に合わせ共有される意見 文脈を考慮しない一方的な決めつけ
成長を支援するため 権力を見せつめるため
思いやりがあって、明確 まとまりがなく、冗長
共通の経験から得られる気づき 知識をひけらかすための自慢話
建設的 否定的
贈り物 制裁
内省のきっかけ 自己嫌悪を引き起こす
人を支援する方法 人を無理やり変える方法

【出典】タムラ・チャンドラー&L・グレーリッシュ(著)「フィードバックの真価~職場に信頼を生み出し、共に成長する」を基にアーティエンスにて作成

フィードバックとは、「信頼に基づくコミュニケーションツール」であり、「疑いに基づく非難の凶器」ではありません。また、あくまで「人の成長を支援するための方法」であり、「自己嫌悪を引き起こし、人を無理やり変える方法」ではありません。
上記定義をふまえ、新入社員への効果的なフィードバックについて考えていきます。

なぜ、新入社員育成にはフィードバックが不可欠なのか?

冒頭で、新入社員育成にはフィードバックが欠かせない存在であるとお伝えいたしました。
そのように考える理由は、次の5つです。

1. 働き方の変化・多様化のため
2. 社員のモチベーション向上のため
3. 社員のエンゲージメント向上のため
4. チーム・組織の関係性構築のため
5. チーム・組織の生産性向上・目標達成のため

一つずつ、解説していきます。

1.働き方の変化・多様化のため

一つ目は、社員の働き方の変化・多様化によって、フィードバックの重要性がより一層強まっているためです。
ひと昔前の日本では長期雇用が一般的で、その中で失敗から挽回の方法を学び、成功体験を得て、自然と成長していくことができました。しかし、終身雇用の崩壊により長期的な育成が難しくなっている近年では、ひと昔前のように失敗から学び、時間をかけて成長する環境ではなくなってきています。また、テレワークや時差出勤などの働き方の多様化によって、「職場で人を見て学ぶ」という経験も得にくい状況となっています。

そのため、周囲からのフィードバックを通して「敢えて伝える」という行為が、育成において極めて重要な役割となっています。

2.社員のモチベーション向上のため

二つ目は、社員のモチベーション向上のためです。
フィードバックを受けると、自身の強みや良かった点を認知するきっかけとなり、業務に対しても自信が持てるようになります。また、内省が深まったり、仕事の意味を見出したりなど、内発的動機づけも促進されます。そして、より前向きな姿勢でモチベーションを維持しながら業務に取り組むことが期待できます。

3.社員のエンゲージメント向上のため

三つ目は、社員のエンゲージメント向上のためです。エンゲージメント向上は、離職防止にも有効です。
効果的なフィードバックは、フィードバックの受け手のことを注意深く観察していないと、なかなか難しいものです。そのため、フィードバックを受けると「自分のことを気にかけてくれている。期待してくれている」という想いが生まれ、組織に対するエンゲージメント(従業員エンゲージメント)向上が期待できます。また、フィードバックを受けることで、漠然と業務をこなしているだけではなく、自身の強みが業務に活かされているという実感も持てるため、仕事に対するエンゲージメント(ワークエンゲージメント)の向上も期待できます。

【参考:エンゲージメントは「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」の2種類があります】
エンゲージメント

4.チーム・組織の関係性構築のため

四つ目は、チーム・組織の関係性構築のためです。
日常的にフィードバックを行うことで、職場のコミュニケーション量が増加します。これにより社員同士の相互理解が進み、関係性構築やチームビルディングの効果も期待できます。特に、コロナ禍以降急増したテレワークであれば尚のこと、フィードバック機会を増やして相互理解を深めていきたいものです。

5.チーム・組織の生産性向上・目標達成のため

五つ目は、チーム・組織の生産性向上・目標達成のためです。
フィードバックによって、社員のアウトプットの量と質が高まったり、より効率的な方法をアドバイスすることで、生産性向上も期待できます。目標達成に向けた軌道修正を図るためにも、フィードバックは重要です。

フィードバックの基盤となる「グロース・マインドセット」

効果的なフィードバックを行うための基盤となるもの、それは、フィードバックをする・される側両方のマインドセット(信念、心の在り方、思考)が「グロース・マインドセット」であることです。

グロース・マインドセット(Growth Mindset)「自分が持っている能力や才能は、経験や努力によって成長できる」という信念・心の在り方を指す。スタンフォード大学心理学教授キャロル・ドゥエック氏によって提唱。グロース・マインドセットと対極にあるのがフィックスト・マインドセット(Fixed Mindset)で、「自分が持っている能力や才能は先天的なもので、経験や努力では成長しない」という信念・心の在り方指す。

【参考:グロース・マインドセットとフィックスト・マインドセットの考え方の違い】
 グロース・マインドセットとフィックスト・マインドセットの考え方の違い
※ 当社資料より一部抜粋

新入社員へ効果的なフィードバックを行うにあたって、2つのマインドセットの違いを理解することは、非常に重要です。
上記図からも読み取れるように、グロース・マインドセットの傾向が強い人は、「人は変われる」と信じ、フィードバックが自身の成長の糧になり、求めるべき存在であると認識しています。一方、フィックスト・マインドセットの傾向が強い人は、「人は変われない」と考え、フィードバックに対して恐怖感があり、むしろ避けるべき存在として認識しています。

つまり、新入社員の成長を支援するための触媒としてフィードバックが作用するためには、それを提供する側も受け取る側も、グロース・マインドセットをもっている必要があるのです。

2)【5つのポイント】グロース・マインドセットを育むフィードバックの基本

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では、フィードバックを提供する側も受け取る側もグロース・マインドセットを育んでいくためには、フィードバックにおいてどのような点を意識していけばよいのか、そのポイントは次の5つです。

ポイント
「ポジティブ:ネガティブ」は「5:1」の割合を意識する
新入社員の「自己」ではなく「行動」に焦点を当てる
コンパクトに、日常的に、高頻度で行う
業務支援・内省支援・精神支援の3つを押さえている
チームで相互にフィードバックし合える仕組みを創る

次章から一つずつ解説していきます。

① 「ポジティブ:ネガティブ」は「5:1」の割合を意識する

一つ目は、「ポジティブ:ネガティブ=5:1」の割合を意識して、新入社員とのポジティブなやり取りを増やしていくということです。

ポジティブなやり取りが増えると、良好な関係性構築に繋がります。グロース・マインドセットには、職場における周囲との関係性が大きく影響を与えることがわかっており、本音で話ができる豊かな関係性があると、自然とグロース・マインドセットが育まれます。一方で、職場が恐れや不安で満ち溢れていると、フィックスト・マインドセットが助長されてやるくなります。

また、なぜ「5:1」の割合を推奨するかというと、夫婦の離婚率予測で有名なジョン・ゴットマン博士(Dr. John Gottman)が、この割合で互いに関わることが良好な夫婦関係の維持においては非常に重要である、という研究結果を導き出したからです。博士はこの研究結果を基に、リーダーシップやフィードバックの分野においても大きな影響を与えています。そのため、私たちの職場においても、この「5:1」の割合でポジティブなやり取りを日々意識することが重要だと言えるでしょう。

ポジティブなやり取りとは、フィードバックの場面に限ったことではありません。
例えば、

・会議前後で新入社員の近況を尋ね、相手に関心を寄せてみる
・新入社員の日報に対しコメントして、日々の感謝の気持ちを伝える

といったやり取りでも有効です。無理やり良いことをでっちあげて褒めるのではなく、日々のちょっとしたやり取りをポジティブに行うという意識を持つことがポイントです。

【参考】新入社員とトレーナーの関係構築には、両者合同での研修実施も効果的です。
新入社員・OJTトレーナー合同研修 ~育成する風土を創っていくために~

② 新入社員の「自己」ではなく「行動」に焦点を当てる

二つ目は、新入社員の「自己」ではなく「行動」に焦点を当てることです。「あなたは…」を主語にするのではなく、「その行動は…」と行動を主語にしてフィードバックを伝えることを心掛けましょう。

なぜならば、「あなた」を主語にしてフィードバックすると、受け手である新入社員は「自分はダメなんだ…」と自分自身が否定されたように感じ、自己嫌悪に陥りやすくなってしまいます。その結果、フィードバックの目的である、改善行動まで至りにくく、フィックスト・マインドセットも強化されてしまいます。その一方で「本人の行動」を主語にしてフィードバックを行うと、「この行動を変えていけばいいんだ!」と理解でき、次なる行動にも繋がりやすく、フィードバックの効果も出やすくなります。

③ コンパクトに、日常的に、高頻度で行う

三つ目は、フィードバックは一度に色々詰め込まずに的を絞って、日々の業務の中でこまめに行うことです。なぜならば、一度の情報量が多いフィードバックは、受け手が理解するのに負担がかかり、次なる行動に繋がりにくくなってしまうためです。的を絞ったこまめなフィードバックだと、受け手も「これならできそう」と思えます。そして、高頻度でフィードバックを受け取り、改善行動を行うことで、前進感や成長実感が持てて、フィードバック効果を実感できるはずです。

「フィードバックは自分の成長に繋がる」と思えると、よりフィードバックを求めるようになり、グロース・マインドセットが助長されやすくなります。1on1などで時間を取ったフィードバックの機会だけでなく、会議の前後の時間や社内チャットツールなどを活用し、日々の業務の中で意識的にフィードバックを取り入れていく姿勢が大切です。ただし、やり方によっては「マイクロマネジメントをされている」と受け取られることもあるため、注意が必要です。

④ 業務支援・内省支援・精神支援の3つを押さえている

四つ目は、業務支援、内省支援、精神支援の3つを押さえたフィードバックを行うことです。中原淳氏のフィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術によると、職場で人が育つためには、業務支援、内省支援、精神支援の3つの支援を他者から受ける必要があります。

詳細
業務支援 いわゆるOJTのこと。仕事のやり方を教え、必要に応じてアドバイスする。
内省支援 振り返りを促してあげること。客観的な意見を伝えて、本人の気付きを促す。
精神支援 励まし、褒めること。本人の感情のケアをする。

お客様からよくご相談いただく現場育成のお悩みを紐解いていくと、「業務支援はできているが、周囲からの内省支援や精神支援が抜けている」という状況に陥っていることが少なくありません。

内省支援が足りないと、成長実感を持ちにくく、同じ失敗を何度も繰り返してしまうことがあります。精神支援が足りないと、落ち込んだり、自信をなくしたりする状態が続き、心を病んでしまう可能性もあります。そのような状態は、「人は変われない」というフィックスト・マインドセットを助長してしまう恐れがあります。そのため、フィードバックを通して、内省支援や精神支援も担保していくことが重要です。

例えば、内省支援では、フィードバックの際に次のような問いかけを行います。問いかけによって、自身の言動・考え方をフラットに見つめ、そこから新たな気付きを得て次なる行動へ活かすためのサポートをします。

「○○さんが、この経験から得た学びは何だろう?」
「何か一つ変化させるとしたらどんなことをすればいいだろう?」
「今の仕事上で、○○さんが誇れる点はどこだろう?一方で、残念に思う点は?」

また、精神支援としては、フィードバックを行う際に次のような対応が大切です。

・新入社員からの話もちゃんと聴く(決めつけない)
・新入社員に対する期待や想いを伝える

なお、精神支援は「同僚・同期」から最も多く受けており、能力向上にも影響が大きいという調査結果があります。そのため、上司・先輩の立場であれば、落ち込んでいる新入社員の様子に気付いたら、他新入社員へ「○○さん、なんだか落ち込んでいるみたいだから、ちょっと声掛けてあげてくれない?」といったフォローも効果的かもしれません。
また、人事担当の立場であれば、配属後も気軽に同期同士で相談し合えるような関係性を、研修等を通じて構築していくことも大切です。

⑤ チームで相互にフィードバックし合える仕組みを創る

五つ目は、職場で相互にフィードバックし合える仕組みを創ることです。なぜかというと、グロース・マインドセットを育んでいくには、フィードバックする・されるという固着化した一方通行な関係性ではなく、チームメンバー同士で気軽にフィードバックし合える機会や仕組みを創ることが重要だからです。

そうは言っても「新入社員から上司・先輩へフィードバックするのはハードルが高い…」と感じるかもしれません。そんな時は、フィードバックしてほしい観点を予め新入社員に伝えておくことがポイントです。

例えば、上司と新入社員が営業同行する場面で、「お客様との関係性構築の観点で、学びになった点/よく分からない・気になった点の2点を考えて、商談後に伝えてくれる?」といった具合に事前に伝えて起きます。そうすると、新入社員もフィードバックしやすくなりますし、上司も多様な視点を取り入れやすくなります。

3)【例文あり】新入社員へのフィードバックの方法

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前章では、フィードバックを行う側と受け取る側で大切な「グロース・マインドセット」を持つこと、そしてグロース・マインドセットを育むためのポイントをについてお伝えしました。本章では、実際に新入社員へフィードバックを行う際の具体的な方法や注意点についてお伝えします。

2種類のフィードバックを理解する~ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック~

フィードバックには、「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2種類があります。それぞれの定義、メリット・デメリットをお伝えします。

ポジティブフィードバック

ポジティブフィードバックとは、部下の発言や行動の中で「できたこと」「良かったこと」に注目して指摘し、本人の自信やモチベーションを引き上げ、個人の強みを更に伸ばすような成長支援を行っていくことを指します。ポジティブフィードバックのメリット・デメリットは次の通りです。

詳細
メリット ・受け手が自身の強みを理解し、さらに伸ばすことに繋がる
・やる気やモチベーションの向上が期待できる
・周囲や他者への貢献を実感することができる
・良好な関係性を築くことに繋がる
デメリット ・伝え方次第では、現状に満足してしまう

ネガティブフィードバック

ネガティブフィードバックとは、ポジティブフィードバックとアプローチが正反対で、部下の望ましくない言動や結果、起きてしまった問題に焦点を当て、マイナス要素や改善すべき点を指摘・指導していくことを指します。ネガティブフィードバックのメリット・デメリットは次の通りです。

詳細
メリット ・受け手が自身の問題・課題を客観的に把握することができる
・改善行動が取れ、目標達成に繋がる
デメリット ・伝え方次第では、単なる批判・叱責と受け止められる

2つのフィードバックの違いを理解し、活用イメージを持つ

同じ状況でも捉える視点によって、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの2パターンのフィードバックを行うことができます。

例えば、以下のような新入社員に対してフィードバックをすると仮定します。

・新入社員のAさんは、営業職。上司との1か月間の振り返りにて。
・異動する先輩の担当顧客の引き継ぎ対応が多く発生していた1ヵ月間だった。
・今月の月間目標に対しては、90%で未達成。
・これまでの月間目標に対して、6ヶ月中4ヶ月達成。

ポジティブフィードバックをする場合

「先輩からの引き継ぎもあり、業務調整が難しい時期だったけど、あと一歩のところまで健闘したね。どんな点を工夫して営業活動したのかな?」
「もし、今月達成するために何か一つ行動を変えるとしたら、どんなことを変える?」
「月間目標は、2/3を達成できているね。達成できた月は何が良かったと思う?」

ネガティブフィードバックをする場合

「今月は90%で未達成だけど、残りの10%は何が足りなかったんだろう?」
「このまま来月も未達成だと良くないと思うんだど、自分の課題は何と捉え、どう対処するつもり?」
「月間目標も、1/3は未達成だよね。達成できなかった月は何が原因だったかな?」

2つのフィードバックの違いについて、イメージいただけたかと思います。
もし、ご自身がAさんであった場合、どちらのフィードバックを言われたい/素直に聞く気になりますでしょうか?
恐らく「ポジティブフィードバック」の方と答える人が多いのではないでしょうか。

どちらのフィードバックも、個人と組織全体の成長には必須であり、良い影響を与えます。ただし、ネガティブフィードバックは、伝え方によっては関係性を悪化させたり、受け手が自己嫌悪に陥ってフィックスト・マインドセットの傾向を強める可能性があります。

したがって、できるだけポジティブフィードバックを活用することが望ましいと言えます。相手を承認するので、部下にとっては励みや強い動機づけになります。同じ状況でも、捉え方やフィードバックの技術を磨くことで、ポジティブにも、ネガティブにも伝えることが可能になります。次章では、2つのフィードバックやり方を解説しますので、ぜひご参考にいただければと思います。

例文を使ってフィードバックを実践する

ポジティブフィードバック、ネガティブフィードバックのいずれも、基本的には次の5つのステップで行っていきます。
 フィードバックの例文

Step1:目的・背景の共有
まず、フィードバックをしてもよいかどうかを確認し、何についてのフィードバックなのか、目的や背景を明らかにします。

Step2:気付きの共有
自分が見た相手の行動やその場に居合わせたときの状況を、具体的かつ明確に伝えます。その際は、批判したり、個人的な意図や思い込みなどをを挟まないように注意します。

Step3:結果の共有
本人の言動の結果として、フィードバックを受ける自身や周囲にとって、どのような効果や影響を与えているのかを伝えます。(ポジティブフィードバックの場合は、フィードバックを行う側が感じたことや想いなども伝えてもよいでしょう)

Step4:対話(振り返りと行動プランの検討)
Step2・3の内容に対して、共に話し合います。お互いの意見に耳を傾けて、理解するように努力します。一方的に正解を教えるのではなく、問いを投げかけて、今後の行動プランについて検討します。

Step5:信頼構築
次なる行動プランを具体的に決めたら、フィードバックを行う側から今後の期待をしっかりと伝えます。フィードバックで対話を行うたびに、より一層信頼関係が深まることを意識します。

上記ステップをふまえ、それぞれのフィードバックの例文をポイントと共に解説していきます。

【例文】ポジティブフィードバック

営業同行の後に、新入社員のAさんへポジティブフィードバックを行います。

Step1:目的・背景の共有
上司:「今日の営業、やってみてどうだった?」(ここで少し話をきく)
上司:「今日一緒に同行してみて、Aさんの成長を感じて、素晴らしいなと思ったことがあるんだけど、話してもいいかな?」

【ポイント】
・その都度、できるだけ早く伝えます。(ちょっとしたことでもその都度言うことで、効果を積み重ねることができます。)
・前向きなフィードバックであることを事前に伝え、部下の心理的安全を確保します。

Step2:気付きの共有
上司:「まず商談の冒頭で、今日の商談の目的とアジェンダをお客様に確認していたよね。前回は、そういった確認をせずに、いきなり商品説明を始めて、お客様から「それはもう事前に見ているので、説明は結構です」と言われてしまっていたよね。」

【ポイント】
・具体的にどんな行動があったのか、事実を述べます。

Step3:結果の共有
上司:「でも、今回は事前に目的とアジェンダをすり合わせたおかげで、お客様から『アジェンダに一つ加えて、○○に関しても相談したい』というお話ももらえたよね。お客様がどんなことに関心や疑問をお持ちなのかを最初に引き出すことができていたね。」

【ポイント】
・行動の結果、周囲(お客様や上司・先輩、会社、自身)にどのような影響が生じたのか具体的に伝えます。

Step4:対話(振り返りと行動プランの検討)
上司:「商談全体の流れもスムーズだったし、私としては、前回と比べるとAさんの成長をとても感じたよ。今の内容を聞いてみて、Aさんはどう感じた?」
Aさん:「ありがとうございます。前回は、とにかく上手く説明しようという気持ちでしたが、今回は「お客様のお悩みを解決できる場にしたい」という想いがありました。目的とアジェンダの確認は、先輩のBさんと同行した際Bさんが行っていて、いいなと思って私も取り入れてみました。」
上司:「前回からの心情の変化や先輩の良い点を積極的に取り入れて挑戦しているのは、とても素晴らしいね。よりお客様のお悩みを解決できる場にしていくために、次はどんなことに取り組めるといいだろう?」
Aさん:「深掘り質問がまだまだ難しさを感じているので、次回商談までにロープレを少なくても2回は行い、準備をしたいと思います」

【ポイント】
・問いを投げかけ、行動に至った意図や想いを共に振り返り、理解を深めます。
・「よりよくしていくためには?」の視点から、次なる具体的な行動プランを一緒に考えます。

Step5:信頼構築
上司:「そうだね。次回のお客様を想定したロープレで深掘り質問に慣れる練習をしよう。商談を重ねるたびに着実に成長しているから、順調にいけば半年後にはきっと、Aさん一人でも商談を任せられるくらい成長できるんじゃないかな。また来週の商談も一緒に頑張ろうね。」

【ポイント】
・行動プランを明確にし、上司として今後何を期待しているのかも伝えます。
・部下を励まし、未来に向けての後押しをします。

【例文】ネガティブフィードバック

続いて、レポートの提出締切が遅れた件について、新入社員のAさんへネガティブフィードバックを行います。

Step1:目的・背景の共有
上司:「Aさん、昨日の売上レポートの提出が遅れた件で話したいんだけど。朝会の後、ちょっと残ってもらってもいいかな?」

【ポイント】
・時間が経つと問題行動を相手に伝えづらくなり、効果も半減します。なるべく早く伝えます。
・他の人がいる前では避け、1対1の場面をつくります。

Step2:気付きの共有
上司:「今月の売上レポート、昨日の14時までを締切にしていたと思うんだけど、Aさんは2時間ほど遅れて提出していたよね。」

【ポイント】
・具体的にどんな行動があったのか、事実を述べます。(ポジティブフィードバックと同様ですが、より慎重にあいまいな表現や主観は避けて、事実を伝えます。)

Step3:結果の共有
上司:「Aさんのレポート提出が遅れたため、部のレポートを取りまとめているアシスタントのBさんが催促メールを送る手間が発生しています。また、営業部から経理部への資料提出が夕方になったので、経理部のメンバーが残業をして対応することになってしまったんだよね。」

【ポイント】
・行動の結果、周囲(お客様や上司・先輩、会社、自身)にどのような影響が生じたのか、感情的にならずに、具体的かつ明確に伝えます。

Step4:対話(振り返りと行動プランの検討)
上司:「売上レポートは毎月必ず作成するものだから、来月は締切を厳守してほしいんだけど、今回何があって提出が遅れてしまったのか、教えてくれないかな?」
Aさん:「締切間際で顧客トラブルが発生して想定外の対応があり、レポート作成の時間が取れなかったんです。申し訳ありません。締切当日ギリギリではなく、もっと前もって作成しておくべきでした。」
上司:「そうだったんだね。締切のあるものはその後の影響範囲も考えて、余裕を持って対応していくべきだね。あとは、もしAさんがアシスタントのBさんの立場だったら、今回のAさんの対応ってどう感じるかな?」
Aさん:「そうですね…。トラブル対応で提出が遅れることがわかった時点で、まずはBさんに報告すべきでした。」
上司:「そうだね。事前報告で事情が分かれば、Bさんも催促メールを2回も送る必要はなかったし、トラブル対応もフォローしてくれた可能性もあるよね。」

【ポイント】
・上司から部下への一方通行のコミュニケーションにならないよう、部下からの意見にも耳を傾けて、相互コミュニケーションを心掛けます。
・出来事を振り返りながら、部下自身で「言葉にさせること」を意識し、改善行動のプランを共に考えます。
・若手・新入社員の場合、自身の行動や仕事の影響範囲をイメージできていないこともあるため、視点や視座を変える問いを投げかけ、視野を広げます。

Step5:信頼構築
上司:「余裕を持った行動、バッドニュースは早めに報連相をすることを徹底しましょう。締切を守れないと、周囲からの信頼も失いかねません。Aさんが営業活動を一生懸命取り組んでいることはわかっていますが、今回のような件で周囲からの信頼を失うのは非常に悔しいし、もったいない。お互いに気持ち良く仕事を進めていくためにも、以後気を付けるように。」

【ポイント】
・改善行動のプランを明確にし、上司として今後何を期待しているのかも伝えます。
・部下を励まし、未来に向けての後押しをします。

フィードバックの注意点を押さえる

ここまでを読み、フィードバックの2つの種類とその違い、具体的なやり方についてイメージがいただけたかと思います。最後に、それぞれのフィードバックを行う際に注意しておきたいポイントをお伝えします。

ポジティブフィードバックの注意点

・根拠をもって具体的に伝える
ポジティブフィードバックは、ただ単に褒めるものではなく、相手の成長につなげていくためのツールです。具体的にどのような点がよかったのか、そして、今後どのような行動を強化していくとさらによくなるのかが伝わる内容に検討しましょう。

例えば、「○○さんの企画書、よかったよ」というのは、ポジティブフィードバックではなく単なるコメントです。「○○さんの企画書、顧客の課題を的確におさえた内容で、納得感もあって良かったよ。今後も今回のように顧客へのヒアリングを丁寧に行えるといいね」と具体的に伝えることを意識します。

・相手のタイプを見極めて行う場所を考慮する
他のメンバーもいる前でポジティブフィードバックを行うと、受け手本人の自信や意欲を高めるだけでなく、周りのメンバーも好事例から学ぶことができ、互いに学び合う組織醸成を促す効果も期待できます。
ただし、受け手のタイプによっては逆に萎縮してしまう場合もあります。相手のタイプを見極めて、伝える場面を検討しましょう。

ネガティブフィードバックの注意点

・自分がフィックスト・マインドセットになっていないか立ち返る
ネガティブフィードバックを行う前に、一度立ち止まって、フィックスト・マインドセットの傾向が強まっていないか見つめ直します。これまで何度もお伝えしましたが、フィードバックの目的は「他者の成長を支援すること」です。フィードバックを行う側がグロース・マインドセットでいることが重要であり、自身の能力を「認めさせたい」という思考に陥っていないか意識しましょう。

・大勢の前で伝えない
ネガティブフィードバックは、場所・環境には充分に配慮し、基本的には、1対1で行うようにしましょう。大勢の前で指摘されて、良い気分になる人はいません。場合によっては、関係性の悪化に繋がってしまったり、「わざと皆の前で叱責された。パワハラだ」と受け取られる可能性もあります。

アーティエンスのOJTトレーナー研修では、部下へのフィードバックスキル向上を目指したプログラムを提供しています。
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4)新入社員へのフィードバックに関するQ&A

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新入社員へのフィードバックについては、様々な疑問をお持ちの方もいるでしょう。本章では、よくある疑問に対して解説していきます。

【質問1】フィードバックの時間がない場合はどうすればいいのか?

フィードバックは重要な業務と位置づけて、予めスケジュールに組み込んでしまうことを推奨します。
「隔週に一度30分の1on1」など、最低でも月1回30分以上は定期的にフィードバックを行う予定を事前に入れておきます。そして、基本的には決めた予定はずらさない、もし、ずらす場合は別日に振り替えて必ず実施しましょう。

なぜならば、フィードバックがない状態が続くと、新入社員は「自分は放置されている」と感じ、早期離職などの様々な悪影響を及ぼす要因になってしまう場合があるためです。

また、1on1の設定以外で日々の業務の中で実施できることとしては、下記があります。

・日報や社内チャットツールなどを活用して、フィードバックを伝える
・立場や役職に関わらず、フィードバックし合える環境・仕組みをつくる

「日報は貴重なコミュニケーションツール」と捉え、新入社員の日報に対してコメントでフィードバックをすることも効果的です。日報を提出させて終わりにするのではなく、その内容に対して上司・トレーナーからコメントすることで、日々フィードバックをしていきます。下記は日報の項目の一例です。

■本日行った業務
・・・
■1日を振り返って、相談したいこと
・・・
■次回出勤時の業務予定
・・・
■今、手元にある仕事
・・・

例えば、弊社では管理職を含めたチームメンバー全員にメールで日報を送付しています。日報を読んで気付いた点があれば、管理職やトレーナーだけでなく、同僚からもフィードバックし合っています。日報を起点に、フィードバックし合う風土創りにも繋がっています。

【質問2】自分と相性が悪い新入社員の場合どうすればいいのか?

育成体制の検討とトレーナー以外のメンバーの育成意識の醸成がポイントになります。具体的には次の2つに取り組めると良いかと思います。

トレーナーを2人体制にする。(トレーナー/メンター等のそれぞれに役割を持たせる)
「育成はトレーナー一人が担う」のではなく、「チーム全員で育成する」という意識醸成・仕組みを創る

2点目の具体施策については、本コラム2章で前述した内容をご参考いただければと思います。
新入社員とトレーナーの相性が合わない場合、フィードバックが逆効果になり兼ねません。「相性だから仕方がない。我慢するしかない」と放置するのではなく、早期に対策を講じていただくことを推奨します。

なお、蛇足にはなりますが、「相性が悪い」というのは「価値観の相違」であることが多いと思います。価値観の違う人との関わりは、自分自身の価値観の幅が広がり、成長するきっかけにもなります。大変さもありますが、「成長の機会」と前向きに捉えて育成に取り組むことも、ご自身にとって素晴らしい経験となるかもしれません。

【質問3】成長意欲が低い・否定的な新入社員はどうすればいいのか?

相手の状況に合わせた対応を心掛けましょう。以下に一例をあげます。

自身の成長を実感できていないため、成長意欲が低い場合

・一緒に振り返りを行い「その経験はあなたにとってどんな気付きがあった?」と問いかけ、意味付けを行っていく
(物事に対する捉え方が変わると、自身の成長を実感する場合があります)

・チームメンバーで、ポジティブな側面に重きを置いて振り返り(ポジティブリフレクション)を行う
(ポジティブリフレクションは、グロース・マインドセットになりやすく、複数名で行うことで、周囲からの影響を受けやすくなるため)

本人にやる気が感じられず、否定的になっている場合

・上司・先輩、お客様などの他者視点で考える機会を創り、振り返る
(例:もし、先輩の立場だとしたら、新入社員に対してどのような行動を期待すると思う?)

・自身の態度や言動が、周囲へどんな影響(ポジティブ・ネガティブ両面で)を与えているのか考えてもらう

新入社員の成長意欲が低い・否定的な状態ということは、フィックスト・マインドセットが強まっている傾向にあるため、前述したグロース・マインドセットを育むための5つのポイントに継続的に取り組んでいくことが必要です。

【質問4】ポジティブフィードバックで新入社員が勘違いしたらどうするのか?

「条件付きポジティブフィードバック(サンドイッチ型フィードバックとも言う)」を意識すると良いでしょう。

【条件付きポジティブフィードバックの例】
「今日の会議のプレゼン資料、伝えたいメッセージが明確でとてもわかりやすかったね。事前のリサーチも徹底されていて、お客様にも響いていたように思います。」

「ただ、資料作成にはずいぶんと時間がかかっていたよね。その分残業時間も先月は10時間増えていたのは気になっています。」

「資料の出来は素晴らしかったので、テンプレート化できる部分は行って、作成時間の削減も目指していこうか」

ポジティブフィードバックをしながらも、課題や改善点も伝えて「よりよくするには?」という観点を常に持ってもらうよう心掛けましょう。

5)まとめ

本コラムでは、新入社員への効果的なフィードバックについてお伝えいたしました。本コラムの要点をまとめると次の4つになります。

1)効果的なフィードバックを行うためには、フィードバックをする・される側両方のマインドセット(信念、心の在り方、思考)が「グロース・マインドセット」であることが基盤となる

2)グロース・マインドセットを育むには、次の5つのポイントを意識してフィードバックを行うことが重要である

ポイント
「ポジティブ:ネガティブ」は「5:1」の割合を意識する
新入社員の「自己」ではなく「行動」に焦点を当てる
コンパクトに、日常的に、高頻度で行う
業務支援・内省支援・精神支援の3つを押さえている
チームで相互にフィードバックし合える仕組みを創る

3)フィードバックにはポジティブ・ネガティブの2種類があり、同じ状況でも、フィードバックの技術を磨くことで、ポジティブにも、ネガティブにも伝えることが可能

4)フィードバックは、5つのステップで行う
 フィードバックの例文

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