内省を深化させる│研修で内省を扱う際のポイントやメリット・デメリットを徹底解説

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 内省研修

「内省を伴う研修を成功させるには?」
「内省を伴う研修の具体的な方法を知りたい」
「内省を伴う研修のメリット・デメリットを知りたい」
「内省を伴う研修を成功させるためのポイントを知りたい」

など、内省を伴う研修を実施するにあたり、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

内省を伴う研修が成功すると、下記のような変化が起こります。

・参加者の自己成長力が高まり、自律的な成長が進む
・認知や意識の転換が起こり、モチベーションが高まる
・自己理解が進み、パフォーマンスが向上したり、キャリアの方向性が明確になる

とはいえ、内省の要素をどのように研修に取り入れたらいいのか、お悩みの方も多いかと思います。そこで、本コラムでは、内省を伴う研修を行う際の注意点や成功のためのポイントをお伝えします。この記事を読むことで、内省を伴う研修の質を向上させてみてください。

※ 本章では、内省を伴う研修を「内省研修」と呼称します。

>内省研修をご検討中の方は、コチラよりお気軽にお問い合わせくださいませ。

監修者プロフィール

菊地 大翼

組織人事コンサルタント。業界歴15年以上。研修会社に入社し、法人営業で売上トップを達成後、新規商品の開発に従事。現在は人事制度構築支援、成人発達理論に基づいた人材・組織開発のコンサルティングを行っている。

1)内省研修で最も大切なのは『自己を深く見つめ、新しい気づき・発見を得るための安全な環境』

内省をテーマとした研修で最も重要なのは、『自己を深く見つめ、新しい気づきや発見を得るための安全な環境』の確保です。

私たちの心の奥には、普段明かさない感情や考えがたくさんあります。
これを他者と共有するには、評価や批判の目を気にすることなく、自由に話せる場が必要となります。安全性が確保されていない状況下では、心の奥深くを見つめることが難しく、内省の力を十分に発揮することができません。だからこそ、内省研修では安全な環境が最も大切なのです。

例えば、とある商社で行われた内省研修では、以前に参加した研修での言動が上司や周囲の耳に届き、後から指摘やフィードバックを受けた参加者が複数参加していました。このため、初めは皆、本音での発言を控えていました。
しかし、その雰囲気を察知したファシリテーターが、人事担当者と相談し、この場で話されたことはこの場限りに留めることを強く約束しました。また、参加者同士でも、相手の意見を評価しないというルールを徹底していきました。
その結果、次第にオープンなコミュニケーションが生まれ、結果的に多くの参加者から「今まで言えなかったことを共有できた」「心がスッキリした」との声が上がったのです。

つまり、内省研修で真に価値ある結果を得るためには、参加者が「自己を深く見つめ、気づきや発見を共有する安心感」を持てる環境作りが最も大切です。

2)内省研修は『自らから進んで成長する意欲を引き出す』ために必要

内省研修が求められる主な理由は、参加者が「自らの意欲を引き出し、積極的に成長するため」です。

人は「自分の未来の姿や目指すべき方向」が明確でない限り、主体的に成長し続けることは難しいのです。そして、そのようなキャリアの方向性や働く原動力は、単なる知識の習得や外部から得られるものではありません。

キャリアの方向性や働く原動力は、自己を深く探求する内省の過程で得られるものです。

実際の例として、あるIT企業で実施された若手社員向けの研修を挙げます。
この研修では、3年の業務経験を振り返り、自らの強みを再認識することを目的としていました。その結果、何となく指示通りに業務を遂行していたある社員が「効率化や標準化を通じて、複雑な状況や場をエネルギーが流れるように整えるが自分の得意領域であり、楽しいことだ」という自己認識に至りました。その後、彼は上司と協議し、業務改善の新プロジェクトを立ち上げました。この取り組みが信頼関係を強化し、彼の活躍の場が拡大したのです。

このように、自分から進んで成長意欲を引き出すには、外から知識や刺激を与える研修では不十分であり、内省研修を通して、自分の潜在能力や新しい気づきを引き出すことが必要です。

3)内省研修を行う3つのメリット

内省研修には、メリット・デメリットの両面があります。よく検討した上で、研修への導入を検討しましょう。本章では、内省研修を行う3つのメリットについて説明します。

①自己理解が深まることで、キャリアの方向性が明確になる
②モチベーションの向上
③自己成長力が高まる

①自己理解が深まることで、キャリアの方向性が明確になる

内省をテーマとした研修を行う最初のメリットは、自己理解が深まり、その結果としてキャリアの方向性が明確になることです。

私たちの日常は、目の前の業務に追われることが多く、真の興味やそして価値観を見つめる時間が奪われがちです。しかし、研修を通して内省を深めることで、日常の業務から一歩引いて、自らの興味や強み、価値観を振り返り、言語化することができます。

例えば、若手向けのフォローアップ研修を行った際に、参加者の中に、粛々と自分の業務を行うことは得意でも目立った活躍をしていないと落ち込んでいる方がいました。当初は「強みなんて自分にはない」と話していました。ただ、これまでのキャリアを振り返るワークや、同僚や上司からのフィードバックで「どんな仕事にも実直に取り組み、最後まで諦めずにやり遂げること」が強みであると気づき、自分のキャリアを前向きに捉えらえるようになりました。

以上のように、このように、内省を通して、自己理解を深めることは、キャリアの明確な方向性を見つける機会となり、更なるパフォーマンス向上へと繋がる重要なステップとなります。

②モチベーションの向上

2つ目のメリットは、モチベーションの向上です。
自分自身を深く理解することで、目の前の業務が、自分の価値観、興味や強みとどう関連しているのかをより鮮明に捉えることができるようになります。これにより、業務への取り組み姿勢が変わります。

具体的な事例として、あるメーカーで実施したキャリア研修では、参加者に自らの価値観や強みと日常業務との連携を深める内容を取り入れました。この研修を通じて、日常的にただこなしていた業務の中にも、自分の強みや価値観を活かせる場面が存在することに多くの参加者が気づきました。この気づきは、彼らの業務への取り組み姿勢に変化をもたらしました。

このように、内省を深めることで、自らの仕事への見方や価値感が変わり、結果的にモチベーションの向上が期待できます。

③自己成長力が高まる

3つ目のメリットは、自己成長力の向上です。
内省を通して、自分の核となる価値観や目標を深く探求することで、働く意義や大切にしたいことに対する認識が鮮明になります。働く意義や大切にしたいことが、持続的な自己成長に向けた意欲を引き出します。

具体的な事例として、あるベンチャー企業の新入社員研修では、多くの参加者が業務の忙しさや成長の感じられない日常に苛まれていました。そこで、日々の業務から一歩離れ、自分の人生やキャリア全体を視野に入れ、何を重視し、どのように働きたいのかをじっくりと考える研修が実施されました。
その結果、自分が何のためにその会社を選んだのか、なぜ仕事をしているのかがより明確になり、そのビジョンに向かって、日々の仕事に取り組むのだという意識転換が起こりました。

このように、内省を通して自己成長に向けた意欲を引き出し、継続的な成長を促進することが可能となります。

4)内省研修を行う3つのデメリット

続いて、内省研修を行うするデメリットについて紹介します。

①高い効果を出そうとすると、時間を要する
②感情の揺れなどが起こる可能性があり、万人にフィットするものではない
③ファシリテーターが参加者の内面を扱うスキルが求められる

こちらもそれぞれ説明します。

①高い効果を出そうとすると、時間を要する

内省研修で最も高い効果を得るためには、相応の時間が必要です。
なぜなら、内省は自分自身の深い部分と向き合うものであり、その過程で自分の思考や感情、過去の経験などをじっくりと探求する必要があるからです。また、多くの参加者は自分と向き合うことに慣れていないため、急に内省しましょうと言われても戸惑う方も多いです。

例えば、あるIT企業での研修にて、時間の関係上、半日の内省セッションを行うことになりました。しかし、参加者から時間が足りなかったというフィードバックが多数寄せられ、次年度からは半日→2日間と、研修期間を変更しました。
その結果「普段話せないことがじっくりと話せた」「自分の知らない一面に気づけた」など参加者から満足度が非常に高かったとの声が上がりました。

つまり、内省をテーマとした研修で高い効果を期待するならば、時間をしっかりと確保する必要があります。

②感情の揺れなどが起こる可能性があり、万人にフィットするものではない

内省研修では、参加者の感情が大きく動くことがあるため、一部の参加者が心理的な負担を感じることがあります。内省の過程で、過去の出来事や深層の感情に触れることで、不安やストレスが生じる場合があるからです。

例を挙げると、あるベンチャー企業の研修で、参加者が過去の出来事からの気づきを振り返るワーク中に、何人かが涙を流したケースがありました。このような深い感情に触れる可能性を含んだ研修の実施には、十分な配慮と準備が必要です。

よって、内省研修は、普段の研修以上に参加者の特性や背景を考慮した上での実施が求められます。

③ファシリテーターが参加者の内面を扱うスキルが求められる

内省研修を進める上で、ファシリテーターは参加者の心の内を敏感に感じ取り、適切にサポートするスキルが必須となります。参加者それぞれが持つ感情や心の葛藤に対応するには、心理学的な知見や豊富な経験が求められます。

例を挙げれば、ある企業での経営陣向けのワークショップにて、率直なフィードバックを受けた一人の参加者が感情的になったケースがありました。しかし、熟練したファシリテーターによって、その場の緊張が解け、建設的な対話が再び始まりました。このように内省を伴う研修では一時的に場がヒートアップすることもあり、その際に最適な介入を行うファシリテーターは、内省の研修の成功にとって不可欠です。

内省研修の成果は、通常の研修以上に、ファシリテーターの資質やスキルに大いに左右されるのです。

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5)実践的な内省研修プログラム構築の7つのポイント

本章では、実践的な内省研修プログラムの構築に向けたポイントを紹介します。

①目指す内省の具体的な領域の明確化

内省研修を計画する際、まずは目指す内省の具体的な領域を明確にすることが重要です。

内省には、「知識」「行動」「姿勢」「自己」という異なる領域があります。
内省の領域によって、アプローチや内容も大きく変わります。そのため、内省の領域と研修の手法が一致していなければ、狙っていた成果を達成することは難しくなります。

「知識」の領域を強化したい場合、テストを活用することが効果的です。
「行動」の領域では、体験を通して気づきを得る、体験学習が最も適しています。
「姿勢」に関しては、自分の価値観や考えと、実際の行動ののギャップを照らし合わせるフィードバックを中心としたロールプレイやシミュレーションが有効です。
そして、「自己」の領域を探求する場合、価値観を深ぼるような信念の深い内省や他者との対話を通じての自己理解が必要です。

総じて、内省とひとくくりにして安易に研修を設計するのではなく、目的や焦点を明確にした上で、それに基づいた研修設計が成功への鍵となります。

②受講対象者の選定

内省研修の対象者としては、特に成長に頭打ち感や手詰まり感を感じている方がよいでしょう。

内省は、自己と向き合い、深く考えるプロセスであり、それにはかなりの労力や動機が必要だからです。そのため、研修の機会を最大限に活かすためには、自らを成長させたい、現状を変えたいと強く感じている人が最も適しています。
例えば、以下のような方々が参加者としては適しています。

■新入社員: 入社して意気込んで現場に出たものの、思うような成果が出せず、自分の役割やキャリアに悩んでいる方
■若手社員: 一人前としての業務はこなせるようになったが、次のキャリアステップや方向性が見えず、モチベーションが低下していたり、転職を検討している方
■中堅社員: キャリアの折り返し地点にあり、管理職を目指すのか、スペシャリストを目指すのかなど、今後の方向性や新しい挑戦について不安や焦りを感じている方
■管理職: 部下の育成や組織の運営に関する課題感や限界を強く感じ、自らのリーダーシップやマネジメントスキルの向上を求めている方
■経営者: 会社の方向性やビジョン、経営戦略を今一度深く振り返り、核や軸となる指針を明確にしたい方

結論として、モチベーションが低下している、成長の停滞を感じている、キャリアの方向性に悩んでいる方々が、内省研修の対象者として最適です。

なお、アーティエンスでは、上記の各階層やご要望に応じた内省研修を提供しています。
お気軽にお問い合わせください

③目的に応じた研修内容の選定

内省研修では、その目的に応じて適切なコンテンツを選択することが極めて重要です
というのも、目的と内容が整合していなければ、参加者の内省が深まらず、期待した成果が得られない可能性があるからです。

知識レベルの内省を行いたい場合、テストやクイズ形式が効果的とされます。
これは、参加者が身につけたと考えている知識と、実際に習得している知識の間に生じるギャップを確認するのに有効だからです。具体的には、ペーパーテストや小論文の執筆を通じて、その習得状況を評価することができます。

行動レベルの内省を行いたい場合、実践的な体験、例えばロールプレイやワークショップがおすすめです。これらは仕事の現場に近い状況で実施されると共に、体験をKPTなどのフレームワークを利用した振り返りを通じて、習得した知識がどの程度実際の行動に反映されているかを明らかにします。

姿勢レベルの内省については、ある程度のプレッシャーを伴うシミュレーションが適しています。たとえば、日常業務では「顧客第一」という価値観を大切にしている参加者でも、顧客と会社からの目標達成への期待との板挟みになるプレッシャーがかかる状況下で、その姿勢を維持できるかが問われます。このような環境下での実践を通じて、言動の真の一致やギャップを明らかにすることができます。

最後に、自己レベルの内省では、ダイアログや自己理解ツールの活用が有効です。これは、参加者が無意識に持つ信念や感情に気づき、受け入れるサポートを目的とするものです。自分だけでの内省には限界があるため、専用のツールや他者との対話が有効とされます。

総じて、研修の目的によってその内容や方法は大きく異なることが確認できます。したがって、研修を実施するにあたっては、目的に沿った内容の選択が重要です。

④最適な実施のタイミングの決定

内省研修の際、最も効果を発揮するのは、モチベーションが低下している時期やキャリアの節目のような特定のタイミングです。その理由は、内省を深く進めるためには、自分を真摯に見つめる強い動機が求められるからです。動機が強ければ、内省がより深まりやすく、研修の効果も向上します。

具体的には、モチベーションが低下している時期は、自身と向き合う意欲が高まっていることが多く、このタイミングでの内省研修は、新たな気づきや成長をもたらす可能性が高いです。同様に、キャリアの節目や転機にあたる時期も、自分の経験や将来のビジョンを振り返る強い動機が生まれやすい時期です。

つまり、内省を中心とした研修は、参加者の動機の度合いによってその効果が大きく変動します。そこで、研修を計画する際は、参加者の現状や上司の意見を踏まえ、最適なタイミングを慎重に選定することが求められます。

⑤実施方法の検討(対面 or オンライン)

内省研修の実施方法は、内省の領域に応じて適切な方法を選択することが重要です

知識や行動レベルの内省であれば、オンライン形式でも効果的です。しかし、姿勢や自己レベルの内省では、対面形式がより望ましいとされます。これは、姿勢や自己レベルの内省ではリアルタイムのフィードバックや参加者間での対話が気づきを生む主な要素であり、その場のコミュニケーションが重要であるためです。

例えば、姿勢レベルの研修において、「チームワークを大切にする」と宣言した参加者が、商談ワークでお客様から指摘を受けて困っているメンバーを助けないという状況が生じた場合、講師が直ちにその状況を取り上げ、「先ほどはチームワークを大切にしたいと話していましたが、この行動はそれと矛盾していませんか?」とリアルタイムで問いかけることが可能です。このようなダイレクトかつリアルタイムのフィードバックは、対面の状況でこそ効果的に行うことができます。

また、自己レベルの研修では、深く自己を見つめるプロセスや身体の感覚への意識が求められるため、オンラインでは集中を維持することが難しい場面も考えられます。このため、対面形式が推奨されることが多いです。

総じて、内省の領域や目的に応じて研修の方法を選択することが、その効果を最大化するための鍵となります。内省の領域と方法は、研修効果と密接に関連しているので慎重に検討しましょう。

⑥研修講師の選定

内省研修の成否には、講師が大きく影響します。知識や行動レベルの研修では、基本的な講師のスキルや教育経験で十分なケースがほとんどです。

しかし、姿勢レベルの研修では、参加者の言葉や行動の背後に潜む思考や価値観を敏感に捉え、そのギャップに対して的確なフィードバックを行う能力が不可欠となります。

さらに、自己レベルの研修においては、「安全な場づくり」のスキルがなければ、もはや研修は成り立ちません。参加者が自分を安心して見つめられる環境を提供することや、明言されていない声や場に出にくい意見に気づき、それを支持し拾い上げる能力、さらに、対話や共感を通じて場の深度を増すためには、安全な場が必要です。参加者は最初不安を感じて研修に参加することが多いため、講師から積極的に安全な場づくりに努める必要があります。

このように姿勢レベルや自己レベルを扱う研修において、高度なスキルが求められる理由は、内省の深度が増すにつれて、講師が参加者の無意識下にある悩みや声を敏感に察知し、適切に対応することが極めて重要となるからです。

安全でない研修の環境下では、参加者は本音を隠してしまい、内省の効果は半減してしまいます。深い悩みや疑問、例えば「本当は退職したいと思っているがそれで本当にいいのだろうか」といったなど、会社内の研修では出しにくい声なども、講師が繊細に感じ取り、進行することが求められます。

このように、姿勢レベルや自己レベルの内省研修には、標準的な講師スキルを超えた能力や感性が必要とされるのです。したがって、研修の目的や内容を踏まえ、最も適切な講師を選定することが欠かせません。

【参考コラム】
【Q&Aつき】社内研修の品質を上げる!研修講師の育成方法
人事が研修講師をする意味、メリット・デメリット│研修品質の向上を行うために

⑦効果的なフォローアップのやり方

研修後の成果を最大化するためには、効果的なフォローアップは欠かせません。
内省研修の場合、特にチームやグループでのフォローアップが有効です。なぜなら、一人では持続的に内省を続けることが難しいためです。複数人での取り組みを通じて、内省の継続がスムーズに進行し、より深い気づきを得ることが可能になります。

具体的な方法として、「トライアド」という手法が挙げられます。これは、研修の後に3人1組で、気づきや学びを共有するセッションを定期的に実施するものです。2人の場合、意見が対立するリスクがあり、4人以上だと話が散らばりやすく、参加姿勢にもバラつきが生じることがあるため、3人1組が最も効果的とされています。このトライアドを通じ、参加者は、研修後の経験や感じたことを深く共有し、内省や気づきをさらに深めることができます。

結論として、一人での内省の継続は難しいため、チームやグループでのフォローアップを実施し、研修の効果をより定着させ、有意義な気づきを増やす環境を整えることが重要です。

6)内省をテーマとした研修に関するによくある質問

最後に、内省をテーマとした研修に関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q. 自社の社員の内省力はあまり高くないのですが、それでも研修は効果がありますか?

目的に沿って適切にデザインされている研修であれば効果が出ます
なぜなら、内省力が低い方の場合、そもそも内省に慣れていない、内省の仕方がわからないといった方も多くいます。そのような方が研修に参加することで、研修を通して、内省とはどのような効果があるのか?また、具体的にどのようにすれば内省が深まるのかを理解することで、内省力が高まるからです。

例えば、何となく日報を書いていた新入社員が、経験学習サイクルなどの内省のフレームワークを学ぶことで、日々の体験を気づきに変えるスキルが身につくなどの変化があります。
また、内省力がまだ低かった社員も研修を通して、自身の強みや成長領域に気づくことで、その後の姿勢に変化が生まれるケースも多く見られます。よって、内省力の高低にかかわらず、内省を伴う研修は社員の成長を促進する有効なツールと言えます。

ただし、研修の目的や参加者のレベルに合わせて、デザインしないと、レベルが高すぎてついてこれないなどの現象が発生してしまうので、適切にデザインすることが極めて重要です。

Q.どの程度で内省研修の研修効果が出ますか?

内省研修の効果が実感されるまでの時期は、参加者や組織の文化により異なりますが、おおよそ3か月から6か月は見た方が良いでしょう。内省研修の効果は、参加者の内面における意識や認識の変化です。この変化が具体的な行動や成果として現れるまでには時間がかかるのが一般的だからです。

多くの場合、数ヶ月後や定期的なフォローアップ研修の実施を通じて、実際の変化が観察されるようになります。例えば、ある管理職研修では研修の実施3か月後に部下から「最近上司が話を聞いてくれるようになった」との声が聞かれ始めるようになりました。

よって、効果的な内省研修の実施のためには、短期的な成果追求よりも、3~6か月後の成果を視野に入れ、フォローアップを含めた長期的なデザインが不可欠です。

Q.メンタルヘルスの問題にも対応できますか?

内省をテーマとした研修は、軽度のメンタルヘルスの課題に対して有効な手段として活用されることがあります。この種の研修は、参加者が自らの感情や考え方を深く探求することを促します。内省を通じて、自分の内面をよりよく理解し、その結果としてメンタルヘルスの状態が改善されることもあります。

例えば、自分は仕事ができない、上司から嫌われていると思っていたものの、その体験に対して新しい視点を持つことで、凝り固まっていた思い込みがほぐれるなどのケースです。

しかし、深刻なメンタルヘルスの問題を抱えている場合、内省を中心とした研修だけでは解決が難しいばかりか、場合によっては逆効果となる可能性も考えられます。そうした状況では、専門的な医療やカウンセリングのサポートが必要です。

したがって、メンタルヘルスの課題を持つ参加者が内省研修に参加する際は、事前に専門家との相談を検討しましょう。専門家には研修の目的や内容、そして参加者の状態を詳細に伝えることで、その参加者に最も適したアプローチや対応を得ることができるでしょう。

【参考コラム】
【管理職が潰れない組織へ】管理職のメンタルヘルス対策
新入社員のメンタルヘルス|3段階の予防と不調のサインを知って早期に対応を

7)まとめ

以上、内省をテーマとした研修を導入する際のポイントや注意点について紹介しました。
内省を伴う研修は、インプットだけの研修よりも参加者の深い気づきや意識変容を促すことが可能です。

特に、下記のような状況であれば効果的です。

「仕事への取り組み姿勢や意識を見つめて、捉えなおしてほしい」
「仕事やキャリアに対する意欲を持ってほしい」
「人から言われて学ぶのではなく、自ら学ぶ姿勢を持ってほしい」

しかし、適切なデザインができていないと「普段の会話と何が違うのかわからなかった」「話ができて楽しかったけれど、特に新たな気づきはなかった」などの残念な結果で終わってしまいがちです。

このコラムでは、内省研修のポイントをわかりやすくまとめていますが、深い内省を伴う研修は高度な設計やファシリテーションが要求され、研修の中でも難易度が高い分野です。

もしお困りの場合は、アーティエンスまでお気軽にご相談ください。新入社員~経営層まで内省をテーマとした研修事例があります。本コラムを読んで、内省をテーマとした研修の企画・実施に活用していただければ幸いです。