事例あり【新入社員研修のスケジュール】新入社員が最大限の学びを得るために

更新日:

作成日:2022.11.17

新入社員研修のスケジュールってどう立てればいい?

新入社員が最大限の学びを得るためのスケジュールを作成したいけれど、手順に迷っていませんか?

研修のスケジュールには正解があるわけではないため、難しさを感じるのが普通です。
しかし、ポイントを押さえることで、新入社員研修のスケジュールをより良い内容に変えることは可能です。

今回は、新入社員が最大限の学びを得るための新入社員研修のスケジュール例と、スケジュールを立てるときの考え方をお伝えします。

具体例と考え方を両方理解することによって、自組織にあった、新入社員が最大限の学びを得られる新入社員研修のスケジュールを設計することができるようになります。

新入社員の学びが深くなっていることを感じ、これから現場の活躍が楽しみになっている状態にしていきましょう。

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監修者プロフィール

山下 絢加

2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。現在は主にマーケティングプランニングを担当。
youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

  

1)新入社員研修のスケジュール例

研修のプロが監修した、新入社員研修の配属前のスケジュールと、1日研修のスケジュールについてご紹介します。

① 新入社員研修 配属前のスケジュールの例

配属前までに「積極的に他者に働きかける人材になる」ことを目的とした研修スケジュールを作成しました。

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このスケジュールのポイント

新入社員の学びを最大化するために、次のようなステップを意識してスケジュールを設定しました。

【配属前研修のステップ】
・4月1週目:社会人の意識を持ち、社会人・自社へのワクワク感がうまれる
・4月2週目:社会人としてのマインドとスキルを同期の仲間と共に学び合う
・4月3週目:周囲への関心を高めて、自分に今何ができるのかを考える
・4月4週目:配属への期待を持てる状態になる

この研修ステップは、その前段階として一年後のゴールイメージから逆算した配属直後のイメージを細かく分解した内容になっています。

【育成ゴール】
・一年後のゴールイメージ:他者から任せられる人
現場から出てほしい言葉:「○○さんには、安心して仕事を依頼できるな。2年目、○○の仕事も任せてみようかな。」

・半年後のイメージ:他者が任せたくなる人
現場から出てほしい言葉:「基本の仕事はできるようになったから、これからいろいろ仕事を任せていきたい。成長が楽しみだな。」

・一か月後のイメージ:他者が応援したくなる人
現場から出てほしい言葉:「報連相をしっかりしてくれて分かりやすいから助かる。周りを見て先回りした行動もできているよね。」

・配属直後のイメージ:積極的に他者に働きかける人
現場から出てほしい言葉:「今年の新入社員はしっかりしているな。自分から積極的に働きかけてくれるから、応えたくなるな。」

このように、一年後のゴールイメージから落とし込んでスケジュールを作成することができると、新入社員が配属前までにどこまでできるようになっていてほしいかを明確にすることができます。
目標が明確になると、新入社員自身で目的を意識して研修に取り組むことができるため、学びを最大化させることに繋がるのです。

【関連記事】1年後に結果を出す新入社員の目標例と設定のための7ステップ

② 新入社員研修 1日のスケジュールの例

新入社員研修の1日のスケジュール例を、事業内容・スタンス研修・専門スキルの三種類に分けて紹介します。

■ 事業内容の説明のスケジュール例

・研修内容:自組織のルールを知り、自組織と業界の理解を深める
・研修時間:7時間(お昼休憩1時間、休憩40分含む)
・研修スケジュール

内容 形式 時間 備考
オリエンテーション 講義 9:00-9:30 なし
自社と業界について 講義 9:40-12:00 マニュアル配布
お昼休憩 12:00-13:00 なし
就業規則について 講義 13:00-14:00 マニュアル配布
社内設備、備品に
ついて
講義 14:10-15:00 PC用意

【このスケジュールのポイント】
始めに、新入社員が安心できる状態を作れるようにしましょう。

事業内容の説明は、入社初日あたりに行うことが多いため、新入社員は緊張しています。そのため、始めは採用の時点でも関わりを持っていた人事の方とコミュニケーションを取ることで、緊張を緩和することから始めると、その後の説明を聞けるようになるでしょう。

役員の登場に対して、現場も新入社員も緊張感を持っていると思いますので、良い緊張感を持って話を聞けるという状態にできるかがポイントです。

■ スタンス研修のスケジュール例(アーティエンスの社会人の自覚研修の場合)

・研修内容:学生から社会人への切り替えを前向きに促し、周りに対してポジティブな影響を与えていくための意識醸成
・研修時間:9時間(お昼休憩1時間、休憩30分を含む)
・研修スケジュール

内容 形式 時間 備考
イントロダクション 講師紹介 講義 10 9:00-9:10
受講生交流 グループワーク 20 9:10-9:30 個人ワーク6分、シェア12分
ルール説明 講義 15 9:30-9:45
社会人の自覚とは ワールド
カフェ
対話 50 9:45-10:35 課題説明を含む
Round1:10分、Round2:15分、Round3:15分
休憩 10 10:35-10:45
振り返り グループワーク 20 10:45-11:05 個人ワーク3分、グループワーク5分、全体シェア10分
講義 講義 10 11:05-11:15 10
シミュレーションワーク 新卒採用ページの原稿レビューをせよ!(総合問題) グループワーク 45 11:15-12:00 課題説明8分、個人ワーク5分、グループワーク20分、プレゼンテーション(2グループ)フィードバック12分
解説 講義 15 12:00-12:15
振り返り グループワーク 15 12:15-12:30 個人ワーク5分、グループシェア10分
お昼休憩 60 12:30-13:30
シミュレーションワーク CS の仕組みを考えよう!(顧客満足) グループワーク 30 13:30-14:00 課題説明5分、グループディスカッション8分、プレゼンテーション・フィードバック10分
解説 講義 10 14:00-14:10
モラルに反した場合の影響範囲を考えよう!(モラル) グループワーク 25 14:10-14:35 講義7分、個人ワーク10分、気付き・学びの共有 8分
解説 講義 10 14:35-14:45
休憩 10 14:45-14:55
貢献とは何かを考えよう!(貢献) グループワーク 25 14:55-15:20 課題説明10分、課題資料読み込み:90秒、ワーク:1回目3分、2回目4分、#1回目の後に簡単な解説、フィードバック:90秒
振り返り グループワーク 15 15:20-15:35
解説 講義 10 15:35-15:45
顧客満足度を上げよ!(総合問題) グループワーク 50 15:45-16:35 課題説明10分、グループディスカッション30分、プレゼンテーション(1グループのみ3分以内)・フィードバック8分
休憩 10 16:35-16:45
解説 講義 5 16:45-16:50
ワークの振り返り グループワーク 40 16:50-17:30 説明5分、個人ワーク10分、相互FB24分、リーダーシップの探求8分
振り返り 振り返り 個人ワーク
グループワーク
30 17:30-18:00

※備考に記載している時間の合計と時間の数字がズレているのは、備考の時間の前後に説明があったりバッファの時間を考慮しているためです。

【このスケジュールのポイント】

始めに対話を入れて、新入社員自身で社会人について考えてもらいます。これは新入社員のインサイドアウトを促しており、研修への参加意欲が高まります。グループワークの中で参加者同士で気づきを与え合い、そのうえで講師から解説を入れる流れによって、新入社員は誰かに答えを教えてもらうのではなく、自分たちで考えていくことを体験します。

■ 専門スキルのスケジュール例(IT理解研修の場合)

・研修内容:システム開発を依頼する側として、知っておくべきシステム開発のポイントや手順を学ぶ
・研修時間:7時間(お昼休憩1時間、休憩20分含む)
・研修スケジュール

内容 形式 時間 備考
IT人材とは 講義
グループワーク
15 9:00-9:15 なし
システムの違いを知る 講義
グループワーク
25 9:15-9:40
システム活用、開発の手順 講義
グループワーク
20 9:40-10:00 なし
業務の整理と業務改善 講義
グループワーク
30 10:00-10:30 ※休憩10分
システムを活用する 講義
グループワーク
40 10:30-11:10 なし
インターフェース設計を行う 講義
グループワーク
50 11:10-12:00 なし
お昼休憩 60 12:00-13:00 なし
システム化の下準備をする 講義
グループワーク
40 13:00-13:40 なし
実際の開発を行う 講義
グループワーク
100 13:40-15:20 ※休憩10分

【このスケジュールのポイント】

 専門的な内容については、段階を踏んで少しずつできることを増やしていくことがポイントです。一度つまずくとその後の内容を理解することが難しくなるためです。少しずつレベルを高めていくことを意識してスケジュールを設計しましょう。

また、どうしても講義スタイルが多くなるので、適宜学びを確認するための対話や、プロジェクト型のワークを入れるといいでしょう。 

2)新入社員が最大限の学びを得るためのスケジュール作成で意識すること

新入社員が最大限の学びを得るために、スケジュール作成で意識して頂きたいポイントは次の5点です。

① ゴールを意識する
② 全体から具体へ繋げる
③ インプットとアウトプットを連動する
④ 期待と程よい緊張感を持てる
⑤ 適切な休憩がある

詳しく説明します。

① ゴールを意識する

研修を行うことで、新入社員にどうなってほしいかを意識してスケジュールを作成することが必要です。
目的が明確になっていないと、+αで伝えたいことが出てきたときに、研修の中に組み込んでしまい、伝えたいことが分からなくなってしまうということは良く起きます。

当社では、各研修において以下のように要件定義書を作成し、ゴールを意識した研修内容とスケジュールを作成しています。

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このように、研修の目的を意識してスケジュールを作成することがポイントです。

② 全体から具体へ繋げる

新入社員が全体を理解できた上で、詳細を伝えるようにしましょう。詳細を先に伝えられても、部分的に内容を繋げていくことが難しいためです。

例えば、自社について説明するときは、「業界⇒会社⇒部署」の順で話すと新入社員が理解しやすくなります。
スキル系の研修も、始めに何を学ぶかを伝えてから、それぞれの要素を学んでいくという流れで伝えられると、新入社員も何のために学んでいるのかが理解しやすくなります。また、この時に視覚的にも分かりやすい資料があるとより良いです。  ビジネススキル研修テキスト ※ アーティエンス株式会社 ビジネススキル研修資料より抜粋

全体から具体の流れになるように設計することで、新入社員がスムーズに理解できるようにすることがポイントです。

③ インプットとアウトプットを連動する

インプットした情報を使えるようにするためにもアウトプットの時間を設けることが必要です。

分かるとできるは異なります。新入社員の中で、報連相のやり方を理解していても、シミュレーションワークでどう報連相すればいいか分からず、パニックになっていた方もいました。インプットとアウトプットのバランスについて、当社の新入社員研修では、インプットが2~3割、アウトプットが7~8割程度の割合で実施しています。研修のインプットの量にもよりますが、一つの目安として参考にして頂けたらと思います。

インプットした情報を使えるようにするためにもアウトプットとの連動を意識して時間を設けるようにすることもポイントです。  インプットとアウトプット

④ 期待と程よい緊張感を持てる

新入社員の成長を最大限にするために、期待だけ不安だけではなく、両方をバランスよく感じてもらうことが必要です。ポジティブ心理学では、ワクワク8割、不安2割のときに人は成長すると言われています。

スケジュールに落とし込む場合は、例えば、研修で学んだスキルを身につけるとどうなるかを始めに示して期待を醸成させて講義を行い、ワークを通して難しさと改善点を知ることで、期待と程よい緊張感の状態を創ることができます。

当社では、研修の始めに目的を伝えて研修を受けることでできるようになることを提示しています。 ビジネスマナー研修テキスト ※ アーティエンス株式会社 ビジネスマナー研修資料より抜粋

そして研修の最後には、ワークのフィードバックとしてGood pointとNeedimprove pointを新入社員に伝えることで、より良くするためにできることはまだあることを伝え、難しさはあるけどこれから成長していきたいという想いを醸成させていきます。時には、新入社員同士でフィードバックしてもよいでしょう。

このように期待と程よい緊張感を新入社員に与えられるスケジュールをつくることができると、新入社員の成長を促すことに繋がります。

⑤ 適切な休憩がある

新入社員にたくさん学んでほしいことはあると思いますが、詰め込みすぎると処理が追いつかずに学びを最大化することが出来ません。

大人の集中力が持続する時間は平均45分、最長でも90分程度と言われています。
当社でも80-90分ごとに1回は休息を入れるようにしています。
※ オンラインの場合は、状況によっては、一時間に一度とってもいいかもしれません。
研修は、インプットとアウトプットを集中して行うため、休憩時間も考慮した上でスケジュールを作成するようにしましょう。

このようなことを意識して、丁寧にスケジュールを作って頂きたいのですが、研修の場ではスケジュール通りに行うことを目的にしないように注意してください。当日の新入社員の状態に合わせてスケジュールを柔軟に変更することも必要になります。一番の目的はスケジュール通りにやることではなく、新入社員が前向きに研修内容を学び、現場で実践し活躍するためです。

新入社員の当日の様子によってスケジュールに影響が出そうだと予測できる場合は、計画の時点でバッファを持ったスケジュールにしておき、時間が余ったときに何を行うかまでを考えておくと良いでしょう。

当日変更が必要になった場合は、その時の状態によって変えるしかないですが、その際に休憩を全く無くすということは起きないようにしましょう。適度に休憩が無いと、新入社員が集中出来なくなります。また、ワークなどを無くす時は新入社員が理解できる流れになるかということを考えて判断するようにしましょう。 

このようなことを意識することで、新入社員の学びを最大化させる研修スケジュールを作成することができるようになります。

3)まとめ

新入社員研修のスケジュールの流れを立てるのは、新入社員が最大限の学びを得るために重要です。そのため、まずは研修のプロが監修した新入社員研修の配属前のスケジュールと、1日の研修スケジュールについてご紹介しました。

また、新入社員が最大限の学びを得るためのスケジュール作成で意識することについて、5つのポイントをお伝えしました。

スケジュールを作成するときはこれらの点を意識してみてください。

① ゴールを意識する
② 全体から具体へ繋げる
③ インプットとアウトプットを連動する
④ 期待と程よい緊張感を持てる
⑤ 適切な休憩がある

これらのポイントを意識することで、新入社員が最大限の学びを得ることのできる研修スケジュールを作成できるようになります。

新入社員研修のスケジュールを作成するときにぜひ参考にして頂けたら嬉しいです。
良い研修スケジュールをつくることで、新入社員の学びが深まり、成長の促進に繋がることを願っています。

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