若手社員が抱える12の悩みと、その解決策とは│困難を乗り越えて、成長するために

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作成日:2023.1.27

 悩んでいる社員  「最近の若手社員はどんなことで悩んでいるんだろう?」
「若手社員の悩みにうまく対処し、フォローするにはどうすればいいんだろう?」

というお悩みを、人事や管理職、トレーナーの方からよくいただきます。

若手社員の悩みをそのまま放置しておくことはとてもリスクが大きいです。なぜなら、悩みは仕事に対するモチベーションを低下させ、パフォーマンスも引き下げてしまうからです。最終的には離職要因にも繋がる可能性もあります。

そこで本コラムでは、若手社員の悩みをテーマに、下記3つの章にわけて詳しく解説していきます。

1)若手社員によくある12の悩みとは
2)若手社員の悩みに対処する鍵「精神的成長」とは
3)若手社員の「精神的成長」を育むための3つの取り組み

コラムをお読みいただくことで、最近の若手社員が抱えている悩みを理解するとともに、その悩みを対処し、効果的に育成していくためのヒントを得ることができます。

1)若手社員によくある12の悩みとは

若手社員の悩みをまとめると、次の12項目となりました。

① 会社の将来性が不安
② 自分のキャリアが不安
③ やりたい仕事ができない
④ 新しいことに挑戦できない
⑤ 下積み期間が長い・辛い
⑥ 思うような成果が出せない
⑦ 成長実感が持てない
⑧ 職場や会社に馴染めない
⑨ ジェネレーションギャップを感じる
⑩ 上司と相性が合わない
⑪ 正当に評価されない
⑫ 給与・待遇が良くない

上記の悩みについて、一つずつ解説をしていくと共に、悩みの軽減に繋がる解決策をお伝えします。

① 会社の将来性が不安

一つ目は、会社の将来性に対する不安です。
数年同じ会社で働いていると、その会社や業界の状況や今後の展望などをある程度把握できるようになり、「今の会社は、将来的に安定しているのか?」「この業界は、今後成長していけるのか?」という観点で自社について考えるようになります。
特に、コロナ禍前後で社会全体が大きく変容し、先行きの不透明さが増しています。そのため、会社の将来について悩みや不安を抱えている若手社員は少なくないかもしれません。

解決策

会社の現状や今後のビジョン、取り組みについて、若手社員にも丁寧に説明していくことです。その際、一方的にプレゼンを行うのではなく、お互いに対話を行う場を創っていくことが重要なポイントです。若手社員からも気軽に質問したり、伝えた内容に対して感想やモヤモヤを共有し合えることで、不安や悩みの解消に繋がります。

② 自分のキャリアが不安

二つ目は、自分のキャリアに対する不安です。
ある程度その会社で働いていると「この先、どんなキャリアを歩んでいけばいいのか?」や「今の会社だとキャリアイメージが持てない」と考えて、自分の将来に不安を感じることもあるでしょう。日本の人事部の2019年の調査でも、若手社員の離職理由として「自身のキャリアを考えた上で辞めている」という理由が最も多い理由でした。

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※ 出典:人事部白書2019より

解決策

組織として、定期的に自身のキャリアについて考える機会を創ることが大切です。日々の仕事に追われていると自身のキャリアについて考える時間もなく、その結果として、将来やキャリアに漠然とした不安が募ってしまいます。キャリアデザイン研修や上司との定期的な1on1などを活用し、まずはキャリアと向き合う時間をとることが大事です。

例えば、弊社では【「自身のキャリアや成長」と「組織の成長」の繋がりを見出すこと】が、若手社員が自身のキャリアを検討する際には必要な要素であると考え、それらをベースにした階層別フォロー研修を提供しています。

また、自組織のキャリアパスを整え、若手社員へ伝えていくこともあわせて必要です。キャリアパスが不明瞭だと、自社でのキャリアに対する不安要素は高まります。人材戦略や人事ポリシーに基づいたキャリアパスを整備していくこと、そして自組織のキャリアパスについて若手社員へ丁寧に説明していくことが必要です。

参考:新入社員へのアドバイスの仕方|業務改善と、キャリア支援を行う

③ やりたい仕事ができない

三つ目は、やりたい仕事ができないという悩みです。
やりたい仕事ができないと、「仕事がつまらない」「今の仕事に意味を見出せない」と考え、やる気やモチベーションが上がらず、チームや組織全体に悪影響となってしまう場合もあります。

解決策

「やりたい仕事ができない」と感じている若手社員には、自身のありたい姿と今の仕事との繋がりを考えて、意味付けする機会を設けることを推奨します。自身のありたい姿と今の仕事との繋がりを見出せると、仕事に対する認知が変わり、取り組み姿勢にも変化を感じられるようになります。

参考:若手社員によくある離職理由「やりたい仕事じゃない」のフォロー施策とは?

④ 新しいことに挑戦できない

四つ目は、新しいことに挑戦できないという悩みです。
新入社員時代は、慣れるまで大変なことも多かったでしょうが、その分学びや気付きも多い日々だったかもしれません。ただ、入社数年が経って、業務もひと通り経験して慣れてくると、日々の業務においての新しい発見や学びは少なくなります。同じ業務が続くと「今の会社では、新しいことに挑戦する機会がない」と不満を感じる若手社員は少なくありません。

実際、若手社員の転職理由に「この会社でやりたいことはやり切った。もっと新しいことにチャレンジしたいから転職したい」という声も度々お聞きします。

解決策

この悩みについては、「若手社員の挑戦を阻む壁は何なのか?」を改めて探求し、取り組んでいく必要があります。もしかしたら、若手社員自身の問題かもしれませんし、上司側や組織体制として課題があるのかもしれません。

参考:若手社員の挑戦を阻む壁とは?~若手社員の課題と組織の課題から考える~

⑤ 下積み期間が長い・辛い

五つ目は、下積み期間が長い・辛いという悩みです。
「下積み」の捉え方は企業によってさまざまですが、例えば、企画職として採用しているが、入社後数年間は営業職として現場を経験したり、入社後しばらくは上司や先輩のサポート業務をメインに行う等があります。この下積み期間が辛く苦しいものだと、若手社員の悩みの種につながることがあります。

下積み期間は、一人前として活躍していくための大切な経験です。ただし、Z世代ともいわれる近年の新入社員は【最短でキャリアパスを実現したい】という志向が強まる傾向にあり、「下積み」に対する感覚や必要と感じる期間が昔と変わってきています。また、下積み期間を設けている企業側の想いや目的が適切に伝わっていないと、ネガティブに受け止められてしまうことがあります。

解決策

まずは採用時に、下積み期間と内容について丁寧に説明して理解を得ることです。適切に理解できていないと、入社後大きなギャップを感じて早期離職にもなり得ませんので、細心の注意が必要です。 ただ、下積み期間について理解した上で入社をしても、働いているうちに辛さを感じることもあるかもしれません。その場合は、定期的に1on1や面談を行い、現状何が辛いのかをヒアリングします。その上で、若手社員がどんな道に進みたいのかすり合わせながら、今できることを一緒に考えます。

※ 企業によっては、「下積み」という名の雑用をさせているだけのケースもあります。今一度、下積み期間の目的やゴール、企業としての想いなどを再検討することも必要かもしれません。

⑥ 思うような成果が出せない

六つ目は、思うような成果が出せないという悩みです。
「予算が達成できない」「想定よりも業務に時間が掛かってしまう」「同期と比べて成績が悪い」等と悩み、「自分はこの仕事に向いていないのでは?」と考えて、自信を失い不安に陥ってしまう場合もあります。

解決策

まずは、成果が出せていない真因を追及していくことが必要です。根本的な解決策を考えるにあたり、「BigWhy」というフレームワークは有効です。 課題の原因・背景を深掘りすることで、有効な解決策が見えてきます。 ビジネススキル ※参考:当社「ビジネススキル研修」テキストの一部

⑦ 成長実感が持てない

七つ目は、成長実感が持てないという悩みです。
成長している実感を持てなければ、「今の会社にいては成長できないのでは?」「他社で通用しなくなるんじゃないか?」という不安な気持ちが募り、仕事に対する意欲やパフォーマンスの低下にも繋がりかねません。そして、退職も視野に入れるようになる可能性もあります。

解決策

若手社員が成長実感できていない場合の解決策として、2つお伝えします。

・振り返りを丁寧に行う
月1回などの頻度で、若手社員と振り返りを丁寧に行います。過去の経験から何を感じ、どんな変化があったのかを問いかけながら振り返ります。

・こまめなフィードバックを意識する
上司や周囲からすると成長が目に見えるのに、本人は気付けていないという場合があります。第三者視点で、本人の成長や変化をポジティブにフィードバックすることで、前進感が持て、成長実感へと繋がります。フィードバックは、月に1回まとめて伝えるのではなく、気付いた時にその都度こまめに、具体的に行いましょう。

参考:新入社員育成のカギ!フィードバックする時に知っておきたい5つのポイント

⑧ 職場や会社に馴染めない

八つ目は、職場や会社にうまく馴染めないという悩みです。
数年働いていてもなかなか馴染めず、居心地が悪く、社内で孤立を感じてしまうケースです。

特にコロナ禍以降、テレワークや時差出勤が増えて、コミュニケーション量が減った職場も多いと思います。コロナ禍中に入社した若手社員だと、職場の雰囲気を知らぬままにテレワークで働いている社員も少なくないかもしれません。

解決策

まずは、コミュニケーションの機会を意識的に創り、相互理解を深めることが大切です。
例えば、弊社では、下記のような取り組みを継続的に行っています。

・チームメンバー同士で相互インタビューを行い、お互いの価値観や仕事への想いを理解し合う
・定期的に一緒にランチをする。その際は、テーマを決め、それに基づいた対話を行う
・チームメンバー全員に日報を送り合い、日報に対してフィードバックや感想を送り合う

また、これから入ってくる若手・新入社員に対しては、入社後の受け入れ(オンボーディング)を丁寧に行い、組織に馴染むサポートをしていくことをオススメします。

参考:新入社員のオンボーディングで必要な3つのポイントと、効果的なツールの活用法

⑨ ジェネレーションギャップを感じる

九つ目は、他社員とのジェネレーションギャップを感じるという悩みです。
若手社員の場合、自分以外が年上だと委縮してしまい、うまく馴染めないというケースがあります。

解決策

「世代が違うので、価値観や考え方が違う。理解し合えない」と決めつけ、積極的な関わりを避けている、コミュニケーションロスが根本的な要因の場合があります。
前述の「⑧職場や会社に馴染めない」でお伝えした取り組みを検討いただくことを推奨します。

コミュニケーションがとれるようになったら、お互いの共通項を見つけ出したり、世代の違いを逆手にとって、お互いに知らない世界を教えてもらい、会話を楽しむことを心掛けます。大切なのはお互いをちゃんと理解し合おうという気持ちかもしれません。

参考:
管理職に求められるコミュニケーションと、高めるべきコミュケーションスキルとは?
新入社員が抱えやすいコミュニケーションの5つの悩みを徹底解説

⑩ 上司と相性が合わない

十つ目は、上司と相性が合わないという悩みです。
「性格や考え方が合わない」「仕事の進め方が合わない」「一方的に意見を押し付けられる・聴く耳を持たない」など上司に対する不満が募り、放置しておくと離職要因にもなり得ます。

解決策

まずは、若手社員の話を聴いてあげることが必要です。第三者に話すことで感情が整理され、不満や悩みが軽減されることもあるでしょう。その際、若手社員の話が聴き終わったら、もう一人の当事者である上司からも話を聴き、事実を確認することが重要です。

そして、若手社員には、まず自分が変えられる部分に目を向けて取り組んでいくことをアドバイスされてはいかがでしょうか。他者を変えることは難しいですが、自分の意識や行動は自分でコントロールすることができます。自分がどのような理由で上司と相性が合わないと思っているのかを分析し、そのためにどう意識・行動していけばいいのかを検討してみてください。

⑪ 正当に評価されない

11つ目は、自身の評価に対する悩みです。
「自分はこんなに頑張って働いているのに」「他の人よりも成果を出しているのに」と、自身の現状の評価に対して不満を感じていることがあるかもしれません。

解決策

評価制度は会社によって異なるので一概には言えませんが、次の2点は検討いただけるとよいでしょう。

・どのような評価基準で昇給が決まるのかを正しく情報開示する
・納得感と正当性のある評価を行う

たとえ昇給額がわずかであっても、自分の頑張りが認められて、正当性と納得感の持てる評価であれば、次なるモチベーションへとつながっていくことでしょう。

参考:【事例あり】管理職が行うべき目標設定│メンバーが迷わず、やりがいを持つ

⑫ 給与・待遇が良くない

12つ目は、給与・待遇に対する不満です。
前項目の評価とセットで悩みを感じる若手社員が多くいます。「自分の頑張りに対して待遇が割に合わない」や「大学の同期と比べて年収が低い」といった悩みを抱えているケースがあります。現在はネット上で企業の年収事情も簡単に検索できるため、自身の年収と比べて「隣の芝生が青く見える」状態になっていることもあるでしょう。

解決策

こちらも、前項目で挙げさせていただいた2つの解決策をまずは検討いただけるとよいでしょう。

ただ、一点お伝えしたいのが、何の理由も無しに給与は上がっていくわけではないということです。給与を上げるには、それ相応の実績と経験が必要である点は、若手社員にも理解してもらう必要があります。 もし、年収を上げたいという理由で転職を検討している場合には、現職での経験が次の会社の年収アップに繋がることを伝え、まずは今の会社の仕事に集中し実績を積むことをアドバイスします。若手社員が実績を積めるように業務支援をし、その上で現職に留まるのか、転職をするのか本人に選択してもらうよう促しましょう。

参考:新入社員が辞める「5つのギャップ」|入社前・入社後にできる予防策10選

なお「最近の若手社員の特徴とは?効果的に育成を行う4つのポイントも詳しく解説」の特徴の記事では、より詳しく最近の若手社員(新入社員)の特徴をまとめています。育成を行うポイントも解説していますので、ぜひご覧ください。

2)若手社員の悩みに対処する鍵は「精神的成長」への支援

前章では、若手社員が抱えるさまざまな悩みについてお伝えしてきました。
若手社員が能力や知識を高めたり、職場環境を整えることで解決に近づける悩みもあるとは思いますが、悩みの根本的な部分に対処していくためには、若手社員の「精神的成長」を促すことが必要不可欠であると、弊社では考えています。

精神的成長とは「心の成長」のことである

人の成長には、「技術的成長」と「精神的成長」の2種類があるとされています。

技術的成長は、スキルや技術が身に付くことを指します。一方の精神的成長は、物事への意識・捉え方が変わる、価値観や判断基準がアップデートされるなどの内面的な変化を指します。「心の成長」とも呼ばれます。

技術的成長が育まれても、自身の持つスキルや能力を最適に発揮するための土台ともなる精神的成長が育まれていなければ、高いパフォーマンスが発揮できないため、2つの成長は相互に深く影響し合っていると言えます。  「技術的成長」と「精神的成長」 また、VUCAの時代ともいわれる複雑化し変化の激しい現代において、会社が社会の変化に適応して生き残っていくためには、社員一人ひとりが時代の流れを捉えて、自身の価値観や物事への捉え方を適宜アップデートしていく必要があります。その点においても、精神的成長はこれからの時代の人材育成に必要不可欠な観点であると言えるでしょう。

※ 成人発達理論では、「垂直的成長」「平行的成長」とも呼ばれますが、本コラムでは「技術的成長」「精神的成長」で統一します。

なぜ、若手社員の悩みの対処に精神的成長が必要なのか?

若手社員の精神的成長が育まれていくと、次のような状態になります。

・利己的ではなく、利他的に物事を考えて行動することができる
・短期的な視点だけでなく、中長期的な視点で判断できるようになる
・俯瞰的に物事を捉え、おおらかな心で他者と接することができる

例えば、人間関係のトラブルや悩みに対しても、起こっている事象に対して、すぐに感情的にならずに、じっくりと考えてポジティブな側面を見出すことができるため、悩みが解消される可能性が高まります。年収や待遇、将来のキャリアに対する不安や不満に関しても、短期的な視点だけでなく、より中長期的な視点で物事を判断することができるため、不安や不満が軽減される場合もあるでしょう。

精神的成長が育まれれば、前章であげた悩みの数々を悩みと捉えることも減っていきます。

そのため、若手社員の悩みに対する根本的な対処として、精神的成長を育むことが重要であると言えます。

若手社員の精神的成長を促すための3つのポイント

若手社員の精神的成長を育んでいくためには、次の3つのポイントをおさえて、若手社員をサポートしていくことが重要です。

1)内省力を磨く
2)視座を高める・視野を変える
3)自身のあり方やパーパスの質を高める

一つずつ解説していきます。

1)内省力を磨く

一つ目は、自身の内省力を磨くことです。内省とは、自分の考えや言動、行動について深く省みることを意味します。

内省力が磨かれると、これまでの経験の振り返りから、自身の信念や固定概念を見つめて問い直しを行う、より深い内省を行うことが可能になります。深く掘り下げて内省を行うことで、新たな価値観や行動規範が構築されたり、物事に対する捉え方が変わるため、精神的成長に繋がっていきます。

内省力を磨くためには、次の2点を意識的に取り組んで行くことをおすすめします。

・他者と共に振り返ること
自分一人の内省では、見えている世界が広がらず、考えが凝り固まりやすくなります。そのため、他者の支援を受けながら、共に振り返ることを推奨します。

例えば、上司との1on1やチームメンバーとの定期的な振り返りミーティング、同期や社外の人も参加するような研修やワークショップなど、複数且つ多様な人たちとの対話を通して、内省を深めていく機会を設けられるとよいでしょう。

・内省の深さを意識すること
内省の深さには4つのレベルがあると言われおり、そのレベルを一段階ずつ深めていくことを振り返るとよいでしょう。なお、こちらも、自分一人の内省ではレベル2~3で留まってしまうことが多いと言われており、他者からの支援を受けて深めていくことがポイントです。  任意の名前 ※ 出典:熊平 美香氏「リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術」より

筆者が前職で営業職をしていた時の体験談をお伝えします。
前職では毎月1回、上司と1on1を行っていましたが、その1on1の時間がとても苦手でした。なぜなら、上記図でいうところのレベル1~2「今月は目標達成できました。お客様に恵まれていたからです」「今月は未達でした。お打合せのキャンセルが多かったからです」といった具合の振り返りしかできておらず、1on1をする意味を見出せていなかったからです。

そんなある時、上司から「内省の4つのレベル」について教えてもらい「レベル4まで一緒に振り返っていこう」との提案を受けました。それからは、レベルを深めることを意識しながら自分自身と向き合う時間をつくり、上司も私への問いかけを増やしていきました。

取り組んだ当初はや向き合うことへの抵抗感や辛さも感じましたが、3~4か月程経ってからは、自分の考え方の癖や改めて何を大切にしたいのか、が見えてきたり、次月の行動計画が立てやすくなるといった変化が見られてきました。そして、徐々に営業成績にも結びつくようになり、上司との1on1は自身の成長を実感する貴重な時間と思えるようになりました。

参考:1on1ミーティング研修導入ガイド:目的設定から事後フォローまで解説

2)視座を高める・視点を変える

二つ目は、視座を高める・視点を変える機会を提供することです。
前述したように、精神的成長が伴っていない状態だと、自分視点や特定の視点でしか物事を捉えることができません。他者視点で物事を考えられれば、第1章でお伝えした悩みを解消することにも繋がります(そもそも悩むことも少なくなるかもしれません)

例えば、下記のような視点や視座を変える問いを若手社員へ投げかけていけると、精神的成長を促すためには効果的と言えるでしょう。

・中長期的な視点で捉えたらどうか?
・自分が上司の立場だったら、どんなふうに考えるか?
・お客様からすると、どんなふうに見えるか?

3)自身のあり方やパーパスの質を高める

三つ目は、自身のあり方やパーパスの質を高めることです。
具体的には「何のために、どのように働き、そして生きるのか?」といった自身の目指す姿や目的を明確にすることです。あり方やパーパスの明確化は、当人の成長へのモチベーションとなり、精神的成長を促すアクセルとなります。

若手・新入社員の早い段階から、自身のあり方やパーパスを構築する機会を提供していくこと、そして、あり方やパーパスは一度創って終わりではなく、定期的に問い直し、ブラッシュアップしていくことが重要です。経験や環境の変化に応じて、あり方やパーパスも変容をしていきます。その変容に気付くと、自身の成長実感にも繋がります。

こちらも前述の2つと同様に、自分一人ではなく他者の支援を受けながら検討していくことで、より高い効果が期待できます。また、日々の業務とは少し離れて、探求を深めることがより質の高いあり方やパーパスを形成するポイントにもなりますので、研修などの機会を通して取り組むことも有効です。

具体的な取り組み方については、次章で解説します。

3)若手社員の精神的成長を育む3つの取り組み

本章では、前述した精神的成長を育む3つのポイントをふまえた、3つの取り組みについてご紹介します。

① 日頃のフィードバック
② 定期的なフォロー研修
③ チーム単位での対話会

① 日頃のフィードバック

一つ目は、日頃のフィードバックによって、若手社員の精神的成長を育んでいくことです。 フィードバックは日常的に最も取り入れやすく、また効果も高い取り組みだと言えます。

フィードバックは、基本的には次の5つのStepで行います。

【フィードバックの5つのステップ】  フィードバックの5つのステップ新入社員が育つフィードバックとは?基本となる考え方や方法を詳しく解説より抜粋

精神的成長を支援するフィードバックのポイントは、Step4にて、意識的に問いかけを増やし、対話を深めていくことです。筆者はよく、下記のような問いを投げかけます。ご参考いただければ幸いです。

・(当人の技術的成長をフィードバックした上で)それを通して何か変わったことはある?どんな変化を感じる?
・(今後の行動プランや目標に対し)そのことを通して○○さんとしてはどうありたい?
・客観的に見て、今の○○さんはどう見えていると思う?

② 定期的なフォロー研修

二つ目は、精神的成長を支援することを目的としたフォロー研修を行うことです。精神的成長は、複数かつ多様な人たちとの対話やフィードバックを受けることで促されますので、研修は高い効果が期待できます。

例えば、弊社の若手・新入社員向け公開講座では、次の3つの観点をふまえたワークやアプローチを行っています。

ワーク アプローチ
他者からのフィードバックを通して、視点や視座を変えて探求する ・多様性のあるメンバー同士で対話、フィードバックし合う(他社同期など働く環境・経験・考え方が異なるメンバーとの対話で視野を広げる)
          
・自分の思考や行動そのものを対象化して認識するメタ認知を取り入れる
定期的なリフレクションで内省力を高め、日々の仕事に意味付けを行う ・ヒーローズジャーニー等のフレームワークを用い、自身の経験をポジティブに振り返る
          
・個人ワーク、グループワーク、全体共有等の流れで内省を繰り返し、深めていく
上記2点の取り組みを通して、自身のあり方や目指す姿をアップデートしていく ・「組織の中」や「今の枠組み」を飛び越えた、「自身のありたい姿」を想い描く
          
・受講生のインサイドアウト(内発的動機)を促し、ポジティブアプローチを行う

③ チーム単位での対話会

三つ目は、チームメンバーとの対話の場を定期的に創ることです。なぜなら、他者との対話を通して内省が深まったり、他者からの問いかけによって視点や視座が変わることを通して、若手社員の精神的成長にアプローチできるからです。対話のテーマによっては、自身のあり方やパーパスを探求する機会にもなります。

例えば、弊社の社内施策では、下記のチームメンバーと共に定期的に行っています。

組織のパーパス、ミッション、バリューを基にした対話

個人と組織のありたい姿に向けて、お互いの認知や現状を把握することを目的に行っています。現状の組織のパーパス、ミッション、バリューに対して、各々が日頃の業務と結びつけてその意味を探求し、対話していきます。組織のパーパス、ミッション、バリューを通して、自身のあり方やパーパスを問い直す機会でもあります。

四半期の振り返りと自身の成果・貢献を報告し合う会

四半期に一度、業績の振り返りとは別に、自身の行動や意識の変化・成長に焦点を当てた振り返りをチームで行っています。事前に作成した振り返りシートの内容を共有し、他メンバーからコメントやフィードバックを受けます。チームメンバーと共に振り返ることで、新たな視点からの気付きを得たり、自分一人では見えにくい精神的成長を実感するきっかけにもなっています。

上記のような対話の場をより効果的な場にしていくためには、ファシリテーターによる介在が重要かつ不可欠になります。弊社では、社内ファシリテーター育成コースを提供しています。研修の内製化や社内ワークショップ、1on1等でも役立つスキル・知識の習得を目指します。

参考:
プロのファシリテーターに学ぶ!ファシリテーションが上手い人の特徴とは?
ファシリテーターに必要な勉強とは?基礎から応用・実践までを紹介

4)まとめ

本コラムでは、若手社員の抱える悩みと、その根本的な対処法についてお伝えしてまいりました。改めて、本コラムの要点をまとめます。

若手社員によくある12の悩み

① 会社の将来性が不安
② 自分のキャリアが不安
③ やりたい仕事ができない
④ 新しいことに挑戦できない
⑤ 下積み期間が長い・辛い
⑥ 思うような成果が出せない
⑦ 成長実感が持てない
⑧ 職場や会社に馴染めない
⑨ ジェネレーションギャップを感じる
⑩ 上司と相性が合わない
⑪ 正当に評価されない
⑫ 給与・待遇が良くない

若手社員の悩みに対処する精神的成長を育む3つのポイント

1)内省力を磨く
2)視座を高める・視野を変える
3)自身のあり方やパーパスの質を高める

若手社員の精神的成長を育む3つの取り組み

1)日頃のフィードバック
2)定期的なフォロー研修
3)チーム単位での対話会

本コラムでお伝えした若手社員の悩みというのは、あくまで一例であり、若手社員自身の価値観や置かれている環境によって、変わってくるものです。

このコラムを読んでいる皆さん自身も、若手社員の頃、さまざまな悩みを抱えていたのではないでしょうか?
是非、皆さん自身が若手社員だった時のことを思い出しながら、

・どのように悩みや困難を乗り越えていったのか?
・上司・先輩からのどんなアドバイスやフォローが嬉しかったか?

といった点をふまえて、今の若手社員をサポートしていただければと思います。
そして、アーティエンスでは、そんな若手社員の成長と活躍を真摯に願い、日々お客様と共に人材開発・育成に取り組んでいます。若手社員育成についてお困りの際は、お気軽にお問合せください。