2023/1/20作成ー
ファシリテーションを行うときに活用するグランドルールは、とてもパワフルなものです。 ただし、上手く活用できていないケースもあります。
例えば、
「グランドルールを説明したけど、守ってくれない」
「いつも同じグランドルールなので、マンネリ化している」
などがよくあるケースです。
このような状況に陥るのは、グランドルールを盲目的に使っていることが多いためです。ファシリテーション研修やファシリテーションの本で、OARR(※)を学び、グランドルールを用いているというケースが多いのではないでしょうか。もちろん、OARRを用いてファシリテーションを行うことは、基礎中の基礎になりますので、とても大切です。
ただし、何のために、「グランドルールを使うか」を知り、そして「グランドルールをどのように作るか」を知っておく必要があります。本コラムを最後までお読みいただくと、ファシリテーターとしてグランドルールを使いこなせるようになります。そして、グランドルールがただのツールではなく、会議やワークショップの場が素晴らしいものになるための味方になっていくでしょう。
ぜひ本コラムを通して、ファシリテーションにおけるグランドルールを知っていただければと思います。
※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋
目次
ファシリテーションにおけるグランドルールの役割とは、ファシリテーターが場をホールドし、場の質を上げるためのものです。グランドルールがあることで、会議やワークショップに参加される方のマインドセットになりますし、またグランドルールから対話・議論が外れたときにファシリテーターがグランドルールをもとに介入し、場をホールドしやすくなります。
例えば、当社がよく活用するグランドルールで、「沈黙を恐れない(※)」というものがあります。これがあると、参加者は「沈黙が悪い」というわけではないという認識になり、焦って発言する必要はなくなります。
また「一人の人が話し過ぎない」というルールも、当社ではよく活用します。このルールがあることで、一人の人が発言量が多く、その人の独演会になっているようであれば、ファシリテーターからそれとなくグランドルールを再提示することで、参加者の発言量の調整を行います。
ファシリテーターが場をホールドし、場の質を上げるためにも、グランドルールはとても重要な役割を担います。
「学習する組織 入門」の著者である小田理一郎氏は、「場の質」が「成功循環モデル」に影響していることに言及しています。下記図は、「場の質」が高まることで、「思考の質」が上がり、「行動の質」も上がり、「結果の質」も上がるという考えです。 ※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋
このように、場の質を上げていくことはとても重要であり、ファシリテーターは早い段階で場の質を上げていくことを意識する必要があります。グランドルールは、場の質を上げるためのアプローチの一つです。
沈黙は悪ではありません。内省している場合は、発言はなかなか出ませんし、勇気のある発言を出すための準備時間でもあります。無理やり議論・対話の場を活性化させる方が、実は議論・対話の質を下げることになります。話すことが目的になり、本音が出なかったり、上司など権力者が求めている発言をしないといけないという文脈になりがちになります。
例えば、あるメーカーさまで、若手社員研修(25名程度)でワークショップを行った際、全体ダイアログで長い沈黙が訪れました。その時に、とても大人しい若手の女性社員が声を震わせながら、自分の考えていることを全体にシェアしました。ワークショップの後日談として、その若手の女性社員の上司から、人事にお礼のメールが来たそうです。「会議で発言するようになった」ということでした。ワークショップでの発言が、彼女にとっては、大きな成功体験になったのかもしれません。このようにファシリテーターは、沈黙も大切に扱う必要があります。
ファシリテーションにおけるグランドルールは、丁寧に作っていくことが重要です。グランドルールは、会議・ワークショップの目的・目標を達成するための心強い味方になるため、その会議・ワークショップにあわせた内容にする必要があります。参加者同士の関係性を高めるためのワークショップのグランドルールと、経営会議において意思決定をするためのグランドルールでは異なったものになるでしょう。
グランドルールの具体的な作り方としては、下記のようなプロセスを踏んでいくといいでしょう。
グランドルールを作成するとき、実際に参加者や依頼者の表情をイメージしながら考えていくといいでしょう。会議・ワークショップの場が目的・目標を達成していくケースと、会議・ワークショップの場が目的・目標を達成できないケースをイメージすると、よいルールが創れます。
例えば、部門間の会議で部分最適になることが多いとイメージできれば、「部分最適ではなく全体最適を考える」というルールを入れるとよいでしょう。当日の会議の場で、部門間の対立が激しくなり、部分最適の発言が多くなっているのであれば、ファシリテーターが「部分最適ではなく、全体最適というルールを忘れないようにしましょう」と伝えることができます。このようにグランドルールを丁寧に作ることで、場をホールドすることが可能になります。
理由は、指示命令の言葉を使いすぎると、参加者は指示を待ち、受け身になります。指示命令の言葉を可能な限り使わないことで、受動的な姿勢を持たせないようにしていくことが重要です。
例えば、「否定的な意見は禁止」という指示命令ではなく、「自分の考えにこだわらない。断定的な言い方をしない。」という状態を表す表現方法が、参加者も受け止めやすくなります。
このようにファシリテーターは、グランドルールの言葉の表現一つでさえ、大切に丁寧に扱っていく必要があります。
※ もちろん指示命令の言葉を使う必要がある場合もあります。場をホールドするために、必要な時は指示命令の言葉を使いましょう。ただし多用は厳禁です。
ファシリテーションにおけるグランドルールの扱い方として、「ルールがなぜ大切か」を伝えることがとても重要です。グランドルールが、大切なものだという認知になると、グランドルールを守ります。そして、対話・議論の場の質が高くなっていきます。
具体的には、ファシリテーションをするルール説明の際に、丁寧に説明することが必要です。ルールをただ読み上げるのではなく、可能な限りそのルールの説明をします。
例えば、「沈黙を恐れない」というルールを説明する際は、下記のように説明するといいでしょう。
「『沈黙を恐れない』。沈黙は、悪ではありません。お腹の中で考えている場合もありますし、考えをまとめている最中かもしれません」この程度で構わないので、「なぜそのルールが必要か」を説明します。「ルールをただ読み上げるだけ」、「ルールを見ておいてください」は、NGです。その時点でルールの扱い方が軽くなります。
「ルールがなぜ大切か」を伝えること、そしてルールに対して参加者全員が理解・納得し、大切に扱っていくことが重要です。
当社がよく使うファシリテーションにおけるグランドルールの事例を、2つ紹介します。
それぞれ事例をあげて、説明していきます。
意思決定が発生する場合は、力強く物事を前に進めていくことが重要です。お互いの状況に配慮しながらも、時には衝突を乗り越えて、コミット高く物事を前に進める必要があるためです。
当社では、下記の内容を会議の目的・目標に応じて、カスタマイズしていきます。
意思決定が発生する会議で活用するグランドルールでは、力強く物事を前に進めていくルールにする必要があります。
対話を深めていく場合は、正解探しをするのではなく、探求を深めていくことが重要です。~お互いの違いを認めることで、自身と仲間の認知を広げ、深い内省が可能になり、時には生成的なアイディアも生まれます。
当社では、下記の内容をワークショップの目的・目標に応じて、カスタマイズしていきます。
当社が活用する会議とワークショップの代表的なグランドルールをご紹介しました。
ぜひ、みなさんの会議やワークショップのグランドルールの参考にしていただければと思います。
本コラムでは、ファシリテーションのグランドルールに関して、下記3点をお伝えしました。
・ファシリテーションにおけるグランドルールは、丁寧に作っていくことが重要です
・ファシリテーションにおけるグランドルールの扱い方として、「ルールがなぜ大切か」を伝えることが重要です
本コラムを読んでいただき、グランドルールがただのツールではなく、会議やワークショップの場が素晴らしいものになるための味方になっていくことを理解していただけたはずです。事例なども参考にしながら、ファシリテーターとしてグランドルールを使いこなしていただければと思います。
当社は、ファシリテーター育成コースもご用意しておりますので、ご興味があれば、ぜひご連絡ください。