最近の若手社員の特徴とは?効果的に育成を行う4つのポイントも詳しく解説

更新日:

作成日:2023.9.22

 若手社員 PCをさわっている  「最近の若手社員は、どのような接し方がよいのか分からない…」
「若手社員とは考え方のギャップが大きく、関係構築が難しい…」

若手社員育成に取り組む人事や管理職、トレーナーの方々からよくお聞きするお悩みです。

「Z世代」とも呼ばれる近年の若手社員。世代によって価値観や仕事への考え方が異なり、コミュニケーションの取り方などに悩む方も少なくありません。

そこで本コラムでは、調査データや若手社員向け研修の場であった事例などを基に、最近の若手社員の4つの特徴と、特徴をふまえて効果的に育成するためのポイントを解説いたします。

お読みいただくことで、若手社員の特徴について理解を深め、若手社員のさらなる成長支援について考えるきっかけとなれば幸いです。

※本コラムでお伝えしている特徴が、全ての若手社員に当てはまるわけではありません。決めつけることはせず、若手社員と接する際の参考情報としてご活用ください。

執筆者プロフィール
近藤 ゆみ
アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。
youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

専門性:新入社員・若手社員、採用・育成

1)若手社員の4つの特徴

現代の若手社員たちは、以下の4つの特徴を持っています。

1)会社よりも、社会・世の中・自分のために働きたい
2)失敗は避けたいが、成長意欲が低いわけではない
3)1社に囚われない意識が強く、自分なりの働き方を模索
4)情報処理能力やサーチ力が高い反面、周囲を巻き込むことは苦手

次章より、一つずつ解説をしていきます。

1)会社よりも、社会・世の中・自分のために働きたい

一つ目の特徴は、「会社・組織よりも、社会・世の中・自分のために働きたい」という意識が強いことです。

2022年に実施された一般財団法人 エン人材教育財団「仕事価値観及び キャリア満足度に関する 年代別調査」によると、仕事の価値観において、20代は他の世代よりも「人や社会の役に立つために働きたい」と考える割合が多いことが分かりました。
また、一般社団法人 日本能率協会が2020年に行った「新入社員意識調査 報告書」では、「あなた自身の働く目的は何ですか。お金を得ること以外でお答えください」という問いに対して、

・「仕事を通じてやりがいや充実感を得ること(52.8%)」
・「自分の能力を高めること(42.3%)」
・「社会の役に立つこと(34.5%)」

という回答が上位を占める一方で、

・「会社の役に立つこと(15.3%)」

という結果でした。以上のことから、若手社員は、社会や世の中に対する貢献意識が強く、自身のスキルアップや成長に対して意欲的である一方で、会社に対する貢献意識はそこまで強くなく、その点において他世代とのギャップが生まれている可能性が考えられます。

昨年、入社3~6年目社員を対象に若手社員フォロー研修(公開講座)を実施させていただいた時の出来事です。

『自社への貢献』について探求するワークを実施した際、とある受講生が「今まで『自社のために』という視点で物事を考えたことがなかったからすごく新鮮だった」と発言し、他受講生も「確かに。考えたことなかったよね」と話していました。本公開講座は、10年近く毎年実施していますが、このようなコメントがあったのは初めてのことでした。(コメントした受講生もワークに対しては真摯に取り組み、研修後は、新たな気付きを得られたとの回答がありました)

前述した内容は、「最近の若手社員は、自社への貢献を全く考えていないからダメだ」ということを伝えたいのではなく、近年の若手社員は、テレワーク等で組織やチームメンバーとの繋がりを感じにくくなっており、仕事を個人的なものとして捉える感覚が従来よりも強まっているのではないかと考えています。

仕事を通じた社会や世の中への貢献意欲や自己成長へのモチベーションが高い一方で、「組織に対する貢献」という意識は希薄化しているため、管理職や先輩社員からは「やる気がない」と思われてしまったり、ギャップが生じている可能性があります。

2)失敗は避けたいが、成長意欲が低いわけではない

二つ目の特徴は、失敗はできる限り避けたいが、成長意欲が低いわけではないという点です。

株式会社日本能率協会マネジメントセンターが、2020年~2021年入社の新入社員を対象に実施した「イマドキ新入社員意識調査2021」によると、全体の79.0%が「失敗したくない」と回答しており、他世代と比較して高いことが報告されています。

「失敗したくないと考える傾向が強いのであれば、成長したいという意欲も低いだろう」と考えがちですが、若手社員の成長意欲は低くない、むしろこれまで以上に高まっている傾向も考えられます。

まず、一つ目の特徴として前述したように、若手社員は「自分の能力を高めること」に意欲的であることが分かっています。
また、日本の人事部白書2019によると「辞めていく若手社員の傾向」として「自身のキャリアを考えたうえで辞めている」ことが全体で最も高いことが報告されています。これはつまり、若手社員にとっては、自身の成長やキャリアアップに繋がることを、働く上で極めて重要視しているとも言えます。

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【出典】日本の人事部白書2019

こんなデータもあります。パーソル総合研究所が2022年に行った「働く10,000人の就業・成長定点調査」では、20代前半の学習・自己啓発実施率が、過去5年間で微増傾向にあり、他年代と比べて最も高い結果であったと報告されています。

上記調査データから、最近の若手社員は成長意欲が高く、自己研鑽も積極的に行っている傾向にあると言えるでしょう。その背景としては、コロナ禍以降、自宅で一人で過ごす時間が増えたことや、生まれ育った時代がずっと不景気続きであり、将来的な不安からという点もあるかもしれません。

以上のことから、若手社員の傾向として「失敗は避けたいものの、成長したいという意欲が低いわけではない」ということがいえるでしょう。

参考:「成長するには失敗は付き物?」考え方から生じるギャップ

株式会社ジェイックが2020年に行った「若手社員(20代/新卒含まず)の育成実態と課題」では、人事担当者が「若手社員に期待していること」として「失敗を恐れずに挑戦すること」と60.9%が回答をしています。

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【出典】若手社員(20代/新卒含まず)の育成実態と課題

これは「(失敗を恐れずに挑戦することが)若手社員にとっての成長につながるから」という考えを持っているからだと思います。 若手社員より年齢が上の管理職や先輩社員ほど、このような「失敗から学ぶ」「まずは行動が大事」という考え方を持っている方が多いのではないでしょうか。

◆若手社員:成長したいし、学ぶ意欲もある。でも失敗はできるだけ避けたい。
◆上司・先輩や人事担当:成長するためには、失敗することも大事。

という、それぞれの考え方の違いが見えてきます。 そのため「最近の若手社員は、失敗を恐れて全然挑戦しない。成長意欲が低いのではないか?」という認知になってしまっている可能性があります。

3)1社に囚われない意識が強く、自分なりの働き方を模索

三つ目は、1社に囚われない意識が強く、自分なりの働き方を模索しているという特徴です。

パーソル総合研究所が2022年に行った「働く10,000人の就業・成長定点調査」によると、会社を辞めて独立したい人の割合は、男性20代前半で最も高く、2017年は20%に対し、2022年に31%と上昇していることがわりました。

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【出典】働く10,000人成長実態調査2022~20代社員の就業意識変化に着目した分析

また、20代前半は他年代と比べて転職に対するイメージがポジティブに変化しており、「転職を積極的にしていくほうがよいことだ」と捉えている20代前半社員は78%に昇っています。

従来の日本社会では、終身雇用制や年功序列が成立していましたが、近年では廃止する企業が増えています。そのような社会の動きや調査結果からも、近年の若手社員は転職についてあまり抵抗を持っておらず、新卒で入った企業に定年まで勤め上げるという意識も薄くなっていると言えます。

その一方で、同調査によると、20代の転職意向・転職回数はともに2017年からほぼ横ばいで推移しており、実際に転職する若手社員が増加しているわけではないという調査結果も出ています。近年は副業・兼業を解禁する企業も増えており、すぐに転職という決断ではなく、自分らしい働き方を情報収集しながら模索している若手社員が多いとも言えるかもしれません。

参考:コロナ禍で転職者数は減少するも、転職希望者は増加

総務省「労働力調査」によると、下記のような調査結果が出ています。

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※ 四半期ベースの数値
※ 総務省「労働力調査」を基にアーティエンスにて作成

上記グラフの内容を簡単にお伝えすると、次のことがわかります。

◆実際に転職する人:減少傾向にある
◆転職していないが、転職を希望している人:増加傾向にある

コロナ禍直後の企業の先行きや不安から求人量が減り、実際に転職する人は減少しています。ただ、その一方で、転職はできていないが転職を希望している人は増加しています。この状況が進むと「求人量が増えたタイミングで、転職希望者は転職をする可能性が高い」という仮説が考えられます。
本調査は、若手社員に限定した調査結果ではないため、一概には言えませんが、若手社員は他世代と比較しても転職に対する抵抗感は薄いため、離職防止に向けた取り組みはより一層不可欠なものと言えるでしょう。

【あわせて読みたい】
新入社員が辞める5つの理由を徹底解説!早期退職が改善される対処法10選

4)情報処理能力やサーチ力が高い反面、周囲を巻き込むことは苦手

四つ目の特徴は、「情報処理能力やサーチ力が高い反面、周囲を巻き込むことに苦手意識がある」という点です。これは、若手社員が育った時代背景から言える特徴です。

現在の若手社員は、「デジタルネイティブ世代」とも言われ、物心ついたころからパソコンやスマートフォン、インターネットなどに触れる機会が多く、分からないことがあったらまずはネットで検索することが当たり前の時代で育ちました。そのため、膨大な情報からキーワードを抽出し、正解を見つけ出すことが得意であると言えます。

上記の強みとも呼べる特徴がある一方で、正解は自分の外にあるものと考えているという特徴もあげられます。ビジネスや仕事においては、正解がないことがほとんどでしょう。そのため、上司や先輩に相談しながら、仮説立てと検証を繰り返し取り組んでいくことが、仕事を進めていくうえで若手社員には期待されています。ただ、「検索すれば正解が見つかる」という時代環境で育ってきた若手社員としては、自分の外側に正解があると考え、上司や先輩の中にある正解を探すという色合いや、正解を与えられるのを待つという受け身姿勢が強くなっています。

また、前述した株式会社日本能率協会マネジメントセンターの「イマドキ新入社員意識調査2021」では、若手社員の77.7%が「他人からの評価が気になる」と回答し、他年代よりも強く他人からの目線を気にしていることが報告されています。他人からどう思われているのかを気にするあまり、上司・先輩へ報連相ができなかったり、助けを求められないなど、周囲を巻き込むことへの苦手意識が強まっているとも言えます。

以上のことから、最近の若手社員の傾向として、情報処理能力やサーチ力に長けている反面、自分一人で何とか正解を探そうとする意識が強く、周囲を巻き込むことへ苦手意識が強いと言えるでしょう。

実際、弊社が若手・新入社員向けに実施しているパルスサーベイ Growth(※)のフリーコメントでも、次のようなコメントが若手社員からあがっています。

・遠慮してなかなか相談ができず、進行がゆっくりになってしまうことは申し訳なく思う
・先輩に相談をしに行った際、時間を取らせてしまっていることで先輩の作業に遅れが出てしまうことは申し訳なく思う
・自分一人でどうにかしようと思い、ミスしてしまうことが多いとわかった。自分の仕事を誰かに頼むのは良くない、申し訳ないと思っていたが期限に間に合わないのであればもっと相談すべきだった

※ Growthとは:若手・新入社員を対象に、月1回実施しているパルスサーベイ。9つの設問と1つのフリーテキストから成る。詳しくは、こちらをご覧ください。

「上司や先輩への相談は相手にとって迷惑になるかもしれないし、「そんなこともわからないのか」と思われるのが怖い。だったら、自分で調べてやってしまおう」と考えて、なかなか周囲を頼れない状況に陥っている若手社員が少なくないことがうかがえます。

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    2)若手社員の特徴をふまえた育成のポイント

    前章では、若手社員の4つの特徴についてお伝えいたしました。本章では、若手社員の特徴をふまえて、若手社員育成をより効果的に行っていくための4つのポイントをご紹介します。

    1)周囲への貢献の認知や仕事への意味付けを行う
    2)失敗を再定義して挑戦しやすい環境を構築する
    3)従業員エンゲージメントを醸成する
    4)周囲への巻き込み力を強化する

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    1)周囲への貢献の認知や仕事への意味付けを行う

    一つ目は、周囲への貢献を認知したり、自身の仕事への意味付けを行うことです。
    若手社員は、社会や世の中への貢献や自身の成長を、働く上で大切な要素として捉えています。ただ、日々の業務に精一杯だと、自分の行っている仕事が社会や世の中にどのように貢献し、自身の成長に繋がっているのかが見えなくなってしまいがちです。

    そのため、定期的に自身の仕事の意味や目的、周囲への貢献度合いを確認したり、自身の成長を実感する機会が、若手社員育成には不可欠になります。具体的には、次の2つを行っていただくことを推奨します。

    自身の業務や役割が周囲へどのように貢献しているのか認知する

    若手社員の日々行っている業務が、共に働くメンバーや社会・組織に対してどのような貢献をしているのか認知します。周囲への貢献を認知することで、さらなる意欲向上へと繋がります。業務上の貢献はもちろんのこと、若手社員自身の存在や役割が、周囲や組織にとってどのような貢献に繋がっているのか、を認知することもとても重要です。

    例えば、アーティエンスの若手フォロー研修では、研修前の事前ワークとして、上司・先輩・顧客等に対して20分程度のインタビューを実施しています。インタビューを通して、若手社員のどのような取り組みが助けになっているのかや、今後若手社員にどのような期待をするのか等伝えます。普段は言いにくい感謝の気持ちや期待などを伝え合うことができます。

    複数名で振り返り、仕事の目的や意味を再認識しながら成長実感へと繋げる

    自身の仕事の目的や意味を再確認したり、成長を実感するためには、振り返り(内省)が重要です。その際は、若手社員一人ではなく、チームメンバー等複数名で一緒に振り返りを実施することを推奨します。複数名で振り返りを推奨する理由は、次の三つです。

    一つ目は、個々人のさらなる成長促進のためです。他メンバーに自身の振り返りを共有するためには、言語化する必要があります。言語化する過程で、さらに内省が進みます。また、振り返りの内容に対して、お互いに質問や感想を伝え合うことで、新たな気付きが得られるかもしれません。

    二つ目は、相互理解によるチームの関係性向上のためです。日々どんな仕事を・どのように・どんな想いを持って取り組んでいるのか共有し合うことで、メンバー同士の相互理解が促進されます。若手社員の仕事に対する想いや背景を理解し合えると、仕事の頼み方やコミュニケーション方法にも変化があるかもしれません。

    三つ目は、チームとしてのノウハウの蓄積・暗黙知の解消のためです。若手社員は、上司・先輩と比べると業務知識や経験が多くはありません。共に振り返りを行うことで、上司・先輩の取り組みや工夫を知る機会にもなりますし、若手社員がどんな点につまずいているのか把握するきっかけにもなります。

    例えば、弊社では3か月に一度チームメンバー全員で振り返りを行っています。業績というよりも、自身の経験や行動をベースにそこからの学び・気付きを中心とした振り返りです。また、チームメンバー以外では、他社同期同士で振り返り、対話を深めていくことも効果的です。普段、交流の少ない他社の同期同士で振り返りを共有し合うことで、視野・視点が広がる成長機会になります。

    2)失敗を再定義して挑戦しやすい環境を構築する

    二つ目は、若手社員の失敗を再定義して挑戦しやすい環境を構築することです。若手社員は成長意欲は高いものの、失敗を恐れて、なかなか挑戦できないという傾向があります。そのためまずは、失敗を許容できる風土を構築していくことが重要になります。

    具体的には、次の3つのポイントを意識します。

    1)失敗の種類を定義し、挑戦による失敗は賞賛に値することを共有する

    一つ目のポイントは、失敗の種類を定義し、挑戦による失敗は賞賛に値することを共有することです。エイミー・C・エドモンドソン氏の「チームが機能するとはどういうことか」によると、失敗には次の9つの種類があるとされています。

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    【出典】エイミー・C・エドモンドソン 「チームが機能するとはどういうことか」 

    上記図からもわかるように、挑戦しての失敗は「賞賛に値する失敗」の種類に近いものと言えるでしょう。前述したように、若手社員は失敗を過度に避け、特に仕事においては失敗してはならないと強く感じていることが珍しくありません。なぜならば、他者からマイナス評価を受けることや周囲に迷惑を掛けることを嫌う傾向が強いためです。

    しかし、上司や組織からすれば、若手社員が新しいことに挑戦すれば、失敗したり最初から上手くいかないことは想定内のはずです。そのため、まずは「挑戦しての失敗は、賞賛に値するものである」と若手社員に伝えておくことが重要です。失敗の種類の定義は、チームや組織単位で共有し、若手社員が受ける日々のフィードバックとの差異が生じないようにしておくことも大切です。

    2)こまめにフィードバックを行い、共に進めていく姿勢を持つ

    二つ目のポイントは、こまめにフィードバックを行い、共に進めていく姿勢を持つことです。なぜなら、上司や周囲も一緒になって取り組んでいる・挑戦している姿勢があると、若手社員も失敗に対する恐怖心が軽減され、挑戦しやすくなるからです。

    若手社員としては、全て終わった後に何か言われても「もっと早く言ってほしかった」となってしまいます。特にそれが失敗してしまったことであれば尚更のことです。そのため、こまめにフィードバックを行い、時には承認し、時には改善のアドバイスをして軌道修正を図りながら、若手社員の取り組みをサポートします。そうすることで、若手社員も安心感を持って挑戦ができるようになり、失敗も受け止められるようになります。

    3)心理的安全性も目標への意識も高い「ラーニングゾーン」を目指す

    三つ目のポイントは、「ラーニングゾーン(Larning Zone)」を目指すことです。ラーニングゾーンとは、心理的安全性も目標への意識も高い職場や組織の状態です。(下記図では右上に位置) ラーニングゾーンでは、チームが一枚岩になって目標への意識を持ち、目標達成に向けてより良くしていくための意見交換などが活発化していて、社員の挑戦意欲も高い状態になります。

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    ※通常、横軸は 「目標への責任」という表現をされますが、分かりづらさもあることから、弊社では「目標への意識」としています。

    心理的安全性と目標への意識、どちらか一方のみ高い状態では、挑戦意欲が湧かずやらされ感を持ったり、継続的に挑戦しづらい状況となったり、健全な状態とは言えません。

    ラーニングゾーンへの移行に向けては、次の2点を意識的に取り組んでいただくことを推奨します。

    ①心理的安全性を高めるための一歩として、上司の心理的柔軟性を養うこと
    職場の心理的安全性を高めるためには、個人、特に管理職や上司の「心理的柔軟性」を高めることが重要であると言われています。心理的安全性と心理的柔軟性の違いを簡単に説明すると、下記図の通りになります。(分かりやすくするため弊社にて再定義しています)

    定義 概念
    心理的安全性 メンバー同士が自然体で、恐れることなく意見を伝え合い、より良くするための意識行動ができる状態 チームの状態を表すもの
    心理的柔軟性 自身の大切な価値基準に基づいて、今できることに対して最大限の注意を払い、行動を取ること 個人の能力を表すもの

    ②適度なストレッチ目標を設定し、目標達成に向けたサポートを行うこと
    若手社員の目標への意識を高めるために、適度なストレッチ目標を設定することもポイントです。 ストレッチ目標とは、その人のスキルや能力よりも少し高いが、工夫すれば手が届きそうな難易度の目標です。難しすぎる目標だと、達成へのモチベーションを維持できません。
    ちょうどいいレベルを幹分けるためには、若手社員のことを日頃からよく観察しておくことが重要です。 また、目標を設定後、若手社員に対するフォローが何もなければ、ラーニングゾーンで頑張り続けることは難しいです。
    若手社員の状況を見ながら、フィードバックや時に励ましながら、目標達成に向けた支援を定期的に行っていきます。

    3)従業員エンゲージメントを醸成する

    三つ目は、若手社員の従業員エンゲージメントを醸成することです。
    エンゲージメント調査の草分け的存在であるウイリス・タワーズワトソン社によると、従業員エンゲージメントとは「従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」と定義されています。

    若手社員の従業員エンゲージメント醸成に取り組む理由は、次の2つです。

    ・帰属意識を育み、組織への貢献意欲を高めるため
    ・若手社員の離職防止のため(従業員エンゲージメントが高まると、離職率が下がるという研究結果がある)

    従業員エンゲージメントを高めるための施策を2つご紹介します。

    1)社内コミュニケーションを見直し、若手社員の主体性を育む

    一つ目は、社内のコミュニケーションを見直し、若手社員の主体性を育むことです。 社内コミュニケーションが活性化すると、周囲とも良好な関係性が構築でき、若手社員も自身の考えや想いを伝えやすく、主体的な行動が増えます。社内コミュニケーション見直しに向けて、下記一例をあげます。

    ◆チェックイン・チェックアウトの導入
    会議や朝礼などを行う際、開始時と終了時に参加者全員が「今の率直な気持ち・気になっていること」を伝え合うというものです。
    若手社員は、他者からの評価が気になり、「自分の意見が否定されたらそうしよう」という気持ちから、なかなか発言できないことが多くあります。チェックインで一度話すことで、発言のハードルが下げることができます。また、自身の状態を周囲に共有できるため(例「朝から少し体調が悪い」)、必要に応じてフォローし合えます。

    弊社では、会議や朝礼はもちろん、オンラインランチやお客様とのお打合せでも導入しています。新規メンバーも「最初は戸惑ったが、自分の意見に耳を傾けてくれる経験ができ、安心して発言できるようになった。」と話していました。

    ◆ポジティブフィードバック
    日々の業務の中で、ポジティブフィードバックを意識することも大切です。若手社員は「自分が周りからどう思われているか」が気になる傾向が強いため、ポジティブフィードバックを通して承認してあげましょう。

    【参考コラム】
    新入社員が育つフィードバックとは?基本となる考え方や方法を詳しく解説

    2)自身のキャリア・自組織の成長の統合を考える機会を持つ

    二つ目は、自身のキャリア・自組織の成長の統合を考える機会を持つことです。

    自身のキャリアや成長が見えても、自組織の成長が見えなければ、社外に目が向き、退職という道を選ぶ可能性が高まります。その一方で、自組織の成長は見えても、自身のキャリアや成長が見えなければ、自身の存在が認められず、自組織での居場所はなくなってしまいます。そのため、「自身のキャリアと自組織の成長を統合・癒合する」ことが重要です。

    例えば、弊社の若手フォロー研修では、若手社員に「自身がどうありたいか」を探求し、その後、組織の方針と統合・癒合していくというプロセスを踏んできます。ここでのポイントは、組織ではなく、自身のありたい姿を先に描くということです。組織としてのビジョンを伝えた後、そのビジョンの中で自分はどうあるかを探求するプロセスだと、決められた枠組みの中で考えることに反発が起き、エンゲージメント向上には逆効果になる場合があります。

    自身のありたい姿と組織の方針・ビジョンが統合・癒合されると、若手社員のエンゲージメントが育まれ、仕事への情熱も高まります。

    4)周囲への巻き込み力を強化する

    四つ目は、若手社員の巻き込み力(※)を強化することです。

    ※巻き込み力:「周囲に主体的に働きかけられる意識とスキル」と弊社では定義。

    なぜなら、若手社員は、周囲へ助けを求めたり相談することに苦手意識を持つ傾向が強いためです。巻き込み力を高められれば、全うに周囲に助けを求めたり相談することができ、仕事のパフォーマンスが向上し、若手社員自身の成長にも繋がります。

    例えば、アーティエンスの巻き込み力研修は「『周囲を巻き込み、成果を出す』楽しさを実感し、自身の強みの活かし方、課題との向き合い方を学ぶ」ことを目的に提供しています。講師2名がそれぞれ上司役・お客様役、受講生が部下役となり、商談シミュレーションのワークをほぼ終日かけて行います。その過程で、仕事は一人では完結できない。周囲に積極的に働きかけることで、より良いアウトプットに繋がる経験をします。

    研修成功事例集

    3)まとめ ~若手社員の特徴に合わせた育成を行い、成長を支援しよう~

    「Z世代」とも呼ばれる近年の若手社員の育ってきた環境や調査データから、以下のような特徴があることがわかりました。

    1)会社よりも、社会・世の中・自分のために働きたい
    2)失敗は避けたいが、成長意欲が低いわけではない
    3)1社に囚われない意識が強く、自分なりの働き方を模索
    4)情報処理能力やサーチ力が高い反面、周囲を巻き込むことは苦手

    上記4つの特徴をふまえ、若手社員育成をより効果的に行っていくための4つのポイントもご紹介させていただきました。

    1)周囲への貢献の認知や仕事への意味付けを行う
    2)失敗を再定義して挑戦しやすい環境を構築する
    3)従業員エンゲージメントを醸成する
    4)周囲への巻き込み力を強化する

    「最近の若者は…」とついつい口にしてしまうことも多いのではないでしょうか。(とある文献によると、約5000年前の古代エジプト時代でも使われていたフレーズなんだとか) でも、最近の若手社員に限らず、育ってきた環境や時代背景が違えば、異なる価値観や考え方になるのは当り前のことです。

    そして、価値観の異なる人との関わりは、自分自身の価値観の幅が広がり、成長するきっかけにもなります。「自分たちはこうだったから、こうあるべき」と押し付けるのではなく、若手社員の声にも耳を傾けながら、お互いに認め学び合える組織風土創りを、アーティエンスでは一緒に取り組んでいければと思っております。

    もし、若手社員育成についてお困りの際は、お気軽にお問合せくださいませ。

    参考:ビジネスパーソンのキャリアを考えるメディア(Up Survive)