2022/12/13作成ー
「2年目社員研修って、何したらいいか分からないんだよね」
「2年目社員にも、研修って必要なんだろうか?」
人事・経営者から、よくお聞きする声です。
新入社員研修はしっかり行っていても、2年目社員研修はおざなりになっている企業様は多いです。2年目社員は一人前という評価になり、基本的にOJTのみで教育支援を行っていくためです。
2年目社員研修を行っている企業であっても、「何となく、年次別にフォローをしないといけないから」という考え方で行っているケースも見られます。
中小企業やベンチャー企業の人事であれば、新入社員研修が終われば、新卒採用が始まりますし、また労務関連の仕事などもあり、2年目社員研修のことを考える余裕がないかもしれません。
大企業の人事の場合でも、どうしても、新入社員研修や管理職研修、次世代リーダー育成、そして経営方針に沿った研修テーマ(ダイバーシティや、グローバル、メンタルヘルスなど)が優先されます。その結果、2年目社員研修は後回しになりがちになり、ずっと同じ内容で研修を行っていたり、研修会社に企画を丸投げする場合もあるでしょう。
ただし、2年目社員の離職率は、毎年10%強という数値が出ています。(厚生労働省より)
【参考】新規学卒者の離職状況
新入社員期間を経て「いよいよこれから」と活躍を期待されていたのに、離職してしまうというのは、とても残念ですし、企業としても大きなダメージとなります。「第二新卒」という言葉も当たり前のように浸透している昨今、若手社員の転職ハードルも下がっているという傾向もあります。このような状況を踏まえると、本来2年目社員研修は、後回しにできない、重要な研修となるはずです。
そこで本コラムでは、「2年目社員研修を通して、2年目社員の悩みと組織課題の解決をしていく」ための事例や考え方をお伝えします。本コラムを最後までお読みいただくと、自組織の2年目社員研修では何をすればいいかが分かります。
目次
2年目社員研修では、具体的にどのような内容を取り扱うべきなのか、目的(効果)別に具体的な研修内容例と「抑えなければいけないポイント」を下記表にまとめました。
目的(効果) | 2年目社員研修の内容例 | 抑えなければいけない ポイント |
---|---|---|
エンゲージメント向上のため | ・キャリア開発 ・フォロー研修(振り返り) | 成長実感を持つことで、自組織での成長予感を見出す |
パフォーマンス向上のため | ・ロジカルシンキング研修 ・ドキュメンテーション研修 ・問題解決力研修 ・コミュニケーション研修 ・専門知識研修 | 仕事ですぐに活用できる、もしくは悩み・課題を解決する知識・スキルを得られる |
新入社員のロールモデルになるため | ・リーダーシップ研修 ・メンター研修 ・OJTトレーナー研修 | 新入社員にとっての憧れ・手本になる |
次の項目から、一つずつ説明していきます。
エンゲージメント向上の目的は、社員の離職防止です。若手社員の離職理由でよくあるものは、「仕事の内容への悩みや不満」です。
さらに、この理由を掘り下げると、一番相関性が高い項目が「やりたい仕事ができない」というものです。これは、自身の今の仕事に価値を見出せていないということになります。価値が見出せていなければ、今いる会社におけるキャリアや将来が見出せなくなるでしょう。
ただ、組織としても「やりたい仕事」をすぐに2年目社員に渡せないケースの方が圧倒的に多いでしょうし、本人自身もやりたいことを分かっていないこともあります。その場合は、本人が今取り組んでいる仕事の意味付けを行い、その中で成長をしている実感を持つことが重要になります。成長実感を持つことで、今の仕事へのやりがいも生まれますし、やりたい仕事と連動して成長予感(今の会社でこれからの成長できそうという期待やワクワクがある)を持つことも可能になります。
研修での具体的なアプローチ方法としては、「2年目社員が成長実感を持ち、自組織での成長予感がある」内容にすることが必要です。「成長実感だけ・成長予感だけ」を扱う研修もありますが、この2つを扱うことが重要です。理由は、この2つは相関関係が取られているため、同時に2つ扱うと、よりエンゲージメント向上へのアプローチになるためです。成長実感を持ち、自組織で成長できることを言語化していく必要があります。
成長実感を持つためには、自身の日々の仕事を振り返り、どのように成長したかを振り返ります。そうすると、成功体験が言語化され、自身の強みや可能性を見出すことができます。自身の強みを高めて、その強みや可能性にアプローチすると、どのような未来が訪れるかを考えます。そうすると、成長予感が生まれていくのです。
【参考】エンゲージメント向上のために行う2年目社員研修においてやってはいけないこと
エンゲージメント向上のために行う2年目社員研修においてやってはいけないこととして、下記3つがあります。
・『「WILL・CAN・MUST」の枠組みのみで考える』は、NG
・『「あるべき姿」を押し付ける』は、NG
・『「動機付け要因」にアプローチし、無理やりモチベーションを上げる』は、NG
「WILL・CAN・MUST」の枠組みは、もともと欧米のキャリア開発で生まれたものです。ジョブ型においては、とてもパワフルなフレームワークになりますが、メンバーシップ型では機能しにくいという側面があります。
研修内で、『「WILL・CAN・MUST」の重なる部分が考えられた!頑張ろう」と思っても、頑張る仕事がないということが起きえます。そのため『「WILL・CAN・MUST」の枠組みのみで考える』は、避けたほうがいいでしょう。
「あるべき姿」を押し付けてはいけない理由は、2つあります。
一つは、アウトサイドインになり、当事者意識や主体性の発揮が損なわれます。
もう一つは、VUCAと言われる時代、多様性を大切にする時代において、組織側の都合(カンパニーセンタード)のあるべき姿を押し付けることはできなくなっています。
研修内で、会社としては「2年目には能力要件として、AとBを求めて、○○のような人材になってほしい」と思っていることを伝え、それに沿ったキャリア開発をするなどです。このような研修では、2年目社員のエンゲージメントは向上しません。そのため「あるべき姿」を押し付けることは、避けたほうがいいでしょう。
『「動機付け要因」にアプローチし、無理やりモチベーションを上げる』をしてはいけない理由は、2つあります。
一つは、やりがいや意義など仕事への満足度が高まる動機付け要因にアプローチしても、仕事への不満を解消する衛生要因への対応ができていないと、意味がないためです。
もう一つは、その場で高揚感が上がっても、現場は何も変わっていないため、認知変容も行動変容も続かないためです。
研修内で、とても盛り上がっているように見えても、衛生要因が満たされていない場合はその場をやり過ごしますし、研修内で気分が高揚しても現場では変わることができないため、研修は意味がないという認知を持ってしまいます。そのため『「動機付け要因」にアプローチし、無理やりモチベーションを上げる』ことは、避けたほうがいいでしょう。
パフォーマンスの向上を行う目的は、2年目社員の自律自走をより促し、高い成果に繋げるためです。
パフォーマンスが高い2年目社員に対しては成長を加速することにもなりますし、パフォーマンスが低い2年目社員に対してはフォローに繋がります。2年目社員自身としても、仕事の成果がより高まりますし、仕事で成果が出ていない場合は、スキル面での自身の課題を解決できる場合もあるでしょう。
具体的な方法としては、「2年目社員が仕事ですぐに活用できる、もしくは悩み・課題を解決する知識・スキルを得られる内容にすること」が必要です。この時、2つの研修に分かれます。
一つ目は、専門知識の研修です。
例えば、IT企業であれば、2年目社員に必要なITスキルを身に付けさせるのもよいでしょう。専門知識の研修は、「2年目社員が仕事ですぐに活用できる、もしくは悩み・課題を解決する知識・スキルを得られる内容にすること」を、簡単に満たせるため、とても有効です。
二つ目は、カッツ理論で言われるコンセプチュアルスキル(ロジカルシンキング・問題解決など)・ヒューマンスキル(コミュニケーション力・プレゼンテーション力など)と言われるものです。
※ 専門知識は、カッツ理論では「テクニカルスキル」に分類されます。
コンセプチュアルスキル・ヒューマンスキルにおいて、「2年目社員が仕事ですぐに活用できる、もしくは悩み・課題を解決する知識・スキルを得られる内容にすること」ためには、いかに2年目社員自身の現場での活用イメージができるかという点です。ケーススタディやシミュレーションワークを通して、学ぶことをお勧めします。
新入社員のロールモデルになるための2年目社員研修を行う目的は、「新入社員に対して、素晴らしい影響力を与えていく」ためです。
組織としては、新入社員にとってのロールモデルを提示できるため、新入社員が成長イメージを持ちやすくなります。2年目社員にとっては、存在承認が高まり、より仕事へのやりがいの度合いが高まっていき、成果が出やすくなります。そして会社からの評価も高まります。
具体的な方法としては、「新入社員にとっての憧れ・手本になる」ための意識・行動が高まる内容にすることが必要です。まずは、「新入社員はもちろん組織や周りに対して影響力が高まっていること」を知ることから始まり、具体的にどのようなスキルが必要かを学んでいく必要があります。
例えば、2年目社員が新入社員時代に、先輩社員とのコミュニケーションを通して、「憧れたこと・感謝していること」や「残念に思ったこと・嫌だったこと」を振り返り、その後に自分たちが新入社員に対してどのような働きかけをするかを学びます。
この時の注意点は、「エンゲージメント向上のために行う2年目社員研修において、やってはいけないこと」でお伝えした「あるべき姿を押し付ける」になります。あくまで、2年目社員のインサイドアウトを促していく必要があります。「ロールモデルとして、ちゃんとしなさい!」というメッセージでは、インサイドアウトは起きません。
精神的成長が得られると、仕事に対するモチベーションが向上し、自身のキャリアをより主体的に捉えられるようになります。そして、そのような個人の成長・変化は、チームや組織にもポジティブな影響をもたらします。そのため、精神的成長を促すことは、人材育成において欠かせませんし、若いときは人としてまだまだ未熟のため、精神的成長を促していくことが必要です。2年目社員研修がパフォーマンス向上の目的だけだと、どうしても技術的成長が強くなります。エンゲージメント向上やロールモデルになるための研修と合わせて、実施していくといいでしょう。
「1)【目的別】2年目社員研修一覧」で、基本的な2年目社員研修の内容をお分かりいただいたと思いますので、2年目社員研修の事例をお伝えします。その中で、自組織の2年目社員研修の企画の参考にしていただきたいと思います。
・離職率を下げて、エンゲージメントを高める : 美容器具メーカー(300名程度)
・顧客への+αの提案を通して、課題解決力を高める : 中堅IT企業 (1,500名程度)
・新入社員への影響力を知り、自律への意識を高める : マーケティングコンサルティング(100名程度)
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | 美容器具メーカー |
企業規模 | 300名程度 |
実施時期・方法 | 7月・1月2日間。公開講座 |
目的 | 離職率の低下と、エンゲージメント向上 |
2年目社員研修 | 内省(振り返り)、キャリア開発(会社との統合) |
得られた効果 | 離職率の低下。自社商品への誇りや、自組織への感謝が研修内で出てくる |
3年目~5年目で若手社員の80%が退職してしまうという状態から、内省・キャリア開発に影響を与える公開講座に参加することで、退職率5%未満まで改善していきました。
※ 本クライアントは、3年目社員研修でも公開講座を利用しました。
「情熱を持って仕事をしていない上司・先輩社員に対して、若手社員はがっかりし、若手社員が「この組織では成長できない」と組織に見切りをつけて、退職していく」というお話でした。
組織の未来への危機感と、若年層のキャリア形成への想いから、2年目社員研修・3年目社員研修を企画していきました。企画時には、システム思考という方法を用いて、「成長する機会の低下」と「孤独感」というポイントを改善するとよいのではないかと仮説設計をしていきます。 ※ 当社資料より一部抜粋
対策として、良質な内省(振り返り)を行い、キャリア開発(会社との統合)に影響を与える研修の公開講座に参加しました。他社の同期と関わることで、成長実感と成長意欲を高めていくことになります。自分たちは成長していないと思っていましたが、「しっかり内省すると成長していること」や、またネガティブな感情を持っていた上司や先輩社員に対しても、事前ワークで行うインタビューを通して、「自分たちを見てくれている」という理解や、「実は先輩社員も想いを持って仕事をしていること」も知り、繋がりも高まっていきます。
数年後の研修現場では、若手社員から「自組織が大好きだ。商品に誇りを持っている」という発言も出てきて、見学に来られていた人事の方の表情はとても明るかったです。
「言われたことは一生懸命行うが、+αができない」という課題がありました。2年目社員研修を実施してから、「社内レポートにおいて、顧客への提案が増えた」ということでした。今までは、社内レポートにおいて、顧客への提案は全く無かった状況だったので、大きな変化でした。
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | 保守運用サービス |
企業規模 | 1,500名程度 |
実施時期・方法 | 10月。派遣型研修 |
目的 | 顧客への提案力向上 |
2年目社員研修 | ロジカルシンキング、ドキュメンテーション |
得られた効果 | 社内レポートにおいて、顧客への提案内容が増えた |
・真面目さ、一生懸命さは、長所として扱う
・顧客や上司と一緒に仕事をする楽しさを知る
・顧客や上司と一緒に仕事をするためのスキルを学ぶ
上記の内容をもとに、実践的な研修「ロジカルシンキング・ドキュメンテーション」を行い、2日間を通して学んでいきます。 ※ 集合型での研修の様子
上司役・顧客役を行う講師とのシミュレーションワークを通して、コミュニケーションの大変さを経験しながらも、共創・協働することで、仕事がよりよくなることを体験していきました。シミュレーションワークの振り返りの際には、「もっと現場でも、上司に提案したり、クライアントからヒアリングをしたい」などというコメントが出てきました。
アフターストーリーとして、社内レポートの一部を変更し、「クライアントへの提案」という項目を創り、研修で学んだことを反映される導線を創ったそうです。顧客への提案が増えたことで、仕事に対して+αの意識が高まったそうです。顧客満足・売上共に上がっていったというお話でした。
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | マーケティングコンサルティング |
企業規模 | 100名程度 |
実施時期・方法 | 7月・1月2日間。公開講座 |
目的 | 自律促進と、新入社員へのロールモデルになること |
2年目社員研修 | リーダーシップ開発 |
得られた効果 | 自身の目標達成と、そのことによる成長実感 |
プロパー一期生ということもあり、育成環境が整っておらず、会社が予定していたよりも成長スピードが遅く、成果も出ていない状態でした。公開講座に参加したことで、他社の新入社員の活躍ぶりに影響を受け、仕事へのコミットが高まりました。そのことで、自身の目標達成をしていきます。大幅に達成する2年目社員もいたとのことです、
「入社当初は想いを持っていたんですが、だんだん変に慣れて、一生懸命さが無くなってきています。周りが面倒を見れていないのもよくないですが、彼らも成長している実感がないのか、不貞腐れたり、諦めている2年目社員も見受けられます。後輩の新入社員に対して、悪影響も懸念していて」というお話を人事の方から聞き、自分たちの状況や周りに与える影響を理解するために、リーダーシップ開発を行う公開講座を受講しました。
研修現場では、公開講座であったため、他社の2年目社員の活躍ぶりや成長ぶりを目のあたりにし、自分たちの成長度合いの低さ、そして成果に対してのコミットが弱いことを知ります。7月に実施した一日目の研修中には、「自分たちは、仕事をしていない。成長もできていない」と落ち込む2年目社員も見られました。この時に、他社の2年目社員から、「気付いてよかったじゃん。今から頑張ればいい」「ベンチャー企業でよくやっていると思うし、尊敬するよ。○○の部分は成長しているよ」などのフィードバックがありました。
アフターストーリーとして、2年目社員の多くが目標を達成したとのことです。営業の2年目社員の一人は、売上目標の300%以上も達成したそうです。売上目標の300%以上も達成した2年目社員は、1月に実施した二日目の2年目社員研修で、「7月の2年目社員研修が、自分のターニングポイントだった」と話しており、人事の方も、あの研修で意識も行動も変わったという話でした。
本コラムでは、2年目社員研修に関して、お伝えしました。はじめに、2年目社員研修では、具体的にどのような内容を取り扱うべきなのか、目的(効果)別に具体的な研修内容例と「抑えなければいけないポイント」を説明しました。
目的(効果) | 2年目社員研修の内容例 | 抑えなければいけない ポイント |
---|---|---|
エンゲージメント向上のため | ・キャリア開発 ・フォロー研修(振り返り) | 成長実感を持つことで、自組織での成長予感を見出す |
パフォーマンス向上のため | ・ロジカルシンキング研修 ・ドキュメンテーション研修 ・問題解決力研修 ・コミュニケーション研修 ・専門知識研修 | 仕事ですぐに活用できる、もしくは悩み・課題を解決する知識・スキルを得られる |
新入社員のロールモデルになるため | ・リーダーシップ研修 ・メンター研修 ・OJTトレーナー研修 | 新入社員にとっての憧れ・手本になる |
その後に、各目的に沿った事例をお伝えしました。2年目社員研修を行うことで、2年目社員の悩み・課題に対してアプローチが可能になり、それが組織課題の解決にも繋がっていきます。
2年目社員研修は、他の階層と比較して、どうしても優先度が下がりますが、2年目社員研修を丁寧に行うことで、新入社員研修で行った学習習慣を継続することも、また3年目社員研修や他の階層の研修を受講するための準備としても、良い影響を与えます。
本コラムを通して、自組織に必要な2年目社員研修が見つかったのであれば、嬉しいです。組織として、よりよい育成環境を創り、成長機会を増やしていくためにも、2年目社員研修を大切に扱っていただければと思います。
2年目社員研修の企画や実施でご相談があれば、ぜひ当社アーティエンスまでご連絡ください。