コラム

【中堅社員研修の内容一覧】これをみたら自組織にあった中堅社員研修の企画が作れる

会議中の様子

2023/5/24作成ー

「中堅社員研修を実施したいが、どんなスキルを渡せばいいかわからない…」
「中堅社員研修によって中堅社員のスキル不足を解消したい…」
「自組織の中堅社員に適した中堅社員研修の内容ってどう考えたらいいの…」

このようなお悩みを抱えている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

中堅社員は、組織の中核を担うとても大切な階層です。中堅社員が組織の期待通りに育っていかなければ、今も未来も組織のパフォーマンスが下がり、組織の存続に関わるためです。中堅社員が成長することは、これからの組織の成長のために必要不可欠です。

中堅社員の成長を促す方法として中堅社員研修があります。しかし、闇雲に研修を実施すればよいというわけではありません。
自組織が中堅社員に求めることや、中堅社員の現状をふまえ、中堅社員研修の内容を検討する必要があります。

そこで、今回は、中堅社員向けの研修内容としてどんなものがあるのかを一覧でお伝えし、その後、自組織に合わせた研修の選び方をお伝えします。

自組織にあった中堅社員研修を実施することで、中堅社員のパフォーマンスを高めましょう。そして、その影響が若手社員にも組織にも連鎖してポジティブな影響を与えられることを目指しましょう。※この記事の中の「中堅社員」とは、入社4年目以降で、管理職ではないメンバーのことをさしています。

1)【一覧】中堅社員研修の内容

中堅社員研修で行われる内容を、中堅社員の5つの役割ごとに紹介します。

中堅社員の役割 役割を果たすためにお勧めな研修内容
後輩から憧れられ、管理職から期待されるような質の高い業務の遂行 ◎ベーシックなビジネススキル
・要件定義
・報連相
・タスク分解
・スケジュールなど

 
◎思考力
・ロジカルシンキング
・問題解決思考力
・システムシンキングなど

 
◎コミュニケーション力
・関係性構築力
・プレゼンテーション力
・ファシリテーション力など

 
◎専門スキル
これからの組織の成長に繋がる後輩の育成 ・育成計画
・ティーチング
・フィードバック
・コーチング
・チーム学習
管理職の言葉を新入社員・若手社員に分かりやすく伝える通訳者 ・意志発信
個々がリーダーシップを発揮できるチームの力を高める促進者 ・パーソナリティベースドリーダーシップ
・シェアドリーダーシップ
・心理的安全性
ナレッジを積み上げていく仕組み作り ・リフレクション
・アンラーニング
・プロジェクトマネジメント

①「後輩から憧れられ、管理職から期待されるような質の高い業務の遂行」の役割を果たすための研修内容

「後輩から憧れられ、管理職から期待されるような質の高い業務の遂行」の役割を果たすための研修内容を紹介します。

【ベーシックなビジネススキル】
仕事を進めるために必要になる基礎スキルとして、次のような内容があります。

・要件定義
・報連相
・タスク分解
・スケジュール

など

要件定義

業務の依頼内容を定義することで、認識を無くし、品質の高いアウトプットを出すスキルです。
依頼者の達成したいこと(アウトプット)を把握しきれていないという課題がある場合は、要件定義のスキルを鍛えましょう。

要件定義を上手に進めていくためのポイントは、下記の内容です。
 要件定義
※ 当社、ビジネススキル研修のテキストより一部抜粋

特に中堅社員になると、依頼内容を丁寧に教えてくれるような人はいなくなります。そのため、中堅社員自身で要件定義を行い、足りない情報を確認する必要があります。

要件定義が依頼者と異なっていると、アウトプットが全く別のものになっている可能性があるため、質の高い業務を行うためには必要不可欠です。

報連相

報告・連絡・相談によって、周囲との信頼を積み上げ、品質の高いアウトプットを行うための必須スキルです。中堅社員からの報連相の少なさに課題を感じている場合は、改めて、報連相を行う意味と報連相の仕方を習得していくことが必要です。

報連相を行うときのポイントは、相手の状況を把握することと、理解・納得できる内容であることです。

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※ 当社、ビジネススキル研修のテキストより一部抜粋

中堅社員になると、一人で仕事を進められるという自負も出てきて、報連相が少なくなりがちです。しかし、報連相が行えていないと、問題なく仕事を行えているのかがわからず上司に心配をかけることになります。大きな問題が起きてからでは取り返しのつかないこともあるため、こまめに報連相を行ってもらうことが必要です。

タスク分解をすることで、今何をすべきか、そして仕事を完了するためにどのような業務が必要になるのかが明確になります。
 タスク分解 報連相
※ 当社、ビジネススキル研修のテキストより一部抜粋

スケジューリング

各仕事のスケジュールを立て、滞りなく業務を進めるスキルです。中堅社員がトラブルがあったときのバッファを持てておらず納期に遅れてしまった、ということがある場合は、適切なスケジューリングを行うためのスキルを身につけてもらいましょう。

仕事を依頼されたときに、タスク分解とスケジューリングのスキルを合わせることで、納期に遅れてしまう、ということをなくすことができます。

中堅社員に依頼される仕事は、複雑で関わる人も多くなってきます。そのため、よりタスク分解とスケジューリングが適切に行われていることがプロジェクトを進める上で必要です。

作業内容・プロセス・工数からスケジュールを立てて、上司に事前確認ができると、その段階で認識のすり合わせを行うこともできます。事前にできる限りのトラブルを回避できることは、質の高い業務を遂行することに繋がります。

【思考力】
仕事を進めるために必要になる思考スキルとして、次のような内容があります。

・ロジカルシンキング
・問題解決思考力
・システムシンキング

など

ロジカルシンキング

誰が見ても適切かつ納得性がある「結論」や「理由」を考察・説明するスキルです。中堅社員の仕事において、情報が整理しきれていなかったり、仮説を持ってきてくれても論理構成が合わないという場合は、ロジカルシンキングを鍛えることをお勧めします。

当社のロジカルシンキング研修では、散らばった情報をロジックツリーやマトリックスで整理する方法や、MECEを意識しながらロジック構造を考え、作る練習を行います。

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※ 当社、ロジカルシンキング研修のテキストより一部抜粋

ロジカルシンキングが身につくと、情報を整理して伝えることができるようになります。プレゼンテーションや部下への説明の機会が増える中堅社員に必要です。論理立てて説明することができると、周囲に説明する際も理解がしやすく、手戻りを少なくすることにも繋がります。

問題解決思考力

問題を定義・特定し、原因分析を行い解決するスキルです。中堅社員のアウトプットを見て、的外れな施策や提案が多いと感じる場合に効果的な内容です。

問題解決力を高めるためには、ヒアリングスキルとトーキングスキルが必要です。

当社の研修で行うケーススタディでは、講師からのフィードバックを受けながら、発生した課題にチームで何度も何度も向き合い、PDCAを速く且つ何度も回すことで体で『現場で活用できる問題解決思考』を学びます。

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※ 当社、問題解決力研修のテキストより一部抜粋

中堅社員になると、知識と経験があるため一人で課題を解決しようとする方もいます。しかし、上司や顧客との丁寧なコミュニケーションが重要だと理解して実践することで、より良いアウトプットにすることができます。

システムシンキング

複雑な環境において、さまざまな要素のつながりや背景にある構造・影響関係を把握し、より根本的・本質的な問題解決を行うスキルです。中堅社員が仕事の全体の森ではなく、一部分の木しか見れていないと感じる場合に適した内容です。

システムシンキングの際に活用するシステム図を創ることで、自身の認知していない世界を見ることができます。

▼システムシンキングの際に活用するシステム図

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※ 当社、システム思考ワークショップのテキストより一部抜粋

クライアントから相談を受ける時は、多くの場合、問題の一部分をピックアップして伝えてくれます。しかし、よく聞いていくと、その奥に本質的な課題が隠れていることも多いです。中堅社員には、本質的な問題を解決してクライアントの期待以上の仕事を求めている組織も多いでしょう。そのためには、中堅社員にシステムシンキングを使えるようにしてもらうことが必要です。

【コミュニケーション力】
仕事を進めるために必要なコミュニケーションスキルとして、次のような内容があります。

・関係性構築力
・プレゼンテーション力
・ファシリテーション力

など

関係性構築力

関係者とのコミュニケーションをより円滑にし、関係性を育むためのスキルです。中堅社員に対して、関係性を育む必要性を理解していない、という課題を感じている場合は適した内容です。

関係性を高めていくことは、仕事の結果の質を高めることに繋がることを知り、関係性を構築する重要性を学びます。

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※ 当社、関係性構築力研修のテキストより一部抜粋

中堅社員になると、一人で仕事をした方が早いからと周囲との関係性を持たなくする方も出てきます。しかし、一人だけの考えやスキルには限界があります。多くの人と関わりながら仕事を進めることがより良い結果を出すことに繋がることを知ることで、質の高いアウトプットを期待することができます。

プレゼンテーション力

ニーズの把握や要件定義を行い、言葉やドキュメントを通して相手の共感を生むためのスキルです。中堅社員に相手の想いや考えを意識した伝え方ができていないと感じる場合は、プレゼンテーション力を学ぶ機会をつくりましょう。

相手に伝える(説明する)際の構成パターンや可視化の方法について学ぶことができます。

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※ 当社、プレゼンテーション研修のテキストより一部抜粋

中堅社員になると、クライアントや上長へプレゼンテーションをする機会が出てきます。その際に、伝えたいメッセージを正しい根拠を持って、わかりやすく相手に伝えることができると、説得力が増し、成果にも繋がります。

ファシリテーション力

社員の当事者意識と主体性を解放し、アウトプットの質とコミットを高めるスキルです。中堅社員が参加している会議の質に課題を感じる場合に適した内容です。

当社のファシリテーター研修では、現場で実際に起きる課題を理解し、どのようにアプローチしていくか、ということも学びます。
 ファシリテーター研修※ 当社、ファシリテーター研修のテキストより一部抜粋

中堅社員になると、様々なプロジェクトに関わるため、打ち合わせや会議に参加する機会も増えます。スケジュールを見てみると会議だけで多くの時間を使っていることもあるでしょう。多くの時間を費やしている会議の質を高めることができると、関係の質とパフォーマンスを高めていくことが期待できます。

【専門スキル】
中堅社員により難易度の高い仕事を扱って欲しい場合や、今の知識だけでは他社に負けてしまうという危機感がある場合は、専門スキルを学ぶ機会をつくりましょう。

専門スキルというのは、例えば、製造機械の部品の扱い方、専門的なプログラミング、金融やマーケティングの専門知識などです。

中堅社員になると、クライアントからのより難易度の高い希望に対応する機会が出てきます。そのときに、専門スキルがないために対応できないと損失を生み出します。機会損失を生み出さないように、クライアントの希望に応えられる状態を作っておきましょう。

ここまで、「後輩から憧れられ、管理職から期待されるような質の高い業務の遂行」の役割を果たすための研修内容を紹介しました。

②「これからの組織の成長に繋がる後輩の育成」の役割を果たすための研修内容

「これからの組織の成長に繋がる後輩の育成」の役割を果たすために必要な以下の研修内容を紹介します。

・育成計画
・ティーチング
・フィードバック
・コーチング
・チーム学習

育成計画

育成の道筋を立てるために必要なスキルです。中堅社員の後輩育成について、方向性が組織が求めているものとズレていると感じる場合に効果的です。

育成計画ができると、後輩に目指して欲しいところを明確にし、そのためにどのような指導を行い、どのような仕事を渡せばいいのかという道筋を作ることができます。

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※ 当社、部下・後輩育成OJTトレーナー研修のテキストより一部抜粋

中堅社員は後輩の育成を行う機会も増えてきます。その際に目指すべきところとそのためにやるべきことが明確になっていると、組織の期待とのズレもなくなり、指導が行いやすくなります。

ティーチング

指導をする際に必要なスキルです。中堅社員がOJTでスキルを後輩に教えることができていない場合に効果的です。

伝え方がうまくないと、後輩が理解しきれず、修正の回数が多くなったり、指導に時間がかかってしまいます。
部下に伝える 部下・後輩育成OJTトレーナー研修 
※ 当社、部下・後輩育成OJTトレーナー研修のテキストより一部抜粋

中堅社員は自分の仕事と並行して育成することを求められます。できるだけ、一度で正しく伝えることができると、その分時間を節約することができます。

フィードバック

後輩の行動を改善・強化するために必要なスキルです。後輩との関係性がうまくいっていない場合は、フィードバックの伝え方がよくないことが原因かもしれません。

後輩が行った言動に対して、どのようなフィードバックを行うかで、後輩の成長やモチベーションへの影響が変化するためです。

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※ 当社、部下・後輩育成OJTトレーナー研修のテキストより一部抜粋

特に最近の若手社員は、フィードバック自体をネガティブに捉えている人が多く、人によっては、立ち直ることができなくなるくらい傷ついてしまう人もいます。適切なフィードバックの仕方を学ぶことで、後輩の成長を促せるようにしましょう。

【参考コラム】
新入社員育成のカギ!フィードバックする時に知っておきたい5つのポイント
※新入社員を対象にした内容になっていますが、考え方は中堅社員の方にもご活用いただけます。

コーチング

後輩を自律・自走させるために必要なスキルです。中堅社員が育成している後輩がいつまでも自律しないと感じる場合は、中堅社員にコーチングを学んでもらうことは意味があります。

コーチングでは、自律して一人でも仕事を任せられるようになってもらうためにどうするかを学ぶためです。
部下に伝える 部下・後輩育成OJTトレーナー研修 
※ 当社、部下・後輩育成OJTトレーナー研修のテキストより一部抜粋

中堅社員は後輩を育成する上で、後輩が一人で仕事ができるようになるように自律させることが求められています。その期待に応えてもらうためには、コーチングのスキルが必要になります。

チーム学習

時代の変化が激しく正解がわからない中で物事を進めていく際に必要なスキルです。中堅社員がチームメンバーと対話をしている様子が見受けられないと感じたら、チーム学習について学ぶと良いです。

誰も正解を持っていない中で解を探すためには、中堅社員とチームメンバーが対話を通して共に学び合うことが必要になるためです。
中堅社員が他者と対話を通してともに学び合うことで、共創関係を生み、より良い成果を出すことに繋がります。

ここまで「これからの組織の成長に繋がる後輩の育成」の役割を果たすための研修内容を紹介しました。

③「管理職の言葉を新入社員・若手社員に分かりやすく伝える通訳者」の役割を果たすための研修内容

「管理職の言葉を新入社員・若手社員に分かりやすく伝える通訳者」の役割を果たすために必要な意志発信力の研修内容を紹介します。

意志発信力

チームが同じ方向を向いて仕事を行える状態を作るためのスキルです。中堅社員に対して、意思決定ができていないという課題を感じる場合におすすめです。

意思発信を行うための考え方や、意思発信をした際に躓くポイントを学ぶことで、自身で考えた意見をチーム・上司へ発信し、よりチーム・上司の意思決定をパワフルなものにする経験を積むことができます。

当社の意志発信ワークショップでは、前提の違い、対立関係、枠組みの違いなどをワークを通して体感していきます。

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※ 当社、意思発信ワークショップのテキストより一部抜粋

中堅社員自身とチームのありたい姿を描くことで、チーム全体の方向性を揃えることができるようになります。
「管理職の言葉を新入社員・若手社員に分かりやすく伝える通訳者」の役割を果たすための研修内容を紹介しました。

④「個々がリーダーシップを発揮できるチームの力を高める促進者」の役割を果たすための研修内容

「個々がリーダーシップを発揮できるチームの力を高める促進者」の役割を果たすために必要な以下の研修内容を紹介します。

・パーソナリティベースドリーダーシップ
・シェアドリーダーシップ
・心理的安全性

パーソナリティベースドリーダーシップとシェアドリーダーシップ

個々の特性を活かし、誰もがリーダーシップを発揮できる状態にするためのスキルです。中堅社員がいるチームで、個々の強みが活かせていないという場合に適した内容です。

チームが個々の強みを活かして仕事を行えるようになると、それぞれに自信が付き、活躍が期待できるようになります。
 パーソナリティベースリーダーシップ※ 当社、パーソナリティ・ベースリーダーシップ・ワークショップのテキストより一部抜粋

中堅社員は、後輩との距離が管理職と比べたら近いです。そのため、後輩の個性を見出して、その個性を活かせる仕事を振れるように上司と相談することができると、チーム力を高めていくことができます。

心理的安全性

メンバー同士が自然体で、恐れることなく意見を伝えあい、よりよくするための意識行動ができるようにするためのスキルです。中堅社員がいるチームで、率直な意見交換ができていない場合や、誰かの一声で物事が決まるというような場合は、心理的安全性がある場を創れるようになる必要があります。

心理的安全性が高まることで、メンバーが主体的に行動し、チームの関係の質も高まります。するとチームワークも出て、パフォーマンスの向上に繋がります。
心理的安全性 
※ 当社、心理的安全性の高い場を創るワークショップのテキストより一部抜粋

心理的安全性の場を創るためには、チームの中間のポジションに位置することの多い中堅社員が、意見を積極的に発言したり、後輩に意見を発言する機会を創ってポジティブフィードバックを返す、というような取り組みが必要です。中堅社員の言動を促すためにも、心理的安全性の重要性や創り方を学ぶ機会を設けるようにしましょう。

ここまで、「個々がリーダーシップを発揮できるチームの力を高める促進者」の役割を果たすための研修内容を紹介しました。

⑤「ナレッジを積み上げていく仕組み作り」の役割を果たすための研修内容

「ナレッジを積み上げていく仕組み作り」の役割を果たすために必要な以下の研修内容を紹介します。

・リフレクション
・アンラーニング
・プロジェクトマネジメント

リフレクション

内省・省察など振り返りのスキルです。中堅社員が、自身の成長実感や成長予感を感じられていないとき、自分自身を客観的にみることができていない場合に有効です。

※成長予感とは、今の組織で仕事を行うことで、自分は成長できると感じることができる、と思える状態です。

良質な振り返りをするためには、対話を通して自身や組織の認知までアプローチすることが必要です。そうすることで、今まで見えていなかった新たな気づきが出てきます。
経験学習サイクル 
※ 当社、経験学習を通してチーム力を上げるワークショップのテキストより一部抜粋

中堅社員は日々の忙しさに追われて、時間をとって自分の仕事の振り返りができている人は少ないです。一度業務から離れて、リラックスした状態で振り返りを行うことは、自分の仕事を客観的にみて仕組み化するためにも必要です。

アンラーニング

これまでの学びを手放して、新たなものを取り入れることで進化させるスキルです。中堅社員が過去のやり方に執着し、仕事の質や効率が上がると思われる新たなやり方を取り入れない、というような場合に適した内容です。

当社の「経験学習を通してチーム力を上げるワークショップ」では、アンラーニングするために、自身の認知(メンタルモデル)を理解し、技術的成長だけではなく精神的成長までアプローチをします。

※技術的成長とは、スキルや技術が身につくことを指します。
一方、精神的成長は、物事への意識・捉え方が変わる、意欲や意識の向上などの内面的な変化を指します。

認知 メンタルモデル 
※ 当社、経験学習を通してチーム力を上げるワークショップのテキストより一部抜粋

中堅社員は自分なりの方法で成果を出してきた経験があるため、今まで行ってきたやり方や考え方を変えるのは難しいことだと思います。しかし、世界は日々変わっています。今まで積み重ねてきたナレッジを思い切って手放し、新たなナレッジを蓄積していくことも必要になります。

プロジェクトマネジメント

プロジェクトの体制や運用方法を管理するスキルです。中堅社員に任せているプロジェクトの進行がうまくいっていないと感じる際は、一度プロジェクトマネジメントについて学ぶ機会を設けることをおすすめします。

プロジェクトをマネジメントできると、目標達成に向けて相互に影響を与え合い、成果を高めていけるチームとなっていくことができます。当社のチームビルディング・ワークショップでは、ビジネスゲームを行い、チームが形成されるまでのプロセスを体感します。
チームビルディング・ワークショップでの受講生の様子 
※ 当社、チームビルディング・ワークショップのテキストより一部抜粋

知識と経験のある中堅社員がプロジェクトマネジメントを行うことで、パフォーマンスを一定レベルに保つことができます。また、上手くいったマネジメント方法をナレッジ化することで、他の部署やプロジェクトでも良い成果を出すことが期待できるようになります。

ここまで「ナレッジを積み上げていく仕組み作り」の役割を果たすための研修内容を紹介しました。
中堅社員研修では、中堅社員の役割に合わせて、このような研修内容を実施することが多いです。

2)自組織が実施すべき中堅社員研修の内容を選定する方法

自組織が実施すべき中堅社員研修の内容は、次の3ステップで選定していきます。

①組織全体の育成コンセプトを明確にする
②中堅社員育成のゴールを明確にする
③中堅社員の現状を確認し、必要なスキルやマインドを洗い出す

順に説明します。

①組織全体の育成コンセプトを明確にする

組織として、中長期的に社員にどうなっていて欲しいかを考え、そこから中堅社員の育成のコンセプトを決めていきます。組織を目的に向かって推し進めていくのは社員の役割のため、組織の目的・方向性と育成コンセプトがズレていると、お互いのゴールを達成しきれなくなります。

当社でご支援させていただいた企業様の例を紹介します。

この企業様は、老舗食品メーカーで、社員数200名程度です。
100年以上続く企業ということもあり、強い年功序列や、コロナ禍であっても受け身の姿勢が強かったり、正しくやることが正義のため失敗を過度に恐れ、チャレンジしてこなかったという背景がありました。

しかし、このままでは時代に置いていかれてしまうという危機感から、変わらないといけないという想いが強くなり、弊社と一緒に対話を行う中で、最終的に「共に変わるために、一歩を踏み出す※」という育成コンセプトを創りました。

【育成コンセプト】共に変わるために、一歩を踏み出す

※コンセプトの内容は、お客様と作成した大切な内容のため、言い回しは加工しています。

組織全体の育成コンセプトは、大きく2つの方法で考えます。

1つ目は、「解決したい組織課題から考える方法」です。
2つ目は、「特に今抱えている課題はなく、ありたい組織の姿から考える方法」です。

組織課題から考える方法は、今ある課題を解決するためには、どんな人材が必要かを考えることでコンセプトとしていきます。
ありたい組織の姿から考える方法は、ありたい組織にするためにどんな人材が必要かを考えます。

先ほどの例の場合は、チャレンジできない組織からの脱却という組織課題から、そのために必要な人材として、一歩を踏み出すというコンセプトを考えていきました。

このように解決したい課題や、ありたい姿に必要な人材はどんな人なのか、ということを言語化していく作業を行います。

育成コンセプトは、組織の中長期的なビジョンとの関連性が強くなるため、人事のみで作成するのではなく、経営層にも働きかけて、認識のズレが無いように作成することが大切なポイントとなります。組織が目指す姿に合わせて、どのような人材が必要なのかを判断し、その内容に沿った育成コンセプトを設定しましょう。

②中堅社員育成のゴールを明確にする

組織全体の育成コンセプトが決まったら、各階層ごとに育成のゴールを設定します。育成コンセプトに対して階層の異なる社員が同じように進められるわけはありません。そのため、育成コンセプトを元に各階層ごとに、ゴールを設定する必要があります。

例えば、「共に変わるために、一歩を踏み出す」という育成コンセプトがあった場合、各階層ごとに育成コンセプトとして、以下のような内容が考えられます。

各階層のコンセプト
経営陣 「共に変わるために、一歩を踏み出す」を育むための風土・文化を創る
管理職 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、ポジティブな影響を与えるチームを創る
中堅社員 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、ポジティブな影響を与える
若手社員
(2・3年目)
「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、あきらめず向き合う
新入社員 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、自分ができることを考える

中堅社員の育成コンセプトとして、『「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対してポジティブな影響を与える』と設定できました。

この育成コンセプトを元に、中堅社員の2023年度の育成ゴールを設定すると、例えば次のような内容が考えられます。
「通常業務・プロジェクトにおいてリーダー業務(もしくは中心メンバーとなる業務)を担う」

このように、中堅社員の育成ゴールが明確になることで、そのために中堅社員に必要になるスキルとマインドを考えやすくなります。

③中堅社員の現状を確認し、必要なスキルやマインドを洗い出す

中堅社員の育成ゴールが明確になったら、ゴールを達成するためのスキルやマインドを現状の中堅社員が持っているかを確認します。もし、足りていないスキルやマインドがあったら、それらを身につけることができる研修内容を探す必要があります。

例えば、中堅社員の2023年度の育成ゴール「通常業務・プロジェクトにおいてリーダー業務(もしくは中心メンバーとなる業務)を担う」を達成するためには、以下のスキルやマインドが必要になります。

スキル ・仕事を進めていくために必要な要件定義 、報連相、タスク分解、スケジューリング
・依頼された仕事の本質をみて課題を解決するために必要な問題解決思考やシステムシンキング
・リーダーとしてクライアントや上長に提案するために必要な、プレゼンテーション力
・クライアントや上司からのフィードバックを後輩にわかりやすく伝えるための意志発信力
など
マインド ・プロジェクトメンバーがそれぞれリーダーシップを発揮できるチームを作るための、パーソナリティベースドリーダーシップ
・プロジェクトメンバーが良い仕事をするために率直な意見を伝え合うことができる環境作りのための、心理的安全性
・後輩に成長してほしいという思いからの丁寧なティーチングやフィードバックへの意識
など

全てのスキルやマインドを洗い出し、その中で現在の中堅社員に不足していると感じるスキルに対して適切な研修内容を検討します。

もし、今中堅社員に不足しているスキルやマインドはわかったけど、それに対応する研修を見つけることができない、という場合は、研修会社に相談してみてください。適した研修を提案してくれるはずです。当社でも、ご相談をいただけたら、一緒にすり合わせを行いながら研修内容を決めていくことができます。

このように、自組織がやるべき中堅社員研修の内容を決めるためには、自組織の状況をしっかりと理解できていることが必要です。この流れを参考にしながら、自組織の中堅社員の成長を促せるようなスキルを渡せるようにしましょう。

3)中堅社員研修によって課題を解決した2つの事例

中堅社員研修によって中堅社員の課題を解決した事例を2つご紹介します。

・事例1:中堅社員が仕事に対する想いが持てていないという課題に対する解決事例
・事例2:中堅社員の離職率が多いという課題に対する解決事例

これらの課題がどのように解決したのか、お伝えします。

事例1:中堅社員が仕事に対する想いが持てていないという課題に対する解決事例

本事例は、中堅社員が仕事に対する想いを持てていないという課題に対して、お互いの立場を理解した上で意見を伝えられるようになるための意思発信研修を実施しました。

【概要】

項目 詳細
業種 メーカー
企業規模 200名程度
対象・実施時期 中堅社員・1月~3月
目的 自組織へのエンゲージメントを高めるためのアクションラーニングを行いたい
研修内容 意思発信研修
得られた効果 経営者への最終プレゼンで高評価

中堅社員が経営陣に対して、「中堅社員が想いを持って考えた自組織の課題解決のためのプレゼンをすること」をゴールにした内容です。

組織が持たれていた課題意識は次のようなものでした。前回の経営陣へのプレゼンの際に経営陣から「想いがなく、上っ面の言葉ばかり。絵にかいた餅で、想いが入っていない」というフィードバックがあったことです。この課題を解決するために当社の意思発信研修を導入されました。

課題解決をただ行うだけではなく、自身や組織が何を大切にしているか、そして大切にしているものは、人や部署によって異なるため、どのように乗り越えていくといいかを、研修内で学びました。その結果、想いの入ったプレゼンになったそうです。経営陣からも高評価で、今回のプレゼンは例年と違って素晴らしかったというフィードバックをもらったそうです。

【ストーリー】

「アクションラーニングの最後に経営陣にプレゼンをするので、プレゼンテーション力を上げたい」というご相談から始まります。よくよく背景を聞いていくと、「中堅社員に想いがなく、経営陣がそのことに対してネガティブに思っているということでした。

そのため、プレゼンテーション力を高めるというよりも、中堅社員が自身の想いや意思を発信し、周りを巻き込む必要があるのではないかとお伝えし、相談した結果、意思発信研修を導入することになりました。

当日、現状を確認すると、受講生である中堅社員から、

・自分の想いや考えを伝えても、否定される
・経営陣や管理職の言っていることが、ころころ変わり、何が正しいか分からない

等の話が出てきました。ケーススタディを通しながら前提の違い、対立関係、枠組みの違いなどを学んでいったところ、下記のような認知変容が起きました。

・人によっては、想いや考えが異なることもある。だからこそ、win-winを考えて行動したほうがいい
・前提がすり合っていないため、話が変わっているように聞こえるし、振り回されていた。前提がすり合えば、意見は聞いてくれる

その後、さらに意思発信をするためのクリティカルシンキングやファシリテーションスキルを学ぶことで、アクションラーニングの質を高めていきました。

この事例の認知変容では、経営陣や管理職に対して前提を擦り合わせることができたら、自分たちの意見も受け入れてくれるかもしれないという期待を持てるようになっています。

この期待があることで、今までは自分の意見を言っても無駄だと思っていた中堅社員が、上司に対してお互いの立場を意識して意見を伝えられるようになります。上司の思いも意識しているために以前より意見が通りやすくなります。そしてその結果、自分の意見がのった仕事を行えるようになり、仕事に対して想いを込めて仕事をできるようになっていくのです。

事例2:中堅社員の離職率が多いという課題に対する解決事例

本事例は、中堅社員の離職が多い、という課題に対して、自組織の課題を観ながら自身とも向き合うワークを取り入れたフォロー研修を行いました。

【概要】

項目 詳細
業種 IT(Sler)
企業規模 2,000名程度
対象・実施時期 5年目社員・6月
目的 中堅社員がモチベーション高く仕事に取組み、周りに好影響を与える
研修内容 自身と自組織の課題を考え、どのように向き合っていくかを考える
得られた効果 離職率の低下。公募しているプロジェクトへの対象層からの募集数が多かった

中堅社員の離職が多いことを課題意識としてお持ちでした。離職の背景は、自身のキャリアに対して、不安があるということでした。
そこで、5年目社員に対して、振り返りを含むフォロー研修を半日行いました。半日という制約条件が高い状況でしたが、事前ワーク(上司・同僚へのインタビュー)を充実させ、またフォローとしてバトンメール®を実施しました。

結果として、自組織でまだやれることがあると捉え、公募しているプロジェクトへの応募なども多くなり、離職率も下がっていきました。

(参考)バトンメール®とは
バトンメール®は、受講生4~5名のグループになり、1週間に1回、「研修で学んだことをこんな風に現場で使った」という内容を書いたメールを書いて、次の人に回していくというものです。当社が開発した研修後のフォローツールになります。これを行うと研修の学びを思い出し、仕事の中で意識しやすくなります。

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【ストーリー】

「中堅社員の離職率が高い」というご相談から始まります。よくよく背景を聞いていくと、中堅社員が希望している仕事ができなかったり、キャリアの支援ができていないということでした。

そのため、自組織の課題を観ながら、自身とも向き合うワークを行っていきました。具体的には、「リフレクションと、チーム学習」を、半日間のワークで行いました。

しかし、研修に対して、やる気がなく、発言数がほとんどないという状態でした。
ファシリテーターから、「みなさん、研修に対して、後ろ向きのように私からは見えます。恐らくこのまま進めても、みなさんにとってよい時間にはならないでしょう。どのように進めたいか、希望はありますか?」と伝えました。沈黙が続きましたが、「一人の方が、正直研修なんて意味がないと思っています。自分たちのスキルが上がるわけではないし、キャリアにならない」という話が出てきて、他の5年目社員も同意します。

そこで、ファシリテーターから、提案します。
「それでは、みなさんの今後のキャリアに関して、徹底的に対話をしませんか?自身にとって、素晴らしいキャリアとは何か?自組織に対して、何を求めているのか?自組織に対して、自分たちができることは何か?」

チーム学習で扱う内容と、テーマとは異なりましたが、OSTという手法を用いて、徹底的に対話をしたところ、「組織に対して求めるばかりで、自分たちが自分の人生に責任を持っていないのではないか?そして、不平不満が多く、もっとチャレンジする機会を自分たちで作らなければ、何も変わらないし、転職しても一緒だ」という考えになっていきました。

(参考)OSTとは
オープン・スペース・テクノロジーの略です。参加者がそのときに話し合いたいテーマが取りあげられ、オープンな話し合いによってそれぞれがコミットしたいと思うアクションプランが生み出されます。ハリソン・オーウェン(Harrison Owen)氏によって提唱されました。考えが多様で、コンフリクト(葛藤)があるような状態のときに効果的です。

中堅社員は、はじめ「キャリアを用意できない組織が悪い」という認知を持っていましたが、「自分たちで動けることもある」という認知に変化していきました。

このように、課題に対して適切な研修を行うことで、中堅社員の認知変容を起こすことができ、認知変容によって中堅社員の言動にも変化を促すことができます。

中堅社員に感じている課題に対して、本質的な原因を見出し、中堅社員研修の実施によって解決できるようにしましょう。
当社がお力になれることがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

4)まとめ

今回は、中堅社員向けの研修内容としてどんなものがあるのかを一覧でお伝えし、その後、自組織に合わせた研修の選び方をお伝えしました。

中堅社員研修で行われる内容を、中堅社員の5つの役割ごとに紹介すると次のようになります。

中堅社員の役割 役割を果たすためにお勧めな研修内容
後輩から憧れられ、管理職から期待されるような質の高い業務の遂行 ◎ベーシックなビジネススキル
・要件定義
・報連相
・タスク分解
・スケジュールなど

 
◎思考力
・ロジカルシンキング
・問題解決思考力
・システムシンキングなど

 
◎コミュニケーション力
・関係性構築力
・プレゼンテーション力
・ファシリテーション力など

 
◎専門スキル
これからの組織の成長に繋がる後輩の育成 ・育成計画
・ティーチング
・フィードバック
・コーチング
・チーム学習
管理職の言葉を新入社員・若手社員に分かりやすく伝える通訳者 ・意志発信
個々がリーダーシップを発揮できるチームの力を高める促進者 ・パーソナリティベースドリーダーシップ
・シェアドリーダーシップ
・心理的安全性
ナレッジを積み上げていく仕組み作り ・リフレクション
・アンラーニング
・プロジェクトマネジメント

自組織が実施すべき中堅社員研修の内容を選定できるためのステップをお伝えしました。
次の3ステップで考えてみてください。

①組織全体の育成コンセプトを明確にする
②中堅社員育成のゴールを明確にする
③中堅社員の現状を確認し、必要なスキルやマインドを洗い出す

当社では、事例でもお伝えしたような中堅社員に対するお悩みを、研修を通して解決しています。

今回の記事でご紹介した中堅社員研修の内容もほぼ網羅しておりますので、当社の中堅社員向け研修についてより詳しい情報が知りたい場合は、こちらからお気軽にお問合せください。

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自組織にあった中堅社員研修を実施することで、中堅社員のパフォーマンスを高めることができます。
中堅社員のパフォーマンスが高くなることで、その影響が若手社員にも組織にも連鎖し、ポジティブな影響が生まれることを目指しましょう。

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