コラム

管理職に向いている人とは?
~3つの特徴を知り、2つの観点で育てる~

 管理職 頬杖をついている

2022/10/31作成ー

「管理職に向いている人は、どんな人ですか?」

ある三代目の経営者(機械部品メーカー100名規模)の方から、このような質問がありました。 この方は、大企業へ修行に行き、その後父の会社に入り、現在専務をしています。

背景を聞いていくと、

・自身の大企業の経験と照らし合わせると、今の管理職は機能していない
・父と叔父と三人の経営陣だが、父も叔父もあと数年で引退する。次期経営者候補がいない
・このままでは、一人ですべての経営判断をしなければならないし、現場が回るとは思えない

とのことでした。

大企業などは、管理職として昇格させる際に、アセスメントを行う企業も多くあります。ここで、管理職の適性を見ていき、まさに管理職に向いている人を登用します。自組織の人事制度と連動したアセスメントであったり、アセスメント会社の独自の評価軸で判断したりします。

ただし、ここで二つの問題が出てきます。

一つ目は、中小企業やベンチャー企業では、アセスメントをする機会をそもそも設けることが難しいことです。
大企業のように一度に数十人の人が、管理職として昇格するわけではないためです。他社と合同のアセスメントを探したとしても、自組織の管理職の評価判断にマッチしている内容とは言えないかもしれません。

二つ目は、大企業、中小企業問わず、アセスメントを通過した人が、本当にその後に管理職としてハイパフォーマンスを上げることができるのかという観点です。
一昔前であれば、決まったスキルをもとにマネジメントができましたが、スピードの速い今の時代では、アセスメントの評価軸と、未来に求められるスキルが合わないことが見られています。

そこで今回は、管理職に向いている人はどのような人かということを、お伝えします。
最後まで読んでいただくと、「管理職に向いている人はどのような人か?」、そして見つけ方と育て方も理解できます。
本コラムを参考に、自組織にとっての管理職に向いている人を考えてみてください。

1)管理職に向いている人とは?

管理職に向いている人とは、「時代に適応するために変わり続け、チームを成長させ続けられる人」です。

昔ながらのやり方に拘ると、チームとして成果が出ませんし、また組織としても発展性がありません。さらに管理職は、個人ではなくチームへの意識をより強く持つ必要があるためです。

管理職に向いている人に何が必要かについて、「マネジメント」、「リーダーシップ」、「プレイヤー」の3つの観点で、特徴を説明していきます。

①今の時代に適したマネジメント能力がある人

管理職として向いている人は、「今の時代に適したマネジメント能力がある人」です。

今と昔では、時代の流れのスピードが大きく変わっています。その状況の中で昔のマネジメント方法では通用しません。今の時代に適したマネジメント能力とは、メンバーの強み・可能性を解放し、チーム力を最大限に発揮する管理職です。

今までは、管理職の指示命令をもとに、メンバーを動かし、成果を出すことができました。そして何より、管理職はマネジメントのみに集中できたという背景があります。これは、「物を作れば売れる」や「昇格昇進にモチベーションがある」などの世界であれば、とても機能するマネジメント方法です。

ただし今の時代は、顧客ニーズもさまざまであり、メンバーの価値観も多様化する中で、一つの正解をもとに指示命令で行うには限界があります。そして、「プレイングマネージャーがだめだ」ではなく「プレイングマネージャーでなければならない」時代になっています。

心理的安全の日本の権威である石井遼介氏は、「心理的安全性のつくりかた」の中で、下記のように時代の変化を定義しています。

今の時代に適したマネジメント能力とは、メンバーの強み・可能性を解放し、チーム力を最大限に発揮する管理職であり、この力を持つ人が管理職に向いています。メンバーをコントロールするという価値観ではなく、メンバーの強みと可能性を解放するという価値観です。

正解のある
これまでの時代
正解のない
これからの時代
人材・チーム 優秀なチーム 早く・安く
ミスがないチーム
探索・挑戦し
失敗や実践から学べる
必要な人材 言われたことが
きちんとこなせる
変化を感じ、工夫や
創造することができる
コミュニケーション トップダウン さまざまな視点からの率直な対話
マネジメント 目標設定 昨年対比で数%向上 現状の延長線上にない
意義あるゴール設定
予算の配分 選択と集中 探索と実験
努力の源泉 不安と罰 適材適所と働く意味、
そしてサポートを与える
チームへのスタンス いま儲けろ 未来を創ろう

例えば今の時代に適したマネジメントをする管理職は、会議などで自身の意見(上層部の考え)を押し通そうとするのではなく、メンバーと対話を行います。会社の意図を踏まえたアイディアがメンバーから生まれて、現場の状況にあったコミットの高い施策が生み出されていきます。

このように管理職として向いている人は、「メンバーの強みと可能性を解放する今の時代に適したマネジメント能力がある人」です。

【参考】
今の時代に適した管理職を知るためにも、読んでいただきたいコラムに関して 下記の内容も、ご興味があればお読みいただければと思います。
コロナ禍で変化した管理職の役割とは?~自組織にマッチした管理職の役割を再定義しよう~
管理職のあるべき姿は、時代・場所によって変わる。自組織にあった管理職像とは?

②メンバーのリーダーシップを解放できる人

管理職として向いている人は、「メンバーのリーダーシップを解放できる人」です。

昔は、引っ張るリーダーシップが求められていました。これも、正解がある際は、有効なリーダーシップです。
ただし、今は最適解が出せない時代だと言われています。リーダーが誤った判断をしてしまい、ただそれにメンバーが従って進んでいくと、失敗へのリスクが大きくなります。

だからこそ、メンバーが当事者意識と主体性を持って、リーダーシップ(※)を発揮して、仕事に取り組むことで、その状況にあわせた対応ができます。これをシェアドリーダーシップ(全員発揮のリーダーシップ)と言われています。

リーダーシップは、さまざま定義がありますが、学術的に主流な考え方は、ビジョン・目的・目標などに影響を与えることという考えが主流であり、ここでのリーダーシップはそれを指しています。

【参考】シェアドリーダーシップとは

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※ 当社、シェアドリーダーシップ ワークショップ~チームメンバーのリーダーシップを解放する〜のテキストより抜粋

例えば、新規顧客開拓の営業チームがあったとします。旧来のリーダーシップであれば、管理職の指示の下、営業活動を行います。すべてが管理職のリーダーシップに影響していると言っていいでしょう。正解がある世界であれば、この方法で問題はありませんでした。正解のある世界は、指示命令のもと、行動量をこなせば、一定レベルの成果は出ていました。

メンバーのリーダーシップを解放できる管理職のチームの場合だと、管理職の指示があった際に、もちろんそれが現場の状況にマッチしていたら、メンバーは目標達成のために行動します。

ただし、管理職の指示では難しいと判断した場合は、メンバーから率先してリーダーシップを発揮して、管理職に提案を行います。「今のまま行動量を増やしても効果が低く、目標達成ができないと考えたため、Webマーケティングに力を入れたい」などです。それが本当に現場に正しいかを確認し、全員で一丸となって目標達成に挑むチームと考えていただくといいでしょう。

このように「メンバーのリーダーシップを解放する力がある」、これが管理職に向いている人です。

【参考】
シェアドリーダーシップを詳しく知りたい方は、下記コラムをご覧ください。
これから求められる新たな概念”シェアドリーダーシップ”とは ー管理職を起点としたチーム創りを考えるー

③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人

管理職として向いている人は、「プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」です。

今の時代は、プレイングマネージャーが当たり前の時代です。自身がプレイヤーとして力を発揮することも多くなるでしょう。もちろんマネジメントも行っているため、自チームのメンバーよりも、目標数値などは低くなりますが、結果を出すことはもちろん、常に学び続け、成長していくことが必要です。
アンラーニング(※)と言われますが、昔ながらのやり方に囚われるのではなく、手放していくことが重要です。

アンラーニングとは、「妥当性を欠くようになった知識を捨て去り、それをより妥当性の高い新たなものへと置き換えていくこと」(組織学習の研究者ヘドバーグが提唱)

例として、二人の営業マネージャーをご説明し、どちらが管理職に向いている人かをお伝えしていきます。

営業マネージャーAさんは、自身が営業担当時代から長い付き合いがある大口のクライアントを、昔ながらので営業方法でアプローチして、売上目標を達成します。この場合は、メンバーからすると、管理職自身がクライアントを選び、売上目標達成に関して、冷めた目で見ます。

営業マネージャーBさんは、率先して、新規顧客だけではなく、新しいターゲットやエリアを開拓していきます。それも、今までのやり方ではなく、新しいやり方を学びながら、時には自チームのメンバーに教えを請い、共に学んでいきます。メンバーからすると、常に成長していて、結果も出している管理職と移り、尊敬の念を持ちます。

このように、「プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」が、管理職に向いている人です。

【参考】 管理職のプレイヤー業務に関して
管理職のプレイヤー業務は、下記のように変化したと言われています。

管理職自身がより学び続けることと、「1. 管理職に向いている人」でお伝えした「今の時代に適したマネジメント能力がある人」、「メンバーのリーダーシップを解放できる人」であることも求められます。

beforeコロナにおける
「プレイヤー業務との両立」
管理業務と現場業務(プレイヤー業務)を並行して行う「プレイングマネジャー」が、企業規模を問わず、現在の日本においては管理職のスタイルとして主流になってきています。
プレイングマネジャーという概念が日本のビジネスの世界に登場したのは、バブル崩壊後です。経営状況悪化による人件費削減、管理職ポストの激減により、実務とマネジメントを兼任できるような人材が求められ始めました。
withコロナにおける
「プレイヤー業務との両立」
メンバーの自己組織化の促進で、プレイヤー業務との両立を図る
昨今のコロナ禍で、業務の複雑性や難易度が増し、管理職自身が率先してプレイヤー業務を担う場面も多くなっています。管理職のプレイヤー要素が強くなり、マネジメント業務やメンバーとのコミュニケーションに充てる時間が少なくなっています。

管理職からの指示や命令によって受け身で動くのではなく、メンバー一人ひとりが主体的・自律的に行動していくこと。そして、その相互作用によりチーム力を高め、生産性を上げていくことが必要不可欠です。

【参考】アンラーニングに関して
アーティエンスでは、ヘドバーグのアンラーニングの説明は、少し分かりづらいので、下記のように提示しています。  アンラーニングとは ※ アイディアポイント社との共催セミナー「組織として「アンラーニング」とどう向き合うのか?―事業開発と組織開発の観点で考える―」の資料より抜粋

アンラーニングに関して、下記レポートでも説明していますので、よければこちらもご覧ください。
組織として「アンラーニング」とどう向き合うのか?―事業開発と組織開発の観点で考える―【セミナーレポート】

管理職に向いている人の3つの特徴を理解いただいたと思いますので、実際にどのように管理職に向いている人を見つけて、育てていくかを次の章でお伝えしていきます。

2)管理職に向いている人をどのように見つけ、育成していくのか

本章の説明に入る前に、大前提をお伝えします。「管理職に向いている人」の採用はとても難しいです。理由は、ハイパフォーマーの管理職になるため、所属している組織は簡単に手放さないため、転職市場にはほとんど出てきません。そして、転職市場に出てきたときは、引く手あまたになります。

そのため、自組織内で「管理職に向いている人を探し、育成していく」必要があります。
「管理職に向いている人をどのように見つけ、育成していく」ためには、技術的成長と精神的成長の2つの観点を知る必要があります。

下記図を見ていただくと、分かりやすいですが、技術的成長は目に見えやすいものです。知識・スキルと捉えていただくといいでしょう。精神的成長は、人としての成熟度と捉えていただくといいでしょう。  技術的成長と精神的成長“経験学習を通してチーム力を上げる” ワークショップ~管理職の内省力を高めていくために~のテキストより抜粋

なぜこの2つの観点で考えていく必要があるかというと、技術的成長が十分に養われていないとプレイヤーとしてのパフォーマンスは発揮できません。また精神的成長が十分に養われていないと、人として尊敬できないため、管理職に向いているとは言えないでしょう。

管理職に向いている人の見つけ方で、技術的成長と精神的成長で抑えたい部分をお伝えしていきます。

①管理職に向いている人の見つけ方

技術的成長に関して

知的好奇心があり、持論と理論の行き来ができる人を探します。
知的好奇心がないと、新しいことを学びません。また学んだ内容(理論)をしっかりと現場の行動(持論)に落としていくことが求められるためです。

「1) 管理職に向いている人とは?」の「③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」の例で出した営業マネージャーBさんは、まさにこのタイプと言っていいでしょう。

具体的な行動としては、学習機会を探す傾向があります。

・本や研修などでインプットし、学ぶ
・他者(経営者や他の管理職、時にはメンバー)から学ぶ
・学んだ内容を、自身の仕事に落としていき、PDCAを回していく

上記のように学ぶだけではなく、また自身の持論に囚われるだけではなく、知的好奇心を持って、理論と持論を行き来、行動・成果を出すということです。

知的好奇心があり、持論と理論の行き来ができる人を探していく必要があります。

精神的成長に関して

管理職に向いている人は、自利利他の精神を持っている人を探します。
はじめに前提として、アーティエンスでは、自利利他とは下記と定義しています。 自利利他のつながり私たちの想いより

この自利利他の精神が広がっていくイメージが持てないと、管理職・経営者候補としては物足りないでしょう。
組織として社会活動を行っていくうえで、視座が高いことは、世の中・未来に対してポジティブな影響を与えていくために必要です。

自分と自身の家族のことばかり考える人よりも、自分も家族も大切にしながらも組織・顧客・社会に対しての目線を持っている人の方が管理職として向いていますし、メンバーからの信頼も得て、経営陣からの期待も高いでしょう。

具体的な行動としては、フラットに発言する傾向があります。

・自身・チームの保身や利益ではなく、全体最適の発言を行う
・短期的な利益よりも、中長期的な利益を考えて、発言を行う
・自組織の利益だけではなく、ステークホルダーや世の中への影響を考えて発言を行う

上記のように自身や自部署・自組織のことだけではなく、また短期的な観点ではなく、俯瞰してフラットに物事を見て発言するため、周りからの信頼も厚くなります。

自利利他の精神を持っている人を、探す重要性を理解していただけたと思います。
「技術的成長」と「精神的成長」の2つの観点を踏まえて、「管理職に向いている人」を探していきます。ただし始めから完璧にできる人などいませんので、あくまでも素養がある人を探します。素養があれば、育成が可能になるためです。

次の章で、「管理職に向いている人」の育成方法をお伝えしていきます。

②管理職に向いている人の育て方

管理職に向いている人の育て方は、技術的成長・精神的成長の2つの観点と、マネジメント・リーダーシップ・プレイヤーの3つの特徴を抑えていく必要があります。

下記、表の内容を踏まえて、育成していく必要があります。

マネジメント リーダーシップ プレイヤー
技術的成長 成功循環モデルを好循環に回すファシリテーション力を身に付ける。 自身の特性と強みを知り、発揮し、周りのメンバーの強み・可能性を引き出す力を身に付ける。 知的好奇心を育み、持論と理論を行き来し、経験学習を回すことができる。
精神的成長 情熱と自利利他の精神を持って、組織・チームメンバーと向き合う胆力を養う。 自身のあり方・態度の影響力を知っていて、自利利他の精神を持って、自身と向き合う。 立場・権威などに囚われず、他者から学び、チーム学習を学ぶ。

まずは、技術的成長に関して、説明していきます。

マネジメントを高める技術的成長

成功循環モデルを好循環に回すファシリテーション力を身に付けるための育成支援が必要です。

「成功の循環(Theory of Success)」(MIT組織学習センター共同創始者ダニエル・キム氏提唱提唱)にそって、下記の知識・スキルを渡し、それを実行するためのファシリテーション力を養うことで、マネジメント力は高まっていきます。

・関係の質 : チーム学習を行うための心理的安全の場創りを行う
・思考の質 : パワフルな目標を創り、コミットを高める
・行動の質 : メンバーの推進力を高めるために、メンバーのリーダーシップを解放する
・結果の質 : 経験学習を通して、結果を次の成長の機会につなげる
【参考】成功の循環(Theory of Success)とは
下記モデルは、好循環にも、悪循環にも回ると言われています。管理職がアプローチ方法を知れば、好循環にしていくことが可能です。

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※ HRカンファレンス2021秋、当社講演資料より

リーダーシップを高める技術的成長

自身の特性と強みを知り、発揮し、周りのメンバーの強みや可能性を引き出す力を身に付けていくための育成支援が必要です。

「1)管理職に向いている人とは?」の「②メンバーのリーダーシップを解放できる人」でお伝えしたシェアドリーダーシップの内容を、トレーニングしていくということです。

シェアドリーダーシップを養うには、いくつかの観点がありますが、まずは自身とメンバーが発揮しやすいリーダーシップを知っておく必要があります。パーソナリティベースリーダーシップというリーダーシップになり、自分の性格や能力上の強みを活かしたリーダーシップと言われています。一言で言うと自分らしいリーダーシップ(影響力の発揮)という表現がしっくりくるのではないでしょうか。

アーティエンスでは、パーソナリティベースリーダーシップを発揮しやすいように、リーダーシップ10の戦略というタイプを開発しました。下記で自身やメンバーそれぞれが得意とするものを、2~4程度持っておくとよいでしょう。

まずはパーソナリティベースリーダーシップを知ることで、自身の特性と強みを知り、発揮し、周りのメンバーの強みや可能性を引き出す力を身に付けていくための育成支援の第一歩が可能になります。

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※当社、シェアドリーダーシップ ワークショップ~チームメンバーのリーダーシップを解放する〜のテキストより抜粋

プレイヤーを高める技術的成長

知的好奇心を育み、持論と理論を行き来し、経験学習を回すことができるための育成支援が必要です。

「1)管理職に向いている人とは?」の「③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」でアンラーニングと経験学習を学び、トレーニングしていくということです。

アンラーニングは、先ほど説明していますので、経験学習のみを説明していきます。
当社コラムwithコロナを乗りこなすために、管理職は ”振り返り(リフレクション)” をどのように扱うといいのか?より、一文を抜粋します。

人は、「経験」をして、その経験を「振り返り」、「気付き」を得て、新しい場面において気付きをもとに「行動」することを繰り返して、学んでいきます。

極端なことを言うと、管理職、経営者、新入社員であっても、成長する人は、このサイクルの品質が高いということです。

特に、振り返りの品質の高さに、このサイクルの品質は影響されます。
※ 経験の質も影響されますが、自身でコントロールできない部分もあるので、今回は振り返りをメインに言及していきます。

「振り返り」をしなければ、ナレッジが積みあがりません。「なぜ成果を出せたのか、出せなかったのか」が分からないため、部下にノウハウを伝授できず、結局、部下も育てることができません。

このアンラーニングと、経験学習を、チームメンバーと共に行っていくための育成支援が必要になります。

【参考】経験学習とは(デイビット・コルブによって提唱)

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“経験学習を通してチーム力を上げる” ワークショップ~管理職の内省力を高めていくために~のテキストより抜粋

次に、精神的成長に関して、説明していきます。

マネジメントを高める精神的成長

情熱と自利利他の精神を持って、組織・チーム・メンバーと向き合う胆力を養うための育成支援が必要です。

今までの時代は、「売上・生産性」という分かりやすい指標がありました。もちろん今の時代も大切ではありますが、「売上・生産性」だけではなく「多用性・社会貢献」などの文脈も強い世界になってきています。この時に自利利他の精神は必要ですし、それを推し進める情熱も必要になってきます。

ここでいう情熱とは、「ただ熱い人」という文脈ではなく、「仕事の使命、社会をよい方向に変える手段と捉える姿勢」です。これは、経営思想家であるゲイリー・ハメルが能力のピラミッドで提唱しています。

例えば、当社のお客様の食品メーカー(200名規模)の人事課長(50代女性)の例ですが、情熱と自利利他の精神を持って、組織と向き合い、人材開発・組織開発を進めています。日々、組織と自身と向き合い、悩み、時には苦しみながら、前に進めています。情熱を持って仕事を進めているので、経営陣に対して反発することもあり、現場に寄り添いながらも、現場とぶつかることもあります。ただ自利利他の精神を持って、前に進めているため、彼女のことを、みんな尊敬していますし、経営陣も現場もとても頼りにしています。

私たちもご一緒させていただいて、驚くほどのスピードで組織変革が進んでいます。数年でマーケティング・営業・製品開発のあり方・やり方が、コロナ禍にあわせて変わっています。一部の例ですが、マーケティングという考え方自体がほとんどありませんでした。しかし、今までは昔ながらのルート営業がメインでしたが、今はマーケティング部門ができ、仕組みで売るという思考になっています。

そして彼女の人材開発の企画により、次世代リーダー・管理職・管理職候補が、研修と実際のプロジェクトを通して、技術的成長だけではなく、精神的成長を促すアプローチが行われています。

このような人材が活躍していくためにも、情熱と自利利他の精神を持って、組織・チーム・メンバーと向き合う胆力を養うための育成支援が必要になってきます。

【参考】ゲイリー・ハメルの能力のピラミッド
経営思想家であるゲイリー・ハメルの能力のピラミッドという考え方では、企業の繁栄にはレベル4以上が必要だと言われています。レベル3以下は、比較的に採用しやすいと言われています。レベル4以上の管理職を育てていく必要があります。

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※ HRカンファレンス2021秋、当社資料より

リーダーシップを高める精神的成長

自身のあり方・態度の影響力を知っていて、自利利他の精神を持って、自身と向き合うための育成支援が必要です。

リーダーシップは、ビジョン・目的・目標に対しての影響力という内容を、「1)管理職に向いている人とは?」の「②メンバーのリーダーシップを解放できる人」でお伝えしましたが、この影響力は、管理職自身のあり方と態度が強く影響すると言われています。

下記の図のようにリーダーシップには、4つの能力の四段階と言われるものがあり、「あり方」と「姿勢・態度」は精神的成長になります。

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※ 「学習する組織入門」を参考に当社で作成

例えば、立場など関係なく誰に対してもフラットで接する人と、自身より立場が上の人には丁寧な対応ですが、立場が下の人にはきつく当たる人では、どちらが管理職に向いているかは一目瞭然です。このあり方・態度姿勢につながる精神的成長は、成人発達理論で言われる垂直的成長と言われるもので、一朝一夕には成長しないと言われています。

だからこそ組織は、管理職に向いている人を増やしていくためにも、意識的にそして早い段階(若手社員の頃)から育てていくことが必要です。

【参考】成人発達理論で言われる垂直的成長と水平的成長  成人発達理論で言われる垂直的成長と水平的成長 ※ 当社、「社内ファシリテーター育成コース~社員の当事者意識と主体性を解放する~」のテキストより抜粋

プレイヤーを高める精神的成長

立場・権威などに囚われず、他者から学び、チーム学習を学ぶための育成支援が必要です。

「1)管理職に向いている人とは?」の「③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」や、「2)管理職に向いている人をどのように見つけ、育成していくのか」の「②管理職に向いている人の育て方」の「プレイヤーを高める技術的成長」でお伝えしたとおり、誰かが正解を持っているわけではありません。

だからこそ、多様な人から話を聴き、対話をし、学ぶチーム学習が必要になります。

社会科学者のジョナセンは、正解が分からない世界では、知識習得の三段階モデルで言われるエキスパートレベルでの学習が必要だと言っています。これが、チーム学習と言われるものです。

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「1)管理職に向いている人とは?」の「③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人」で説明した営業Bさんは、まさにこのタイプでしょう。

立場・権威などに囚われず、他者から学び、チーム学習を学ぶための育成支援をするためには、対話の機会を設けたり、ファシリテーション力を養う場を渡していくことも重要です。

ここまでの説明でご理解いただいたかと思いますが、管理職に向いている人を、しっかり育てていくことが重要です。
そして管理職に向いている人を、育てていくには、技術的成長・精神的成長の2つの観点と、マネジメント・リーダーシップ・プレイヤーの3つの特徴を抑えていく必要があります。

これまで説明したとおり、下記、表の内容を踏まえていくといいでしょう。

マネジメント リーダーシップ プレイヤー
技術的成長 成功循環モデルを好循環に回すファシリテーション力を身に付ける。 自身の特性と強みを知り、発揮し、周りのメンバーの強み・可能性を引き出す力を身に付ける。 知的好奇心を育み、持論と理論を行き来し、経験学習を回すことができる。
精神的成長 情熱と自利利他の精神を持って、組織・チームメンバーと向き合う胆力を養う。 自身のあり方・態度の影響力を知っていて、自利利他の精神を持って、自身と向き合う。 立場・権威などに囚われず、他者から学び、チーム学習を学ぶ。

3)まとめ

本コラムでは、「管理職に向いている人」の定義として、「時代に適応するために変わり続け、チームを成長させ続けられる人」であることをお伝えしました。

「管理職に向いている人」には3つの特徴があること、

①今の時代に適したマネジメント能力がある人
②メンバーのリーダーシップを解放できる人
③プレイヤーとして学び続け、結果を出し続けている人

を説明しました。

最後にお伝えした「管理職に向いている人をどのように見つけ、育成していくのか」を、参考にぜひ自組織内で「管理職に向いている人」を見出し、成長支援をしていただければと思います。

管理職に向いている人を育てるには、「技術的成長・精神的成長」「マネジメント・リーダーシップ・プレイヤー」のマトリックスでそれぞれ育成支援をしていくことになります。
これからの時代は、管理職に向いている人をただ探すだけではなく、若手社員など早い段階から、これらの視点で育てていく必要もありますし、また今いる管理職に対しても、育成していくことが必要です。

本コラムを読んでいただき、みなさんの組織において、管理職に向いている人が一人でも多くなることを願っています。本コラムの内容を参考にしてください。

そして、ぜひ管理職に向いている人を増やしたい経営者・人事の方や、管理職研修でお困りの方は、当社までご相談いただければと思います。