シェアド・リーダーシップとは|管理職に求められるチーム創りの鍵

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作成日:2022.9.20

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コロナ禍以降、多くの経営者・人事の方々から「組織としてもっと変わらないといけない」という話をお聞きします。

そして、組織を変えていくキーパーソンは「管理職」であり、管理職のリーダーシップに期待している企業が多いようです。その一方で、「期待になかなか応えてくれない…」と悩む声も多く、「管理職のリーダーシップ開発は、どうしたらいいのか?」という相談をよくいただくようになりました。

そこで、本コラムでは、コロナ禍以降より一層求められるようになった「管理職に期待されるリーダーシップ」についてお伝えいたします。本コラムをお読みいただくことで、自社の管理職に対してどのようなリーダーシップ開発の支援をおこなっていけばよいのかがお分かりいただけるかと思います。

1)管理職がリーダーシップを発揮できない5つの理由

管理職に対して「リーダーシップを発揮しろ!」と指示命令される経営者も少なくありません。「管理職がリーダーシップを発揮しない。これでは、次世代リーダーとして期待できない。コロナ禍を乗り越えられない」という相談もよくお受けします。

まずはじめに、なぜ管理職がリーダーシップを発揮できないかを考えていきたいと思います。
管理職が、リーダーシップを発揮できない理由は、大きく5つあると当社は考えます。

リーダーシップ開発を行っていない
リーダーシップ発揮を強制されている
時代・状況にそぐわないリーダーシップが推奨されている
自身の在り方・態度こそが、リーダーシップの原点であることを知らない
環境(システム)に巻き込まれ、リーダーシップが発揮できない

上記の内容を、詳しくお伝えしていきたいと思います。

リーダーシップ開発を行っていない

経営者は、リーダーシップの大切さを伝えていますが、どこまで本気でリーダーシップ開発を行っているでしょうか。またリーダーシップを発揮する機会を、どれだけ提供できているでしょうか。
リーダーシップ開発を行う仕組みもなければ、リーダーシップ発揮をする機会も与えていない。そんな中、管理職だけではなく、すべての社員に「リーダーシップを発揮しろ」と伝えるのは酷ではないでしょうか。

▶経営者・人事が、リーダーシップ開発の仕組化と、機会の提供することが必要です。

リーダーシップ発揮を強制されている

内発的動機によるリーダーシップはとてもパワフルですが、外発的動機によるリーダーシップ発揮は長続きしませんし、リーダーシップを発揮しようと思わなくなります。これこそが、リーダーシップ開発の難しさともいえるでしょう。

▶リーダーシップ開発は、「リーダーシップを解放する」という観点を持つことが重要です。リーダーシップを解放するためには、自分らしさや自身の強みを活用できるリーダーシップ(パーソナリティベースリーダーシップ)を活用することが重要です。

# パーソナリティベースリーダーシップについては、後ほど詳しく解説いたします。

時代・状況にそぐわないリーダーシップが推奨されている

リーダーシップの発揮を、「引っ張っていく」という意味合いで捉え、それを管理職にも求める経営者は多いです。しかし今の世の中では難しいと言われています。「物を作れば売れる」ような、正解が分かる世界であれば、引っ張るリーダーシップは機能します。ただし、withコロナは、まさにVUCAと言われる世界であり、どんなに優れたリーダーであっても、全てを把握して、決断はできません。時代に即したリーダーシップが必要です。

▶今の時代に即しているリーダーシップとして、アーティエンスは全員発揮のリーダーシップと言われれるシェアド・リーダーシップを推奨しています。
# シェアド・リーダーシップについては、後ほど詳しく解説いたします。

自身の在り方・態度こそが、リーダーシップの原点であることを知らない

リーダーシップを発揮する際に、管理職が「日ごろからどのような考えで、管理職という役割を全うしているか?またどのような行動・態度を取っているか」が重要です。例えば、どんなに知識・スキルがあったとしても、不平不満ばかりを言う管理職は、ポジティブなリーダーシップを発揮しているとは言えません。管理職自身のあり方・態度を見直していくこと、それは人としての成熟度を高めていく必要があるとも言えます。

▶アーティエンスが推奨するシェアド・リーダーシップは、自身やチームと向き合うことがとても多くなりますので、自身のあり方・態度に対して省みることが可能です。

環境(システム)に巻き込まれ、リーダーシップが発揮できない

人は環境に依存する生き物だと言われています。どんなに優秀な管理職であっても、環境に巻き込まれることがあります。例えば、家庭では穏やかな優しいお父さん・お母さんだとしても、職場で目標達成に厳しい管理職になるケースもあります。これは、組織自体が目標達成第一になっている場合に起きやすいです。このコロナ禍において、環境に巻き込まれ、適したリーダーシップが発揮できなくなった経営者・管理職も少なくないのではないでしょうか。

▶コロナ禍のいま、経験したことがない問題が多く起き、混乱し、視野狭窄に陥っているということが起きているかもしれません。余裕がなくなり、目の前のことに追われている状況ではリーダーシップの発揮は弱くなります。だからこそ、管理職が一人で抱え込むのではなく、全員発揮のリーダーシップと言われれるシェアド・リーダーシップが重要になってきます。

【参考】そもそもリーダーシップとは何か?

そもそもリーダーシップとは何でしょうか?リーダーシップに対して、どのようなイメージを持たれていますか?「力強くメンバーを引っ張る」、「広い視点で決断をして、物事を進める」などを思い浮かべる方も少なくないと思います。
リーダーシップに詳しい方は、

「”奉仕し支援することで成果を引き出す” サーバントリーダーシップがいいんだよ」
「”道徳的判断・公平な人間関係”を大切にするオーセンティック・リーダーシップが、今の時代には必要だ」

と答える方もいらっしゃるかもしれません。リーダーシップの種類は多くありますし、求められるリーダーシップも状況によって変わります。
ただし、どのリーダーシップであっても、共通する部分があります。

パーソナリティベース・リーダーシップ研修
# 当社「パーソナリティベース・リーダーシップ研修」より抜粋

少し乱暴な表現ですが、「影響力=リーダーシップ」と言っても過言ではありません。

そして、withコロナにより管理職に必要とされるリーダーシップの発揮も変えていく必要があります。

管理職を取り巻く環境を、下記図でご紹介したいと思います。
下記の図からも、これからは、一人が強いリーダーシップを発揮したところで、なかなか通用しないことが目に見えてきています。

正解のある
これまでの時代
正解のない
これからの時代
人材・チーム 優秀なチーム 早く・安く
ミスがないチーム
探索・挑戦し
失敗や実践から学べる
必要な人材 言われたことが
きちんとこなせる
変化を感じ、工夫や
創造することができる
コミュニケーション トップダウン さまざまな視点からの率直な対話
マネジメント 目標設定 昨年対比で数%向上 現状の延長線上にない
意義あるゴール設定
予算の配分 選択と集中 探索と実験
努力の源泉 不安と罰 適材適所と働く意味、
そしてサポートを与える
チームへのスタンス いま儲けろ 未来を創ろう

(出典) 心理的安全性のつくりかた ~ 石井 遼介 (著)~

正解のあるこれまでの時代でしたら、管理職一人が強いリーダーシップを発揮していくほうが、成果・成長へのスピードが速かったと思います。ただし、withコロナのような正解のないこれからの時代は、管理職一人の考えが正しいかどうかも分かりません。そのため今の時代に即しているリーダーシップとして、アーティエンスはシェアド・リーダーシップを推奨しています。
それでは、シェアド・リーダーシップの内容・効果・開発を説明したいと思います。

2)これからの管理職に期待される「シェアド・リーダーシップ」

これから管理職に期待されるシェアド・リーダーシップとはまさに「リーダーシップを、シェアする」という考え方です。全員発揮のリーダーシップとも言われます。その場その場で、最適だと思われるメンバーがリーダーシップを発揮して、他のメンバーはフォロワーシップを発揮するという考え方です。リーダー・フォロワーが流動的になります。

まさに今のようなよくわからない状況において、シェアド・リーダーシップは、とてもワークするリーダーシップであり、求められているリーダーシップではないでしょうか。

シェアド・リーダーシップがイメージできるように、一つの例としてある会社の経営会議のやり取りをお伝えしたいと思います。

「withコロナで訪問できないため、新規顧客の開拓ができない。既存顧客の売上のみでは、ジリ貧になってしまう」という話しが出てきました。

開発責任者でもある役員Aさんが、「新規開拓ができないのは、新規訪問ができていないからだけか?」という観点を出して、俯瞰的に物事を見るためのリーダーシップを発揮しました。
Aさんを中心に、幹部社員全員で一旦状況を整理していきました。そうすると、既存顧客ばかりにアプローチをかけていて、新規顧客にはそもそもアプローチができていないという状況が見えてきました。現場の営業職が既存顧客で売上目標を何とかしようという意識が見えてきました。

その時、営業部長が最近読んだ本から、「既存顧客を中心に顧客コミュニティを作るのはどうか」とアイディアを出し、リーダーシップを発揮しました。既存顧客のフォローを行いながらも、新規顧客へのプロモーションができるコミュニティを創るのはどうしたらいいだろうというディスカッションになっていき、ミーティングが終わる時には、それぞれが顧客コミュニティ創りに何ができるかを考えて、終わっていきました。

この時に重要なのが、リーダーシップを発揮する人と、フォロワーシップを発揮する人が流動的になっていることです。また開発責任者の役員は、営業の課題に対して責任を負っているわけではないですが、リーダーシップを発揮しています。新規顧客開拓のプロモーションの役割を担っていていない営業部長もアイディアを出すというリーダーシップを発揮しています。

この事例のようにみなさんの企業の会議は、それぞれが自身の役割を超えて、その時々に必要なアイディアをだせていますか?

こちらの企業さまも、始めは社長ら役員が決めてしまうという状況でした。シェアド・リーダーシップ開発で、会議体でも、現場でも変化ができています。

このようなシェアド・リーダーシップを発揮できる環境を、経営者・管理職が創っていくことが重要です。

シェアド・リーダーシップにおいて期待できる効果

withコロナのような正解のない時代においては、シェアド・リーダーシップが、ワークすることを理解いただいたかと思います。

では、改めてシェアド・リーダーシップで、どのような効果が生まれるかも説明していきたいと思います。

1.メンバーのエンゲージメント向上

ジョブエンゲージメント・組織エンゲージメントが、共に高まっていきます。

まずはじめに、リーダーシップを発揮することで、仕事への参画意識が強まっていきます。そうすると、仕事自体への関りが強まっていくので、仕事への満足度が高まっていきます。参画意識が高まることで、コミットメントが高まります。そして他のメンバーへの働きかけも増え、チームワークも高まります。シェアド・リーダーシップでは、お互いにポジティブな影響を与えあうことで、仲間意識も生まれていきます。

2.内発的モチベーション向上

リーダーシップを発揮することで、自己効力感と自己決定感が高まります。シェアド・リーダーシップの状況が構築できていると、上司の指示だけで動くのではなく、メンバー同士でポジティブな影響を与えるための発言や行動が多くなります。内発的動機が育まれる環境構築されていきます。
シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~
(出典) シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~

3.職場としての能力の向上・情報量の増加

シェアド・リーダーシップの環境が構築されると、メンバーがポジティブな影響を与えようとするため、自身の能力を出し惜しみをしません。結果、チームの能力が高まります。またメンバーが必要だと思われれる情報を発信するため、情報量も多く蓄積されていきますし、足りない情報は自ら取りに行くということも起きます。コミュニケーションの活性化にもつながります。
シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~
(出典) シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~

シェアド・リーダーシップを促進するために管理職が抑えておくポイント

シェアド・リーダーシップの状態を創っていくためには、分化と統合の両立が必要だと言われています。

分化とは、メンバーがそれぞれの目標に対して、自律的に動く状態です。統合とは、1つの目標に向かって、協調・連動しながら活動している状態です。

管理職は、メンバーの当事者意識・主体性を解放しながらも、協働・共創ができる状態を創っていくことが重要です。

その際に抑えておくポイントは、下記です。
シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~
(出典) シェアド・リーダーシップ-チーム全員の影響力が職場を強くする ~石川 淳 (著)~

分化の3要素と、統合の2要素に関して、簡単に説明していきます。

分化の3要素に関して
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自己効力感とは

「仕事のパフォーマンスを高いレベルで発揮し、目標を達成できる」という自信を指します。
この自信は、「自分を大きく見せようなどする」虚勢などではありません。ありのままの自分に対して、自信を持っている状態であり、自身の弱さも受け入れています。

自己効力感が高いと、下記の特徴が出るようです。

・謙虚である
・困難に立ち向かう
・モチベーションが高い
・創造性が高い

管理職は、「メンバーが自己効力感を持っているか?」を意識して、マネジメントや育成していく必要があります。そして、自身の自己効力感を高めていくために、自身と向き合っていく必要もあります。それは、管理職としてのあり方や態度にも影響していくでしょう。

パーソナリティベースリーダーシップとは

自分の性格や能力上の強みを活かしたリーダーシップと言われています。一言で言うと自分らしいリーダーシップ(影響力の発揮)という表現がしっくりくるのではないでしょうか。

アーティエンスでは、パーソナリティベースリーダーシップ開発ための研修をリリースする際に、市場調査を行いました。パーソナリティベースリーダーシップを発揮するためのリーダーシップの要素を分解しました。
パーソナリティベースリーダーシップ・ワークショップ
# 当社「パーソナリティベースリーダーシップ・ワークショップ」より抜粋

アーティエンスでは、リーダーシップ10の戦略と定義し、2~4つ程度自身の得意な戦略を知り、状況に合わせて発揮することが必要だと考えています。また自身が得意ではないリーダーシップであっても、誰も発揮しないのであれば、時には発揮することが必要だと研修内では伝えています。

管理職は、メンバーの性格や強みを把握して、パーソナリティベースリーダーシップを開発していく必要があります。

多様性を認める風土とは

メンバー同士が、自分との違いを認め、お互い尊重しあう環境づくりが重要です。相手の意見を背景なども聞き、考える環境です。時には、意見の衝突もあるかもしれません。建設的な衝突により、新しいアイディアが生まれてくる場合も多いです。ただし、多様性は扱いを間違えると、パフォーマンスがとても下がるという研究結果も出ているため、管理職は多様性を認める風土を、注意して創っていく必要があります。安心して対話ができる、自利利他の状態を創っていくことが重要です。

統合の2要素に関して
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目標の共有化とは

チームとしてパワフルな目標を創っていく必要があります。管理職として、目標の種類を知っておくことが重要です。
チームビルディング・ワークショップ
# 当社「チームビルディング・ワークショップ」より抜粋

そして、上記目標のコミットレベルを高めていく必要があります。

ただ目標を落とすだけでは、メンバーの心に火をつけることはできません。
意義目標においては、対話で創っていくことが時には必要かもしれません。経営陣から落とされた意義目標であれば、意義目標を対話で紐解き、メンバーにとって、チームにとっての意味づけが必要になってくるかもしれません。

成果目標・行動目標に関しても、対話や1on1など理解・納得を育み、コミットを高めていきます。

視点の変化とは

シェアド・リーダーシップの状態を創っていくためには、複数の視点を持つことが必要です。
 システム思考ワークショップ
# 当社「システム思考ワークショップ」より抜粋

またこの視点を用いながら、ロジカルシンキングとシステムシンキングの思考を使い分けていく必要があります。ロジカルシンキングを用いて情報整理していき、システムシンキングを用いて物事の循環を見ていく必要があります。

メンバー自身の視点の強化や思考力の強化も必要ですが、まずは管理職自身が特にこの観点を重要視し、メンバーに展開していくことが重要です。

シェアド・リーダーシップでは一人一人が意思決定をします。管理職は、メンバー一人一人が正しい意思決定をできる環境をつくっていく必要があります。
そのためには、チームメンバーそれぞれが正しい意思決定ができるように管理職が幅広い視点(現場視点・経営視点)で状況を捉え、都度メンバーへ情報共有・展開していくことが重要です。
そうすることで、チームメンバーの意思決定の“正しさ”の基準が統合されていきます。
そうすると、メンバー同士の協働・共創が起きます。

またこの時に、自利利他の考えも伝えていくことで、チーム(組織)の「あり方・態度」に影響していきます。スキルだけではなく、人としての成長もうながすことができます。
 2019年度新人研修テキスト
# 当社「2019年度新人研修テキスト」より抜粋

3)まとめ

アーティエンスは、「リーダーシップ開発」の会社として多くのお客様にサービスをご提供しています。
その中で、私たちが最も共感しているリーダーシップは、シェアド・リーダーシップです。
シェアド・リーダーシップが開発されることで、「組織が発展し、社会貢献性が高くなる」だけではなく、社員一人一人の人生が豊かになると考えています。
管理職を起点に、シェアド・リーダーシップが発揮されるチーム創りをサポートする研修も提供しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。