【実例あり】新入社員の育成計画をつくる5ステップ│迷いを無くし、いち早く一人前の社会人へ

更新日:

作成日:2023.10.17

空に向かって走る人

新入社員の育成計画は、新入社員が“一人前として活躍・成長していくための道標”といえます。

“一人前として活躍・成長していくための道標”がいい加減な内容では、新入社員は期待した成長につながらず、本人のモチベーション低下や育成側の負担増加を引き起こしてしまいます。

そこで本コラムでは、新入社員の育成計画の5ステップと、実例について詳しく解説していきます。

目標設定・育成計画の実例をスプレッドシートで見る
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執筆者プロフィール
山下 絢加
2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。現在は主にマーケティングプランニングを担当。
youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

専門性:新入社員若手社員組織開発・組織変革

1)新入社員の育成計画は、5ステップで作成する

自律自走を促す新入社員の育成計画は、次の5つのステップで作成します。自律自走を促す新入社員の育成計画5つのステップ ※ 当社資料より一部抜粋

①新入社員に望む姿を設定する

組織の目標を達成するために、新入社員にどうなって欲しいかを考えることから始めます。
ゴールが定まらないと、どんなスキルが必要になるのかという判断ができず、新入社員の育成計画が立てられません

例えば、人材紹介サービス会社の組織の目標として、

「3年以内に100億円の売り上げを作り、企業と個人の幸せのマッチングを増やす」

という目標があった場合、新入社員に望む姿としては、以下のような内容が考えられます。

「転職支援に関して、初回相談(ヒアリング)から提案・転職までの支援を配属後3ヵ月で1件、3月末までに25件遂行できるようになる」

この新入社員に望む姿は、組織の目標と同じ方向に向かっていますし、新入社員も目標を意識でき、トレーナー・上司も支援ができる内容になっています。

このように、組織が掲げている目標を達成するために、新入社員はいつまでに何ができるようになっていることが望ましいのかを考え、新入社員に望む姿を設定しましょう。

新入社員に望む姿を設定する際は、ジョージ・T・ドラン氏が提唱したSMARTの法則になっているかを確認するとよいでしょう。
SMARTの法則は、目標を行動に変えるために効果的だと言われています。

SMARTの法則

※ 当社資料より一部抜粋

このように、新入社員に望む姿を明確にするところから、育成計画を作成していきます。

②新入社員が望む姿になるために必要なスキルを洗い出す

新入社員に望む姿が明確になったら、そのために必要なスキルは何かを洗い出していきます。必要になるスキルを、どのような方法でいつ渡すのかを考えるために必要な作業になります。
このときに、抜け漏れやダブりがなく洗い出すことができているかの確認が必要です。

新入社員に必要とされるスキルは次のような内容です。

社会人としてのマインドセット

・社会人としての意識を持つ
・ビジネスマナー
・コスト
・コンプライアンス

関係性の構築

・コミュニケーション
・チームビルディング

業務遂行

・一般的なビジネススキル
・ロジカルシンキング
・要件定義力
・ソリューション提案力
・プレゼンテーション

専門知識・スキル

キャリア開発

・「目指したい姿」を探求する
・振り返りフォロー

メンタルヘルス

これらの内容を参考にしながら、自組織の新入社員が一日でも早く一人前になり、自律自走できる状態になるために必要なスキルを洗い出していきましょう。

③必要なスキルを身につけるための方法とタイミングを考えてスケジューリングする

上記で洗い出したスキルを、いつ、どのような方法で新入社員に渡していくかを考えるのがスケジューリングです。

スキルは、一度にたくさん渡しても、新入社員のインプットが追いつかず、効果が薄くなってしまいます。
新入社員が、課題や不安を感じているタイミングでスキルを渡すことができると、学びの理解が深くなります。そのため、自組織の新入社員は、いつどのような悩みや不安を抱えているのかを理解して育成計画を作成することが大切です。

悩み・不安を抱えた時期は、既存の若手社員にヒアリングすると良いでしょう。

難しい場合には、以下の資料を参考にしてください。

※ 当社資料より一部抜粋

これは、当社の調査に基づいて作成した、一般的な新入社員がいつ、どのような課題を感じるのかをまとめた資料です。

組織によって配属時期が異なるため、多少のズレはありますが、基本的にはこのようなタイミングで課題や不安を感じていることが分かりました。

不安や悩みが起きるタイミングに学ぶ機会を合わせられると、新入社員が主体的に学ぼうとする姿勢を強められるため、そのタイミングを意識してスケジュールを立てていただくことがお勧めです。

スキルを渡す方法については、主に3つの方法があります。

OFF-JT(Off the Job Training)

Off-JTとは、OJTに対して、職場を離れて、講習や研修などを行う人材教育のことを指します。

OJT(On the Job Training)

OJTとは、組織の上司や先輩が、部下や後輩に対して具体的な仕事を与え、その仕事を通して、業務に必要な知識・技術・考え方などを指導し、修得させることを指します。

SD(Self Development)

SDとは、自己啓発、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTと大きく異なるのは、原則として企業に強制力がない点です。

これら3つの方法のうち、スキルに合わせてどの方法が適切かを選択して、スキルを渡す時期と方法を決めていくことになります。基本的には、OFF-JTやSDでスキルを実践しながらインプットし、学んだことを日々の業務の中で実践していく際にOJTで指導をする流れになります。

なお、【事例アリ】新入社員研修の内容例&効果を決める5つのポイントを解説では、新入社員研修の組み方や内容例の詳細を記載しています。あわせてご覧ください。

このように、いつ、どのような方法で新入社員にスキルを渡していくかを考えて計画を立てていきましょう。ここまでできると、新入社員の育成計画が出来上がります。

【参考】最近の新入社員の特徴を意識した育成計画にするために

新入社員の育成を計画する際に、最近の新入社員の特徴を意識すると時代に合った育成になります。当社でインタビュー調査や専門家の見解をまとめたところ、2023年度の新入社員には、3つの特徴があると考えられます。

・BeとDoの乖離
・社会人としてのスタンスの違いが大きい
・コミュニケーション方法の違いによる関係性作りの難しさ

それぞれ説明していきます。

① BeとDoの乖離

多様な“理想のあり方=Be”と“実際の業務=Do”を紐付けられているケースが少なく、乖離が発生するケースが見られます。
理想と現実を紐付けられるようにするための研修が必要になります。

例えば、新入社員の「ありたい」という内側からの変容を促して、実際の業務に必要なスキルの指導を取り入れると言う方法があります。他にも、ありたい姿を実現するために今何をすればいいのかを考える中で、今行っている実務が大切だと気づくようになるといった意識の変化を促せると良いです。

② 社会人としてのスタンスの違いが大きい

コロナ前から活動的だった人と消極的だった人とのスタンスが、そのまま社会人になった時にも影響すると考えられ、社会人としてのスタンスのグラデーションが拡大しています。
そのため、社会人として大切なことを理解する機会を作ることが重要です。

例えば、当社の社会人の自覚研修では次のような問いを投げて、新入社員同士で考え、言語化してシェアしてもらうことで、社会人としてのスタンスを持てるように働きかけています。社会人の自覚研修

※ 当社 社会人の自覚研修テキストより一部抜粋

社会人としてのスタンスは、一方的に伝えても受け手の新入社員にとっては、納得しきれない部分もあるため、新入社員自身で考えてもらうことがポイントです。

③ コミュニケーション方法の違いによる関係性作りの難しさ

世代ごとに期待する反応や意思疎通が叶わず、お互いにストレスや認知のギャップが発生するケースが見られます。

人事やOJTトレーナーなど受け入れ側の支援も行い、新入社員との関係性を構築するためのスキルを渡していくことが必要です。特に、新入社員の育成に影響を与えるOJTトレーナーへのスキルの提供は、新入社員の育成と密に影響するため、検討すると良いでしょう。

オンボーディングの支援も大切になります。Feldman, D. C. (1977)の調査によると、新入社員が職場の仲間に受け入れられたと感じる(受容感)には、平均2.7カ月かかるという研究結果があります。そのため、入社後 3 か月間は研修を通して丁寧に育成し、受け入れの土台を作っていくことを推奨します。

【あわせて読みたい】
OJT研修の内容によって「人が育つ組織をつくる」ための3つのポイント
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント

④育成計画を新入社員に渡し、成長イメージを持たせる

新入社員の育成計画が決定したら、新入社員と既存社員に展開します。

新入社員には、自身の目標を意識できるようにし、既存社員には育成計画を元にそれぞれが新入社員をフォローするように呼びかけましょう。

新入社員が一人前になり自律自走していくためには、目標と育成計画とのつながりを感じられることが重要です。新入社員が目標を達成するための育成計画だということを認識できていると、育成に対してポジティブに受け取ることができます。

新入社員に育成計画を理解してもらうためには、育成計画を決めてきた手順で新入社員に説明するとよいです。

「組織課題が○○で、そのために新入社員の××さんにはここまでを目指してもらいたいと思っている。そのために必要なスキルをこのように渡すから一緒に頑張ろうね」

というメッセージを伝えられると、新入社員も納得感を持って、育成計画を受け入れることができるでしょう。

新入社員自身がありたい姿を持っている場合は、その姿を確認し、新入社員のありたい姿と組織が新入社員に望む姿を統合できるかがポイントです。
新入社員のありたい姿の背景を確認し、ありたい姿を細分化していく中で、自組織が望む姿と重なるポイントを探すことができると、統合を促すことができます。

誰も自分が望まない目標に向かって行動することはできません。新入社員に求める姿を、いかに新入社員が自分の目標として受け入れ、目指したいと思えるかが育成計画を作る上で大切になります。そうすれば、新入社員は自ら学び、一人前になり、自律自走していくでしょう。

既存社員への展開も忘れずに実施しましょう。既存社員全体で新入社員を育成していく文化があると、より新入社員の成長が加速します。

社員全員が新入社員育成の方向性を認識していると、新入社員に対して伝えるメッセージに齟齬が無くなります。例えば、報連相をする先輩によって言われることが変わって混乱するという機会も少なくなるでしょう。

社員に浸透させる方法としては、育成計画を展開した後に説明する時間を設けて、資料を見ていない状況が起きないようにすることが必要です。このための時間調整が難しいかもしれませんが、新入社員が育つことの大切さをしっかりと伝えて、協力を求めることができると、新入社員の育成スピードは上がっていきます。
※ どうしても説明会に参加できない場合もあると思いますので、その際は説明会の動画を取り、必ず見てもらうようにします。

新入社員育成の育成計画が決定したら、新入社員と社員に展開し、それぞれに理解してもらうことで、新入社員の成長を加速させることができます。

⑤毎月の新入社員の成長度合いに合わせて都度修正する

作成した育成計画の通りに進めていく中で、新入社員の成長スピードとのズレが生じることがあります。ズレを感じた際は、そのまま放置せず、新入社員の成長スピードに合わせて育成計画を調整しましょう。

新入社員の成長度合いと計画がズレたままになってしまうと、新入社員の成長が停滞したり、ついていけなくなってモチベーションが下がり、退職をしてしまう可能性が高まるためです。

新入社員の成長を促すためにも、新入社員のレベルに合わせた目標の設定が大切になるのです。

例えば、10月になると新入社員が1人で営業に行っていることを目標に設定していたとしても、10月の段階でまだそこまでのレベルに達することができなかったとします。
その際に、無理やり1人で営業に行かせるようなことがあれば、新入社員は学ぶどころか不安、恐怖、トラウマのような感覚が出てきてしまい、より目標達成から遠ざかってしまう可能性もあります。

育成計画は、あくまでも計画のため、新入社員の状況に合わせて、都度調整するようにしましょう。そして、次年度は計画通り育成することができるように、改善策を検討し、毎年の新入社員育成計画をアップデートしていくことが大切です。

このように、5つのステップを意識することで、新入社員が一人前になり自律自走する育成計画を立てることができます。

2)【実例】新入社員の育成計画の作り方|イメージ表

今までの内容を踏まえた上で、新入社員育成計画を作成しました。

目標設定・育成計画の実例をスプレッドシートで見る
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4-9月の間
新入社員と信頼関係を築き、安心感を持って仕事ができる環境を整えることを優先させます。

まずはじめにチャレンジしても良い、失敗してもフォローしてもらえるという安心感が必要になるためです。

10月以降
徐々に新入社員自身から、上司やトレーナーなど周囲に働きかけることを促していきます。

例えば、仕事の依頼に対して「丁寧に説明するのではなく、多少粗く説明し、新入社員から確認されるのを待つ」という進め方もよいでしょう。

新入社員は自分から行動していく必要があることに気がついていきます。そして、新入社員に任せる割合を徐々に増やしていき、3月の時点で、新入社員が主体となって周りを巻き込みながら仕事をしている状態にするのです。

新入社員のうちは…と思って、3月まで丁寧に教える育成をして、2年目になった途端に独り立ちを求めても、練習期間がないため難しいです。

2年目に独り立ちすることを念頭に、徐々に手離れしていくことが重要です。ステップをつくることで、2年目から新入社員が一人前になり自律自走して活躍できるようにしていきましょう。

この例を参考に、自組織の新入社員育成の計画を作成してい見てください。

3)新入社員の育成計画が生み出す3つの価値

新入社員社員の育成計画を作成する価値は主に3つあります。

①目標から逆算して計画を作ることで、会社の目標に沿う人材を育成できる
②育成計画を社員に共有することで、組織全体で新入社員をサポートし、新入社員の早期成長につなげる
③新入社員の育成計画を見直し、次年度に活かすことができる

詳しくお伝えします。

①目標から逆算して計画を作ることで、会社の目標に沿う人材を育成できる

組織、そして新入社員の目標から逆算して育成計画を作成すると、会社で活躍しやすく、会社の目標にポジティブな影響を与える新入社員を育成することができます。

新入社員を明確な軸を持たずに育成し、会社が目指している方向性を確認していない組織もありますが、それでは組織の目標を達成するための土壌は作られません。組織の目標を達成するためにも、目標を意識できる新入社員を育成することが必要です。

そのため、新入社員の育成計画を立てる中で、会社の目標と方向性が合致しているかを確認しましょう。会社が進みたい方向と新入社員の育成方向が重なり、新入社員が組織にポジティブな影響を与えることで、組織の成長にも影響していきます。

②育成計画を社員に共有することで、組織全体で新入社員をサポートし、新入社員の早期成長につなげる

新入社員の育成計画があると、その資料を社員に共有するだけで組織全体で新入社員の育成をサポートすることができます。
社員が新入社員の育成計画を見ただけで、育成の方向性や内容を理解することができると、OJTトレーナーや上司以外のところからも、育成を促すような関わりを持ってくれる人も出てきます。新入社員はさまざまな人からの支援を受けることができるようになります。

社員全員で新入社員を教育していくという文化ができると、効率的に育成ができます。さらに新入社員の歓迎ムードも高まる傾向があるため、新入社員の定着や関係性を築きやすくなることが期待できます。

③新入社員の育成計画を見直し、次年度に活かすことができる

新入社員の育成計画があると、振り返りをしやすいため次年度に活かすことができます。新入社員の採用は毎年行う組織も多いです。その際に、今年の新入社員育成のどこがうまくいって、どこを改善する必要があるかを明確にし、新入社員の育成計画を作成しておくことが必要になります。

例えば、今回の新入社員について4月に行ったビジネスマナーの定着が遅かったから、そこを改善するために次回は4月に研修を行った後、5月に社内で復習の時間を設けてみよう、などと改善していくことができます。

新入社員の育成計画をしっかりと作成することで、このような3つの価値を生み出すことができるのです。

4)新入社員の育成計画に関するよくある質問

新入社員育成計画を作る上で、よくいただく質問にお答えします。

新入社員の適切な育成期間ってありますか

新入社員は、1年間かけて育成していくことが望ましいです。新入社員は、タイミングによって、課題やモチベーション、習得しているスキルが異なるため、その状況に合わせた知識・スキルの提供やフォローが必要になるためです。

例えば、入社して1ヶ月の時は、社会人としてのルールを理解し、基本的な報連相ができるようにするための育成を行います。そして、それができるようになってきたら、ロジカルシンキングのスキルを渡してより分かりやすい報連相やアウトプットができるようになってもらう、というように段階を経て、育成していくことが必要です。段階を踏まずに一気にスキルを渡しても、学びを消化できずに学びを最大限に受け取ることができません。

また、入社直後、半年後、1年後で新入社員のスキルやモチベーションも異なるため、その時々にあわせた育成のフォローも必要になります。このような理由から、新入社員の育成は1年間をかけて行うことをお勧めします。1年間の育成の効果を高めるためにも丁寧な育成計画を作成しましょう。

育成計画で定期的に研修を行おうと思います。公開講座と派遣型のどちらがいいのでしょうか

どちらがいいというのは、組織の規模や状況によるため一概に答えることは難しいです。 下の図で公開講座と派遣型のメリット・デメリットをまとめた表をまとめましたので、これを見て何を重視したいかで検討していただくと良いと思います。※ 当社資料より一部抜粋

また、人数の目安としては、派遣型の場合、新入社員が10名以上程度から、公開講座は1〜30名程度までの組織の方がご参加されることが多いです。ただ、これはあくまでも目安ですので、新入社員が6名の企業様のご希望に合わせて派遣型で実施したこともあります。研修の質・予算・実施のしやすさの中でどれを重視したいか検討してみてください。

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何をOJTにして、何をOFF-JTで教えたらいいのか

基本的には、OFF-JTで学んだことを、OJTで身につけていく、という流れになります。そのため、OJTとOFF-JTの内容は重なります。

しかし、目標達成に必要なスキルに対して、時間や予算の都合でOFF-JTを行えない場合は、その分をOJTの中で伝えていく必要が出てきます。限られたスキルしかOFF-JTを実施できない場合の優先順位としては、日々の業務の中で育成するのが難しかったり、上司や先輩として伝えづらいものを優先的に行うことをお勧めします。そのため、6つのスキルの分類で優先順位をつけるとすると次のようになります。

1、社会人としてのマインドセット

・社会人としての意識を持つ
・ビジネスマナー
・コスト意識
・コンプライアンス

2、関係性の構築

・コミュニケーション
・チームビルディング

3、メンタルヘルス

4、キャリア開発

・「目指したい姿」を探求する
・振り返りフォロー

5、専門知識・スキル

6、業務遂行

・一般的なビジネススキル
・ロジカルシンキング
・プレゼンテーション
・問題解決力

社会人としてのマインドセットや関係性の構築については、伝え方に注意が必要です。特に、上司や先輩から伝えられると説教臭く感じてしまうこともあるため、プロに任せることをお勧めします。

メンタルヘルスについては、適切な知識と伝え方を熟知しているプロに任せた方が安全です。ネットや本では、さまざまな情報が溢れているため、場合によっては間違った情報を伝えかねません。専門家から正しい情報だけを伝えてもらうためにも、OFF-JTの優先度を高くした方が良いでしょう。ただ、自組織の中で、メンタルヘルスの課題がないという状態であれば、SDで知識を知っておいてもらう程度でも大丈夫かもしれません。

キャリア開発については、1on1の中で扱われることが多いと思います。その際に、新入社員が全く考えた事もない状態から、目指したい姿を一緒に探していくには、OJTトレーナーや先輩・上司の負担が大きくなってしまいます。そのため、OFF-JTの中で目指したい姿を探求することの大切さを理解して考え始める、というところまでは行っておき、その後、具体的にどうしていくかを決めていく部分をOJTの中で対話を通して行うことがお勧めです。

専門知識・スキル、業務遂行については、日常業務の中で扱いやすく、指導もしやすい内容になるため、OFF-JTの優先順位としては一番下になります。ただ、これらも、根本的な考え方を伝えないと、仕事の中で応用していくことができないため、しっかりと考え方を伝える、ということが重要なポイントになります。例えば、日々の業務の中で「この資料にAという内容が抜けているから追加しておいて」という指導しかしていないと、なぜそうしないといけないのかという根本的な考え方を新入社員は理解できないため、応用がききません。そうではなくて、「この資料にAという内容が抜けているよ。この場合はロジカルシンキングを活用してMECEで考えてみるといいかも。」と伝えて一緒にやり方を確認すると、次同じような場面に遭遇した時に、新入社員は前回の経験を活かすことができます。

特に、業務遂行に関するスキルについては、表面的に伝えることは簡単ですが、その後の仕事でも応用できるような考え方をしっかり伝える、という観点が抜けてしまっていることが多いため、OJTのみで実施をしなければいけない場合は、その点を意識してもらえると良いかと思います。

OJTトレーナーは誰がやるべきでしょうか

新入社員に、ロールモデルとしてもらいたい人をOJTトレーナーとして選出することをおすすめします。モチベーション高く仕事をしており、組織として評価できる人がOJTトレーナーになると、新入社員も影響されてその人に近づきやすくなるためです。

そして、その方々にOJTトレーナーとしての育成方法のスキルを渡してあげると、よりスムーズに新入社員の育成を行えるようになります。何となくのやり方でOJTを行うと、人によっての個人差も大きくなりますし、自分の育成方法が正しいのかの確認ができず、不安な思いを抱えることになるためです。
当社では、OJTトレーナー研修の中で、育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチングを、ケーススタディを通して学んでいただくことができます。OJTの効果を高めるために、OJTトレーナーの育成も検討していただけたらと思います。

研修の実施回数に適切な数はありますか

組織がどのような新入社員を求めるか、また、研修以外のフォロー体制がどの程度整っているかによって異なるため、一概に何回行うと良いということはありません。新入社員の目標を達成するためのスキルが多い場合は、研修の頻度も多くなるかと思います。特に、専門スキルが必要な場合は、研修の実施回数が多くなる傾向にあります。

例えば、当社の公開講座で実施している新入社員研修を例にお伝えすると、1年間で13の研修を行っています。これは、自律自走を促すために新入社員に感じる課題や成長に合わせて設計した内容になります。
ただ、この中には専門スキルに関する研修は含まれていませんので、この内容を参考にしていただき、自組織に必要なスキルを足したり、引いたりして頂けたらと思います。

※ 当社資料より一部抜粋

研修の回数ではなく、適切なスキルを渡せているかを意識して新入社員の育成計画を作成していただけたらと思います。

5)まとめ

今回は、「自律自走を促すこと」をポイントにした新入社員の育成計画の作り方や育成計画のフォーマット例などをお伝えしました。

新入社員の育成計画は、次の5つのステップで作成できます。自律自走を促す新入社員の育成計画5つのステップ

※ 当社資料より一部抜粋

2章でお伝えした新入社員の育成計画例を参考にしながら、自組織にあった育成計画を作成していただけたらと思います。当社が新入社員社員の育成計画が生み出す価値として考えていることは主に3つあります。

①計画に沿って新入社員を育てていくことで、会社の目標に合う人材を育成していける
②育成計画を社員に共有することで、組織全体で新入社員をサポートし、新入社員の早期成長につなげる
③新入社員の育成計画を見直し、次年度に活かすことができる

このような3つの価値を生み出すためにも、新入社員の育成計画はしっかりと作成することが求められるのです。

新入社員の自律自走を促すためにも、5つのステップに基づいて新入社員の育成計画を作成し、新入社員を迎えることにワクワク感を持てるようにしていきましょう。