【巻き込み力研修】若手・新入社員が受け身姿勢から脱却し、成果を最大化するために

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作成日:2022.12.6

男女3名がオフィスで会議をしている様子

「うちの若手社員は、巻き込み力(※)が弱い」
「○○さんは言うことは立派だけど、実行力が弱くて、周囲を巻き込む力が足りない」
「何でもかんでも一人で抱え込んでしまう。もっと巻き込み力があれば…」
「言われたことしかしない。御用聞きになる。巻き込み力を養ってほしい」

このようなお話を、人事・経営者の方や現場管理職の方々からよくお聞きします。

若手・新入社員のみならず、中堅社員に対してまで、巻き込み力が足りないという問題意識を持っている組織が多くあります。その際、巻き込み力を養う研修を行いたいと思うのは、自然な流れです。

そこで本コラムでは、そもそも「巻き込み力とは何か?」、そして巻き込み力を養うために、どのような研修を行っていけばいいかについてお伝えしたいと思います。
本コラムを最後までお読みいただけると、自組織にとって、どのような巻き込み力研修を実施したらいいかが分かります。

※巻き込み力:「周囲に主体的に働きかけられる意識とスキル」と、弊社では定義しています。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

3)巻き込み力研修で期待される2つの効果

巻き込み力研修で期待される効果は、次の2点です。

・「言われたからやる」のではなく、「よりよいものを」の意識に変わる
・「顧客や上司は、敵ではなく、共に価値を最大化していく仲間」と捉える

新入社員や若手社員によくある5つの課題・お悩みに対し、巻き込み力研修を通じて次のように改善・解決をしていきます。

よくある新入社員・若手社員の課題・悩み 新入社員・若手社員がよくある
課題・悩みを解決した後の姿
言われたことは、一生懸命行う 言われたこと以外も、よりよくするための働きかけを行う
仕事を抱え込んで、パンクする 良い意味で、周りに頼りながらも、助け合う
テレワークのため、自分からコミュニケーションを取るのが苦手 よりよい仕事をするために、周りに遠慮せず自ら働きかける
人の力を借りるのに抵抗感があり、いつまでたっても上司や先輩社員のフォローが必要になる 上司・先輩社員の力を借りながらも、自らもよりよくなるための行動を行う
顧客とのコミュニケーションや社内のPJでも、ただの伝書鳩になっている 顧客・上司との共創・協働を大切にして、よりよくするための意識と行動がある

巻き込み力研修では、『「言われたからやる」ではなく、「よりよいものを」の意識に変わる』と、『顧客・上司は、「敵ではなく、価値を最大化する仲間」と捉える』という効果を得るために実施することが必要です。

4)巻き込み力研修の具体的な内容

巻き込み力研修の内容は、目的と効果を最大限得るために、シミュレーションワークを行いながら、新入社員・若手社員自身の課題と向き合うことが必要です。

座学で巻き込み力の重要性を学んだ場合は、頭で理解できていても、具体的にどのように実践していいか分かりません。ケーススタディ(個人ワーク・グループワーク・発表・講師からのフィードバックと解説)で学んだ場合は、「周囲を巻き込むための体感」が行えなかったり、薄くなります。
座学やケーススタディの内容は、シミュレーションワークによって解消することが可能です。
例えば、講師が上司役や顧客役となり、受講生が部下役になるというような手法です。シミュレーションワークでは、次のような作りにすると、巻き込み力の重要性を理解し、行動変容を促します。

・「言われたからやる」のままだと、顧客・上司は新入社員・若手社員にとって、ネガティブな存在
・「よりよいもの」への意識が変わると、顧客・上司は新入社員・若手社員にとって、ポジティブ存在

上記の内容を、新入社員・若手社員が段階的に自ら切り拓く導線を作り、体験することで、意識と行動が変わっていきます。

5)【3つの事例】巻き込み力研修を通じて得られた変化

前章までは巻き込み力研修の概要についてお伝えしてきましたが、よりイメージしていただくために。3つの事例をお伝えしていきます。

1)配属前に「現場の厳しさ」を体感し、”健全な不安”の醸成

 大手IT企業(5,000名程度)に対して、新入社員の6月末の配属前に実施した事例です。

項目 詳細
業種 ITサービスの保守運用
企業規模 5,000名程度
実施時期・方法 6月末2日間。講師派遣型研修
課題意識 新入社員研修は、人事が丁寧にレクチャーをするが、現場は厳しさがある。新入社員研修で学んだことを実践することで、その厳しさが乗り越えられることを知ってほしい。
巻き込み力研修の実施理由 新入社員研修で学んだことを、配属前に実践し、その上で成功体験・失敗体験を得ることができる。
得られた効果 管理職研修内で、今年の新入社員は、積極性があるという発言があり、多くの管理職が同意見だった。

「配属前のキラキラした想いを持った新入社員が、配属半年後のフォロー研修では、暗い顔をしていることが多い」、「他のグループ会社と比べて、離職率が高いのも課題」といった課題感をお持ちでした。

当社へご相談いただいた際は、「以前は配属前に、現場の厳しさを教える研修を実施したが、新入社員が萎縮して、研修への不満が出てしまった。確かに理不尽な研修ではあったが、現場の厳しさも知ってほしい。どうしたら解決できるのか?」といったお話がありました。

ご一緒に企画を進めていくと、人材開発チームの想いとして「新入社員は、課題や現場と向き合いながらも、自分を信じて、仕事を楽しんでほしい」が言語化されました。
上記想いを体現していくために、配属前に巻き込み力研修を実施しました。そして当初持っていた課題意識へのアプローチの一つの方法として実施されました。新入社員は、上司役や顧客役の講師に対して、戸惑いを持ちながら、ワークを進めていましたが、良い仕事をすることへの意識を持った段階で、研修のワークではなく仕事として捉えて没頭していきました。

二日目には、一日目の成功体験・失敗体験を振り返りを行い、現場でどのように活かすかを考えていきました。新入社員からは、「配属前の今の気持ちは、心配が3割、楽しみが7割」というような声もあり、前向きな発言で溢れていました。人材開発チームからも、「ただキラキラしているのではなく、健全な不安もあり、あとは現場で頑張ってほしい」ということでした。

アフターストーリーとして、管理職研修での部下育成の対話があったそうです。
「管理職研修内で、今年の新入社員は、積極性がある」という発言があり、他の管理職からも、「確かに、率先して先輩社員の手伝いをしている」や、「お客様からサンクスメールをもらった新入社員もいる」という話でした。

2)独善的ではなく、上司や顧客の視点を持ち、アウトプットの質を高める意識の醸成

出版社(100名程度)に対して、新入社員のオンボーディング支援として実施した事例です。

項目 詳細
業種 出版社
企業規模 100名程度
実施時期・方法 5月中旬1日間。公開講座
課題意識 現場では、徒弟制度や「背中を見て学べ」という習慣がある。現場の改善も必要だが、新入社員の耐久性も養いたい。
巻き込み力研修の実施理由 新入社員自身が働きかけるための意識を養い、行動する経験を持ってほしい。
得られた効果 新入社員のフォロー研修から、「仕事が楽しい。上司・先輩社員は怖い時もあるが、いい仕事をしたとき一緒に喜べる」という発言あり。

出版社ということもあり、志望度がとても高い新入社員が入社しますが、リアリティショック(入社後のギャップ)を受けるという現実がありました。「新入社員は、みんな優秀だが、出版社独特の仕事の進め方に戸惑い、立ち上がりが遅くなる。現場の教育もしたいが、どうしても現場の業務量を考えると、新入社員の指導の方がやりやすい」というお話でした。

「9月から配属ということもあり、せめて8月まで配属前研修として、できる限りの支援をしていきたい」というご相談をいただきました。そこで、新入社員の採用人数が毎年3~5名程度と少ないこともあり、4月から8月まで当社の新入社員研修の公開講座を受講していただくことになりました。

6月から書店へ赴き、実業務を学ぶということで、巻き込み力研修を受けるのは、とてもタイミングが良いという話になり、新入社員に対して書店に行く前の重要な研修と位置付けて、受講を促しました。

「より良いものを作る」という意識は、元々強い新入社員が多いものの、独善的になる傾向がありました。この時に、「顧客や上司はどう考える?」、「彼らの期待に応えながらも、自分たちの想いや意見はどう伝えていくといいのだろうか?」とフィードバックしながら、ワークを進めていきました。フィードバックによって、視点が変わり、どんどんアウトプットの質が高まっていき、「自分がいいと思うものを、説得するだけではだめだと気付いた」と話す新入社員もいました。

アフターストーリーとして、巻き込み力研修をきっかけに、配属までに受ける研修に対して、「人事や会社は何を伝えたいのか?自分たちはどう期待に応えたらいいのか?」と考えて、受講されていたとのことです。そして、配属後に人事責任者の方が、新入社員と一緒に飲んだ際に、「仕事が楽しい。叱られることもあるし、厳しいなと思うこともありますが、上司と一緒にいい仕事をするのは、最高です」と話されていたそうです。

3)若手社員の「言われたことしたやらない」受け身姿勢を解消

中堅IT企業(1,000名程度)の若手社員を対象に、受け身姿勢を解消するためのフォロー研修として実施した事例です。

項目 詳細
業種 SIer
企業規模 1,000名程度
実施時期・方法 3年目社員に対して9月2日間。派遣型研修
課題意識 若手社員が受け身であり、言われたことしかしない。離職率も高い。管理職からは、「使えない」という発言が出ていたり、経営陣からは離職率を下げるように言われている。
巻き込み力研修の実施理由 若手社員がいきいきと働くためのヒントが欲しい。そして、起きなくていい離職率を下げていきたい。
得られた効果 とてもおとなしい社員が研修後、「会議で、自ら発言があった」と上長から連絡があった。離職率の問題はまだ解消できていないが、人事部への相談が増えた。

「若手社員の離職率が高い。また、受け身で言われたことしかしない」という課題感をお持ちでした。また、管理職からは「今の若手社員は使えない」と言われてしまう状態でした。

研修当日、受講した若手社員は皆大人しく、覇気がない状態でした。シミュレーションワークを通しても、基本言われたことしか行わないという状態でワークが進んでいきました。ほとんどのグループが、顧客の期待程度のアウトプットや期待にも満たないアウトプットでした。

研修2日目も覇気がない状態が続き、「ただ言われたことをやる」というスタンスでした。
そのため、人事担当者と相談し、プログラムを途中で変更し、まずは彼らの今の想いや感情などを話すという対話をしていきました。その時に彼らから、下記のような発言が出てきました。

・忙しい中、このような研修をやっても意味がない
・会社を辞めたいと思っているから、研修を受ける気がない
・研修でいいことを言われても、現場は違う
・自分たちの上司は無関心で、頼り甲斐がない

人事チームの顔は曇っていましたが、この瞬間に初めて三年目社員は本音を言い、自身と組織と向き合っていました。そんな中、受講生の一人から、以下の発言がありました。

「昨日の巻き込み力研修で起きたことは、実際の現場でも起きていること。クライアントからの要望はめんどくさいし、上司は小言ばかり。でも、これは自分たちの取り組む姿勢が一番の問題なのではないか?
いい仕事をしようなど思っておらず、ただ楽をしようとしている」

この発言から、自分たちと組織の課題は何か?を、徹底して話していき、どうやって私たちは周りを巻き込んでいくといいかという話をしていきました。そして、最後の全体シェアの際に一番おとなしかった女性の受講生が声を震わせながら、「私は、人前で話すのが苦手です。でも本当は変わりたいし、もっと成長したい」と話し、自身がこの研修で学んだことを伝えてくれました。

アフターストーリーとして、最後にシェアをした女性社員の上司から、人事チームにお礼のメールが来たそうです。

「会議で発言をしたことなんてなかった○○さんが、発言してくれた。びっくりした」

巻き込み力研修を通して、認知変容と行動変容が起きていました。そして、本研修を通じて、人事と若手社員の繋がりが強くなり、退職を考えているなどの悩みが来るようになったそうです。

3つの事例をお伝えしましたが、巻き込み力研修はさまざまな状況にあわせて実施ができます。

6) 巻き込み力研修を実施する際に意識したい3つのポイント

巻き込み力研修を実施する際に意識したい3つのポイントをお伝えします。

1)実施のタイミング

実施タイミングとしては、節目で行うことをお勧めします。巻き込み力研修を通して、次のステージに行くという意識を創りやすいためです。具体的には、配属直前や半年後のフォロー研修などで行うとよいでしょう。

ただし、公開講座を利用される場合は、日程が決まっているため、節目ではない場合もあります。先ほどの2つ目の事例でも、まだ配属前までには時間があり節目ではありませんでした。

その場合は、なぜこのタイミングなのかという意味付けを受講生にしっかり伝えることが必要です。先ほどの2つ目の事例では、書店での実業務前のタイミングだったため、書店での実業務と研修内容の繋がりを考え、どのような学びを得てほしいか、研修前に受講生に伝えました。
その結果、受講生もより目的意識を持って受講していただけました。

2)研修の世界観を構築するための準備

巻き込み力研修の世界観を創るための準備は、惜しまないことが重要です。シミュレーションワークを通して学ぶため、世界観に没頭できないと、学びが半減するためです

例えば、講師に上司役・顧客役がいる場合は、研修前や休憩時間に彼らが話していたりすると、受講生は一気に熱量が下がります。これは、講師と人事が彼らの見えるところで話していることでも起きます。

3)講師のレベル(フィードバック)

「巻き込み力研修での講師のレベル(フィードバック)」は、的確でありながら、現場でも起こり得るフィードバックである必要があります。

適切でないと学びが生まれませんし、現場で起こり得るフィードバックでないと、受講生は素直に受け止められません。フィードバックも適切ながら、研修という状況よりも、現場で起こり得るフィードバックを意識してできる講師のレベルが求められます。

よくある失敗としては、現場を意識しすぎて、悪い意味で受講生が迷ってしまったり、適切なフィードバックをしたことで、カンペを読んでいるような状態になり、研修という文脈になってしまうということです。

7)まとめ ~巻き込み力研修を実施するならアーティエンス~

本コラムでは、巻き込み力研修について説明しました。

① 巻き込み力研修の目的は、『周囲を巻き込み、成果を出す』楽しさを実感し、自身の強みの活かし方、課題との向き合い方を学ぶこと
② 巻き込み力研修の対象は、新入社員・若手社員がおすすめであること
③ 巻き込み力研修の効果は、下記2点であること
・「言われたからやる」ではなく、「よりよいものを」の意識に変わる
・顧客・上司は、「敵ではなく、価値を最大化する仲間」と捉える

④ 巻き込み力研修の内容は、目的と効果を最大限得るために、シミュレーションワークを行いながら、新入社員・若手社員自身の課題と向き合うことが必要であること

これらの内容をイメージするために、3つの事例をお伝えしました。
そして、巻き込み力研修を実施する際の注意点も3つお伝えしました。

ロジカルシンキングや、ビジネスマナーなどと違い、巻き込み力とは抽象的な内容になります。だからこそ、目的・対象・効果・内容などを明確にしていく必要があります。

当社の巻き込み力研修は、10年以上も提供しており、1回の大幅なアップデートをしています。時代にあわせて、より今の新入社員・若手社員の巻き込み力を高める内容になっています。

当社の巻き込み力研修にご興味がある方は、ぜひご連絡いただければと思います。みなさんの組織の新入社員・若手社員の巻き込み力が高まることを願っております。