「管理職が変われない」を打破するために組織が取るべき8つの対策

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作成日:2024.5.1

「管理職はどうすれば変わるのか…」

このようなお悩みをお持ちの経営者・人事の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

管理職が変わらないと、

・イノベーションが起きない
・競争力の低下
・社員のモチベーション低下
・生産性の低下
・人材の流出

というリスクが起きます。

※第2章「管理職が変われないことで組織に生じるネガティブな影響6選」で詳しく説明しています。

ただ管理職が変われない要因は、管理職本人の問題だけではありません。時代や環境、組織のあり方も関わっています。

本コラムでは、「環境・組織・管理職本人」の3つの要因別に管理職が変われない理由と、克服のために実施すべき対策を具体的にお伝えします。

変化は簡単ではありませんが、原因の理解と適切な対策によって、これらの課題を乗り越えることは可能です。
本コラムの内容を参考に、管理職が変わるために必要な方法を手に入れてください。

監修者プロフィール

迫間 智彦

X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

目次

1)管理職が変われない理由12選

管理職が変われない理由を12個お伝えします。

環境要因 時代の急速な変化に追いつけなくなっている
組織要因 組織の構造やプロセスの制約がある
経営層が自身の地位や権力を守ろうとしている
経営層が管理職に迎合している
変化に対して保守的な組織文化がある
情報の不足や透明性が欠如している
「言ったもん負け」の組織文化がある
組織から管理職へのサポートが不足している
報酬体系や評価制度が不適切である
管理職自身の要因 プレイヤーとしての視点を持ち続けている
自己成長や学習が欠如している
能力や責任の認識が不足している

時代の急速な変化に追いつけなくなっている

管理職が変われない理由として、急速な時代の変化に追いつけなくなっていることがあげられます。考え方や技術の変化に、管理職自身の変化スピードが追い付いていないのです

管理職の多くは40代前後でしょう。昔の成功体験に引きずられ、新しい働き方やテクノロジーを無意識に拒絶したり、変化しようとしても、追いつくことが難しい場合があります。

例えば、労働基準法が改正されて残業時間の規制が設けられたのも大企業では2019年4月から、中小企業でも2020年4月から施行からです。テレワークやビジネスチャットが普及したのも2020年の新型コロナウイルスの感染がきっかけとなった組織が多いです。

このような大きな変化は、管理職が多くの時間を過ごしてきた働き方と変わり過ぎています。こうした急速な変化についていけず、変わることを諦めてしまっている可能性があります

組織の構造やプロセスの制約がある

管理職が変われない理由として、組織の構造やプロセスの制約が挙げられます。管理職が変わろうとしていても組織の構造やプロセスが管理職の変化を阻害しているのです。

例えば、組織の構造が煩雑で階層的な場合、情報や意思決定が上位から下位へと一方向に流れる傾向があります。こうした組織構造は、管理職自らの裁量権やイニシアティブの発揮を削ぎ、変化の余地を与えられない場合があります

また既存の構造やプロセスが固定化されている場合も同様に、管理職の変化を抑制していることもあります。

経営層が自身の地位や権力を守ろうとしている

経営層が自身の地位や権力を守ろうとしていることも、管理職の変化を阻止する理由となります。管理職の提案や変化によって、自分の地位や権力が揺らぐ可能性があると、変化を阻止しようとするためです。

経営層は自身の地位や権力を確保するために、組織内でのポジションや影響力を維持しようとする場合があります。管理職が変化を推進しようとすると、経営層は自身の地位を脅かす存在を排除しようとし、管理職の変化を無意識的に止めてしまう可能性があります。

経営層が自身の利益や保身を優先することで、管理職の自主性やイノベーションの意欲が抑制される可能性があります

経営層が管理職に迎合している

経営層が管理職に迎合していることも、管理職が変われない理由の一つです。経営層が管理職に対する厳しいフィードバックや変革を控えてしまうためです。

例えば、人材不足により、今の管理職に辞められると困るという理由で、管理職が自身の役割を果たせていなくても、厳しいフィードバックをせずに、許してしまう場合があります。

このように経営層が管理職に迎合することで、管理職に対する変化や改善の必要性が見逃され、問題の根本原因が解決されずに放置される可能性が高まります

変化に対して保守的な組織文化がある

変化に対して保守的な組織文化があると、管理職が変わりづらくなります。伝統的なやり方や既存の慣行を守ろうとする文化が、変化への抵抗感を生むためです。

保守的な文化ではリスク回避が重視されるため、管理職は変化を促すことに消極的になり、現状維持に向けた行動を取ることが多くなります。
また、保守的な文化では失敗への寛容度が低い場合が多く、管理職は失敗を恐れ、変化を進めるよりも安全な道を選択するようになります。

このように変わることでリスクを負ったり、自身の評価が落ちる可能性があると感じると、変われなくなります

情報の不足や透明性の欠如している

組織内で情報が適切に共有されず、透明性が欠如している場合、管理職が変化の必要性や目的を理解することが難しくなります。情報の不足や不透明性は、管理職が現状や課題を正確に把握し、必要な変化を実行するのを妨げるためです。

例えば、組織内での重要な決定や変更が、関係者に適切に伝えられない場合、管理職はその変化の背景や目的を理解することが難しくなります。すると情報の不足によって誤解や憶測を生み、管理職の意思決定に混乱をもたらす可能性があります。

このように、どのように変化したらいいのかがわからない状況を生み出していることで、管理職が変われなくなります

「言ったもん負け」の組織文化がある

管理職が変われない理由として、言ったもん負けの組織文化があることも挙げられます。管理職が自身の仕事量を増やさないようにしたり、責任を回避するためです。

より良くするための意見は持っているものの、意見を言うと自分ひとりに仕事を押し付けられてしまうと思うと、自分の仕事を増やしたくないがために、意見を言わないようになります。

言ったもん負けの組織文化では、管理職は自身の地位や評価を守るために、変化や新しいアイデアを提案することを避ける傾向があります

(参考)「意見を言わない社員」は組織へのリスク大⁉意見を言わない10の理由と対応策をご紹介

組織から管理職へのサポートが不足している

組織から管理職へのサポートが不足していることも、管理職が変われない理由の一つです。管理職は、新たなスキルの習得を促せていなかったり、メンタルケアなどができていないことがあげられます。

例えば、管理職に必要なマネジメントスキルや、最新のAIスキルなどが挙げられます。新たに学ぶ機会がないと身につけられません

また、管理職になると管理職ならではの悩みや不安が出てきますが、それらを解消する場所がないと自己肯定感が下がり、変化を避けるようになります

管理職としての責任を持てるように変わってもらうためにも、管理職に足りないスキルや不安についてサポートすることが必要です。

当社では、管理職研修のご支援などもしていますので、よろしければご活用ください。

報酬体系や評価制度が不適切である

報酬体系や評価制度が不適切であることも、管理職が変われない要因になります。組織の報酬体系や評価制度が、変化を奨励するような仕組みになっていない場合、管理職が変化に取り組むことにメリットを感じられないためです。

管理職が労力を使って変わっても、適切な評価がされない場合は、管理職は自己成長や努力を継続する動機づけが低下し、変化を求める意欲が減退します。安定性や安全性を重視し、変化やイノベーションを進めることに踏み切りにくくなります。

プレイヤーとしての視点を持ち続けている

管理職が変われない理由として、プレイヤーとしての視点を持ち続けていることも挙げられます。プレイヤーと管理職とでは、期待されている役割が異なるためです。

プレイヤー視点とは、個々の業務やタスクに集中し、自身の業績や成果を重視する姿勢を指します。
この視点を持ち続ける管理職は、自身の業務に対する執着や保守性が高まり、組織全体の視点や戦略的な判断が欠如する傾向があります。そのため自身の功績やスキルに注目し、組織全体のニーズや方向性を見失いがちです。

その結果、新しいアイデアや変化を受け入れる意欲が低下し、現状維持や個人の利益を優先する傾向が強まります

自己成長や学習が欠如している

管理職が自己成長や学習に対する意欲や努力を欠いている場合、新しいスキルや知識を習得し、変化に適応する能力が不足する可能性があります。既存の知識や経験に依存しようとする傾向があるためです。

例えば、営業で今までの対面形式のやり方に固執して、オンラインでのやり方を拒絶するようなことが起こります。他にも、若い世代の考え方を理解しようとしないで、自分なりの正義を押し付けるようなこともおきます。

このような自己成長や学習の欠如が管理職の能力や柔軟性を制限し、変化を妨げる要因となります

役割の認識が不足している

管理職が自身の役割を適切に認識していない場合、変化をリードする自信や決断力が不足する可能性があります。どの方向に変化すべきかを判断する基準が欠如しているためです。

管理職が自身の役割や責任を明確に理解していないと言う不確実性の中で、変化を促進することは難しいです。また、自身の役割を認識していないと、決断力や行動力も低下し、変化に対する積極的な対応ができなくなります。

このように管理職が変われない理由は、時代や環境、組織構造、管理職自身という3つの要素によって起きています。

2)管理職が変われないことで組織に生じるネガティブな影響6選

管理職が変われないことで、組織に次のようなネガティブな影響が生じます。

・組織の成長鈍化
・イノベーションが起きない
・競争力の低下
・社員のモチベーション低下
・生産性の低下
・人材の流出

それぞれ説明します。

組織の成長鈍化

管理職が変わろうとせず、組織内での新しいアイデアやプロジェクトが停滞する場合、組織全体の成長が鈍化します。管理職は組織の中核を担っているためです。

管理職は戦略の立案や実行、プロジェクトの管理、チームの指導や育成など組織の中核という重要な役割を果たしています。しかし、管理職が変化を嫌い、新しいアイデアやアプローチを取り入れようとせず、過去の成功体験にとらわれるなどの態度や行動が見られる場合、現状維持の状態が続き、組織は革新的な発展のチャンスを逃すことになります

イノベーションが起きない

管理職が変わらないと、新しいアイデアやプロジェクトが育たず、イノベーションが起きなくなります。現状維持や従来のやり方に固執することになるためです。

新しいアイデアについて十分に検討されることなく、「なんとなく怖いから」「効果が証明できないから」「他社ではまだ使用されていないから」などの理由で時代に合わせて変わっていくことをしないと、イノベーションは起きません。

管理職が変化に対する抵抗が強いと、新しいアイデアが育まれず、イノベーションが生まれにくくなります

競争力の低下

競合他社が変化に適応し市場での位置を強化する中で、管理職が変化に対応できない場合、競争力が低下する可能性があります。変化に対する柔軟性やスピードについていけなくなるためです。

競争が激化する中、迅速な意思決定や実行力が求められる場面で、管理職が変化を進められないと、競争上のチャンスを逃すことになります。

競争相手が新しいアイデアやテクノロジーを採用し、市場ニーズに応える中で成長する中、プロジェクトの判断を迫られる管理職が変化を拒絶すると、競争力が低下し、市場シェアを失うことになります

社員のモチベーション低下

管理職が変われないことで、社員のモチベーションも低下します。社員が意見やアイデアを出しても無視されたり、否定されたりする経験が続くと、自らの存在意義や意欲を見出せなくなるためです。

自分がクライアントやユーザー、組織のためを思って考えたことも、前例がないという理由などで挑戦させてくれないと、組織に対して諦めを感じ、ただ言われたことをするだけの受け身の社員となってしまいます

生産性の低下

管理職の変化がないと、生産性や効率性に悪影響を及ぼします。古いやり方やプロセスが固定化されたままでは、効率性の改善や生産性の向上に対する新しいアイデアや取り組みが生まれにくいためです。

管理職が自分のやりやすいやり方を維持しようとして、新しい方法やテクノロジーの導入を拒否すると、効率が悪いままのやり方が続いたり、生産性のない作業を求められるなどして結果として生産性が低下します

また、管理職が変化を受け入れない人だという印象がつくと、メンバーは新しい生産性を高めるためのアイデアを提案しても無駄だと感じ、改善されることがないままの状態が続き、生産性が上がることはありません。

優秀な人材の流出

管理職が変われない組織では、優秀な人材の流出が起きることもあります。組織内での変化が進まないことに失望したり、成長の機会を求めて他の組織に移ることを検討するためです。

優秀な人材は、自身のスキルを発揮してクライアントやユーザー、組織をより良くすることに対してやりがいを感じ、そのためには新しい考え方などを取り入れることが多いです。しかし、やれることが制限されてしまうと、自己実現や成長が阻害されてしまい、仕事へのやりがいを見いだせなくなります。

管理職が変われない組織に対しては優秀な人材は自らのポテンシャルを十分に発揮できないと感じ、他の組織に転職することを選択する傾向が高まります

管理職が変われないことで、組織にとってこのようなネガティブな影響が起こります。

3)管理職が変わる8つの対策

ここからは、管理職が変わるための具体的なアプローチをお伝えします。

管理職に対して適切なアプローチをすれば、「管理職は変わります」。時間がかかるかもしれませんが、今から紹介する管理職が変わる8つの対策を参考に、自組織にあった対策を実施していきましょう。

【管理職が変わる8つの対策】
・組織の構造やプロセスを見直す
・心理的安全な組織文化をつくる
・イノベーションを奨励し、リスクを取ることを容認する組織文化を育成する
・情報共有のプロセスを改善し、透明性を高める
・公平かつ明確な報酬体系や評価制度を導入する
・管理職の役割と責任を明確化する
・管理職のスキルの向上を支援する
・どのような管理職でありたいかを考える機会をつくる

①組織の構造やプロセスを見直す

管理職が変われるようになるために、組織の構造やプロセスの見直しが必要です。現在の組織の構造やプロセスが変化や成長に適応していない場合、管理職が新しいアイデアやイノベーションを実現するのに制約を受けることがあるためです。

組織の構造やプロセスの見直しというのは、例えば次のようなことです。

・意思決定の権限の一部を管理職に委任する
・新しい考え方やアイディアを承認するまでに必要なプロセスを短縮する
・経営層が管理職が変わろうとすることを阻止することなく支援する構造を作る
・情報の共有や意見交換を促進するための会議の設計を見直す など

組織の構造やプロセスを見直すことで、より柔軟で効率的な運営が可能になり、管理職が新しいアイデアや戦略を実行に移しやすくなります

②心理的安全な組織文化をつくる

管理職が変われるためには、心理的安全な組織文化を構築することが不可欠です。心理的安全性とは、「メンバー同士が自然体で、恐れることなく意見を伝えあい、よりよくするための意識行動ができる状態」です。

心理的安全な組織があると、失敗や批判を恐れて保守的な方針をとるのではなく、新しい考えや取り組みを提案しやすくなります

一方、心理的安全性が欠如していると、情報の隠蔽や意見の抑制につながり、組織内でのオープンなコミュニケーションや協力が妨げられます。これによって、管理職は変化を促進する力が弱まります。

心理的安全性が確保されている組織では、管理職が保守的になり過ぎず適切に変わろうとできるようになります

心理的安全性の環境を作るためには、心理的安全性の鍵を握る、管理職・リーダーが心理的安全性を正しく理解し、自身の「心理的柔軟性」について理解を深め、自身の言動や働きかけを見つめ直すところから始めることをおすすめします。

自身やチームの状態を客観的に捉えられるようになると、心理的安全性の高いチームを創るために自身が変わることと、チームに働きかけることを考えられるようになります。

管理職やリーダーに対して心理的安全性の研修を実施したい場合は、下記のコラムをご覧ください。

心理的安全性研修のゴールは何?|企画から実施方法まで詳しく解説!
テレワーク時代の”チームの心理的安全性”の創り方

また、アーティエンスでは心理的安全性向上研修を実施していますので、興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。

③イノベーションを奨励し、リスクを取ることを容認する組織文化を醸成する

イノベーションを奨励し、リスクを取ることを容認する組織文化を醸成することも、管理職が変われるようになるために必要です。そのような環境が作られると、失敗や挑戦を恐れずに前進できます

組織全体がイノベーションを奨励する雰囲気に包まれると、管理職も新しい視点やアプローチを採用しやすくなります。また、イノベーションを奨励する文化は、社員のエンゲージメントを高め、組織全体の成果を向上させる効果も期待できます。

リスクをとることを恐れて現状維持のままでは、変化の激しい今の時代、実質的には退化していることになってしまいます。そのことを認識し、組織としてどの程度までのリスクを容認できるのか、という判断軸を設けておきましょう。そしてそのリスクの範囲以内であれば、イノベーションを推奨する、というような組織にしていくと、管理職も新しいことにチャレンジしやすくなり変化が現れやすくなります。

④情報共有のプロセスを改善し、透明性を高める

情報共有のプロセスを改善し、透明性を高めることは、管理職が変革に向けた方向性を理解し、適切に行動するために不可欠です。管理職がどのように変わるべきかの方向性を定めるための情報がないと、適切な方向に変われないためです。

管理職は、組織が直面する課題や機会を正しく把握し、適切な戦略を策定するために、包括的な情報にアクセスする必要があります。情報が不十分である場合、管理職は適切な意思決定を行うことが困難になり、変化の方向性を見失いやすくなります。

情報共有のプロセスを見直すためには、まず現在どの情報が足りていないのかを洗い出します。そしてその情報がどこで止まってしまっているのかという原因を追求しましょう。そこまでできると、自ずと解決策が考えられます。

また、経営層など組織の上層部だけしか知らない情報というものは最小限にして、できる限りの情報をオープンに共有しておくことで、信頼関係も築けますし、管理職からの良い提案も期待できるようになります。

透明性の高い情報共有のプロセスが整うと、管理職はより的確な戦略を立て、組織全体を変革の方向に導けます

下記コラムは、情報共有プロセスの参考になると思いますので、よければご覧ください。
会議が非効率になる原因とは?会議の進め方のコツと効率化に成功した事例

⑤管理職同士の協働・共創意識を強める

管理職が変われるようにするために、管理職同士の協働・共創意識を強めることも大切なポイントです。管理職がより良くしようと意見を出しても、言ったらその仕事を全て一人で背負わないといけない状態では、管理所は意見を出すこともやめてしまうようになるためです。

協働・共創意識を育むことで、管理職同士がチームとして連携し、問題を解決し、イノベーションを生み出せます。各管理職が率先して意見を出し合い、知識や経験を共有することで、より質の高い意思決定が可能になります。
また、チーム全体で責任を共有することで、個々の負担が軽減され、リスクが分散されます。これにより、管理職はより積極的に変革に取り組めて、組織全体がより迅速に変化に適応できます。

そのような協働・共創意識をつくるためには、管理職同士のチーム力を高める施策が必要です。例えば、管理職研修でワークショップを行うことも一つの方法です。管理職が抱えている不安や悩みを吐き出して共感し合いながら、一緒に解決策を見つけていく、という体験をする中で、お互いの関係性が築かれていきます。その状態になると、お互いのために協力し合おうという意識が高まり、共創できる状態になれます。

アーティエンスでは、そのための管理職研修をさまざま用意しておりますので、ぜひご覧ください。

⑥公平かつ明確な報酬体系や評価制度を導入する

公平かつ明確な報酬体系や評価制度の導入は、管理職が変化を求める意欲を高める上で重要です。変化を評価する仕組みが整っていないと、管理職は変化に取り組む意欲を失うためです。

例え管理職がクライアントやユーザー、組織にとってポジティブな影響があると判断して実施したことに対して、もし失敗した時に、失敗したことを責められて評価を下げられてしまっては、再び挑戦しようという気持ちにはなれません。

評価において、下記図のように失敗の定義をすることも一つの方法です。管理職でしたら、不確実性以上の失敗をよい失敗と定義するのもいいでしょう。

出典:「チームが機能するとはどういうことか」 エイミー・C・エドモンドソン

管理職は自らの行動が評価されることを期待しています。しかし、変化を促進するための報酬や評価の基準が不明確であったり、公平性が欠如していると感じると、管理職は変化に取り組むことへのモチベーションが低下します。

変化への取り組みが公平かつ適切に評価される仕組みが整っていれば、管理職は積極的に変化をリードしようとするでしょう

⑦管理職の成長を支援する

管理職に対して、適切な支援をすることも欠かせません。例えば、足りないスキルについて学ぶ機会の提供や、新しいツールや考え方についてのレクチャー、最近の若い世代の特徴や、1on1の機会を作るなどが挙げられます。

組織は管理職が必要なスキルや知識を身につける機会を提供することで、管理職が変化に柔軟に対応できるようサポートする必要があります
管理職としてこれからの時代新たに必要となる主なスキルは次のようなものです。

リーダシップ
マネジメント
心理的安全性
チームビルディング
目標設定・管理
アンラーニング
システムシンキング

これらのスキルは今までの経験から身についていない部分も多いため、研修などでスキル強化の支援を行いましょう。なお、アーティエンスでもこれらのスキルを鍛える管理職研修を実施しています。詳細を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

また、新しいツールや考え方についてのレクチャーやトレーニングを提供することも大切です。管理職が最新のトレンドや若い世代の特徴や考え方についての理解を深めることで、適切な変化の方向性を把握できるようになります。

さらに、管理職に対して1on1を行うことで、個別の不安や悩みを共有し、解決策を探る場を提供することも重要です。個人的に話を聞いていくと、管理職が変われない理由が見えてきやすくなります。

管理職に必要なスキル、新しいツールや考え方のレクチャー、管理職への1on1という支援を行うことで、管理職は自己成長を促進し、組織全体の成功に貢献するために変わろうという動きが出てきます

⑧管理職の役割を明確化する

組織が管理職に対してどのような役割を期待しているのかを明確にしておくことも、管理職が変われるようになるために必要です。明確な役割期待は、管理職が自分の責任や目標を理解し、それに応じて行動することを促すためです。

役割期待が明確であれば、管理職は自己評価を行い、自己成長のための計画を立られます。逆に役割期待が不明確だと、管理職は自らの役割や責任を理解できず、目標達成に向けた努力が十分に行われない可能性があります。

そのため、「組織としてどのようなところを目指していて、そのために管理職に対してどのようなことを期待しているのか」ということをわかりやすく言語化しておくことが大切です。この時の文言は、具体的で誰が見ても同じ理解をできる内容にしましょう。

管理職としての役割が明確になると、そこに向けて自主的に変わろうとする動きも期待できます

管理職の役割に関して、詳しく知りたい方は下記コラムをご覧ください。
管理職の新しい役割とは│管理職不遇の時代を切り拓く

管理職が変われるようになるための対策案を8つ紹介しました。管理職に対して適切な対応策を実施することで、管理職が変われる状態になれるようにしましょう。

4)管理職が変われるようになった事例

アーティエンスが支援した企業様の管理職の方の変化についてお伝えします。

【企業情報】
・業種:インターネットサービス事業
・社員数:約150名

【実施研修】
管理職研修
パフォーマンスなど短期的な成果を高めることと、チーム力など中長期的な成長を促すことを目指し、管理職としての当事者意識の醸成とスキルアップを通してチーム力を高めるアプローチを行いました。

この企業は研修前、変化に対して保守的な組織文化や、「言ったもん負け」の組織文化がありました
変化を恐れてコンフォートゾーンから抜けようとしていなかったために管理職が変われず、結果としてパフォーマンスが低下している、という状態になってしまっていました。このことに危機感を感じた人事の方から相談を受けました。

目指す状態は、管理職を中心にチーム内の心理的安全性を高めながらラーニングゾーンに向かい、チームとしての中長期的なパフォーマンスを高めていくことです。

そのためには居心地の良いコンフォートゾーンから脱却し、管理職やチームメンバーが、今よりもパフォーマンスを良くしたいという意欲と行動を持つことが必要でした。

※コンフォートゾーンとは、心理的に安全領域ではあるが、チャレンジする人がいないゾーンです。ラーニングゾーンは安全性がありながらもチャレンジしているゾーンです。
コンフォートゾーン・ラーニングゾーンを図で表すと次のようになります。

1年を通して、管理職が変わることの必要さに気づき行動できるようになること、そのために必要な管理職同士の関係性を強めることを目的とした管理職研修を実施しました。
研修一日目の始めは「今ある仕事をこなすことで手一杯で他のことなんて考えられない」というコメントが多かったです。

しかし研修を通して管理職同士の関係性も深まり率直な意見が出やすくなると、

「でも今〇〇をしないと変わっていけないよね」
「〇〇することが必要だよね」

という新しいことにチャレンジしたいという意欲が湧いていました

そして1年後には、管理職同士で対話をする文化が形成されて研修以外でも集まる場が設けられました
また、中途採用の面談の中で、管理職自身がチームの成果とメンバーの成長に貢献したい想いをありありと真剣に語っていた、というお話も伺いました。

このように、変わることが大変・面倒だと感じている管理職に対しても、研修を通して変わることの必要性を感じ、新たな挑戦を一緒にできる仲間ができることで、変われない状態から一歩を踏み出せるようになります

管理職が変われない根本的な原因は、自組織にいると見えにくくなってしまう部分もあるため、必要に応じて外部の力を頼ることもおすすめです。

アーティエンスでは組織の状況について対話を通して理解を深めていき、必要な対策についてアドバイスしております。具体的な相談をしたい場合はこちらからお問い合わせください

5)まとめ|変わらない管理職を変えるためにおすすめの研修

本コラムでは、環境要因、組織要因、管理職自身の要因という3つの観点から管理職が変われない理由をお伝えし、管理職が変われるようになるための対策を紹介しました。

管理職が変われない理由は次の12個です。

環境要因 時代の変化に追いつけなくなっている

組織要因

組織の構造やプロセスの制約がある
経営層が自身の地位や権力を守ろうとしている
経営層が管理職に迎合している
変化に対して保守的な組織文化がある
情報の不足や透明性が欠如している
「言ったもん負け」の組織文化がある
組織から管理職へのサポートが不足している
報酬体系や評価制度が不適切である
管理職自身の要因 プレイヤーとしての視点を持ち続けている
自己成長や学習が欠如している
能力や責任の認識が不足している

管理職が変われない理由は、時代や環境、組織構造、管理職自身という3つの要素によって起きています。

管理職が変われないこと組織に起きるネガティブな影響は次の6つです。

・組織の成長鈍化
・イノベーションが起きないの停滞
・競争力の低下
・社員のモチベーション低下
・生産性の低下
・人材の流出

このようなネガティブな影響を起こさないようにするためにも、管理職が変わるようになる8つの対策を紹介しました。

・組織の構造やプロセスを見直す
・心理的安全な組織文化をつくる
・イノベーションを奨励し、リスクを取ることを容認する組織文化を育成する
・情報共有のプロセスを改善し、透明性を高める
・公平かつ明確な報酬体系や評価制度を導入する
・管理職の役割と責任を明確化する
・管理職のスキルの向上を支援する
・どのような管理職でありたいかを考える機会をつくる

管理職に対して適切な対応策を実施することで、管理職が変われる状態になれるようにしましょう。

なお、アーティエンスでは、管理職に変化を促すための管理職研修を実施しています。

管理職に変化を促すためには、ある程度の期間が必要になるため、早い段階で対策を検討し始めることをおすすめします。具体的な相談をしたい場合はこちらからお問い合わせください

管理職が変わることで業績の向上やエンゲージメントの向上など、組織にとってポジティブな影響をもたらせられるようにしましょう。