自組織に最適な管理職研修のカリキュラムを作成しよう|成功事例で詳しく解説

更新日:

作成日:2023.7.20

管理職研修 カリキュラム

「管理職研修のカリキュラムってどうやって作ればいいのだろうか…」

組織全体への影響も大きい管理職研修をどのようなカリキュラムで実施していけばよいのか、悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

管理職の方々は今まで培ってきた経験や知識から、自分なりのやり方や考えもお持ちのため、研修での新しい学びを即実践したり、ご自身が変化したりすることに抵抗を感じてしまう場合があります。
そのため、研修も1回きりではなく、一定期間のカリキュラムを組んで定期的に実施することが望まれます。

そこで本記事では、研修のプロが監修した管理職研修のカリキュラム例をご紹介し、その後、具体的なカリキュラムの作成方法をお伝えします。

管理職研修のカリキュラムを作るメリットは3つあります。

◆目的とゴールの明確化
カリキュラムを作ることで、管理職研修の目的やゴールを明確にすることができます。管理職自身が管理職研修を受けるメリットがあることを理解してもらうために必要です。

◆一貫性の確保
カリキュラムを作ることで、研修内容の一貫性を確保できます。一貫性のある研修カリキュラムは、管理職に対して研修の全体像を理解しやすくし、学習への期待を高める効果もあります。

◆成長促進
カリキュラムを作ることで、管理職の成長を促進できます。適切な内容を適切なタイミングで行えるようにすることで、学びの効果を高めることができます。

この記事を読むことで、自組織に適した管理職研修のカリキュラムを作成するために必要な情報を知ることができます。組織が求める管理職になってもらうために、ぜひ、自組織にあった適切な管理職研修のカリキュラムを作成し、管理職の変化を促せるようにしましょう。

管理職研修のカリキュラムを検討している人事責任者様・担当者様へ

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執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1)研修のプロが監修!管理職研修のカリキュラム例

当社が企業様と一緒に作成した、管理職研修のカリキュラムを2つ紹介します。
ぜひ、カリキュラム作成の際のご参考にしてみてください。

管理職が起点となって、VUCAを切り拓くための研修カリキュラム

企業情報 業種:インターネットサービス事業
従業員数:約150名
課題 マネージャー自身が仕事を抱え込み、チーム力を高められないこと
カリキュラムの作り方 成功循環モデルを軸に、組織・管理職の状況を考慮しながら、管理職が参加できる頻度を考えてカリキュラムを設定
実施期間 2ヶ月に1回×5日間の約9ヶ月
結果 ・管理職同士での悩みの共有など対話をすることが当たり前になり、それぞれのチーム力が強くなるだけではなく、管理職同士の一体感も高まった
・管理職自身が自チームの問題を正面から捉え、以前より積極的に対応しようとしており、上層部の方にも管理職の変化を認識してもらえている
※ 売上のV字回復や、新サービスが生まれるということもあった

管理職のリーダーシップ開発に向けた、約9か月間のカリキュラム

約9か月間に渡って2ヶ月に1回、全5回の研修カリキュラムです。

課題としては、マネージャー自身が仕事を抱え込み、チーム力を高められないことでした。管理職は、「自分でやったほうが早い」、「部下に任せると、辞めたり、潰れてしまう」という考えでした。個人としてのパフォーマンスの高い管理職は、孤軍奮闘している状況でした。
そのため、ダニエル・キム氏が提唱した成功循環モデル(※)をチーム内で実行し、チーム力を高めるカリキュラムの内容を設定しました。

※成功循環モデル:組織やチームとして結果の質(成果や業績)を高めるためには、関係、思考、行動の質を高めることが大切で、それらが循環することでより良い状態を創ることができる、ということを表したシステムです。

組織の状況や管理職が現実的に参加可能な頻度を考慮し、実施頻度や回数もふまえてカリキュラムを設定しました。

各研修の最後には必ず「ネクストアクション」を決めるように設計していました。そうすることで仕事で実践しやすくなり、2ヶ月に1回×5日間の約9ヶ月というカリキュラムの中で行動してみての気づきや、もやもやを振り返って次に活かしていく、という好循環サイクルを繰り返すことができました。

研修初日は、今の仕事対して強い不満を持っている管理職が3割以上いました。そこでまず、今目の前にある課題解決に繋がるスキルを付与することに注力しました。約9ヶ月をかけて管理職研修を行った結果、管理職同士での悩みの共有など対話をすることが当たり前になり、それぞれのチーム力が強くなるだけではなく、管理職同士の一体感も高まりました。また、管理職自身が自チームの問題を正面から捉え、以前より積極的に対応しようとしており、上層部の方にも管理職の変化を認識してもらえているとのことでした。実際、コロナ禍により売上が下がっていましたが、V字回復する部署や、新サービスが生まれるチームも出てきました。管理職研修担当の人事の方は、研修に参加していた管理職の方と主に中途採用面接を行っていた際、管理職自身がチームの成果とメンバーの成長に貢献したいという想いをありありと真剣に語っていた姿が見られたと話していました。大きな変化を感じたとおっしゃっていました。

このように、一人で抱え込んでいた管理職が、「困難を乗り越えるチームを創るワークショップ」という管理職研修のカリキュラムを約9ヶ月をかけて実施したことで、結果の質が高まっていきました。

経営者・管理職が、メンバーの当事者意識と主体性を解放する1年間のカリキュラム

企業規模 業種:老舗食品メーカー
従業員数:約200名
課題 経営者や管理職の指示命令が強く、メンバーの当事者意識と主体性が弱い
役職が高いメンバーが答えを持っているという文脈になっている
カリキュラムの作り方 経営者・管理職がファシリテーションスキルを身に付けることで、メンバーの当事者意識と主体性を解放し、パフォーマンスとコミットメントを高める
実施期間 1ヶ月に1回の計11回、約1年
結果 ・メンバー主体で新規事業が創られた
・エンゲージメント向上施策として、経営者・管理職が対話と施策を実行している

経営者・管理職が、メンバーの当事者意識と主体性を解放する1年間のカリキュラ

課題は、経営者や管理職の指示命令が強く、メンバーの当事者意識と主体性が弱く、組織全体がとして疲弊していました。そして役職が高いメンバーが答えを持っているという文脈になっていました
「社員が活き活きと働いてほしい」、「メンバーがもっと自発的になってほしい」という経営者と管理職の想いから、「経営者・管理職が、メンバーの当事者意識と主体性を解放する」1年間のカリキュラムしました。一年間かけて、ファシリテーションスキルを学び、会議を起点にメンバーの当事者意識と主体性を解放していくことになりました。経営者・管理職がファシリテーターとして、一年間メンバーに関わり続ける内容でした。

ファシリテーターとは、場・コミュニティに関わる人々の当事者意識・主体性を最大限発揮することを促す存在です。そのような状態を作れると、成果物の品質が高まり、また関係の質も高くなります。ファシリテーターとして意識しなければいけないことが多く、研修が始まると「ファシリテーションとはこんなにも難しいのか」という声が出ていました。しかし1ヶ月に1回、計11回の研修の中で、実践を通しながら、少しずつ意識できる部分が広がっていきました

最終回の研修では、自身がまだできていないことが多いので実践を繰り返して成長していきたいという思いを述べている方が多かったです。ただ、現場では変化が生まれているようで、経営者・管理職がファシリテータ―になることによって、メンバーから意見や意思が発信されるようになったと人事の方が仰っていました。そしてその結果、よりよいアイディアの創出やメンバーのコミットが高まり新規事業も生まれました。経営者・管理職が、エンゲージメントに対しての意識が強くなり、経営者・管理職同士が定期的に対話を行うようになりました。

このように、経営者・管理職にファシリテーターの役割をになってもらうことで、会議の質が高まり、メンバーの当事者意識と主体性を解放していきました。


今回紹介した事例のように管理職が抱えている課題と丁寧に向き合い、適切な研修内容とカリキュラムを創ることで、管理職にも変化を促すことができます。

2)管理職研修のカリキュラムの作り方3ステップ

管理職研修のカリキュラムは次の流れで作成します。

1:組織の真の課題を把握
2:コンセプトと要件定義
3:カリキュラムの策定

これらについて具体的な事例を通して、順番にお伝えします。

1:組織の真の課題を把握

組織の真の課題を把握するところから始めます。真の課題を把握できていないと、組織にとって意味のある管理職研修にならなかったり、管理職の変容を促せなかったりするためです。

組織の真の課題の見つけるためには、次のことを行います。

1、組織の課題を全て洗い出す
2、課題の関連性を確認する
3、真の課題を把握する

具体的にどのように進めていくのか、事例を通してお伝えします。本事例は、「管理職のストレスチェックの結果が悪かったため、管理職研修を行いたい」という相談から始まりました。

【企業情報】
・業種:コンテンツビジネス事業
・従業員数:約250名
・研修形式:講師派遣型

1、組織の課題を全て洗い出す

まずは組織の課題を全て洗い出すことが必要です。組織課題はさまざまな課題が絡み合っている可能性が多いためです。
事例の企業様は課題が「管理職のストレスチェックの結果が悪かった」と明確になっている状態でご相談をいただきました。しかし、すぐに研修内容の話をするのではなく、課題についてより深く対話をしていったところ、他の組織課題も浮き彫りになってきました。例えば、下記が出てきました。

・新規サービスは立ち上がるが、マネタイズする気配がない
・新規サービスの失敗が多く、現場が疲弊している
・管理職はプレイヤーとして優秀だが、チームとして仕事ができていない

これらの課題は一見別々の課題に見えますが、実は複雑に絡み合っています。
このように、他の課題もある状態だと、1つの課題を解決しただけでは根本的な解決にはならず、モグラ叩き状態になってしまう場合があります。
そのため、次に課題の関連性を確認していきました。

2、課題の関連性を確認する

課題の関連性を確認するために、システムシンキングという思考方法をもとに、組織の状況を可視化していきました。

※システムシンキングとは、物事の全体像を捉え、構造を把握するための思考法です。ロジカルシンキングのような既存の分析的思考では解決のできない問題を解決できる可能性を秘めた思考方法です。
システムシンキングについてより詳しく知りたい方は「システム思考とは|「複雑な課題」を解決に導く思考法を事例で解説!」をご覧ください。

システムシンキングを用いて作成したシステム図がこちらです。

※ 上記システム図は、お客様の言葉を尊重して作成しているため、飛躍している部分もあります。

システム図を通して分かったことは、以下のことです。

経営陣・事業部長クラスは連携が取れていて新規サービスも立ち上がっている。
しかし、経営陣・事業責任者のスピード感に、管理職・現場がついていけない。

 ↓そのために…
新規サービスは軌道に乗らず、失敗し、現場からは諦めやストレスが高まっている。
 ↓そして…
社員の精神疾患や離職などが起きている。

このようにシステムシンキングで考えると、管理職のストレスチェックの結果が悪かったという課題以外の課題も絡み合っていることがわかりました。

3、真の課題を把握する

複雑に絡み合っている課題のどこを解決したらいいのか、という真の課題を明確にするために、レバレッジポイントを確認します。

※レバレッジポイント:小さい力で大きな効果を生むポイントのことです。システム図で描いた全体の構造の中で、望ましい方向へ大きな影響を与えられるポイントを探します。

複雑に絡み合っている課題の中からレバレッジポイントを探すのはとても難しいです。課題よっても変わりますが、下記点を意識すると見えてきやすいです。

・人の意思が介入している部分を見る
・変えられる部分を見る
・個別のループ単位で見る

事例の企業様の場合は、「個人での抱え込み」と「失敗の数」をレバレッジポイントと捉えました。

レバレッジポイントが明確になったら、テーマを選定します。

レバレッジポイントについてどう対処していくか、お客様と相談を重ねた結果、2つの解決策に辿り着きました。それが「管理職同士の連携」と「チームとしての業務遂行」です。

「管理職同士の連携」では、自チーム内はもちろん、管理職同士の連携も高め、管理職個人の抱え込みを無くしていくことを真の課題にしました。
「チームとしての業務遂行」では、メンバーの個人での抱え込みや失敗の捉え方へ対応していくことを真の課題ににしました。

このようにレバレッジポイントから、真の課題を見つけることができました。

もし企業様から依頼があった課題の通りにプログラムの選定を行っていたら、他の組織課題は浮き彫りにならず、根本的な課題にアプローチすることはできませんでした。このように真の課題を見つけることで、組織課題と管理職研修のズレがなくなり、意味のある管理職研修を実施できるようになります。

2:コンセプトと要件定義

真の課題が明確になったら、管理職研修のコンセプトと要件定義を創ります。管理職研修の目的を明確化し、組織のニーズや目標に合致する効果的なカリキュラムを構築するためです。

コンセプトを決めるためには、以下の問いをします。
管理職研修を通して、何を成し遂げたいか?大切にしたいか?

この問いを投げることで、研修における価値や重要性を明確にすることができます。

要件定義は研修要件と効果要件に分けて考えることができます。要件定義を行うためには、以下の問いをします。
研修要件:研修現場でどのような変化を目指すか?
効果要件:研修で学んだことを実践することで、現場でどのような変化が起きていくか?

この問いを投げることで、研修での学びをどのように現場で活かしてほしいかを明確にすることができます。(ただし管理職研修を実施した際に全く異なる課題が現れた場合には、見直しが必要です)

事例の企業様では、下記のようなコンセプトと、要件定義になっていきました。

<研修コンセプト>

<要件定義(目指す姿)>

このようにコンセプトと要件定義を明確にすることで、具体的なカリキュラムが考えやすくなります。また、参加者や関係者に対して、研修が提供する価値やメリットを明示することもできます。

3:カリキュラムの策定

管理職研修で具体的にどのような内容を行うのか、というカリキュラムを策定します。どのようなストーリーで、目指す姿を実現できるかを考えるためです。

事例の企業様の管理職研修のカリキュラムは、下記のように全体設計をしていきました。

研修として実施したのは、「共有ビジョン」と「チーム学習」のコンテンツで2日間ですが、研修の前後もフォローを行うことで、管理職研修の学びの質を高め、結晶化していきました。

この管理職研修カリキュラムは、コンセプトで導き出した「共創の場を創る管理職〜素晴らしいサービスが生まれ続けるチーム創り〜」を達成するために下記のことをクリアできる内容になっています。

・管理職同士のチーム力を高めて、管理職としてチーム内外に良い影響を与える
・自部署チーム力を高めて、共創機会を増やす
・部下と向き合い共に成長する

これは人材育成の専門家である当社が下記の観点から、コンセプト・要件定義をクリアするための内容を設計した結果です。

・管理職同士の関係の質の向上と、管理職のリーダーシップ開発
・チーム学習を通しての課題解決
・行動変容と組織変革の促進

管理職研修は、会社の中枢を担う管理職に対して実施するもののため、細心の注意が必要です。人材育成の専門知識がない中で研修を企画すると、問題がより大きくなってしまうこともあるためです。そのため管理職研修の設計にはプロ・専門家の視点を入れることを強くおすすめします。

このように真の課題を見つけ、コンセプトと要件定義を明確にすることで適切な管理職研修のカリキュラムを作成することができます。

カリキュラムの作成は、研修の目標達成や管理職・組織の成長を促進するための重要なプロセスです。効果的なカリキュラムを設計できると管理職の変容を促すことができます。
組織内だけで作成するのが難しい場合は、当社など人材育成会社にご相談していただけたらと思います。

【参考コラム】より詳しく管理職研修について知りたい方へ
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管理職研修で高い研修効果を得るための進め方ガイド
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3)まとめ~アーティエンスは管理職研修のカリキュラム作成をサポート!~

本記事では、研修のプロが監修した管理職研修のカリキュラム例をご紹介し、その後、具体的なカリキュラムの作成方法をお伝えしました。ぜひ、自組織にあった適切な管理職研修のカリキュラムを作成し、管理職の変容を促せるようにしましょう。

アーティエンスでは、管理職研修のカリキュラム作成をサポートしています。貴社の課題に適した、管理職研修カリキュラムを一緒に作成いたしますので、お気軽にお問い合わせください

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