『業務量多い管理職』問題を解決【原因別】経営者・人事が取るべき対策を紹介

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「管理職が業務量の多さに疲弊している…なんとかしなければ…」
このようなお悩みをお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

管理職の業務が多すぎると、管理職は今すぐに解決すべき問題にのみ焦点を当ててしまう可能性があります。
チームや組織全体の成長という長期的な目標や、部下の成長をサポートすることが難しくなります。その結果、組織全体の進歩が遅くなります

こうした事態が起きないよう、管理職の業務量の多さに対応することが必要です。

本コラムでは、管理職の業務量が多くなる原因と対策をお伝えします。
管理職の業務量を適切にし、チームや組織の成長を促せるようにしましょう。

このコラムで分かること

  • 【原因別】管理職の業務量の多さを解消する対策
  • 一時的に管理職の負担感を軽減する3つの方法
  • 管理職の業務量が多いことで起きる問題
執筆者プロフィール
迫間 智彦
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

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1)【原因別】管理職の業務量の多さを解消する対策

管理職の業務量が多くなる4つの原因と、業務量の多さを解消するための対策について紹介します。

1-1. 役割・責任の多さによって管理職の業務量が多い場合

管理職の業務量が多くなる1つ目の原因は、管理職の役割・責任が多いことです。管理職は、短期的と中長期の両方の視点を持った責任のある判断を任されることが多く、多種多様な役割を求められます。

最近の管理職は以下の役割を担っていることが多いです。

・チーム・部署における業務遂行
・職務権限に基づく意思決定・決裁
・情報の伝達と共有
・メンバーの育成・評価
・チームビルディング・モチベーション管理
・労務管理・健康管理
・コンプライアンス管理
・プレイヤー業務との両立
・リーダーシップの発揮

【関連コラム】
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これらの役割を全て担うことで、業務量が多くなっている場合があります。

【対策】役割や責任を調整

・仕事をアドオンする際は他の業務を減らす
・強化してほしい役割以外の優先度を下げてもらう

これらの対応で調整しましょう。また、部下に依頼できることは部下に権限移譲しても良いでしょう。

もちろん、組織としては管理職に彼らの役割を完璧に果たしてもらいたいでしょう。

しかし、過度な役割・責任が管理職を疲れさせ、健康を害したり、退職に追い込んだりすることがあります。もし管理職が辞めてしまった場合、新しい管理職を一から育成するのは非常に手間がかかります。ですから、組織の期待と管理職が実際に担える業務の量を見極め、調整することが大切です。

役割・責任の多さによって管理職の業務量が多くなっている場合は、管理職に求めている役割や責任を調整することで、業務量を解消しましょう。

1-2. 意思決定・合意形成に時間がかかり管理職の業務量が多い場合

管理職の業務量が多くなる2つ目の原因は、意思決定・合意形成に時間がかかることです。物事を前に進めるために確認が必要な人が多いほど、業務量が増え、結果として時間もかかるようになります。

現代は変化が速く、確認作業に多くの時間を要すると、顧客が求める商品やサービスをタイムリーに提供できなくなり、成果を出すことが難しくなります

以前は、重要な決定をする際には情報を集め、計画を緻密に練り、必要に応じて上層部に報告し、じっくり議論した後に実行する、という手順が一般的でした。

しかし、現在は変化が激しいため、このような従来の方法では、決定を下した時点で既に状況が変わってしまい、変化に迅速に対応できないことがあります。そのため、迅速に行動し、早期に失敗を認めて修正し、そこから学び、成長する「アジャイル」なアプローチが、管理職の意思決定プロセスにも必要とされています。

【対策】意思決定・合意形成プロセスの見直し

このような場合の対策方法は、意思決定・合意形成のプロセスの見直しです。
例えば、意思決定のための会議のデザインの見直しや、合意形成を取るまでの情報共有をスムーズに行えるようにするなどです。

意思決定や合意形成のプロセスの中で、情報や状況の共有が滞る場面を特定し、それらを改善することで、全体の流れをスムーズにすることができます。このような改善により、管理職の手間が省け、確認の待ち時間が短縮されます。その結果、業務を進めやすくなり、管理職の仕事量が減少し、効率的な業務運営に繋がります

意思決定・合意形成に時間がかかり管理職の業務量が多くなっている場合は、管理職が携わっている意思決定・合意形成のプロセスを見直すことで、業務量を軽減できるようにしましょう。

1-3. 部下が多いことで管理職の業務量が多い場合

管理職の業務量が多くなる3つ目の原因は、部下が多いことです。部下が多いとフォローやマネジメント、育成、面談などの業務が増えます

さまざまな研究によると、部下の人数は多くても10人までが良いとされています。

・Amazonでは「ピザ 2 枚チーム」と言って、ピザ 2 枚では足りない大きさのチームを編成すべきではないと、10 名未満のチームであることを理想的としています。

・スペインのアストゥリアス公立大学の研究によると、理想的な部下の数は5〜7人程度であるとされています。

・ダン・ピンクは自身の著書である『Drive』の中で理想的な部下の数を5人から9人程度としています。

チームが小規模であるほど、お互いの距離が近くなり意思決定もスムーズになります。また、付与される権限が多くなるため、それぞれの主体性も発揮されやすく、従業員の満足度も高まる傾向があります。

もしも今、部下を10名以上抱えている管理職がいる場合は、部下の人数を調整する必要があるでしょう。

【対策】組織構造を変え、部下の人数を調整する

管理職が抱えている部下の人数が多い部署から管理職の人数調整を行ったり、部署を2つに分けるなどの対応も必要になる場合があります。

管理職が抱える部下が適切な人数になることで、部下のフォローやマネジメント、育成の業務量を軽減できます。また、今までより密なコミュニケーションを取れるようになることで、チームの関係性が向上し、成果が高まることも期待できます。

部下が多いことが管理職の業務量を多くさせている原因の場合は、適切な部下の人数になるように組織体制を整えましょう。

1-4. 部下の仕事を巻き取ることで管理職の業務量が多い場合

管理職の業務量が多くなる4つ目の原因は、部下の仕事を巻き取ってしまっていることです。本来ならば部下に依頼する仕事を管理職自身で行う状態になっていると、業務量は増える一方です。

部下の仕事を巻き取ることになる理由として3つ考えられます。

①働き方改革によって部下の残業時間が制限されているため
②部下に任せられないと思っているため
③自分でやった方が早いと思っているため

①の理由の場合の対策

部内の業務量が多すぎる可能性があります。部下が業務をサボっているわけではないのに業務時間内で仕事を終えられていない場合は、業務量の調整や人数の増加を検討しましょう

また組織としては、必要のない仕事(無駄な資料作成や会議)をなくす努力を行うことや、戦略・戦術において選択と集中を行うことも必要です。何もかも行う選択では、仕事の品質下がります。

②③の場合の対策

②と③は管理職自身が、部下のスキル不足を感じている際に起こります。部下育成を強化する必要があるでしょう。

管理職が部下に仕事を任せられない理由を特定し、足りないスキルが何かを明確にすることが大切です。その上で、必要なスキルを身につけるための研修や学習の機会を組織が提供することが解決策となります。
このアプローチにより、部下のスキルアップを促し、より多くの業務を効率的に分担できるようになります。

なお、管理職が部下の仕事を巻き取ると、部下の成長機会が奪われることにもなります。結果、部下の成長は鈍化してしまいます。このような悪循環を起こさないためにも、管理職が仕事を依頼できる程度のスキルを、部下自身が持っておくことが必要です。

管理職が部下の仕事を巻き取ることで業務量が多くなっている場合は、業務量と人数の調整、または、部下育成の強化を行い、管理職が自ら業務を負わないようにする必要があります。

部下育成に関しては、下記コラムを参考にしてください。

【OJT研修】効果を高めるための目的・内容・進め方
管理職が部下育成で押さえるべき5ポイント|対象社員別の取り組みが鍵!

このように管理職の業務量が多くなっている原因として考えられるのは、次の4つです。
①管理職の役割・責任が多いこと
②意思決定・合意形成に時間がかかること
③部下が多い
④部下の仕事を巻き取ってしまっていること

それぞれの原因に対して次のような対策を取ることが必要となります。
①管理職の役割や責任を調整すること
②意思決定・合意形成のプロセスを見直すこと
③組織構造を変えること
④業務量と人数の調整、または、部下育成を強化すること
※ 組織としては、必要のない仕事(無駄な資料作成や会議)をなくす努力を行うことや、戦略・戦術において選択と集中を行うことも必要

2)一時的な対策|管理職の負担感を軽減する3つの方法

すでに管理職が疲弊しすぎていて、今すぐにでも一時的に管理職の負担感を軽減する必要がある場合の方法を3つ紹介します。
※1章で紹介した対策は実現されるまでにある程度の期間が必要な場合が多いため、その間の対応としておすすめです。

【参考】負担と負担感の違い
負担とは、実際の業務量の多さや長時間労働のことを指します。一方負担感とは、「管理職の役割・仕事を負担に感じているか」ととらえていただくといいでしょう。
注意点としては、どんなに負担感を取り除いても、負担を減らすことはできません。負担感を取り除く施策は短期施策と考えましょう。

管理職同士での対話の場を設け、お互いの有効策をシェアする

管理職同士での対話の場を設け、お互いの有効策をシェアする場を設けることは管理職の負担感を軽減するために有効な方法です。管理職同士で自身が抱えている不安や悩みなどを共有することで、気持ちが楽になったり、他の人のやり方を聞いて参考にできるためです。

管理職研修を実施すると、対話によって負担感が軽くなったとコメントされる方は多くいます。

例:
・「他の人も同じような悩みを感じていることを知って気持ちが楽になった」
・「管理職は孤独だと思っていたが、他の部署の管理職メンバーを仲間だと思えて安心した」
・「〇〇さんのやり方がいいなと思ったので、早速真似させてもらおうと思った」

管理職は忙しさのあまり悩みの共有をできていなかったり、異なる部署の管理職と話す機会がないことも多いです。そのため、同じ境遇にいる他の管理職と対話をする場を設けることで、管理職が感じている負担感を軽減できます

ただ、管理職の関係が築けていないと良い対話には繋がりません。対話の場を実施する際は、主催する人がファシリテーションスキルを身につけておくことをおすすめします。

ファシリテーションとは、場の参加者の当事者意識と主体性を発揮するための働きかけをしていくことを言います。

適切なファシリテーターが入ることで、「わざわざ集まる必要あったのか?」と思われず、参加している管理職が意味のある時間を過ごせるようになります。
アーティエンスではファシリテーションスキルを身につけるための研修も実施しています。
詳しくはコチラをご覧ください

人事が1on1の場を設ける

人事が管理職と1on1を行うことも管理職の負担感を解消するための1つの方法です。
管理職がどのようなことに課題や難しさ、大変さを感じているのかを1対1で確認することで、助けてもらえる安心感を感じられるためです。

管理職は強い責任感を求められるため、他のメンバーに弱音を吐けずに一人で溜め込んでしまっている人も多いです。しかし1on1という管理職をフォローするための時間を設けることで、管理職は自身の課題や大変さを打ち明けられ、孤立感を減らし、共感や支援を受けられるようになります。

なお、話を聞いていく中で多くの管理職が持つ悩みが分かれば、その課題を解決するための対策を組織として検討しやすくなります。

このように管理職の負担感を軽減するために、1on1を行って管理職に寄り添い、フォローすることも1つの方法です。

産業医・カウンセラーの窓口を設ける

管理職の負担感を軽減するために、産業医・カウンセラーの窓口を設ける、という方法もあります。業務上のストレスや心理的負担に対して専門家から支援を受けられるためです。

管理職の中には第三者の方が話しやすいという方もいます。また、人事では対応し切れないストレスを抱えている人もいるかもしれません。そのような場合には専門家に話を聞いてもらい、適切なフォローを行ってもらうことが必要です。

適切なフォローをしてもらうことで、管理職は自身の健康状態や心理的負担を適切に管理し、業務に集中できるようになります。

このように、管理職が業務量の多さによって多大なストレスを抱えている場合は産業医やカウンセラーなど専門家に依頼することをおすすめします。

アーティエンスのパートナー講師である森川氏もカウンセリングを実施しています。
カウンセリングについて詳しく知りたい方はこちらからお問い合わせください

管理職の業務量について根本的な施策を行うまでに時間を要することがあるため、その際は2章で紹介した対策を実施して管理職の負担感を軽減できるようにしましょう。

3)管理職の業務量が多いことで起きる問題

管理職の業務量が多いと主に3つの問題が起きます。

目の前の成果を上げることに追われ、チームや組織の成長に目が向かない

管理職の業務量が多いと、目の前の成果を上げることに追われ、チームや組織の成長に目が向かなくなるという問題が起きます。業務量に追われて視野が狭くなってしまうためです。

日々のタスクに追われて長期的な視野が欠如し、チームや組織の成長に対する十分な注意が払われなくなります。また、長期的なビジョンや戦略の策定、チームメンバーの成長や育成、組織の持続可能な発展について考える余裕がなくなります。

これにより、組織の方向性が不明確になったり、チームのモチベーションやエンゲージメントが低下したりする可能性があります。
結果として、組織全体のパフォーマンスが低下し、持続可能な成長に必要な要素が欠如してしまいます。

メンバーに目が行き届かなくなり、適切なフォローができない

メンバーに目が行き届かなくなり適切なフォローができない、という問題も起きます。自分のことで精一杯になってしまうためです。

メンバーの様子が見えていないと、トラブルが起きていても早急な対応を行えなかったり、認識のズレが起きていて手戻りが発生するなど、フォローに時間を費やすことが増え、悪循環が加速してしまいます。

また、ただ業務をこなすだけで、部下の成長を意識しない状態が続くと、部下は自分の将来を考えてくれていないと感じ、上司に対する信頼やモチベーションが低下する恐れがあります。

これにより、組織全体のエンゲージメントも下がります。さらに、部下の成長を支援しないことで、彼らのスキル向上が遅れ、結果として管理職は部下に業務を任せられなくなり、管理職自身が過重な業務負担を背負うことになります。これは管理職の疲弊と業務効率の低下を招く悪循環を生み出します。

管理職自身のメンタルヘルスの問題が起きる

管理職自身のメンタルヘルスの問題が起きる、という場合も考えられます。長時間の仕事や多忙なスケジュールにより、ストレスやプレッシャーが蓄積し、心身のバランスが崩れるためです。

適切な睡眠時間が取れないために仕事への集中力が低下したり、プライベートの時間を作れないために気分転換ができずに「何のために仕事をしているんだろう」という疑問を考え始めてしまう方も多くなります。
この状態が続くと、睡眠障害やうつ病、不安障害などの精神的な問題を抱える可能性が高まります。
管理職をつぶさないための方法は、下記コラムでより詳しく説明しています。ぜひ参考にしてみてください。

【管理職が潰れない組織へ】管理職のメンタルヘルス対策

管理職の業務量が多いことで、このような3つの問題が起きます。これらの問題は組織にもネガティブな影響を与えるため、組織として管理職の業務量の問題について危機感を強く持ち、本質的な対策を行うようにしましょう。

4)まとめ|アーティエンスでは管理職の業務量の削減につながる管理職研修を実施

本コラムでは、管理職の業務量が多くなる原因と対策をお伝えしました。

管理職の業務量が多くなっている原因として考えられるのは次の4つです。
①管理職の役割・責任が多いこと
②意思決定・合意形成に時間がかかること
③部下が多い
④部下の仕事を巻き取ってしまっていること

それぞれの原因に対して次のような対策を取ることが必要となります。
①管理職の役割や責任を調整すること
②意思決定・合意形成のプロセスを見直すこと
③組織構造を変えること
④業務量と人数の調整、または、部下育成を強化すること
※ 組織としては、必要のない仕事(無駄な資料作成や会議)をなくす努力を行うことや、戦略・戦術において選択と集中を行うことも必要


ただ、すでに管理職が疲弊しすぎていて、火消し対応として一時的に管理職の負担感を軽減する必要がある場合は次の3つの方法で対応しましょう。
①管理職同士での対話の場を設け、お互いの有効策をシェアする
②人事が1on1の場を設ける
③産業医・カウンセラーの窓口を設ける

管理職の業務量が多いと主に3つの問題が起きます。
①目の前の成果を上げることに追われ、チームや組織の成長に目が向かない
②メンバーに目が行き届かなくなり、適切なフォローができない
③管理職自身のメンタルヘルスの問題が起きる


これらの問題は組織にもネガティブな影響を与えるため、組織として管理職の業務量の問題について危機感を強く持ち、本質的な対策を行うようにしましょう。


なお、アーティエンスでは変化の激しい時代でも「成果」と「成長」を創出し、組織の今と未来を創るための管理職研修を実施しています。管理職に必要なスキルを促し、業務量の多さを自身で解決してもらえる状態を作りましょう。
自組織に適した管理職研修について知りたい方は、お気軽にご相談ください

管理職の業務量を適切にすることで、チームや組織の成長を促せるようにしましょう。