2022/8/19作成ー
「なかなか良い管理職研修が無いな」
「社長から、管理職研修の実施を依頼されたけど、何をすればいいのだろう」
「忙しい中、管理職研修を行うと、現場から反発があるかも」
などさまざまな問題意識を持って、管理職研修を探されている方が多いかもしれません。
実際、管理職研修は、企画も運営も難易度が高いですし、悩んだり、困ったりするのは当然です。
その悩みや困りごとを解消せずに、何となく研修を行ったり、研修会社の言われるがままパッケージの研修を導入すると、効果が出ないばかりか、悪影響が出る場合もあります。
例えば、悪影響を及ぼすケースの事例としては、
などが起きます。
ただし、その反面、管理職研修を丁寧に扱えば、管理職自身・チームのパフォーマンスが上がるだけではなく、組織課題を解決したり、組織変革が進んだりします。
経営陣の期待に応えることもできますし、管理職・現場社員の困りごとも解決できるでしょう。
例えば、効果があるケースの事例としては、
このように管理職研修は、組織に対してポジティブにもネガティブにもインパクトを与えていきます。
管理職研修の効果を最大限高めるためにも、丁寧に扱っていく必要があります。
本コラムでは、
までをお伝えしていきます。
本コラムを読み終わった後には、管理職研修の内容をどのように企画・運営していけば良いかが理解できるはずです。
その上で、自組織にあった管理職研修の内容を考えて、実施していってほしいと思います。
効果的な管理職研修の内容とは、『管理職が「自分たちは変われる」という確信を持つ』ものです。
管理職研修で、管理職が「自分たちが変われる」と確信することができなければ、実際に管理職が変わらず、会社にも変化が起きないでしょう。せっかく時間とお金を費やしたにもかかわらず、全くの無駄になってしまいます。
『管理職が「自分たちは変われる」という確信を持つ』研修で抑えておきたいポイントは、
です。
この3つが揃う研修内容でなければ、効果のある管理職研修には成りえないでしょう。
イメージが付きやすいように、あるIT企業の管理職に対して、部下育成の研修を行った際に、管理職が自分たちで変わっていった事例をお伝えします。
そして、研修最後には「私たちだって、本当は部下と一緒に頑張りたいんだ」という発言が出てきました。
研修実施から半年後、人事の方とのミーティングを行いました。管理職にどのような行動変容が起きているかを確認したところ、「今までは管理職自身の考えを部下に押し付けていたが、1on1やミーティングで部下と共に考えている行動が増えている。エンゲージメント調査の結果も向上した。職場では穏やかな雰囲気も増え、社員が前向きになっている」というお話でした。
上記のような言葉や行動が、管理職研修の実施後や現場での行動変化(数カ月から半年後)で起きていると、効果が目に見えていると言ってもいいでしょう。
重要なことは、企画側がこの3つを少しでも高めていく必要があります。
企画側・講師が、学びや問題意識を押し付けるのではなく、管理職自身が自ら組織課題や組織変革と向き合う状況を創っていく必要があります。
「自分たちは変われると確信が持てる管理職研修」を企画・実施するためにも、
前提として管理職研修には、どのような種類・内容があり、その目的(効果)を知ることが必要です。
管理職研修の前提を知ることで、管理職研修のイメージが付くためです。
管理職研修の企画を進めるにあたっての議論も活発化しますし、研修会社の言われるがままパッケージ商品を導入するということもなくなるでしょう。
具体的には、管理職研修は、大きく4つのカテゴリに分かれると言っていいでしょう。
それぞれの特徴を、下記にまとめてみました。
目的(効果) | 管理職研修の種類 | 研修内容例 | 効果がない研修の 特徴 |
---|---|---|---|
① 管理職の意識醸成 | 新任管理職研修 | ・マインド醸成 ・役割の理解 | ・儀式的に行われ受講者の課題にフォーカスされていない |
② 次の経営者の育成 | 次世代リーダー育成研修 | ・戦略思考、事業開発、マーケティング ・財務、会計 ・問題解決(クリティカルシンキング、システムシンキング) | ・一般論が主となり自社戦略に活用できない ・現在の役割と乖離があり、すぐに活用できない |
③ チームパフォーマンス・エンゲージメントの向上 | 管理職のパフォーマンス向上研修 | ・部下育成(OJT、1on1、コーチングなど) ・目標管理・評価面談 ・チームとしての業務遂行 ・管理職同士のチームビルディング ・リーダーシップ | ・内容と現場の状況に乖離がある |
④ 労務管理・コンプライアンスのリスクマネジメント | 労務管理・コンプライアンス研修 | ・人事労務管理 ・メンタルヘルス ・コンプライアンス | ・研修で終わりになっており、現場の管理がされていない |
主な内容は
・管理職として自覚を持たせる
・管理職が求められる役割理解する
・管理職として必要なスキルを渡す
です。
効果が出にくい研修の例としては
・管理職になり立場が変わったことを、概念的に伝えるだけ、もしくは厳しく伝えるだけ
・顧客の管理職の役割・定義を理解せず、一方的に管理職のあるべき論を述べる
・顧客の管理職に求められていないスキルや、課題のないスキルまでトレーニングする
があげられます。
② 次の経営者の育成 : 次世代リーダー育成研修
次の経営者の育成を目的とした「次世代リーダー育成研修」は、スムーズに世代交代をし経営能力を落とさないための研修です。
主な内容は
・経営視点を持たせる
・経営者として必要なスキルを渡す
・経営課題に対して取り組む機会を設ける
です。
効果が出にくい研修の例としては
・自社のミッション・ビジョン・戦略が反映されていない
・顧客の状況において、経営者が身に付けるべきスキルの重要度が考えられていない
・研修で学んだ内容を活用する場面がない
があげられます。
③ チームパフォーマンス・エンゲージメントの向上 : 管理職のパフォーマンス向上研修
チームパフォーマンス・エンゲージメントの向上を目的とした「管理職のパフォーマンス向上研修」は、管理職自身とチームの目の前の課題解決と、チームとして成長し続けるための研修です。
主な内容は
・管理職が抱えている課題を解決する
・チーム力(自チーム・部門間)を高める
・自身やチームメンバーとの関りを深める
です。
効果が出にくい研修の例としては
・正しい課題設定ができていない
・知識・スキルの授与のみで終わり、現場で活用する導線がない
・研修内で完結し、現場でのチームビルディングに活用されない
があげられます。
④ 労務管理・コンプライアンスのリスクマネジメント : 労務管理・コンプライアンス研修
労務管理・コンプライアンスのリスクマネジメントを目的とした「労務管理・コンプライアンス研修」は、組織としてリスクマネジメントを高めるための研修です。
主な内容は
・時代・世の中が求めている労務管理・コンプライアンスを学ぶ
・労務管理・コンプライアンスで、やらないといけないことと、やってはいけないことを学ぶ
です。
効果が出にくい研修の例としては
・型どおりの内容になり、労務管理・コンプライアンスを扱うイメージがわかない
・現場でのルール化が不明瞭な内容になっている
があげられます。
管理職研修の全体像を把握しイメージがつけば、「自分たちは変われると確信が持てる管理職研修」の企画・運営をどのようにしていくかを考えていきます。
管理職研修はもちろんですが、他の研修でも基本的に下記プロセスで進めていくことで、効果を高めていくことができます。
イメージが付きやすいように、ある会社様(コンテンツビジネス事業。マザーズ上場会社(当時)。社員数200名程度)の事例を通して、説明していきたいと思います。
企画では、真の課題を把握し、アプローチしなければなりません。
真の課題を把握できていないと、管理職の変容を促せなかったり、また行き当たりばったりになったりすることもあります。
企画の進め方ですが、下記のように進めるとよいでしょう。
企画のプロセス | 内容 |
---|---|
1.真の課題の把握 | 課題の大きさ関係なく、課題をすべて出します。 それらの課題がどのように絡み合っているのか、真の課題を明確にします。その上で、管理職研修でどこまで解決できるのかを考えていきます。 |
2.コンセプトと、要件定義の決定 | 真の課題が明確になった後に、管理職研修で実現したいことをコンセプトにします。 その上で、管理職研修を実施したことにより、管理職にどのような認知変容・行動変容が起きているかを設定します。 |
3.研修内容の決定 | 最後に、コンセプトと要件定義を達成するための、研修内容を決めていきます。 |
【1. 真の課題の把握】
真の課題の把握は、以下のように実施します。
本事例では、「ストレスチェックの結果が悪かったので、管理職研修を行いたい」というお話があり、ここから真の課題を探求していきました。どのように真の課題を把握していったのか、解説していきます。
以下は、お客様から、実際に頂いた資料です。
#守秘義務のため、一部加工しております。
1. 課題を全て洗い出す
組織課題は明確でしたが、すぐにプログラムや講師の話をせずに、さらに深く対話をしていったところ・・・
などの別の組織課題の話が出てきました。
どうやら、この話は複雑に絡み合っているようです。
もし、すぐにプログラムの選定を行っていたら、上記のような組織課題は浮き彫りにならず、根本的な課題にアプローチすることは難しかったでしょう。
2. 課題の関連性を確認する
さらに組織課題を紐解いていくために、お客さまとの対話を続け、システムシンキングという思考方法をもとに、組織の状況を可視化していきました。
※ ロジカルシンキングだと、部分的な対処療法になりがちですので、注意が必要です。
※ 下記システム図は、お客様の言葉を尊重して作成しているため、飛躍している部分もあります。
上記システム図を簡単に説明すると・・・、
経営陣・事業部長クラスは連携が取れ、新規サービスも立ち上がっているということでした。
コンテンツビジネスを扱っている会社として、新規サービスが立ち上がることはとても素晴らしいことです。
ただし、経営陣・事業責任者のスピード感に、管理職・現場がついていけない状況でした。そのため、新規サービスは軌道に乗らず、失敗し、現場からは諦めやストレスが高まっている。そして、精神疾患や離職などが起きていることの背景が見えてきました。
3. 真の課題を把握する
上記システム図を創った後に、レバレッジポイント(小さい力で大きな効果を生むポイント)を明確にして、テーマを選定しました。
「個人での抱え込み」と「失敗の数」をレバレッジポイントと捉えて、どのように対応していくかを考えました。
レバレッジポイントが明確になったら、テーマを選定します。
ここまできたら、組織課題と管理職研修のずれは、なくなったといっても構わないでしょう。
本お客様は、「管理職同士の連携」と「チームとしての業務遂行」が、組織課題を解決できるものだという認知になっていきました。
「管理職同士の連携」では、自チーム内はもちろん、管理職同士の連携も高め、管理職個人の抱え込みを無くしていくことにしました。
「チームとしての業務遂行」では、メンバーの個人での抱え込みや失敗の捉え方へ対応していくことにしました。
【2. コンセプトと、要件定義の決定】
真の課題が明確になったら、次は、管理職研修のコンセプトと要件定義を創ります。
コンセプトと要件定義は、以下のように進めます。
実際に決定する際は、「コンセプト」と「目指す姿(要件定義)」は、行き来するのが一般的です。
本お客様では、下記のようなコンセプトと、要件定義になっていきました。
※ 「現場」と書かれた記載が効果要件になります。
【3. 研修内容の決定】
いよいよ研修内容の選定です。どのようなストーリーで、目指す姿を実現できるかを考えていきます。
そして、全体設計をふまえて研修プログラムや講師を決めます。
本お客様は、下記のように全体設計をしていきました。
今回の研修プログラムは、コンセプト・要件定義で導き出した、
を実現するための研修を設計しました。
これは専門家である私たちが
の観点から、コンセプト・要件定義をクリアするための内容を設計した結果です。
管理職研修は、会社の中枢を担う管理職に対して実施するものなので、細心の注意が必要です。
研修の設計にはプロ・専門家の視点を入れることを強くおすすめします。
講師の選定は、「ストレスの解消方法を教える」というよりも、「管理職の方々が部下の当事者意識・主体性を最大限発揮することを促しながらも、今抱えている組織課題に対して知識不足に陥らないようにする事が必要」であったため、組織変革の経験があるファシリテータを選定していきました。
このようにデザイン(企画)していくと、研修効果はとても高まるでしょう。
理由は、2点あります。
1点目は、効果への影響に関わるためです。
考え抜いた企画であればあるほど、情報量の多さにより、その文脈が伝わりきらないことがあります。
そのため経営者から適切なフィードバックを得られることができないことも多くあります。そうすると、結局は経営者の考えのみを形にする内容になり、効果がとても低くなる可能性があります。逆に早い段階で、経営者を巻き込むと、経営者の考えや想いも入り、研修品質が上がるだけではなく、経営者自身が管理職研修への関心を強く持ち、コミットも高まるでしょう
2点目は、効果への体感の影響です。
経営者と要件定義を考えると、経営者自身がその要件がしっかりイメージでき、腹落ちしています。
そのため「効果があったのか?コンセプトは達成できたのか?」を強く体感でき、次の施策につなげていくことが可能です。
進め方としては、「課題の洗い出しから経営陣に入ってもらう」、難しい場合は「進捗報告をこまめにして、その都度経営者の意見やフィードバックをもらうこと」です。
メールだけではなく、口頭でのコミュニケーションを取るようにしましょう。
経営者の方は時間がないので、時間が取れないという方もいますが、管理職研修は会社に大きなインパクトを与えるので、そのことを伝えてもいいと思いますし、このコラムを読んでいただいてもよいのではないでしょうか。
組織へのインパクトが大きい管理職研修の企画承認を得る際には、早い段階で経営者に当事者意識を持ってもらいましょう。
それが、組織課題の解決に繋がっていきます。
準備で大切にしたいポイントは、研修実施案内と、事前ワークの配布の2つになります。
準備のプロセス | 内容 |
---|---|
1.研修実施の案内 | 研修案内文を機械的に送るのではなく、管理職の参加意欲が高まるような内容を送ります。 |
2.事前ワークの配布 | 管理職にとって、負担が少ない内容にし、管理職の受講意識が少しでも高まるもの・管理職の状況・状態が分かるものを実施します。 |
【1. 研修実施の案内】
研修実施の案内は、管理職が少しでも参加意欲が上がるような内容を送ります。
いつもとは違うという認知を持ってもらうことが重要です。
それだけでも、研修への関心度合いが変わります。関心度合いが上がれば、当事者意識が高まります。
例えば、本お客様の案内文は、経営者から下記のような内容を伝えていました。
【2. 事前ワークの配布】
事前ワークに関しては、可能な限り負担を無くし、管理職の状況・状態が分かる内容にします。
忙しい管理職からすると、管理職研修に対して、ネガティブな印象を持っている方が圧倒的に多いです。
多くの仕事と、大きな責任に追われている管理職は、研修に対して簡単には前向きになってもらうのは難しいでしょう。
少しでも管理職が今持っている課題意識や状況などを把握しておくことで、講師・事務局ともに当日の準備の質を高めていけます。
本お客様においては、下記のような内容が多く提出されました。
事前ワークを見て、「当社の管理職は、こんなレベルか」と、経営陣はとてもがっかりされていました。
当社からは、状況が分かってよかったことをお伝えし、管理職の本来持っているパフォーマンスをどのように解放するかということを話していきました。
管理職研修の運営では、「あるべき論を押し付けるのではなく、現場の状況を踏まえて進めること」が重要です。
「管理職とはこういうものだ」など講師から一方的に伝えると、管理職はその場をやり過ごすようになるか、もしくは反発してしまうでしょう。学習効果を出すことは難しいです。講師が説得モードに入っている場合は、要注意です。
それでは、どうしたらいいかというと、研修目的には反れないようにしながらも、研修の場で出てきたものを大切に扱うということです。
本事例では、一日目は予定通り、研修は進んでいきました。二日目に、管理職の本音が出て、場が乱れました。
ロジスティック部のマネージャーに対して、マーケティング部・営業部のマネージャーが不満や非難を伝え始めました。
ロジスティックのマネージャーは、顔を真っ赤にして、怒りに耐えていました。他のマネージャーもその状況を見て、驚いています。
この時に、ロジスティックのマネージャーを慰めたり、マーケティング部・営業部のマネージャーをなだめても、何も変わりません。
その場はいいかもしれませんが、臭い物に蓋をする結果になり、管理職は何も変わりませんし、組織課題は解決されないのです。
この時、講師はどのようにアプローチをしたかというと、研修をいったん中断して、マネージャー全体で対話をしていきました。
そうすると、ロジスティックのマネージャーが悪いという認知ではなく、組織としての連携が取れておらず、どの部署も自分の部署の都合ばかりを考えていることが浮き彫りになりました。
この状況が生まれる前は、管理職研修は活気にあふれていましたが、その後はとても静かに進んでいきました。
最後に、今後のアクションプランと、研修の感想を伝えて終了しました。
静かながらも、前向きなコメントが出ていました。下記画像は、最後の終了場面です。
研修後のフォローでは、定期的な内省と、対話によるチーム学習による行動変容の認知を促すことが重要です。
人は忙しいと、自身が変わっていても、変化に気付かないことが多いです。
だからこそ、自身が今どのよう状態・状況なのかを振り返りにより把握します。
そして仲間との対話によるチーム学習により、成功体験や改善点として捉えて、変化を大きくしていきます。
研修後のフォローは、下記プロセスで進めていくとよいでしょう。
研修後のフォローのプロセス | 内容 |
---|---|
1.定期的な内省の機会 | 「事後課題が負担になり、やらされ感を強く持たせないこと」を意識しながら、管理職の定期的な内省(振り返り)の機会を設けます。 |
2.内省を促す対話の場 | 研修後一定期間を設けて、変化している実感が持てる対話の場を設けます。 |
【1. 定期的な内省の機会】
当社では、バトンメール🄬というものを推奨しています。
次回のフォロー研修・対話までや、一定期間の間に管理職がお互いの現場での活動を、交代で報告します。
4~5名でバトンメールを行うと、一ヶ月に一度管理職研修を受けたメンバーに対して、テンプレートメールに沿ってメールを送るだけなので、そこまで負担はありません。
ただし一週間に一度は、他の管理職の現場での活動報告のレポートが送られてくるので、自身の内省にもつながります。
そして、基本受講者同士で進めるため、企画側の負担も少なくなるという利点もあります。
事後課題で、レポートを多く書くなどを行うと、負担が多くなり、研修に対してネガティブなイメージを持ち続け、今後の人材開発・組織変革に対して、管理職が非協力的になります。
そのため、事後課題は極力負担のかからないものとして、バトンメール🄬のようなものを実施するといいでしょう。
具体的な進め方や、バトンメール🄬のイメージは下記を参考にしてください。
【2. 内省を促す対話の場】
内省と対話の場を用意することで、変化している実感を持ちやすいです。
人は忙しいと、どうしても視野狭窄に陥り、目の前のことだけに集中しがちです。
そのため、自分たちが変わったと自覚する場を設けることが必要と言えます。
本事例では、フォロー研修のオープニングでは、ネガティブなコメントが出てきました。
「研修をやったからと言っても、私は変われなかった」、「結局、学んだことを活かせていない」などです。
その時にある方が、「事前の部下へのインタビューワークで、部下の変化からか自身の変化を感じた」と話されている方がいて、そのあと管理職のみなさんは、自分自身や周りが変わっていることを認知していきました。
管理職は、とても忙しいため、どうしても目の前のことに追われ、視野狭窄になりがちです。だからこそ落ち着いて、対話と通してチームで内省することで、認知が広がります。
下記画像は、最後のフォロー研修の導入と終了場面です。
【フォロー研修の導入場面】
【フォロー研修の終了場面】
さらに研修終了後には、内省を深めるための事後ワークを実施しました。
このワークでさらに、自身の変化が強く認知され、「自分たちは変わった。そして変われる」と確認できるとと私たちは考えます。
一旦、管理職育成のプロジェクトは、これで終了しました。
一年後のアフターストーリーとして、人事の方から下記のよう変化があり、「株価も緩やかに上がっています」というお話を聞いています。
本内容のように、丁寧に進めていくことが必要だということはお分かりいただけたかと思います。
ここまで、管理職研修の進め方をお伝えいたしましたが、次は管理職研修の企画・実施で、避けてほしい内容をお伝えいたします。
研修目的を明確にしなかったり、抽象度が高すぎると、管理職研修は失敗しやすいです。
管理職研修をするにあたり、解決したい課題や、もしくは経営戦略・事業戦略などのありたい姿などと連携することが必要です。言語化できていないのであれば、言語化していきます。
当社の失敗事例でとても恥ずかしいのですが、一つ事例をご紹介いたします。
ある大手企業さまから部下育成の研修を依頼されました。
さまざまなグループ会社が集まり、研修を実施するものでした。
企画の時間は限られており、抽象的なオーダーを当社に丸投げのような状況がありました。
そのような中でも、言語化し、企画を進めましたが、先方の中で経営陣と企画の目的がしっかり伝わっていなかったこともあるのでしょう。研修目的が途中で変わるような状況が発生しました。そして、さまざまな変更点が生まれていきました。
研修効果が下がるだけではなく、オペレーションも煩雑になっていきました。
さまざまな提言をさせていただきましたが、最終的には、対話ができる状態ではなくなったことと、当社から研修目的が曖昧で研修効果が出せる状態ではないというお話を何度もさせていただきました。
まさに研修を行って終わりになってしまったとても悪い事例です。
もちろん組織の状況により、研修内容が変わる場合もありますが、本当に目的まで変更する理由があるのかを対話し、決めていくことが重要です。
「○○理論で有名な講師を招いて研修を行ったが、受講生の反応が良くなかった」、「経営者仲間から紹介を受けた研修プログラムを実施したが、自組織にはあわなかった」、「大手研修会社から、効果が高いと言われた研修を勧められ行ったが、まったく効果がなかった」等のお話をよく聞きます。
もちろん、その講師としっかり打ち合わせをしたり、紹介を受けたプログラムであっても管理職研修の企画を丁寧に行い、実施したのであれば、効果は見込めます。
ただし、周りがいいと言っているから導入したというアプローチだと注意が必要です。
お客様からお聞きした事例では、経営者仲間の紹介で導入した研修で、離職率がとても上がり、組織が崩壊一歩手前まで進んでいると言うお話も聞いたりします。
組織課題・現場の状況も分からずにパッケージ商品を導入して、コンサルタントの言われるがままに、研修と現場での業務ルールの徹底を強いられて起きたそうです。
本当に、その講師やプログラムが自組織にとっていいのかを、見定めていく必要があります。
「経営陣が言ったことをそのまま行う」、「現場が大変そうだから、現場が求めているから」、「経営者と現場の折衷案や落としどころを探す」などをするのではなく、あくまで管理職研修を実施して、何を成し遂げたいかということから目を背けないようにしましょう。研修目的をどのように達成するかということです。
「1. 研修目的が、表面的」でお伝えした大手企業さまも、まさにこの状態に陥っていました。経営者からのオーダーで内容を大幅に変更し、受講者のアンケートに振り回されるという状況でした。
こちらはあるお客様に聞いた話です。
チームに分かれて、ラグビーのようなアクティブな研修を行ったそうです。とても盛り上がり、研修満足度も高かったそうですが、フォローは何もされなかったようです。
研修が一過性のもので終わり、経営者の一人が「研修効果が全くない。研修は意味ない」という発言をされたそうです。
よくよくお話を聴いていると、社員同士の雑談等のコミュニケーションが増えているということで、小さくても変化は起きているようでした。研修プログラムや、講師は悪くなかったのでしょう。
ただし、企画をしっかり行っていなかったり、研修後のフォローが行えていないことから、自分たちの変化が分からないということが起きたのだと考えられます。
小さな変化を認知し、それを加速させていくことが必要です。
管理職研修を丁寧に扱うと、管理職は自分たちは変われると確信します。
そして、組織課題は解決につながり、組織変革は進みます。
ただし、中途半端な管理職研修を行うと、悪影響が出ることもあります。
管理職の影響力は、とても大きいです。
効果の高い管理職研修を行うには、下記のプロセスで行うことが重要です。
効果の高い管理職研修を行うことと、管理職をはじめ現場のメンバーが変化していることを体感し、組織変革は進んでいくと言えるのです。
その成功体験から、管理職自身も現場も、これからの研修に対しても前向きになっていきます。
そして何より、管理職・現場の変容や組織変革が見えると、経営陣はより人材開発・組織変革への感度が上がっていき、企画側にとても協力的になっていくでしょう。
アーティエンスでは、研修企画から丁寧にご一緒しておりますので、管理職研修を検討されている方はぜひご連絡をいただければ嬉しく思います。