「意見を言わない社員」は組織へのリスク大⁉意見を言わない10の理由と対応策をご紹介

更新日:

作成日:2024.4.30

顧客満足 CS研修

「若手社員が言われたことしかやらず、受け身で困る」
「会議で誰も発言しない。管理職として自覚があるのか?」
「みんなで意見を出し合う組織風土をつくりたいのに、なかなか意見を言ってくれない」

このようなお悩みをお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

社員が意見を言わないと、言われたことをやるだけの受け身の社員が増えてしまい、自部署や自分のことにしか関心がなくなり、新しい挑戦もなくなります。そのような状態では組織としての成長は難しいです。

そこで本コラムでは、社員がなぜ意見を言わないのかという理由と対策を紹介します。
ただ意見を言わない社員がダメだと決めつけるのではなく、組織として社員が意見を言えなくする要因を与えていないか考えてみてください。そこが見えてくると、対策を行えるようになり、主体的な社員を増やすことができます。

このコラムで分かること

  • 社員が意見を言わない10の理由
  • 社員が意見を言わない10の対応策
  • 意見を言わないことで起きる10のリスク
執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1)社員が意見を言わない10の理由と対応策

社員が意見を言わない理由と対応策を紹介します。 

理由 対応策
意見を言って辛い思いをした経験があるため 些細なことについて相談することから始める
自分の意見に価値がないと思っているため ・ポジティブフィードバックを行う
・レジリエンスを鍛える
意見を言うと嫌そうな顔をされるため ・ 短期的 : 意見ではなく質問にする
・ 中長期 : 日ごろからのコミュニケーションを取ることで、価値観を知る
意見を言うことで評価が下がった経験があるため 相手に不快感を与えない伝え方を工夫する
意見を言うことに恐怖心があるため 会議の場にルールを入れる
意見を言うとその仕事を押し付けられるため ファシリテーターを入れて公平に議論する
意見を言っても変わらないと諦めてしまっているため 意見を反映しない結果となったとしても、意見に対してどのように検討され、どのような判断で実施を見送ったのかを伝える
意見を言う機会がないため 意見を言う機会を作る
意見をうまく伝えられないため ・ファシリテーター(司会)から意見がまとまってなくてもいいと伝える
・言葉にする時間を設ける
・フレームワーク(論点)を渡し、その中で意見を言ってもらう
意見を持っていないため ・話を理解できていない人に対しては、適宜理解ベルを把握する時間を設ける
・主体性が低い人については、仕事に向き合う姿勢を改善する

意見を言って辛い思いをした経験があるため

過去に意見を言って否定されたり、仲間外れにされたりなど辛いと感じる経験があると意見を言わなくなります。自分を傷つけず、守ろうとするためです。
例えば、次のような経験です。

会議で意見を言ったら、他の参加者もいる前で「そんなことはみんなわかった上で話しているんだ」と強く言われて悲しく感じた
・メンバーに対して仕事に向き合う姿勢について自分なりの意見を伝えたら、「私はそんなに頑張れないから」と、それ以降、色々と理由をつけられて仕事に協力してもらうことが難しくなってしまった

自分の意見を否定されると、恥ずかしさや悲しさ、無価値感などを感じ、良かれと思って意見を言ったにもかかわらず自分が傷つくという結果になってしまいます。一度そのような経験をすると、また否定されたらどうしよう…と、自分の声を上げることにためらいを感じるようになり、意見を言えなくなります。

「意見を言って辛い思いをした経験」への対応策

このような理由から意見を言わなくなってしまった社員に対しては、些細なことについて相談をすることから始めると良いです。

意見を言って受け入れてもらえたという感覚を持ってもらうことが大切だからです。

例えば、「資料の文言、どっちの方がいいと思う?」「先方へのお土産、どっちがいいかな?」など選択肢を設けて選んでもらい、その意見を受け入れる、という機会を作ります。

最初は2,3個の選択肢の中から選んでもらう機会を作り、その後もう少しオープンな相談をします。ここで意見を言っても大丈夫だという感覚を得られると、もう少し大勢の前でも意見を言えるようになっていきます。

自分の意見に価値がないと思っているため

過去に自分の意見を流されたり、無視されたりした経験があると、意見を言わなくなります。自己評価が低下し、自分の意見や考えに対する自信を失うためです。
例えば、次のような経験です。

・会議で意見を言ったが、適当に流された
・1on1で自分の意見を伝えて、「その件については検討する」と言ってくれていたのに、数ヶ月たった今もまだ返事をもらえていない

このような経験は、自分の考えや感情が無視され、認められないという否定的なメッセージのように捉えられ、自己評価を低下させます。人は自分の考えや感情が受け入れられないと感じると、自信を失い、自分の意見や考えに対して後ろ向きになります。これにより、意見を述べることへの恐れや不安が高まり、自分の声を抑えることを選択する傾向が生まれます。

「自分の意見に価値がないと思っている」へ対応策

自分の意見に価値がないと思っている人に対しては、意見を言うことに対して悲観的にならないようにするために、ポジティブフィードバックを行うことを意識しましょう。
発言したことを受け止めてもらえているという感覚があると、自分の意見に価値がないと感じにくいためです。

意見の内容の質が良い場合は、「なるほど。その視点もあるね。」「確かに!そこについても考えないとね。」などと反応があることで、次も意見を言いやすくなります。

もし意見の内容があまり良くないと感じた場合は、意見を出してくれたことに対してポジティブフィードバックをしましょう。例えば「意見を出してくれてありがとう。」と言った後に、内容についてのフィードバックを行い、最後にまた「自分で考えて意見を出してくれたことは嬉しいから、また何か気づいたことがあったら言ってね」と伝えると、次もまた意見を言おうという意識になりやすいです。

また、陰湿な嫌がらせでなく、その時の意見が拾うほどのものではなかったために結果として流してしまった、と言う場合の対策としては、意見を発言した人に対してレジリエンスを鍛えることが効果的です。レジリエンスとは「跳ね返す力」のことです。

レジリエンスがあると、一度自分の意見が無視されるようなことがあって落ち込んでも、自分で回復できて、再度意見を言う挑戦を行えるようになります。

レジリエンスを鍛えるためには、自分の思考パターンを理解し、自分で自分をコントロールできる状態になることが必要です。

そのためにも、アーティエンスのレジリエンスアップ研修では、ビジネスで起きる苦境や逆境を乗り越えるためのスキルを多くのワークを通して学びます。日々の逆境や問題に反応的ではなく、柔軟に適切に対応できるようになってもらい、数回の経験で挫けることなく、意見を出し続けられる社員になることを期待できます。

意見を言うと嫌そうな顔をされるため

意見をいうと嫌そうな顔をされるのも、社員が意見を言わなくなる理由の一つです。自己価値感や対人関係に対する不安が生じるためです。

例えば、次のような経験です。

・プロジェクトミーティングで、自分がA案について気になる点があったのでその点について意見を伝えたら嫌な顔をされた
・クライアントとの打ち合わせに上司と参加しているときに、自分なりの意見を伝えたら、上司が嫌そうな顔をして自分の方を向いてきて、その後フォローを始めた

このような経験をすると、他人とのコミュニケーションを避けるようになり、意見を言わなくなることがあります。

「意見を言うと嫌そうな顔をされる」へ対応策

意見をいうと嫌な顔をされたために意見を言わなくなってしまった場合は、次のような対応を行いましょう。

短期的 : 意見ではなく質問するように促す
中長期 : 日ごろからのコミュニケーションを取ることで、価値観を知る

意見として伝えるのではなく、質問形式で意見を伝えることで、相手に対して攻撃的な印象を与えず、対話の雰囲気をより建設的なものにできます。また、質問を通じて相手の考えや視点を尊重し、双方の理解を深めることも可能です。

また、意見を述べた際に嫌な顔をされる、ということが起きる場合、価値観や意見の相違が原因となっている可能性があります。そのため、日常的なコミュニケーションを通じて相手の価値観や考え方を理解することが重要です。

相手の背景や経験、信念について話を聞くことで、彼らの意見や行動の背景を理解し、対立や誤解を解消できます。このようなコミュニケーションを通じて、お互いの尊重や理解を深め、意見を言いやすい環境を育くむ場を設けていくといいでしょう。

意見を言うことで評価が下がった経験があるため

意見を言ったことで評価が下がった経験がある社員は意見を言わなくなります。同じことが再び起こる可能性を恐れるためです。
例えば、次のような経験です。

業務改善の提案をしたが、それが受け入れられず、逆に上司や同僚からマイナスな評価を受けた
・組織方針に関する意見を述べたが、それが組織の方針や経営層の考え方と一致せず、評価が下がった

このような経験があると、自分の考えを保留するか、上司や経営者に忖度した無難な意見を述べるだけになってしまいます

「意見を言うことで評価が下がった経験」へ対応策

意見を言うことを求められているのに、意見を言うことで評価を下げるということが起きている場合は、言い回しを工夫するためのスキルを渡しましょう。意見は伝え方によっては、相手を否定しているように受け取られてしまう可能性があるためです。

意見を言うことで評価が下がっているということは、評価する人が、何かしら嫌な思いをしたと考えられます。

例えば、次のような伝え方などが効果的です。

・「発想を広げるために、あえて極端なことを言いますが…」
・「私の理解不足で申し訳ないのですが、○○の観点はどうお考えですか?」

このように伝えると、相手を不快にさせることなく、自分が聞きたいことや自分なりの意見を伝えられるようになります。

(参考)アサーティブコミュニケーション研修で風通しの良い職場環境を作ろう!

意見を言うことに恐怖心があるため

意見をいうことに恐怖心があると意見を言わなくなります。意見を言っても受け入れてもらえないと感じるためです。

例えば、次のようなことを想像しています。

・意見を言っても否定されたらどうしよう…
・意見を言ったことで、嫌な目で見られたらどうしよう…

このような状態では、恐怖心に打ち勝つことができず、自分の意見を言えなくなってしまいます

「意見を言うことに恐怖心がある」へ対応策

社員が恐怖心を感じていて意見を言わない状態になってしまっている場合は、会議の場にルールを入れるようにしましょう。ルールを設けることで、参加者が互いに尊重され、安心感を持って意見を述べることができる環境が整います。

意見を言うことに恐怖心がある、という状況を改善したい場合は、次のような内容のルールを設けるものいいかもしれません。

「相手の話の良し悪しをジャッジするように聞くのではなく、探究する姿勢で聴く」

ルールは組織や打ち合わせの内容によって、調整が必要です。ルールの作り方についてはこちら「プロファシリテーターが伝授!失敗しないグランドルールの作り方と扱い方」のコラムをご覧ください。

なお、ルールを設ける際は「ルールがなぜ大切か」を伝えることがとても重要です。ルールが、大切なものだという認知になると、自然とルールが守られるようになるためです。会議の場にファシリテーターがいる場合は、ルールについて丁寧に説明するようにしましょう。

例えば、「沈黙を恐れない」というルールを設けている場合は、下記のように説明するといいでしょう。

「沈黙は悪ではありません。お腹の中で考えている場合もありますし、考えをまとめている最中かもしれません。話す準備ができたら、話すようにしましょう。」

ルールをただ読み上げるのではなく、可能な限りそのルールの説明をします。
このようにルールを設けることで、意見を言いやすい環境が整います。

意見を言うとその仕事を押し付けられるため

意見を言うと、その仕事を押し付けられてしまうことが原因で、意見を言わなくなってしまっている可能性もあります。自分の仕事が増えてしまうことを避けようとするためです。

例えば、次のようなことを想像してます。

・クライアントのためには〇〇も一緒に行ったほうがいいと思うけど、そのことを言ったら「じゃあ、やっておいて」って言われそうだからいうのやめておこう
・メンバーからの不満が出てきているから、メンバーとの1on1を行ったほうがいいと思うけど、そのことを言うと「やっておいて」と言われそうだからやめておこう

意見は持っているものの、意見を言うと皆でその課題に取り組むのではなく、自分に仕事を押し付けられてしまうことが経験からわかっていると、自分の仕事を増やしたくないがために、意見を言わないようになります

「意見を言うとその仕事を押し付けられる」へ対応策

意見を言うとその仕事を押し付けられてしまうために、意見を言わない状態が生まれている場合は、ファシリテーターを入れて公平に議論できるようにしましょう

ファシリテーターを入れることで中立的な立場から議論をリードし、役割や業務量、力量・経験などの要素から、適切なアサインを考えられるようになります。
公平な議論のもと新しい仕事が増えた場合は、業務調整が必要です。今ある仕事を他の人に依頼するなどして、仕事量の調整うことまでをセットで行いましょう。
ファシリテーターが入ることで社員は意見を述べても仕事を押し付けられる心配が減り、素直な意見交換が促進されます。

ファシリテーターの重要性については下記のコラムをご覧ください。
ファシリテーターとは?何をする人?重要性やメリット・必要なスキルを詳しく解説

意見を言っても変わらないと諦めてしまっているため

意見を言っても変わらないと諦めてしまっている場合も、社員は意見を言わなくなります。言うだけ無駄だと感じるためです。

例えば、次のような経験です。

・会議で自分なりの意見を言って、その場ではいいねとなるのに、上からの許可が下りないのか、いつも最終的には受け入れられない
・組織が定期的に組織に改善してほしいことのアンケートを行うため、業務効率化の提案をしているが、いつも「検討します」という回答しかもらえず、いつまで経っても何も変わらない

このような経験をしていると、この組織に対して意見を言っても意味がないと感じ、何も言わなくなります

「意見を言っても変わらないと諦めてしまっている」へ対応策

意見を言っても変わらないと諦めてしまっている場合は、意見を反映しない結果となったとしても、意見に対してどのように検討され、どのような判断で実施を見送ったのかを必ず伝えることが必要です。

その経過がわかると、しっかりと検討してくれた上での判断ならしかないなと思えます。そして検討してくれていることがわかるため、また自分なりの意見を出してみようと思えます。検討されたことの共有がないと、意見を出した側からすると、ただ意見を無視されているように感じてしまうためです。

ただ、多数の意見を受けた場合は、全てに回答するのが難しい場合もあると思います。その際は、例えば、「このような意見をもらいました」と意見を簡単な資料にまとめて公開するだけでも、目を通してくれたことはわかります。そのうえで「頂いた意見について精査中です。全ての意見に対して一度に対策を行うことは難しいため、優先順位をつけて取り組んでいきます。」と提示するだけでも、意見を言った人は対応しようとしてくれている姿勢を感じられます。

このように、意見に対して向き合ってくれている姿勢を伝えることが大切です。

意見を言う機会がないため

社員が意見を言う機会が与えられていないために、意見を言えない場合もあります。意見を言うべきタイミングがわからないためです。

例えば、以下のような場面です。

・会議に参加はしているけど、意見を求められたことがない
・組織に対して伝えたい意見があるけど、どこに言えばいいかわからない

このような状態では、そもそも意見を求められているという自覚を社員が持てていないこともあるでしょう。

「意見を言う機会がない」へ対応策

意見を言う機会がないことが理由で意見が言えない場合は、意見を言う機会を作りましょう。特に新入社員や移動してすぐの社員は、どのタイミングで意見を言うべきなのか、自分の意見を求められているのかがわからないためです。

会議の際にはファシリテーターを入れて、参加者全員が意見を言ってもいい場だということを伝え、「〇〇について意見がある方はどうぞ」などの問いを出すと、意見をいうタイミングがわかります。

組織に対する改善案などについては相談窓口などを設けておくことで、意見を言いやすくなります。

意見を言ってもいいタイミングや意見を求められている場所が明確になっていると、意見が求められていることがわかり、意見を出しやすくなります。

意見をうまく伝えられないため

意見があるが自分の中でうまく整理しきれず、伝えられないために意見を言わなくなる場合もあります。特に、「意見を言うときは要点だけ伝えて」などの指導が厳しい組織の場合は、その状態になるまで整理されないと意見を伝えることを躊躇してしまいます

例えば、次のような状態になります。

・こういうことを言いたいのに根拠が纏まらないから伝えられない…
・この状態のまま意見を言っても相手を困らせてしまいそうだな…

まとまっていないままでも意見を出したら、よりよく伝えるための方法などについてフィードバックをもらえることもありますが、意見を伝えることをしなければ、一向にうまく伝えられるようになっていきません。

「意見をうまく伝えられない」へ対応策

意見をうまく伝えられない場合は、次のような対応策を実施しましょう。

・ファシリテーター(司会)から意見がまとまってなくてもいいと伝える
・言葉にする時間を設ける
・フレームワーク(論点)を渡し、その中で意見を言ってもらう

ファシリテーター(司会)から意見がまとまってなくてもいいと伝えることで、意見を持っている社員が「とりあえず出してみよう」となりやすくなります。

また、意見を求めた後に、言葉にする時間を設けることも有効です。考えながら話すと言葉がまとまらなくなりやすいためです。一度個人で考える時間を設けることで、伝えたいことを自分なりに言語化できます。

もし意見を言ってくれている社員の話しがまとまっていなくて理解が難しいと感じた場合は、フレームワーク(論点)を渡して、その中で意見を言ってもらうようにすることも一つの方法です。
例えば、5W2Hの紙を渡して、それらを埋めてもらってから発言をしてもらうなどです。

このような対策を行うことで、意見をうまく伝えられないことを躊躇することなく、意見を出せるようになります。

意見を持っていないため

そもそも自分なりの意見を持っていない人は、意見を言えません。自分なりの意見を持てない理由として、次のことが考えられます。

・話を理解できていない
・仕事に主体的ではない

意見を持っていない人はどのようなことが原因なのかを確認し、対応を行う必要があります。

「意見を持っていない」へ対応策

話を理解できていない人に対しては、適宜理解度合いを把握する時間を設けましょう。すると、どの部分まで理解できていて、どこが理解できていないのかがわかります。

例えば、「現時点でもやもやする部分はありますか?」と質問したり、「理解レベルを1-5の選択肢のかかから選んでもらう」などです。「何がわかれば理解レベルが5になりますか?」と尋ねると、理解できない部分が見えやすくなります。理解できない部分について補足で説明することで、理解を促せます。

また話を伝える側は、できるだけわかりやすく伝えることを意識するのも大切です。専門用語など相手のレベルにあっていない用語を多用すると、理解を困難にさせます。

主体性が低い人については、仕事に向き合う姿勢を改善する必要があります。役割・責任範囲を明確にします。さらに仕事を渡す際に、すべて教えるのではなく思考の余白を与えて、考えてもらう部分を創ることが必要です。

組織としてあなたに対してどのような役割や責任を求めているのかを明確に伝えます。明確な目標や期待を提示することで、その人がどのような役割を果たすべきかを理解しやすくなります。
そしてその期待と現状を比較して、どのような差があるのかをみて、その差をなくすために自分ができることを考えてもらいます。

一方的に「〇〇をやって」と伝えるのではなく、自分で考えてもらうことがポイントです。自ら考えることで主体性が高まり納得感が強くなります。

ここまで10つの理由と対策についてお伝えしました。自組織の社員がどのような理由から意見を言わなくなっているのかを検討し、意味のある対応策を行いましょう。

2)意見を言わないことで起きる10のリスク

意見を言わないことで社員は一時的にトラブル回避をしています。余計な意見を言わなければ、意見に対する批判やネガティブ評価を受けないためです。意見を言うことでトラブルを起こすことを回避できるのであれば、そのほうが良いと感じています。

ただ、意見を言わないことは一時的に回避しているにすぎません。この状態が続くと、組織として次のようなリスクが発生します。

・主体性の低下
・エンゲージメントの低下
・学習機会が生まれない
・人材が育たない
・優秀な人材の流出
・チームワークの質の低下
・他部署との連携がうまくいかない
・イノベーションの停滞
・問題の発見と解決の遅れ
・ナレッジの不足・蓄積
・イノベーションの停滞

これらについて具体的に説明します。

主体性の低下

社員が意見を言わない状態が続くと、社員の主体性が低下します。言われたことをやるだけになってしまうためです。

社員が意見を述べない状況が続くと、自ら考えることや提案することへの意欲が減退し、上司や組織の指示に従うことに適応してしまいます

エンゲージメントの低下

社員が意見を言わないと、エンゲージメントの低下にも影響します。組織に自分がいる意味を見出せなくなるためです。

意見を表明することは、自らの存在意義や貢献価値を感じる重要な要素のため、意見を言わないことで組織における自己の存在価値を見出せなくなります。これにより、社員は自らの関与や積極性を失い、エンゲージメントや責任感が低下します。

学習機会が生まれない

社員が意見を言わないと、その社員の学習機会も生まれません。意見を言うという経験が少なくなるためです。

意見を言うことで、自らの考えや知識を整理し、他者と議論を交わすことで新たな見解や知識を得られます。しかし、意見を言わない社員は、そのような学習の機会を逸することになります。

人材が育たない

人材が育たない、というリスクも社員が意見を言わないことで起きます。自身の経験が乏しいと、その社員がさらに部下を教えても、多くの学びを伝えられないためです。

経験や知識の幅が狭い状況が続くと、その社員が部下や同僚を指導する際にも、多くの学びを伝えられなくなります。その結果、部下や同僚の成長や能力開発に寄与することが難しくなり、人材育成に関するリスクが生じる可能性があります。

優秀な人材の流出

適切な意見を「昔からこのやり方でやっているから」とか「それに対応している時間がないから」などのネガティブな理由によって拒否していると、この組織にいてもやれることが制限されすぎていて自分のスキルを発揮しきれず退屈だと感じます。成果を出す機会が限られている組織では、自己実現や成長が阻害され、やりがいを見出すことが難しいためです。

このような意見を言っても受け入れられない組織では、優秀な人材は自らのポテンシャルを十分に発揮できないと感じ、他の組織に転職することを選択する傾向が高まります。自身の能力やスキルが活かせる環境を求めるたて、組織は優れた人材の流出を招くことになります。

チームワークの質の低下

社員が意見を言わないとチームワークの質が低下します。意見として出していないモヤモヤや鬱憤が溜まっている可能性が高いためです。

溜まったモヤモヤや鬱憤は、チーム内の雰囲気を悪化させ、不協和音を生む原因となります。また、溜まった不満や不安が、チーム内の信頼関係や連帯感を損なうことにも繋がります。

他部署との連携がうまくいかない

社員が意見を言わないと、他部署との連携もうまくいきにくくなります。意見を言わない社員は、自らの考えや提案を他部署に伝えられず、情報の共有や意思疎通が不十分になるためです。また、意見を言わないことで不満や疑問が溜まり、他部署とのコミュニケーションに悪影響を及ぼす可能性があります。

これにより、他部署との連携が困難になり、業務の効率性や品質が低下する恐れがあります。

問題の発見と解決の遅れ

問題発見と解決の遅れも、社員の意見がないことで起こります。組織内で起きている問題が上層部や関係者に対して明確に報告されず、見過ごされてしまうためです。

問題が表面化せずに放置されると、それに対する適切な対策が講じられないまま状況が悪化する可能性があり、大きなリスクになりえます。

ナレッジの不足・蓄積

社員の意見がないと、ナレッジも不足が起こり、蓄積されません。意見を述べない社員は、自身が持つ知識や経験を他のメンバーと共有することを積極的にしないため、組織全体のナレッジ不足につながります。また組織全体のナレッジが溜まっていかないということも起きます。

組織にナレッジが溜まっていかないと、社員の転職とともに今までのナレッジがなくなってしまうため、組織としての成長が難しくなります。

イノベーションの停滞

社員が意見を言わないとイノベーションが停滞します。新しい意見やアイデアがない状況では、従来のやり方や既存のプロセスが維持されるためです。

新しい意見やアプローチがない状況では、顧客ニーズや市場の変化に適切に対応することが難しく、組織としての存続が危うくなります。

このような10のリスクがあることを理解し、意見を言わない社員に対して対応策を検討しましょう。

3)まとめ|意見を言わない社員に対して研修で変化を促しましょう

本コラムでは、社員がなぜ意見を言わないのかという理由と対策を紹介しました。

社員が意見を言わない10の理由と対応策はこちらです。 

理由 対応策
意見を言って辛い思いをした経験があるため 些細なことについて相談することから始める
自分の意見に価値がないと思っているため ・ポジティブフィードバックを行う
・レジリエンスを鍛える
意見を言うと嫌そうな顔をされるため ・ 短期的 : 意見ではなく質問にする
・ 中長期 : 日ごろからのコミュニケーションを取ることで、価値観を知る
意見を言うことで評価が下がった経験があるため 相手に不快感を与えない伝え方を工夫する
意見を言うことに恐怖心があるため 会議の場にルールを入れる
意見を言うとその仕事を押し付けられるため ファシリテーターを入れて公平に議論する
意見を言っても変わらないと諦めてしまっているため 意見を反映しない結果となったとしても、意見に対してどのように検討され、どのような判断で実施を見送ったのかを伝える
意見を言う機会がないため 意見を言う機会を作る
意見をうまく伝えられないため ・ファシリテーター(司会)から意見がまとまってなくてもいいと伝える
・言葉にする時間を設ける
・フレームワーク(論点)を渡し、その中で意見を言ってもらう
意見を持っていないため ・話を理解できていない人に対しては、適宜理解ベルを把握する時間を設ける
・主体性が低い人については、仕事に向き合う姿勢を改善する

自組織の社員がどのような理由から意見を言わなくなっているのかを検討し、意味のある対応策を行いましょう。

社員が意見を言わないことは一時的に問題いを回避しているにすぎません。この状態が続くと、組織として次のようなリスクが発生します。

・主体性の低下
・エンゲージメントの低下
・学習機会が生まれない
・人材が育たない
・優秀な人材の流出
・チームワークの質の低下
・他部署との連携がうまくいかない
・イノベーションの停滞
・問題の発見と解決の遅れ
・ナレッジの不足・蓄積
・イノベーションの停滞

このようなリスクがあることを理解し、意見を言わない社員に対して対応策を検討しましょう。

なお、社員が意見を言わない状況に対しては、ファシリテーターを入れることが効果的な場面が多いです。効率的な会議の進め方、全員が意見発信する会議のスキル、異なる意見からコミットメントを高める合意形成力をファシリテーターが習得すると、会議は変わり、パワフルな施策実施や成果の向上、チームワークの向上につながります。

「会議を実施しても意見がでない。一方的な共有で終わる。」というお悩みをお持ちの方は、ファシリテーターを育成することをお勧めします。

アーティエンスではファシリテーション研修を実施していますので、詳細を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。

ただ意見を言わない社員がダメだと決めつけるのではなく、組織として社員が意見を言いやすくなるようにするための環境を整え、主体的な社員を増やせるようにしましょう。