コラム

新入社員の放置は今すぐ止めるべき!その理由と対処方法5選

 外のベンチで頭を抱えているスーツ姿の男性

2022/8/24作成ー

 

「職場で、新入社員が放置されているかも…?でもどうすればいいの…」

と新入社員育成の放置で悩む人事や企業も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
特にコロナ禍となり、こういったお悩みをお聞きすることが増えています。

新入社員の放置は、新入社員本人にのみ悪影響を及ぼすと考えられがちですが、実は、組織全体にも悪影響を及ぼし、将来的には組織の存続自体をも左右する問題となり得ます。

そこで本記事では、

・新入社員を放置してはいけない理由
・新入社員が「放置されている」と感じる要因
・トレーナーが新入社員を「放置してしまう」要因
・放置状態を改善する対処方法や事例

について解説をしていきます。

自社で新入社員の放置状態が疑われるようであれば、本記事の内容をご参考に、育成方針や体制について見直すきっかけとなれば幸いです。

1)新入社員を放置してはいけない4つの理由

冒頭でも少し触れましたが、新入社員の放置は、新入社員自身にとっても、会社にとっても悪影響を及ぼします。

では、どのような悪影響を及ぼすために、新入社員を放置してはいけないのか。
その理由は大きく4つあります。

新入社員を放置してはいけない4つの理由
1 学生気分が抜けずにトラブル発生のリスクを高める
2 新入社員の仕事のパフォーマンス(生産性)が上がらない
3 本人の意欲やモチベーションが下がり退職リスクが高まる
4 会社としての成長にも限界が生じる

次の項目から、4つの理由について一つずつ解説していきます。

① 学生気分が抜けずにトラブル発生のリスクを高める

1つ目の理由は、社会人になった自覚を持てずに、無責任な言動やトラブルを引き起こすリスクを高めるためです。

新入社員が放置されている、職場で何もしていない状況というのは、社内外の人たちと関わり、行動する機会が提供されていないということです。

過去、弊社にご相談があった企業の例ですが、一部上場を予定していたある企業の新入社員について、上場に関する社内告知用データ(社外秘)をスマホ写真に撮り、新入社員個人のSNSにアップするというトラブルを発生させてしまったことがありました。

人事担当者の方は、「そもそも新入社員の育成フォローが全くできておらず、放置してしまっていたため、このような事態を発生させてしまったのでは」と考えられていました。

このように、新入社員を放置した状態が続くと学生気分が抜けきらず、社会人としてあるまじき行動を取り、会社として不利益を被るリスクが高まります。

② 新入社員の仕事のパフォーマンス(生産性)が上がらない

2つ目の理由は、新入社員の仕事のパフォーマンス(生産性)が上がらないためです。
当たり前ですが、放置された状態では、業務経験を積むことができません。
「何をすれば良いのか」「どのようにすれば良いのか」がわからず、効率的に仕事を進められないため、新入社員のパフォーマンス(生産性)は一向に高まりません。

例えば、新入社員を放置したため、下記のような状態に陥ってしまった企業様もあります。

①新入社員がいつまでたっても仕事を覚えられない
②上司や他メンバーが新入社員の仕事を負担するので、一人あたりの業務量が増える
③チーム全体のパフォーマンス(生産性)が落ち、業績も下がる
④業務量過多により体調を崩すメンバーが増加、休職者が発生する
⑤採用コストの増加、人員配置等の新たな工数が発生

新入社員を放置することの影響は、新入社員本人のみならず、チームや部署、延いては組織全体のパフォーマンス(生産性)低下を引き起こす要因にもなり得ます。

③ 本人の意欲やモチベーションが下がり退職リスクが高まる

3つ目の理由は、退職リスクを高めてしまうためです。
どんなにやる気に満ちた新入社員でも、職場で放置された状況が続くと、意欲やモチベーションの低下に繋がります。
焦りや不安から物事を悲観的に捉えるようになり、会社や周囲に対する不満も募ってくるでしょう。今の会社での成長や将来のイメージを描けなくなるかもしれません。

過去、弊社にご相談があった不動産系企業の例です。

「新入社員の離職率が高く、また戦力化するにも時間がかかっている」というお悩みを抱えていました。詳細をヒアリングしてみると、配属後に「OJTという名の放置」で、全く新入社員育成ができていない状態が見えてきました。

そこで、1年かけて一緒にOJT制度を構築し、配属後も定期的に研修を実施していったところ、1年間で離職率は大幅に改善されていきました。また、OJT制度と研修導入前は、配属後3か月間の受注は全体でわずか1件でしたが、導入後は3件の受注(口頭受注含む)となりました。

新入社員の放置は、当人のモチベーションや意欲を低下させ、退職を選択する大きな理由になるということでしょう。

※OJT:On-the-Job Trainingの略称。
上司や先輩社員(トレーナー)が、新入社員(トレーニー)に対し具体的な仕事を与え、その仕事を通して業務に必要な知識・技術・考え方などを指導し、修得させることを指します。

④ 会社としての成長にも限界が生じる

4つ目の理由は、組織風土として社員を育成する文化が根付かず、会社としての成長に限界が生じてしまうためです。
昨今の目まぐるしく変化するビジネス環境において、人材の流動性もより一層高まりを見せています。
これは「流動性が高まっているから、外部から採用すればよい」というわけではありません。

どの企業においても人材確保、とりわけ優秀な人材ほど採用する難易度が増しています。採用できなければ、自社で人材育成していくしか道はありません。

しかしながら、新入社員を放置する会社は「社員を育てて成長を支援する」という組織風土が育まれていないため、優秀な人材が育ちにくく、今後のビジネス環境で伸び悩むことが目に見えています。

1つ目の理由の事例でお伝えした一部上場予定の企業も、その後弊社新入社員研修を定期的に実施し、職場の育成体制を整備していきました。

その結果、「新入社員が早期に立ち上がり、組織全体の活気化にも繋がった」というお話を聞いています。

2)新入社員が「放置されている」と感じる要因は?

トレーナーや組織側からすると、放置しているつもりはなくても、新入社員側では「放置されている」と受け止め、お互いの認知が異なっていることは珍しくありません。

では、新入社員はどのような時に「放置されている」と感じてしまうのか。
その要因は大きく4つあります。

新入社員が「放置されている」と感じる4つの要因
1 トレーナーとのコミュニケーションが少ない・取りにくい
2 育成が体系化されていない
3 マニュアル化されていない業務内容が理解しづらい
4 「やってみよう」ではなく「やっておいて」になっている

次の項目から、4つの要因について一つずつ説明していきます。

① トレーナーとのコミュニケーションが少ない・取りにくい

1つ目は、トレーナーとのコミュニケーションが少ない、または取りにくいことです。
コミュニケーション量が少ないと、新入社員は孤独感を抱くため、放置されていると感じやすくなります。
このように感じてしまう背景として、忙しそうなトレーナーに新入社員からは声を掛けにくい・タイミングが難しいという悩みをよく聞きます。
特にテレワーク環境だと、相手の状況が見えないため、その難易度はより一層上がります。
そういった状況を改善するためには、下記のように新入社員が自分のことを「見てくれている」と思えるコミュニケーションを取れると良いでしょう。

・トレーナーから定期的に「今大丈夫?」「何か困っていることはない」と声掛けをする
・配属間もないうちは、報連相のタイミングを仕組み化する
(2時間に1度声を掛ける等。報連相がない場合でも「報連相はありません」と報告し、新入社員の状況を把握する)

② 育成が体系化されていない

2つ目は、新入社員育成が体系化されていないと放置されていると感じることが多くなります。
体系立った研修カリキュラムや教育マニュアルがないと、場繋ぎ的なレクチャーや作業依頼を受けることが多くなるため、自ずと待ち時間が長くなったり、不安な気持ちが募るためです。

例えば、育成の体系化の要である「全体像」や「目指すゴール」が不明瞭だった場合、現場でのトレーナーは部下の成長よりもすぐに結果を出すことを優先するため「とりあえずこれやっといて」と言った作業依頼が多くなってしまいます。

そうすると新入社員は、 作業を進めるものの期待以上の質を超えることはほとんどなく、「今、何のために何をしているのか」も分からないため修正すべき点も理解ができず、「自分はこの会社の仕事のやり方があっていないのではないか」などの不安が募ることになってしまうため、育成の体系化や教育プログラムの整備は必須となります。

③ マニュアル化されていない業務内容が理解しづらい

3つ目は、マニュアル化されていない業務内容を理解できず、放置されていると感じることです。
全ての仕事がマニュアル化できるわけではありませんが、新入社員がマニュアル化されてない業務が多くなると、理解が追い付かず仕事に難しさを感じます。
これは、入社したての新入社員によくある「何がわからないかわからない」という状態を引き起こします。

新入社員からうまく質問もできずにどんどん先に進んでいくので、放置されていると感じやすくなります。
また、仕事の前進感も持ちにくくなるため、自信が徐々になくなってしまう可能性も高まります。

④ 「やってみよう」ではなく「やっておいて」になっている

4つ目は、トレーナーからの声掛けが「やっておいて」になってしまっていることです。
少しの表現の違いですが、「やってみよう」と「やっておいて」は、受け手側である新入社員には大きな違いが生じています。
新入社員は「やっておいて」と言われると、一人で全て対応しなくてはいけないと感じる傾向があります。そうなると、途中でやり方がわからなくなった場合も相談しにくく、不安が募り、放置されていると感じます。

その一方で「やってみよう」は、一緒に進めていく印象を持ちます。安心感を持って取り組め、相談もしやすくなるでしょう。

ちょっとした言葉遣いの違いですが、新入社員が持つ印象は大きく変わります。

 

3)トレーナーが新入社員を「放置してしまう」要因は?

今度は、トレーナーが新入社員を「放置してしまう」要因についてみていきます。
その要因は6つあります。

トレーナーが新入社員を「放置してしまう」6つの要因
1 忙しく育成する時間と余裕がない
2 OJT体制が整っていない
3 育成が自身の仕事であるという役割認識がない
4 育成経験やスキルが不足している
5 「背中を見て学べ」という価値観を持っている
6 新入社員に何かしらの問題がある

6つの要因について、次の項目から一つずつ説明していきます。

① 忙しく育成する時間と余裕がない

1つ目は、職場が忙しく、新入社員育成に割く時間・余裕がないため、やむを得ず新入社員を放置しているケースです。

労働政策研究・研修機構の調査によると、新入社員に限定した調査結果ではないものの、社員の人材育成・能力開発の課題として「人材育成を行う時間がない」ことを挙げる企業が30.2%にも及ぶことがわかっています。

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【出典】独立行政法人労働政策研究・研修機構
人材育成と能力開発の現状と課題に 関する調査(企業調査)よりアーティエンス作成

人員不足などにより、一人ひとりの業務量が多くなっていると、新入社員はトレーナーに質問や相談がしづらく、またトレーナーも新入社員を気にかける余裕を持てないため、放置状態がうまれやすくなります。

そのため、組織としては適切な人員配置やトレーナーの業務量を見直す必要が求められます。

あわせて、新入社員育成はトレーナー一人に任せきりにするものではありません。チームとして、組織として「みんなで新入社員を育成していく」という風土醸成が非常に大切です。

例えば、弊社では新入社員入社後3か月は、毎日1on1ミーティングを実施していますが、トレーナー一人が担当するのではなく、チームメンバーで持ち回りで行っています。持ち回りで行うことで以下のようなメリットがあり、まさに「みんなで新入社員を育成していく」という風土醸成に繋がっています。

1on1ミーティングをチームメンバーで持ち回り制で実施するメリット
トレーナー 育成の時間的な負担軽減、他社員からの育成に関するアドバイスをもらえる。
新入社員 様々な視点からアドバイスや意見をもらえる。関係性構築にも繋がる。
トレーナー以外の
社員
自身も新入社員育成に携わっているという当事者意識を持てる。

 

② OJT体制が整っていない

2つ目は、新入社員の配属後のOJT体制が整っていないことです。
教える側のトレーナーは負荷が大きくなり、教えられる側の新入社員は放置されやすくなります。
例えば、以下の観点で不充分な点があれば、OJT体制は十分とは言えません。

・OJT終了後の目指す姿・目標が明確になっている
・Off-JTと連動性があり、目指す姿・目標から逆算された育成スケジュールがある
・OJTの指導ガイドやマニュアルが用意されている
・トレーナーに対して定期的なフィードバックやサポート体制がある

トレーナーによって育成にバラつきを生じさせないためにも、会社としてOJT体制の整備に取り組んでいく必要があります。

※Off-JT: Off-the-Job Trainingの略称。職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習を指します。

③ 育成が自身の仕事であるという役割認識がない

3つ目は、トレーナー自身が新入社員を育成する立場であるという役割認識が弱いケースです。
こちらに関しては、前述したトレーナー自身の業務の忙しさやOJT体制の不備、育成スキル・経験不足などあらゆる要素が重なり、育成担当という役割に対する当事者意識や想いを持てていないことが要因として考えられます。
当事者意識や想いが醸成されず、やらされ感を持ったままだと、放置に繋がります。
新入社員の配属前に、トレーナー向け研修等を行い、育成への想いやトレーナー自身の成長と紐づけて考える機会を提供したり、育成を評価制度と連動させるなどの見直しも必要になるでしょう。

④ 育成経験やスキルが不足している

4つ目は、トレーナーの育成経験やスキル不足が原因となるケースです。
まず、経験不足の場合は、新入社員の性格や特徴にあわせた個別対応や応用が利かず、育成する自信が持てないために、新入社員を放置してしまう可能性が高まります。

ただ、この経験不足に関しては、地道に経験を積んでいくしか解決策はありません。
次に、育成スキル不足のため、やむを得ず新入社員を放置してしまうケースです。

会社や業務の知識やスキルは、勤続年数と共に自然と身に付くかもしれませんが、育成スキルは自然と身に付くものではありません。予めトレーナーに育成スキルを付与・訓練し、育成担当者として育てていかなければ、当然適切な育成ができず、新入社員を育てられません。

ご参考までに、育成経験やスキルが不足していないトレーナーは、下記のようなことを行っています。

・育成計画を立て、それに基づいた指導を行う
・新入社員の状態を把握するため、こまめに話し掛ける
・ティーチングとコーチングを育成時期によって使い分ける
・新入社員の経験を共に振り返り、成長に繋げるための内省支援を行う

上記観点が一つでも当てはまらなければ、新入社員育成に充分な育成経験や経験が不足していることになります。
その場合、トレーナー個人の問題ではなく、組織全体の課題として捉えて改善していく必要があります。

⑤ 「背中を見て学べ」という価値観を持っている

5つ目は、トレーナーが「背中を見て学んでほしい」という価値観から、新入社員にあえて何も教えない、放置しているケースです。

特に、トレーナー自身が、過去そのように育てられた経験を持っていると同様に育てようとする傾向があります。
もちろん、「他者を見て学ぶ」という経験も大切ですが、リモートワークも増えた昨今の育成環境では、「背中を見て学べ」だけの育成では通用しにくくなっています。これまで暗黙知として伝わっていたノウハウやコツ等も、形式知として言語化し伝えていく必要があります。

また、「これくらいできて当たり前」という基準も時代と共に変わります。自分たちの価値基準を押し付けるのではなく、新入社員の傾向や特徴を理解しながら、共に歩み寄って育成することが大切です。

⑥ 新入社員に何かしらの問題がある

ここまではトレーナー側に放置する原因をお伝えしてきましたが、新入社員側に問題がある可能性もあります。なぜなら、新入社員の仕事への取り組み姿勢や態度次第で指導する側の気持ちや行動も変わってくるからです。

例えば、新入社員に以下のような状況が見受けられる場合、トレーナーの育成に対する優先順位が下がり、新入社員を放置しがちになります。

・時間や納期を守らないなど、勤務態度が良くない
・全てにおいて受け身姿勢で、やる気や意欲を感じない

そのため、新入社員としても「育成してもらって当たり前」という認知ではなく、トレーナーや周囲に対して感謝や貢献の気持ちを忘れずに、育んでいく必要があります。

4)新入社員の放置を改善する対処方法5選

ここまで新入社員を放置することで生じるリスク、放置の要因・理由についてお伝えしてきました。ここからは、放置を改善する下記5つの対処方法について、一つずつ解説していきます。

新入社員の放置を改善する対処方法5選
1 職場環境を整え、社員の負担を軽減する
2 OJT計画・体制を整える
3 トレーナー・新入社員に定期的な研修を行う
4 新入社員と話し合える機会・制度を設ける
5 新入社員を定点観測できる仕組みをつくる

 

① 職場環境を整え、社員の負担を軽減する

1つ目は、根本的な観点になりますが、職場の労働環境を整え、社員の負担を軽減することです。
そうすることで、社員一人ひとりがゆとりを持てるようになり、新入社員育成や指導へかける時間もうまれます。

具体的には、
・職場の人員を増やし、一人ひとりの業務負担や労働時間を減らす
・業務支援ツールやコミュニケーションツールを導入し、業務効率を上げる
などが挙げられます。

ただし、ツール導入に関しては、自社の課題や既存のツールとの相性を考えないと、業務フローの混乱やムリ・ムラ・ムダが生じて逆効果にもなり得ます。

導入目的の明確化、検証期間や効果検証の設定は重要です。
また、ツールを上手く活用できている部署を成功事例として取り上げ全社に周知する、などの取り組みも有効です。

② OJT計画・体制を整える

2つ目は、OJT体制の整備や見直しを行うことです。
具体的には下記の5つの観点で整備や見直しを行っていけるとよいでしょう。

1)OJT終了後に目指す姿・目標の明確化 ——何のために、何を、どの程度身に付け、どのような状態を目指すのかを明確にする

2)必要な業務・スキル・知識の洗い出し ——目標達成に向けて必要な要素(業務・スキル・知識)を全て洗い出す

3)具体的な育成スケジュールの立案 —— Off-JTとの連動、インプット・アウトプットのバランスを鑑みて、スケジュールに落とし込む

4)OJTマニュアル・ガイドの策定 ——基礎となる指導内容はマニュアルやガイドに落とし込み、育成の標準化・時間短縮を図る

5)トレーナーに対し定期的な面談等のサポート整備 ——直属上司や人事担当が定期的にトレーナーと面談を行い、OJT期間にフォローできる体制を整える

OJT体制を整えることで、行き当たりばったりな指導や無駄な待ち時間が減り、放置状態が改善されます。
また、OJT計画は予め新入社員にも説明し、周知しておくことも重要です。

自身が今、最終的な目標に対してどのフェーズにいるのか、何のためにこの業務が必要なのかが理解できると、漠然とした不安も解消されます。

③ トレーナー・新入社員に定期的な研修を行う

3つ目は、トレーナーと新入社員、各々に対して定期的に研修を行うことです。

トレーナー向け研修

トレーナーに向けては下記2つの観点で研修を行い、新入社員の放置状態を改善することが可能です。

・トレーナーとしての想い醸成
・OJTスキルの付与

【トレーナーとしての想い醸成】
スキル付与の前に、育成担当者であるトレーナー自身の仕事や育成に対する“想い”を醸成していくことが大切です。

新入社員に主体性を期待するのであれば、トレーナー自身が育成にやりがいを感じ、主体性をもって臨んでいる状態を見せられることが望まれるためです。

・自身は日々どのような想いをもって行動しているのか
・会社からの育成方針を受けて、自分なりにどのような育成を行おうと考えているのか

などを整理できる簡単なフォーマットをトレーナーに共有し、言語化の手助けを行うことも一つの方法です。

【OJTスキルの付与】
想いが醸成されたら、育成に必要なスキル習得を目指します。
弊社ではトレーナーには下記4つのスキルが重要であると考えています。
4つのスキルを基礎として、研修を企画していくことをおすすめします。

・育成計画作成スキル
・ティーチングスキル
・フィードバックスキル
・コーチングスキル

※4つのスキルの詳細はコチラをご覧下さい。
トレーニーを成長させるOJTトレーナーに必要な4つのスキル

また、事前に研修を行ったから大丈夫、というわけではありません。
実際に現場で育成を経験すると、日々さまざまな悩みやモヤモヤが生じてきます。

それらを解消していくためにトレーナー同士で勉強会を定期開催し、育成の悩みや工夫点等を共有し合いながら、トレーナー同士が学び合う環境を創っていくことはおすすめです。

勉強会を実施する際は、下記点を抑えておけるとよりよい学びの場になるでしょう。
・愚痴を発散するだけの場にならないよう、人事や第三者がファシリテーターとして介入する
・勉強会の目的・目標・アジェンダ・参加者の役割・グランドルールは明確に設定する
・Google jamboardなどを用いて、事前に悩みやモヤモヤを書き出しておいてもらう
(匿名性がある方が共有しやすい)

なお、弊社では人材育成に取り組む人事やトレーナー、管理職の方々を対象に、毎回様々なテーマでオンライン勉強会(学習コミュニティ)を定期開催しています。

「社内での勉強会開催は難しい…」「勉強会の内容や流れを参考にしたい」などといったニーズにもお役に立てるかと思いますので、是非お気軽にご参加ください。
アーティエンスの学習コミュニティ

 

新入社員向け研修

新入社員に対しては、配属後も定期的に研修を実施していくことが重要です。
研修を定期開催することで、スキルや知識習得に加え、同期同士お互いの状況を共有し合えます。上司やトレーナーには言いにくい不安や悩みを吐き出すことで気持ちが楽になったり、同期の仕事上の工夫点などを知り、自身の課題解決の糸口を得られるかもしれません。
また、もし、職場で放置されていることに悩む新入社員がいた場合には、一人で抱え込まずに相談するきっかけとなります。人事側も、放置されている状態に気付け、新入社員との面談や現場社員へのヒアリングといった行動を取りやすくなります。

トレーナー・新入社員の合同研修

トレーナーと新入社員各々に実施する研修以外にも、両者合同で研修を実施して相互理解を深めていくことも放置の改善には効果的です。ご参考までに、弊社で実施する合同研修の一例をお伝えします。

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研修開始直後の午前中は、トレーナー・新入社員は別クラスで研修を行います。
その理由として、まずは同じ立場のメンバーが集まり、安心・安全な環境の下で成長の実感や近しい立場ならではの不安の解消を図るためです。

次に、午後/前半では、できるだけ現状をフラットに且つ多様な視点から見て、視野を広げられるように、様々な社員と対話ができるワークの時間を設定しています。
そして、午後/後半では、相互に率直な気持ちを伝え合います。終日研修を通して仕事上のコミュニケーションから外れ、非日常的な機会を設けると、普段気付けていないことに気付けることも多くあります。

実際、研修に参加したトレーナーからは下記のような感想をいただいています。

・新入社員側の目線を改めて思い出すことができました。そして、自分と新入社員では見ている世界が異なっていることに気付きました…もっと日々の業務ですり合わせたり、フォローしていく重要性を感じました。

・新入社員が自律・自走できるようになるためには、トレーナー1人だけではなく、チーム全体でのサポートもより強化していきたいと感じた。チーム全体で、新入社員にフィードバックができるような体制作りを考えていきたい。

※上記合同研修に関する詳細・資料請求は下記からご覧いただけます。
新入社員・OJTトレーナー合同研修~育成する風土を創っていくために~

 

④ 新入社員と話し合える機会・制度を設ける

4つ目は、新入社員が直属の上司やトレーナーと話し合える機会・制度を設けることです。
定期的且つ気軽に相談できる場をつくることで、新入社員としては「見てくれている」という安心感を持て、放置されていると感じにくくなります。具体的には下記手法を導入することをおすすめします。

新入社員と話し合える機会・制度の一例
メンター制度 トレーナーとは別に年齢の近い先輩や社歴の近い先輩をメンターとして設置し、新入社員(メンティ)のキャリア形成上の課題や悩み、メンタル面などのサポートを行っていく制度です。
新入社員からすると、相談しやすい兄/姉のような存在です。
1on1ミーティング 1on1ミーティングとは、上司と部下が1週間に1回など定期的に面談を行う制度です。
テーマが限定されているわけではありませんが、業務の課題ではなく、主にキャリアや成長の課題について話す(業務については別の場で話す)場です。
人事担当者との面談 新入社員が現場の人間関係等に悩みがある場合、上司との1on1ミーティングでは聞き出せない可能性があります。入社直後は1週間、配属後は1か月、3か月、6か月といったサイクルでフォロー面談を行うことをおすすめします。人事担当者は、新入社員からのヒアリング内容を確認し、より適切な指導や成長ができる取り組みや対策を講じていきます。

あるお客様で、メンター制度を導入し、若手社員の離職率を低下させた事例があります。
その企業様では、入社3年目以降の「いよいよこれから」というタイミングで若手社員が退職してしまい、ひょうたん型の組織構成になりつつあるという課題を抱えていました。

そのため、新たに入社してくる新入社員とトレーナーとの年齢差が徐々に大きくなり、お互いの価値観の違いや関係構築の難しさから、現場育成がうまく機能せず、新たな離職を生んでしまう、というサイクルがまわっていました。

その課題解決に向けて、新入社員と年の近い先輩社員をメンターとして制度導入を図りました。(メンター制度以外にも、若手社員向けの研修を再構築するなど様々な取り組みを並行して行っています)

メンター制度によって、新入社員がメンターをロールモデルとして自社でのキャリアを考えやすくなったり、トレーナーには言いにくいことを気軽に相談できる人ができたりしたことで、離職率も徐々に改善していきました。

メンター制度は、新入社員の放置状態の改善だけではなく、離職防止にも効果的な施策であると言えます。

▶1on1ミーティング導入に関する資料を無料ダウンロードする
【GrowthMeeting2022年7月】現場の1on1ミーティングに対して、人事はどんな支援・関わりができるのか?

 

⑤ 新入社員を定点観測できる仕組みをつくる

5つ目は、新入社員を定点観測のように定期的に状態を把握し、状況に応じてケアやフォローしていく仕組みをつくることです。

社員の状況を把握するにはパルスサーベイ(週次~月次といった短いスパンで、5~15ほどの簡易的な設問に繰り返し回答し、変化を確認していく意識調査)等のサーベイが有効です。

ここでは、弊社の若手・新入社員向けパルスサーベイGrowth(グロース)を活用し、新入社員の放置・孤立状態が改善されたA社の事例をご紹介します。

【A社概要】
・中堅SIer企業(従業員約 500 名)
・導入サービス:新入社員研修(4・7・10・3月)
・Growth実施状況:新入社員20名(入社した4月から月1回定期回答)
・配属時期:5月

※ Growth(グロース)とは:月1回の回答を通して若手・新入社員の状態を可視化し、育成フォローに繋げていくサーベイです。5段階選択式の設問(Q1〜9)とフリーテキスト(Q10)から成ります。

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Growthによって可視化された新入社員の放置状態

以下表は、A社のある新入社員のGrowthフリーテキスト(Q10)です。6月のコメントにて、周囲に相談しにくい状況にあり、精神的にも不安や孤立感を抱えている様子がうかがえました。(内容は一部加工しています)  新入社員のGrowthフリーテキスト

 

Growth結果から紐解いた新入社員放置の背景

Growth結果を基に、A社人事担当者と弊社コンサルタントとで話し合いを行いました。その結果、新入社員がコメントを記載した背景として、以下の状況と仮説が浮かび上がりました。

・5月のゴールデンウィーク明けから本配属。客先常駐型の働き方で完全テレワーク勤務。配属チームは、自身と年の離れた先輩の計3名

・客観的に考えて、トレーナーへの質問時間が取れないほど多忙なチームではないはず

・配属後 1ヵ月が経ち、新入社員の中でトレーナーに逐一質問することへの罪悪感が生じているのではないか?

・トレーナーとしても、質問されれば答えるが、質問がなければ特に何も対応しない状況となっているのではないか?

 

新入社員の放置状態改善に向けた3つの取り組み

先ほどの状況・仮説をふまえて、新入社員へのフォローとして大きく3点取り組みました。

1)現場の管理職にGrowth結果を共有し、新入社員・トレーナーぞれぞれと1on1ミーティングを実施した。

2)7月の新入社員研修内で、Growth結果を用いたワークを実施。自分たちで付けた数値結果の背景や想いを伝え合い、その上で、現在の悩みや不安、工夫していること等を同期同士で共有し合った。

3)人事から新入社員へ個別面談を実施。新入社員から状況をヒアリングしつつ、「トレーナーにしか相談できないわけではない。斜め上の先輩や上司にも相談し、仕事を進めていってほしい」と伝えた。

そして、取り組み後のGrowthフリーテキスト(Q10)は、以下内容に変化していきました。

(内容は一部加工しています)  新入社員のGrowthフリーテキスト

人事担当者が7月のGrowth回答後も個別でコンタクトを取ったところ、仕事への意欲も持ち直し、資格取得に向けて猛勉強中との回答があったとのこと。

このように、サーベイ等で新入社員の状態を定点観測のように可視化し、その変化をいち早く察知できると、タイムリーにフォローを行え、放置状態を改善することが可能になります。

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資料請求|アーティエンス株式会社

5)まとめ

新入社員が放置される要因やその対処方法についてお伝えしました。本記事の要点をまとめると下記になります。


・新入社員の放置は、当人の退職リスクを引き上げるだけでなく、組織全体の成長にも悪影響を及ぼす

・トレーナーが放置しているつもりはなくても、新入社員は「放置されている」と感じることがある

・トレーナーが新入社員を放置してしまう原因は、個人単位の問題ではなく、組織単位で捉えていく必要がある

・新入社員の放置状態を改善するには、育成体制の見直しや職場の育成をフォローする仕組み構築が重要になる

新入社員は、組織の未来を担う大切な存在です。せっかく採用した新入社員が配属後に放置された状態では、早期退職にもなり得ますし、組織としての未来も危うい状況に陥ってしまいます。

また、新入社員にとっても、社会人としての土台となるファーストキャリアは非常に重要です。

しかしながら、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を機に育成の現場や働き方が激変し、彼らが周囲から育成サポートを受ける難易度はより一層高まっています。彼らの未来のためにも、放置を防ぎ、組織全体で育成サポートしていく体制づくりが求められます。

アーティエンスでは、トレーナーや新入社員向けに各種研修や、新入社員の状態を定点観測し孤立化を防ぐGrowthサーベイの実施を通して、新入社員の放置を防ぎ、組織の育成文化づくりをお客様と共に取り組んでいます。

一つとして同じ会社がないように、育成のやり方・アプローチも会社によってそれぞれ違ってきます。

ご状況や課題にあわせてご相談できればと思いますので、まずはお気軽にご相談下さい