新入社員の配属後フォロー|3つのギャップを解消する4つの施策

更新日:

作成日:2023.3.9

人が行き交うイラスト
「え、○○さんが、来月いっぱいで退職!?」

・・・期待していた新入社員が配属後、早期離職してしまった経験もあるかもしれません。
人材不足が叫ばれている中、時間やコストをかけて採用した新入社員が早期に離職してしまうと、組織としても大きなダメージになります。

そうならないために非常に重要な役割を持つのが、「新入社員の配属後のフォロー」です。適切にフォローを行うことで、新入社員の早期離職を防ぐだけでなく、成長を促し、早期に成果を出すきっかけにもつながります。

新入社員の採用や育成にかかった時間やコストが、「コスト」となるか「投資」になるかは配属後のフォローによって変化するといっても過言ではありません。

そこで本コラムでは、配属後の新入社員に実施すべきフォローについて解説していきます。配属後のフォローにお悩みの場合は、お役立ていただけるはずです。

監修者プロフィール

近藤 ゆみ

アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。




新入社員研修成功事例集

1)新入社員の配属後のフォローは「自律自走への支援」のため

現場配属後の新入社員へフォローを行う目的は、新入社員の「自律自走への支援」です。
新入社員が「自律自走できている状態」とは、「自らで考えて、主体的に仕事を前に進めている状態」を指します。

新入社員が自律自走できないと、次のような活躍や成長を見込めない人材になってしまいます。

・上司やトレーナーの指示命令によって言われたことのみ行う
・業務への当事者意識が低く、責任感が弱い

・いつまでたっても独り立ちできない
・不測の事態への対応が遅い

など、本来持っている能力を十分に発揮できない人材になってしまいます。

2)配属後のフォローで解消したい3つのギャップ

配属後のフォローを考える前に、新入社員が現場配属後に直面する理想と現実の3つのギャップについて、把握しておきましょう。なぜなら、それらギャップを軽減していくことが、自律自走を促し、新入社員の成長を早める適切なフォローと言えるからです。

新入社員本人や人事担当の方からよく聞くギャップには、次のようなものがあります。

・職場の人間関係
・仕事内容
・自身の能力

一つずつ解説します。

1)職場の人間関係

一つ目は、配属先の人間関係に対するギャップです。入社後の研修期間を経て、新入社員の配属先が決定するという企業も少なくありません。そのような場合、配属先の社員とは配属後、ほぼ初対面でコミュニケーションを取っていくことになります。

配属後、「人事担当者や同期とは良い関係性だったけど、配属先の上司やトレーナーとは何だかうまく馴染めない」と、配属先の社員との関係性にギャップを感じる新入社員の声もよく聞きます。

人間関係へのギャップが解消できなければ、日々のコミュニケーションも取りづらくなります。分からないこともなかなか聞けず、報連相の回数も減って、業務の進捗に支障をきたすこともあるかもしれません。また、職場に馴染めず一人で不安や孤独を感じることも多くなり、それが原因で離職となることもあるでしょう。

人間関係はデリケートな問題なので、個々の状況に応じたフォローを講じていく必要があります。

【参考】ギャップを未然に防ぐために
職場の人間関係のギャップを未然に防いでいくために何よりも重要なのは、配属時のオンボーディングを丁寧に行うことです。配属先の全員で協力しながら、新入社員を計画的に受け入れることが、新入社員とのより良い関係性構築へと繋がります。

詳しくは下記コラムをご参考ください。
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント
※オンボーディングについては、第3章でも詳しく解説します。

【その他の参考コラム】
新入社員が抱えやすいコミュニケーションの5つの悩みを徹底解説
【上司・人事必見】新入社員の悩みランキングTOP10とそのフォロー施策

2)仕事内容

二つ目は、仕事内容に対するギャップです。配属後、実際に仕事をしてみたら「想像していた内容と違った」とギャップを感じることがあります。このギャップは、「企業側の説明不足のため」「新入社員側の過度な期待のため」など様々な要因が考えられます。

その他にも、新入社員が希望した配属先でなかった場合(最初は下積み期間として特定の部門に配属される場合なども含む)、「やりたい仕事ができない」「このまま続けていいのか?」と悩む新入社員も多くいます。近年の若手社員は、「最短でキャリアパスを積みたい」という傾向が強まっており、希望と異なる部署で仕事を続けることや、下積みに対する感覚が昔とは変わってきています。そのために増えているギャップだと言えます。

新入社員が仕事内容に対するギャップを感じ、何のフォローもない状況が続いていけば、目の前の仕事に対する意義ややりがいを見出せなくなってしまいます。「この仕事を続けていても意味がない」と判断し、転職を決意することもあるので、細心の注意を払い、フォローすることが必要です。

【参考】ギャップを未然に防ぐために
仕事内容に対するギャップを未然に防いでいくためには、採用活動や内定者フォローの段階で、新入社員と仕事内容を丁寧にすり合わせておくことが何より重要です。

詳しくは下記コラムをご参考ください。
新入社員が辞める理由は、5つのギャップ。未然に防ぐ対処方法も解説!

【その他の参考コラム】
内定者フォローでお悩みの方必見!具体的な施策10個をご紹介
内定者との食事会の準備はこれを見れば完璧!内定者食事会の準備〜本番までの流れを徹底解説

3)自身の能力

三つ目は、自身の能力に対するギャップです。
「入社前に想像していたよりも、仕事ができない」「仕事をなかなか覚えられない」「思うような成果が出せない」といった悩みです。新入社員の時であれば、できない仕事があるのは当たり前ですが、本人にとってはそのことで自信を無くしたり、落ち込んでしまうことも少なくありません。

そして、そのような状況のまま何もフォローがなければ、「今の仕事は、自分には向いていない」「このままじゃ、成長できないし、スキルも身に付かない」と早々に判断し、転職に踏み切ることもあるでしょう。

【参考】ギャップを未然に防ぐために
自身の能力に対するギャップを未然に防いでいくには、新入社員に期待している役割や半年後・1年後などに到達してほしいレベルを予め丁寧に説明し、すり合わせておくことが大切です。詳しくは、下記コラムをご参考ください。

【育成担当者必見】1年後に結果を出す新入社員の目標例を職種別にご紹介

上記で取り上げた3つのギャップは、環境や個人の特性によって程度はありますが、配属後に多くの新入社員が感じるギャップです。新入社員本人だけでは、ギャップを軽減できないこともあるため、配属後のフォローは重要な役割となります。

新入社員研修成功事例集

3)新入社員の自律自走を育む、配属後のフォロー施策4選

前章でお伝えした3つのギャップを解消し、新入社員が自律自走できる状態へ支援していくために、具体的にどのようなフォローを実施していけると良いのか、4つの施策をお伝えします。

・新入社員の状況を把握できる環境を構築する
・新入社員がアラートを挙げやすい環境を構築する
・新入社員が配属後にぶつかる課題に合わせてフォローアップ研修を行う
・配属時の受け入れ体制(オンボーディング)の見直し・整備する

1)新入社員の状況を把握できる環境を構築する

一つ目は、新入社員の状況が把握しやすい環境や仕組みを整えることです。
研修期間中は、新入社員の状況が見えやすいですが、現場配属後はそれぞれの配属先に委ねられることになります。配属先によって、仕事内容や働く環境も異なるため、新入社員の不安や悩み、それらを感じる時期もさまざまです。そのため、新入社員一人ひとりの状況を人事側で定期的に把握できる仕組みを作り、適切にフォローしていくことが大切です。

例えば、従業員向けのサーベイツールを導入し、新入社員の状況を定期的に可視化するのも一つの手です。配属後のフォロー目的であれば、高い頻度で新入社員の心境変化を確認できるパルスサーベイは効果的です。ここで、当社のパルスサーベイGrowth(グロース)を活用し、新入社員の孤立と離職防止に繋がったA社様の事例をご紹介します。

【A社について】
・業界・新入社員の職種:IT系・SE職
・新入社員の配属:4月の1か月間の研修期間を経て5月に配属
・導入サービス:4月導入研修、7月・10月のフォロー研修

※Growthは、9つの選択形式とフリーテキストの計10の設問から構成されています。月1回回答し、数値レポートを基に、若手・新入社員へのフォローを検討するツールです。詳しくは【Growth】をご覧下さい。(下記はGrowthレポートイメージの画像) “Growthレポート

Growthによって可視化された、新入社員の孤立状態

A社の新入社員には、入社以降毎月、Growthに回答してもらっていました。下記、とある新入社員の6月のGrowthのフリーテキストです。配属後1か月経ち、周囲に相談しにくい状況で、精神的にも不安や孤立感を抱えている様子が伺えました。(フリーテキストの内容は一部加工)

【6月のフリーテキスト】
できなくて当たり前だとわかっているのに、できない自分に嫌気がさします。先輩方にも質問しづらい環境で、話を聴いてもらえる同期もいません。辛いと思う機会が増え、自分が気付かないうちにストレスを溜め込んでしまいました。これからは自分のストレスケアをしつつ、業務を進めていきたいと思いました。

Growthの結果を紐解き、新入社員へのフォローを検討

6月のコメントを受けて、配属後の新入社員の状況を推測し、次の3つのフォローを実施することになりました。

1)現場管理職にGrowth結果を共有し、新入社員・トレーナーぞれぞれと1on1を実施
2)7月開催のフォロー研修で、Growth結果を用いたワークを実施。新入社員同士で、悩みや不安等を共有しガス抜きを行う。合わせて配属後、各々が工夫していること等も共有し合う
3)人事担当から新入社員へ個別面談を実施。新入社員の話を聴きつつ、「トレーナーにしか相談できないわけではない。斜め上の先輩や上司にも相談し、仕事を進めていってほしい」と伝える

【重要】サーベイを用いて新入社員の状態を把握する際の注意点
サーベイ数値だけで「高い数値だから大丈夫」「低いからあの配属先は問題あり」と良し悪しをすぐに判断してはいけません。なぜなら、その数値を付けた背景・理由まで把握していかなければ、適切なフォローはできないからです。サーベイを導入する際は、

・レポートで状態を可視化する(インプット)
・レポートの数値結果の背景を自分たちで解釈・意味付けする(スループット)
・未来に向けて自分たちで決めたアクションを実践する(アウトプット)

という下記サイクルを繰り返し行っていくことが非常に重要です。

“Growthレポート

フォロー実施後の新入社員の心境や配属先の状況の変化

前述のフォローを実施後の7月のサーベイでは、以下のコメントがありました。

【7月のフリーテキスト】
自分だけで頑張りすぎないように心掛けたいと思いました。トレーナーと呼ばれる先輩はいますが、それ以外にも先輩や上司の方がいることを意識し、ひろい視野で対処することに気付きました。

上記サーベイ結果を見て、人事担当者から新入社員へ直接コミュニケーションを取ったところ、トレーナーにも相談しやすくなり、ITの資格取得に向けて猛勉強中とのお話があったとのことでした。

2)新入社員がアラートをあげやすい環境を構築する

二つ目は、新入社員本人からアラートやヘルプをあげやすい環境をつくることです。
そのためには、新入社員から本音を聴けるような関係性の構築や面談の場を定期的に設けていることが大切です。具体的には、下記の取り組みが効果的です。

詳細
メンター制度 トレーナーとは別に年齢の近い先輩や社歴の近い先輩をメンターとして設置し、新入社員(メンティ)のキャリア形成上の課題や悩み、メンタル面などのサポートを行っていく制度です。
新入社員からすると、相談しやすい兄/姉のような存在です。
1on1ミーティング 1on1ミーティングとは、上司と部下が1週間に1回など定期的に面談を行う制度です。
テーマが限定されているわけではありませんが、業務の課題ではなく、主にキャリアや成長の課題について話す(業務については別の場で話す)場です。
人事担当者との面談 新入社員が現場の人間関係等に悩みがある場合、上司との1on1ミーティングでは聞き出せない可能性があります。入社直後は1週間、配属後は1か月、3か月、6か月といったサイクルでフォロー面談を行うことをおすすめします。人事担当者は、新入社員からのヒアリング内容を確認し、より適切な指導や成長ができる取り組みや対策を講じていきます。

ただ、上記取り組みを導入したとしても、新入社員と良好な関係を創れていなければ、新入社員から相談してはくれないでしょう。

新入社員との関係構築について、当社のとある外部パートナーBさんの取り組み例をお伝えします。その方は、人事として十数年間、新卒採用と人材育成を担当しています。その会社の新入社員は皆、Bさんのことを信頼し、何らかの事情で退職することになっても、Bさんだけには本音の退職理由を打ち明ける関係性ができていました。
Bさんに、新入社員との関係構築でどのような工夫をしているのか尋ねたところ、以下の回答が返ってきました。

相手から本音を聴こうとするのであれば、まずは、自分がそれ以上に相手のことを隅から隅まで理解しようと努力しなければならない。例えば、採用面接でどんなことを話していたのか、どんな人柄で、趣味で、どんな想いで入社したのか、入社後はどんな想いを持っているのか。新入社員一人ひとり、ストーリーで語れるくらいに知ること。そうすれば、自然と本音を話せる関係になる」

Bさんほどのアプローチは難しいかもしれませんが、まずは自分から、新入社員について知ろうと行動することが、関係構築のための一歩かもしれません。

3)新入社員が配属後にぶつかる課題に合わせてフォローアップ研修を行う

三つ目は、新入社員が配属後にぶつかる課題に合わせてフォローアップ研修を実施することです。フォローアップ研修の実施により、下記の効果が期待でき、新入社員の離職防止や早期活躍にも繋がります。

・新たなスキルや知識の習得に繋がる
・同期同士、近況報告や悩み・不安の吐き出しにより、気持ちが楽になる
・同期が頑張っている姿を見て刺激を受けたり、モチベーションになる
・同期の考え方や工夫していること等を知り、自身の課題解決のヒントにもなる
・人事側として、新入社員の状況変化に早期に気付け、別途、面談や現場社員へのヒアリング等の行動を取りやすくなる

フォローアップ研修の内容やスケジュールについて、例えば、当社では、新入社員が配属後にぶつかる課題や悩みとその時期に合わせて研修カリキュラムを組み、公開講座として提供しています。(もちろん、1日~でもご参加可能です)

【新入社員が配属後にぶつかる課題や悩み】

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【新入社員がぶつかる課題や悩み・成長に合わせた1年間の研修スケジュール設計】

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詳しい内容やお見積りは、こちらからお気軽にお問合せくださいませ。

4)配属時の受け入れ体制(オンボーディング)の見直し・整備する

四つ目は、配属時の受け入れ体制(オンボーディング)の見直しや整備をしていくことです。
配属時の受け入れ体制がしっかり整っていれば、新入社員が早く職場に馴染めますし、その後のフォローも行いやすくなります。

特に、コロナ禍以降のオンラインコミュニケーションの急拡大によって、今後入社してくる新入社員は、初対面の方との対面コミュニケーションを極端に恐れる傾向が強まっています。「今までも何となく配属時の受け入れができていたし、これからも大丈夫だろう」という考えでは通用しなくなるかもしれません。
新入社員の傾向や時代背景の変化と共に、今一度、配属時の受け入れ体制や仕組みを見直していただくことを推奨します。

受け入れ体制の見直し・構築は、下記5つのプロセスに沿って行います。  配属時の受け入れ態勢

5つのプロセスのより詳しい内容は、下記コラムをご参考ください。
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント

受け入れ体制を整えることは、配属先のメンバー全員が「新入社員を育成する意識」を醸成するきっかけにもなります。新入社員が自律自走した状態になるには、トレーナーだけでなく配属先のメンバー全員からのはたらきかけが重要です。

4)まとめ

今回は、新入社員の配属後のフォローについてお伝えしてまいりました。本コラムの内容をまとめると以下の通りです。

配属後の新入社員にフォローを実施する目的は「自律自走への支援」である

フォローで解消すべき、配属後に直面する3つのギャップとは

「職場の人間関係」「仕事内容」「自身の能力」

新入社員の自律自走を育む、配属後のフォロー施策の4つのポイント

・新入社員の状況を把握できる環境を構築する
・新入社員がアラートを挙げやすい環境を構築する
・新入社員が配属後にぶつかる課題に合わせてフォローアップ研修を行う
・配属時の受け入れ体制(オンボーディング)の見直し・整備する

配属後も新入社員の状況を定期的に確認し、適切にフォローできるような仕組みを整えていただければと思います。