部下のやる気を引き出す7つの方法とNG行動【事例あり】

更新日:

「最近、部下にやる気が感じられない…」
「部下が言われたことしかしない、指示待ちの姿勢が気になる…」

そんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。

部下のモチベーションが低いと、チーム全体の生産性が下がるだけでなく、上司のフォロー負担も増え、ストレスの要因になりかねません
しかし、その背景には、部下本人だけでなく上司の関わり方や職場環境の在り方が関係している可能性があります。

本記事では、部下のやる気を根本から引き出す「インサイド・アウト」の考え方をベースに、すぐに実践できる7つのアプローチを紹介します。
さらに、やる気を奪ってしまうNG行動や、組織に潜む構造的な問題にも触れながら、具体的な対策をお届け
します。

部下のやる気を高めて、仕事の質と組織全体の成長につなげていきましょう。
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執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1)部下のやる気を引き出すカギは「インサイド・アウト」

部下のやる気を引き出すには、「インサイド・アウト(内側からの動機)」を促すことが不可欠です。
インサイド・アウトとは、簡単に言うと本人の内側から生まれるエネルギーのことです。

インサイド・アウトが育っていないまま、外からの指示や報酬で動かそうとしても、部下は「やらされ感」を抱き、自発的に動こうとはしません。

たとえば、「今の仕事を変えずに続けたい」という部下に対し、「新しい経験を積んで成長しよう」と業務を任せても、インサイド・アウトが育っていなければ“負担が増えた”としか感じません。その結果、期待した成果は得られず、モチベーションも上がらないままです。

逆に、モチベーションの源が内側にある状態では、自ら学び・動こうとするエネルギーが生まれ、継続的な成長と成果の向上につながります。

つまり、部下の主体性を引き出すには、「どうすれば内側からやる気が湧いてくるのか?」を考え、働きかけることが重要です。

次章では、インサイド・アウトを育てるための具体的な7つのアプローチをご紹介します。

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    2)部下のやる気を引き出す、7つのアプローチ

    外からの動機づけではなく、内側から湧き出る意欲を引き出すには、上司や職場の関わり方が重要です。
    この章では、部下が前向きに仕事へ取り組みたくなるような、やる気を引き出す7つのアプローチをご紹介します。

    アプローチ やる気につながる効果
    視座・視野を広げる 利他の視点を持ち、社会や周囲への影響を意識できるようになることで、自分ごととして行動できるようになる
    仕事の意義や目標を見出す 自分のビジョンや目指す姿が明確になり、前向きに取り組むエネルギーが湧いてくる
    職場に心理的安全性をつくる 挑戦や発言に安心感があり、「やってみよう」と思える土壌ができる
    良い関係性を築く 信頼関係の中で「話していい」「頼っていい」と感じられ、自信を持って行動できるようになる
    こまめにフィードバックを行う 見守られている安心感と承認される喜びが、行動へのモチベーションにつながる
    成長実感・成長予感を得る 過去の達成を振り返り、未来の自分に期待できることで、自発的な成長意欲が高まる
    公平な評価を受ける 頑張りが報われると感じられ、「もっと成長したい」と思える原動力になる

    視座・視野を広げる

    インサイド・アウトを促すためには、視座・視野を広げる機会を意識的に設けることが重要です。
    視野が狭いままだと、他者や社会に与える影響を考える視点が持てず、行動が自己中心的になりやすいためです。

    自分のことばかりに目が向いていると、「社会のために」「クライアントに喜んでもらうために」といった利他的な発想が生まれにくくなります。
    その結果、「できるだけ楽をしたい」「最低限の仕事だけで済ませよう」という意識が強まり、主体的な行動が減ってしまいます。

    一方で、視野が広がると、自分という枠を超えて、職場や社会全体への影響まで意識できるようになります。
    これは「自利」だけでなく「利他」の視点を持つことにつながり、自分の言動が周囲に与える影響を考えた行動ができるようになります。

    【自利利他の図】

    視座・視野を広げるためには、「物事の捉え方を見直すこと」や「他人のせいにせず、自分にできることがなかったかを振り返ること」が大切です。
    そのためには、こうした視点を意識的に考える機会をつくることが必要です。

    物事の捉え方を見直す方法として、例えば、アーティエンスの関係性構築力研修では、自分の上司やクライアントなどの立場になって考えるワークを行います。同じ出来事であっても、見る人の立場によって感じ方や見え方が異なることに気づくことで、視野が広がります。

    また、「自分にできることがあるとしたら何か?」という問いを持つだけで、他責ではなく自責の視点で物事を捉えられるようになり、行動の幅も広がっていきます。

    このように視座・視野を広げることで、自利だけでなく利他の視点を持てるようになり、自分の言動が社会に与える影響まで意識できるようになります。結果として、インサイド・アウトが促され、主体的な行動が生まれるようになります。

    仕事の意義や目標を見出せている

    インサイド・アウトを促すためには、仕事の意義や目標を見出せていることが必要です。目指すところがあると主体的に行動するようになるためです。

    仕事に意義や目標が感じられないと、「給与がもらえればそれでいい」といった状態に陥りやすくなります。その結果、新しいことへの挑戦を避け、今の業務を“こなすだけ”の働き方になってしまいます。
    実際、現代の多くの社員は、仕事に対する高いコミットメントを持てていないのが現状です。

    仕事の中に意義や目標を見出すためには、「自社における自分のビジョン」を明確にすることが重要です。

    アーティエンスのフォロー研修では、自分の価値観を仲間と一緒に掘り下げながら、「今の自分が思い描く素晴らしい未来」を探るワークを行います。

    たとえば、2年目社員に対しては「素晴らしい2年目社員とは?」「そうでない2年目社員とは?」といった問いを立て、それぞれを自由に書き出してもらうワークを実施します。

    【例】

    このプロセスを通じて、それまで言語化していなかった“理想の自分像”が見えてきます。
    それが、自分らしく働くための軸となり、目指すべき方向性が明確になります。

    仕事の中に意味を見いだせると、「目指す姿に近づくために、今の自分に足りないことを伸ばそう」といった前向きな行動が生まれるようになります。
    これこそが、インサイド・アウトを促し、主体性を高める原動力になるのです。

    職場に心理的安全性がある

    インサイド・アウトを促すためには、職場に心理的安全性があることが必要です。心理的安全性とは、「メンバー同士が自然体で、恐れることなく意見を伝えあい、よりよくするための意識行動ができる状態」です。
    心理的安全性があることで、失敗を過度に恐れずにチャレンジできるようになります。

    心理的安全性が欠けた職場では、次のような問題が起きやすくなります。

    ・チームのために発言したのに、無視されたり否定されて終わる
    ・よかれと思って提案したのに、自分ひとりが対応を押しつけられて“言った者負け”になる
    ・現場の声が経営や管理職に届かなくなり、トラブルも隠されがちになる

    こうした環境では、社員は消極的になり、主体的に働こうという気持ちを失ってしまいます。

    心理的安全性のある職場をつくるために重要なのが、「上司が心理的柔軟性を持っていること」です。心理的柔軟性とは、「自身の大切な価値基準に基づいて、今できることに対して、最大限の注意を払い、行動を取ること」です。
    心理的柔軟性があると、自身・チームにとっての成果や貢献・成長を考えて行動できるようになります。また、チーム全体ではなく目の前の部下1人に丁寧に向き合う意識が育ち、行動が起こしやすくなります。

    心理的安全性と心理的柔軟性の違いをまとめると下記の表のようになります。

    定義 概念
    心理的
    安全性
    メンバー同士が自然体で、恐れることなく意見を伝えあい、より良くするための意識行動ができる状態 チームの状態を表すもの
    心理的
    柔軟性
    自身の大切な価値基準に基づいて、今できることに対して最大限の注意を払い、行動を取ること 個人の能力を表すもの

    心理的柔軟性を育てる第一歩は、自分が大切にしている価値観に気づくことです。
    その価値観が、仕事や対人関係にどのような良い・悪い影響を与えているかを見つめ直しましょう。

    ▶心理的柔軟性を高めるためのリフレクションシートはこちらから無料ダウンロード可能です。

    自分が大切にしている価値基準に基づいて部下への関わり方を見直し、心理的安全性のある場を自らの行動でつくることが大切です。

    このように上司が心理的柔軟性を発揮し、チームに心理的安全性を育めると、部下は「意見を言っていい」「挑戦しても大丈夫」という安心感を持ち、前向きな行動や提案が自然と生まれるようになります

    【関連記事】【事例あり】心理的安全性研修で学びと挑戦を実現!必要な流れを徹底解説

    良い関係性を築く

    インサイド・アウトを促すためには、上司やメンバーと良い関係性を築くことが必要です。良い関係性だと「成功循環モデル」がポジティブに回りやすくなるためです。

    成功循環モデルとは、組織が成功に向かうための4つのサイクルのことです。MIT組織学習センター共同創始者ダニエル・キム氏によって提唱されました。

    成功には「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」の4つの要素が必要で、それらは互いに影響しあっています。このサイクルがうまく循環しているときは組織としての成長期にあたり、反対にサイクルが滞っている場合は変革が必要な時です。
    上司と部下の関係性がよくないと「本当は言いたいことがあるけれど、言えない」「どうせ言っても無駄だ」と思ってしまう、といった状態になり、部下の意欲が失われていきます。

    上司と部下の間に信頼関係を築くためには、相互理解のためのコミュニケーションが欠かせません

    アーティエンスの意思発信力向上研修では、チームの成果を最大化するために必要なコミュニケーションスキルと思考法を習得するプログラムを実施しています。

    自身が大切にしている価値観などの自己理解を深めた上で、自身の価値観は時にポジティブ、時にネガティブに周囲へ影響を及ぼす可能性があると学びます。そして意見が異なっていた時の乗り越え方や、周囲と意思疎通を深めるための伝え方を身につけます。

    このように日頃から上司と部下の間で深いコミュニケーションが取られていると、信頼関係が生まれます。
    そして、部下が「ここなら自分の意見を言っても大丈夫」と思えるようになれば、以前よりも伸び伸びと仕事に取り組む姿が見えてくるはずです。

    こまめにフィードバックを行う

    インサイド・アウトを促すためには、部下がこまめにフィードバックを受けることが必要です。日常的に上司からの関心を感じられることで、部下のやる気が自然と引き出されるためです。

    気にかけてくれることがわかると、それだけでやる気が湧いてくる方もいます。一方、フィードバックが少ないと「放置されている」「気にされていない」と感じてモチベーションが下がってしまいます。部下に対して部下の成長を見守っているということを伝えるためにも、フィードバックは大切です。

    「フィードバック=指摘や改善点」と思われがちですが、ポジティブフィードバックも意識して取り入れることが大切です。
    褒められると、人はもっと頑張ろうという気持ちになります。
    たとえ些細なことでも、上司が嬉しかったことや感謝したことは、立派なフィードバックになります。

    たとえば
    「前回お願いした修正がとても分かりやすくなっていたね」
    「資料を先回りして用意してくれて助かったよ」
    こうした日々の気づきを伝えるだけでも、部下は前向きな気持ちになれます。

    このようにポジティブなものも含め、こまめなフィードバックを続けることで、「自分を見てくれている人がいる」と感じられ、仕事への意欲や主体性が高まっていきます

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    成長実感・成長予感を得る

    インサイド・アウトを促すためには、成長実感・成長予感を得ることが必要です。これにより、達成感と自信が高まり、仕事への前向きな姿勢が育まれます

    ある程度仕事に慣れてくると、自分なりの進め方やフォーマットが定着し、毎日が「同じことの繰り返し」のように感じられることがあります。

    そうなると、成長の実感が持てず、「このままでいいのかな…」と将来に不安を感じて、モチベーションが低下してしまうこともあります。

    部下が積極的に成長を望んでいる場合は、挑戦的なプロジェクトや新しい任務を提供することが効果的です。ただし、次のようなサポートが欠かせません。

    仕事を任せるだけでなく、適切なサポートを用意すること
     → 困難に直面した際の支援がないと、挑戦がストレスに変わることも。

    業務量を調整すること
     → 新しい仕事を増やす場合、既存の業務の一部は上司や他のメンバーが引き取るなど、全体の負荷を見直す必要があります。

    他にも、これまでの仕事を振り返る機会をつくることも、成長実感を得る方法のひとつです。

    アーティエンスのフォロー研修では、これまで取り組んできた業務を棚卸しし、「自分がどのように成長してきたか」を可視化するワークを行います。

    成長を言語化できると、「ここまでやってこれた」という達成感とともに、「これからもっと成長できそう」という予感が芽生えます。

    このように、挑戦の機会を与える、新しい役割を任せる、これまでの成長を振り返る、などの関わりを通じて、部下は仕事に対するやりがいや達成感を持てるようになります

    公平な評価を受ける

    インサイド・アウトを促すためには、公平な評価を受けている必要があります。自分の頑張りが評価に影響すると頑張るモチベーションが生まれるためです。

    いくらチームや会社のためを思って行動しても、それが評価に反映されなければ、「頑張っても無駄だ」と感じてしまいます。
    評価の不透明さや偏りは、社員の意欲を著しく低下させる要因になります。

    部下が「公平に評価されている」と感じるためには、評価の基準を明確にし、オープンにすることが大切です。

    評価が明確であれば、自分の努力や成果がどう反映されるかが理解でき、頑張りが報われると感じられるようになります。

    評価基準をつくる際は、SMARTの法則に沿って整理すると、より明確になります。
    なお、評価がオープンになることで、自分のキャリアパスや今後の成長機会も見通しやすくなり、「これから先、どう成長していけそうか」というポジティブな予感も持ちやすくなります。

    評価が明確でオープンであることで、「頑張れば評価される」という実感が生まれ、評価を高めたいという前向きな動機から、主体的な行動が促されます

    部下のやる気を引き出すポイントはインサイド・アウトを促すことで、インサイド・アウトを促すためには次のような具体的な方法があることをお伝えしました。
    ・視座・視野を広げる
    ・仕事の意義や目標を見出せている
    ・職場に心理的安全性がある
    ・良い関係性を築く
    ・こまめにフィードバックを受ける
    ・成長実感・成長予感を得る
    ・公平に評価される

    3)部下のやる気を下げてしまう上司の言動6つ

    第1章で紹介した「部下のやる気を引き出すポイント」も、上司の言動次第で台無しになってしまうことがあります。

    ここでは、上司が部下にやってしまいがちな6つの言動を紹介します。
    ぜひ一度、自分の行動を客観的に振り返ってみてください。当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。

    【部下のやる気を下げてしまう上司の言動 チェックリスト】 

    チェック項目 チェック欄
    自分の意見や価値観を押しつけている
    部下のありたい姿を確認していない
    信頼される言動ができていない
    部下を手下のように扱っている
    適切な仕事を任せていない
    ネガティブフィードバックしかしていない

    自分の意見や価値観を押しつける

    上司が自分の価値観ややり方を一方的に押しつけると、部下のやる気は下がります。
    価値観や考え方は人それぞれ異なるため、自分のやり方を否定されたと感じると、主体性やモチベーションが失われてしまいます

    例えば、上司が「クライアントとの打ち合わせ後は1時間以内にお礼メールを送ってね」と伝えたとします。上司にとっては丁寧な対応のつもりでも、部下は「参考資料も添えて、より価値のあるメールを送りたい」と考えているかもしれません。
    このとき、上司がその考えを受け入れず「1時間以内に送るべき」と押しつけてしまうと、部下は「自分の意見は無視された」と感じてしまい、やる気が低下します。

    部下のやる気を引き出すためには、「自分の正解を押しつける」のではなく、部下の価値観や意図に耳を傾け、対話を通じて共により良いやり方を探す姿勢が大切です。

    部下のありたい姿を確認しない

    部下の「ありたい姿」や「やりたい仕事」を確認しないままでいると、部下のやる気を下げてしまう可能性があります。
    部下がどのような仕事にやりがいを感じ、どんな姿を目指しているのかを理解していないと、本人が前向きに取り組める仕事を適切なタイミングで任せることができなくなるためです。

    例えば、部下が「いずれは企画の仕事に関わりたい」と思っていたとしても、それを上司が知らなければ、企画に関わるチャンスが来たときに別のメンバーに任せてしまうかもしれません。すると部下は、「自分には期待されていないのかもしれない」「チャンスがもらえない」と感じて、やる気を失ってしまう可能性があります。

    部下のやる気を引き出すためには、普段から対話を通じて「どんな姿を目指しているか」「どんな仕事に興味があるか」を理解しておき、その希望に沿った仕事を任せる工夫が重要です。

    部下から信頼してもらえるような言動をしていない

    上司が部下から信頼してもらえるような言動をしていないと、部下のやる気は下がります。
    信頼できないと感じる相手に対して、「一緒に働きたい」「期待に応えたい」と思う気持ちが持てなくなるためです。

    例えば、上司がクライアントの悪口を陰で言っていたり、社員の愚痴ばかり話していたり、人によって態度を変えている様子を見たとします。そういった言動を目にした部下は、「この人についていきたい」とは思えず、やる気が失われていきます。

    部下のやる気を引き出すためには、日々の言動に誠実さと一貫性を持ち、「この人と一緒に頑張りたい」と思ってもらえる存在になることが大切です。上司は想像以上に部下に見られている存在であることを意識しましょう。

    部下を自分の手下のように扱っている

    部下を自分の手下のように扱っていると、部下のやる気は確実に下がります。
    相手を一人の人間として尊重してもらえていないと感じると、不快感や不信感が生まれ、「この人とは一緒に働きたくない」と思われてしまうためです。

    例えば、高圧的な態度や配慮のない言い回しを繰り返していたり、育成のつもりで細かく指示を出していても、部下にとっては「言われた通りに手を動かすだけ」と感じられるケースがあります。そのような状況では、自分で考える機会が失われ、仕事の面白さややりがいも感じにくくなります。

    部下のやる気を引き出すためには、対等な関係を意識し、「一緒に考える」「意見を尊重する」姿勢を持つことが不可欠です。上司が部下を“手足”ではなく、“パートナー”として接することが、信頼とやる気を育てる第一歩になります。

    適切な仕事を任せていない

    部下に適切な仕事を任せていないと、部下のやる気は下がります。
    仕事の量が多すぎたり、苦手な仕事ばかり任されると、負担感が強くなり、自信ややりがいを持って取り組めなくなるためです。

    例えば、細かい確認作業が苦手な部下に対して、その特性を把握せず、顧客リストの数字チェックや管理の業務を任せたとします。
    部下は「自分の苦手なことを振られた」と感じて負担に思い、モチベーションが下がります。さらに、ミスが出やすくなり、上司から指摘されることで、自己肯定感も低下してしまいます。

    一方で、簡単すぎる仕事ばかり任せていると、マンネリを感じてやりがいを失うことにもつながります。

    部下のやる気を引き出すには、上司が自身の負担軽減を目的に仕事を振るのではなく、部下の強みや成長段階に合った「ちょうどいい仕事」を見極めて任せることが重要です。それが、意欲的な仕事への取り組みと成長意欲を支える鍵になります。

    ネガティブフィードバックしかしない

    ネガティブフィードバックしか行わないと、部下のやる気は確実に下がります。
    自分の能力や価値を低く見積もるようになり、「どうせ自分がやってもダメだ」といった自己否定的な思考に陥ってしまうためです。

    例えば、日々のやりとりの中で注意や指摘ばかりが続き、「ありがとう」や「よかったよ」といったポジティブな言葉がまったくない場合、部下は自信を失い、仕事に対する前向きな姿勢も失われていきます。
    特に近年は、ネガティブフィードバックへの耐性が低い社員も増えており、精神的な不調につながるケースも少なくありません。

    部下のやる気と成長を支えるためには、指導すべき点があっても、ポジティブなフィードバックとセットで伝える意識が大切です。「できていること」や「努力が見える部分」にも目を向け、日々の声かけや関わり方を自ら振り返る時間を持ちましょう。部下の自信と前向きさは、上司の言動次第で大きく変わります。

    このような言動は意外に無意識にとってしまいがちです。上司の方は自分を冷静に客観視する時間を作って内省しましょう。

    【事例あり】管理職の悩みは「板挟み」乗り越え方とNG行動を紹介の記事では、具体的な事例もご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。

    4)部下のやる気を下げてしまう組織の特徴3つ

    1章で説明した部下のやる気を引き出すポイントを組織が妨害している場合があります。
    ここでは、部下のやる気を阻む組織の特徴を3つご紹介します。
    もし当てはまると感じたら、上司としてできる対応を行うと同時に、人事や経営層にも改善を促しましょう。

    組織が掲げている理念を全うしようとしていない

    組織が掲げている理念を全うしようとしていないことがわかると、部下のやる気は下がります。組織への貢献意欲が弱くなるためです。

    社員は企業理念やビジョンに共感して入社を決めています。しかし実際に中に入ってみると、それらを実現しようという意識が弱いと組織に裏切られたような感覚になるでしょう。

    組織が掲げている理念と実情が伴っていない場合は、上司としてそのことを上に伝え、組織としてどのように対策するかを考えてもらう必要があります

    組織が公平に評価していない

    組織が公平に評価していないと、部下のやる気は下がります。頑張っても意味ないと思うためです。

    例えば、仕事の成果や関係性などで評価するのではなく、個人的な好みや個々の利害関係で評価を変え、給与や昇進などを決めていることを知ると、頑張っても意味ないと思い、やる気がなくなります。

    ただし、部下は組織全体の評価基準を正確に理解していない場合もあります。
    部下の不満を聞いた際は、まず理由を丁寧に確認し、必要に応じて上司自身が評価制度について人事に確認することが大切です。

    もし評価が公平に行われていない場合は、組織として早急に改善すべき問題です

    組織の目標を共有していない

    組織として何を目指しているのか、なぜそれを目指すのかが共有されていないと、部下は仕事に目的を感じられず、やる気を失います。
    「どこに向かっているのかわからない」「自分の仕事が何につながっているのかわからない」状態では、行動に意味を見出せず、受け身の働き方になってしまいます

    やる気は、“目指すべき方向”があるからこそ生まれます。
    だからこそ、組織のビジョンや今期の目標、部署ごとの成果目標は、部下が理解できる言葉で丁寧に共有することが重要です。

    もし組織からの情報共有が不十分な場合は、上司が確認して代わりに伝えることも効果的です。
    ただし、理想は組織全体で「目指す姿」を共有し、全員が同じ方向を向いて進める状態をつくることです。

    組織にこれらのような特徴がある場合、部下のやる気は根本から奪われてしまいます。まずは、上司としてできる範囲で部下をサポートしながら、必要に応じて組織全体の改善にも働きかけていく視点を持ちましょう。

    5)部下のやる気を引き出した事例

    アーティエンスで支援した、社員数300名程度の美容器具メーカーの新入社員のケースをご紹介します。
    当初はやる気が見られず、「言われたことしかしない」状態だった社員が、約9ヶ月で主体的に行動できるように成長しました。

    【課題】やる気や向上心が見られない新入社員

    入社当初の新入社員は、指示されたことはきちんとこなすものの、自ら学ぼうとしたり、積極的に動いたりする姿勢は見られず、人事の方もその様子を心配されていました。

    例えば、ある日、営業同行が予定より早く終わり、先輩社員が「せっかくだから、自社商品が置かれている店舗を見に行ってみたら?」と提案したところ、新入社員は「別に大丈夫です」と答え、そのまま帰宅してしまいました。

    こうした言動から、周囲には新入社員が「やる気がない」「言われたことしかしない社員」という印象を持たれていたのです。

    【実施内容】やる気を引き出す仕組みと関係構築を支援

    この新入社員に対しては、アーティエンスが提供する一連の公開講座を4月から翌年3月まで段階的に受講していただきました。

    アーティエンスで行った支援内容

    人事・現場での取り組み

    • 現場でも、上司やトレーナーが連携し、新入社員に対して積極的に声をかけたり、こまめに状況を確認してフォローしたりと、日々の関係構築にも力を入れました。

      たとえば、ランチに誘ってリラックスした場で話をしたり、小さな変化にも気づけるよう関わり方の頻度を意識的に増やすなど、寄り添いながら育成する姿勢が徹底されていました。

    【効果】信頼関係と貢献意識の芽生えによる主体的な行動

    継続的な支援によって、新入社員の中に「組織から支えられている」という実感が芽生え、自然と感謝の気持ちが生まれました。
    それと同時に、「自分も何か貢献したい」という意識が高まり、上司との間にも少しずつ信頼関係が築かれていきました。

    こうした信頼と安心感が育まれたことで、周囲のアドバイスにも素直に耳を傾けられるようになり、「上司や会社のために、自分も頑張りたい」という前向きな気持ちが湧いてきたのです。

    入社から9ヶ月が経つ頃には、営業としてチームに貢献するために、自らSNSマーケティングについて学んだり、報連相の頻度を高めたりするなど、行動にも明確な変化が見られました。

    もはや「言われたことだけをやる社員」ではなく、「周囲や会社のために何ができるか」を考えて動く、頼もしい存在へと変化していたのです。


    やる気がない、言われたことしかしないと感じられる社員であっても、適切な働きかけと関係性づくりによって、必ず変化を生み出すことができます。

    重要なのは、やる気を妨げている要因を見極め、それに合った施策を丁寧に行うことです。
    上司・人事・組織が一体となって関わることで、社員は自らの意志で動き出すようになります。

    6)まとめ|アーティエンスでは、社員のやる気を引き出すための研修を提供しています

    本コラムでは、部下のやる気を引き出すために必要なことをお伝えしました。

    部下のやる気を引き出すポイントはインサイド・アウト、つまり内側から湧き出る意欲を促すことです。

    具体的には以下の方法があります。

    ・視座・視野を広げる
    ・仕事の意義や目標を見出せている
    ・職場に心理的安全性がある
    ・良い関係性を築く
    ・こまめにフィードバックを受ける
    ・成長実感・成長予感を得る
    ・公平に評価される

    しかし、こうした取り組みも、上司や組織の言動がやる気を妨げていると、効果が半減してしまいます。今回紹介した中で当てはまるものがないか、まずはご自身・自組織を客観的に振り返ってみましょう。
    やる気を妨げる要因を見直すことが、やる気を引き出す第一歩です。

    なおアーティエンスでは、企業の状況に応じて、社員のやる気にアプローチできる効果的な研修プランをご提案します

    例えば・・・
    育成担当者・OJTトレーナー研修
    心理的安全性向上研修
    管理職のための目標設定・管理研修 などがあります。

    部下のやる気が出ない背景は、組織によって異なります。
    だからこそ、「なぜやる気が出ないのか?」を丁寧にひもとき、解消していくことが重要です。
    まずはお気軽にご相談ください。

    部下のやる気を高めて、仕事の質と組織全体の成長につなげていきましょう。

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