コラム

管理職の悩みを解消していくために、必要なたった一つのこと~管理職の成長につなげる~

スマホを見ているスーツ姿の会社員

2022/11/18作成ー

管理職の悩みには、下記のようなデータが出ています。

 ビズヒッツ社 : 中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
(出典) ビズヒッツ社 : 中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】

また、下記のようなデータもあります。

リクルートマネジメントソリューションズ社:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」(出典) リクルートマネジメントソリューションズ社:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」

データの違いや、共通して見える部分もあり、興味深さや面白さもありますが、結局「管理職の悩みとは何だ?」と思った方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、長年、人材開発・組織開発に携わり、管理職の多くの声を聴いた上で、管理職の悩みを解消していくために必要なたった一つのことをお伝えしていきたいと思います。本コラムを最後まで読んでいただくと、「管理職の悩みを解消していくためには?」だけではなく、「管理職の悩みをどのように扱っていけばいいか」が分かります。

1)管理職が抱えている悩みとは

管理職が抱えている悩みとは、「矛盾や対立関係」です。
管理職の悩みについては、さまざまな調査がされていますが、アンケートのデータ結果を抽象化していくと、すべて「矛盾や対立関係」になるからです。

例えば、ビズヒッツ社が調査した結果で、最もポイントの高いスコアをつけている「板挟み」ですが、まさに「経営陣・上層部」と「現場」の対立関係になります。

 ビズヒッツ社 : 中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】
(出典) ビズヒッツ社 : 中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法【男女238人アンケート調査】

次に、ビズヒッツ社で二番目に多く、リクルートマネジメントソリューションズ社では最も多い「部下育成」ですが、これにも対立関係が含まれます。多いケースとしては、「自分自身と部下の価値観」でしょう。

リクルートマネジメントソリューションズ社:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」(出典) リクルートマネジメントソリューションズ社:「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」

管理職が抱えている悩みとは、「矛盾や対立関係」になります。「矛盾や対立関係」は、しっかりと向き合い、乗り越えていくと、悩みは悩みでなくなり、成長できる機会になっていきます。そのため、管理職が抱えている悩みとは、「矛盾や対立関係」のみになります。

2)管理職が抱えている悩みにどう対処すればいいか

管理職が抱えている悩みの対処方法とは、「矛盾や対立関係」を明確にして、その「矛盾や対立関係」を統合していくことが必要です。
「矛盾や対立関係」を明確にする必要性は、悩んでいる管理職はそこに気付かずに苦しむケースが多いためです。そして、「矛盾や対立関係」を根本的に解決するために、統合することが必要になります。

まずはじめに、管理職がよく抱えている「矛盾や対立関係」を、いくつか例として挙げていきたいと思います。

・経営者の戦略・方針(全体最適)と、現場の状況(部分最適)
・短期成果(売上など)と、中長期成長(メンバーやチームの成長など)
・厳格なルールの仕組み化(マネジメント)と、枠組みを壊す挑戦(リーダーシップ)
・残業の削減と、成果創出
・(部下育成時)部下の価値観と、自身の価値観

このように明確にし、あとはこれらの内容を統合していくことが必要です。

例えば、経営者の戦略・方針と、現場の状況がかけ離れていたとします。この時によくあるのが、「経営者の戦略・方針を、ただ部下に落として、不平不満が出る」や、「経営者の戦略・方針に対して、ただ現場の状況を伝えて、厄介な管理職というレッテルを張られる」などです。
この状況を乗り越えていくために、経営者の戦略・方針を踏まえながら、現場で実行するための解決策を、部下や経営者と共に考えていくことになります。

このように管理職が抱えている悩みの対処方法とは、「矛盾や対立関係」を明確にして、その「矛盾や対立関係」を統合していくことのみになります。もちろん簡単ではありませんし、大変なことです。きれいごとに聞こえると思います。より具体例を出して、次の章でイメージを持っていただければと思います。

3)管理職が抱えている悩みへの対処方法の事例

この章では、当社のお客様で起きていた具体的な事例を挙げていきますので、本内容を参考にしていただければと思います。

管理職の方は自身の状況と近いものを参考にし、現場の状況にあわせて実践していただき、人事・経営者の方は管理職へのアドバイスの材料にしていただければと思います。

・会社の肝いりのプロジェクトと、現場のリソース不足の対立関係(経営者と現場の板挟み)
・仕事への責任感がない部下と、責任感を持ってほしい上司(価値観の違い)
・新商品の開発と、営業部からのリクエスト(プロダクトアウトとマーケットイン)

・会社の肝いりのプロジェクトと、現場のリソース不足の対立関係(経営者と現場の板挟み)

中小メーカー(200名規模)の管理職Aさんが、経営者と現場の板挟みを乗り越えていった事例です。

「会社の未来を創るためのプロジェクト」として、会社の肝いりで開始されました。新規事業開発を専門に扱っているコンサルティング会社を入れての実施でした。

経営者は、コンサルティング会社を入れて、コンサルティング会社の言われるがまま、成長ストーリーを描きました。本プロジェクトでは、50を超える施策を5年間で行う内容でした。本プロジェクトの実質責任者になっていた管理職(部長職)のAさんは、現場から不平不満を多く聞きます。思ったようにプロジェクトは進みません。進捗の報告すら挙がってきません。

経営者からは、進捗が遅いことを突っ込まれます。コンサルティング会社は、企画が終わった段階で契約終了になっており、相談もできません。Aさんは、途方にくれています。この状況を見かねたコーポレートの責任者である取締役が、当社の1on1サービスを利用します。Aさんは、1on1を通して、会社の肝いりのプロジェクトと、現場のリソース不足の対立関係を、理解し言語化します。そして解決方法を、コンサルタントの力を借りながら、自分自身で見つけていきます。

「会社の未来を創る」ためとは何かに立ち戻り、その上で本当に必要なプロジェクトを、10までに絞ります。再度スケジュールを引き直し、経営者とプロジェクトに関わる現場のメンバーと、対話を行います。最終的に、15のプロジェクトの実施になり、残りの35のプロジェクトは15が終わった後に再度考えるということになりました。

ここで重要なのは、「リソースが足りないから、プロジェクトを10にしてくれ」や「プロジェクトを15に減らしたから、ちゃんとやれ」ではなく、「会社の未来を創る」ために何が必要かということを、経営者とも現場とも誠実に対話をしていったことです。

「会社の未来を創る」という上位概念を再定義し、皆で対話をすることで、会社の肝いりのプロジェクトと、現場のリソース不足の対立関係を解消していきました。

・仕事への責任感がない部下と、責任感を持ってほしい上司(価値観の違い)

IT大手企業(5,000名規模)の管理職Bさんが、部下との価値観の違いを乗り越えていった事例です。

管理職Bさんは、昇進後、新しいチームを任せられることになります。その時に、部下のCさんの育成に悩みます。このCさんは、「言われた仕事しかしない。仕事を可能な限りしたくない。だから、仕事を誠実に行わず、責任感がない」という考えでした。もちろん仕事をしないので、成長しませんし、パフォーマンスもとても低かったです。

管理職のBさんが行ったことは、下記でした。

・優しく丁寧に教える
・厳しく教える
・役割やアウトプットを明確にして任せる

ただし、Cさんは全く変わらず、成果が出ません。この悩みを抱えた状態で、当社の部下育成研修を受講されます。
すべてのワークが終わり、最後の現場につなげる対話の際に、「今日学んだことを、すべて行っても、Cさんが変わる気はしない」という本音が出てきました。対話を深めていく中で、Bさんは、「部下育成のやり方に拘り、Cさんを変えることに必死だった。まず私が変わらないといけない。Cさんともう一度しっかり話す」ということで研修は終わりました。

そして、2カ月後のフォローセッションで、現場に戻っての成果を伝えてくれました。「前回の研修の後に、Cさんと話をしました。『言われた仕事しかしない。仕事を可能な限りしたくない』というのは、私の決めつけでした。彼は、失敗して怒られることや恥をかくことを避けていただけでした。そこで、『失敗をしても責めないし、都度相談をしてください。私からも声をかけますね』と話したことにより、仕事に対して前向きになり、見違えるように成長しています」

「失敗をしても責めないから、仕事にコミットする」という考え方で、部下のCさんは責任感を持って、仕事を前向きに行い、上司のBさんもCさんが責任感を持って仕事ができるように支援をするという状況が生まれました。

・新商品の開発と、営業部からのリクエスト(プロダクトアウトとマーケットイン)

中小メーカー(300名規模)の管理職同士の対立関係を乗り越えていった事例です。

本お客様は、開発部と営業部の対立関係が強い会社でした。ただし、お互いに表立った衝突はしません。開発部の管理職のスタンスは「営業部は、つべこべ言わずに売ってこい」と考え、営業部の管理職のスタンスは「営業が売ってるんだから、開発部は黙って言うこと聞けよ」という考えでした。

それは、部下同士にも波及し、お互い無言の抵抗が続いておりました。大企業にも劣らない強いブランド力が商品にあり、何とかなってしまうということもありました。若手社員は、そのような状況を見て、「こんなビジネスマンにはなりたくない」と考えて辞めてしまうことが起きていました。

人事部の組織変革の責任者であるDさんは、管理職研修を実施しましたが上手くいかず、管理職は研修にアレルギーが出ていました。当社にご相談があり、若手社員を巻き込んだ部門間の壁を無くしていく方法を共に考えました。こちらの会社は、入社してから2~3年は営業を行い、その後各部署に配属するという方法を取っていました。そこで、この配属のタイミングを一つの変革を進める機会としました。

まず始めに、1年目フォローアップ研修(1回)と2年目フォローアップ研修(2回)、若手社員フォローアップ研修(2回)で、必ず上司へのインタビューを行うようにします。ここで、管理職と若手社員の関係の質を高めながら、管理職の想いや考えを若手社員が理解する機会を設けます。

その後、営業部から他部署への異動になる際に、開発部など別部署の管理職への申し送り書を、若手社員と営業部の管理職が作ります。主に、新入社員の強みや、これからの成長に向けてのアドバイスなのですが、どのような想いで、新入社員を育てていたかも記載します。開発部など他部署に異動した若手社員は、その申し送り書をもとに、今後の自身のキャリア開発を新しい上司(管理職)に相談をします。

若手社員のキャリア開発をきっかけに、部門間の壁が低くなっていきます。人事と若手社員の雑談で、「開発部の○○課長、『▲▲さん(営業部の課長)、ちゃんといろいろ考えているんだな』ってぼそっと話していました。開発部もちゃんとしないとなって。なんか嬉しかったです。」と話していたそうです。

その後、無言の抵抗による対立は無くなり、下記のような衝突が生まれているそうです。
営業部の管理職は「もっと顧客のことを考えろ!」、開発部の管理力は「マーケット全体のことを考えろ!」などです。

営業と開発(製造・工場)の対立関係は無くなりません。ただし、健全な衝突にしていく必要があります。「もっと顧客のことを考えろ!」と「マーケット全体のことを考えろ!」の対立は、より良いものを提供していくことを考えています。「営業部は、つべこべ言わずに売ってこい」と「営業が売ってるんだから、開発部は黙って言うこと聞けよ」は、自部署のことしか考えていません。

顧客と全社最適(自組織の未来と今)のために、何ができるかを考え、健全な対立を起こすようになっています。この状況は、組織を成長させる対立と考えてよいでしょう。
これらの事例を通して、対立関係や衝突を明確にして、対処していく必要があります。

4)管理職の悩みへの対処方法でやってはいけないこと

管理職の悩みへの対処方法でやってはいけないことが、4点あります。

① その場しのぎの対応
② 共通の敵を作ること
③ 受け流すこと
④ ダメ出しをすること

それぞれ説明していきます。

① その場しのぎの対応

「その場しのぎの対応」は、対処方法としては行ってはいけません。
根本的な解決になっていないため、また同じことが起きます。

例えば、経営者と現場の板挟みになっている管理職がいて、経営者が現場に降りていったとします。
その場は、現場が終息したとしても、根本的な問題は解決しないばかりか、問題は大きくなる可能性があります。

管理職を飛び越えて、現場が経営者とコミュニケーションを取り始める可能性も出てくることで、レポートラインが崩れて、情報が錯綜し、混乱することも出ます。またメンバーが管理職を軽んじて、より指示命令に対して、素直に受け止めなくなる可能性もあります。

このように「その場しのぎの対応」は、対処方法としては行ってはいけません。

② 共通の敵を作ること

「共通の敵を作ること」は、対処方法としては行ってはいけません。
仮想敵を作ると、部下の目は自身ではなく、他に向くのでマネジメントが楽になります。ただし、これも根本的な解決にはなっていません。それどころか、部分最適の強化や、弱者への攻撃が起こります。

具体的には、経営陣や他部署を仮想敵にするということです。部や課は一致団結しますが、部分最適になります。また自チームの部下の一人を標的にして、敵にし、排除するということです。これは、チーム内にネガティブな環境が作られ、その対象となった方が居なくなったときは、新しい標的を作るということが起きます。チームとしての成長が阻害されていきます。

このように「共通の敵を作ること」は、対処方法としては行ってはいけません。

③ 受け流すこと

「受け流すこと」は、対処方法としては行ってはいけません。
経営者や人事が、管理職の愚痴を聞き、吐き出させて終わりだと、その時の管理職はすっきりしますが、何も解決していませんし、管理職は組織に対して諦めていくでしょう。

よくあるケースは、1on1でただ話を聞いて、「頑張りましょう」で終わりになるケースや、飲みに行って「大変だけど、君ならやれる。乗り越えよう」などです。もちろん、ストレッチをかけたほうがいいと思った場合は、管理職を信じて、敢えて突き放すことも重要です。ただし、管理職が対立関係を明確にできていない場合は、疲弊していくスピードが加速されるので、注意が必要です。

このように「受け流すこと」は、対処方法としては行ってはいけません。

④ ダメ出しをすること

「ダメ出しをすること」は、対処方法としては行ってはいけません。
経営者や上司が、管理職の悩みに対して、一方的にダメ出しをすると、管理職はダウンする可能性があります。一昔前の管理職より、今の管理職の方が役割が多くなり、ストレスが溜まりやすい環境です。そのような状況で、能力不足のようなダメ出しは、管理職を疲弊させていきます。

よくあるケースは、1on1や会議が説教のみになるケースや、飲みに行って「昔はもっと大変だった。君等は甘い」などダメ出しをすることです。これでは、管理職は経営者・上司に率直な意見を言わなくなっていきますし、管理職が疲弊していきます。

このように「ダメ出しをすること」は、対処方法としては行ってはいけません。

管理職の悩みは、管理職自身が成長する機会でもありますが、絶対行ってはいけないこともあるので、注意が必要です。

【参考】 管理職が疲弊していると思った時は、要注意
管理職が疲弊していると思った時は、組織として支援やフォローが必要です。
管理職が1年間休職するとコストが「2,371万円」もかかると言われています。現場も混乱しますし、本人もダメージを受けます。管理職が、「いつもと違う」、「普通ではない」と思った場合は、注意が必要です。

下記コラムなども参考にしていただければと思います。
管理職が潰れる4つの原因&3つの悪影響|潰さないための3つの対処法

5)まとめ

管理職が抱えている悩みとは、「矛盾や対立関係」です。
管理職が抱えている悩みの対処方法とは、「矛盾や対立関係」を明確にして、その「矛盾や対立関係」を統合していくことが必要です。

大変なことも多いですが、この「矛盾や対立関係」を乗り越えていくと、管理職は成長しますし、それは組織への影響も大きくなります。
そして、管理職の悩みへの対処方法でやってはいけないことは、4点あることも説明していきました。

① その場しのぎの対応
② 共通の敵を作ること
③ 受け流すこと
④ ダメ出しをすること

管理職の悩みを解消していくだけではなく、「管理職の悩みをどのように扱っていけばいいか」もお分かりいただけたと思います。管理職の悩みは、管理職自身と組織の成長のチャンスです。悩みをただの悩みとして終わらせるのではなく、成長の機会として捉えていただければと思います。

また、当社にご相談がある場合は、ぜひご連絡ください。
本コラムによって、管理職の悩みが解消され、悩みが成長に繋がり、管理職という立場により人生が豊かになることを願っております。