新入社員研修の5つの目的とは|目的設定のポイントを事例でご紹介

更新日:

作成日:2023.7.14

新入社員育成 面白い


「新入社員研修の目的とは?」
と、改めてシンプルに問われると、悩んでしまう方も意外と多いのではないでしょうか。

新入社員研修は、社会人人生のスタートとして、新たなスキルや知識を習得してステップアップしていくとても貴重な機会です。その目的は明確でなければなりません。
そこで本コラムでは、新入社員研修の5つの目的について解説していきます。あわせて、目的に応じて新入社員研修を企画していく際のポイントや事例をご紹介します。

監修者プロフィール

近藤 ゆみ

アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。



新入社員研修成功事例集

1)新入社員研修の5つの目的

新入社員研修の目的は大きく5つあります。

・企業理念や社風理解のため
・社会人として自覚を持ってもらうため
・仕事を進める上で必要なスキルを身につけてもらうため
・周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させるため
・経験を振り返り、自己成長につなげていくため

順番に説明します。

企業理念や社風理解のため

新入社員研修の目的の1つは、企業理念や社風理解のためです。企業理念や社風は、社員全員が同じものを持っていて欲しい要素です。企業理念や社風の理解ができていないと、組織として同じ方向を向いて仕事を行うことが難しくなるためです。

もし企業理念や社風を理解できていないと、組織のビジョンや目標に対する共感や意識が薄くなることが考えられます。そうすると仕事の目的や重要性について正しく理解できず、新入社員自身は納得できないまま、単なるタスクの実行者として、言われたことをやるだけの人になってしまう可能性があります。

また、共通の価値観や文化を持つことで、組織内でのコミュニケーションや協力関係の構築にも大きく寄与します。

新入社員研修で、組織の核となる企業理念や価値観、社風や文化を新入社員に浸透させることで、組織への適応性と一体感を醸成します。

社会人として自覚を持ってもらうため

社会人として自覚を持ってもらうことも、新入社員研修の目的の1つです。社会人としての自覚を持つことは、仕事を一緒にする人から信頼を獲得するために必要になるためです。仕事への責任感や倫理的な行動が実践できないと、仕事をし続けることは難しいです。

例えば、社会人としての自覚を持っていない新入社員は、時間管理やスケジュール遵守に対して無頓着な態度を示すことが考えられます。また、仕事に対して軽視する態度を持ち、品質や効率性において十分な取り組みを行わない可能性もあります。
そうならないためにも、新入社員は学生から社会人としてのルールや期待に慣れる必要があります。

新入社員研修で、新入社員が社会人としての役割や責任を自覚できるようにすることで、適切な行動を取るための基盤を築けるようにします。

仕事を進める上で必要なスキルを身につけてもらうため

仕事を進める上で必要なスキルを身につけてもらうことも、新入社員研修の目的の1つです。入社時点の新入社員は仕事で求められるスキルが足りていないためです。

仕事を進める上で必要なスキルが身についていないと、例えば、プロジェクトが遅延したり、意思疎通や業務連携に誤解が生じるなど、業務の効率性や品質向上に直結します。
一方で、適切なスキルを持った新入社員は自信を持ち、仕事に積極的に取り組むことができます。その結果、組織全体の成果にも寄与します。

そのためにも新入社員研修で新入社員が業務を遂行する上で必要な知識や技術を習得し、即戦力となる能力を身に付けることが必要です。

周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させるため

新入社員研修の目的として、周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させることもあります。仕事は周囲と協力し合いながらコミュニケーションを通して進めていくものだからです。

例えば、相手を理解し、適切な情報の共有や意見交換を行うことで、円滑なコミュニケーションが実現し、問題解決や意思決定がスムーズに進むことが期待できます。
他にも、共創・協働を意識することで、個々のスキルやアイデアを集結させ、より良い結果を生み出すことができます。また、自己中心的な思考から利他的な思考への切り替えが促され、より良い仕事を行うことも可能になります。

新入社員研修で、協力や協働の意識を持ち、円滑なコミュニケーションを築くことは、個人の成長だけでなく、組織の成功にも重要な要素です。

経験を振り返り、自己成長につなげていくため

経験を振り返り、自己成長につなげていくことも、新入社員研修の目的の1つです。新入社員は初めて経験する仕事に追われ、時間をとって振り返りを行えていないことが多いためです。

振り返りをすることで次のようなことが促されます。
・失敗や課題から気付きを得ることで、改善行動につなげる
・自身の成長や変化を実感することで、自信を醸成する
・自身の強み・可能性、もしくは弱み・課題を認識し、より適切な目標設定やキャリアプランの策定をする

これらは全て自己成長につながります。そのため新入社員研修で振り返る時間を作ることも大切です。

2)【事例】自組織オリジナルの新入社員研修目的

自組織オリジナルの新入社員研修の目的を設定するために、当社がお客様と一緒に考えた、新入社員研修の事例を2つ紹介します。他社がどのように新入社員研修の目的を設定しているのか、みてみましょう。

組織全体の育成コンセプトから新入社員研修の目的を設定

組織全体の育成コンセプトから各階層ごとにコンセプトを落とし込み、そこから新入社員研修の目的を設定しました。

【企業情報】
・業種:老舗食品メーカー
・規模:約200名
・研修形式:公開講座

【新入社員研修の目的設定までの流れ】
1)組織全体の育成コンセプト設定
2)各階層ごとの育成コンセプト設定
3)新入社員研修の目的設定

この企業様は、100年以上続く企業ということもあり、強い年功序列や、コロナ禍であっても受け身の姿勢が強く、正しくやることが正義のため失敗を過度に恐れ、チャレンジして来なかったという背景がありました。

しかし、このままでは時代に置いていかれてしまうという危機感から、変わらないといけないという想いが強くなり、弊社と一緒に対話を行う中で、最終的に「共に変わるために、一歩を踏み出す」という組織全体の育成コンセプトを創りました。

その後、組織全体の育成コンセプトを各階層ごとに設定します。最終的に下記のような階層ごとのコンセプトを作成しました。

新入社員の「『共に変わるために、一歩を踏み出す』に対して、自分ができることを考える」という育成コンセプトから新入社員研修の目的を設定します。
その結果、目的として「自分ができることを考えられるようになるために必要な知識とスキルを身に着ける」という内容を目的をすることが決まりました。

その後、新入社員研修の目的を達成するためにどのような内容が必要かを検討していき、1年間の年間計画表を作成していきました。

このように組織全体の育成コンセプトから新入社員研修の目的に落とし込んでいくことで、組織が同じ方向性を向いて進むことができます。

1年後の新入社員のゴールイメージから逆算して新入社員研修の目的を設定

1年後の新入社員のゴールイメージから逆算して、配属前までの新入社員研修の目的を設定しました。

【企業情報】
・業種:地方銀行
・規模:約2,500名
・研修形式:講師派遣型

【新入社員研修の目的設定までの流れ】
1)1年後の新入社員のゴールイメージ設定
2)半年後のゴールイメージ設定
3)一ヶ月後のゴールイメージ設定
4)配属直後のゴールイメージ設定
5)4月1週目〜4週目までの新入社員研修の目的設定

はじめの打ち合わせで「新⼊社員研修が終わった後、新⼊社員の皆さんにどのような⼈材になって欲しいですか︖」と質問したところ、「他者から任せられる⼈間です」という返答がありました。しかし、⼀カ⽉間の研修のゴールとしては難しいため、そのことをお伝えし、最終的に1年後に「他者から任せられる人間」になるために逆算していきました。その結果、配属直後のゴールとして「積極的に他者に働きかける人」という状態にすることが決まりました。

そして、そのゴールから、新入社員研修の目的に落とし込んだのが下記の内容です。

具体的に設定することで、研修内容や順番の調整も行い、よりゴールイメージを目指せる状態を作ることができました。

<最終的な4月の研修スケジュール>

このようにゴールイメージから考えることで、新入社員研修の目的がより明確になり、ゴールに達成できる状態を作ることができました。

今回ご紹介した2つの事例を通して、自組織オリジナルの新入社員研修の目的を作るまでの流れをイメージしていただけたらと思います。
※お客様と共に作成した大切な内容のため、一部情報を変更して掲載しております。

新入社員研修成功事例集

また「【24年卒】新入社員研修の内容例&効果を決める5つのポイントを解説」の記事では、2024年に入社する新入社員に対して、どのような研修を実施するべきであるかを解説しています。
具体的な研修内容の事例や効果を高めるためのポイントもご紹介しておりますので、研修を成功させるためにもぜひ参考にしてください。

3)自組織の新入社員研修の目的を設定する際に意識したい2つのポイント

自組織のオリジナルの新入社員研修の目的を設定する際に意識したい2つのポイントはこちらです。

・組織の目的と同じ方向性を向けていること
・新入社員が成長をイメージできる内容になっていること

順に説明します。

組織の目的と同じ方向性を向けていること

新入社員研修の目的が組織の目的と同じ方向性を向けていることが重要です。新入社員社員研修の方向性が組織の目的を達成するために必要な人材と重なっている必要があるためです。

例えば、人材紹介サービス会社の組織として、「企業と個人の幸せのマッチングを増やす」という目的があった場合は、この目的を達成するための人材を育成する必要があります。当たり前に思うことかもしれませんが、新入社員研修にしか焦点が当たっておらず、組織全体を俯瞰してみれていないと、組織の目的と新入社員研修の目的にズレがあることもあります。
新入社員研修の目的が新入社員のゴールにつながり、新入社員のゴールが2年目社員のゴールとつながり、最終的に組織の目的と繋がっていく状態になっていく状態を作りましょう。

新入社員が成長をイメージできる内容になっていること

新入社員が成長をイメージできる内容になっていることも重要です。新入社員自身も、そうなりたい!と求める内容だと、新入社員研修に対するモチベーションの向上を期待できるためです。新入社員研修の効果を高めるためには、新入社員自身の主体性が大きなポイントになります。

例えば、「仕事の基礎を身につけて、スムーズに仕事をできるようになる」という目的より「仕事の基礎を身につけて、相手に感謝してもらえる仕事をできるようになる」の方が、新入社員のなりたい!に共感している内容になっています。

新入社員自身が、自分が目指したいところを思えるような内容を設定できるようにしましょう。そうすることで、新入社員が自身の能力や成長の可能性を実感し、研修へのモチベーションを高め、研修の目的を達成することにつながります。

4)【参考】各目的を達成するための研修内容

5つの新入社員研修の目的を達成するために、どのような研修内容を行えばいいのかを目的別にお伝えします。なお、各研修の具体的な実施内容については、新入社員研修で必要な6つの内容と研修効果を高める5つの工夫とは? 中小企業のための若手社員研修│離職を防ぎ、成果を上げる若手を育てるためのヒント のコラムで詳しく説明しています。ぜひご覧ください。

●企業理念や社風理解のため
・経営層からのメッセージ
・先輩の仕事を知る(ストーリーテリング)
・トレーナーとの相互理解
・配属先とのチームビルディング

●社会人の自覚を持ってもらうため
・社会人の自覚研修
・コンプライアンス研修

●仕事を進める上で必要なスキルを身に着けてもらうため
・ビジネスマナー研修
・目標達成・コスト意識研修
・ビジネススキル研修
・要件定義力研修
・ソリューション提案力研修

●周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させるため
・上司との共同体感研修
・巻き込み力研修
・関係性構築力研修

●経験を振り返り、自己成長に繋げていくため
・成長力強化研修
・1年目フォロー研修

新入社員研修成功事例集

5)まとめ

本記事では、新入社員研修の5つの目的と、自組織オリジナルの新入社員研修の目的を作るまでの流れについて2つの事例を紹介しました。
研修の目的を適切に設定し、新入社員研修を実施することで、研修効果が高まり、新入社員の更なる成長と活躍が期待できます。

当社では、今回紹介した目的を達成するための新入社員研修をさまざまなラインナップを取り揃えております。

<各目的を達成するためにお勧めな研修>
■社会人として自覚を持ってもらうため
社会人の自覚研修

■仕事を進める上で必要なスキルを身につけてもらうため

ビジネスマナー研修
ビジネススキル研修
ロジカルシンキング研修
プレゼンテーション研修
問題解決力研修

■周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させるため

上司との協働体感研修
巻き込み力研修
関係性構築力研修

■経験を振り返り、自己成長につなげていくため

新入社員・OJTトレーナー合同研修
成長力強化研修
1年間のフォローアップ研修

新入社員研修の目的を達成できる研修を実施するために、お困りごとや相談したいことがありましたら、お気軽にお問合せください