新入社員のメンタルヘルス|3段階の予防と不調のサインを知って早期に対応を

更新日:

作成日:2023.4.3

ストレス ・最近、特に新入社員がメンタルヘルスが原因で休職することが増えた…
・新入社員のメンタルヘルス、組織としてどのように取り組めばよいのだろう…

といったお悩みをお伺いすることが多くなりました。

メンタルヘルスが不調になる原因は、人によってさまざまであり、複数の要素が重なり合っていることが多いです。原因が一つではないことが多いため、追究が難しいともされています。

また、メンタルヘルス不調によって休職や退職となる方も多く、原因究明のヒントを得るためにお話を聞くことが難しいケースも多いです。そのため、メンタルヘルス不調をいかに未然に予防できるかが重要なポイントとなります。

本コラムでは、メンタルヘルスの不調を防止する方法、早期発見をする方法、そして再発しないためにすべきことをお伝えします。

メンタルヘルスが問題化していない組織の方は、今のうちにメンタルヘルス不調に繋がるリスクのある課題をクリアにし、予防を徹底しましょう。
そして、まさに今、新入社員のメンタルヘルスに悩んでいるという組織の方は、本コラムの施策で取り組めることから始めていきましょう。

監修者プロフィール

森川 友晴

チェリッシュグロウ(株)代表。業界歴15年以上。大手外食チェーンにて店舗業務、人事部、教育部などを経験した後、アルー(株)に転職。研修教材やコンテンツ開発のマネジメントを行う。 現在は、研修講師、中学高校や企業のカウンセラーとして企業と個人の支援を行っている。




新入社員研修成功事例集

1)新入社員のメンタルヘルス対策の3つの予防

職場のメンタルヘルス対策は、一次予防、二次予防、三次予防の大きく3つに分けられます。  メンタルヘルス対策は、一次予防、二次予防、三次予防
二次予防は、メンタルヘルス不調になりかけている人に対して、早期にフォローする段階です。三次予防は、メンタルヘルスの不調により、休職等になってしまった方への対策を検討する段階です。

一次予防:メンタルヘルス不調を未然に防止する

メンタルヘルスは不調にならないよう、未然に防ぐことが大切です。メンタルヘルスに不調が出ると、その後のフォローが大変になるためです。
2015年12月に施行されたストレスチェック制度も、この一次予防をねらいとされます。

新入社員のメンタルヘルス不調の一次予防が実施できているのかの確認方法として、以下チェックリストを参考にしてみましょう。

【新入社員用 メンタルヘルスの問題防止チェックシート】

項目 チェック欄
人間関係でトラブルは起きていないか?
過剰な業務量ではないか?
孤独感を生み出していないか?
入社前までに組織のことをオープンに伝えていたか?
失敗やミスから立ち直れているか?
メンタルヘルスの知識があるか?

新入社員を対象にしたアンケート調査の結果を分析した、日本労働研究雑誌の「若年期の社会的ストレスとメンタルヘルス:新入社員の場合」によると、新入社員が抱えるストレスの主な要因は、人間関係や職場環境などが挙げられ、これらのストレスがメンタルヘルスに悪影響を与えていることが示されています。

また、ビズヒッツ社が新卒1年未満で転職した経験がある381人を対象に行った調査では、新卒1年未満で転職した理由について次のようなランキングになっています。  株式会社ビズヒッツ 新卒1年未満で転職経験がある381名を対象に行ったアンケート ※ 引用:新卒1年目の転職は厳しい?転職理由やタイミングを381人にアンケート調査

この順位からも、人間関係と職場環境が新入社員のストレスの原因で、転職という判断をせざるをえない状態になっていることがわかります。そのため、人間関係と職場環境が新入社員のメンタルヘルスにネガティブな影響を与えず適切であるか、確認しましょう。

人間関係でトラブルは起きていないか?

人間関係のトラブルが起きていないかを確認し、何かトラブルが起きているときは、早期に対応することが必要です。人間関係は、新入社員が転職を検討する理由の上位にもあるように、新入社員にとってストレスと感じる大きな要因となっているためです。

例えば、上司からいつも嫌味っぽい言葉を言われるとか、自分とは異なる価値観の足で稼ぐ営業を押し付けられて辛いなど、一見小さなことでも毎日積み上がると、大きなストレスになり、メンタルヘルスに不調を与えることもあります。また、ハラスメントやいじめなどの問題がある場合は、ストレスや不安が蓄積し、うつ病や不安障害の発症リスクが高くなります。

【参考】人間関係がストレス?新入社員が良好なコミュニケーションを築く方法

人間関係の問題をフォローするためには、新入社員が相談できるような関係性になっている必要があります。人間関係のトラブルは繊細で、安心して話せる人にしか相談できないためです。そのためには、内定が決まった段階から、オンボーディングを行い、少しずつ関係性を築いていくことが大切です。

オンボーディングとは、新入社員の受け入れ~定着・即戦力化のプロセスのことをさします。そのため、新入社員研修といったプログラムだけを指すのではなく、OJTや職場の歓迎会、新入社員用のPCセットアップなど、組織への適応をサポートするあらゆる取り組みもオンボーディングに含まれます。

Feldman, D. C. (1977)の調査によると、新入社員が職場の仲間に受け入れられたと感じる(受容感)には、平均2.7カ月かかるという研究結果があります。そのため、入社後 3 か月間は研修を通して丁寧に育成し、受け入れの土台をつくっていくことを推奨します。

人間関係を構築するためのオンボーディング施策として具体的な方法として、次のようなことがあります。

内定者交流会
・職場見学
歓迎会
1on1ミーティング
・相互インタビュー

・内定者交流会
内定式後に内定者交流会として、これから同期となる人にどんな人がいるのかを知る機会を作ります。そうすることで、同期の人はどんな人なのかという不安が解消されます。

相手のことを知り、自分のことを知ってもらうための自己紹介を始め、今不安に思っていることの共有や、次回の交流会の計画を立てるなどの内容を含むこともお勧めです。

さらに内定式後に内定者同士で連絡を取り合えるようにすることで、事前に同期間の関係性を構築することができます。同期となる人と関係性を築けていると、入社前後の不安を相談し合えることができ、ストレスになる要素を減らすことができます。新入社員にとって、職場に知っている人がいる、というだけで安心感があり、他の人との関係性の気付きやすさにも影響します。

・職場見学
内定者に対して、職場を見学できる機会を設けます。職場に実際に行くことで、職場の雰囲気や空気感、実際に働いている人の様子を体感することができ、自分が職場で働くイメージを持ちやすくなります。

自分が社会人として、今見ている環境で働くことになる、ということが実感できると、緊張感だけでなく、期待感も感じやすくなります。ポジティブな感情を持って入社してくれると、職場との関係性も築きやすくなります。

・歓迎会
新入社員を歓迎していることを表す機会を作ることも一つの方法です。新入社員は歓迎してもらえていることがわかると、一番はじめに感じる「受け入れてもらえなかったらどうしよう…」という不安を解消することができます。

ただし、歓迎会をしても、その時の空気感として「イヤイヤ参加しています」という人が多かったりすると、逆に配属場所について不安感を増幅させてしまいます。飲み会にネガティブなイメージを持っている新入社員であれば、昼食休憩を長めにとり、少しリッチなランチを行うウェルカムランチでもよいでしょう。

普段からの部署の雰囲気が現れやすい場でもあるため、大前提として部署ごとの関係性を良くしておくことが大切です。

・1on1ミーティング
定期的に1on1ミーティングを実施することを推奨します。定期的に1on1ミーティングを行うことで、新入社員のちょっとした不安が解消され、関係構築にも繋がります。特に始めの1ヶ月間は、15分程度の時間でも毎日1on1ミーティングを実施することを推奨します。新入社員が積極的に質問がしにくい時期のため、こまめなフォローが必要なことと、関係性構築のためです。

毎日1on1ミーティングの時間を用意するのが難しいという方は、例えば、トレーナー1人で1on1を全て実施するのではなく、チームメンバーで持ち回りで実施する方法があります。持ち回りで行うと次のようなメリットが生まれます。

新入社員:様々な視点からアドバイスや意見をもらえる。関係性構築にも繋がる。
トレーナー:育成の時間的な負担軽減、他社員からの育成に関するアドバイスをもらえる。
トレーナー以外の社員:自身も新入社員育成に携わっているという当事者意識を持てる。

少しでも1対1でコミュニケーションと取れる機会を設けると、関係性を築きやすくなります。

・相互インタビュー
弊社では配属時、新入社員と既存社員が相互インタビューを行い、新入社員への歓迎度合いを高め、メンバーとの関係構築に繋げています。相互インタビューは、お互いに大切にしている想いや背景を理解し合うことを目的としています。自己紹介シートを配る等の取り組みもあるかもしれませんが、直接コミュニケーションを取り合うことがオンボーディングでは重要なので、相互インタビューを推奨しています。

(参考:相互インタビューシート)
弊社新入社員研修を導入いただいたお客様にオンボーディング支援ツールとしてお渡ししています。

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【参考コラム】
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント 

過剰な業務量ではないか?

過剰な残業を新入社員が行っていないかを管理することは重要です。多忙なスケジュールや長時間労働によるストレスが原因で、うつ病や不安障害などの精神的な問題を抱えることがあるためです。

現場の社員が新入社員が抱えているタスクの量や、勤務時間を把握するようにしましょう。一定の時間になったら自動でパソコンの電源が落ちる設定になっている組織は、それ以上仕事ができないため残業は管理がしやすいです。そうではない場合は、日報や共有しているスケジュールツールなどで、いつ何の仕事をしているのかをわかるようにしましょう。

特に注意が必要なのが、リモートワークかつフレックス勤務の場合です。この場合は、実際の状態を細かく把握することができません。新入社員の状態を確認するためにも、毎日15分朝礼を行うなどして、今日やることと新入社員が持っている全てのタスクの確認を行えると、大きなズレはなくなるでしょう。

【参考】新入社員のストレス|4つの要因と改善方法を詳しく解説

孤独感を生み出していないか?

新入社員が孤独感を感じず、組織の中に居場所があると感じられることもメンタルヘルスの予防になります。特に最近ではリモートワークやテレワークなどによって、周りに頼れる人がおらず孤独感を感じてストレスを感じてしまうことがあるためです。リモートワークやテレワークでも、ちょっとした質問ができる工夫が必要です。当社は基本テレワークですが、Oviceというバーチャルオフィスのツールを活用し、気軽に声掛けができる仕組みをつくっています。  Ovice※アーティエンスのoViceの風景

また、出社をしている場合でも、一人で行う作業が多く、部のメンバーと一緒に仕事をしている感覚を持てない状態も、孤独感を感じやすいです。小まめに仕事の状況を確認する時間を作るなどして、新入社員が一人で仕事をやっているように感じないようにしましょう。

入社前までに組織のことをオープンに伝えていたか?

採用フェーズ(採用ページ、自社紹介資料、説明会、面接など)では、新入社員がギャップを感じそうな情報について、しっかりと開示しておくこと、また、ギャップが生じることに対して心構えをつくっておくことが重要です。

仕事内容や評価制度、待遇などに関しては、お互いに認識のズレが無いようにするのは言うまでもありません。それに加えて、例えば、「一見華やかそうに見える仕事の理想と現実」や「配属希望や下積み期間に対する考え方」など、ギャップの要因になりそうなものは、入社前に解消しておきましょう。実際に働いている社員と会って、リアルな話を聴く機会を設けるのも一つの方法です。

「ネガティブな内容ばかり伝えると、入社を承諾してくれないのでは…?」と思われるかもしれませんが、ネガティブな情報を伏せて入社しても、ギャップが生じて離職に繋がりかねません。結果、企業側にとっても新入社員側にとっても、幸せな状況とは言えません。

ネガティブな情報を開示する際には、企業側が一方的に話すのではなく、就活生の話にも丁寧に耳を傾けることがポイントです。

・会社や仕事内容に対するイメージ
・入社後に理想とする働き方
・目指すキャリア
・大切にしたい価値観

などヒアリングし、自社で叶えられる魅力付けできるポイントは魅力付けしつつも、入社後ギャップになりそうな部分は丁寧に説明するように心掛けましょう。

失敗やミスから立ち直れているか?

失敗やミスをしたときに、その経験を次に生かそうという意識に新入社員がなっていることが大切です。失敗やミスに強いショックを受けて、自己効力感が低下すると、メンタルヘルスの不調に繋がることがあるためです。

例えば、会議に必要な書類を依頼されていたにも関わらず印刷を忘れてしまうというミスを新入社社員がしてしまったとします。その場は、パソコンからスライドで投影して説明できたため、大きなトラブルにはなりませんでした。そのため、先輩や上司は注意する程度です。しかし、新入社員は「自分はこんなこともできないのか…自分ってダメだな。迷惑ばかりかけてる…」と周りの人が思っている以上に落ち込んでいるかもしれません。この状態から切り替えることができないと、他の仕事にも集中しきれず、ネガティブな影響の連鎖が起きてしまいかねません。

失敗やミスの受け止め方は人それぞれです。新入社員の失敗やミスの受け止め方をよく見て、次に活かす、という認識を持てるようにアドバイスできるようにしましょう。

【参考】新入社員が受け止めるアドバイスとは?│アドバイスのフローまで解説

メンタルヘルスの知識があるか?

メンタルヘルスの知識を新入社員が持てていることも予防のために重要です。学びを通じて、新入社員が自分自身や周囲の人々のメンタルヘルスを守ることができるようになるためです。

メンタルヘルスの研修では、例えば次のような内容を学ぶことが多いです。

・ストレスやうつ病、不安障害などのメンタルヘルスに関する基本的な知識
・メンタルヘルスの問題が発生する原因となるリスクファクターと、その対策となるプロテクティブファクター
・メンタルヘルスに関する問題を話し合うためのコミュニケーションスキル
・ストレスやプレッシャーに対処する方法

など、メンタルヘルスの基本的な知識やストレスの対処方法、コミュニケーション技術などを学ぶことで、個人で対処できることが増え、不調を起こさずに済む場合もあります。これらのような施策を行うことで、新入社員のメンタルヘルスが不調になる前に防ぐことができます。

ニ次予防:早期に発見する

新入社員の変化をいかに早く発見し、フォローに繋げられるかが重要です。メンタルヘルスの問題は、症状が軽いうちの方がフォローしやすく、改善も早いためです。

新入社員の状態を確認するための方法は、次の4つが考えられます。

1、ストレスチェック
2、日報
3、パルスサーベイ
4、1on1ミーティング

それぞれ説明します。

ストレスチェック

メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的にした取り組みです。平成27年12月1日より50人以上の労働者を抱える企業では、労働安全衛生法の改正によりストレスチェックの検査が義務付けられるようになっています。国が推奨している、ストレスチェックのための項目はこちらです。

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※引用:厚生労働省 ストレスチェック制度導入マニュアル 実施タイミングは1年以内ごとに1回となっていることが多いです。ストレスチェックは、社員一人一人が自分の現在のストレス状態を質問項目に答えることで自己認識する仕組みです。

さらにストレスチェックに答えた結果によって「高ストレス者」となった方には医師による面談が勧められます。ストレスチェックは、自分で自分のストレス状態を振り返ることと、その結果によって医師につながるという2つの仕組みによって「2次予防」となっています。1年に1回、ストレスチェックを行うことで、対応が必要な人を確認し、メンタルヘルスの不調が起きる前に対応することができます。

日報

毎日の日報の中で、今日の仕事に対しての点数を記載する欄を設けると、数値の変化を確認することができます。

例えば、基本的には7-9の点数をつけていた人が、いきなり数値が3になったら、何かしらの変化が起きていると考えることができます。この変化にいち早く気づいてフォローできるかが、大切なポイントになります。 数値の高い・低いはそこまでこだわりすぎず、数値の変化を意識して確認できると、ストレスに気がつきやすく、早い段階でフォローを行うことができます。

【参考】新入社員の日報の書き方と運用方法│フォーマットを活用して成長を促す方法

詳細
1年の目標
半年の目標
今月の目標
今週の目標
予定している業務内容と時間
実際の業務内容と時間
今日ポジティブな影響を与えたこと
今日ネガティブな影響を与えたこと
今日の経験を元に明日に活かすこと
支援してほしいこと
今日の仕事に点数をつけるなら
(最高10点)
トレーナーからのコメント

パルスサーベイ

パルスサーベイとは、社員に対して簡易的な質問を、短期間に繰り返し実施する意識調査方法の1つです。短期的に同じ質問に繰り返し答えてもらうことで、リアルタイムの状態を把握することができます。また、変化に気づきやすくなるため、その変化を活用してフォローを行った方が良い人を見つけ、対応することができます。

当社ではパルスサーベイGrowthといった、月に一度、新入社員が自身の仕事を振り返るためのツールを開発し提供しています。 Growthでは、毎月同じ10の設問に回答していただき、数値の変化やフリーコメントの内容をみて、新入社員の変化に気づき、フォローできるようになっています。

実際に、IT業界で社員数が450名程度の企業では、Growthのフリーコメントによって新入社員がネガティブな状態になっていることに気がつき、適切なフォローをしたことで仕事へのモチベーションが改善したということがありました。

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このように定点観測できると、新入社員の変化に気がつきやすく、メンタルヘルスの不調が軽いうちにフォローをすることができます。

1on1ミーティング

定期的に行う1on1ミーティングで同じ問いを行い、その時の返答を記録しておくことで変化を見ることができます。

例えば、今までやる気に溢れている言葉を言っていた新入社員が、いきなり辛いという要素の言葉が多くなったら、何か変化が起きていると考えることができます。 ただ、1on1ミーティングを行う新入社員と上司・トレーナーとの関係性が築けていないと、素直な言葉は出てきにくいため、1on1ミーティングから変化をみる場合は、良い関係性を築けていることが重要です。

このような取り組みを行うことで、新入社員の変化をいかに早く発見し、フォローに繋げられるようにしましょう。そうすることで、新入社員のメンタル不調の悪化を防ぐことができます。

三次予防:再発を防止する

新入社員の中で、メンタルヘルスの不調により体調を崩してしまったり、休職、離職に繋がってしまった場合は、その際の原因を突き止め、二度と同じことが起こらないように対策を行うことが重要です。原因が明確にならないと、いくら対策を行っても効果がでないということになりかねません。

当社のパートナー講師が担当した、管理職とカウンセラーとの連携により3次予防に繋げた事例をご紹介します。この事例は、カウンセラーが休職中の25歳の営業職女性Aさんだけではなく、管理職とも関わりながら「三次予防」を行った内容となります。

【三次予防に繋げた具体的な事例】
あるIT企業にて25歳の営業職女性Aさんがうつ病の診断となり3ヶ月の休職となった。
休職期間中、Aさんは病院での治療をしながら、同時に会社が契約をしているカウンセラーとの面談を定期的に行っていた。

Aさんはとても真面目な性格で、早く治療を進め会社に迷惑をかけている分を取り戻したいと思っており、焦りが強くあった。そのことがうつ病の治療としてはマイナスな影響がでがちであったため、カウンセラーによって焦らないように進めていくことを話し合いながら進めていた。

Aさんの上司であるBさんは、自分の部下が精神疾患で休職になったことが初めてであり、またAさん同様、とても真面目な性格であり、Aさんが早く良くなるように定期的にAさんと電話で話したりしながら復職後の状況について話をしたりしていた。こういった上司Bさんの関わりもAさんにとっては焦る原因になっていたことから、カウンセラーが介入し、上司Bさんの電話をやめてもらい、定期的にメールで状況の報告をすることにとどめた。

その後、Aさんは定期的にカウンセラーと面接をしながら焦らずゆっくりと治療に専念することで、3ヶ月で復職になり、また上司Bさんも定期的にカウンセラーとAさんに対してどのように関わっていくかを相談しながら、Aさんの休職中、また復職後の対応を行っていった。

このように、メンタルヘルスの不調は当人だけの問題だけでなく、その周りにいる人にも影響があり、その人に対してもフォローが必要になります。本人が良いと思って行動していることでも、専門家から見たらネガティブに作用することもあります。

メンタルヘルスの再発を防止するためにも、専門家に介入してもらったり意見を聞きながら対応し、同じことが起きないように、メンタルヘルスの不調を起こした当人や周囲の人の様子を見ながら、防止できるようにしましょう。

2)メンタルヘルス不調のサインを見逃さないための5つの変化

新入社員のメンタルヘルスが弱っている可能性がある症状として、次のようなことが挙げられます。

・身体面の変化
・精神面の変化
・食事の変化
・人とのコミュニケーションの変化
・パフォーマンスの変化

身体面の変化

体調不良や、疲れやすくなる、頭痛や胃腸の不調などが現れるなどです。
遅刻や欠勤が増えたり、集中力や判断力が低下して、今までより作業時間が長くかかる、ということもあるかもしれません。

精神面の変化

以前と比べてやる気がない、笑顔がなくなる、覇気がなくなるなどです。また、本人から寝つきが悪かったり、不眠に悩むなどの声がでてくることもあるかもしれません。

食事の変化

食欲不振や過食などです。

人とのコミュニケーションの変化

コミュニケーションの回数が減ったり、自分から声をかける機会が少なく受け身になったり、笑顔がなくなるなどです。

パフォーマンスの変化

仕事に集中できない、ミスが増える、思考力や判断力が低下する、業務に対する興味が薄れる、ということが感じられるかもしれません。

これらは一例で、症状は人によってさまざまです。普段から新入社員を気にかけて、新入社員の違いに気づけるようになれると、症状にも気づきやすく、素早いフォローを行うことにも繋がります。

新入社員研修成功事例集

3)新入社員のメンタルヘルスへの対応

新入社員のメンタルヘルスについての具体的な対策や、メンタルヘルスの不調が起きてしまった時の対応は、メンタルヘルスの正しい知識を持った人に相談することをお勧めします。
メンタルヘルスの問題は繊細で、知識がない人が行うと良からぬ問題を起こしかねないためです。メンタルヘルスの正しい知識を持った人は、以下のような専門職の方々です。

・精神保健専門職
  (精神科医、心療内科医、臨床心理士、臨床心理士補、精神保健福祉士など)
・心理カウンセラー、カウンセリングセラピスト

メンタルヘルスの問題は、新入社員本人が辛いことはもちろん、そのような状態にさせてしまったという上司や先輩、そして、メンタルヘルスの不調が起きてしまっているということを知る同期など、関わる全ての人に影響を及ぼします。
それぞれに対応が必要になり、その分の労力も必要となるため、産業医・カウンセラーなど外部パートナーの力も頼ることを検討することをお勧めします。

また、厚生労働省では相談機関・相談窓口を設けています。このような機関への相談や、研修講師でありカウンセラーでもある当社のパートナー講師に相談していただくことも可能です。自組織の状態を伝え、どのような対策を行えばいいかを検討していきましょう。

メンタルヘルスの問題は、最悪死に繋がってしまいかねない、とても繊細で難しく大きなものです。自組織だけでどうにかしようとせず、フォローが必要だと感じたら、専門家にバトンタッチする、という判断がとても重要です。

4)まとめ

今回は、メンタルヘルスの不調を防止する方法、早期発見をする方法、そして再発しないためにすべきことをお伝えしました。
職場のメンタルヘルス対策は、一次予防、二次予防、三次予防に分けられます。

 メンタルヘルス対策は、一次予防、二次予防、三次予防

一次予防:メンタルヘルス不調を未然に防ぐためには、下記内容を改善する必要があります。

・人間関係でトラブルは起きていないか
・過剰な業務量ではないか
・孤独感を生み出していないか
・入社前までに組織のことをオープンに伝えていたか
・失敗やミスから立ち直れているか
・メンタルヘルスの知識があるか

ニ次予防:早期に発見するためには、以下4つの方法で新入社員の状態を把握する必要があります。

・ストレスチェック
・日報
・パルスサーベイ
・1on1

三次予防:再発を防止するためには、専門家の知識や介入を通して、丁寧に対応することが必要です。以下のような専門家に相談しましょう。

・精神保健専門職(精神科医、心療内科医、臨床心理士、臨床心理士補、精神保健福祉士など)
・心理カウンセラー、カウンセリングセラピスト

メンタルヘルスの症状は人によってさまざまです。普段から新入社員を気にかけて、新入社員の違いに気づけるようになれると、症状にも気づきやすく、素早いフォローを行うことにも繋がります。
アーティエンスでは、メンタルヘルスの専門家による、カウンセリングや研修も実施しています。組織の状態によって取り組むべき施策は様々です。まずはお気軽にお問い合わせください。

参考:社員が悩みを相談できる環境を福利厚生で提供。国内最大のオンラインカウンセリング「うららか相談室」
参考:【880円で法人登記】東京(渋谷)・広島の格安バーチャルオフィス「バーチャルオフィス1