キャリアアドバイザーが聞いた「新入社員が辞めるリアルな理由」と効果的な対策

更新日:

 「せっかく採用した新入社員が、いつの間にか辞めてしまう…」
「配属したばかりなのに、もう退職の相談がきた」

こんなお悩みを抱えていないでしょうか。

厚生労働省の調査(学歴別就職後3年以内離職率の推移)によると、新入社員の約1割が入社1年以内に離職しているという結果も出ています。

時間もコストもかけて採用・育成したはずなのに、いざ現場でこれから活躍してほしいというタイミングで辞めてしまう――これは人事にとっても、現場にとっても非常に苦しい状況です。

しかし実は、新入社員が辞める多くの場合、入社前後で次の5つのギャップが生まれていることが、早期離職を引き起こす大きな原因になっています。

本コラムでは、この「新入社員が辞める5つのギャップ」を具体例とともにわかりやすく整理し、今日から実践できる“ギャップを未然に防ぐ対策10選”をご紹介します。

新入社員が辞める理由を正しく理解し、適切な対策を講じることで、新入社員の定着率を高め、成長を期待できる環境を整えましょう。

目次

1)キャリアアドバイザーが聞いた!リアルな退職理由

筆者は前職で勤めていた転職エージェントで、主に20代前半~半ばのいわゆる第二新卒・若手社員の転職希望者向けのキャリアアドバイザーに従事していました。

前職でキャリアアドバイザーとして働いていたときに、実際の若手社員から聞いた“リアルな退職理由”をいくつかご紹介します。

① 仕事内容のイメージと実態のギャップ

キャリアアドバイザー時代にも頻繁に聞いた転職理由が、「職種名から想像した仕事内容と実際が違う」というギャップでした。

たとえば、ある若手社員は「コンサルタント職」と聞いて入社したにもかかわらず、実際はテレアポ中心の営業職だったため退職したケースがあります。

本人は「丁寧なヒアリングや課題整理、企画書作成」がコンサル職だとイメージして入社。しかし会社の定義するコンサル職は、「既存商品の提案を行う営業」に近かったというものです。

もしかしたら、中長期的にキャリアを重ねれば希望に近い業務も担当できたかもしれません。
しかし、本人にとっては「イメージしていた仕事」と「実際の仕事」の差が埋まらず、早期退職へとつながってしまいました

同じ職種名でも会社ごとに求められる役割は大きく異なります。特に就業経験のない就活生にとっては、職種名が大きな判断材料になるため、「職種名がつくる先入観」とのギャップは起こりやすいと言えます。

② 上司・先輩に対する期待とのギャップ

「他者の能力ギャップ」が転職理由になる若手は、想像以上に多くいます。

キャリアアドバイザーとして転職理由を聞く中でも、「尊敬できない上司とは働きたくない」という声は珍しいものではありませんでした

新卒からすると「上司=専門性や人間性に優れた人」というイメージを持ちやすいものです。
この期待と、実際の職場で接する上司や先輩の姿との間にギャップが生じると、強い失望や不安から離職を考えてしまうケースがあります。

③ 将来の給与・キャリアの見通しに対する不安

転職を考えるきっかけとしてよく挙がるのが、上司・先輩の給与を知った瞬間の衝撃です。

「今の給与に不満はないけれど、先輩の年収を聞いて愕然とした」
「数年働いてもこれしか上がらないのか…と不安になった」

このような声も非常に多くありました。

給与は人生設計に直結するため、理想とのギャップは大きな不安になります。

そのため企業側には、
・昇給がどう決まるのか、評価基準を正しく開示する
・納得感のある評価・フィードバックを行う といった透明性が求められます

たとえ昇給額が小さくても、「評価の正当性と納得感」があれば、次のモチベーションにつながります。

④ 年齢の近い仲間がいないことによる孤立感

「職場に同年代がいない」という理由で退職を検討する若手も少なくありません。

特にコロナ禍以降、学生のアルバイト経験が減った影響で、年上の社会人と関わる経験が少ないまま社会に出る若者が増えています。

弊社の外部パートナーで就活エージェントを長年経験されている方によると、「大人と話すのが怖い」と感じる学生も近年増加しているとのこと。

そのため、同年代の仲間がいない環境に置かれると、相談できる人がいない孤独感から転職を考えるケースが出ています。

⑤ 理想の働き方(休み方)とのミスマッチ

「平日休み・シフト制」によるギャップも、転職相談でよく聞く理由のひとつです。

就活時には、アルバイト感覚で「平日休みでも大丈夫」と納得して入社したものの、

・友人と休みが合わない
・連休が取れず帰省しにくい
・生活リズムが安定しない

といった実際の不便を経験して、理想のワークライフバランスとのずれを強く感じてしまいます。

働く中で見えてくる生活リズムのリアルと、自分が望む働き方とのギャップは、早期離職につながりやすい傾向があります。


前職でキャリアアドバイザーとして若手の転職理由を数多く聞く中で、共通して見えてきたのは、本人の努力では解消が難しい要因が多いということです。
こうしたギャップを“本人の問題”にせず、組織としてどう解消していくかが重要な視点になります。

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    2)新入社員が会社を辞める理由「入社前後の5つのギャップ」

    1章のような事例があったように、新入社員が会社を辞める理由をひと言で集約するのであれば「入社前後でのギャップ」にあります。

    このギャップは、大きく次の5つに分類できます。


    これら5つのギャップについて順に解説していきます。

    ①仕事内容へのギャップ

    仕事内容へのギャップは、新入社員が入社後に最も感じやすい代表的なギャップです。
    入社前に思い描いていた仕事のイメージと実際の業務に乖離があると、モチベーション低下や早期離職につながってしまいます

    このギャップは、より具体的に次の3つのパターンに分けられます。

    ① 企業から開示されていた仕事内容と違う
    ② 新入社員が想像していた仕事内容と違う
    ③ 希望していた部署・配属と異なる

    それぞれ解説します。

    ①企業から開示されていた仕事内容と違う

    1つ目は、採用時に説明された仕事内容と、実際の業務内容が異なるケースです。
    求人票の記載不足や説明の曖昧さなど、企業側の情報開示が不十分であることが原因となります。

    もちろん企業に悪意がなくても、魅力的に打ち出そうとするあまり情報が過度に簡略化され、結果としてギャップを生む場合もあります。
    そのため、採用時には仕事内容を正確・具体的に伝えることへの意識が大切です。

    ②新入社員が想像していた仕事内容と違う

    2つ目は、就活生自身が思い描いていたイメージとのズレから生じるギャップです。
    職種名に対する先入観や、学生時代の限られた経験・知識から想像する仕事像は、実務と大きく異なることがあります。

    たとえば、「マーケティング職=企画中心の華やかな仕事」とイメージしていたものの、実際は
    データ分析・資料作成・数値入力など地道な作業が中心だったというケースです。

    職種名がつくるイメージとのギャップは、就業経験のない新入社員ほど感じやすい傾向があります。

    ③希望していた部署・配属と異なる

    3つ目は、配属先が希望と異なる場合に生じるギャップです。

    近年のZ世代は「最短で理想のキャリアに近づきたい」という志向が強い傾向があります。
    そのため、初期配属が希望と異なると、「望むキャリアパスが実現できない」と判断し、早期に離職を検討するケースも少なくありません。

    また、「将来的に企画部門へ配属予定だが、数年間は営業経験が必要」といった時間軸を伴うギャップも存在します。

    企業側からすれば、「まず顧客を知るため」「事業理解のため」という合理的な意図で営業に配属させることがありますが、“下積み”の必要性をどれだけ感じるかは、世代によって受け止め方が大きく異なります


    採用時の魅力づけが強すぎたり、職種名だけで判断させてしまうと、入社後に大きなギャップが生まれます。
    「期待値の調整」を適切に行うことが、ギャップを最小化する鍵となります。

    ②自身や他者の能力へのギャップ

    「能力に関するギャップ」は、大きく次の2つに分けられます。

    ① 自分の能力・適性に対するギャップ
    ② 他者(上司・先輩)の能力に対するギャップ

    それぞれ解説します。

    ①自分の能力や適性に対するギャップ

    自分の能力や適性に対するギャップは、新入社員自身が持つ“自分の能力へのイメージ”と、実際の仕事で求められる能力との間にズレが生じるケースです。

    たとえば「営業職」と一口に言っても、人柄・熱意・行動量で信頼を築くタイプ/分析力や企画力によって価値を提案するタイプなど、求められる能力は企業によって大きく異なります。

    選考時点で「会社が求める能力」を十分に理解できていないと、「自分がイメージしていた能力と、成果に必要な能力が違った…」というギャップが生まれます。

    逆に、会社が求める能力は理解していたとしても、「自分にはあると思っていた能力が、実際の仕事では全く通用しなかった…」という“自己認知のギャップ”が起きることもあります

    このズレが大きいと、「この仕事は自分には向いていない」と判断し、離職につながることがあります。

    ②他者の能力へのギャップ

    もう1つは、「一緒に働く人への期待」と「実際の姿」のズレから生じるギャップです。

    新入社員の中には、「同じ会社で働く上司や先輩は、一定以上の能力を持っているはず」という価値観を持っている人もいます。

    そのため、上司・先輩の勤務態度や業務スキルが想像より低いと、
    「思っていたほど仕事ができない…」
    「尊敬できる上司のもとで働けると思っていたのに…」 と幻滅してしまう
    ケースがあります。

    この「他者への期待ギャップ」は、新卒・若手社員の離職理由として意外と多く、キャリアアドバイザー時代にも頻繁に聞かれたものです。


    自分や他者の能力に対するギャップは、期待と現実のズレから生じやすく、早期離職の大きな理由となります。

    ③評価や給与・待遇へのギャップ

    評価や給与・待遇に関するギャップは、大きく次の2つに分けられます。

    ① 評価や昇給が期待していたものと異なる
    ② 給与・待遇と仕事内容が見合っていない

    それぞれ簡潔に解説します。

    ① 評価や昇給が期待していたものと異なる

    求人票の内容や面接時の説明と、実際の評価基準・昇給額に乖離があると、新入社員は強い不満や不信感を抱きます。
    「聞いていた話と違う」という状態は、早期離職の大きな引き金になります。

    ② 給与・待遇と仕事内容が見合っていない

    たとえ選考時に給与や待遇について丁寧に説明されていても、実務が始まると「仕事内容の割に給与が低いのでは?」と感じる新入社員も少なくありません。

    特に多いのが、地元の友人や学生時代の仲間と再会したときの比較です。
    周囲の収入や待遇を聞いたことで、急に自分の給与が低く感じられ、転職を考え始めるケースがあります。


    評価や給与に関するギャップは、特に、周囲との比較やキャリアの将来像を意識した瞬間に、現状の待遇への疑問が強まり、転職を検討するきっかけとなることが多くあります。

    ④対人関係へのギャップ

    会社の人間関係に悩む社会人は少なくありませんが、新入社員の場合は特に、直属の上司やOJTトレーナーとの関係でつまずくことが多くあります。

    年齢差のある上司・先輩や、厳しめのフィードバックをするタイプの上司に対してコミュニケーションを取りづらく感じ、ストレスを抱えてしまうケースがよく見られます。
    その結果、「会社に行くのがしんどい」「辞めたい」と感じてしまうこともあります。

    また、上司先輩だけでなく、同期との相性が理由で孤立感を抱くケースもあります。
    同期のノリが合わずに気軽に相談できる相手ができず、社内で孤独を感じてしまい、退職を考えることも珍しくありません。

    さらに、「対人関係」に大きな影響を与えるものとして社風との相性があります。

    たとえば…
    ・「個人プレーで成果を出す文化」か「チームワークを重視する文化」
    ・「伝統を大切にする会社」か「革新を求める会社」

    といった違いによって、新入社員が「合う・合わない」を強く感じることがあります。

    社風が自分の価値観と合わないと、会社に行くこと自体が負担となり、離職のきっかけになりやすくなります。

    他にも、何年かに一度しか新卒採用をしない企業では、人材の年代が偏り、新入社員と先輩社員の年齢が離れすぎてしまうことがあります。
    気軽な雑談やちょっとした相談がしづらく、結果として職場で孤独を感じてしまうため、企業側の丁寧なフォローが必要です。


    対人関係のギャップは、上司・先輩との関係性や同期との相性、さらには社風とのミスマッチなど、本人ではコントロールしにくい要因から生じやすいものです。

    だからこそ、企業側には関係構築をサポートする仕組みや丁寧なフォローが求められます。

    ⑤ワークライフバランスに関するギャップ

    ワークライフバランスに関するギャップを抱える新入社員もいます。
    「仕事よりもプライベートを優先させたい」、「仕事とプライベートの調和を保ちたい」と考える新入社員も多いです。

    具体的には、以下ような観点で自身が理想とするワークライフバランスとのギャップを感じているようです。

    ・長時間労働やサービス残業がある
    ・休日出勤があったり、有給休暇が取りにくい
    ・フレックスタイム制やテレワークを利用できない
    ・福利厚生が充実していない

    新入社員には、入社後どのような働き方をするのか、また、繁忙期のタイミングや期間などの勤務条件をできる限り明確に共有しておくことでギャップを最小化できます。


    ワークライフバランスのギャップは、働き方に対する価値観が多様化した今の新入社員にとって、離職を考える大きな要因になりやすいです。


    新入社員が会社を辞める背景には、仕事内容・能力・評価・人間関係・働き方といった入社前後のさまざまなギャップが存在しています。これらは、本人の努力では埋めにくい構造的な要因が多く、ギャップが大きいほど早期離職につながりやすくなります

    だからこそ企業には、採用段階から入社後まで一貫して、期待値を丁寧にすり合わせること(期待値調整)と、新入社員が安心して成長できる働く環境づくりが求められます。
    ギャップを最小化する取り組みこそが、定着率向上の鍵となります。

    2)入社前・入社後に新入社員のギャップを解消し「辞める」を防ぐ対策10選

    入社前後のギャップを軽減させて、新入社員の離職を防いでいく対策を10選紹介します。

    【入社前】①ギャップになりそうな情報を丁寧に開示する

    採用フェーズ(採用ページ・自社紹介資料・説明会・面接など)で、入社後にギャップになりうる情報をあらかじめ丁寧に開示することが重要です。

    仕事内容・評価制度・待遇はもちろん、「理想と現実に差が出やすいポイント」も早い段階で共有し、心構えをつくっておく必要があります。

    特に、次のような内容はギャップの原因になりやすいため、入社前に説明しておくことが効果的です。

    【入社前に特に丁寧に説明しておきたい項目】

    ・一見華やかに見える仕事の「理想」と「現実」
    ・配属希望がどこまで通るのか(配属の決定ルール)
    ・下積み期間の必要性と期間の目安
    ・実際の働き方(忙しさ、やることの地道さ、泥臭さ)
    ・成果が出るまでの時間軸(すぐ結果が出ない理由)
    ・評価の基準と昇給のリアル

    ネガティブな情報を伝えることに不安を感じる採用担当者もいますが、伏せたまま入社し、後からギャップで離職されてしまうほうが企業にとっても損失が大きくなります。

    そのため、ネガティブ情報を開示する際には、企業側が一方的に話すのではなく、就活生の考えを丁寧に聞きながら、対話の中でギャップをすり合わせていく姿勢が大切です。

    【すり合わせに必要なヒアリング項目】

    ・会社や仕事内容に対するイメージ
    ・入社後に実現したい働き方
    ・将来のキャリアパスの希望
    ・大切にしている価値観
    ・働くうえで譲れないポイント

    これらを丁寧にヒアリングしたうえで、自社で叶えられる部分は魅力として伝え、ギャップになりそうな部分は曖昧にせず説明することで、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐことができます。

    【入社前】②社員との懇親会や面談、職場見学など機会を設ける

    入社後の働く姿を具体的にイメージしてもらうためには、既存社員との交流機会を設けることがとても効果的です。実際の雰囲気やリアルな声に触れることで、入社後のギャップを大幅に軽減できます。

    交流機会を設けるメリットは次の通りです。

    ・自分のロールモデルになりうる先輩社員に会えることで、入社後の働き方やキャリアを具体的に描きやすくなる

    ・人事や面接官には聞きづらい、細かな疑問や不安を解消できる

    ・現場ならではの「リアルな声」を知ることで、事前のイメージとのギャップが埋まりやすい

    既存社員との交流機会としては、以下のような例があります。

    【既存社員との交流機会の例】

    ・先輩社員とのオンラインランチ・懇親会
    ・配属予定の職場見学
    ・忘年会・新年会など社内イベントへの参加
    ・社内の部活動・サークルへの参加
    ・四半期のキックオフミーティングの見学

    たとえば弊社でも、採用過程の中で多くの既存社員と顔合わせの機会を設けるように工夫しています。
    先輩社員との面談やオンラインランチでは、入社前後に感じたギャップや大変だったこと、自社への正直な意見など、面接では聞けないリアルな話を共有してもらいます。
    こうした取り組みが、「思っていた会社と違う…」というミスマッチの防止につながっています。

    まずは自社で実施可能なものから取り入れ、新入社員が「入社後の自分」を具体的に思い描ける環境づくりを進めていきましょう。

    【入社前】③インターンシップや内定者アルバイトを行う

    インターンシップや内定者アルバイトは、入社後のギャップを解消するための有効な施策です。

    職場の雰囲気を実際に体験しながら業務の一部に触れられるため、「入社後の自分」をより具体的にイメージしやすくなります。
    また、社員との距離が縮まることで、入社後の立ち上がりもスムーズになるというメリットがあります。

    ギャップを減らすためのポイントは、社員との交流が生まれる設計にすることです。
    インターンシップやアルバイトでは、一人で黙々と作業するよりも、社員とコミュニケーションを取りながら進める業務を担当してもらう方が、リアルな働き方を理解してもらううえで効果的です。

    【入社前】④内定後、改めて自社への理解を深める機会を設ける

    内定者研修の一環として、自社への理解を深める機会を用意することも、入社後のギャップ解消に効果的です。

    説明会や面接で丁寧に説明していても、実は「理解が曖昧なまま内定承諾している」ケースは少なくありません。
    これは、弊社が内定者研修を実施する中でも強く実感していたことです。

    そこで、入社前の段階で次のような取り組みを行うことをおすすめします。

    【自社理解を深めるための施策例】

    ・内定者研修で、自社について調べるワークを行う
    ・内定者向けに書籍をプレゼントする(業界理解・社風理解など)
    ・自社商品・サービスに関するレポートの作成
    ・先輩社員へのインタビュー企画を実施する

    そのほか、書籍プレゼントもギャップ解消に効果的です。
    例えば弊社では「社風を理解するために役立つ本」を内定者にお渡ししています。

    内定者が自身のペースで読み進めることで、業界や仕事内容への理解が深まり、入社後のミスマッチ防止にもつながります。

    ▼参考コラム
    新入社員の悩みTOP10を徹底解説!解決に導く対応策とは?

    【新社会人に役立つ本16冊】豊かな社会人人生と早期活躍をサポート

    【入社後】⑤学生から社会人へのマインドセットを入念に行う

    入社後は、学生から社会人へのマインドセットを丁寧に行うことが重要です。
    社会人として求められる役割や責任を理解し、自覚が育まれると、入社前後で感じていたギャップも“見え方が変わる”ことで解消される場合があります。

    ただし、マインドセットは「社会人とはこうあるべきだ」と一方的に押し付けるだけでは効果がありません。
    大切なのは、新入社員のインサイドアウト(内発的動機)を引き出すアプローチです。
    外から「こうしなさい」と押しつけるだけでは、指示待ちで受け身な人材になってしまう可能性があるためです。

    インサイドアウトの促し方や新入社員研修のポイントについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
    組織の期待通りの成長へ!目的に沿った新入社員研修の内容例【事例付き】

    マインドセットは、教えた瞬間にすぐ切り替わるものではありません。
    特に入社直後は環境変化が大きいため、初期教育で丁寧に伝え、その後も継続してサポートし続けることが欠かせません。

    以下のタイミングで段階的にマインドセットを促すと効果的です。

    ① 内定式・入社式・配属式などの節目のイベント
    立場や期待される役割が変わったことを実感しやすいタイミングです。

    ② 企業理念・ビジョン・行動指針の共有
    経営層や管理職が直接、自社の価値観を伝えることで当事者意識が醸成されます。

    ③ 入社直後の新入社員研修(Off-JT)
    社会人の基礎となるマインドとスキルを体系的に学ぶ場です。

    ④ 配属後のOJTで、上司・先輩と価値観や仕事の意義を対話する
    日々の実務を通じて、「自社が大切にしている考え方」を伝え続けることが重要です。

    ⑤ 新入社員自身が定期的に内省する機会を持つ
    振り返りを通して自分の状態を把握し、次に取るべき行動を明確にします。
    例:意識できていること/できていないこと
      実行できていること/できていないこと
      この期間での変化・成長

    学生から社会人へのマインドセットが適切に行われると、「自分がなぜその仕事をやるのか」
    「どんな価値を提供しているのか」といった視点が育ち、入社前後のギャップも自然と小さくなっていきます。

    【入社後】⑥同期との相互理解を深め、関係性を高める

    同期入社の新入社員同士が、お互いを理解し合い、気軽に悩みを共有できる関係性を築いておくことも、入社後のギャップ解消には非常に効果的です。

    上司やトレーナーには言いづらい不安でも、同期であれば気軽に話せるものです。
    また、同じ立場だからこそ、感じているギャップの“捉え方”や“乗り越え方”を共有し合え、気持ちが軽くなったり、解決のヒントが得られることもあります。

    実際に弊社の新入社員研修でも、「同期がいたからつらい時期も頑張れた」「同期の工夫を真似したらすごく役立った」といった声が多く寄せられています。

    同期との関係性を高めるために、研修内で、同期同士が自然と距離を縮められる仕掛けをつくることが大切です。

    【研修で同期との関係性を高めるためのポイント】

    ・簡単なゲームワークで、お互いの新しい一面を発見する
    ・グループワークで協力し、異なる意見をまとめる経験を積む
    ・「あなたが大切にしていること」をテーマにしたワークシートを使い、深い自己紹介を行う

    アーティエンスの新入社員研修では特に “価値観を可視化するシート” を使った自己紹介が効果的で、通常では語られない一面を知ることで、一気に関係の質が高まります。

    なお、同期がいない場合には、次のようなフォローを行うと孤立を防げます。

    【新入社員が1名・少人数の場合のフォロー】

    ・年齢の近い先輩社員との交流機会を増やす(ブラザー・シスター制度など)
    ・公開講座や外部研修に参加し、他社同期のつながりをつくる

    これらのフォローがあると社内で同期がいなくても、“同じ立場の仲間”がいることが、新入社員の安心感と成長意欲につながります。

    同期、もしくは先輩社員や他社同期との相互理解は、新入社員が抱える不安やギャップを和らげ、安心して成長できる土台になります

    ▼参考コラム
    少人数採用に最適!実施すべき新入社員研修と委託先の見極め方

    【入社後】⑦現場の育成意識とスキルを向上させる

    新入社員の離職を防ぎ、ギャップを早期に解消するためには、現場の育成意識と育成スキルの向上が欠かせません
    育成スキルが高い職場では、コミュニケーションの量と質が自然と高まり、新入社員が抱える違和感やつまずきをいち早く察知し、適切にフォローできるようになります。

    現場トレーナー(OJT担当者)に対しては、次の2つの観点で研修を行うことが効果的です。

     1. トレーナーとしての“想い”を醸成する

    育成スキルの習得より前に、「自分はどんな想いで育成に向き合いたいのか」を言語化することがとても重要です。

    トレーナー自身の価値観や姿勢が曖昧なままだと、育成が“作業”になり、新入社員にも温度が伝わりにくくなってしまいます。

    次のような問いを整理できるシートを使い、“想いの言語化”をサポートするのがおすすめです。

    ▼ トレーナーの想いを引き出す問い(例)
    ・自分は日々どんな想いで仕事に向き合っているのか
    ・会社の育成方針を受けて、自分はどのように新入社員と関わりたいか

    想いを言語化することで、育成の軸が定まり、関わり方の質が大きく向上します。

     2. 育成に必要な「OJTスキル」を身につける

    想いの軸を定めたうえで、実際の育成スキルを習得していきます。
    特に以下の4つは、あらゆる現場で土台となる “基礎スキル” です。

    ▼ 育成に必要な4つの基礎スキル
    ・育成計画作成スキル
    ・ティーチングスキル
    ・フィードバックスキル
    ・コーチングスキル

    アーティエンスでも、これらのスキルを体系的に学べるOJTトレーナー研修を提供しています。

    なお、どれだけ丁寧に関わっても、人間同士なので相性の問題は起こり得ます。
    トレーナーとの関係性の悪化が離職理由になるケースも実際に存在します。

    そのため、「育成はトレーナーだけが担うものではなく、チーム全体で支えるもの」という意識と仕組みをつくることも重要です。

    弊社では、新入社員に対して毎日1on1を実施していますが、以下の理由から担当者は チームの持ち回り制 にしています。

    ・新入社員は複数の先輩と関わることで、さまざまな視点からアドバイスをもらえる
    ・トレーナー以外の社員も育成意識が高まり、フォローの網が広がる
    ・相性の問題で関係がこじれるリスクを低減できる

    こうした体制により、現場の育成力が自然と底上げされていきます。

    現場の育成力を高めることは、新入社員の離職防止とギャップ解消の大きな鍵です。
    トレーナー自身の“想い”を醸成し、育成スキルを習得すると共に、トレーナー任せにせず チーム全体で育成する体制 を整えることで、新入社員をより丁寧に支えられるようになります。

    ▼参考コラム
    1on1ミーティング研修の効果を最大化!質を高める7つのステップ

    【入社後】⑧フォロー研修を行い、業務に対する意味付けを行う

    入社後の4月だけでなく、配属後も継続的にフォロー研修を実施することを強くおすすめします。
    なぜなら、「仕事内容に関するギャップ」は配属から数カ月経って初めて顕在化するケースが多いためです。フォロー研修がそのギャップを軽減する有効な手段となります。

    一般的にフォロー研修は、入社後3ヵ月・半年・1年といった節目のタイミングで実施されます。
    これは、まさにその時期が「経験を振り返り、意味づけを深められるタイミング」だからです。

    入社後の一定期間が経つと、

    ・仕事に慣れ始めてつまずきが見えてくる
    ・業務の意味が分からずモチベーションが揺れ始める
    ・ギャップがはっきり認識される

    といった変化が起きやすくなります。

    こうした“経験が溜まってきた節目の時期”に、デービッド・コルブ氏の「経験学習サイクル」を用いて丁寧に振り返ることで、これまでの経験の意味づけが深まったり、自分の“認知の枠”の広がりによってギャップの見え方が変わるといった効果が期待できます。

    経験学習サイクル 


    ある企業の新入社員Aさんは、当初配属予定とは異なる部署に配属されたことで不信感が強まり、研修前のアンケートでは「会社を信頼できなくなっている」と答えるほどネガティブな状態でした。

    その後、アーティエンスの新入社員・OJTトレーナー合同研修に参加し、入社後半年間の経験をグループで共有。
    トレーナーや他社同期との対話を通じて、自分の成長・これからのキャリアを深く探求する時間を持ちました。

    研修後、Aさんは次のように振り返っています。

    “仕事への意義づけが難しい中、「成長のため」と思いごまかしていましたが、
    そもそも何のために成長したいのかが不明確でした。
    自分の軸を明確にした上で業務の意義づけをして、より主体的に取り組んでいきたいです。”

    このように、他者との対話を交えた内省の時間が、自分なりの“仕事の意味”を再定義するきっかけになります。


    「理想と現実のギャップ」をただ受け入れて我慢するのではなく、自分の言葉で捉え直し、主体的に解釈していけるようになることが重要です。

    フォロー研修はそのための大事な場であり、ギャップへの向き合い方や“枠組み(認知)”を広げていく機会と言えます。

    【入社後】⑨オンボーディングを丁寧に計画・実行する

    オンボーディングとは、新入社員の “受け入れ〜定着・活躍” までを一貫して支援するプロセスを指します。

    このオンボーディングを丁寧に設計・実行することで、新入社員の早期定着を促すだけでなく、入社後に生まれやすいさまざまなギャップの解消にもつながります。

    オンボーディングを進める際は、次の5つのステップで整理するとスムーズです。

     オンボーディングの手順

    各プロセスの詳細や、オンボーディングを成功させる具体的な施策については、以下のコラムで詳しく解説しています。。
    【実例あり】新入社員のオンボーディング計画!スムーズに進む5つの手順

    【入社後】⑩サーベイを行い、新入社員を定点観測してフォローする

    入社直後の新入社員は、環境変化が大きく、心身の状態が日々変わりやすい時期です。
    そこでおすすめしたいのが、パルスサーベイなどの短いスパンで実施できるサーベイを導入し、状態を定期的に把握することです。

    サーベイによって新入社員のコンディションが“可視化”されれば、どのタイミングで、どのようなフォローが必要かを判断しやすくなります。

    ただ、サーベイ結果をそのまま放置してしまうと、ギャップや不安の芽に気づかないまま時間が過ぎてしまいます。
    重要なのは、結果をもとに本人と対話を行うことです。これがギャップ解消や離職防止に直結します。

    例えば、アーティエンスが提供しているパルスサーベイGrowthでも、結果を新入社員・トレーナー・育成担当者で共有し、1on1やフォロー面談に活用いただいています。

    サーベイと対話をセットで運用することで、新入社員の定着支援の質が高まり、離職の予防にも大きく寄与します。


    これらの取り組みを組み合わせることで、新入社員の入社前後のギャップを軽減し、早期離職を防ぐことができます。

    3)まとめ

    本コラムでは、新入社員が会社を辞めてしまう「5つのギャップ」と、入社前・入社後にそのギャップを解消し、「辞める」を防ぐための10の対策をご紹介しました。

    新入社員の早期退職の多くは、採用条件や仕事内容、働き方に関する「認識のズレ」から生じます。せっかく縁あって入社した新入社員が、ギャップに耐えきれず短期間で退職してしまうことは、企業にとっても新入社員本人にとっても大きな損失です。

    だからこそ企業側には、

    ・入社前の段階で、できるだけギャップを小さくしておくこと
    ・入社後は、育成体制や関係性づくり、定期的なフォローでギャップをケアし続けること
    の両輪で取り組むことが求められます。

    その際、「5つのギャップ」を意識し、対策を設計していくことが有効です。
    2章で紹介した対策を組み合わせることで、「ギャップによる早期離職」を未然に防ぎ、新入社員が安心して成長できる土台をつくることができます。

    アーティエンスでは、新入社員の早期離職防止に向けた各種新入社員研修フォローツールを、貴社の課題やご要望に合わせてご提案しています
    「自社ではどこから手を付けるべきか知りたい」「自社に合った研修・フォローの設計を相談したい」といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください

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      参考:20代特化型のパーソナルキャリアコーチング
      参考:人材業界専門の転職エージェント「人材業界転職ルート」
      参考:DAINOTE
      参考:20代の転職率が高い!新卒でも3年以内に3割が退職って当たり前?