内定者研修|内容やスケジュール例、成功させるための3つのポイントとは

更新日:

作成日:2023.6.19

内定者研修 「効果的な内定者研修をやりたいけど、どのような内容を行えばいいのだろう…」
「自組織にあった内定者研修を行うために、どのような考えかがで判断すればいいのだろうか…」

内定者研修を検討している組織の方から、このようなお悩みをよくお伺いします。
内定者研修は、次の3つの点で効果的な取り組みです。

・内定者の不安や悩みを解消する
・入社後の早期即戦化が期待できる
・内定辞退を防止する

しかし、このような効果が生まれるのは、目的・目標に合致した研修内容を行えた時のみです。なんとなく「他社がこんなことやっているから、真似してみよう」というような状態では、期待する効果は得られません。

そのため本記事では、内定者研修でよく実施される内容や、自組織にあった研修内容の選定方法、より良い研修にするためのポイントを説明します。また、内定者研修のスケジュール例や事例も紹介します。

自組織にあった内定者研修の内容を実施することで、例年より内定者と組織の繋がりが強く、入社後の早期活躍が期待できそうと、人事も経営陣も感じられている状態にしましょう。

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監修者プロフィール

山下 絢加

2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。

1)【テーマ別】内定者研修の内容

内定者研修でよく実施される内容を以下の5つのテーマ別に紹介します。

・組織と仕事内容の理解を促す
・社会人としての意識を醸成する
・内定者同士のチームビルディングを行う
・基本的なビジネスマナーを身につける
・基本的なビジネススキル・専門スキルを身につける

組織と仕事内容の理解を促す

一つ目は、組織と仕事内容の理解を促すことです。採用段階で伝えきれなかった具体的な内容も踏まえて、組織の方向性や仕事内容を正しく認識してもらいます。
具体的な内容例として、下記が挙げられます。

・マーケットや競合他社の調査等を通じて、自社を取り巻く環境を調べて発表する
・先輩社員や上司にインタビューを行い、組織風土や文化を理解する
・新規サービスの企画プロジェクトなど、実際の仕事内容を疑似体験する

内定者が自社について調べたり、実際の仕事内容を疑似体験していくことで、組織や仕事内容に対する解像度を高めていきます。

社会人としての意識を醸成する

二つ目は、社会人としての意識を醸成することです。学生と社会人とでは立場が大きく異なります。ただし、入社式を迎えて社会人になったからと言って、すぐに意識を切り替えられるわけではありません。そのため、内定者期間中に、学生から社会人への意識変換の準備を行っていくことが大切です。

具体的には、研修を通じて「学生と社会人の違い」を考えるきっかけを渡せるとよいでしょう。例えば、アーティエンスの社会人の自覚研修では、「学生と社会人の違い」をテーマにしたワールド・カフェを取り入れています。 

※ワールドカフェとは、『カフェ』のようなリラックスした雰囲気の中で、 少人数に分かれたテーブルで自由な対話を行い、他のテーブルとメンバーをシャッフルして 対話を続けることにより、参加した全員の意見や知識を集めることができる対話手法の一つ です。
引用:ワールド・カフェの手引き
社会人の自覚研修社会人の自覚研修のアウトプットの一部

一方的に「社会人とはこうあるべき」と押し付けるのではなく、内定者自身に考えてもらう点がポイントです。社会人としての大変さや、楽しさ、やりがいを探求することができます。

このように学生から社会人としての意識の切り替えを前向きに促し、周りに対してポジティブな影響を与えていくための意識を醸成する時間が必要です。内定者時代にこの意識の変化を促すことができると、入社時から社会人としての意識を持った言動を期待できるようになります。

内定者同士のチームビルディングを行う

三つ目は、内定者同士のチームビルディングといった内容です。内定者同士の絆を深めることで、内定辞退の防止や入社後の離職防止につながります。

具体的には、
・対話
・ビジネスゲーム
・謎解き
などがあります。

入社するまでの内定者研修で同期と関係性を築くことができると、入社後の不安も助け合いながら乗り越えていくことができるようになります。

内定者同士のチームビルディングの内容は、内定者のチームビルディング強化|内定者研修・懇親会でも使える施策とポイントに詳しく解説しています。ぜひご参考ください。

基本的なビジネスマナーを身につける

四つ目は、基本的なビジネスマナーを身につけることです。学生時代はマナーを意識する機会は少なく、知識と経験が少ないです。そのため、内定者研修で知識を身につけて、入社初日からビジネスマナーを意識できるようにします。そうすると学んだことを思い出す機会を多くでき、ビジネスマナーの定着を早めることにつながります。

例えば、当社のビジネスマナー研修では、以下のような内容を実践や間違い探しを行いながら学びます。

・挨拶・敬語・身だしなみなど
・対面コミュニケーション(名刺交換、訪問・来客応対)
・電話応対コミュニケーション
・文面コミュニケーション(メール、SNSなど)

なお、当社のビジネスマナー研修では、ワールドカフェで「素晴らしいマナーとは?」について内定者自身で考え、対話を行なった上で、ビジネスマナーを学ぶような流れになっています。
最近の若者は、目的や背景を大切にする方が多いためです。
ワールドカフェのダイアログ(対話)を通して、マナーをやらされ感で行うのではなく、当事者意識を学んでいきます。

このように基本的なビジネスマナーを内定者期間中に学ぶことができると、早い段階でクライアントとの連絡や商談を任せることができ、早期活躍が期待できます。

基本的なビジネススキル・専門知識を身につける

五つ目は、基本的なビジネススキル・専門スキルを身につけることです。内定者研修で基本的なスキルを身につけておくことで、社会人としてのスタートをスムーズに進めることができます。

基本的なビジネススキルというのは、例えば以下のようなものです。

・OAスキル(ITスキル)
・ビジネス文章スキル
・コミュニケーションスキル

例えば、当社のビジネススキル研修では、ケースワークを通じて、仕事を進めていくうえで基本且つ必須のコミュニケーションである「報連相」を実践的に学びます。

また、専門知識は、各職種や業界で働く上で資格取得のための知識などです。入社前に知識を身に付けておくことで、入社後の早期戦力化が期待できます。

2)自組織が実施すべき内定者研修を選定する3ステップ

自組織が実施すべき内定者研修の内容は、次の3ステップで選定していきます。

1)組織全体の育成コンセプトから新入社員育成のゴールを明確にする
2)内定者研修の目的とゴールを設定する
3)内定者研修で実施する内容を企画する

順に説明します。

1)組織全体の育成コンセプトから新入社員育成のゴールを明確にする

まず、組織全体の育成コンセプトから新入社員の育成コンセプトへと落とし込み、その上で新入社員に求める姿を明確化します。大枠からゴール設定を考えなければ、組織全体の育成方針にズレが生じてしまうためです。

あるクライアント企業の例を挙げます。
その企業は【共に変わるために、一歩を踏み出す】という組織の育成コンセプトがありました。そして、そこから新入社員の育成コンセプト【「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、自分ができることを考える】を設定しました。
上記育成コンセプトを元に、新入社員の育成ゴールを設定すると、例えば次のような内容が考えられます。

「与えられた仕事だけ行うのではなく、ミスや失敗を経験しながら新規事業の立ち上げに貢献する」

 このように組織全体の育成コンセプトから新入社員の育成ゴールを明確にしていくことで、組織が向きたい方向性とあった新入社員の育成を行うことができます。

2)内定者研修の目的とゴールを設定する

次に内定者研修の目的とゴールを設定します。
新入社員のゴールを達成するために、入社式の時点でどのような状態を作りたいかを考えると設定しやすくなります。

例えば、「与えられた仕事だけ行うのではなく、ミスや失敗を経験しながら新規事業の立ち上げに貢献する」という新入社員のゴールを達成するためには、入社前までに主体的な行動を促し、基本的なスキルを身につけて、入社後早い段階で実務経験を積めるようにすることが必要だと考えられます。

そのために、内定者研修のゴールとして例えば下記のような内容が考えられます。

・入社までに内定者同士の仲が深めて組織に安心感を感じられるようにする
・仕事を行うことに対してワクワク感を持てている状態にする
・社会人としての基本マナーやルールを理解し、スタートダッシュを早める など

このように、新入社員のゴールを達成するために、入社までにどのような状態になってもらえると良いかを考えることで、新入社員のゴールに対する、内定者研修の目的とゴールを設定することができます。

●新入社員のゴール
与えられた仕事だけ行うのではなく、ミスや失敗を経験しながら新規事業の立ち上げに貢献する

●内定者研修の目的
入社前までに主体的な行動を促し、基本的なスキルを身につけて、入社後早い段階で実務経験を積めるようにする

●内定者研修のゴール
・入社までに内定者同士の仲が深めて組織に安心感を感じられるようにする
・社会人としての基本マナーやルールを理解し、スタートダッシュを早める

内定者研修の目的とゴールが設定できると、具体的にどのような内容を実施するかを考えやすくなります。

3)内定者研修で実施する内容を企画する

内定者研修の目的とゴールに適した内定者研修が実施できるように具体的な内容を企画します。

例えば、「入社までに内定者同士の仲が深めて組織に安心感を感じられるようにする」というゴールに対しては、相互理解を中心とした、チームビルディング研修を行うことでゴールを達成できます。また、「社会人としての基本マナーやルールを理解し、スタートダッシュを早める」というゴールを達成するためには、ビジネススキル・マナー研修を実施するのが良いでしょう。

このように新入社員に求めることから順番に棚卸しをしていくことで、どのような内容の内定者研修を行えばいいのかが見えてきます。

なんとなく他社と同じ内定者研修を行えばいっか、という考え方では育成の軸がなく、内定者研修が意味のある内容だったのかを判断することもできません。内定者研修の内容を検討する際は、自組織が求める人材と合致しているかを考えながら企画をしていきましょう。

3)内定者研修のスケジュール例

よくある内定者研修のスケジュール例をお伝えします。最近は内定が決まる時期が早くなったため、内定者研修も早い段階から行い、内定辞退を防げるようにすることも目的として行なっている組織が多いです。

8~10月「チームビルディングの強化」

内定辞退防止の目的も踏まえて、会社理解と同期間の関係性を良くするための研修を実施することが多いです。

11~1月「社会人としての自覚の醸成」

内定式が終わり、また卒論の提出も終わるころには、学生から社会人へ意識を変化させるような研修を実施することが多いです。社会人が目前となったタイミングで、社会や組織に求められる人材像を知ることで、自身の社会人像を確立させることができます。

2~3月「社会人スキル・専門スキルの構築」

入社目前のタイミングでは、社会人として必要なスキルや専門スキルを身につけるための研修がおすすめです。
ラーニングエージェンシー社による内定者意識調査によると、内定者の8割以上が「不安・心配」な気持ちを抱えていることがわかっています。また、内定者の不安として「自分の能力で仕事についていけるか」「しっかりと成果を出せるか」が上位となっており、内定者は自身の能力に対して不安を感じていることもわかります。

そのような不安解消のためにも、社会人として仕事をしていける自信を内定者に持ってもらう機会を作れると良いでしょう。

スケジュール例を参考にしながら、自組織にあった内定者研修を企画できるようにしましょう。

【参考】内定者インターンシップという選択肢
内定者インターンシップとは、内定後~入社までの期間に、実際の職場で働く体験をしてもらうことです。内定者研修の一環として、取り入れている企業も少なくありません。
内定者インターンシップには、短期インターン・長期インターンの大きく2種類があります。

短期インターンでよく行われる内容としては、「業務体験」と「ワークショップ型」です。
「業務体験」…社員が過去に手掛けたプロジェクトの疑似体験をしたり、仕事の一部分を切り取って体験します。実際の仕事に近い業務を体験することで、内定者がイメージしきれなかった仕事内容や、仕事の進め方を知ることができます。
「ワークショップ型」…課題に関して参加しているインターン生同士でディスカッションを行い企画を考える、というような内容を行います。

長期インターンでよく行われるのは、「実業務のサポート」です。先輩が行っている仕事のサポート業務を行います。例えば、調査、配送業務、備品整理、電話対応、書類作成などです。
実業務のサポートを通じて、よりリアルな仕事内容を理解していきます。

上記のより詳しい内容は、【人事必見】内定者インターンの設計方法と成功させる5つの鍵とはのコラムを参考ください。

4)内定者研修を成功させるために意識したいポイント

内定者研修の内容を成長させるために意識したいポイントが3つあります。

・内定者の特徴を知る
・内定者が抱える悩みや不安を知る
・内定者の負担にならないようにする

順番に説明します。

内定者の特徴を知る

内定者の特徴を理解して、自組織で活躍するために足りない部分を入社前に補うことができると、入社してから早期活躍を期待できるようになります。

例えば、弊社の独自調査によると、24年卒新入社員には下記の3つの特徴が強くみられることがわかっています。
 新入社員研修

ただ、上記内容は、世間一般の特徴として伝えているため、自組織の内定者の特徴も整理し、理解しておく必要があるでしょう。
内定者の特徴を理解するためには2つの方法があります。一つは面接の中で見えた内定者の言動から内定者全体に当てはまる特徴をを確認すること、もう一つは採用の基準を知ることです。
例えば、採用基準として例年より協調性のありそうな人を採用していた場合は、そのことを踏まえて内定者が入社後に必要となりそうなスキルを内定者研修で実施することができます。

このように特徴がわかっていると、そこから起こり得るリスクを予測することができ、入社前に対応することができます。

内定者研修は、不足部分を補うための良い機会となるため、 最近の内定者の特徴を理解した上で、内定者研修の内容を検討できるようにしましょう。

内定者が抱える悩みや不安を知る

内定者の8割以上が「不安・心配」な気持ちを抱えています。しかし、内定者研修によって内定者の不安を解消できると、内定者が組織に対して安心感やワクワク感を感じやすくなります。

内定者研修をより良くするためには、内定者がどのようなことに不安を感じているのかをリサーチして、そのことを解消できる内容を取り入れることがポイントです。

内定者が抱える悩みや不安は、調査内容を調べたり、現在の新入社員にヒアリングをしてみると良いでしょう。新入社員からどんなことに不安を感じていて、どんなことを実施してくれると嬉しかったかを収集し、内定者研修に反映できると、より良い内定者研修の内容になっていきます。

内定者の負担にならないようにする

内定者はまだ学生で、授業や卒業論文、部活やバイトなどを行なっています。そのため、過度な負担を与えすぎないように気をつけなければいけません。

内定者研修についていくために、事前に学んでいかないといけないことがあるとか、内定者研修が評価に含まれる、という場合は、内定者にとって負荷が大きく感じられる場合があります。まだ組織に所属していない状態で内定者から時間をもらっている、という意識も持って設計しましょう。
なお、内定者研修の実施時期や、課題のボリュームなどについても、内定者の状況を考えて設定するようにしましょう。

5)まとめ

本記事では、内定者研修でよく実施される内容や、自己理解にあった研修内容の選定方法、より良い研修にするためのポイントを説明しました。

内定者研修でよく実施される内容は次の5つのテーマです。

・組織と仕事内容の理解を促す
・社会人の自覚としての意識を醸成する
・内定者同士のチームビルディングを行う
・基本的なビジネスマナーを身につける
・基本的なビジネススキル・専門スキルを身につける

自組織が実施すべき内定者研修の内容については、2章で紹介した下記の流れで考えると見えてきます。
1)組織全体の育成コンセプトから新入社員のゴールを明確にする
2)内定者研修の目的とゴールを設定する
3)内定者研修で実施する内容を企画する

自組織で実施すべき内定者研修の内容がわかったら、内定者研修の内容をより良くするために次の3つのポイントを意識しましょう。

・内定者の特徴を知る
・内定者が抱える悩みや不安を知る
・内定者の負担にならないようにする

自組織にあった内定者研修の内容を実施することで、例年より内定者と組織の繋がりが強く、入社後の早期活躍が期待できそうと、人事も経営陣も感じられている状態にしましょう。

内定者や新入社員の受け入れに不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。