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次世代リーダー育成研修|目的・効果・押さえるべき3つの内容を解説

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2023/9/4更新ー2023/6/29 作成ー

「次世代リーダー研修を実施したいけど、どんな内容がよいのだろうか?」

そう感じて、本コラムにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

次世代リーダー研修は、良い意味でも悪い意味でも、組織に対してとても大きな影響を与える研修です。

そのため「何となく」ではなく、ポイントを押さえて、企画・実施していく必要があります。
世の中には、多くの次世代リーダー研修がありますが、自組織の未来に希望が持てるものを選択しましょう。

本コラムでは、次世代リーダ研修を成功に導くための「目的」「期待される効果」「具体的な内容」「事例」についてお伝えします。最後までお読みいただくと、次世代リーダーの有効性が分かり、どのように実施すればいいかもわかるでしょう。

>次世代リーダー研修に関する資料請求・お問い合わせは、コチラからお願いいたします。

執筆者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

1. 次世代リーダー研修は「より素晴らしい組織の未来を創る」ために行う

次世代リーダー研修は、より素晴らしい組織の未来を創ることを前提目的として実施します。

「そんなの当たり前では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、次世代リーダー研修の目的として良い例・望ましくない例を提示します。

◎ 良い例
・未来の組織に適切な経営者をアサインするために、次世代リーダー研修を行う
・未来の組織の経営者として必要な能力を養うために、次世代リーダー研修を行う

△ 望ましくない例
・将来的に経営陣の人数が足りなくなるから、次世代リーダー研修を行う
 → 足りないから行うのではなく、未来を見て何が必要かを考えていく必要があります
・経営陣として任せることのできる人材がいないから、次世代リーダー研修を行う
 → 適切な人材かどうかを見据えて育成を行う必要があります

当社でも、お客様からお問い合わせいただく最初の段階では、”望ましくない例“でご相談いただくことがほとんどです。しかし、この”望ましくない例“の目的のまま企画を進めると、「悪い部分を改善する」という考え方に偏り、組織としての伸びしろが小さくなってしまいます。

このように、次世代リーダー研修は「より素晴らしい組織の未来を創ること」を前提目的として置き、検討していくことが重要です。

2. 次世代リーダー研修で期待される効果は「組織の未来に対して希望が持てること」

次世代リーダー研修の実施を通じて期待される効果は、組織の未来に対して希望が持てることです。研修後、受講者・現経営者・現場社員など、それぞれが自分たちの組織の未来に希望を持てることで、組織全体が物事に対して前向きに捉えられるようになります。

例えば、研修後、以下のようなコメントがあれば、次世代リーダー研修の効果が出始めていると考えられます。

・経営者 : 「会議などでの発言内容が変わった。視座が変わった」
・現場 : 「○○さんから、中長期的な発言や全体最適の発言が増えた」

何気ないコメントのように思われますが、そういった小さな変化を見落とさず、本人たちや周囲にフィードバックしていくことで、研修効果はさらに高まります。

【参考】次世代リーダー研修の副作用
次世代リーダー研修の実施には、副作用を伴うケースがあります。なぜなら、組織の未来を創っていくことを前提目的としておくと、現状への否定や破壊が生じるためです。例えば、以下のようなコメントが出てくることもあります。

・経営者 : 「こちらから指示ししたことに対して、的外れな意見を言ってくる」
→ 経営者自身が自身の認知で決めつけていないかをまず確認する必要があります。そして、率直な意見を伝えること自体は、とても素晴らしいことです。

・現場 : 「自部署のことや、自分たちのことを考えてくれない」
→ ただコンフォートゾーン(ぬるま湯)から抜け出したくないケースもあります。

このようなコメントが生じた際は、次世代リーダー自身もそうですが、組織として対話を行う文化醸成をできると乗り越えていくことが可能です。

3. 次世代リーダー研修で取り扱う3つの内容

次世代リーダー研修の内容は、より素晴らしい組織の未来を創ることがイメージでき、希望が持てることを達成する必要があります。
具体的な内容として、以下の3つのプロセスで進めていくといいでしょう。

上記について、それぞれ説明していきます。

3-1. 現経営陣と共に、素晴らしい未来を描く

自組織の未来に対してポジティブな気持ちを持てなければ、次期経営者として積極的に関わろうという気持ちにはなれませんし、次期経営者としての当事者意識主体性も育まれません。

具体的には、経営陣との対話の場を設けるといいでしょう。当社がよく用いるのは、アプリシエティブインクワイアリー(※)という手法です。自分たちの強み・可能性が最大限解放された時に、どのような未来ができるのかを、探求します。自分たちの素晴らしい未来を描くこと可能です。

この際、「現経営陣と共に」とお伝えしているように、次世代リーダー達だけでなく、現経営陣も参加することを強く推奨します。現経営者陣の考え・想いと、次世代リーダー達の考え・想いを統合していくことで、共有ビジョン(※)が育まれます。自組織の素晴らしい未来を、共通認識として持てるようになります。

※ アプリシエイティブ・インクワイアリー
ケース・ウエスタン・リザーブ大学のデービッド・クーパーライダー教授、タオス・インスティチュートのダイアナ・ホイットニー氏により、1987年に提唱された「組織の真価を肯定的な質問によって発見し、可能性を拡張させるプロセス」。

※ 共有ビジョン
ピーター・センゲが提唱する「学習する組織」を実現する5つのディシプリンの1つ。経営者などの一部の人がビジョンを描き、そのビジョンを周りに理解させ引っ張る「ビジョン共有」では、他人ごとになりがちだと言われている。対話のプロセスを通して、当事者意識・主体性を育むものを共有ビジョンという。

3-2. 現実の課題と向き合い、経営者として必要なスキルを習得する

現経営陣と共通認識を持てたとしても、それが綺麗事で終わってしまっては意味がありません。そのため自組織の現実の課題とも向き合い、課題を乗り越えるために経営者として必要なスキルを習得していくことが次のステップになります。

経営者として必要なスキルは多岐に渡りますが、まずは、以下の2つの観点を押させて優先順位を明確にしていきましょう。

・自組織の現実的な課題を解決できるものか
・自組織の未来を創るものか

例えば、「コロナ禍や生成AIによりビジネスモデルの大変革が必要」となった場合は、今の環境に適した戦略思考・事業開発・マーケティングを学び直す必要があります。「自組織内で想定もしていなかった問題が起き続けている」という状況であれば、システムシンキングを学ぶ必要があるかもしれません。

3-3. 経営課題に取り組み、経験を積む

現実にある課題を解決するためのスキルを習得したら、実際に経営課題に取り組み、経験を積んでいくことが重要です。学んだことはすぐ活用しなければ忘れてしまいますし、何より現場の信頼も得られませんし、次期経営者としての経験も積むことができません。

具体的には、研修の中でアクションラーニング(※)を行うことをお勧めします。この際に可能であれば、次世代リーダーと共に経営陣も経営課題に取り組んでいくといいでしょう。そうすることで、経営陣から直接管理職に、自分たちの考えや想いを持って指導することができます。

※アクションラーニング
現場で実際に起きている問題に対して、グループで原因を解明し解決策を立案・実施・振り返るチーム学習方法。

4.2つの企業事例から見る 次世代リーダー研修

当社にて実施させていただいた次世代リーダー研修の2つの事例をお伝えします。

・数年後の世代交代を見据えた次世代リーダー研修【製造業(200名程度)】
・次世代リーダーが育っていないことから実施した次世代リーダー研修【コンテンツビジネス(250名程度)】

4-1. 数年後の世代交代を見据えた次世代リーダー研修【製造業(200名程度)】

一つ目の事例をご紹介します。企業概要・研修前後の変化などを下記に簡単にまとめました。

  • 項目 詳細
    業種 製造業
    企業規模 200名程度
    実施時期・方法 3年間 (オンライン)
    ※ 現在も継続中
    課題意識 将来的に経営陣の人数が足りなくなる。3代目の若い社長をフォローできる人材がいなくなる
    本研修の実施理由 組織のより素晴らしい未来を創っていくには、次世代リーダーに対して適切なスキルの習得と、経営者としての経験を積ませたい
    得られた効果 現経営陣と、次世代リーダーの目線があい、会社の未来を見据えたプロジェクトが力強く推進されている

    本事例は、「将来的に経営陣の人数が足りなくなる。3代目の若い社長をフォローできる人材がいなくなる」というご相談から企画がスタートしました。「1. 次世代リーダー研修の目的は、組織のより素晴らしい未来を創ること」でお伝えした望ましくない例です。

    話を進めていくうちに、コロナ禍で翻弄され、未来を見据えた行動ができていないのは、現経営陣であり、それが次世代リーダーに対しても伝播していることが分かりました。「自分たちも学ばなければいけない」と頭では理解していても、研修というものに対して抵抗があったため、まずは経営陣と次世代リーダーで読書会をすることになりました。

    【参考】実際に行った読書会のスケジュール

    読書会を通じて、経営陣と次世代リーダーたちの意識の変化がみられる中で、「自分たちの今と未来に必要なスキルは、ファシリテーションスキルだ」という意見がでてきました。

    そこから、約一年間に渡って、当社のファシリテーション研修に参加していただきました。現在は、研修での学びを活かし、次世代リーダー各々が社内ファシリテーターとして、新規事業の推進や組織力向上に貢献しています。具体的には、下記のようなコメントが出ています。

    ・経営者 : 「自分たちがやらないといけないはずだった中長期施策が、○○達(次世代リーダー)を中心に進んでいる」
    ・現場社員 : 「○○さん(次世代リーダー)が目標にコミットして、プロジェクトを進めている。自分たちも頑張らないと」
    ・次世代リーダー本人 : 「今までは目の前のことだけだったけど、中長期的に物事を見れるようになった」

    4-2. 次世代リーダーが育っていないことから実施した次世代リーダー研修【コンテンツビジネス(250名程度)】

    続いて、二つ目の事例です。こちらも、企業概要・研修前後の変化などを簡単にまとめました。

    項目 詳細
    業種 コンテンツビジネス
    企業規模 250名程度
    実施時期・方法 全4回
    講師派遣型(対面形式)
    課題意識 次世代リーダーが育っておらず、お互いの協力体制も弱い。このままでは、組織が崩壊するかもしれないと相談を受ける
    本研修の実施理由 次世代リーダー同士の連携を生み、全体最適の観点を持つために、次世代リーダーの育成が必要だ着考えた。
    得られた効果 部門間の横断、新サービスの企画立案の増加

    本事例も、次世代リーダーが育っておらず、お互いの協力体制も弱いというご相談から、企画が進みました。「1. 次世代リーダー研修の目的は、組織のより素晴らしい未来を創ること」でお伝えした望ましくない例です。

    こちらも企画を進めていくうちに、次世代リーダーが悪いというよりも、組織における構造(システム)が次世代リーダーのパフォーマンスを下げていることが分かってきました。

    具体的には、下記の状況が生まれていました。

    ・目先の利益ばかりを追求しているため、目の前の仕事しか見えていない
    → 短期的視点で、自部署しか見えていないため、部分最適となり、部署間の壁が高くなる
    → 部門間の協力体制が構築されず、責任の押し付け等も多くなり、成果が小さくなる
    → 成果が上がらないため、さらに自部署を中心に、目先の利益ばかり考えるようになる

    上記は、本お客様が、過去の一つのヒット商品に依存し続け、近年そのヒット商品の売上が伸び悩んだことで起きた現象でした。次世代リーダーが悪いというよりも、組織構造に問題があると言っていいでしょう。そのため、経営陣もこのことを真摯に受け止めて、まずは次世代リーダーと共に共有ビジョンの共創からスタートしていきました。

    その後、元々次世代リーダーに身に付けてほしかったチームビルディング力と、部下育成力を高める研修を行っていきました。

    アフターストーリーとしては、次世代リーダー同士で合宿研修を自発的に行ったり、また新しい商品の企画も生まれてきています。この研修を行った3年後に、次世代リーダー研修に参加したメンバーから、2名(次世代リーダー研修には6名参加)の方が、経営陣になったと連絡がありました。

    5.まとめ

    本コラムでは、次世代リーダー研修に関して、お伝えしました。
    本コラムを通して、次世代リーダー研修が組織にとって、とても大きな影響を与えるものであることを、理解いただけたかと思います。だからこそ次世代リーダー研修は、大切に扱っていただければと思います。
    次世代リーダー研修に関して、ご相談がある場合はぜひアーティエンスにご連絡ください。