入社3カ月|新入社員が抱える不安や悩みは?育成側でフォローできること

更新日:

作成日:2023.8.15

新入社員 3カ月目の状態

「新入社員の入社3カ月目は、どんな不安を抱えているのだろう?」
「入社3カ月目の新入社員は、どのような状態を目指すべきなのだろう?」

このようなお悩みをお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

厚生労働省「平成 30 年若年者雇用実態調査の概況」によると、初めて勤務した会社を辞めた人のうち、全体の5.3%が入社3カ月未満、7.2%が入社3カ月~6カ月未満で退職していることがわかっています。
また、新入社員が職場の仲間に受け入れられたと感じる(受容感)ためには、平均2.7カ月かかるという調査結果もあります。(Feldman(1977))


これらの調査からも、新入社員の入社後3カ月の期間は、丁寧にフォローする必要があると言えるでしょう。

そこで本記事では、新入社員が入社3カ月目に見られる状態について、研修でのコメントや当社のパルスサーベイGrowthの結果から要素をまとめてお伝えします。

また、入社3カ月の新入社員はどのような状態を目指すべきで、そのために組織が意識することに等もお伝えします。新入社員が3カ月目を無事乗り越えて、新入社員の成長に期待を持てるようにしましょう。

※パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施し、その推移結果から組織や従業員の状態を把握する調査手法のことです。パルスサーベイGrowthは調査を、新入社員の育成サポートやフォローに役立てられるようにし、新入社員の成長を促せるようにしています。

参考|【時期別|事例あり】新入社員フォローアップ研修の目的と内容例

監修者プロフィール

近藤 ゆみ

アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。
youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

1)入社3カ月目の新入社員によくある8つの状態

新入社員研修の場やパルスサーベイGrowthの結果から、入社3カ月目の新入社員は下記のような状態になっていることがあると言えます。

●不安・心配・周囲に申し訳なさを感じている状態
・スキルに対する心配を持っている状態
・職場の人間関係についての悩みを持っている状態
・同期と会えない寂しさを感じている状態
・この会社に居ていいのという不安を感じている状態

●安定・達成・期待・仕事のある生活に慣れを感じている状態
・できるようになってきた事があることを自覚できている状態
・仕事に前向きになれている状態

これらについて順番に説明します。

※パルスサーベイGrowthでは下記のような問いをしています。回答は毎月1回、月末に実施しています。
①私はよりよい仕事をするために学び続けている   
②遠慮せずに、周囲・上司とコミュニケーションをとれている    
③周囲・上司を巻き込むことで仕事の品質は高まっている    
④仕事において何を期待されているのかを知っている    
⑤自身やチームの目的・目標を意識することで、日々の仕事により意欲的に取り組めている    
⑥私は自組織で成長してきていると感じている    
⑦これから先、自組織で成長していけると感じている    
⑧私は自分なりの意見をもって仕事に取り組んでいる    
⑨私は自分の役割でないことも、周囲やチームのために良いと思ったことは働きかけている    
⑩最後に、振り返ってみて感じた、「自身の誇れること・申し訳なく思うこと・これから取り組んでいきたいこと」を教えてください
このうち①-⑨については1-5段階の数値で回答し、⑩がフリーコメント式の設問となっています。

周囲に申し訳なさを感じている状態

入社してから3カ月のタイミングで、周囲に申し訳なさを感じている状態になっている新入社員が多いです。入社して3カ月という時が経ったにもかかわらず、自分ではできるようになってきたことを自覚できていないと、このような状態になりやすいです。

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●今自分の覚える事で精一杯で、気が回らない事に大変申し訳なさを感じでいる。早く余裕持てるようになりたい
●申し訳なく思うことは、まだまだ先輩にサポートしていただかないとやれることが少ないこと。
●申し訳ないこと:先輩や上司の仕事を中断させたり、量を増やしてしまうこと
●申し訳なく思うことは戦力になっていないこと。
●まだまだ仕事をわかっておらず、教えられた仕事をやるので手一杯で申し訳ないです。はやく仕事に慣れて色々なことに気が付いてより多くの仕事をこなせるようにしたい。
少しずつ1人で業務ができるようになってきて、迷惑かけることも多いですがやりがいを感じてきました

早く組織に貢献できるようになりたい、という想いを持っていることから、周囲に迷惑をかけたくないという想いにつながっていることが伺えます。

新入社員がこの状態になるのは、新入社員が自身の成長に気づけていないことと、適切な目標が設定されていないことが原因となっている可能性があります。

新入社員が入社してすぐは大きな仕事を任されることは少なく、サポート業務を依頼されることが多いです。そのため、成長を自覚しにくいです。細かいところで言うと、電話の対応がスムーズになったり、資料の作成のスピードが上がったりしているはずですが、新入社員はそのことに気づいていない可能性があります。そうすると、入社してから今まで迷惑をかけてしかいない、と言う認識になり、迷惑をかけてしまっている、というような感情が出てきます。

また、適切な目標が設定されていないことで、迷惑をかけてしまっていると感じやすくなっている可能性もあります。毎月、適切な目標があってそれを達成できていると、成長できていることに意識が向きやすくなります。そうすると申し訳ないという気持ちより、来月も前向きに頑張るという気持ちが出てきやすいためです。

このように、新入社員は入社3カ月で「周囲に迷惑ばかりかけてしまっている」と感じていることがあります。
そして、それは新入社員が自身の成長に気づけていないことと、適切な目標が設定されていないことが原因となっている可能性があります

そのため、このような状態にある新入社員には、成長している点を適宜フィードバックしたり、毎月の目標を明確にして、求められていることはクリアしている感覚を持てるようにしましょう

スキルに対する心配を持っている状態

入社してから3カ月のタイミングで、スキルに対する心配を持っている状態の新入社員も多いです。入社してから今まで、研修やOJTなどでスキルを学ぶ機会があったにも関わらず、その学びを活かせていないと感じているときに起こります。

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●申し訳ないところはホウレンソウがまだしみついていないところ。
●申し訳ないことは自分の確認不足が多いこと、初手の行動が遅いこと。
●思考力が足りないと感じるので、様々なことを経験して数を多くこなしていきたい
●申し訳なく思うこと:どうしても作業の進捗が遅れてしまうこと

自分でできていないことを自覚できていることは素晴らしいです。何ができていないのかがわかっていたら、スキルを活かせない背景や対策を取ることができるためです。

ただ、新入社員がこのような状態になっている原因としては、スキルを身につけるために具体的にどのような行動をするかまで落とし込めていないことが考えられます。

例えば、報連相が身についていないことを自覚しているものの、具体的にこういうときに報告しにいくとか、1時間に1回は報告に行くなどやることが明確になっていないと、なかなか行動に移すことはできません。
そのため、新入社員が苦手意識や力不足を感じているスキルについては、そのスキルを活かすために具体的にどうするのかという行動目標を一緒に定めるようにしましょう。

また、OJTトレーナーは研修でどんなことを学んでいるのかを確認して、学んだことを思い出せるような教え方をしたり、学んだことを活かせるような仕事を任せると、スキルが身につきやすくなります。

このように、新入社員は入社3カ月で「スキルが身についていない」と感じていることがあります。それは、スキルを活用する方法やタイミングなどが明確になっていないことがが原因となっている可能性があります

そのため、このような状態にある新入社員に対しては、スキルが身に付くように行動目標を一緒に設定したり、意識的にスキルを意識できるような仕事を任せるようにしましょう。

【参考コラム】
新入社員育成における5つの課題と6つの解決策|活躍できる新入社員を育てよう

職場の人間関係について悩みを持っている状態

入社してから3カ月のタイミングで、職場の人間関係について悩みを持っている状態の新入社員もいます。社会人になると、自分が関わる人を選ぶことはできず、決められた人間関係の中でうまく仕事をしていく力が必要です。しかし学生まではそのような経験を多くしてこなかったため、どのように関係性を築けばいいのかわからなくなり悩みを持つ方もいます。

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●協調性が乏しいと個人的に思います
●周囲が忙しいと、つい上司との共有を疎かにしてしまう。変な気を使わずに、共有のやり方を、必要分だけ適宜上手にできるようになりたい。

これらの悩みは関係性の構築ができていないことが原因と考えられます。

周囲と関係性を築くことの大切さを理解し、他者を理解しようとしないと、いつまで経っても関係性を築くことができません。
また、新入社員が先輩や上司と関係性を築けていないと、報連相をするタイミングを伺う、という状況が生まれてしまい、仕事を前に進めるスピードが遅くなってしまいます。

そうならないようにするためには、関係性の重要性を理解し、その上で、自己理解、他者理解を学ぶことが大切です。

関係性の重要性については、MIT組織学習センター共同創始者ダニエル・キム氏が提唱した成功循環モデルで説明できます。

「関係の質が高まれば、思考の質が高まり、行動の質が高まり、結果の質が高まる、そしてさらに関係の質が高まる」という好循環が生まれます。ただし、「関係の質が低くなれば、思考の質が低くなり、行動の質が低くなり、結果の質が低くなり、そしてさらに関係の質が低くなる」という悪循環も生まれるということを表しています。

このことを理解した上で、自己理解、他者理解を学びます。

自己理解では、自分がどのような価値観を大切にしていて、その価値観によって周囲にどのようなポジティブ・ネガティブな影響を与えているのかを知ります。

他者理解では、自身と他者とでは認知が異なる場合があることを知り、自分の枠組みのみで決めつけ内容にすることを理解します。

自己理解と他者理解を行えるようになると、自分と他者の違いを理解しながらコミュニケーションをとることができるようになるため関係性の構築に役立ちます。

このように、新入社員は入社3カ月で関係性に関する悩みを抱えていることがあります

これは、社会人で求められる関係性について理解しきれていないことや関係性の築き方を知らないことが原因と考えられます。新入社員が周囲との関係性を築けるようにするために、関係性を構築する重要性と、そのための方法を教えることが大切です

【参考】「学生」と「社会人」の5つの違い|ワークを通じて違いを理解するためのポイント

同期と会えない寂しさを感じている状態

6月あたりに研修を行うと、同期と会えない寂しさを感じている状態も感じます。入社してすぐは、同期が一緒になって研修を受ける時間が多いですが、配属されると同期と会う機会がなくなってしまうためです。知り合いがいない配属先にいると、助け合える仲間の同期と会いたくなることもあるようです。

同期と会えなくて寂しいという状態は、配属先で関係性を築けていないことが原因と考えられます。そのため、配属先のメンバーでランチに行く機会を設けたり、お互いのことを知るためのインタビューを行うことをお勧めします。

相互インタビューは、関係性を築いていきたい人と価値観に関する設問について相互にインタビューを行うことで、お互いに大切にしている想いや背景を理解し合うことを目的としています。
お互いが大切にしている価値観を理解し受け止めることができると、接し方を工夫することができるようになるため関係性が構築しやすくなります。
具体的な設問内容や実施方法については、当社の新入社員研修を導入いただいたお客様にオンボーディング支援ツールとしてお渡ししていますこのように、新入社員は入社3カ月で「同期と会えなくて寂しい」と感じていることがあります。これは、配属先で関係性を築けていないことが原因と考えられます。そのため、お互いを理解し合えるような機会を作ることが大切です。

この会社に居ていいのかという不安を感じている状態

入社してから3カ月のタイミングで、この会社に居ていいのかという不安を感じている状態の新入社員もいます。学校の同級生と話をしているときに、周囲と自分の環境や仕事の差を感じて不安になるようです。

例えば、大学の同期はもうこんな仕事をやっているって言ってたのに、自分はこれしかやらせてもらっていない、という状態からこの会社に居続けていいのか不安になることもあります。他にも、自分の会社の労働環境が良くない気がすると感じた時も不安に感じます。

このような状態の時は、面談などで新入社員の不安を出してもらい、それに対する施策を一緒に考えていくことが求められます。そのための方法として新入社員にメンターをつけるという方法があります。新入社員にメンターをつけることで、組織への安心感をもたらして成長を促すことができます。新入社員が仕事の中で感じるネガティブ感情を解消し、ポジティブ感情を一緒に共有することで、新入社員の精神が安定し、仕事に集中することができるためです。

メンターについての詳細は「新入社員にメンターをつけることで組織への安心感をもたらし、成長を促す」のコラムをご覧ください。

このように、新入社員は入社3カ月で「この会社に居ていいのか不安に感じる」と感じていることがあります。これは、他の会社と比較して自分の選択が誤っていたのではないかという不安が起きていることが原因と考えられます。そのため、トメンターや外部パートナーなど新入社員が本音で不安を出せる人と対話をする機会を作ることが大切です

【参考】
新入社員が抱える4つの不安と解決策│仕事に集中でき成果をあげる環境づくり
使えない新入社員|29の特徴と原因、対処法を詳しく解説!

仕事のある生活に慣れを感じている状態

入社してから3カ月の頃に、仕事のある生活に慣れを感じている状態になれた新入社員もいます。入社してすぐは、営業時間中ずっと仕事をすることや、初めましての人との関係性作りなどで体力的・精神的なしんどさを感じている方が多いです。それが3カ月の時間が経って、ようやく仕事の体が環境に慣れてきたと感じているようです。

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●やっと通常の業務やスケジュール感には慣れてきましたが、自分に何ができるかを考えて行動するというのがまだまだだなと感じます。また少しずつ慣れてきている分、自分にもわかる業務からこなすことでまだ分かりきっていない業務に挑戦することから逃げている気がします。初心を忘れず怖がらずに挑戦していきたいです。

新入社員が早い段階で仕事のある生活に慣れてもらうようにするためには、オンボーディングを丁寧に行うことが必要です。

オンボーディング(on-boarding)とは、学術の世界では「新入社員の適応を促進する組織エンゲージメントによって従事される、公式、非公式な訓練、プログラム、政策」と定義されています。(引用:尾形真実哉氏「組織になじませる力」)
より分かりやすくお伝えすると、新入社員の受け入れ~定着・即戦力化のプロセスのことです。

新入社員の受け入れて定着させるためには、下記の3つのことが必要とされています。

・仕事に必要なスキル・知識を習得すること
仕事を行うために必要なスキルや知識を、研修などのOff-JTやOJT、自己学習によって身に着ける。

・組織の社風や考え方、ルールを受け入れること
組織の雰囲気(社風・人間関係)や考え方(価値観)や文化(社員が共通に行っている行動やルール・暗黙知)を受け入れて馴染む。

・自身の役割を理解・受け止め、キャラを確立していくこと
組織において自身に期待されている役割を理解し、既存メンバーとのやりとりや指導を通して役割を全うしていく。組織の中で自分の存在価値を見出している。

このように、新入社員は入社3カ月で「仕事のある生活に慣れてきた」と感じていることがあります。これは、新しい環境に慣れて、ストレスが落ち着いている状態と考えられます。新入社員が早い段階で仕事のある生活に慣れてもらうためにオンボーディングを丁寧に実施することを意識することが大切です。

【参考コラム】
新入社員のオンボーディングで必要な3つのポイントと、効果的なツールの活用法

できるようになってきた事があることを自覚できている状態

入社してから3カ月のときに、できるようになってきた事があることを自覚できている状態の新入社員もいます。入社してすぐは、わからないことだらけで、何もできない状態です。それが3カ月のうちに頻繁に行う業務や仕事の進め方などに慣れてきたと感じているようです。

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●4月には分からなかったことが徐々にできるようになり、また任せてもらえる仕事の種類も多くなり、少しは成長できてるかなとは思う。今までは、全部が初めての仕事だったので、慣れることで精一杯という段階だった。しかし、今後は2,3回目と同じ業務も増えてくると思うので、初回から改善させて取り組みたい。
●5月以上に、自分の役割を把握できるようになってきているが、まだまだ知らないことも多く、できないことも多いので、1つ1つ学んで、できるようにならないといけないと感じている。
●自身の誇れることとして、上司に質問すべき内容と自分で模索しながらやるべき業務を分けられるようになったと感じています。入社当時は全て聞いて業務に当たっていましたが、現在はそうでなくなりました。
●自身の中で誇れることは徐々に自分でできることも増えてきたが、その中でミスをしてしまうこともあるので、申し訳なく思う。同じミスを繰り返さないように改善しいきたいと思う。
●少しずつ1人で業務ができるようになってきて、迷惑かけることも多いですがやりがいを感じてきました

このコメントでもそうですが、新入社員が自身で成長していると感じられるのは、技術的成長に焦点が当たっていることが多いです。技術的成長というのは、主にスキルに関する成長を意味します。
例えば、知識を習得したとか、請求書の作成ができるようになった、打ち合わせでヒアリングができるようになったなどです。

しかし、成長には2種類あり、もう一つの精神的成長も重要な成長の要素です。精神的成長とは、仕事に対するモチベーションや仕事の意義を高めることを意味します。
例えば、仕事に対して責任を持って行動するようになったとか、自分ごととして捉えられるようになったり、主体的に行動できるようになることなどです。

技術的成長と精神的成長は、お互いがお互いの成長のために影響を与え合っています。技術的成長と精神的成長そのため、技術的成長だけでなく、精神的成長の部分についても、成長したことを新入社員が実感する必要があります。

新入社員は、自身で精神的成長を感じることができていないことが多いため、人事やトレーナーから見た精神的成長の観点を伝えてあげることが、成長を促すために重要です。

このように、新入社員は入社3カ月で「できるようになってきた事がある」と感じていることがあります。これは、主に技術的成長においてできるようになったことを自覚している状態です。しかし、精神的成長については自覚できていないことが多いため、その点については、人事やトレーナーなどからフィードバックをしてあげましょう。そうすることで、さらに技術的成長も促されます。

【参考コラム】
新入社員が成長したことにはズレがある|新入社員自身と人事・トレーナーの差とは!?

仕事に前向きになれている状態

入社してから3カ月のタイミングで、仕事に前向きになれている状態の新入社員もいます。入社してすぐは、組織に馴染めるか、仕事についていけるか、周りの人との関係性を築けるかなど不安の感情が大きいです。それが3カ月のうちにそれらの不安が解消されると、仕事に前向きに向き合うことができるようになっています

実際のコメントとしては、次のようなものがありました。

●誇りに思うことは前向きであること。
●誇れること:向上心をもって取り組むこと
●業務のパフォーマンスを上げていきたい、部署間のずれをなくしたい
●上司の話し方・立ち居振る舞い・仕事の仕方等、全てが完璧に見え自分の出来なさを実感しています。ですが、新人は新人なりに「良い上司」が近くにいるからこそテクニックを盗んだり、少しでも近づけるように努力していきたいです。
●せっかく会社に入ったからには上を目指して頑張っていきたいという意識を持っています。IT業界において誰から見てもわかる周りとの差は資格だと考えています。なのでこれから取り組んでいきたいことは資格取得です。(今年はITパスポート、基本情報技術者)
●自分は技術的な一面に強いことが分かった。得意分野を伸ばしていきたい。

仕事に前向きなれている理由としては、以下のことが考えられます。

・仕事に楽しさを感じられている
・理想の人や自分のありたい姿がある
・自分が周囲にポジティブな影響を与えている自覚がある

これらを意識しやすくするためには、新入社員の特徴を理解し、特徴に適した仕事や育成を行うことが大切です。当社では、リーダーシップの研究を行う中で市場調査を行い、リーダーシップの発揮の仕方を10のタイプに分けました。 その10のタイプがこちらです。

①自身が先頭に立ち、「率先力」・「決断力」をもって、チームを導いていく
②「慎重さ」・「繊細さ」をもって、チーム・メンバーの活動を支えていく
③「アイデア」・「発想」・「創意工夫」で、自身と周囲の行動を活性していく
④「協調」・「調和」を大切にし、自らの働きかけでメンバーの協働を促していく
⑤「達成志向」と「行動力」を武器に、自身またはメンバーを導いていく
⑥ 相手の「納得」と「共感」を得る為の、適切な「コミュニケーション」を発信していく
⑦「課題」を「創出・分析」し、解決のための「思考」を積み上げていく
⑧「俯瞰」した、かつ「複数の視点」から事態・状況を捉え、物事を適切に進めていく
⑨「知識・知恵」または「知的好奇心」をもって、自身とメンバーの環境を切り開いていく
⑩ これから先、未来に起きることを「先読み」し、「周到な手配・準備」を行う

学術的にはリーダーシップとは、『「望ましい状態(目標やビジョン等)」に向けて、周囲に「影響」を与える行動・振る舞い』と定義をされることが主流になっています。
これらのリーダーシップの特徴をもとに、新入社員の強みを発揮し、可能性を解放していけることが大切です。

このように、新入社員は入社3カ月で「仕事に前向きになれている」と感じていることがあります。これは、仕事をすることで自分が嬉しくなるようなことや、周りにポジティブな影響を与えられていることを自覚している状態です。新入社員の強みを発揮し、可能性を解放していけるように、新入社員の特徴を理解して、それぞれの特徴に適した仕事や育成を行えるように意識しましょう。

【参考コラム】
【管理職・人事必見】新入社員10タイプ別の特徴と、育成ポイント

新入社員が入社から3カ月のときにどのような状態にあるのか、そしてそのためにできることをお伝えしました。

2)新入社員が入社3カ月の段階で目指す状態とは

当社が考える新入社員が入社3カ月の段階で目指す状態は、次の3つが達成できている状態です。

・組織風土や自身への期待を理解して自分から馴染もうとしている
・仕事を進めていく上で基本的な知識・スキルを習得している
・周囲と主体的に関わっている

この状態をつくれていると、新入社員が組織に定着していて、これかの成長に期待ができるようになります。この3つは、1章でもお伝えしていた、新入社員を受け入れて定着させるために必要とされている下記の3つの要素から設定しています。

・組織の社風や考え方、ルールを受け入れること(文化的社会化)
・仕事に必要なスキル・知識を習得すること(職業的社会化)
・自身の役割を理解・受け止め、キャラを確立していくこと(役割的社会化)

組織によってゴールが異なるため、ズレがある可能性はありますが、上記の3つことがクリアしていると良い状態と考えて良いでしょう。具体的に説明します。

組織風土や自身への期待を理解して自分から馴染もうとしている

組織風土や自身への期待を理解して自分から馴染もうとしている状態を目指したいです。この状態になっている新入社員は、早い段階で組織に馴染むことができ、組織に定着しやすくなるためです。そうすると、離職も起きずらくなります。

例えば、一人で成果を出すことよりチームワークを大切にしている組織風土を持っている組織にいる場合を考えます。その場合は、新入社員が自らコミュニケーションをとりにいくということが起きていると良い状態だと言えるでしょう。
他にも、チームで目標を達成するために、新入社員が自分でできる資料集めを積極的に行っている様子が見られると、組織からの期待を理解して応えようとしていることも感じます。

このように、新入社員が入社3カ月の段階で、組織風土や自身への期待を理解し、自ら積極的に馴染もうとする姿勢を持つことは、組織への適応力やチームへの貢献度を高め、今後の成長に期待ができる状態になっています。

仕事を進めていく上で必要な知識・スキルを習得している

仕事を進めていく上で必要な知識・スキルを習得している状態を目指しましょう。この状態になっている新入社員は、業務を進めることができ、それによって自分に自信を持てるようになるためです。また、これからも成長することができると自分に期待できるようにもなります。

例えば、仕事を進めていく上で重要な報連相を仕事で活かせることで、仕事を進めることができるようになったことを実感できます。他にも、営業であれば自社サービスを一通り説明できる知識を持てていることで、お客さんの質問に答えることができると、自信に繋がります。

このように、新入社員が入社3カ月の段階で、仕事を進めていく上で必要な基本的な知識・スキルを習得していることは、効率的な業務遂行や適度な自信の向上に寄与します。仕事の基礎をしっかりと築くことで、今後の成長にも期待することができます。

周囲と主体的に関わっている

周囲と主体的に関わっている状態を目指しましょう。この状態になっている新入社員は、周囲のメンバーと良い関係性を築けるようになるためです。

新入社員が主体的に周囲とコミュニケーションを取ることで、チーム内での協働が活性化し、チームが一体となって仕事を行うことができます。また、新入社員が周囲の人に関心を持って、それぞれの価値観を理解しようとすることで、お互いが気持ちよく働ける状態を作れるようにもなっていきます。

このように、新入社員が入社3カ月の段階で周囲と主体的に関わることは、チームワークの向上や職場適応の促進に寄与します。積極的なコミュニケーションを通じて、良好な人間関係を築くことで、今後も業務が円滑に進行していくことを期待できるようになります。

新入社員が入社3カ月の段階では、組織に馴染めていて、基本的な仕事の基礎が出来上がっている状態になっており、良い関係性を築くことができそうだと思える状態を目指しましょう。

3)目指す状態に向けて、組織が意識すべき7つのこと

新入社員が入社3カ月で目指す状態に近づけるよう、組織として意識すべき7つのことをお伝えします。

1)自組織のルールやカルチャーを知る機会を作る

自組織のルールやカルチャーを新入社員が知れる機会を設けましょう。組織風土や自分への期待を理解するために必要です。

ルールについては、事前に資料にまとめておいて、いつでも見返すことができる状態になっていることが望ましいです。
自組織のカルチャーについては、ストリーテリングなどで会社創業の思いや、これから目指したいところなどについて語ってもらうことをお勧めします。自組織にいる人にとっては当たり前のためどれがカルチャーかが言語化できていないことも多いためです。

ストーリーテリングとは、自身の経験や想いをオープンに、且つ人間味を持ってストーリーとして伝える方法です。抽象的な単語や情報を羅列するよりも相手の記憶に残りやすく、得られる理解や共感が深くなります。スタンフォード大学 Jennifer Aaker教授によると、ストーリーで話す方法と論理的・数値的に話を伝える方法とでは、人の記憶の残りやすさに最大22倍差が生じるとの研究結果もあります。

話を聞いてその後新入社員同士で対話の機会を設けることで、組織がどういうことを大切にしているのかや、組織の価値観、目指すところなどを知ることができます。

2)適切な目標を設定して新入社員も理解できている状態にする

適切な目標を設定して、新入社員も理解できる状態にするようにしましょう。そうすることで、新入社員は組織から何を期待されていて、何をすればいいのかが明確になるためです。
自分の役割を理解できていると、新入社員は主体的に動きやすくなります。
自律自走を促す新入社員の育成計画は、次の5つのステップで作成します。

詳しい内容は「新入社員の育成計画に必要な5ステップ│【サンプルあり】迷いを無くし、いち早く一人前の社会人へ」のコラムをご覧ください。目標は、達成したかが明確になるように、ジョージ・T・ドラン氏が提唱したSMARTの法則にしたがっていることがポイントです。

3)学習機会を作り、学んだことを仕事で活かせる状態にする

学習機会を作り、学んだことを仕事で活かせる状態にできるようにしましょう。新入社員は知識やスキルを学んで仕事で活かせるようになることで、自信を持てるようになり、仕事に対して前向きに取り組めるようになるためです。

学習は研修やeラーニングなどの機会を作り、そこで学んだことをOJTで身につけ、活かせる状態にしていきます。
例えば、ロジカルシンキングについて研修で学んだという場合を考えます。その場合は、OJTで育成する中でも、「これについてロジカルシンキングで考えたらどうなる?」という問いを投げてみたり、新入社員からのアウトプットに対して「ロジカルシンキングで考えると、この要素が足りないと思うよ」などと意識的に学んだことを使えると良いでしょう。そうすることで学びが定着していき、知識やスキルを使いたいときに使えるようになっていきます。

4)新入社員の意図を確認してから指導する

新入社員の言動に対して意図を確認してから指導を行うようにしましょう。先輩や上司から見ると「なんでそんなことをするの?」と思うことに対しても、新入社員にとっては自分なりに考えて動いた結果だからです。新入社員の意図を確認せずに指導をすると、新入社員の主体性を妨げることになります。

例えば、依頼していた資料作成について、事前にすり合わせた内容と異なる資料を新入社員が提出してきたとします。その際に、「なんですり合わせた通りに作業してくれなかったの?」と注意から始めてしまうと、新入社員は自分で考えたことを否定されたと感じてしまい、その後、主体的な言動が制限されてしまう可能性があります。

そうならないようにするためにも、「この内容になった意図を教えてもらえる?」と確認するところから行いましょう。そして、「自分なりに考えて行動してくれたことは嬉しいけど、予定していたものと異なる内容だったから、他の資料と合体させたときに違和感が出てきてしまうんだよね。今度からは、自分なりに考えたことについて、事前に確認してから進めてもらえると助かります。」というようなメッセージを伝えます。

そうすることで、新入社員の主体性を妨げることなく適切に促すことができます。

5)新入社員が安心して、挑戦できる環境を作る

新入社員が安心して、挑戦できる環境を作るようにしましょう。失敗したらどうしよう、という不安は新入社員の主体的な言動を妨げるだけで何も変化を促しません。そうならないためにも、新入社員が主体的に挑戦できる安心のある環境を作ることが大切です。

そのためには、挑戦したという事実とそのことで生じた出来事に対するフィードバックを分けることをお勧めします。

よくお話を伺うのが、挑戦してほしいと言いながらも、挑戦して失敗したら失敗したことに対してネガティブフィードバックだけして再度挑戦を求めるということです。しかしネガティブフィードバックしかされないと、挑戦する意欲がなくなります。
そのため、挑戦したこと自体に対してポジティブフィードバックを行うことを忘れないようにしましょう。そうすると、挑戦することは認められていることを感じることができます。

挑戦していることのため、失敗する可能性は高いです。そのときに失敗したことに対してのネガティブフィードバックやアドバイスに加えて、挑戦したことに対するポジティブフィードバックを行うことで、新入社員が安心して挑戦できる環境を作りましょう。

6)既存の社員同士で良い関係性を築いておく

既存の社員同士で良い関係性を築いておくようにしましょう。元々良い関係性があると、新入社員もその空気感に触れて良い関係性を築きやすくなるためです。

例えば、週次のミーティングや情報共有の場を設け、意見交換やプロジェクトの進捗報告を通じてコミュニケーションを深めることも一つの方法です。他にも、ランチや飲み会、スポーツイベントなどカジュアルに交流を深める方法もあります。

既存の社員同士が良い関係性を築けている状態で、新入社員を迎え入れられる状態を作りましょう。

7)新入社員の状況を定期的に確認する

新入社員の状況を定期的に確認できるようにしましょう。新入社員の変化に早く気づき、タイムリーにフォローすることで、目指す状態に近づけることができるためです。

そのための方法として、毎月の面談や1on1、パルスサーベイの実施などがあります。面談や1on1を現場で行ってもらう場合は、現場がすぐに実施できるような指導やテンプレートを人事で用意しましょう。現場に任せっきりにしておくと、雑談や業務指導だけで終わってしまう可能性があります。また、面談や1on1が終わったタイミングで人事から新入社員の状態を確認することも忘れずに行いましょう。

パルスサーベイで行う場合は、毎月の数値やコメントを見て、変化を観察します。
パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施し、その推移結果から組織や従業員の状態を把握する調査手法のことです。

変化が大きい場合や、数値が低い状態が続いていると、何かしら不安や悩みを抱えていることが多いです。新入社員に声をかけて、都度フォローを行いましょう。そうすることで、新入社員が目指す状態に向かえるようになります。

これらのことを意識して新入社員が入社3カ月で目指す状態になるように、組織としてできることは実施していきましょう。

4)まとめ〜アーティエンスでは新入社員を受け入れる体制創りをサポート〜

本記事では、新入社員が入社3カ月目で感じている状態について、研修でのコメントや当社のパルスサーベイGrowthのフリーコメントから要素をまとめてお伝えしました。新入社員が入社から3カ月のときの状態は下記のようになっています。

●不安・心配
・周囲に申し訳なさを感じている状態
・スキルに対する心配を持っている状態
・職場の人間関係についての悩みを持っている状態
・同期と会えない寂しさを感じている状態
・この会社に居ていいのという不安を感じている状態

●安定・達成・期待
・仕事のある生活に慣れを感じている状態
・できるようになってきた事があることを自覚できている状態
・仕事に前向きになれている状態

当社が考える新入社員が入社3カ月の段階で目指す状態は、次の3つが達成できている状態です。

・組織風土や自身への期待を理解して自分から馴染もうとしている
・仕事を進めていく上で基本的な知識・スキルを習得している
・周囲と主体的に関わっている

この状態をつくれていると、新入社員が組織に定着していて、これかの成長に期待ができるようになります。

新入社員が入社3カ月で目指す状態になるように、下記の7つのことを意識しましょう。

・自組織のルールやカルチャーを知る機会を作る
・適切な目標を設定して新入社員も理解できている状態にする
・学習機会を作り、学んだことを仕事で活かせる状態にする
・新入社員の意図を確認してから指導する
・新入社員が安心して、挑戦できる環境を作る
・既存の社員同士で良い関係性を築いておく
・新入社員の状況を定期的に確認する

アーティエンスでは、人事と現場の双方が協力しあい、新入社員を受け入れる体制創りを、適切なツールを用いながらサポートします。組織の状態に合わせて適切なツールや施策をご提案させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。新入社員が入社3カ月目を乗り越えて、その後の成長も期待できる状態を作りましょう。

参考|【時期別|事例あり】新入社員フォローアップ研修の目的と内容例