2023/2/22作成ー
新入社員は何に成長したと感じているのだろうか…
新入社員が自身で成長を感じられておらず、モチベーションが低下しているように感じる…
新入社員が成長したことを人事やトレーナー目線から何か伝えてあげたい…
このような思いを持って、この記事に辿り着いたのではないでしょうか。新入社員は、日々の仕事についていくことが精一杯のため、意識的に振り返る時間を取らない限り、成長したことに気がつくことが難しいです。そして、成長実感がないと、成長予感も育まれず、退職リスクが出ることがデータでも出ています。
※ 当社、「優秀な若手ほど辞めてしまう会社で何が起きているのか~中堅・中小企業の未来をひらくために必要なアプローチを考える~」セミナー資料より抜粋
また、当社が1月に実施している成長力強化研修の中で、9ヶ月を振り返る機会を設けているのですが、その研修で、下記のようなコメントがありました。
・自分の成長が正直実感できないことに不安を覚えていましたが、業務をこなすこと自体が成長につながっているのだということに気づきました。
・目標としたい姿はあるのに、それが今自分で思っている課題と本当に結びついているか考えたり、具体的にどう行動すればその姿は実現できるか考えることができ、普段ではしない反省ができて良かったと思いました。
・自分を振り返る時間が多く取られていたため、これまでの業務や学び・経験、失敗までを整理する時間となった。
このように、新入社員は日々の業務の中では成長したことを実感できていません。新入社員が成長したことに気がつくためには、振り返りの時間を設けるということが必要になる、ということです。
ただ、新入社員自身で振り返ると、成長したことは技術的成長に焦点が当たりやすいです。技術的成長というのは、主にスキルに関する成長を意味します。
例えば、知識を習得したとか、請求書の作成ができるようになった、打ち合わせでヒアリングができるようになったなどです。 しかし、成長には2種類あり、もう一つの精神的成長も重要な成長の要素です。精神的成長とは、仕事に対するモチベーションや仕事の意義を高めることを意味します。
例えば、仕事に対して責任を持って行動するようになったとか、自分ごととして捉えられるようになったり、主体的に行動できるようになることなどです。 技術的成長と精神的成長は、お互いがお互いの成長のために影響を与え合っています。
そのため、技術的成長だけでなく、精神的成長の部分についても、成長したことを新入社員が実感する必要があるのです。
そこで今回は、新入社員が自身で感じた成長したことと、当社が研修を通して感じた変化や人事・育成トレーナーから見て新入社員が成長したことをお伝えします。この内容を見ることで、新入社員と人事・トレーナーがお互いに感じている成長のズレを認識し、技術的成長と精神的成長という2つの視点から新入社員自身の成長実感を促せるようにしましょう。
目次
新入社員が自身で感じる「成長したこと」は、業務遂行力とコミュニケーションという技術的成長の2点でした。パルスサーベイGrowth2022年12月のフリーコメントの中から、成長したことについて触れられているコメントを選出した内容は以下の通りです。(コメントの内容をそのまま記載しています。)
・業務自体は慣れてきて効率よく仕事ができるようになってきました。
・仕事をする上で、以前は見落としていた細かい部分に気づくことができるようになってきた。
・簡単なものではあるが、顧客からの問い合わせ対応を一人で完結できるようになった
・お打ち合わせに苦手意識がありましたが、回数を重ねるたびに話すことへの抵抗は少なくなったかなと感じます。
・以前より、周囲に質問を積極的にできるようになった。
・自分の意見をうまく伝えられるようになってきて、仕事が円滑にこなせるよう実感している点。
・仕事していく中で、スタッフ同士で話し合うことを大切にしています。話し合う時間を取ることで意思の疎通がきちんとでき、同じ方法を向いていけます!
・上司・先輩とのコミュニケーション積極的に日々取り組んで意識づけができるようになってきました。
※ パルスサーベイGrowth
・期間:2月24日〜2023年1月7日の回答の結果
・対象者:4月に入社して9ヶ月目の新入社員(n=69/企業数11)
業務遂行力については、以前できなかったことができるようになったり、仕事にかかる工数が短縮されたりと、自身でも変化を感じることができることから、成長したこととして捉えやすいです。また、コミュニケーションについても、毎日行うもののため、自身の感覚の変化を感じ取ることが多く、成長したこととして捉えられています。
ただ、精神的成長に関するコメントはありませんでした。ここから、新入社員は自身で精神的成長を感じられていないことがわかります。新入社員が、自身で実感できている「成長したこと」は、業務遂行力とコミュニケーションの技術的成長に関する内容であることがわかりました。
当社が、新入社員のフォロー研修を行った際に「新入社員が精神的成長で成長したこと」、そして人事や育成トレーナーから見て「新入社員が精神的成長で成長したこと」は大きく分けて次の4つあると考えています。
これらは全て精神的成長に焦点が当たった内容になっています。4つの成長について詳しく説明します。
4月に入社したときは、「社会人になったら自由が奪われそうだから憂鬱な気分」などと話していた新入社員が今では、自分の仕事について課題を感じ、悩んでいる様子を見ます。その様子から、社会人としての自覚を持って取り組めるようになっていることに成長を感じます。
2023年1月に実施した研修の中でも、「後輩が入ってくることを考えると、先輩社員として恥ずかしい行動は見せられない」「上司への感謝が強い。結果が出たのは、上司のおかげ」など社会人・組織人として自覚が高まっていることが伺えました。仕事をただこなすのではなく、自分ができる最大限のことを提供できるようになりたいという想いを感じることができました。
4-6月あたりまでは、とにかく言われたことをやるので精一杯な新入社員でしたが、7月あたりから、「自分一人でも対応できるようになりたい」、「必ず目標達成する」、「お客さんから感謝の言葉をもらって嬉しかった」など、仕事に責任を持っているからこそ出てくる言葉を見聞きするようになりました。
7月頃からは「自分だけの目線」から、「周囲への目線の広がり」が見えます。
例えば、2022年7月のパルスサーベイGrowthのコメントをみると「自分の役割に自身の意見や考えをもって取り組むことができているが、自分の役割を果たすことが精一杯で周りや自分以外のことに目を配ることができていないので、自分以外のことにも意識的に取り組んでいきたいです。」というようなコメントが出始めていました。
ここからも、自利利他の枠組みが広がっていくことが分かります。下記図の職場まで広がりはできているのではないでしょうか。
始めの頃は、自分の意見を持つことの難しさを感じていましたが、入社から9ヶ月が経つと、主体的に行動したからこその失敗や難しさを感じている様子を伺えます。例えば、「自分が相手のためにと思ってやったことで、迷惑をかけてしまった」「〇〇さんが忙しそうだったから、声をかけて手伝えることを確認した」などです。
当社でご支援している化粧品メーカーの新入社員の方の中で、特に精神的成長が伺えた方がいました。
【新入社員の方】
性別:男性
部署:営業
入社当時は、勤勉さはあるものの、向上心ややる気が感じられなかった方が、その9ヶ月後に、自発的に先輩に相談しにいったり、仕事で成果を上げることを意識した行動が見られるようになりました。
「向上心ややる気が感じられない」というのは、例えば、先輩との営業同行が早めに終了したので、「他店を視察してから帰ったら?」と上司が提案したところ、「別に大丈夫です」と断り、帰宅してしまった。というようなことがありました。言われたことはやるが、そうでないものはやらない、というように、向上心が感じられていませんでした。
しかし、9ヶ月経った今では、営業に役立てられるようにと、自らで積極的に先輩に相談しに行ったり、自発的にSNSマーケについて学ぶということを行っています。言われたことしかやらなかった入社時と比べて、大きな変化です。
社会人・組織人として、与えられた以上のことをやりたいという自覚や当事者意識がありますし、自分が任されたことに対して応えたいという仕事への責任感も感じます。また、誰から言われたことでもなく自ら動くという主体性や、自分さえ良ければ良いと考えていた入社時から、組織のことを考えられるようになっており、視点・視野の拡大も感じられます。
このように、新入社員は、技術的成長だけでなく、次の4つのような精神的成長もしています。
しかし、この方のパルスサーベイGrowthのコメントをみると、次のような内容でした。
・段々と業務に慣れてきたので継続していきたいです。(2022年12月)
このコメントをみると、新入社員本人は技術的成長に視点が向いており、精神的成長を実感できていないように感じます。このように、新入社員と人事や育成トレーナーが感じている成長にはズレがあります。当社や、人事や育成トレーナーは、精神的成長に関して、新入社員が成長したと感じていることがわかります。
新入社員は、自身で精神的成長を感じることができていないことが多いため、人事やトレーナーから見た精神的成長の観点を伝えてあげることが、成長を促すために重要です。
技術的成長と精神的成長はお互いが、お互いの成長のために影響を与え合っているためです。 精神的成長を伝えるときは、新入社員が納得感を持って受け取れるようにすることがポイントです。
例えば、「4月のときは〇〇だったけど、今は〇〇になっていて、すごく成長を感じる」とか「4月のときに〇〇って言っていたのを聞いて少し不安になっていたんだけど、今〇〇という言葉が出てきて、すごく成長を感じた」などです。
伝える機会に関しては、1on1などを設けて、伝えていくといいでしょう。精神的成長について、感想として伝えるのではなく、事実を交えて伝えます。そうすることで、新入社員自身が客観的にその事実を見ることができ、成長を実感しやすくなります。
新入社員自身が、精神的成長についての成長を実感できるようになって欲しい場合に有効な方法は、精神的成長についても振り返ることのできる研修を行うことです。適切な問いやワークを行うことで、新入社員自身でなかなか感じることが難しい精神的成長について実感できるようになります。
例えば、当社では1年目フォロー研修の中で扱っています。 新入社員自らが成長することで、組織の成長に繋がる一歩を踏み出せるようにすることを目的とした研修です。
この研修の中では、1年間をポジティブに振り返り、仲間からのポジティブフィードバックで、現場での変化を最大限に認知できるようにするワークを行います。振り返りシート自体が、精神的成長についても振り返りができるような設計をしているため、精神的成長にも意識を向けやすくなっています。
その他、2年目に向けての自身の望む成長について、ワールドカフェの形式で探求をする時間も設けています。この時間で、仕事とどう向き合っていくのかを考え、言語化することで、2年目以降の精神的成長の方向性を見つけることができます。
上司や人事が成長していると思っていても、新入社員自身が、成長している感覚や成長できる機会がないと思うと、転職を考えてしまいやすくなります。そうならないためにも、一度立ち止まって自身の成長を感じることで、成長予感とエンゲージメントが高まっていきます。この働きかけは、離職防止に繋がっていきます。
※ 当社、「優秀な若手ほど辞めてしまう会社で何が起きているのか~中堅・中小企業の未来をひらくために必要なアプローチを考える~」セミナー資料より抜粋
新入社員が成長したことを実感するためには、丁寧な振り返りが必要です。これらのような振り返りの機会を意識的に作りましょう。
今回は、新入社員が自身で感じた成長したことと、当社が研修を通して感じた変化や人事・育成トレーナーから見て新入社員が成長したことをお伝えしました。
新入社員は、新入社員が自身で感じる「成長したこと」については、業務遂行力とコミュニケーションという技術的成長に焦点が当たっていました。しかし、精神的成長に関するコメントはありませんでした。一方、当社や人事・育成トレーナーから見て「新入社員が成長したこと」については、精神的成長に焦点が当たった内容になっています。 具体的には、
です。新入社員と、人事やトレーナーなど組織が感じている「新入社員が成長したこと」がズレていることがわかります。
技術的成長と精神的成長は、お互いがお互いの成長のために影響を与え合っているため、新入社員が実感できていない部分は伝えて補うことが必要です。 新入社員自身で精神的成長に気づけるようになって欲しいという場合は、そのための研修を実施するのも一つの方法です。その場合は、当社で用意している1年目フォロー研修のように、精神的成長の実感も得られる設計がされている研修を選ぶことをお勧めします。
今回の内容を見ることで、自組織の新入社員の成長したことを知り、技術的成長と精神的成長という2つの視点から新入社員自身の成長実感を促せるようにしましょう。
新入社員の精神的成長を促すための研修として、1年目フォロー研修について詳しく知りたいという場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。