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[ コラム ]
若手社員研修の企画段階で多く寄せられる16の質問とその回答
- 2023/9/29更新ー2023/3/30作成ー「若手社員研修を実施したいけど、何を、どのように、実施すれば良いのだろう…?」若手社員研修を実施すべきか否か、また、その実施内容について迷っており、本コラムに辿り着いた方もいらっしゃるでし
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2023/8/1更新ー 2023/3/24作成ー
「中小企業での効果的な研修って?時間も予算も限られている中、無駄なことはしたくない」
「中小企業で研修を行っても、現場社員からは『この忙しい中で…』と文句しか言われない」「正直、社長の思いつきで研修を実施することが多く、本当にやるべきことが分からない」
本コラムは、上記のような問題意識をお持ちの方に、是非とも読んでいただきたい内容です。
結論から申し上げると、中小企業で行うべき研修は「自組織の課題を解決する研修」です。
なぜなら、大企業と比較すると中小企業は研修効果を体感しやすく、特に、現状の課題を解決する研修でその効果が見えれば、経営者も現場も協力的になってくれるからです。
その成功体験を原動力として、その他の人材育成や組織変革をよりパワフルに推進していくことをお薦めします。
そこで、本コラムでは、中小企業における研修の位置づけや企画・実施方法、研修の失敗リスクの下げ方などをお伝えします。
※ 本コラムでは、中小企業:社員数30~500名程度の組織と定義しています。大企業でも、事業部単位で研修を実施する際のご参考にいただけます。
目次
冒頭でもお伝えしましたが、中小企業で実施すべき研修とは「自組織の課題を解決する研修」です。
現在の課題と直結していて、実業務との関連性が高くその効果を実感できれば、研修は面倒なものというより、学ぶことで実業務が楽になるという認知に変わります。そうなれば、現場社員としても自分たちにとってメリットがあるため、協力度合いが増しますし、経営者としてはも人材開発・組織変革へより投資するようになるでしょう。
ここで、中小企業の社員研修でよくある失敗例と、その背景・理由についてお伝えします。
研修会社としては、新入社員研修~管理職研修まで一括のパッケージ商品の方が提案がしやすいがために、企画をないがしろに、パッケージ商品をそのまま提供した可能性があります。
組織課題・事業課題の真因を捉えていなかったり、研修では解決できないものを研修で解決しようとしている可能性があります。
現場レベルの課題感とは乖離があったり、研修では解決が難しいものを取り扱った内容となっている可能性があります。
上記のようなよくある失敗例にならないためにも、自組織の課題を的確に捉え、その課題を解決するための研修内容を企画・実施していく必要があります。
前章では、中小企業で実施すべきは「自組織の課題を解決する研修である」とお伝えしました。その「課題」とは、大きく以下の2つの分類されます。
・事業課題を解決する内容 : 「営業力が弱く売上が上がらない」「一つのヒット商品に依存している」「顧客満足が下がり顧客離れが起きている」など
・組織課題を解決する内容 :「離職率が高い」「管理職が役割を果たしていない」「受け身姿勢の社員が多い」など
ただし、上記2つの課題は複雑に絡み合っていることが圧倒的に多く、それらを紐解き、優先順位を決めて、課題解決していく必要があります。そのために、まずは課題を洗い出し、そしてそれらの課題がどのように絡み合っているかを紐解き、アプローチすべき課題を検討していく必要があります。
その際は、システムシンキングという思考方法を活用するとよいでしょう。
システムシンキングについてイメージしやすいよう、当社がご支援した企業様(コンテンツビジネス事業。社員数200名程度)と課題整理を実施した際お一部内容をお見せします。事業課題・組織課題を、経営陣4名と共に丁寧に紐解いていきました。 経営陣が始めに認識していた課題は下記のとおりでした。
・次世代リーダーが育っていない
・ヒット商品の売上が鈍化し、新しい商品が生まれない
・新しいヒット商品を創る気概を、事業部長・管理職からは感じない
・株価も下がり始めている
・部門間を超えたコミュニケーションが、会議以外で見られない。雑談もなく、仲が悪い
・事業部長・執行役員が目の前の仕事が忙しくて、新しい商品の企画が全く上がってこない
これらの課題がどのように絡み合っているのかを把握するために、システムシンキングという思考方法をもとに、組織の状況を可視化していきました。
※ 下記システム図は、お客様の言葉を尊重して作成しているため、飛躍している部分もあります。
上記システム図を簡単に説明すると以下の通りです。
・上司のハードマネジメントが強い組織風土のため、上司への信頼やチームの団結力が弱い
・ハードマネジメントが強いため、挑戦意欲が弱く守りの姿勢となり、目先の利益追求を優先
・目先の利益ばかり優先するので、短期的に物事を見て、目の前の仕事しかしない
・短期的に物事を見ているので、自部署だけの部分最適となり、部門間の壁が高くなる
・挑戦意欲も削がれているので、アイディアは出ず、新サービスは生まれない
本事例では、上記課題を解決していくために「自部署の正当性」という課題に目を向けました。組織として、「どのように一体感を持つのか」を考えて、そのために執行役員・事業部長、そして経営者が組織をどうしていきたいかを考えてもらいました。
「自部署の正当性」ではなく、自分たちがどのようなビジョンを大切にしたいかを考え、言語化します。そうするとことで、部門間の壁が無くなったり、上層部がビジョンのために素晴らしいリーダーシップを発揮しようと考えて、悪循環になっていた流れを、好循環に変えていくというアプローチを行いました。
その結果、本お客様では「次世代リーダー研修」と「管理職研修」をメインに実施しました。より詳しい実施内容や結果については、
・中小企業におすすめの管理職研修を徹底解説!失敗しない方法とは?
・【管理職研修】事例を通して効果的な内容と失敗しないポイントを徹底解説!
を御覧ください。
中小企業のクライアントからよくいただく、社員研修導入時の質問について下記にまとめました。
まず、現状の売上に関しての課題の洗い出しが必要です。
・売上が徐々に下がっているのか?
・ずっと停滞しているのか?
・(下がってはいないけど)より一層の売上向上を目指したいのか?
など、課題の種類によって研修内容は全く変わりますし、そもそも研修で本当に効果が出るのかも考えるポイントになります。
しばしば、「営業研修を入れたけど、まったく効果がなかった」といった失敗談もお聞きしますが、もしかしたら、営業自体ではなく「ターゲット設定に無理がある」「現場が離職続きで人が育たない」「戦略自体に問題がある」などといった要因も考えられます。
目の前の売上に囚われるのではなく、何が事業課題なのか、組織課題なのかを紐解いていくために、まずは課題洗い出し、何を実施したほうがいいかを考えていくといいでしょう。
「新規事業開発が進まないこと」への課題の洗い出しが必要です。
その上で、「新規事業開発のやり方が分からない」のであれば、新規事業開発に関連した研修としてデザイン思考研修などを導入すればいいですが、「新規事業開発を行う風土がない」のであれば、そういった研修を実施しても恐らく効果は薄いでしょう。
「新規事業立案のためのデザイン思考研修を実施し、コンサルも入れたけど、結局うまくいかなった」といった失敗談もよくお聞きします。そもそも、新規事業や新サービスは簡単に成功はしません。何度もチャレンジすることが必要ですし、根気も必要です。デザイン思考云々の前に、そういった失敗を許容し、度重なる挑戦を応援できる風土が醸成されているのか、今一度考えてみる必要があるかもしれません。
「会社の雰囲気を良くしたい」という背景を紐解いていく必要があります。「離職率が高くなっているから」「個人プレイが中心で、チーム力が弱いから」などをといった背景を洗い出し、さらにそれを深ぼっていきます。
一つ事例をお伝えします。当初は「会社の雰囲気を良くしたい」とご相談をいただきましたが、最終的には「会社の雰囲気を良くする必要はない」という判断になったお客様がいらっしゃいました。
理由は、社員一人ひとりが自律していて、個人としても、チームとしても、パフォーマンスが高かったためです。「心理的安全性」というワードが当時流行っていたため、それを取り入れようとしていたようです。ただ、その組織は、すでに心理的安全で言われる「ラーニングゾーン(※)」にいる状態でした。そのため、最終的には、自己啓発の機会を増やそうということで、他社様の学び放題の動画サービスを導入されていました。
【参考】ラーニングゾーン:当社「心理的安全性向上研修」のテキストより抜粋
まずは、「離職が下がっている背景は何か?」、「離職が起きると、どのような問題が出ているのか?出てくるのか?」等を考えていきます。
例えば、離職要因が「パワハラ・セクハラ問題」「業界水準と比較して給与が低すぎる」といった場合は、衛生要因と言われるもので、研修を実施しても離職問題の解決は難しいものです。
この場合は、パワハラ・セクハラを引き起こしている社員に対する対応が必須ですし、人事制度や評価制度などを抜本的に見直していく必要があります。
なお、当社では、中小企業の離職率低下に繋がった社員研修の実績が豊富です。まずはお気軽にご相談ください。
また、社員の離職に関する課題については、下記コラムもご参考いただけます。
・新入社員の早期離職を防ぐ!|辞める原因「5つのギャップ」と対応策
・新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント
・新入社員の離職防止に重要な配属後のフォロー|3つのギャップを解消する施策
「教育制度が整っている会社としてみられたい」ために、教育制度を創ることには、当社は反対しています。
理由は、効果がないためです。多くの動機として福利厚生が充実しているイメージを創り、採用のアピールとしているケースが見られます。多くの場合は、「受け放題の動画サービス」を入れたという話を聞くことがあります。採用時点では訴求されたとしても、実際入社して、育成支援が弱い場合は入社後のギャップに繋がり、エンゲージメントが下がったり、離職に繋がります。
教育制度を整えることでどんな効果を得たいのかを考えて、企画運営することが必要です。
「チャレンジがない。チャレンジが少ない」ことに対して、課題の洗い出しが必要です。原因がわからなければ、適切な対策が行えないためです。
よくお聞きする失敗例は、「チャレンジを促すマインドセット研修を行ったが、効果がなかった」や、「会社のバリューに挑戦という言葉を入れ、浸透するためのワークショップを行ったが意味がなかった」などです。「チャレンジをしろ」と言っても、人はチャレンジをしません。理由は、チャレンジをするためには、内発的動機づけが必要なためです。
今回の事例のように、まずは課題洗い出し、何を実施したほうがいいかを考えていくといいでしょう。
現時点で、パワハラ・セクハラが起きているのであれば、パワハラ・セクハラが起きている当人へのアプローチが必須です。
パワハラ・セクハラが起きやすい社風であれば、起きない仕組みづくりが必要です。
人事制度の再設計も必要ですし、また人事や産業医などの相談窓口を設けるなどです。もちろん啓蒙のために、研修を実施するのもいいでしょう。パワハラ対策の強化─人事が管理職に実施すべき具体的な対策とはのコラムは合わせてお読みいただけるとよいでしょう。
「どの程度のレベルになってほしいのか」をまず言語化することが必要です。さらに、具体的な行動ベースまでに落としていくと、実施する研修が明確になっていくでしょう。
例えば、「考える力が弱いので、思考力をあげたい」というのであれば、どの階層がどのレベルまでになってほしいかなどです。管理職が事業戦略を立てるための思考力と、一般社員が企画力を付けるための思考力では、習得するスキルが異なります。社員に求めるレベルの解像度を上げていくことが必要です。
研修制度を固定化するより、その年によってテーマを設定していく方法をお薦めします。
階層別のコンピテンシーを決めて、研修も決めていく方法もありますが、現在の人材開発・組織開発の分野では、少し時代遅れとも言えます。時代の流れ・変化が速く、求められるスキルなども変容し、固定化が難しいためです。
そのため、組織課題や戦略をもとに、その年の人材開発のテーマ(コンセプト)を決めて、どの階層に何を実施するかを考えていくといいでしょう。
「ビジネススキルがない」がないことで、どのような課題が起きているのかを確認することが必要です。課題の確認がないと、ビジネススキル系の研修を行っても的外れになったり、対象者も参加意欲を持てないためです。
よくお聞きする失敗例を一つ上げると、管理職がマネジメント力がないので、管理職研修を受けさせようなどです。管理職の役割は多いため、何が足りていないかを考えて、必要なスキル習得を行うことが必要です。これは、他の階層でも例外はありません。
何もしないよりは、実施したほうがいいですが、効果はそれほど高くないことと、むしろ、かえって悪影響となってしまう可能性もあることは念頭に置くといいでしょう。
例えば、動画を見て、強制的にレポートを書かせるなどになると、そのことに対してネガティブに思う社員のエンゲージメントは下がります。代替案としては、少人数でも構わないので、1~2時間程度の社内勉強会などを実施し、育成文化を創っていくことをお薦めします。
当たり前ですが、実現したいことによって、予算は変わってきます。解決したい課題によって、時間軸も変わりますし、投入されるリソースも変わるでしょう。
例えば、メンタルヘルスの啓蒙を行うのみであれば、産業医に1~2時間程度のメンタルヘルス研修の実施でいいかもしれません。メンタルヘルスの問題によっての離職が高いということが起きているのであれば、仕組みづくりから行う必要もあるでしょう。何を解決して、実現したいかを考えていく必要があります。
人材育成・組織変革において、投資対効果をみるのはとても難しいため、人材育成・組織変革においてのゴール設定を、経営陣と一緒に創ることをお薦めします。
※ 難しい場合は、こまめに確認を取って、経営者や責任者のフィードバックを反映させていくことが必要です。
そのことにより、経営陣が当事者意識を持ち、理解・納得しやすくなります。それでも難しい場合は、小さいスタートを行うように働きかけるといいでしょう。
人や組織の成長に時間はかかるため、時間も予算もかけないで効果を上げることはできません。 限られたリソースで早い効果を上げていくためにも、本コラムで説明した内容を実施していただくといいでしょう。
よくある失敗例は、研修会社を低価格で選び、何も効果が出ないパターンです。そうすると、経営者も現場も「研修=悪」という認知になり、さらに研修に関して後ろ向きになっていきます。
カスタマイズの範囲や実施有無は、あくまで企画を考えた上で判断を行うといいでしょう。基本、研修会社のパッケージは創り込まれているので、企画の目的からそれた些末なカスタマイズは行わないほうがいいです。カスタマイズを行う目的は、研修効果を最大限高めて、課題を解決するためのものとして扱っていきます。
組織によっては、急激な変革が必要な場合があります。その場合も、今回の事例のように、課題解決の優先順を明確にすることと、現場が耐えられる体制や、フォローできる体制を創っておくことが必要です。急激な変革は、自組織の否定と破壊が強くなるためです。
例えば、組織変革を進めることで、離職率やメンタルヘルスの問題が起きることが想定できるのであれば、そのための施策・体制を創っておくとよいでしょう。
当社がおすすめするのは、プロジェクト型にして、現場を巻き込んで行うことです。そのことで、現場も当事者意識を持ちやすくなります。
この時の注意点としては、研修に協力的な人やハイパフォーマーのみ等、一部の傾向に偏った人選で実施してしまうことです。
そういった方々のみでメンバー構成にすると、選ばれなかった人は「自分は会社から選ばれなかった・期待されていない」と捉えて、現場の溝がより一層大きくなってしまうためです。そのため、可能な限りその組織の縮図にしていくといいでしょう。ハイパフォーマーもローパフォーマーもいれば、協力的な人も非協力的な人もいるとうチームです。この時にローパフォーマーがやる気になっていたり、非協力的な人が現場でポジティブな発言をしていると、現場の認知が好意的に変わっていきます。
「鍛え直す」というアプローチはあまり推奨していません。「組織が正しくて、現場が悪い」という認知になっており、それでは現場のエンゲージメントは下がる一方でしょう。
あくまで、今までお伝えしてきたように、自社の課題を整理して、優先順位を決めて、その上でどのような対応を行うとよいかを考えていく必要があります。参考コラムとして、下記内容もご紹介させていただきます。
・管理職・マネジャーに対して「厳しい管理職研修が必要では?」と思った時に考える3つのステップ
・厳しい新入社員研修とは|厳しい新入社員研修が必要と思ったときに考えて欲しいこと
研修の企画次第です。研修効果を最大化するための時期・内容・頻度などを企画していく必要があります。
ただし、避けるべき時期として当社がよくお伝えするのは、GW前・夏休み・年末年始休暇などの長期休暇の前です。研修でせっかく認知変容・行動変容が起きていても、長期休暇によってリセットされてしまう可能性があるためです。
唯一、長期休暇前にお薦めする研修は、エンゲージメント・モチベーション低下が起きている社員に対してフォローするための研修です。長期休暇に入り、組織と離れたときに、家族や友人との関わりで今の組織に居ても仕方ないと思い、離職してしまうケースがあるためです。組織の問題ではなく、自身の問題であっても、組織の問題にすり替えてしまう場合があります。
具体的な例としては、夏休み前に新入社員へのフォロー研修を行うなどです。少し社会人に慣れてきて、さらに夏の暑さによる体力を失い、モチベーション低下が起きる場合があります。このモチベーション低下は、組織の問題ではないですが、適切なフォローをしないと、新入社員は組織に対してネガティブな感情を持つケースがあります。例えば、友人から「そんな企業はブラックだ」という発言があり、それを真に受けるなどです。新入社員や若手社員は、人としての成熟度(精神的成長)が未熟なため、他責にしてしまうことがあります。このような時にフォローとして、研修を行うことは一つの方法です。
組織の状況によって、割合は変わります。組織にどのような課題があり、どのような未来を描きたいかによって変わっていきます。
ただ、よくお伝えするのは、内製化のみ、外注のみというのはNGということです。
内製化のみですと、時代にそぐわない研修内容になりがちです。また、外部の講師だからこそ、参加者の率直な意見や悩みを聞きやすいということもあります。
一方で、外注のみになると、外部への依存度が高くなり、研修や課題に対して、当事者意識が弱くなってしまいます。
状況にあわせて、内製化と外注のバランスを取っていただけるといいと思います。
本コラムでは、中小企業が実施すべき「自組織の課題を解決する研修」について、具体例や良くある質問への回答まじえて、詳しくお伝えいたしました。
本コラムをお読みいただくことで、中小企業のみなさんが、自組織に必要な研修を企画・運営していただけることを心より願っております。
また、アーティエンスでは、これまで数多くの中小企業のお客様の課題解決のご支援してまいりました。まずはお気軽にご相談ください。