コラム

管理職がパワハラ対策に本気になるための3つのポイント

スーツ姿の男性がベンチに座っている様子

2022/9/29作成ー

「管理職が部下のパワハラを見て見ぬ振りしてしまう・・・」
「管理職がパワハラ対策を本気にやってくれていないように思ってしまう・・・」

経営者の方や人事部の方と話をしていると上記のような相談を受けることがあります。
話を聞くと一通りの対策は打っている。相談窓口の設置、ハラスメント対策を管理職に実施するなど。
しかしながらパワハラの相談は減らず、また管理職が十分対応しなかったなどのクレームも発生することが多いというお話でした。

2021年に経団連が会員企業に9月から10月にかけて調査した結果として、職場のハラスメント防止に関するアンケート結果を発表しました。この調査によると回答した44%の企業において5年前よりパワハラの相談が増加したことがわかりました。

また2021年に発表された厚労省におけるハラスメント調査によると、パワーハラスメントを知った後の勤務先の対応としては「特に何もしなかった」が47.1%となっています。勤務先の対応が全て管理職であるわけではないのですが、管理職の対応が多く含まれているだろうということは想像できるのではないかと思います。

パワーハラスメントという言葉は2001年に提唱され、それから20年近く各社が対策をしてきたにも関わらず増加しているという事実は驚くべきことであるといえます。

この記事ではこれまで一通りの対策をうってきたにも関わらず、パワハラが減らず困っている、また管理職にもっと本気になってもらいたいと思っている経営者の方、人事部などの関連部署の方に向けて管理職がパワハラ対策に本気になるための3つのアプローチをご提示します。

ご自分の組織と照らし合わせ、どこから手をつけることができそうか想像しながらお読みいただけると理解が進むでしょう。

1)管理職がパワハラ対策に本気になるための3つのポイント

管理職が変わるためのポイントは以下の3つです。

① 意識を変えるには「パワハラ対策の必要性と重要性を認識できるようになる」
② 知識を変えるには「パワハラの基本+αまで理解する」
③ 技術を変えるには「パワハラ対策の3本柱を実施できるようになる」

それぞれ説明していきます。

① 意識を変える「パワハラ対策の必要性と重要性を認識できるようになる」

管理職がパワハラ対策に本気になるためには意識が変わることが重要です。
意識が変わるとは、管理職が「パワハラをマネジメントの問題である」とパワハラ対策の「必要性」を思えるようになることと、「パワハラ対策をしなければ、会社、自分に大きな影響が起こる」とパワハラ対策の「重要性」を思えるようになることです。

なぜなら、意識を変えるためには管理職にパワハラ対策の「必要性」と「重要性」を認識してもらうことが重要だからです。

具体的には「必要性」とは、「この問題(パワハラ)は自分が対応する必要がある。自分の責任範囲にある」と考えることができることです。
また「重要性」とは「この問題(パワハラ)は大きな問題であり、本気で対策をしなければいけない」と考えることができることです。

「この問題(パワハラ)は自分が対応する必要があり、それは本気で対応しなければいけないものだ」と認識できるようになることがパワハラ対策に本気になるための意識の状態なのです。
この2つの意識を変えていくことで管理職がパワハラ対策に本気になることができるようになります。

〈必要性〉「パワハラをマネジメントの問題である」と思えるようになる

パワハラはマネジメントの問題です。
なぜマネジメントの問題であるかというと、パワハラが起きる原因が「個人」ではなく「マネジメント」にあるからです。

具体的な例で考えていきます。

「マネジメントの問題と捉えるべきパワハラの事例」
・ある企業の中堅社員Aさんは若手社員Bさんに大きな声で怒鳴ります。他の若手社員Cさんにも声を荒げることがありますが、Dさんに対してほどではありません。同僚のEさんには丁寧で、上司のFさんにはさらに丁寧な態度をとります。

このような光景はよくある姿ではないでしょうか。
要するにAさんは「強いものには弱く、弱いものには強い」人物であることが想像できます。

こういった時の見方として問題があるのは

①このパワハラの行動はAさんがそういう人物であるからだ(加害者の人格に原因がある)
②このパワハラの行動はBさん、Cさんにパワハラさせてしまう行動があるからだ(被害者に原因がある)

この2つの原因の見方は問題がありますし、問題の解決を遠ざけます。

①の加害者の人格に問題があるのではあれば、AさんがB、Cさん以外に声を荒げるという行為をしている理由が説明できません。Aさんは攻撃をする相手を選んでいます。要するに攻撃できる環境にある相手を攻撃し、攻撃できない環境にある相手は攻撃していないのです。
この場合、考えるべき原因は「マネジメントがどのような環境を与えているからAさんは攻撃的な行動ができているのか」ということです。

②の被害者に原因があるというのは論外です。
この見方が「被害者に問題があれば攻撃して良い」ということになります。
どのような理由があれ、人に声をあらげたり罵倒して良いということはありません。
この場合、考えるべき原因は「マネジメントがどのような環境を与えているからBさんやCさんに攻撃してもよいという判断が生まれてしまうのか」ということです。

【参考】パワハラではなく、問題行動の事例
下記のようなケースは、パワハラではなく、問題行動として、組織は対処する必要があります。

・ある企業の中堅社員Gさんは若手社員Hさんに大きな声で怒鳴ります。GさんはHさんだけではなく、他の同僚Iさんにも怒鳴りますし、上司のJさんにも怒鳴ります。Gさんは誰かれかまわず気に入らないことがあると怒鳴ります。

この場合はパワハラという何らかの権力によって攻撃しているのではなく、誰彼構わず攻撃しているのでパワハラではなく問題行動です。この場合はあまりマネジメントで環境を整えても問題解決することは難しく、配置転換や問題行動を起こしてしまう個人の治療や改善をしていく必要があります。

パワハラの加害者の行為は「パワハラをしても大丈夫な環境」があるから発生します。
このような環境を作っているのはマネジメントです。だからこそ「パワハラはマネジメントの問題」なのです。

〈重要性〉「パワハラは大きな問題である」と思えるようになる

管理職がパワハラ対策に本気になるにはパワハラの問題の影響の大きさを認識することが重要です。
なぜなら影響力を認識することで他の業務と比べても対策の優先度合いをあげようと思うようになるからです。

パワハラが発生した時の影響は3つあります。

・法的責任の発生
・会社への影響
・社員への影響

〈ハラスメントに関する対外的責任〉

①民事上の責任(損害賠償)
・行為者:民法上の不法行為責任
・管理職:民法上の共同不法行為責任
・会 社:民法上の債務不履行責任(安全配慮義務 違反)・民法上の使用者責任
・役 員:会社法上の役員の善管注意義務・忠実義務違反

②刑事罰(セクハラ・パワハラ)
・強制性交罪、強制わいせつ罪等 名誉棄損罪、侮辱罪、脅迫罪、暴行罪、傷害罪等

③懲戒処分(行為者、管理職に対して)
・懲罰規定(就業規則)

④見て見ぬふりをした傍観者は・・・?
管理職の方、役員の方には、自分自身の言動は もちろん、自分の部下その他の従業員がパワハラ 行為をしないよう、注意や指導をする義務がある(共同不法行為による損害賠償責任等、会社法上の善管注意義務・忠実義務違反)

特に①の民事上の責任としての損害賠償や、③パワハラの防止を怠ったということで社内の処分として懲戒処分を受ける可能性があるのです。

④のように管理職には自分が加害者になった場合以外でも管理職が処罰されることがあることをしっかりと把握してもらうことが重要です。

〈会社・社員への影響〉
会社・社員に関しては、平成28年度「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)の調査によると下記のような影響がわかってきました。

・会社への影響
人材の流出
モラールの低下
企業イメージの悪化
訴訟による賠償

・社員への影響
職場の雰囲気が悪化
心身の健康を害し、休職等に至る
本来の能力を発揮できなくなる

どの影響もそれぞれ大きなダメージがあります。
こういった影響をいかにリアルに管理職の方がイメージできるかが大事になってくるのです。
管理職がパワハラ対策に本気になるには意識の変化が大切です。
意識の変化で重要なのは「必要性」と「重要性」に関する認識を変化させていくことが重要なことなのです。

② 知識を増やす「パワハラの基本+αまで理解する」

パワハラの基本の2つの知識

パワハラの基本の知識には2つあります。

・パワハラの定義
・パワハラの6分類

上記の2点は最低限管理職は把握しておく必要があります。

なぜならパワハラの定義を知らないとパワハラかどうかの判断をする際に基準がないということになります。
また、パワハラの6分類は具体的に絶対にやっていはいけない行動が示されていますので、パワハラとして禁止する行動を提示するためには必要なものとなります。

もし上記2点の知識が周知されていない組織はここから始める必要があります。

〈ハラスメントの定義〉
職場などの身近な場面で上司などの「力関係で優位にある者」が他者に対して精神的・身体的苦痛を与える行為のこと。ハラスメントの定義はセクハラなど他のハラスメントを含めた定義です。

ここで大事なのは「力関係で優位にある者」という表現です。

上司とか上位者がではなく「力関係で優位にある者」ということですので、例えばある部署に長年勤めている方がいて、その方が新しく他部署から異動してきた上司である課長を他の課員を巻き込んで無視したり、侮辱的な言葉を投げかけていればそれはパワハラとなります。部下とか同僚とか関係なく「力関係で優位にある者」という定義であるという理解が重要です。

〈パワハラの定義〉
パワハラの定義は厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル(令和3年度版)から抜粋します。

パワーハラスメントとは
職場におけるパワーハラスメントとは、改正労働施策総合推進法(令和元年6月5日公布)により、以下の3つの要素
① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されること

をすべて満たすものとし、パワーハラスメント防止のため、相談体制の整備等の雇 用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けています。

ここで重要なのは「業務の適正な範囲を超えて」ということです。
この業務の適正な範囲を超えているかどうかがパワハラかそうでないかの違いです。

「ハラスメントは相手がそう思ったらハラスメントだ」
このような理解を管理職の方から聞くことがあります。
そうではありません。「業務の適正な範囲を超えて」いることがハラスメントです。

〈パワハラの6分類〉
こちらは同じく厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会 報告書」から6分類の定義と具体例を抜粋します。

暴行・傷害
(上司が部下に対して、殴打、足蹴りをする)
精神的な攻撃
(上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする)
人間関係からの切り離し
(自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離 したり、自宅研修させたりする)
過大な要求
(上司が部下に対して、長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤 務に直接関係のない作業を命ずる)
過小な要求
(上司が管理職である部下を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる)
個の侵害
(思想・信条を理由とし、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視し たり、他の社員に接触しないよう働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする)

ここで重要なのは、この6分類は典型的なパワハラとして提示されているものだということです。
このことからまず上記のような行動行為はパワハラとして認定される可能性が高いので、こういった行動はすぐに止める必要があります。またあくまでこの6分類は典型的なパワハラですので、職場のパワハラ全てを網羅するものではないということです。

具体的なパワーハラスメント事案が発生した場合に、それがパワーハラスメントで あるかどうかを判断するには、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか 等詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や厚生労働省の「あかるい職場応 援団」サイトに掲載されている裁判例も参考にしながら判断します。

ここまで「パワハラの基本の知識2つ」を挙げてきました。
2つの知識は多くの企業が研修などで提示し管理職に伝えていると思います。
正しい理解ができているのかということを今一度確認することをお勧めします。
この2つは基本として管理職の方に正しく把握してもらう必要があります。

・パワハラの+αの知識
・ブラックに加えてグレーゾーンを理解する

管理職が理解しておく知識としてパワハラの6分類のような明らかなブラックに加えて、グレーゾーンを理解することが重要です。

なぜならグレーゾーンは管理職が見逃しやすく、また気づいてもそのままにしてしまう可能性が高いからです。
グレーゾーンには明確な定義があるわけではありませんが、私はハラスメントの3要素である

① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されること

のうち②が曖昧であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたと言えるかどうか微妙なものを指すものと理解しています。

例えば事例を提示します。

事例①「パワハラ認定される可能性のあるもの」
・主任のAさんが若手社員のBさんに1時間にわたり大声で怒鳴っている。理由はBさんが昨日の報告を怠っていたことが原因だった。Bさんがパワハラではないかと訴えてきた。

事例②「グレーゾーン」
・主任のCさんが若手社員のDさんに一日3回の報告を求めているということで、Dさんからパワハラではないかと訴えがあった。CさんはDさんの営業成績が下がっているので指導を強化しているからだという話だった。

事例①はこの状態が継続的に行われていればパワハラとして認定される可能性が高いです。
しかし事例②はグレーゾーンです。
一日3回の報告というのは微妙ですよね。ちょっと多いかもしれないけど、「心配な行動がある部下ならそれくらい報告してもらうかもしれない」となりそうです。
これが1日10回とか20分に1回は報告させた、などであれば「それはパワハラだ」となるのでしょうが、3回とかもしくは4回くらいまでなら業務指示としてあり得そうな内容です。

ではこのグレーゾーンはなぜ発生するのでしょうか。
それは「価値観の違い」です。特に「業務上必要かつ相当な範囲」に対する価値観が違うのです。
先ほどの事例でいえば、部下は1日3回の報告は「多すぎる」という価値観を持っていて、上司は1日3回の報告は「妥当な回数だ」という価値観を持っているかもしれません。

・業務時間内や会社内では言えないことがあるだろうから帰りに食事でもしながら話をしようかと上司が部下を誘った。
→上司からするとこれくらいであれば「業務上必要かつ相当な範囲」ではないかという価値観を持っているかもしれません。部下は業務時間外はどのような理由があれば「業務上必要かつ相当な範囲」を外れているという価値観を持っているかもしれません。

このように「業務上必要かつ相当な範囲」における価値観の違いにより「ハラスメントだ」「そうではない」というグレーゾーンが発生するのです。

ここで重要なことはグレーゾーンは価値観の違いで起きるものであり何らか処罰まではいかない可能性があります。しかしながら、そこには「被害」を感じている方がいるということです。

被害を感じている人がいる、ということはそれに対して何らか対処をしなければ組織としては不安定な状況になります。訴えている本人のモチベーションも下がりますし、周囲にも影響が発生する可能性があります。

管理職はブラックに加えてグレーゾーンに対しての知識をもつことでパワハラの対策に適切な判断ができるようになります。適切な対応が求められるのです。

③ 技術を高める「パワハラ対策の3本柱を実施できるようになる」

技術を高めるのは「パワハラ対策の3本柱を実施できるようになる」ことが重要です。
なぜなら高い意識と知識を持っていたとしてもそれを実際に実行できる技術がなければ行動に移したとしても成果としては現れません。

具体的には下記の3つです。

① 〈対組織〉組織を頼る技術
② 〈対対象者〉公平に両者の言い分を聞く技術
③ 〈対自分〉自分をコントロールする技術(アンコンシャスバイアス)

①〈対組織〉組織を頼る技術
組織を頼る技術とはパワハラを会社の問題として扱うということです。
なぜならパワハラの問題はまさに会社の問題だからです。
これまでもパワハラが発生した時は行為者であるパワハラの加害者と共に会社に損害賠償の支払いが発生することは数多くありました。さらに近年成立したパワハラ防止法によって中小企業も含めて企業はハラスメント対策をする必要性が増しています。

パワハラの問題は一部署の問題ではなく、会社の問題である、と肝に命じることが大事です。具体的にはハラスメントの窓口に関わり方として2つのポイントがあります。

① 最初から頼ること
② どのような問題も頼ること

最初から頼るということはどういうことかというと「問題を認識したらすぐに」という意味です。
問題が小さかったり、簡単に見えるとついつい自分だけで対応しようと思ってしまうことがあると思います。結果として自分だけで対応できたとしてもハラスメント窓口と連携し、その連携の結果「管理職が自分で解決をすることにした」という判断を持つことが重要です。1人では判断せず必ず窓口といった関連機関と判断することです。
そうすることで、どのようなパワハラ問題も会社の問題として扱うという文化が生まれますし、管理職が孤立しない、自分を守ためにも必要なのです。

どのような問題も頼ることとはどういうことかというと、問題がどんなに小さく見えても、もしくはハラスメントではないように見えたとしても窓口に伝える、ということです。
要するに「自分で判断しない」ということです。
なぜそうすると良いかというと、管理職にはパワハラに対して間違った判断をしてしまう心理的な可能性があるからです。

心理的な可能性としては

・自分で解決できないとできない管理職と思われてしまうと心配する
・告発者の訴えが「自分の考え」では取るに足らないことに思える
・問題を大きくしたときに「行為者が罰を受ける」ことになると組織として困った事態になると思ってしまう

このような心理的な葛藤が発生してしまうことで管理職が相談を躊躇ってしまい、その結果問題が大きくなる可能性もあります。そこで「どのような問題も自分で判断せず、相談してしまう」ことが重要なのです。
組織を頼ることで、会社の問題としてパワハラを扱うことができるようにするのです。

② 〈対対象者〉公平に両者の言い分を聞く技術
パワハラは。行為者と被害者の認識に大きくずれが生じることが多く発生します。
行為者は、パワハラだと認識していないからその行為をしてしまう時があります。
そういった場合は被害者から訴えられて初めて行為者はそのように捉えられることを知るのです。

パワハラの訴えがあった時にどのような内容をヒアリングするかなどは、企業ごとにマニュアルがあるケースが多いと思いますので、そちらを参照していただき、ここではポイントのみお伝えします。
※ マニュアルが無い組織は、顧問社労士・顧問弁護士に相談してみるのも一つの方法です。

公平に両者の言い分を聞く技術は「行為者・被害者どちらも尊重すること」です。
なぜかというとパワハラは両者の価値観の違いにより発生しています。その価値観が間違っているように見えるとしても、価値観というのは本人にとっては大事なものです。

「なぜその行為をしたのか」
「なぜその行為をパワハラだと思ったのか」

価値観を十分聞いた上で価値観を否定せずに行為を否定していくことが重要な点です。

③ 〈対自分〉自分をコントロールする技術(アンコンシャスバイアス)
自分をコントロールする技術とは「自己理解をし、自分の行動を良い結果に向けて動かすことができること」です。
なぜなら組織を頼ることや公平に両者の言い分を聞くということが頭でわかっていても、自分をうまくコントローすることができず、考えた通りに行動することができなければ良い結果に向かうことはできないからです。

ここでのポイントは自己理解です。
特に管理職が自分の持つアンコンシャス・バイアスを理解することをお勧めします。

【参考】
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、自分自身では気づいていない「ものの見方や捉え方の偏り」のことです。

パワハラを管理職として扱い判断していく際に間違った扱いや判断に繋がってしまうのが、行為者・被害者へのアンコンシャス・バイアスだからです。
代表的なアンコンシャス・バイアスを挙げていきます。

・正常性バイアス:危機的状況になっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする
・集団同調性バイアス:集団に所属することで、同調傾向・圧力が強まり周囲に合わせてしまう
・アインシュテルング効果:慣れ親しんだ考え方やものの見方に固執してしまい、他の視点に気づかないか無視してしまう
・ステレオタイプバイアス:あるグループに所属するものには特定の特徴があると判断する
・確証バイアス:仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視、または集めようとしない

このように自分のアンコンシャス・バイアスを理解し、自分を良い結果に向けてコントロールすることができるようになることが重要です。

このように組織的な動きと対象者への関わり、自分のコントロールとバランスよく技術を高めていくことで確かな実行力に繋がっていきます。
管理職が理解し行動に移せるようになる意識、知識、技術をこれまでより大きくレベルを上げていくことが管理職をパワハラ対策に本気になるための重要なポイントになります。

2)管理職がパワハラ対策に本気になるための会社の対策

① 管理職を孤立させない

管理職を孤立させず、会社の問題としてどんなに小さい問題でも一緒に解決していく姿勢を見せ、実際に会社として行動していくことが重要です。
なぜなら人が行動を尻込みする理由の「行動することへの恐れ」です。また行動を強化していく良い方法の一つは成功体験の積み重ねです。

具体的には

① これまで提示したことを管理職に伝えることによって管理職の行動を促していくこと
② ①によって管理職が行動をした時にその行動の結果が管理職にとって良い結果になる支援を行うことです。

①のことを「きっかけ作り」と言います。
ある対象の行動が生み出すきっかけを作るための仕掛けのことです。

②のことを「行動の強化」と言います。
行動をした結果、その行動により良い結果を得ると認識できると人は行動を強化し、その行動により悪い結果を得ると人は行動を減らします。

具体的な例としては

きっかけ作り:管理職研修において「少しでもパワハラの可能性のある行動を発見した場合、すぐにハラスメント相談室にご連絡ください。必ず一緒に解決に向かえるよう対策を考えていきます」

行動の強化:管理職が「部下の1人が新人に対しての指導が厳しすぎるように思う。こんなことで相談して良いかわからないんだけど・・・」といった相談をしてきた時に「相談ありがとうございます。どんな小さく思えても相談してくれることが大事です。ぜひ一緒に考えたいので具体的な状況を教えてください」

このように管理職が相談することがとても大事なことである、ということを伝達することと、相談などの行動が管理職に生まれた時に「あぁ、相談してよかった」という体験をしてもらうことが重要です。
こうやって管理職が1人で抱えず、相談していくことが良い結果に繋がったという体験を一人一人の管理職に示していくこと、そしてそれを継続していくことが管理職を孤立させない会社の対策となります。

② 部下教育を充実させる

この記事では管理職へのアプローチを提示していますが、部下への教育も同じように重要です。
管理職だけが理解していても部下の理解が足りなければ問題はなくなりません。
そのため管理職だけではなく部下にも教育が必要なのです。

特にお勧めするのが

・知識を増やす「パワハラの基本+αまで理解する」のインプット
・管理職と部下の相互理解

です。

なぜなら何度も記述しているようにパワハラの問題は「価値観の違い」によって起きることが多いからです。だからこそ相互理解が大事になるのです。

管理職と部下の相互理解の具体的な取り組み例
「メンバーの取扱説明書作り」
・動物占いやネットでできる性格診断などいくつかのツールを使いながら、お互いに自分のことを話していくワークです。
※この時個人情報として人によっては言いたくないような内容は扱わないようにします。信憑性が高いとか低いではなく、盛り上がるものを中心に行います。ゲーム性を持ちながらお互いのことを理解していくことができますし、そういったワークからメンバーの価値観も見えてきます。

「テーマ別まじめな雑談」
・「仕事で重要だと思うこと」「褒められるならどんな言い方をしてほしい」「モチベーションが上がる瞬間」など、あるテーマを決めて自分の思うことを話し合うワークです。
このワークを行うことによってメンバー個人の考え方や価値観が見えてくるということと「お互い違う考え方、価値観を持っているんだ」という「お互いが違う」ということを理解することにも繋がります。

こういった活動を部署ごとだったり、組織横断的に行っていくことが管理職と部下の相互理解のために有効な会社の取り組みとなります。

3)まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございます。
ぜひ上記の内容を参考にしてくださり、パワハラ対策の一助としてくださることを願っています。

パワハラとはとても根気のいる問題ですが、丁寧に対応していけば、必ず解決できます。
パワハラを解決するためにも、必ず下記内容を抑えてください。

■管理職がパワハラ対策に本気になるためのさせる3つのポイント(プロセス?)
・意識を変える「パワハラ対策の必要性と重要性を認識できるようになる」
・知識を増やす「パワハラの基本+αまで理解する」
・技術を高める「パワハラ対策の3本柱を実施できるようになる」

■管理職をパワハラ対策に本気にさせる会社の対策(管理職に対して、組織が支援できること ~パワハラ対策への負担軽減~)
・管理職を孤立させないための会社からの働きかけ
・部下教育を充実させる

パワハラに困っている管理職が「見て見ぬふりをして、諦めてしまう。隠ぺいしてしまう」や「一生懸命関わっているが、なかなか解決の糸口がみつからない」ではなく、管理職がパワハラ対策に本気になれるように、会社として支援をしていきましょう。

もしもっとより詳しく知りたい、自分の会社の対策を具体的に考えたいと思った方はご相談ください。各会社に状況や状態に応じた対策を一緒に考えていきます。
本コラムが皆さんの助けになれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。