OJTとOFF-JTの違いは?特徴や組み合わせのコツを押さえ、育成の質を高めよう!

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研修 OJT OffJT 違い

「OJTとOFF-JTの違いについてなんとなくは理解しているけど、説明してって言われたら難しいかも…」
「OJTとOFF-JTを同使い分けたらいいのか、わからない…」
「OJTとOFF-JTの違いについて今更メンバーに聞きにくい…」

そのようなお悩みをお持ちの方が多いのではないでしょうか。

OJTとOFF-JTはどちらも育成方法の一つですが、適切な場面や育成者に対する効果は異なります。
しかし、OJTとOFF-JTの違いが明確になっていないために、自組織の中でどちらの方法で育成をしていくべきか迷っている方も多く感じます。

そこで本記事ではの違いについてお伝えし、それぞれの育成効果を高めるためのポイントをお伝えします
この記事を読むことで、OJTとOFF-JTでの育成方法に迷うことなく、効果的な育成手段を選択できます。育成の質を高めて、社員の成長を促し、組織の成長につなげていきましょう。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

1)OJTとOFF-JTの違い

OJTとOFF-JTはどちらもトレーナーがトレーニーの成長と自律を促すことを目的とした育成方法です。しかし、職場を離れて行うか、職場で行うか、という点に大きな違いがあります。

※トレーナーとは、社員の成長のために仕事で必要なスキルや知識を教える役割の人です。
※トレーニーとは、育成を受ける側の人のことを指します。

下記の表にOJTとOFF-JTの違いをまとめました。

OJT OFF-JT
目的 トレーニーの成長と自律を促すこと
実施状況 実務中 実務外
指導方法 トレーナーとトレーニー1対1 講師・登壇者と複数のトレーニーで1対複数人
効果的な活用場面 ・育成の費用が少ないとき
・実務を行いながらの方が教えやすいとき
・個々の状況に合わせた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき
・同時に複数人に育成したいとき
・スキルや知識の土台を作りたいとき
・実務とは異なる専門的な知識を教えたいとき
難しいこと ・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築
・実践的な経験
・育成の個別化
・育成コスト

OJTとOFF-JTについて、詳しく説明します。

OJTとは

”On-the-Job Training”の略です。業務の中でトレーナーがトレーニーへ1対1で必要な知識やスキルを身につけていけるように育成することを指します。

OJTの効果的な活用場面

OJTの効果的な活用場面は以下のときです。

・育成の費用が少ないとき
・実務を行いながら教える必要があるとき
・個々の状況に合わせた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき

順番に説明します。

・育成の費用が少ないとき
OJTは育成の費用が少ないときに特に適しています。実務の中で先輩社員が業務時間の中で育成するためです。特別な設備や教材、外部トレーナーの雇用など、追加のコストが発生しないため、育成に予算が割けない時に活用されやすいです。

例えば新入社員が10名いて、全員に外部研修を1回受講させようとすると、数30万円程度かかる場合もあります。しかしOJTでの育成ではその費用をかけることなく育成できます。
ただし、OJTでは基本的な型や根本的な考え方を教わらないことが多いため、社員へ身につけてほしいスキルの優先順位をつけて、OFF-JTと組み合わせる必要があります。

このように、OJTは育成の費用が少ない場面で、スキルを習得させることができるため、育成の予算が少ない企業が始めに取りかかりやすい育成手段です

・実務を行いながらの方が教えやすいとき
OJTは実務を行いながらの方が教えやすい、具体的なスキルや知識の習得に最適です。一緒に作業を行うことができ、細かい部分を確認しやすいためです。特に実務での適用方法やコツを教えるときに適しています。

OJTでは、具体的な実務を通して仕事の進め方や対応方法を学ぶため、学んだことと同じ仕事を行う際にすぐに活かすことができます。また、クライアントに合わせた資料の作り方などは、実務を通しながらでないと教わることは難しいです。

このように、OJTは具体的な細かいスキルや知識を実務にすぐに活かしてほしい場合に効果的です

・個々の状況に合わせた育成が必要なとき
OJTは、個々の状況やスキルに合わせた育成が必要なときに効果的です。育成のコンテンツが定まっているわけではなく、柔軟に対応できるためです。個々の社員のスキルや実務の状況に応じて育成コンテンツを考え、苦手の克服や強みの強化を行えます。

例えば、資料の作成が苦手な人がいた場合は、その人のスキルとペースに合わせて、最初は1ページから徐々に任せるページ数を増やすような育成を行うこともできます。また、自分で考えて発言することが得意な人の場合は、その特徴を活かせるように会議でトレーニーに話を振ることで成長を促せます。

このように、OJTは、個々の状況やスキルに合わせた育成が必要な場面で効果的です

・縦のつながりを強化したいとき
OJTは、縦のつながりを強化したいときに特に適しています。育成を通してトレーナーとトレーニーで関わりを作ることができるためです。

スキルの提供だけであれば、OFF-JTやeラーニング、読書などでも学ぶことはできる部分はありますが、それだと社員同士が関わる機会を作れません。
育成を通して関わる機会を設けることで、育成以外でもトレーニーが抱えている不安を解消したり、組織の価値観や文化を学ぶこともできます。

また、いずれ部下育成が必要になる中で、OJTは育成を実践を通しながら学べる良い機会にもなります。後輩を育てていく文化を組織として持つことで、縦のつながりが強化されていき、組織の成長を促しやすくなります。

このように、OJTは組織内で縦のつながりを強化し、組織としての結束力を作る上でも効果的です

これらの場面で、OJTの特徴を活かして育成を促すことができます。

OJTでの育成で難しいこと

OJTの育成で難しいこととして以下の点が挙げられます。

・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築

順番に説明します。

・統一した教育
OJTの育成で難しいこととして、統一した教育を行えない点が挙げられます。トレーナーの指導の質やスタイルをには個人差があるためです。

トレーナーが皆全く同じ経験をしていることはなく、それぞれの経験によって、教えられる知識やスキルも異なります。また、トレーナーの育成に対するモチベーションもそれぞれで、トレーナーによっては、トレーニーに教えることをせず、指示しか渡さない人もいます。
さらに、成績は優秀でも育成の仕方を知らなければ、トレーナーを傷つけたり、意味のある学びができない場合もあります。

このように、OJTの育成においては、育成者間の差異が生じることは避けられない課題です

・論理的・体系的な指導
OJTの育成で難しいこととして、論理的・体系的な指導が行えないことがあります。OJTは実務を通じてスキルを習得するプロセスであり、トレーナーが論理的な背後や原則を説明することが難しいためです。

例えば、トレーニーに対して報連相をもっとしてほしいと思い、報連相教科の育成をするときに、なぜ報連相をしてほしいのか、報連相の具体的な方法、報連相で意識することなどを丁寧に説明できるトレーナーは少ないです。よくある言動としては、トレーニーが報連相をしなかったときに、「なんで報告してくれなかったの?次から、自分で動く前に報告してね。」としか伝えない、という言動です。

これではトレーニーとしては、次のような考えが浮かんでいます。「なぜ報告する必要があったのか、自分で動く前って具体的にどんなとき?コピーを取るときも許可を得ないといけないのかな?報告してって言われても、先輩ほとんど席にいないじゃん。どうしたらいいの?」
これでは、もやもやしているだけで学ぶことはできていません。結局どのタイミングで報連相を求められているのかがわからず、トレーナーはその度に注意し、トレーニーが成長しないと愚痴をこぼすようになるでしょう。
トレーニーが自ら報連相のタイミングを考えるためには、報連相を行う意味や理由を学ぶことが必要です。上辺ではなく、本質的な部分を理解してもらうことで、トレーニーは自律できます。

このようにOJTでの育成において、論理的・体系的な指導を提供するのは困難な場合があります。

・育成時間の確保
OJTの育成で難しいこととして、トレーナーが育成時間を確保ができないことがあります。トレーナーは育成だけでなく、他の実務も請け負っており、それが評価に影響するためです。

実務と育成では、実務の方が優先順位が高くなりやすく、育成の時間が確保しきれないことも多いです。特に、組織の中で育成に対する評価が行われていない場合は、トレーナーは自身の評価を高めるために実務に時間を費やしたくなるのは明らかです。
OJTでは、トレーナーが費やしてくれる時間に応じてトレーニーの学びの量が変わるため、トレーナーが育成時間を確保できなければ、トレーニーの成長を促すことはできません。

このように、OJTの育成において、育成時間の確保が難しいことは、トレーニーの成長を停滞させてしまう課題です

・トレーナー、トレーニーの関係性の構築
OJTの育成でトレーナーとトレーニーの関係性が構築されていない場合、学びが弱くなることがあります。関係性が希薄だと、トレーナーは思いを持って育成することができず、育成に力を入れることが難しくなるためです。また、トレーニーも関係性が築けていないと、トレーナーからの情報共有やフィードバックの受け入れが難しくなります。

トレーナーとトレーニーの関係性が構築できていないと、できる限りコミュニケーション量を抑えて関わらないようにしたい、という思いも出てきます。そのため、報連相の頻度が減ったり、指導をしなくていいように同じような仕事しかトレーニーに渡さず、トレーニーの成長を促すことができない状態にもなってしまいやすいです。

このように、OJTの育成において、トレーナーとトレーニーの関係性が構築されていないと、学びの質と効果が低下する可能性があります

OJTにはこれらの部分で難しさを感じることがあります。

このようにOJTでは難しいことがありながらも、実務中にトレーナーとトレーニーが1対1で、費用を抑えながら具体的なスキルや知識を個別のスキルに合わせて育成できることが特徴です。

OFF-JTとは

”Off-The-Job Training”の略です。職場を一時的に離れて行う教育の総称で、研修・セミナーの受講や通信教育、eラーニングなどを通じて業務に必要な知識を身につけることを指します。

OFF-JTの効果的な活用場面

OFF-JTの効果的な活用場面は以下のときです。

・同時に複数人に育成したいとき
・スキルや知識の土台を作りたいとき
・実務とは異なる専門的な知識を教えたいとき

順番に説明します。

・同時に複数人に育成したいとき
OFF-JTは同時に複数人に育成したい場合に効果的です。同じ内容を複数人が受講することができるためです。
研修やセミナーであれば、講師や登壇者1名に対して多くの受講者が参加できます。通信教材やeラーニングでは、同じコンテンツを見ることで、同じ学びを得られます。

このように、OFF-JTは同時に複数人に育成する場面において、一貫性のある知識やスキルを提供する際に効果的です

・スキルや知識の土台を作りたいとき
スキルや知識の土台を作りたいとき、OFF-JTが効果です。基本的な概念や原則をしっかりと理解するための時間を持つことができるためです。

例えば、課題を明確にして深掘り、コミュニケーションスキルを通して共創による課題解決を行う研修では、問題解決のフレームワーク・考え方を学んだり、ヒアリングスキル、トーキングスキルを学ぶことで網羅的に問題解決のための言動を学ぶことができます。そして、ここで学んだことを自身の実務に応用してくことで、どのような課題に対しても学んだことを活かして解決できます。

一方OJTでは、具体的な実務に対して今回はこのように対応する、ということしか学べず、全ての課題に共通して使えるスキルを身につけることは難しいです。

このように、OFF-JTは基本的な概念や原則を習得し、深い理解を養うのに適しています

・実務とは異なる専門的な知識を教えたいとき
OFF-JTが効果的な場面は、実務とは異なる専門的な知識を教えたいときです。特定の分野や業界の専門家が、その分野に関する深い知識やスキルを提供できるためです。

例えば、キャリアについてや、リーダーシップ、コンプライアンスなどについては、社会人経験が長いから知っている、というような内容ではありません。このような実務とは異なるが社会人として必要なテーマについては、それらの専門家から学ぶ方が深い学びを得ることができます。

このように、OFF-JTでは実務とは異なる専門知識を学んでほしいときに効果的です

これらの場面で、OFF-JTの特徴を活かして育成を促すことができます。

OFF-JTでの育成で難しいこと

OFF-JTの育成で難しいこととして以下の点が挙げられます。

・実践的な経験
・育成の個別化
・育成コスト

順番に説明します。

・実践的な経験
OFF-JTでの育成で難しいことの一つは、実践的な経験が不足することです。実際の仕事環境とは異なり、シミュレーションや理論的なアプローチに焦点を当てることが多いためです。

OFF-JTで実務につなげる時間がないと、知識やスキルを学んだはものの、具体的に実務でどのように活かしたらいいのかがわからず、成長につなげることができなくなってしまいます。

このように、実践的な経験を完全に代替することは、OFF-JTでの育成で難しいことの一つです

・育成の個別化
育成を個別化できないこともOFF-JTでの育成で難しいことの一つです。多くの受講者に対して学びを提供するスタイルのためです。

リアルタイムで行う研修やセミナーなどは、個別のフォローはできますが、受講者全体を見ているため、個々の受講者のスキル、知識、およびニーズに合わせたトレーニングを提供することは難しいです。eラーニングなど動画学習を1人で受講している場合は、フォローしてくれる人がいないため、わからないままになってしまいやすいです。

このようにOFF-JTでは、受講者の個別のニーズや進行速度に合わせた育成は難しくなります

・育成コスト
OFF-JTの育成には追加のコストが発生することがあります。内省での研修やセミナーなどは追加費用が発生しないこともありますが、外部研修やセミナーへの参加、eラーニング教材の購入などには費用が発生するためです。

そのため、育成予算を確保できており、社員に身につけてほしい優先度が高いものでないと、受講ができません。

このようにOFF-JTでは、育成コストがないと実施ができない、という難しさがあります

OFF-JTにはこれらの部分で難しさを感じることがあります。

このようにOFF-JTでは難しいことがありながらも、基本的な概念や原則、専門的なスキルや知識を複数人に提供することができることが特徴です。

【参考】SDとは

SDとは”Self Development”の略で、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTと大きく異なるのは、原則として企業に強制力がない点です。企業は「自己啓発支援制度」などとして社員に学ぶ機会を提供できますが、学習内容の選択や頻度の設定は社員の意思に委ねることになります。

SDの主な種類
・eラーニング
・スクール通学支援
・外部セミナー等の参加費負担
・業務に関する資格取得の支援制度
・書籍購入の補助
・副業支援 など

このように、トレーニーの成長と自律をすという同じ目的においても、さまざまな育成方法があり、それぞれの特徴を活かせるように設計することが大切です。

2)OJTの質を高めるためにすべきこと

OJTの質を高めるためにすべきことは下記の4つです。

・トレーナーの育成に対する想いを醸成する
・トレーナーの育成スキルを高める
・トレーナーとトレーニーの関係性を築く
・トレーニーの背景を理解しようとする

それぞれ説明します。

トレーナーの育成に対する想いを醸成する

OJTの質を高めるためには、トレーナーの育成に対する想いを醸成することが重要です。トレーナーの育成に対するモチベーションによって、育成の質が変わってくるためです。

トレーナーの想いや当事者意識を醸成するためには、組織の中でトレーナーが評価される立場である状態を作り、トレーナーに選ばれたことに対して誇りを持てる状態にすることは一つの方法です。
具体的には、トレーナーとして選出されたときに表彰式を行なってトレーナーとして期待していることを伝えるとか、トレーナーとなることで評価にポジティブな影響になるようにするなどです。

また、トレーナーの想いや当事者意識を醸成するためには、下記のような内容について考え、トレーナー自身が自分なりの答えがある状態を作れることも大切です。

・そもそもなぜOJTをする必要があるのか
・OJTによってトレーナーが得られるメリットは何か
・OJTを行うことで自分は組織に対してどのような貢献ができるのか
・OJTを行うことによってどのようなキャリアが開かれるのか

これらに自分なりの意味を見出せていると、育成に対して想いを持って取り組みやすくなります。

トレーナーの育成スキルを高める

OJTの質を高めるためには、育成者の育成スキルを高めることが重要です。いくら優秀な社員でも育成すきるがなければ、知識やスキルを適切に後輩に伝えることができないためです。

アーティエンスでは大きく4つのスキルが必要になると考えています。

4つのスキルというのは

・育成計画作成スキル
・ティーチングスキル
・フィードバックスキル
・コーチングスキル    です。

育成計画作成スキル

育成計画は、後輩に目指して欲しいところを明確にし、そのためにどのような指導を行い、どのような仕事を渡せばいいのかという道筋になります。目指すべきところとそのためにやるべきことが明確になっていると、指導が行いやすくなります。

ティーチングスキル

ティーチングは、スキルを渡したり、仕事の進め方を説明するときに必要です。伝え方がうまくないと、後輩が理解しきれず、修正の回数が多くなったり、指導に時間がかかってしまいます。

フィードバックスキル

フィードバックは、後輩の行動を改善・強化するために必要です。後輩が行った言動に対して、どのようなフィードバックを行うかで、後輩の成長やモチベーションへの影響が変化します。

コーチングスキル

コーチングは、後輩を自律・自走させるために必要です。後輩に対していつまでも指導をし続けるのではなく、自律して一人でも仕事を任せられるようになってもらう必要があるためです。

【参考コラム】
管理職研修におけるコーチングの活用方法と、3つのメリット

これら4つのスキルを高めることで、OJTでの育成の質を高められます

【参考コラム】
トレーニーを成長させるOJTトレーナーに必要な4つのスキル
管理職が部下育成で担う役割と押さえるべき6つの育成ポイント
OJTの8つのメリットとは?効果を最大化させる4つのポイントを詳しく解説!

トレーナーとトレーニーの関係性を築く

トレーナーとトレーニーの関係性を築くことも大切です。関係性が良くないと質の良い仕事が生まれないためです。

トレーナーとトレーニーの関係性を築けるようにするために、組織として次のような支援を検討して見ましょう。

OJTトレーナーへのフォロー

・業務量の確認と調整をする
OJTトレーナーの業務量を確認して見ましょう。時間に余裕がないと、トレーニーの育成は後回しにしてしまいがちだからです。OJTトレーナーが自分の仕事のみで業務時間がいっぱいになってしまっている状態の場合は、トレーニーの育成を行うための時間を作るために、OJTトレーナーの業務量の調整を行いましょう。

・トレーナーを任せている意味を伝える
トレーナーを任せている意味を伝えましょう。OJTトレーナーをやらされている、と感じている場合はモチベーションが低く、トレーニーに対して雑な対応をしやすくなるためです。OJTトレーナーに選出したポジティブな理由を伝えることで、選ばれてOJTトレーナーを任されているんだという感覚になり、モチベーションの向上につながります。

・OJTスキルを渡す
OJTに必要なスキルを渡しましょう。どのようにトレーニーに接したらいいのかがわからないという人もいるためです。OJTに必要な育成計画、ティーチング、コーティングのスキルを学ぶことで、コミュニケーションの取り方を知り、改善を期待できます。

トレーニーのフォロー

・放置をしない仕組みを創る
放置をしない仕組みを創りましょう。ほったらかしにされている感覚があると、トレーナーに対して批判的な感情を抱きやすいためです。

具体的には、
・日報・週報に対して、トレーナーがコメントを返す
・部内の朝礼のあとに、二人で当日のスケジュールを確認する朝礼を行う
・月に一回、ランチを行う(会社からの支援金あり)
などが考えられます。

OJTトレーナー・トレーニー両者へのフォロー

・1on1などで、両者から話を話を聞く機会を創る
1on1などで、両者から話を話を聞く機会を創りましょう。話す機会を設けることでお互いのモヤモヤや悩み、不安や不満がわかり、フォローできるようになるためです。機会を設けていないと、仕事での人間関係に悩み退職を決意してしまう可能性もあります。
月に1回は1on1などで状況を確認できるようにしておきましょう。

・パルスサーベイを実施する
パルスサーベイを実施しましょう。OJTトレーナーとトレーニーの状態を把握するためです。OJTトレーナーとトレーニーの認知の違いを確認することで、新たな気づきが生まれやすくなります。

アーティエンスで開発したパルスサーベイを実施すると、多くの場合でOJTトレーナーとトレーニーで認識の差が起きています。

※ パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施し、その推移結果から組織や従業員の状態を把握する調査手法のことです。

見えなかったことをこのように視覚的にすることで、ズレを認識でき、調整していくことができます。

・合同研修を実施する
OJTトレーナーとトレーニーが合同で行う研修を実施するのも一つの方法です。お互いに本音を伝える機会を設けることで、お互いへの感謝や気づきを得ることができるためです。

アーティエンスでは、新入社員・OJTトレーナー合同研修を実施しています。その様子を見ていると、OJTトレーナーはトレーニーがそんなことを気にしていたのか、ということに気づきを得ていることが多いです。一方トレーニーは今まで意識していなかったけど自分のために頑張ってくれていることに気づいたり、細かい成長を見てくれていることを知り、感謝を感じていることが多いです。このような経験をすることで関係性が見直され、お互いの成長を促すことができます。

これらのことを実践し、トレーナーとトレーニーの関係性を築けるようにしましょう。そうすることで成長スピードも向上しやすいです。

【参考コラム】
OJTトレーナーと新入社員の関係性の作り方について、人事ができることとは
新入社員の教育担当者が知っておくべき4つのこと|よくある悩みと対処法も解説

トレーニーの背景を理解しようとする

トレーニーである、若手社員や新入社員の背景を理解しようとすることも必要です。トレーナーとトレーニーで持っている価値観が異なる場合があるためです。価値観が異なっている場合は、お互いの意見を理解することが難しくなります。

価値観が異なることを認識できていないと、お互いの意見に対して「なぜそんなことするの?」という怒りや呆れの感情が湧いてきて、不快感を感じることになります。このときに「普通はこうでしょ」「社会人として〇〇できないのはありえない」など自分の価値観で相手に伝えてしまっては、お互い納得できません。

一方、価値観が異なることを認識しておくと、「あなたはそんな考え方を持つんだね、なるほど」と理解はできないかも知れませんが受け入れることはできます。この状態になって初めて、解決策を考えられるようになります。

お互いの価値観は全く異なっているという前提を持って接し、価値観が異なることに出会ったとき、その言動に至った背景を考えたり確認して歩み寄ることが大切です

このようなことを意識することで、OJTの質を高めることができます。

3)OFF-JTの質を高めるためにすべきこと

OFF-JTの質を高めるためにすべきことは下記の3つです。

・実践的なワークを取り入れる
・学んだことを現場で活かすイメージをする
・受講生の状態に応じて柔軟に対応する

順番に説明します。

実践的なワークを取り入れる

OFF-JTの質を高めるためには、OFF-JTで実践的なワークを取り入れることが非常に重要です。スキルや知識を身につけるためには実践が不可欠なためです。

アメリカ国立訓練研究所の研究によると、講義を受けるだけだと学習定着率が5%なのに対し、自ら体験をすると学習定着率が75%になると言われています。

アーティエンスの研修では、受講者に実践してもらう割合が7-8割を占めています。これは、学習定着率を高めて、実務に学びを活かしやすくするためです。

このようにOFF-JTでは講義だけを行うのではなく、受講者が学んだことを実践するワークを設けることで学びの効果を高めることができます

学んだことを現場で活かすイメージをする

OFF-JTの質を高めるためには、学んだことを現場で活かすイメージをすることも重要です。学んだことを実務に活かしやすくするためです。

アーティエンスの研修では実践を通した学びの後、学んだことを現場にどう活かせるかを言語化してもらうようにしています。そうすることで、その場面になったときに学んだことを思い出しやすく、実務で活かすことができます。

このようにOFF-JTでは、学んだことを現場でどのように活かすかをイメージする機会を設けるようにしましょう

受講生の状態に応じて柔軟に対応する

受講生の状態に応じて柔軟に対応できるようにしましょう。受講生が集中し、主体的に取り組み、学ぼうという姿勢がないと、学びが弱くなるためです。

eラーニングなど収録された動画を見て学ぶ形式だとできませんが、研修やセミナーなどリアルタイムで実施できるものについては、その場の状態に合わせて柔軟に対応することで、質の良い学びに繋がります。
当たり前と思う方もいると思いますが、中には用意した通りのことを伝えることを目的にしている講師や登壇者もいます。しかしこれでは、受講者の状態と合致していないときに、学びを得ることはできません。

そのため、アーティエンスの研修では、この研修で絶対に伝えるポイントを3つほどに絞り、その内容を伝えることは遵守した上で、受講生の状態に応じて柔軟に対応するようにしています。例えば、実践ワークの時間が足りなそうだったら追加したり、受講生の集中力が切れてきたら休憩を小まめに入れたり、今までとは異なる部分を動かしてリフレッシュするなどです。その分時間を削らないといけない箇所が出てきますが、それでも、受講生が学びを受け取れる状態でないと意味がありません。

このようにOFF-JTの質を高めるためには、受講生の状態に応じて柔軟に対応することが必要です

このようなことを意識することで、OFF-JTの質を高めることができます。組織に足りていないところから実施していき、育成の質を最大限高められるようにしましょう。

4)OJTとOFF-JTの組み合わせて育成の質を高める

1章でお伝えしたように、OJTとOFF-JTはにはそれぞれ良い点・課題点があります。そのため、OJTとOFF-JTをどちらか一方だけではなく、それらの特性を活かせる状況に応じて育成方法を組み合わせることをおすすめします。

おすすめの組み合わせ方は、OFF-JTで根本的な考え方や型を理解して、その後OJTで個別指導を行う組み合わせ方です。そうでないとOFF-JTでのトレーナーの負担が大きくなるためです。トレーナーは基本的な概念や原則を何度も説明する必要がなくなり、より具体的な指導に集中できます。

また、先にOFF-JTで統一的な教育を提供することで、組織全体で一貫性のある理解が確保される、というメリットもあります。社員が共通の基盤を持つことで、共通事項が増え、コミュニケーションが円滑になります。OJTでの育成も個別のスキルに合わせて足りない部分を強化し、強みを磨くことに専念できます。

OJTとOFF-JTを組み合わせるときに意識したいことは、OFF-JT後、OJTの中で定期的にリマインドをして学んだことを思い出し実務に活かせるようにすることです。

人は誰しも忘れていきます。人の忘却のメカニズムの研究によると、「1日後には34%、1か月後には21%しか記憶した内容を覚えていない」という研究結果(Ebing Housの忘却曲線)があります。

画像参照:エビングハウスの忘却曲線

OFF-JTでの学びを記憶に留めるだけでなく、認知・行動変容へとつなげていくには、OJTでの学びの振り返りは不可欠です。

具体的なリマインド方法は下の4つです。
・バトンメール®
・日報
・トレーナーや現場社員から
・フォローアップ研修

それぞれ説明します。

・バトンメール®
アーティエンスでは研修後のフォローとして、バトンメール®を推奨しています。バトンメール®は、アーティエンスが開発した、研修後のフォローツールです。受講生4~5名のグループになり、1週間に1回、「研修で学んだことをこんな風に現場で使ったよ」という内容を書いたメールを書いて、次の人に回していくというものです。(メールでなく、ビジネスチャットツールなどでも大丈夫です。)

バトンメール®を行うことで、研修の学びを自身で内省する時間を作ることができ、また、チーム学習も行われるため、学びの質をより高め、学びの定着を期待できます。

・日報
日報で、OFF-JTで学んだことをどう活かしたのかを記載する方法です。日報に書くためにも、仕事を行う中で研修で学んだことを活かせないか意識しやすくします。

例えば「研修で学んだことを今日の仕事の中でどのように活かしましたか?」という設問を日報の中に設けることで、無意識的にも研修で何を学んだのかを思い出すことにつながり、リマインドの効果が生まれます。

研修で学んだことを思い出す回数や、テキストを見直す回数が増えると何度も思い出すため記憶に定着しやすく、学びを定着させることにつながります。

・トレーナーや現場社員から
OFF-JTの内容を現場社員に周知して、トレーナーや現場社員が学んだことを活かした育成を行えるようにしましょう。

例えば、トレーニーが参加したロジカルシンキング研修のテキストを見て、どのようなことを学んだのかを知っていると、実務でロジカルシンキングを活かせる場所を教えることができます。そして、そこでどのように活用するのかを理解することで、OFF-JTで学んだことを実務に活かせるようになり、トレーニーの成長を促すことができます。

アーティエンスでは、現場社員の方にも後輩や部下、トレーニーがどのようなことを研修で学んだのかを知ってもらうために、研修の様子と内容がわかるレコードを作成しています。

※当社が作成した研修レポートの一部

当社で作成したレコード資料を共有していただくことで、研修で学んだことや、様子がわかるため、OJTでの育成に活かしやすいです。OFF-JTの内容を現場社員に周知することで、組織全体で学習効果を高めることができます。

・フォローアップ研修
フォローアップ研修を行うことで、忘れてしまってた学びを思い出し、成長につなげることができます。

例えば、当社の上司との協働体感研修では、ビジネススキル(要件定義、タスク分解、スケジューリング、報連相、問題再発防止)を活用しながら、上司役である講師とシミュレーションワークを行います。その中で、自分たちの強みや弱みを探求し、現場での活用法を考えます。

学び直しながら、どのように現場で仕事のスピードや質を高めていくかを探求する機会を設けることで、成長を促すことができます

【参考コラム】
【新入社員フォローアップ研修】タイミングや内容は?押さえたい3つのポイント

OJTとOFF-JTはそれぞれ異なる特徴を持っているため、どちらか一方しか行わないのではなく、それらの特性を活かせる状況に応じて育成方法を組み合わせることで、育成の質を高め、成長を促しやすくなります。

5)まとめ 〜アーティエンスはOJTとOFF-JTどちらの観点からもサポート〜

本記事ではOJTとOFF-JTの違いについてお伝えし、それぞれの育成効果を高めるためのポイントをお伝えしました。

OJTとOFF-JTはどちらもトレーナーがトレーニーの成長と自律を促すことを目的とした育成方法です。しかし、職場を離れて行うか、職場で行うか、という点に大きな違いがあります。

OJT OFF-JT
目的 トレーニーの成長と自律を促すこと
実施状況 実務中 実務外
指導方法 トレーナーとトレーニー1対1 講師・登壇者と複数のトレーニーで1対複数人
効果的な活用場面 ・育成の費用が少ないとき
・実務を行いながらの方が教えやすいとき
・個々の状況に合わせた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき
・同時に複数人に育成したいとき
・スキルや知識の土台を作りたいとき
・実務とは異なる専門的な知識を教えたいとき
難しいこと ・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築
・実践的な経験
・育成の個別化
・育成コスト

アーティエンスでは、OJTトレーナー向けの研修をはじめ、さまざまな階層や目的に合わせた研修を用意しています。もちろん、自組織の状況に合わせてカスタマイズすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。育成の質を高めて社員の成長を促し、組織の成長につなげていきましょう。

新入社員研修サービス資料
講師派遣型資料 公開講座型資料

参考:より安全な医療システムを実現するレジリエントメディカル