新入社員に感じる『あるある』16選|業務でつまずく『あるある』とその対処法

更新日:

作成日:2023.10.27

会議中の社員 新入社員の『あるある』を知って育成に活かしたい!

そのような思いを持っていらっしゃる方も多いかと思います。

時代変化と共に新入社員の傾向は変わるものの、新入社員がよくやりがちなミスや失敗、新入社員が抱えやすい悩みや不安などは、昔も今も大きく変わらない部分もあります。

そういったポイントを育成側が把握しておけると、新入社員育成に取り組みやすくなります。

そこで本コラムでは、新入社員を育成する中で人事担当や上司・トレーナーの方々が感じる 『あるある』とその対処法を、4つのカテゴリー別にをお伝えしていきます。

執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1)業務遂行に関する 新入社員の『あるある』4選

まず、業務遂行に関するあるあるを4つお伝えします。

「いいからやって」が、通用しない

上司やトレーナーの時間がなく、まずはやってほしい時に「いいからやって」と言ってしまうこともあるのではないでしょうか。しかし、新入社員に「いいからやって」と言ってもなかなか通用しないことがあります。

この理由として考えられるのは次の3つです。

・何のために行うのかを理解できていないため、どう動けばいいのか判断しきれていない
・なぜその行動をしないといけないのか疑問を持っている
・自分の意見と異なることをやらされようとしている

何のために行うのかを新入社員が理解できていない場合は、前提の説明を理解しきれていない可能性があります。そのため、なぜ今このように進めて欲しいのかを改めて伝え直すことが必要です。

特に最近の新入社員は、なぜそのような言動を取るべきなのか、自分で納得しないと動かない特徴を持っている方が多いです。忙しい時は、「いいからやって」と伝えてしまいがちですが、新入社員が理解していないのに、「やれと言われたからやった」と言う行動を取らせてしまうことには注意が必要です。一緒の仲間というより従わせる人と従わされる人、というような関係性になってしまうためです。

時間がなく説明が難しい場合は、「今時間がないので、あとでしっかり説明をするから、まずは言ったことをやってくれるかな」と伝えるのも一つの方法です。忙しい中で指導をしないといけないため、「いいからやって」と言いたくなるのはすごく理解できますが、新入社員が納得した上で仕事を行える状態を作ることを意識しましょう。

1から10まで説明しないと動かない

自分の仕事で忙しくしている時は、3伝えたら7くらい理解して欲しいと思うことがあるかと思います。
しかし、新入社員はまだ社会人としての経験が少ないため、上司・先輩・トレーナーと同じ考えを持つことができません。そのため、依頼するときやメッセージを伝えるときに、1から10説明しないと新入社員が動いてくれないと感じることがあると思います。

3伝えたら7くらい理解してもらうようになるためには、経験が必要です。新入社員に対して「このくらい考えたらわかるでしょ」というようなことも、新入社員は全くわからないということもあります。そのため、新入社員のうちは、新入社員が理解できるように、時間がかかるかもしれませんが丁寧に伝えるようにしましょう。経験を積み重ねていく中で、少しずつ理解のスピードも上がり、内容の把握もできるようになっていきます。

失敗を恐れて、チャレンジしない

新入社員の成長のためを思って提案しているにもかかわらず、新入社員がミスや失敗を怖がってチャレンジしようとしない、ということがあります。

新入社員は、自分はまだ知識もスキルも経験もないため自信を持って仕事をすることが難しいと感じています。そのため、失敗しても受け入れてくれたり、フォローしてくれると思えないと、なかなかチャレンジすることができません。新入社員にチャレンジしてほしい場合は、失敗しても大丈夫という安心感を新入社員に感じさせてあげることができると良いです。

例えば、営業の打ち合わせの商品説明について新入社員にやらせてみたいと思った場合は、「もし抜け漏れや異なったことを話していたら私が説明を付け足すので、一回自分が良いと思う方法でやってみて」という声掛けをもらえると、安心感を持つことができます。

失敗したことで、怒られるとか相手に迷惑をかける、というイメージが強くなってしまうと、そのことを避けたいがためにチャレンジをしなくなります。

新入社員に対しては「結果がどうであれ、それまでにしっかり準備した上でチャレンジできていたら、必ず学べることがある。そして、ちゃんと準備していることがわかっていたら結果によって評価が下がるということはないので安心してほしい」ということを伝えて、チャレンジをしやすくしてあげましょう。

わからないことについて質問しに来ない

新入社員の中には、わからないことについて質問せずに自分なりのやり方で済ませてしまったり、そのままにしておく、という方がいます。上司・先輩・トレーナーからみると、なんで質問しに来ないのか不思議に感じることも多いと思います。しかし、新入社員は、質問しなくても自分で解決できるならいいのではないかと考えているのです。

例えば、捨てていいゴミか分からないなと思った時に、「このゴミって、ここで捨てても大丈夫ですか?」という確認はしません。そうではなくて、「このゴミをここに捨てていいか分からないから、家に持ち帰って捨てよう」という発想になるのです。特に、自分が今いる環境に馴染めていないと感じている新入社員は、そのような行動を取ることが多いです。

自分で解決できるなら、「わざわざ質問しなくて良いか」という考えです。この行動の裏には、「相手の時間を奪わないようにしよう」とか、「できるだけ自分でできることは自分でしよう」という思いがあります。もちろん自分で考えて行動している、という部分については良い部分もありますが、新入社員個人の判断で物事を実行してしまうリスクもあります。

もしかしたら、新入社員がゴミだと思っていた資料のなかに個人情報が入っていて、そのゴミから情報が漏れて大きな問題に繋がるということがあるかもしれません。このことで一番大変なのは、新入社員が相談なしに勝手に行っていることなので、問題が起きるまでそのような言動があったかどうかが分からないということです。

問題が起きてからだとその後のフォローが大変になるため、まだ社会や組織のことを理解しきれていない新入社員が個人の判断で行動しないように指導することが大切になります。基本的には、個人で判断することなく、どんな些細なことでも確認や相談してもらうように伝え続ける、ということが始めの段階では必要です。

しかし、いつまでも確認し続けることはできないため、自分で責任を持って判断できるようになるためのモラルや会社のルールを教える機会も必要になります。

モラルは、通常、「道徳」、「倫理」、「社会・環境に対する精神的態度」と定義されます。端的に表現すると、「善悪を判断する基準」ということになります。モラルを意識・使用する際に重要となることは、「環境や対峙する人・集団」によっても変わってくることです。

例えば、日本とアメリカでは、求められるモラルの在り方は異なりますし、企業ごとでも異なってきます。当社の社会人の自覚研修では、以下のようなワークを行って新入社員自身に考えてもらう時間をとっています。

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アーティエンスの社会人の自覚研修のテキストより一部抜粋

また、実際の事例も紹介し、社会人としてモラルに反するとどうなるのかについて、深く理解できるようにしています。モラルについては、一方的に説明を受けるだけでは、なかなか自分ごととして捉えにくいです。そのため、新入社員が自身で考える時間をとることを推奨します。

2)能力に関する新入社員の『あるある』4選

次に、新入社員の能力に関する『あるある』を4つご紹介します。

小さなミスで、すぐへこんでしまう

新入社員にとって、仕事は全て初めて行うことばかりです。そのため、ミスも多くなります。ミスを経験しながら成長していくため、ミスをすることは次に活かすことができれば悪いものではありません。

しかし新入社員は、小さなミスでも、ミスをしてしまったことに対する申し訳なさや、不安、怖さ、恥ずかしさ、自己否定などの感情を抱えてしまいやすく、周囲がそんなに落ち込まなくてもいいのにと思うほど落ち込んでしまうことがあります。

新入社員は仕事の全体像が見えていないため、自分のミスの影響を客観的に捉えることができていません。その結果、自分が見えている世界ではとても大きなミスに見えてしまっている可能性があります。そのため、まずはミスによっての影響範囲を伝えて、大きな問題は起こらないということを伝えて新入社員を安心させましょう。そして新入社員が落ち着いたタイミングで、ミスすることの大切さを伝えてみましょう。その際に自身の失敗談などを話してあげてもいいかもしれません。

ミスすることで学び、成長していくから問題ないということや、たくさんの伸び代があるということを伝えることで、新入社員がミスを受け入れやすくし、すぐに次に活かせるようにしましょう。

注意や指導をしているだけなのに、怒られたと受け取られる

新入社員は、わからないことやできないことが多いため、注意や指導を行う機会が増えます。上司や先輩、トレーナーは新入社員に成長してほしいという思いを持って、伝えているにもかかわらず、この言動が新入社員からすると怒られているように感じることがあります。

最近の新入社員は、特にこの傾向がみられます。それは育ってきた環境や社会情勢が影響しています。学校教育の中では、平等さを保つために点数を成績順に張り出すことがなくなったり、個性を伸ばすことを良いとされていた環境で育ってきました。また、ハラスメントの問題が大きく取り上げられるようになり、学校側が問題にならないようにと注意や指導を抑える体制をとり始めた時期でもあります。そして、大学生の時にコロナ禍に直面し、部活やサークル、バイトなどで上下関係のある関係性を築く機会も減少しました。

このような状況の中で育ってきたため、注意を受けたり指導を受ける、という経験をしたことがない人も多く、注意や指導をどのように受け取ればいいのかがわからない人も多いのです。そのため、特に新入社員が注意や指導に慣れるまでは、言葉使いや伝え方に十分注意して伝えることを意識しましょう。人格を否定されたように伝わらないようにすることは特に大切です。

「〇〇できないなんてダメだな」などの伝え方はNGです。「この箇所の内容が少しわかりづらいから、もう少し簡潔な文章に作成し直してもらうことってできる?」というようにアドバイス兼提案のようなイメージで伝えると、人格否定のような伝え方にはならないでしょう。

【伝え方の例】
・顧客への説明の際

専門用語を使わず、相手が理解しやすいような言葉使いにしてみると、より伝わりやすくなるよ。例えば、この文章はこうしてみるといいんじゃないかと思うんだけど、どう思う?違和感とかあったら教えて。

・顧客へのヒアリングの際
課題のヒアリングの時に、実際今具体的にどんなことが起きているのか、事例を2,3個聞いてみるといいよ。そうすると、具体が分かるし、課題の背景もさらに深ぼれるからね。例えば、「〜〜に課題があるとおっしゃっていましたが、現場では具体的にどんなことが起きているんですか?」と聞いてみるとかね。どうだろう?

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屁理屈を並べて素直に聞き入れない

上司・トレーナーが指導をしても、屁理屈を言って、聞き入れないということもあります。

例えば、クライアントの商談後に、新入社員は自信のあるプレゼンができ、クライアントから「とてもよく理解できました」という反応があったとします。新入社員は、自分にとっては自信のあるプレゼンができ、クライアントの反応がよいと思い、受注角度がとても高いという認識を持っているとします。同席した上司からすると、一方的なプレゼンで、クライアントの反応も儀礼的なものだと捉えていたとします。
そのことから、新入社員に対して、帰社後、改めて電話でクライアントに対して、フォローすることを伝えます。ただし、新入社員からは、「クライアントは、とてもよく理解できた」という発言があったと反論があり、上司が経験上から顧客の表情や新入社員のまくしたてるような説明があったなどと伝えていても、それは上司から見た意見だと言い切ります。

このように自身の理屈や論理でフィードバックを聞き入れず、可愛げがないと感じることもあるかもしれません。このような時は、下記のような対応を取るといいでしょう。

・よりよくしていくために、対話をしながら、共に考える
コーチング形式で、新入社員に対して、問いを投げて、自分で考えさせる

「よりよくしていくために、対話をしながら、共に考える」では、クライアントからの発言で「とてもよく理解できました」ではなく、「御社にお願いしたいです」と言ってもらえるには、どうしたらよかったのかなどを、一緒に考えてもいいでしょう。

コーチング形式で、新入社員に対して、問いを投げて、自分で考えさせる」では、「今の商談で、クライアントが身を乗り出して、新入社員の話を聞くには、何ができたのだろう」などを伝えてもいいでしょう。

新入社員自身に考えてもらうことで、上司やトレーナーの意見も一理あるかもしれないと思える余白が生まれ、フィードバックを受け取りやすくなります。

すぐに成長できると思っている

最近の新入社員は、すぐに結果を求めがちだと言われています。これは、時代がスピードを求めていることもありますし、彼ら彼女らが今まで育ってきた環境にも関係があります。

例えば、ドラマやゲームなどにおいても、ヒット商品はスピード感があるものが多いようです。ドラマでしたら、一話ごとに話が大きく進むものや、ゲームでしたら簡単にプレイヤーのレベルが上がるものなどです。そのため、新入社員(若手社員もですが)は、すぐに成果や達成感を求める傾向があります。このような環境で育ってきた新入社員は、大きな努力をせずに、すぐに成長ができ、成果が出せると思っています。対策としては、小さな目標を立てて、成功体験を積ませていくといいでしょう。

例えば次のようなイメージです。1年後の目標だとすぐに達成することができないため、この目標を細分化して1ヶ月〜3ヶ月程度で達成できる小さい目標を設定します。

新入社員教育のゴール(1年間)

小さい目標を設定することで、達成感や成長を感じる機会が増えるため、新入社員のモチベーションを落とさずに育成を行うことができます。

3)評価に関する新入社員の『あるある』4選

続いて、新入社員の評価に関する『あるある』を4つご紹介します。

組織への貢献は弱いけど、権利欲求が強い

新入社員から、福利厚生や休み、配属の希望など、権利に対して質問を受ける機会が多いと感じる方もいるかと思います。組織の人として、与えられている権利を受け取るのは当たり前だという考えを持っている新入社員がいます。もちろん、自分の権利を理解しておくことは大切ですが、その意欲や主張が強いと、まだ組織への貢献ができていない段階でそんなことに意識が向いているの…と少しネガティブに感じることもあるかもしれません。

権利を求めることが強い新入社員は、組織が用意してくれているありがたさを感じられていません。組織が、なぜ社員のことを考えた取り組みをしてくれているのか、それに対して自分は何を返せるのかを考える機会を作ることがおすすめです。

当社の目標達成・コスト意識研修では、自身が会社にとってどのような存在なのかを、グループワークでの対話やワークを通して自覚します。研修終了時のコメントでは、次のような言葉が出ていました。

・自分は会社にとって大きな投資だということに気づいた
・自分だけでは働けないんだということを感じた。誰かの協力や相手からの信頼があって成り立つことがあるので、自分の言葉や行動に気をつけたい
・会社が自分に投資をしてくれているという喜びが生まれた。早く貢献できるようになりたい
・自分にかかるコストを常に意識したいと思った
・会社に対して自分ができることは何か、やるべきことは何かを明確に理解することができた

このようなことを感じられると、会社から与えてもらっていることを実感でき、権利だけを求める、という言動を抑えることに繋がります。

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短期的な目線が強く、自身の得になることしか考えない

新入社員の中には、与えられた仕事に対して、自分がやりたくない仕事だと嫌な顔をしたり、今早く家に帰りたいとか、今注意されたくないからと学びの機会を逃してしまう人がいます。このような新入社員は、短期的な目線でしか物事を考えられていません。

実際に、入社当初、先輩と新入社員で行った営業同行が早めに終了したため、「他店を視察してから帰ったら?」と先輩が提案したところ「別に大丈夫です」と断り、帰宅してしまった、というようなことがあったという話を伺いました。新入社員は「早く帰れてラッキー、早く帰ってゲームしよ」とか「この先輩と早く別れて早く一人になりたい」「視察したところどうなるの?」などの感情を持っていたかもしれません。これらは全て短期的に自分の特になることです。

しかし、長期的にみると、このような機会を逃し続けることで、成長のスピードが遅くなり、評価にも影響が出ているかもしれません。

新入社員に限らず、人は短期的な喜びに手を伸ばしがちです。もし新入社員の将来を期待しているのであれば、ぜひ長期的な目線で物事を考えられるように声掛けをしてあげましょう。

「成長したい」と言うわりには、勉強しない

新入社員と話していると、「将来こうなりたいんです!」と大きな目標を持っている方もいます。しかし、そのために自主的に勉強をしているかというとそうではないと感じることがあります。

新入社員は、与えられた仕事をしていくと、目標を達成できると思っているためです。そのため、自主的に本やセミナーなどで学んだり、プライベートの中でも、ふと仕事のことと絡めて考える時間をとったり、ということを積極的に行いません。特に、仕事とプライベートを分けるワーク・ライフ・バランスを重視している新入社員は、仕事以外の時間に仕事はしないと決めていることもあります。

しかし、業務時間内だけで、仕事に必要なことを全てインプットするには時間が足りないことも多いです。そのため、新入社員が成長したいと本気で思っているのであれば、ワーク・ライフ・インテグレーションという考え方があることを伝えてみましょう。

ワーク・ライフ・インテグレーションというのは、仕事とプライベートを統合させる考え方です。仕事の経験をプライベートに活かし、プライベートの経験を仕事に活かすことで相乗効果を高めます。例えば、アイディア出しの企画の仕事で、プライベートで経験したことを活かしたり、仕事の経理の経験をプライベートの家計管理に活かすなどです。プライベートの時間にも勉強をしろと強制させるようなことを行うと、プライベートへの干渉の点でハラスメントにもなりかねません。

ワーク・ライフ・インテグレーションは、ワーク・ライフ・バランスよりも人生の幸福度や豊かさが上がるとも言われています。ワーク・ライフ・インテグレーションという考え方を伝え、新入社員に強制させるのではなく、新入社員が自ら進んで勉強できるような働きかけをできるようにしましょう。

根拠のない自信がある

「できないことを、できる」と伝えたり、先輩社員やクライアントの前で、偉そうな態度を取る場合があります。このような様子を見て、根拠のない自信を持っているなと感じたことがあるかもしれません。これは、新入社員が正しい自己認識ができていないために起こります。

根拠のない自信が強いと、上司やトレーナーからすると、信じられない行動も出てきます。

例えば、上司やトレーナーに相談せずに、クライアントからの要望に対して、「○○先輩ができていたから、自分もできるだろう」なと考えて、浅はかに引き受けてしまうなどです。

このような場合は、自己認識を正しく行えるように、上司・トレーナーの目が届くところで、チャレンジをさせて、フォローするなどを行うといいでしょう。注意点としては、「フォローを行っていることを、新入社員が理解する」と、「できていることと、できていないことを理解できる」ことが必要です。そうでないと、フォローをしてもらっていても、自分はできているという根拠のない自信が強化されてしまうためです。

4)対人関係に関する新入社員の『あるある』4選

最後に、新入社員の対人関係に関する『あるある』を4つご紹介します。

・人との距離感がわかっていない
・仕事以外の話をしにくい
・目を見て話さない
・かまってちゃん

人との距離感がわかっていない

新入社員の中には、すごく壁を作るなと感じる人もいれば、すごく距離が近くて友達みたいに思われていそうだなと感じる人もいます。また、クライアントに対して、友達のように接し始めて、焦りを感じた方もいるかもしれません。

学生のうちは利害関係のある人と接する機会はほとんどなく、自分と気の合う人とだけ関係性を保てたらよい環境でした。仲良しではない関係の人と、どのような距離感で接しないといけないのかを知らないことがあります。そのため、新入社員のペースに巻き込まれることなく、上司・先輩・トレーナーが適切な距離感を持って新入社員と接するようにしましょう。そうすると、新入社員はその距離感を感じて適切な状態になっていきます。また、クライアントとの距離感については、指導をした上で、上司・先輩・トレーナーが適切な距離感の見本を見せるようにしましょう。

そのほか、新入社員に対して、メラビアンの法則を伝えてもいいでしょう。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心理学名誉教授、アルバート・メラビアンが発表した内容であり、人の第一印象は3~5秒で決まると言われています。挨拶を行う程度の時間で印象が決まり、その後の関係性にも影響するということです。

特にクライアントと関わる場合は、はじめの印象によって、一緒に仕事をしたいと思うかを判断されてしまうことも多いです。新入社員の距離感に対して課題を感じる場合は、相手に不快に思われないような指導や、フォローを行えるようにしておきましょう。

仕事以外の話をしにくい

新入社員の中には、壁を作られていて仕事以外のプライベートの話がしにくい、という方がいます。特に仕事とプライベートをはっきり分けている新入社員は、より話しやすさを感じやすくなります。そのような新入社員は、プライベートの話を会社で関わる人に話す意味を見出していません。また、プライベートに関与されたくない、と思っている場合もあります。

昔は、職場にいる人がその人の人間関係の多くを占めていました。しかし、今では、気軽にLINEなどで旧友と話したり、SNSでつぶやくということができます。職場の人の中には、価値観が違うと感じる人もいますし、職場の中で自分のプライベートの話が広がっていく怖さもあります。そのため、職場の人にプライベートの話をすることに対して、必要がないと思ったり、ネガティブに捉えるようになったのです。

仕事以外の話をする方が関係性が良くなると思ってプライベートの話をしたいと思うかもしれませんが、無理やりプライベートの話を引き出そうとすると、新入社員はより関わりを持ちたくないと感じてしまいます。

仕事をしていく中で、信頼関係が築かれたら、新入社員からふとプライベートの話をしてくれるようになります。こちらから無理やり仕事以外の話をしようとするのではなく、仕事の中で信頼関係を築くことに意識を向け、新入社員が自ら仕事以外の話をしてくるまで待つことをおすすめします。

目を見て話さない

新入社員と話している中で、目が合わないと感じることがあります。4月の新入社員研修の様子を見ていても、新入社員同士で意見を話し合うグループワークの際に、目を見て話していない方が多く見られました。

これは、対面でのコミュニケーションがコロナによって制限されたことが原因だと考えられます。相手に伝えよう、相手が理解しているか確認しようという意識がないため、結果的に目を見て話さないという行動が現れます。

クライアントと接する機会が多い新入社員の場合、目を見て話すことができないと、相手からの信頼を得られなくなり、新入社員にとっても組織にとってもよくありません。そのため、改善が必要だと感じたら、そのことをフィードバックするようにしましょう。

この改善方法としては2パターンあります。

・目を見て話すことを意識する
・自分の言葉を相手が受け取れるように伝えるということを意識する

どちらの方が意識しやすいかは人によるため、新入社員に意識しやすい方を確認して伝えるようにしましょう。

かまってちゃん

「人との距離感がわかっていない」にも関わってきますが、必要以上に上司やトレーナーへのフォローを求めるケースも見られます。背景には「自分が大切にされている」ということを、感じたいという思いがあるのではないかと思われます。

例えば、「体調が悪いのを、フォローしてくれ」や、「仕事で成果を出したので、褒めてほしい」などです。

まずは、「学生から社会人への切り替え」を早い段階で伝えていくことがいいでしょう。そして、本人の存在を認めながらも、精神的成長を促していくことが必要です。自律を意識させた指導方法を行っていきましょう。

ここまでで新入社員の対人関係に関する『あるある』4つとその改善策をお伝えしました。合計16個の新入社員『あるある』をご紹介しました。

新入社員の育成に関する新入社員のVを知ることで、多くの人が同じようなことを考えていることに安心できた部分もあるのではないかと思います。新入社員に対して気になっていた言動に対しては、ぜひ今回ご紹介した改善方法を自組織なりにアレンジしてご活用いただけたらと思います。新入社員のVVに対して施策を行うことで、新入社員の育成を促せるようにしましょう。

(参考)今回の『あるある』の背景とは
今回の『あるある』の背景は、リアリティショックと言われる、新入社員が入社前と入社後に感じるギャップの考え方が元になっています。

リアリティショックとは、アメリカの組織心理学者のE.C.ヒューズによって提唱され、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン教授によって広められた考え方です。自身が描いていたイメージと、実際の仕事内容や人間関係などに乖離があると、不安感や喪失感、諦めの気持ちを感じ、その度合いによっては早期離職や休職を招く大きな要因になります。  リアリティショック 新入社員への『あるある』に対応することが、リアリティショックの解消につながっていくこともあります。リアリティショックに対する反応が新入社員の『あるある』として出てくることが多いため、リアリティショックを軽減するための取り組みをすることをおすすめします。

具体的な取り組みについてより詳しく知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。

【参考コラム】
新入社員のオンボーディングで必要な3つのポイントと、効果的なツールの活用法

5)まとめ

今回は、新入社員を育成する中で多くの人が感じる 『あるある』 を16個紹介し、その解決策をお伝えしました。

業務遂行に関する『あるある』

・いいからやってが、通用しない
・1から10説明しないと動かない
・怖がって、チャレンジしない
・わからないことについて質問しに来ない

能力に関する『あるある』

・小さなミスで、すぐ凹む
・注意しているだけなのに、怒られたと受け取られる
・屁理屈ばかりで可愛げがない
・すぐに成長できると思っている

評価に関する『あるある』

・組織への貢献は弱いけど、権利欲求が強い
・短期的な目線で自身の得になることしか考えない
・成長したいと言うわりには、勉強しない
・根拠のない自信がある

対人関係に関する『あるある』

・人との距離感がわかっていない
・仕事以外の話をしにくい
・目を見て話さない
・かまってちゃん

改善してほしいと思っていた新入社員の『あるある』については、今回の内容を参考に改善策を実施していきましょう。新入社員の育成を促し、新入社員にとっても組織にとってもポジティブな影響を与えることができます。

当社では新入社員研修を実施しています。新入社員の悩みに合わせて適切な研修を行うことで、新入社員の不安を取り除き、より成長を促す時間になっています。
当社の新入社員研修についてより詳しい情報を知りたい方は、ぜひこちらからお気軽にお問合せください。


参考:株式会社ミナジン