【OJTの進め方】導入方法や指導手順は?育成の質を高め、新人の成長を促そう

更新日:

作成日:2023.10.19

首をかしげるイラスト

「トレーナーによって進め方がバラバラで、OJTの育成の質が安定しない…」
「OJT制度を導入したい!具体的にどのように進めたらいいのだろう…?」

OJTの質のバラつきや、OJT制度導入に対するお悩みをよくお聞きします。

OJTは追加コストをかけずに導入できるため、取り組んでいる企業も多いでしょう。
その一方で、トレーナーに任命されたものの、トレーニーに対して、具体的にどのように育成を進めていけばいいのかがわからない…というように、「名ばかりのOJT」になっている状況も多く目にします。

※トレーナー:社員の成長のために仕事で必要なスキルや知識を教える側の人
※トレーニー:新入社員や入社間もない中途社員など、育成を受ける側の人

そこで本コラムでは、下記2つのOJTの進め方について説明します

・OJTでの育成の進め方
・OJT制度導入の進め方

OJTでの育成がトレーナーによって差が出てしまうと、その後のフォローが難しく、この差がこの先も埋められなくなってしまう可能性もあります。OJTの進め方を伝えて育成の差を抑え、組織の期待に応えられるレベルの育成を行えるようにしましょう。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

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1)OJTでの育成に必要な4つの要素の進め方

OJTでの育成を進めるためには、育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチングを行える必要がありますOJTの目的である、トレーニーの成長と自律を促せるようにするためです。

トレーニーの成長と自律を促せるようにするためには、技術的成長と精神的成長を促す必要があります。

技術的成長は、スキルや技術の成長のことで、できる仕事の幅や量が増えるために必要です。精神的成長は、物事への意識や捉え方の変化、意欲や意識の向上につながることで、モチベーションやエンゲージメントなど仕事への向き合い方に変容を促すために必要です。

これら両方の成長を支援できるようにするために、適切な育成計画を立ててトレーニーのゴールまでの道のりを描くことから始めます。
そして、計画に基づいてティーチングをします。一度伝えただけではできるようにならないため、教えたことができるようになるようにフィードバックとティーチングを繰り返し行い、トレーニーが知識やスキルを身につけられるようにします。これらを繰り返すことでトレーニーの技術的成長を促します。
また、定期的にコーチングを行うことで、トレーニーの状態や意識を確認し、精神的な成長も促せるようにします。

このようにOJTトレーナーに必要な育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチングについて、具体的にどのように進めていくのかお伝えします。

育成計画の進め方

育成計画は、トレーニーに目指して欲しいところを明確にし、そのためにどのような指導を行い、どのような仕事を渡せばいいのかという道筋です。目指すべきところとそのためにやるべきことを明確にするために必要です

育成計画の進め方は次の流れで行いましょう。

育成計画を確認する
  ↓
目標に達成するために、すべきことを設定する

年間の育成計画を確認する

人事が作成している年間の育成計画を確認します。トレーニーがどのような状態になることを求められているのかを理解するためです。

例えば、人事から以下のような育成計画表を受け取ったとします。

こちらから、Googleスプレッドシートでご覧いただけます編集可能なデータ形式をダウンロードされたい場合は、下記フォームよりお願いいたします。

    下記フォームより必要事項をご入力の上、送信してください。
    ご入力いただいたメールにダウンロードURLが届きます。

    ※同業者からのお申し込みはお断りしております
    ※ご入力いただいたメールへ、人事に役立つメルマガ(週1回程度)を配信いたします

    *は入力必須項目となります。

    企業名*
    氏名*
    メールアドレス*
    電話番号*

    この計画表を確認すると、1年後の目標や、そのために毎月どのような状態になっている必要があるのか、OFF-JTで何を学ぶのかなどを把握することができます。

    OJTトレーナーはこの計画表を元に、業務の中で具体的にどのような仕事を任せて育成していくかを考えます

    人事は、上記の例のような育成計画表をOJTトレーナーに展開できる状態にしておくことが必要です。

    【参考コラム】
    新入社員の育成計画に必要な5ステップ│【サンプルあり】迷いを無くし、いち早く一人前の社会人へ

    目標に達成するために、すべきことを設定する

    育成計画表で設定されている目標を達成するために育成すべきことを設定します。事前に育成すべきことがわかっていると、着実に目標に達成するための育成を行えるようになるためです。

    例えば、7月に「論理的思考力をもとに報連相する」というゴールが設定されているとします。このゴールを達成するためには、例えば、報連相しにきたときに5W2Hについて質問して全て応えられるようにしてもらうことも一つの方法です。他にも、OJTトレーナー自身が論理的思考を意識してマトリックスで整理して伝えるようにするのも、トレーニーに論理的思考を意識しやすくするための手段です。

    なお、下記の例のように週ごとにやることを設定しておくと、設定したことをやるだけでいいので、OJTトレーナー自身の負担を軽減できます。(状況が大きく変化した場合は都度調整が必要です。)
    このように毎月、毎週の目標を意識することで行動しやすく、クリアすることの達成感も得られます。そして成長することに楽しさを感じながら自然とトレーニーの成長を促すことにつながります。

    育成計画をこのような流れで進めることで、組織として設定していた目標を達成できる育成を行えます。ただ、人によって予定通りに進めることがどうしても難しいこともあるかもしれません。その際は人事と相談しながら目標を調整し、トレーニーの精神的負担を考慮しながら育成を行うようにしましょう。

    ティーチングの進め方

    ティーチングは、トレーニーに知識やスキルを渡す手法です。トレーニーが新たな業務をできるようになっていくために必要です

    ティーチングの進め方は次の流れで行いましょう。

    やってみせる
     ↓
    説明する
     ↓
    やってみてもらう
     ↓
    追加指導

    やってみせる

    教える際には、OJTトレーナーがやってみせます。トレーニーがこれからやることをイメージできるようにするためです。

    例えば、電話対応について教える場面を考えてみます。このときに、まずOJTトレーナーが電話対応をどのように行なっているのかを実践し、おおよその流れをトレーニーに把握してもらいます。そうすると、トレーニーは学ぶことに対して心の準備ができます。

    資料作成を依頼する際は、やってみせることが難しい場合もあります。その際は過去の資料を見せることでイメージを持ってもらうことができます。

    説明する

    やってみせた後に説明をします。仕事の意味や背景、具体的なやり方について伝えるためです。

    例えば、電話対応であれば、電話対応の意味や電話対応の重要性を伝えることが必要です。そして、電話とって自分の名前を述べて〜など、具体的な流れも伝えます。具体的な流れを説明する際は、マニュアルがあると説明しやすく、トレーニーも理解しやすいです。

    なお、トレーニーは一度流れを見ているため、トレーニーから質問が出ることもあります。その内容はOJTトレーナーが説明し忘れている内容でもあるため、どのような質問をされたのかメモをし、次の説明のときには漏れがないように改善していきましょう。

    伝え方がうまくないと、トレーニーが理解しきれず、修正の回数が多くなったり、指導に時間がかかってしまいます。ただ「伝える」ではなく相手に「伝わる」ことを意識して説明しましょう。

    やってみてもらう

    説明が終わったら、やってみてもらいます。理解できたからといって、できる状態になっているとは限らないためです。

    例えば、電話対応であれば、いきなり実際の電話だと緊張感があるため、OJTトレーナーとトレーニーでロールプレイングをしてやってみてもらうのも良いでしょう。ロールプレイングを行う時は、実際によくある電話の内容をイメージしてリアルに再現することで、実際の場面で対応がスムーズになります。
    実際にやってみると、この時はどうすればいいのか?という疑問が出てくることが多いです。

    資料作成などその場でやってみることが難しいものは、OJTトレーナーが説明したことを、トレーニーの口で説明し直してもらうようにします。そうすると、トレーニーがどの程度理解しているのかを確認できます。説明してもらった内容で抜けているところがあれば、補足説明をしましょう。

    追加指導

    やってみたことで出てきた疑問や不安、質問について追加で説明します。わからない状態のままでは仕事が進まないためです。

    例えば、電話対応であれば、営業電話かどうかの見分け方ってどうしたらいいか、などの質問が出てくるかもしれません。そのような質問については、他の人も気になっている可能性があるため、マニュアルに追記して、都度アップデートしていきましょう。そうすることで、自分も次に教えるときに楽になります。

    ティーチングをこのような流れで進めることで、トレーニーが理解しやすく説明できます。トレーニーが自分のやることを把握し、行動できる状態にできればOKです。

    フィードバックの進め方

    フィードバックは、行動や結果に対して、よかった点や直すべき点を伝えることです。トレーニーの行動を改善・強化するために必要です

    フィードバックの進め方は次の流れで行いましょう。

    アウトプットの背景を確認する
     ↓
    意図を受け止める
     ↓
    フィードバックの対象について確認する
     ↓
    課題の是正を促すために伝える
     ↓
    フィードバックに対する違和感やモヤモヤを確認する

    アウトプットの背景を確認する

    アウトプットに対するトレーニーの背景や考え方を確認しましょう。トレーニーは自分なりに考えてアウトプットを作成しているためです。

    トレーニーの意図を確認しないままフィードバックし始めると、トレーニーに「自分の意図をわかろうとしてくれないんだ」と受け取られてしまいます。

    伝え方としては、以下のようなイメージです。

    ●「(アウトプットを見て)作成ありがとう。まず、〇〇さんがどういう意図で作ったかも含めて説明をお願いできる?」
    ●「(アウトプットを受け取って)ありがとう。私のアドバイスが〇〇さんの意図とズレていたら申し訳ないから、もし〇〇さんなりに意識したこととか意図とかがあれば教えてくれる?」

    トレーニーの意図を確認しない状態が続くと、「自分なりに考えて〇〇をしたのに、自分の考えを聞こうともしてくれないし、理解もしてくれないなら、もう言われたままやった方が楽だな」という思考に切り替えるようになり、主体性がなくなってしまいますそうならないようにするためにも、まずは、トレーニーがどのような意図で言動をしたのかを確認しましょう

    意図を受け止める

    トレーニーの意図を確認したら、「そのように考えていたんだね」とただそのまま受け止めます。理解したことを伝えるためです。この段階で、ジャッジを行うような言葉は使いません。

    伝え方の例としては、以下のようなイメージです。

    ●「そのように考えて作ってくれたんだね」
    ●「なるほどね。〇〇を意識したんだね」

    「だめだよ」とか「(強めの口調で)どういうこと?」という反応は、トレーニーに対して恐怖感を与えてしまうため避けた方が良いです。

    すぐに否定したりせず、ただ受け止めてトレーニーの意図をしっかりと理解したことを伝えます

    フィードバックの対象について確認する

    トレーニーの意図を受け止めたことを伝えたら、次に、今から行うフィードバックはあくまでも考え方やアウトプットに対して行う、ということを伝えます。フィードバックの伝え方や表現の仕方によっては、トレーニーが傷ついてしまう可能性があるためです。

    伝え方の例としては、以下のようなイメージです。

    ●「〇〇さんが〜〜について意識して作成したことは伝わったので、アウトプットをさらに良くするためにフィードバックを伝えても良い?」

    ●「〇〇さんは、もう一つ深いところまで考えられると、より良いものにできそうだから、そのための考え方についてトレーナーとしてフィードバックを伝えるね」

    このときに、フィードバックする対象を明確に伝えることで、トレーナーの人格や価値観を否定しているわけではないことが分かりやすくなります。また、何についてのフィードバックなのかをトレーニーも把握できるため、理解がしやすくなります。

    トレーニー自身に対してフィードバックをしているのではなく、あくまでも考え方やアウトプットに対してということをわかるようにしましょう。

    課題の是正を促すために伝える

    課題の是正を促すために具体的な内容を伝えます。トレーニーの行動を改善・強化するためです。

    フィードバックを伝えるときは、簡潔にわかりやすく伝えましょう。長いと説教のように受け取られてしまうためです。
    また、なぜそのようなフィードバックをしたのか、という背景も一緒に伝えましょう。表面的なフィードバックスのみでは、応用することができないためです。

    伝え方の例としては、以下のようなイメージです。

    ●「専門用語を使わず、相手が理解しやすいような言葉使いにしてみると、より伝わりやすくなるよ。例えば、この文章はこうしてみるといいんじゃないかと思うんだけど、どう思う?違和感とかあったら教えて。」

    ●「課題のヒアリングの時に、実際に今具体的にどんなことが起きているのか、事例を2,3個聞いてみるといいよ。そうすると、具体が分かるし、課題の背景もさらに深掘りができるからね。例えば、「〜〜に課題があるとおっしゃっていましたが、現場では具体的にどんなことが起きているんですか?」と聞いてみるとかね。どうだろう?」

    トレーニーが「確かに!」とフィードバックを素直に受け入れられる状態を作れるように意識することが大切です

    フィードバックに対する違和感やモヤモヤを確認する

    フィードバックに対する違和感やモヤモヤを確認します。トレーニーが納得できていないと、改善・強化がされないためです。

    OJTトレーナーとトレーニーの価値観は異なるため、納得しきれない部分も出てくるかもしれません。そのときは、そのことと向き合い、お互いが納得できる場所を探しましょう。トレーニーが違和感を持ったままでは、「自分はこうやった方がいいと思うけど、前回先輩からこう言われたし、その通りにしておくか」というような考え方になってしまうためです。

    フィードバックに対して違和感があれば、確認してすり合わせていき、お互いが納得して仕事を進められるようにしましょう

    フィードバックをこのような流れで進めることで、トレーニーの行動を改善・強化し、成長につながる育成を行えます

    コーチングの進め方

    コーチングは、気づきを促してトレーニーの力を最大限に発揮できるようにするためのコミュニケーション手法です。トレーニーを自律・自走させるために必要です

    コーチングの進め方は次の流れで行いましょう。

    話したいテーマを確認する
     ↓
    傾聴し、問いを投げる

    話したいテーマを確認する

    トレーニーから話したいテーマを出してもらいます。トレーニーのための時間だからです。
    トレーニーが今抱えている不安や、目標など今話したいと思っていることをテーマとして出してもらい、そのテーマについて深めていきます。

    例えば、「この間の営業で相手から嫌味っぽいことを言われてショックを受けた」という話かもしれないし、「〇〇をできるようにするために何をすればいいのか知りたい」という話かもしれません。OJTトレーナーは自分が話したい・伝えたいことではなく、トレーニーが話したいことを受け入れて対応します。

    傾聴し、問いを投げる

    テーマが決まったら、トレーニーの話を傾聴し、問いを投げていきます。トレーニーが意識しきれていないことへの気づきを促すためです。人は自分のわずか10%しか意識できておえらず、90%が無意識であると言われています。自身の言動は無意識に存在している深い欲求や願望、欲望によって現れているものということもできます。

    【氷山モデル】

    傾聴し、問いを投げることで普段意識していないことに触れることで新たな気づきを生み、そのことを踏まえて行動することで、個々が持っている力を最大化できるようにします

    傾聴というのは、相手を尊重し、理解しようとして聴くことです。頷きや相槌、表情によって、相手の前向きな感情を活性させましょう。また、必要に応じて、確認や要約をし、話の内容を整理する助けをすることで相手の会話を聴いていることを理解してもらいます。

    問いは、相手の考え・感情を深堀りするために必要です。クローズドクエスチョン(回答がYes/Noになるもの)よりも、オープンクエスチョン (回答が Yes/Noに収まらず話し手の考え・想い次第で何通りものケースになるもの)を 意識して質問しましょう。

    例えば、「 この業務の優先度は高いですか、低いですか」というクローズドクエスチョンではなく、「この業務が達成されると、どんなメリットがあるでしょう」というオープンクエスチョンで問いを投げます。

    また、問いかけは、Why(なぜ)よりも、What(何を)、How(どうやって)を意識すると無意識の領域に気づきやすくなります。Why(なぜ)だと、トレーニーに寄り添うのではなく課題解決になりやすくなるためです。

    コーチングをこのような流れで進めることで、トレーニー自身に気づきが生まれ、変容につながる育成につながります

    OJTでの育成に必要な育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチングの進め方は、ここで紹介した基本的な進め方を理解した上で、トレーニーとの関係によって柔軟に変化させて行きましょう。

    2)OJTでの育成の質を高めるためのポイント

    OJTでの育成の質を高めるためのポイントを育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチング、それぞれお伝えします。

    育成計画のポイント

    OJTでの育成の質を高めるために、育成計画で意識したいポイントは3つです。

    ●明確なゴールを設定する
    ●トレーニーに仕事を「任せる」ことを前提とした計画にする
    ●信頼関係を築くことを考慮する

    順番に説明します。

    明確なゴールを設定する

    明確なゴールを設定をすることで、すべきことが明らかになります。

    この際、意識したいのがSMARTの法則です。SMARTの法則というのは、ジョージ・T・ドラン氏が提唱した理論で、5つの成功因子によって構成されています。目標を設定する際には、このすべての要素が含まれているかをチェックしましょう。

    トレーニーに仕事を「任せる」ことを前提とした計画にする

    トレーニーに仕事を「任せる」ことを前提とした計画にしましょう。最終的にはトレーニーに自立してもらうことがゴールだからです。

    任せてみるというところから、任せきるというまでにグラデーションを作り、徐々に任せきれる状態を作りましょう。
    任せる仕事内容やトレーニーの状態によってタイミングが変わるため、予定として計画は立てておきますが、状況に合わせて柔軟に対応することも必要です。

    信頼関係を築くことを考慮する

    信頼関係を築くことを考慮しましょう。信頼関係を強く築きあげることで、トレーニーの行動、結果が強化されるためです。

    「関係の質が高まれば、思考の質が高まり、行動の質が高まり、結果の質が高まる。そしてさらに関係の質が高まる」という好循環が生まれます。これは、成功循環モデルと言い、MIT組織学習センター共同創始者ダニエル・キム氏が提唱した考え方です。

    逆に考えると「関係の質が低くなれば、思考の質が低くなり、行動の質が低くなり、結果の質が低くなり、そしてさらに関係の質が低くなる」という悪循環も生まれるということです。

    このことを意識して面談の時間を設けるなど、トレーニーとの関係性を築く時間も計画の中に組み入れることをお勧めします。

    ティーチングのポイント

    OJTでの育成の質を高めるために、ティーチングで意識したいポイントは「相手の目線に立って伝える」ことです。

    相手の目線に立って伝える

    相手の目線に立って伝えましょう。相手が理解できていないと、教えたことにはならないためです。専門用語を使う時は相手の理解度に合わせて意味も合わせて伝えたり、相手のモチベーションや意欲に合わせた言葉を選ぶこともポイントです。

    なお、伝えるには、三段階あると言われています。どのレベルにいるのかを客観的にみて、より上の段階に進めるように意識しましょう。

    フィードバックのポイント

    OJTでの育成の質を高めるために、フィードバックで意識したいポイントは2つです。

    ●ポジティブフィードバックを意識する
    ●コンパクトに、日常的に、高頻度で行う

    順番に説明します。

    ポジティブフィードバックを意識する

    ポジティブフィードバックを意識して行い、新入社員とのポジティブなやり取りを増やしましょう。良好な関係性を築きやすくするためです。

    特に最近の新入社員は、ネガティブフィードバックが苦手ですが、ポジティブフィードバックは素直に受け入れる傾向があります。

    例えば、ネガティブフィードバックを行なったときに、どのような対応をすればいいかわからなかったため無視をしたという新入社員がいました。
    研修の受講中、研修冒頭で講師より研修中は携帯電話は出さないように伝えていましたが、携帯を出していた新入社員がいました。講師から、グループワーク中に携帯電話をしまうように促したところ、カバンの中にしまったのはいいのですが、講師に対しては全く無反応で、無視するような形になりました。休憩時間に、講師が新入社員本人と話したところどのような対応をすればいいかわからなかったそうです。

    一方で、ポジティブフィードバックに対しては素直に受け取る様子が見られました。実際にある銀行の人事の方から伺った話では、ポジティブフィードバックを新入社員に行ってみると、「ここまで私たちのことを見てくれているのは、とてもうれしいです!」と、とてもうれしそうに感謝していたとのことです。

    ポジティブフィードバックは強く意識しておかないと、OJTトレーナーから出てくる割合は少ないです。トレーニーとの関係性を築くためにも意識的にポジティブフィードバックを行うようにしましょう。

    コンパクトに、日常的に、高頻度で行う

    フィードバックは一度に色々詰め込まずに的を絞って、日々の業務の中でこまめに行いましょう。一度の情報量が多いフィードバックは、受け手が理解するのに負担がかかり、次なる行動に繋がりにくくなってしまうためです。

    的を絞ったこまめなフィードバックだと、受け手も「これならできそう」と思えます。そして、高頻度でフィードバックを受け取り、改善行動を行うことで、前進感や成長実感が持てて、フィードバック効果を実感できます。

    1on1などで時間を取ったフィードバックの機会だけでなく、会議の前後の時間や社内チャットツールなどを活用し、日々の業務の中で意識的にフィードバックを取り入れていく姿勢が大切です。ただし、やり方によっては「マイクロマネジメントをされている」と受け取られることもあるため、頻度はトレーニーに合わせて調整しましょう。

    コーチングのポイント

    OJTでの育成の質を高めるために、コーチングで意識したいポイントは2つです。

    ●安心に話せる環境を作る
    ●答えやゴールを設定しない

    順番に説明します。

    安心に話せる環境を作る

    安心に話せる環境を作りましょう。「評価につながったらどうしよう」「他の人に聞かれていたらどうしよう」などの不安があると思考が遮断され、集中して話に入っていけないためです。

    安心できる環境を作るために、次のことを取り入れてみることをお勧めします。

    ・「評価をする場ではない」ことを意思表示
    はじめに評価に影響しないことを伝えましょう。そのことが不安になって正直に話すことができない、という人もいるためです。トレーニーが話したいことや聞きたいことを自由に話して良いというメッセージを伝え、安心して話せる場をつくります。

    ・部屋は個室で
    周りに人がいると話しにくいこともあるためです。ただ、全てが壁に覆われているより、どこかにガラス面があって他の人がいることを感じられる方が閉じ込められている感じがなくなり話しやすくなります。

    ・座る位置はL字を推奨
    座る位置は対面ではなく、L字型の方が緊張がほぐれ、話しやすい雰囲気になります。

    ・飲み物を用意
    面接ではなく対話という雰囲気を出しやすくなります。

    ・室内の温度は適温に
    寒すぎず、暑すぎず、適切な温度を設定しましょう。寒いや暑いなど温度に意識が向くと、話に集中できなくなります。

    ・時間に余裕を話の内容によっては時間が長引くこともあります。予定の時間より多めに時間を見積もり、少しの延長には対応できるようにしておきましょう。

    答えやゴールを設定しない

    OJTトレーナーが勝手に答えやゴールを設定しないようにしましょう。トレーニーの価値観とは異なるためです。

    例えば、提出物の期限がギリギリになってしまう、と悩んでいるトレーニーがいるとします。そのときに、それはダメだからこういうふうな対策をしたらいいんじゃない?と提案するのはよくありません。これはOJTトレーナーの価値観だからです。そうではなくて、なぜそのことでトレーニーは悩んでいるのか、何がそうさせているのか、と傾聴と問いを繰り返していくうちに自然と根本的な課題が見えてきます。トレーニーはそれに気づくと自ずと変わります。

    無理やり変えようとするのではなく、トレーニーを信じて待つことをできるようになりましょう。

    これらのポイントを意識して行うことで、OJTの育成の質をより高めることができます。

    OJTでの育成の進め方は、トレナーとトレーニーの関係性によって変わってきます。そのため、これらの基本的な流れを踏まえた上で、それぞれの関係性によって進め方を調整してください。

    2)OJT制度導入の進め方

    OJT制度を導入する際の進め方として、次の流れで行うことをお勧めします。

    1、育成のコンセプトを明確にする
    2、OJT終了後の目指す姿・目標を明確にする
    3、育成スケジュールを作る
    4、OJTトレーナーを選定する
    5、基本的なOJTの指導ガイドやマニュアル等が用意する
    6、周囲(トレーナー以外)の協力体制を構築する

    それぞれで具体的にどのようなことをするのかお伝えします。

    1、育成のコンセプトを明確にする

    自社における「育成コンセプト」を明確にしましょう。育成コンセプトは、OJT実施有無に関わらず、人材育成において重要な項目です。育成コンセプトを設定する理由は下記の通りです。

    ・軸がぶれにくくなり、考え方に一貫性を持ちやすくなるため
    ・OJTだけでなく、Off-JTの企画も検討しやすく連動性を考えやすくなるため
    ・現場社員への展開時、育成コンセプトがあるとイメージがしやすくなるため

    育成コンセプトというのは例えば、「自ら考えて、周囲と学び合い続け、成長を楽しむ人材へ」などです。これはアーティエンスが、とあるクライアント様とご一緒に考えた育成のコンセプトです。(文言の一部を変更しています)

    このような育成コンセプトがあると、OJTだけでなく、OFF-JTなどの全体設計をしやすくなります。育成コンセプトは階層によって内容が変わってくるため、階層ごとに設定することをおすすめします。

    2、OJT終了後の目指す姿・目標を明確にする

    OJT終了後、「何を、どの程度身に付け、どのような状態を目指すのか」という目標を設定しましょう。目標を設定しなければ、OJT終了後に正しく振り返りができません。

    目標を設定する場合は、具体的でイメージしやすい内容にすることをおすすめします。そうすることで目標に対して現在地を確認しやすいです。また、OJTが終了した後に、目標を達成できたかを確認しやすいです。

    例えば、営業部の新入社員に対する目標の設定として、「3月末までに〇〇サービスに関して、初回訪問(会社説明・ヒアリング)から提案・受注・納品プロセスを、一人で遂行できるようになる」という内容だと明確になっていてわかりやすいです。

    3、育成スケジュールを作る

    育成スケジュールを作りましょう。「いつまでに・何を・どの程度まで・どのように教え、どのような状態を目指すか?」が決まっていることで、調整しやすくなります。

    スケジュールを考える時は、他の育成との連動性を考えるとそれぞれの育成効果を最大化しやすくなります。基本的には、OFF-JTの研修などで基本的なスキルの原則や考え方、型などを学んだ後に、OJTで実践していくと学びが定着しやすくおすすめです。

    また、スケジュールはトラブルやイレギュラーが発生しても対応できるように最初から余裕を持ったスケジュール設計にしておきましょう。

    【参考コラム】
    【新入社員研修のスケジュール】新入社員が最大限の学びを得るために
    【新入社員研修のカリキュラム】事例をもとに研修のプロが徹底解説

    4、OJTトレーナーを選出する

    OJTトレーナーを選出しましょう。トレーニーのロールモデルとしてもらいたい人をOJTトレーナーとして選出することをおすすめします。モチベーション高く仕事をしており、組織として評価できる人がOJTトレーナーになると、トレーニーも影響されてその人に近づきやすくなるためです。

    なお、OJTのメリットを最大化するためには、トレーナーの育成に対する想いと当事者意識を醸成することが重要です。トレーナーの育成に対するモチベーションによって、育成の質が変わってくるためです。

    OLトレーナーの意識醸成が必要な場合は、下記の施策を取り入れましょう。

    ●トレーナーが評価される環境をつくる
    ●トレーナー自身がOJTやトレーナーへの意味を持てるようにする

    トレーナーが評価される環境をつくる

    組織の中でトレーナーが評価される立場である状態を作り、トレーナーに選ばれたことに対して誇りを持てる状態にすることは一つの方法です。
    具体的には、トレーナーとして選出されたときに表彰式を行なってトレーナーとして期待していることを伝えるとか、トレーナーとなることで評価にポジティブな影響になるようにするなどです。

    トレーナー自身がOJTやトレーナーへの意味を持てるようにする

    トレーナーの想いや当事者意識を醸成するためには、トレーナー自身が自分なりの答えがある状態を作れることも大切です。そのためには下記のような内容について考える機会を設けましょう。

    ・そもそもなぜOJTをする必要があるのか
    ・OJTによってトレーナーが得られるメリットは何か
    ・OJTを行うことで自分は組織に対してどのような貢献ができるのか
    ・OJTを行うことによってどのようなキャリアが開かれるのか

    これらに自分なりの意味を見い出せていると、育成に対して想いを持って取り組みやすくなります。このようにトレーナーの育成に対する想いを醸成することで、トレーニーの成長を一緒に喜べる状態をつくることができ、OJTのメリットを最大化することにつながります。

    【参考コラム】
    OJTトレーナー向いていない人の特徴5選|向いていない人への対処策7選もご紹介

    5、基本的なOJTの指導ガイドやマニュアル等を用意する

    基礎となる指導内容はマニュアルやガイドに落とし込み、育成の標準化・時間短縮を図りましょう。指導にばらつきが出やすいOJTですが、最低限のレベルを揃えることができます。

    例えば、OJTとしての育成時間を毎日30分は確保する、など実施時間に関するルールを設けることも良いでしょう。他には、トレーニーからよくある質問に対する答え方や答える時の注意点をまとめておくことで、トレーナーの負担を減らすことができます。

    【参考コラム】新入社員の意識と行動が変わるマニュアルの作り方│一つ上の活用方法も説明

    6、周囲(トレーナー以外)の協力体制を構築する

    トレーニーの育成をトレーナーだけに任せっきりにするのではなく、チームや部署、組織全体で協力的に行えるようにしましょう。OJTトレーナーの負担や責任を軽減するためです。

    トレーナーがどうしても自分の仕事に追われて育成時間が取れない時に変わってもらえると心強いです。また、トレーナー以外の仕事の進め方を知ることで、トレーニーが自分なりの仕事のやり方を見つけやすくもなります。
    トレーニーの育成は最終的には組織の成長に繋がります。組織全体でトレーニーを育成していく文化を築けるように互いに協力し合う意識を醸成しましょう。

    OJT制度を導入する際にこのような進め方で取り組めると、OJTでの育成効果を最大化できます。

    3)まとめ〜アーティエンスの研修では、OJTでの適切な進め方を実践を通して学べます〜

    本コラムでは、OJTの進め方として、OJTでの育成に必要な4つの要素の進め方とOJT制度導入の進め方について説明しました。それぞれの基本的な進め方を理解した上で、トレーニーとの関係によって柔軟に変化させていきましょう。

    なお、アーティエンスの育成担当者・OJTトレーナー研修では、OJTでの適切な進め方について、実践を通して学ぶことができます。

    研修の様子がわかるレポートを公開していますので、ぜひご覧ください。
    2023年5月16日_OJTトレーナー研修ー公開講座研修レポート

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    の特典をご用意しています。

    新入社員の育成と共に育成担当者へのサポートを実施できるサービスとなっています。本サービスについて詳しく知りたい方は、お気軽に、お問い合わせよりご連絡ください。

    OJTの進め方を伝えて育成の差を抑え、組織の期待に応えられるレベルの育成を行えるようにしましょう。

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