ファシリテーションにおける4つの基本スキルと磨き方|具体例で解説

更新日:

作成日:2023.8.23

 会話をしているビジネスマンたち  「ファシリテーションスキルって何?どう身に付ければ良いの?」

とお悩みの方に向けて、本コラムを執筆いたしました。
本コラムでは、ファシリテーションの4つのスキルの詳しい内容やスキル習得のためのポイントを解説していきます。

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このコラムで分かること

  • 4つのファシリテーションスキル
  • ファシリテーションスキルの習得方法
  • ファシリテーションスキル習得における注意点
執筆者プロフィール
迫間 智彦
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

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1)ファシリテーションの4つの基本スキル

ファシリテーションスキルの基本的なスキルとして、4つのスキルを説明します。

・場のデザインのスキル
・対人関係のスキル
・構造化のスキル
・合意形成のスキル

それぞれ説明していきます。

①場のデザインのスキル

場のデザインのスキルとは、目的・目標などを決め、対話や議論が行える場創りを行うためのスキルです。

ファシリテーターは、会議・ワークショップをどのような場にしていきたいかを考えて、場をデザインする必要があります。なぜなら、会議やワークショップなどには、目的・目標が存在します。その目的・目標を達成するために、安心安全で参加者が話しやすい雰囲気を作っていく必要があります。

具体的には、下記プロセスで考えていくといいでしょう。

①会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定する
②当日の状況を想定し、準備する
③当日の準備を行う

それぞれ説明していきます。

①会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定する

場のデザインを行うためには、まずは会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定することが必要です。

会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定することで、どのような場にしていくかが明確になっていきます。会議・ワークショップの目的・目標が明確でなければ、参加者の意識が統一されません。また、アジェンダが創られていなければ、当日どのように進んでいいかがわからず、参加者は不安になってしまうでしょう。

具体的には、会議・ワークショップの企画者・依頼者と共に事前に創っていきます。
※ 社内会議であれば、一人でデザインしていく場合もあります。
ファシリテーションでよく利用されるOARR(※)なども活用するといいでしょう。

(参考)OARRとは
「OARR(オール)」とは、デイビッド・シベッツ氏が提唱した「会議やワークショップをスムーズに進める」ためのフレームワークのこと。

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※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

②当日の状況を想定し、準備する

会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定したら、次に当日の状況を想定し、準備することが必要です。

当日に起こることを想定し準備することで、ファシリテーターは、当日の会議・ワークショップの場をホールドしやすくなります。特に、ファシリテーターとして経験が浅い方や、企画側が慣れていない時は念入りに準備することをお薦めします。
具体的には、下記を抑えておくといいでしょう。

・会議・ワークショップの最高の状態と、最悪の状態を考察する
・最高の状態にしていくために、どのような準備が必要か
・最悪の状態を回避するために、どのような準備が必要か

最高の状態とは、目的・目標が達成でき、参加者の関係の質が高く、コミットが高い状態です。

最悪の状態とは、目的・目標が達成できることが想像できず、何も決まらず次が見えない、そして参加者がオープンになっておらず、当事者意識も主体性も低く、コミットが低い状態です。

最高な状態にしていくためには、「目的・目標は事前に送ったほうがいいのか?送らないほうがいいのか?」、「どのようなことを大切に言葉がけしていくといいのか」「どのようなレイアウト(※)にしていくといいのか」、「どのような備品(※)を使って参加者が場に入りやすいのか」などを考えていきます。

この時に、アジェンダが変わる場合もありますし、時には目的・目標がアップデートされることもあります。場のデザインにおいて、当日の状況を想定し、準備することで、当日の会議・ワークショップの目的・目標を達成できる確率が高まります。

(参考)レイアウトに関して
目的・目標にあわせて、レイアウトを考えていきます。レイアウトによって、場を柔らかくしたり、あえて対立関係が起きやすいようにする場などを創ることができます。

具体的には、下記内容を見ていただけるとわかりやすいと思います。

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※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋
 
(参考)備品に関して
代表的な備品は下記などが上げられます。

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※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

③当日の準備を行う

最後は当日の準備です。当日の準備をしっかり行うことで、参加者は場に入りやすくなりますし、またファシリテーター自身も落ち着いて場に入っていくことが可能です。

具体的には、下記2点を抑えるといいでしょう。

・ファシリテーター自身の状態を整える
・当日の準備を万全にする

ファシリテーター自身の状態を整えるに関しては、可能であれば30分前には場に集中できる状態を創りましょう。コーヒーなどを飲みながら、リラックスするといいでしょう。
※ 社内会議などで難しい場合は、5分前でいいので、深呼吸などをして、状態を整える時間を創りましょう。

当日は、「当日の状況を想定し、準備する」で用意していたことを行いましょう。ただし、当日突然、想定していないことが起きることは多くあります。「一部の参加者が参加できない」や「想定していた会議室と違う」などです。この時は慌てずに、「目的・目標が達成できるのか?」、「アジェンダはそのままでいいのか?」等を考え、時には企画者や参加者と相談をしながら、変更していく必要があります。

このように当日の準備をしっかり行うことで、参加者もファシリテーター自身も場に入りやすくなります。

場のデザインのスキルは、下記プロセスを考えて扱っていきましょう

①会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定する
②当日の状況を想定し、準備する
③当日の準備を行う

②対人関係のスキル

対人関係のスキルは、関係の質を高め、相互作用が起きるためのスキルです。ファシリテーターは、参加者同士の心理的距離を縮めながら、オープンな議論・対話が起こるような対人関係を創っていく必要があります。参加者同士の相互作用が高まると、参加者が想定もしていなかった考えやアイディアが出る土壌ができていきます。

具体的には、下記2点を考えて、対人関係のスキルを扱っていきます。

①参加者同士の関係の質を高めていく
②参加者とファシリテーターの関係の質を高めていく

それぞれ説明していきます。

①参加者同士の関係の質を高めていく

参加者同士の関係の質を高めていくことが必要です。参加者同士の関係の質が高まっていくことで、お互いオープンになり、議論・対話の質が高まっていきます。

具体的な方法としては、場のデザインのスキルで説明した下記内容が特に重要です。

①会議・ワークショップの目的・目標、アジェンダを設定する
②当日の状況を想定し、準備する

例えば、「参加者同士が顔見知りで、関係性ができている場合と、関係性ができていない場合」や「初めて会って話をする場合」では、参加者同士の関係の質に対して、どのようにアプローチするかが変わっていきます。

参加者同士が顔見知りで関係性ができている場合は、特に時間をかける必要はないかもしれません。
参加者同士が顔見知りだが関係性ができていない場合は、話しやすいテーマから話したり、お互いの背景を知る時間の確保が必要かもしれません。
初めて会って話をする場合は、まずお互いを知るための対話を入れていく必要があるかもしれません。

このように状況を見て、参加者同士の関係の質を高めていくためのアプローチがとても重要です。

②参加者とファシリテーターの関係の質を高めていく

参加者とファシリテーターの信頼関係を高めていくことも必要です。参加者が、ファシリテーターに対して一定レベルの信頼関係を創っておかないと、会議・ワークショップは前に進んでいきません。

参加者には、ファシリテーターに対して、中立的な立場としての安心感を持ってもらうことが必要です。
具体的な方法は、会議・ワークショップの前にまずは自身の立ち位置を伝えていくといいでしょう。また、参加者がファシリテーターを信頼できるよう振る舞い・言動が必要です。

参加者から信頼を得るためには、下記観点は、常に注意を払うといいでしょう。

・自身の立ち振る舞いがノイズになっていないか
・自身の言動が中立的か
・自身の言動が参加者をコントロールするものや、誤解を招くものになっていないか

ただし、参加者が想定外の動きや発言をして場が乱れた時(特にファシリテーターに攻撃的になる時)もあります。そのような状況の時に落ち着いた対応をすると、参加者のファシリテーターへの信頼はより高まります。この時に、場のデザインのスキルの「③当日の準備を行う」で説明したファシリテーター自身の状態を整えていると、落ち着いて対応していくことが可能です。

対人関係のスキルは、下記2点を考えて扱っていきましょう。

①参加者同士の関係の質を高めていく
②参加者とファシリテーターの関係の質を高めていく
(参考)参加者とファシリテーターの距離感に関して
過度に参加者との距離を縮める必要はありませんし、危険です。なぜなら、参加者がお客様になったり、ファシリテーターの答えを探しに行ったりすることが起きます。当事者意識・主体性を無くしてしまいます。参加者と無理やり仲良くなったり、権威者になる必要は全くありません。

③構造化のスキル

構造化のスキルは、ロジカルシンキング等を用いて、可視化して構造化するスキルです。ファシリテーターは、参加者の思考・認知を可視化していく必要があります。参加者の思考・認知などを可視化していくことで、議論・対話の質がより高まっていきます。

具体的には、下記3点で構造化のスキルを扱っていきます。

①参加者の考え・認知を話しやすいようにする
②参加者の考え・認知を言語化する
③参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求する

それぞれ説明していきます。

①参加者が考え・認知を話しやすい状況を創る

参加者の考え・認知を話しやすいようにする状況を、創っていくことが必要です。参加者によっては、社内の上下関係が強く、対人関係のスキルを用いても、思っていることを話せないというパターンもあります。

おすすめな方法としては、下記などがあります。

・正解・不正解がないことを伝える(上位役職者の正解を探さなくなります)
・付箋に書いてもらい、ファシリテーターが集めて、シェアをする(誰の意見・発言か分かりません)
・グループに分かれて、グループの考え・認知として伝える(誰の意見・発言か分かりません)

参加者の考え・認知を話しやすいようにする状況を創っていくことが、構造化のスキルを用いるためにまずは必要です。

②参加者の考え・認知を言語化する

参加者の考え・認知を言語化することが必要です。参加者自身で考え・認知を言語化することが必要ですが、時には言葉にできていないこともあるので、ファシリテーターが言語化することを手伝っていきます。

具体的な方法としては、下記のプロセスで進めていくといいでしょう。

・参加者の言葉を尊重し、まずはそのまま受け止める
・参加者の言葉の背景を、対話や問いで紐解いていく
・(言語化しきれない時)ファシリテーターが言語化し、認識が違っていないか確認する

参加者の考え・認知を言語化することが、構造化のスキルを用いるためにまずは必要です。

③参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求する

参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求することが必要です。参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求することで、より議論・対話の質が高くなります。重要度や優先度が分かり、論点が明確になっていきます。

具体的な方法としては、ロジカルシンキングなどの思考方法を用いるとよいでしょう。
簡単なものだと、フレームワークがあります。例えば、クレームの時などにプロセス図を使うことで、参加者の考え・認知を整理・可視化でき、問題・原因は何かを把握していくことができます。

【クレームの振り返り】

営業時 企画時 納品時
顧客の反応
営業部の対応
開発部の対応

詳しく知りたい方は、下記コラムなども参考にしていただければと思います。

ファシリテーションを支える6つのフレームワークを知ろう│注意点にも言及

より認知を深く扱っていきたい時は、氷山モデルやシステム思考と言われるものを用いるといいでしょう。ここでの説明は省きますが、興味がある方は、下記コラムをまずはお読みいただけるといいでしょう。

参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求することで、より構造化のスキルは高まっていきます。構造化のスキルは、下記3点を考えて扱っていきましょう

①参加者の考え・認知を話しやすいようにする
②参加者の考え・認知を言語化する
③参加者の考え・認知を整理・可視化し、探求する

④合意形成のスキル

合意形成のスキルは、コミットの高い意思決定を促すためのスキルです。会議・ワークショップの目的・目標を達成するためには、合意形成を行っていく必要があります。

具体的には、下記プロセスで、合意形成のスキルを扱っていきます。

①(大前提)ファシリテーターが自身の価値観(認知)を知り、引っ張られないようにする
②合意形成でよく起きる課題の原因を把握し、対応する
③意思決定へのコミットレベルを確認し、高めていく

それぞれ説明していきます。

①(大前提)ファシリテーターが自身の価値観(認知)を知り、引っ張られないようにする

まずはじめに、ファシリテーターが自身の価値観(認知)を知り、引っ張られないようにすることが必要です。

ファシリテーターの価値観(認知)は、会議・ワークショップの場にとても大きな影響を与えます。そのため、ファシリテーターが自身をコントロールするためにも、自身の価値観(認知)を知り、場への影響を少なくしていくことが必要です。

具体的な方法としては、自身が何を大切にしているかを知っておくといいでしょう。事例をもとに説明させていただきます。

当社のファシリテーション研修で「冒険」を大切にしている方と、「責任」を大切にしている方がファシリテーションをした際に、意思決定が全く異なっていました。「冒険」を大切にしている方は「新しいことにチャレンジする」という意思決定になり、「責任」を大切にしている方は、「リスクを可能な限り無くす」という意思決定になりました。

ファシリテーターは、あくまで中立的な立場で、意思決定には関わりません。
※ 社内ファシリテーターの場合は、意思決定に関わる場合もあります。
そのため、自身の価値観を知り、引っ張られないことで、合意形成・意思決定への影響を無くしていきます。

②合意形成でよく起きる課題の原因を把握し、対応する

合意形成でよく起きる課題の原因を把握し、対応することが必要です。合意形成で起きる課題を知っておくと、回避することが可能になります。

具体的に合意形成で起きる原因は、下記4つがあります。

・前提が異なる場合
・対立関係が生まれる場合
・価値観が違う場合
・拒絶や、敵対関係がある場合

まずは、課題を把握し、対処していく必要があります。

前提が異なる場合は、目的・目標を明確にするだけで、解決していきます。場のデザインのスキルで目的・目標を明確にしていきましょう。
対立関係が生まれる場合は、対立関係を可視化していき、どのように対立を解消していくかを議論・対話していきます。

(参考)対立関係の可視化に関して

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※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

価値観が違う場合は、対話により、お互いの認知を把握していきます。その上で、まずはありたい姿を共に描いていくといいでしょう。

「①(大前提)ファシリテーターが自身の価値観(認知)を知り、引っ張られないようにする」で説明した、当社のファシリテーション研修のワークの際の事例を使って説明していきます。

この事例の議論では、最終的には「新製品開発は、プロダクトアウト・マーケットインのどちらにすべきか」という意思決定を行う内容でした。この時に、「冒険」の方はプロダクトアウトにすべきであり、「責任」の方はマーケットインにすべきという意思決定でした。ただお互いの価値観(認知)を理解したことにより、その認知を尊重しながら、ありたい姿を描いていきました。生成的に新製品開発のフェーズごとに、「プロダクトアウト・マーケットインを使い分ける」という意思決定を行い、合意形成しました。

拒絶や、敵対関係がある場合は、最も難易度が高く、一回の会議やワークショップで乗り越えることはできない場合も多くあります。丁寧に根気良く対応していくことが必要です。何回もの対話を通して、オープンな状態を創ります。そして、お互いが貢献し合える状況を創りながら、同時に認知を紐解き、当事者意識・主体性を解放します。

このように、合意形成でよく起きる課題の原因を把握し、対応していくことが必要です。

意思決定へのコミットレベルを確認し、高めていく

意思決定へのコミットレベルを確認し、高めていくことが必要です。全員が高いコミットでいるということは稀であるため、まずは参加者のコミットレベルを把握することが必要です。そのことにより、コミットが低い方へのフォローが可能になっていきます。

具体的には、意思決定へのコミットレベルを点数化してもらうといいでしょう。下記のような資料を使ってもいいですし、使わずに「今回の意思決定に関して、満足度は10点中何点ですか?」など聞いてもいいでしょう。

(参考)意思決定へのコミットに関して

クリックで拡大

※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

コミットが低い方がいた場合は、背景を聴き、もう一度議論・対話を根気よく行ってもいいかもしれませんし、会議・ワークショップ後に積極的にフォローを行ってもいいでしょう。

また、場のデザインのスキルで例に出したOARRのRuleで事前に下記のようなRuleを創っておくのもいいでしょう。

(参考)意思決定へのコミットに関して
 本日のルール ※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

(参考)ファシリテーションのルールの作り方を、詳しく知りたい方は、下記コラムを参考にしてください。 プロファシリテーターが伝授!失敗しないグランドルールの作り方と扱い方

このように、意思決定へのコミットレベルを確認し、高めていくことが必要です。
合意形成のスキルは、下記プロセスで考えて扱っていきましょう

①(大前提)ファシリテーターが自身の価値観(認知)を知り、引っ張られないようにする
②合意形成でよく起きる課題の原因を把握し、対応する
③意思決定へのコミットレベルを確認し、高めていく
  

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    2)ファシリテーションスキルをどのように身に付けていくのか

    ファシリテーションスキルの習得には、時間がかかります。そのため、意識的に学んでいく必要があります。下記の4つの方法で学び、ファシリテーションスキルを身に付けていくといいでしょう。

    ①書籍から学ぶ
    ②トレーニングを受ける
    ③多くの議論・対話の場を経験する
    ④実践し、振り返る

    それぞれ説明していきます。

    ①書籍から学ぶ

    書籍から学ぶことは、最も手軽な方法であり、体系的に学ぶことができるでしょう。当社からお勧めする書籍としては、下記になります。

    ファシリテーション・ベーシックス (日本経済新聞出版社 堀 公俊)

    基本的な内容から、応用的な内容まで網羅しています。まずは、ご自身ができる範囲で行うといいでしょう。

    ②トレーニングを受ける

    トレーニングを受けることは、書籍では理解しきれない部分の理解ができます。ファシリテーションスキルは、どうしても体感が必要なものもあるので、トレーニングはとてもお薦めです。

    ファシリテーションのベーシックスキルを提供している教育機関として、特に下記3社はお薦めです。

    Be- Nature School : 夜間に数時間のコース等がある
     ⇒お試しで受講するには、お勧めの公開講座です。

    日本ファシリテーション協会 : 1日で簡単な体験を通しながら知識をインプットするコース等がある
     ⇒ベーシックスキルを知識として、インプットするには適している公開講座です。

    アーティエンス株式会社 : 一年かけて、基礎から応用まで学ぶコース
     ⇒ファシリテーターとして、実践で活用できるスキルを身に付けることを目的としている公開講座です。

    自身の求めるレベルで、公開講座を選ぶといいでしょう。なお、当社のファシリテーション研修に関しての詳しい内容は、下記に記載しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。

    ③多くの議論・対話の場を経験する

    多くの議論・対話の場を経験すると、ファシリテーションスキルの有効な使い方から失敗している使い方を知ることができます。

    例えば、「対人関係のスキル」について、筆者が見た事例をお伝えします。

    筆者がまだファシリテーターとして駆け出しの際に、組織変革ファシリテーション研修を受講しました。ファシリテーターの方の説明に関して、納得がいかなく、質問をしました。ファシリテーターの方は、ただ私の質問を受け止めて、他の参加者と共に対話をしていきました。対話は深まり、生成的な考えが場に生まれてきました。当たり前ですが、そのファシリテーターの方への信頼は高まりました。

    次に、筆者がファシリテーターとして、ある程度経験を積んだ後の話です。自社のメンバーが受講するためのベーシックなファシリテーション研修を探し、他社のファシリテーション研修を受けた際の話です。後半になり、ある参加者の方が、ファシリテーターの方に少しネガティブな質問をしていました。その時に、ファシリテーターの方は、「傾聴が大事ですよ」と言いながらも、参加者の方を論破するような働きかけをしていました。場がどんどん冷めていきました。

    このように、多くの議論・対話の場を経験することで、ファシリテーションスキルの素晴らしい対応と、そうでない対応を観ることができ、自身のスキル習得に役立ちます。

    ④実践し、振り返る

    実践し、振り返ることで、ファシリテーションスキルの習得スピードは早まります。特に振り返ることが重要です。

    この時に良かった点はより強化し、至らなかった点は改善していくといいでしょう。可能であれば、アテンドスタッフやサブファシリテーターと共に振り返るといいでしょう。振り返りのフレームワークとして、KPTをお薦めします。

    KPTは、振り返りの際に用いるフレームワークです。振り返りの際のフレームワークがないと、振り返りが建設的にならないケースもあるので、KPTを活用することをお勧めします。KPTを用いることで、振り返りの枠組みができるので、より建設的な議論・対話が可能です。

    【参考】KPTとは
    「KEEP」「PROBLEM」「TRY」の頭文字を取った振り返りのフレームワークです。

    「KEEP」は続けるもの
    「PROBLEM」は改善するもの
    「TRY」は次回チャレンジするもの

     KPT ※ 当社 チームビルディングワークショップのテキストより

    このように、実践し振り返ることで、ファシリテーションスキルの習得スピードは上がっていきます。

    3)ファシリテーションのスキルを扱う際の注意点

    ファシリテーションのスキルを扱う際の注意点として、特に気を付けてほしい3つをお伝えします。

    ①スキルより、あり方・態度
    ②テクニックなどは最小限の活用に留める
    ③スキルを手放す

    それぞれ説明していきます。

    スキルより、あり方・態度

    スキルより、あり方・態度の方が重要です。多くのファシリテーションスキルを知っていても、ファシリテーターの方のあり方・態度が残念であれば、ファシリテーションスキルの効果は高まりません。

    2章の「多くの議論・対話の場を経験する」で出した事例ですが、「傾聴が大事」と言いながら、傾聴しないファシリテーターでは、参加者からの信頼は得られないでしょう。

    「ファシリテーターとして、この場にどのような貢献がしたいのか?」を考えて、自身の状態を整えて、まずは大切に場に臨んでいくことが必要です。そして日ごろから、自身のあり方と向き合っていくことが重要です。

    テクニックなどは最小限の活用にとどめる

    ファシリテーターの立ち位置は、あくまでも目的・目標を達成するための支援者という位置付けになります。介入は、最小限にとどめることが必要です。

    よく言われるのが、最も素晴らしいファシリテーターは、「何もしないファシリテーター」と言われます。理由は、参加者の当事者意識と主体性が解放され、物事が進んでいるためです。場のデザインをする際に、どの場面でどのテクニック・ツール・フレームワークを使うといいかということを考えていきますが、最小限にとどめることが必要です。

    いくつかのパターンを考えておくことは必要ですが、大前提として参加者の当事者意識・主体性を最大限高めることを考えていきましょう。そのためには、テクニックなどは最小限の活用にとどめることが重要です。

    スキルを手放す

    基本的な4つのスキルをお伝えしましたが、会議やワークショップの目的・目標を達成のために必要でないと思ったら、手放すことが必要です。場のデザインで準備したことを正確に進めることが重要ではなく、会議やワークショップの目的・目標を達成することが重要です。

    例えば、構造化のスキルでプロセス図を用意していたが、他のフレームワークを使ったほうがいいケースや、そもそも対人関係のスキルに重点を置いたほうがいいなどもあります。そのような時は、積極的に内容を変えていきましょう。スキルは大切に丁寧に扱いますが、必要がなければ勇気をもって手放すことが重要です。

    【参考コラム】ファシリテーターとは?何をする人?重要性やメリット・必要なスキルを詳しく解説

    4)まとめ ~ファシリテーション研修ならアーティエンスにお任せ~

    本コラムでは、ファシリテーションスキルをお伝えしていきました。事例を用いて、下記内容をお伝えしました。

    ファシリテーションのスキルとは何か?

    ・場のデザインのスキル
    ・対人関係のスキル
    ・構造化のスキル
    ・合意形成のスキル

    ファシリテーションスキルをどのように身に付けていくのか

    ・書籍から学ぶ
    ・トレーニングを受ける
    ・多くの議論・対話の場を経験する
    ・実践し、振り返る

    ファシリテーションのスキルを扱う際の注意点

    ・スキルより、あり方・態度
    ・テクニックなどは最小限の活用にとどめる
    ・スキルを手放す

    ファシリテーションスキルの理解が進み、習得方法、注意点まで理解いただけたかと思います。ファシリテーションスキルは、一朝一夕では身に付きません。ただし、体系的に学ぶことで、スキルの習得スピードは上がっていきます。

    本コラムを参考にしていただき、あなたのファシリテーションスキルの質が高まっていくことを願っています。
    なお、アーティエンスでは、初級から上級までニーズに応じてファシリテーション研修を実施しているので、ご興味がある方はぜひご連絡ください。

    研修でお悩みの方へ

    研修は、内容次第で成果が大きく変わります。もしも現在、自社の課題を解決できる最適な研修を探しているのであれば、アーティエンスまでご相談ください。

    新入社員研修から管理職研修、組織開発まで、お客様の課題解決にこだわり、多くの実績を生み出してきたプロフェッショナルが、貴社の課題にあわせた最適なプランをご提案させていただきます。

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