ファシリテーションを支える6つのフレームワークを知ろう│注意点にも言及

更新日:

作成日:2023.2.16

 会話をしているビジネスマンたち 
ファシリテーションを行っている時、

・議論が停滞してきた。どう対処していけば…
・『対話をしてください』と伝えても、参加者はなかなか話してくれない…
・表面的な話し合いで、参加者の本音がなかなか出てこない…

などと困った経験は、ありませんでしょうか?

実際、「自由に議論・対話をしましょう」では上手くいかないケースも多いです。
そんな時、ファシリテーターは、議論・対話を促進させていくための≪フレームワーク≫を渡してあげる必要があります。

【参考コラム】ファシリテーターとは?何をする人?重要性やメリット・必要なスキルを詳しく解説

本コラムでは、ファシリテーション時に、まずは知っておきたいフレームワークとその活用方法について詳しく解説していきます。

>アーティエンスのファシリテーション研修一覧はコチラから

このコラムで分かること

  • ファシリテーション時に使えるフレームワーク6選
  • フレームワークの具体的な活用場面
  • フレームワークの効果を高めるポイント
執筆者プロフィール
迫間 智彦
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

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1)ファシリテーション時に使いこなしたいフレームワーク6選

ファシリテーションをする際に、まずは知っておいてほしいフレームワークを6つご紹介します

OARR

「OARR(オール)」とは、デイビッド・シベッツ氏が提唱した「会議やワークショップをスムーズに進める」ためのフレームワークであり、ファシリテーションする際には必ず知っておいてほしいフレームワークです。  OARR ※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

本フレームワークは、ファシリテーションの場に入る前の準備段階で作成する必要があります。そして、ファシリテーターはこのOARRを使いこなすことで、会議・ワークショップの質がとても高くなります。例えば、下記の目的・目標を比較してみてください。どちらのほうが会議の質が上がるかは、一目瞭然です。

A社の営業会議 B社の営業会議
目的 売上達成のため、目標と現状の差分を明確にする。そして、事業戦略・戦術のPDCAを回すための情報収集と整理を行う 今期の売上達成
目標 事業戦略・方針のもと、顧客に素晴らしい価値を提供するための営業アプローチを、チーム全体で考える 現状を確認し、達成するためのアプローチを決める

※ 当社、ファシリテーション研修のテキストより一部抜粋

参考までに、AgendaとRuleに関しても、具体例をお見せします。
下記のAgendaとRuleは、筆者がある経営会議で用いたものになります。

 アジェンダ  本日のルール ※ 本ミーティングでは、Rollはファシリテーターがいるだけでしたが、書記やタイムキーパーなども決めてもいいでしょう。

このように、「OARR(オール)」は、「会議やワークショップをスムーズに進める」ためのフレームワークであり、ファシリテーションをする際に必ず知っておいてほしいフレームワークです。

分かっていることと、分からないこと

「分かっていることと、分からないこと」は、対話・議論の始めに活用することでお互いの背景が分かります。背景が分かることで、参加者の認知が広がります。より議論や対話を深く行うための準備段階として活用できるものです。

具体的には、下記のような表を用意し、参加者に考えてもらい、シェアしていただくといいでしょう。  分かっていることと分からないこと 「分かっていること・分からないこと」を活用する際は、下記のようなオペレーションを行うとよいです。

1. 個人で考えてもらう(3分程度)
2.「分かっていること」を全員が、順番を決めずにシェアする
3.「分かっていないこと」を全員が、順番を決めずにシェアする
4. 表を見ての感想や質問、伝えたいことなどを話す

個人で考えてもらう時間を設けるのは、言語化する時間が必要だからです。「分かっていること・分からないこと」を分けてシェアするのは、一つひとつ丁寧にシェアをしていくことで、共創している感覚が芽生えていきます。自分はシェアしたから終わり、という状況になりにくくなります。

一気に何かが変わるわけではありませんが、「分かっていることと、分からないこと」は、お互いの背景が分かるため、後々の対話・議論にとても影響を与えていくフレームワークです。

マトリックス

マトリックスは、万能型のフレームワークです。議論・対話の整理から意思決定まで、さまざまな場面で活用が可能です。

例えば、下記のような使い方が可能です。ある不動産会社の新入社員とOJTトレーナー合同研修の一場面ですが、入社時と今の状態をマトリックスにして、自分自身がいる場所に移動してもらいました。そして、その背景を対話していくことで、探求が深まっていきます。  自分が今いる場所 また、下記は意思決定の際に行うマトリックスです。

Quality Cost Delivery
施策A
施策B
施策C

対話・議論の始めに活用することで、お互いの背景が分かります。マトリックスは、万能型のフレームワークですので、ぜひ状況にあわせて、活用していただければと思います。

プロセス図

プロセス図も、万能型のフレームワークです。事業の推進のゴール設定や、振り返りなどさまざまな場面で活用が可能です。例えば、下記のような使い方が可能です。事業の推進のゴール設定に関しては、下記のように活用が可能でしょう。

【新規事業のゴール設定】 ビジョン:

Phase1 Phase2 Phase3
ゴール
目標
具体的な内容
期間

振り返りの際は、下記のような活用も可能です。

【クレームの振り返り】

営業時 企画時 納品時
顧客の反応
営業部の対応
開発部の対応

プロセスは、万能型のフレームワークですので、ぜひ状況にあわせて、活用していただければと思います。

KPT

KPTは、振り返りの際に用いるフレームワークです。振り返りの際のフレームワークがないと、振り返りが建設的にならないケースもあるので、KPTを活用することをお勧めします。

例えば、当社は研修やファシリテーションの場が終わった後は、必ずKPTを行います。さまざまな会議やワークショップで活用が可能です。KPTを用いることで、振り返りの枠組みができるので、より建設的な議論・対話が可能です。

【参考】KPTとは

「KEEP」「PROBLEM」「TRY」の頭文字を取った振り返りのフレームワークです。

「KEEP」は続けるもの
「PROBLEM」は改善するもの
「TRY」は次回チャレンジするもの

です。  KPT ※ 当社 チームビルディングワークショップのテキストより

【参考】ビジネスフレームワーク

ビジネスフレームワークは、さまざまありますので、自身がファシリテーションを行う場に適したものは、積極的に活用していくといいでしょう。ファシリテーションする会議・ワークショップによって、活用するビジネスフレームワークは変わってきます。

例えば、マーケティング会議であれば、STPや4P、AIDMAなどを活用するでしょう。問題解決を行う会議であれば、ロジックツリーや、5WHY、PDCAなどを活用するでしょう。

ビジネスフレームワークは、その時に応じたフレームワークを覚え、そして活用していくとよいでしょう。

2)ファシリテーションの際に、フレームワークをパワフルにするためのポイント

ファシリテーションの際に、フレームワークをパワフルにするためのポイントを、下記3点お伝えします。

フレームワークに囚われないこと

フレームワークに囚われないことが必要です。フレームワークは枠組みになり、枠組みに囚われ過ぎると、自由な議論や対話ができなくなるためです。特にビジネスフレームワークは、注意が必要です。

例えば、5W2Hを活用する際に、全ての内容を埋めようとすることで、表面的な内容になることもあります。適していないフレームワークだと考えた場合は、別のフレームワークに切り替えることも必要です。

フレームワークは、会議・ワークショップの質を上げることで、目的・目標を達成するための道具でしかないということは忘れないようにしましょう。

MECEを意識しながらも、手放すこと

ファシリテーションでフレームワークを活用する場合は、MECE(※)を意識しながらも、手放すことが必要です。

自由な議論や対話を行う際は抽象・具体を行き来しますし、ダブりなども多くなります。そこで、ファシリテーターが、都度「MECEではないですね」を連発すると、自由な議論や対話は行われなくなります。
※ もちろんMECEに必ずしなければいけない議論もあります。

例えば、1章でご紹介したプロセス図を創っているときに、「本当に抜け漏れがないのか?ダブりがないのか?」という観点ばかりを考えていると、ただプロセス図を埋めるだけの作業になってしまいます。ファシリテーターとして、MECEは強く意識しながらも、参加者の自由な議論や対話を促すためにも、手放すことも必要になります。

【参考】MECEとは

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共創・協働を促すこと

ファシリテーションでフレームワークを活用する場合は、共創・協働することが必要です。フレームワークによって、「誰(どの部署)が良い悪い」や、誰が言ったのかなど評価や判断を行うためのツールにすると、機能しなくなります。

例えば、1章でご紹介した「分かっていること・分からないこと」を活用するときに、「そんなことも分からないの?」というような反応が出ると、その参加者からの発言は出てこなくなるでしょう。そのためにも、ファシリテーターは分離・分断ではなく、共創・協働が生まれる状態を促進することを意識・行動する必要があります。

「分かっていること・分からないこと」の共有で、『2.「分かっていること」を全員が、順番を決めずにシェアする』と『3.「分かっていないこと」を全員が、順番を決めずにシェアする』の順番を決めないという部分が、実は一つのテクニックです。順番が分からなくなると、誰が何を言ったか分かりづらくなります。また、付箋などを用いて書いて貼ってもらうのも一つの方法ですし、オンラインの場合はグーグルスライドやジャムボードを活用してもいいでしょう。

このようにファシリテーションでフレームワークを活用する場合は、共創・協働することが必要です。

3)まとめ

本コラムでは、ファシリテーションで活用する6つのフレームワークと、「ファシリテーションの際に、フレームワークをパワフルにするためのポイント」に関して、お伝えしました。

ファシリテーションする際には、紹介したフレームワークを用いて、議論・対話の質を上げていただければと思います。そして、議論・対話の質を上げることで、会議・ワークショップの目的・目標をぜひ達成してください。

当社は、ファシリテーター育成コースもご用意しておりますので、ご興味があれば、ぜひご連絡ください。