成長を遂げる新入社員の育成法とは?|欠かせない2つの成長要素と3つの阻害要因

更新日:

作成日:2022.10.20

走るビジネスマンの後ろ姿とグラフ

「成長する新入社員と、成長しない新入社員には、どのような違いがあるのだろう?」

一度は考えたことのある問いではないでしょうか。

結論、「成長する新入社員と、成長しない新入社員」の違いは、「本人の継続的な学習の有無」と「周りからの支援の質」が大きく関与しています。

本コラムでは、新入社員の成長とは何かをお伝えし、成長するために必要な要素をお伝えします。そして、新入社員本人はどのように努力すればいいか、人事や現場の上司・トレーナーはどのような支援をすべきかをお伝えしていきます。

本コラムを最後まで読んでいただくと、新入社員の成長のイメージが湧き、新入社員の成長を促す具体的なアプローチが実行できます。

監修者プロフィール

山下 絢加

2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。




新入社員研修成功事例集

1)新入社員が成長した状態=1年目が終わった時に自律自走している状態

新入社員が一年目が終わったときに成長した状態とは、新入社員が自律自走している状態です。新入社員が自律自走していないと、いつまでたっても上司・トレーナーの手から離れない人材になり、いつまでも独り立ちできない人材になってしまいます。

例えば、自律自走しているAさんと、自律自走できなかったBさんでは、組織に与えるインパクトが変わります。Aさんは、上司・トレーナーの手から離れるだけではなく、チームの成果への貢献も大きくなりますし、後輩のロールモデルにもなっていくでしょう。Bさんは、上司・トレーナーのフォローが必要ですし、後輩からも頼りない先輩と見られてしまいます。

どのような組織であっても、新入社員が一年目が終わったときに成長した状態は、自律自走できるようにする必要があります。

【参考】新入社員の成長を促すことで得られる3つのメリットとは?

新入社員の成長を促すことで、3つのメリットがあります。

①パフォーマンスの発揮
成長することで、自身の目標達成だけではなく、チームへの貢献度合いも高くなります。

②離職率低下・エンゲージメント向上
成長することで、自組織への適合感が高まっていきます。

③次年度の新卒採用への影響
成長することで、採用媒体での紹介や、内定者フォロー・内定式などでロールモデルとして提示できます。

新入社員の成長を促すと、組織への影響がとても大きく、3つのメリットを得ることができます。

2)新入社員の自律・自走に欠かせない2つの成長要素

新入社員が自律自走するためには、技術的成長と精神的成長の2つの成長を繰り返していくことが大切です。

技術的成長精神的成長は、下記の図を参考にしていただければと思います。 技術的成長と精神的成長

この二つの要素にアプローチしていく必要があります。 どちらか片方だけアプローチしても、自律自走はできません。

例えば、どんなに知識やスキルを身に付けても、自分のことばかり考える新入社員であれば、上司・トレーナーは、その都度、新入社員の立ち振る舞いや業務姿勢にフィードバックが必要です。また、相手への思いやりがあり、チームへの貢献を意識していたとしても、知識やスキルがなければ、実業務の相談が多くなり、自律自走しているとは言えないでしょう。

新入社員が自律自走するための成長には、技術的成長と精神的成長の二つが必要です。

【参考】技術的成長と精神的成長
技術的成長は、業界や職種によって必要な専門スキル(ITスキル・会計スキル・営業スキルなど)や、業界や職種を問わないビジネススキル(ビジネスマナー・仕事の進め方・ロジカルシンキングなど)です。新入社員に必要なスキルを段階的に渡していくことが必要です。

精神的成長は、利己的ではなく利他の精神を持つなど、人としての成熟度・器です。段階的に、利他の精神を持たせていくことが必要です。まずは、「職場の人間関係」や「顧客との関係」にフォーカスするとよいでしょう。  自利利他※ 当社新入社員研修のテキストより抜粋

新入社員研修成功事例集

3)新入社員が成長し、自律自走するために必要なこと

新入社員が自律自走するためのアプローチを、以下の3つに分けて説明します。

①新入社員本人が成長するために行うこと
②上司・トレーナーが働きかけること
③人事が働きかけること

①新入社員本人が成長するために行うこと

新入社員本人が成長するために行うことは、日常的に学習し続けることです。

【参考】学習とは
「目的に向けて効果的に行動するための意識と能力を高めること」
小田理一郎『「学習する組織」入門』より抜粋)

一年間自発的に学び続けると、自律自走していきます。
※ 人事・上司・トレーナーは、本人が自ら学ぶような導線を創っていく必要があります。

技術的成長として、日常的に知識とスキルを習得していく必要があります。 知識とスキルを習得していくと、上司・トレーナーへの質問・相談が少なくなり、自律自走していきます。 例えば、本人に自発的に目標を持たせて、日常的に学習し続けるように促すことも可能です。 目標を自身で持てば、技術的成長をするための知識やスキルを習得を自発的に行うようになります。
次に精神的成長を促すためにも、経験学習モデル(デービッド・コルブが提唱)を取り入れていく必要があります。

※ 経験学習モデルとは、経験から学ぶことです。
経験をして、振り返り(内省・省察)、気付き・発見(教訓・概念化)があり、行動(適用・実践)していくという学習理論です。  成長する人の行動習慣※ 当社新入社員研修のテキストより抜粋

この経験学習モデルをしっかり回していくことで、自身が見えている枠組み(認知)を広げて行くことが可能です。枠組み(認知)を広げることで、相手目線を持つことができますし、持たせていくことが重要です。

例えば、新入社員Aさんは経験学習がしっかり回されているタイプとして、新入社員Bさんは経験学習があまり回されていないタイプとします。下記のような状況を想像していただければと思います。

二人とも営業部に配属されました。そして、二人とも失注したとします。
経験学習モデルでは、経験は同じです。肝は、振り返り(内省・省察)です。

Aさんは、 「(自責で捉えて)営業プロセスで、どこが良かったのか、悪かったのか?お客様はどう感じたのか?次同じような状況が起きたら、どうしたらいいか」 と考えます。

Bさんは、 「(他責でとらえて)お客さんが悪かった。上司がフォローしてくれなかった。運が悪かった」 と考えます。

どちらが次の営業で受注の確率が上がるかは、一目瞭然でしょう。
振り返り(内省・省察)の際に、まずは顧客など相手がどう考えたか・感じたかなどを考えて、自身と向き合うためにも、経験学習モデルを取り入れていくことが必要です。
そうすれば、精神的成長を促すことが可能になり、自律自走への意識・行動も高まります。

②上司・トレーナーが新入社員の成長のために働きかけること

上司・トレーナーが新入社員が自律自走するための成長に働きかけることは、「新入社員とのコミュニケーション量を担保し、質を高める」です。

新入社員の自律自走を促すためには、始めは新入社員へのフォローを多くする必要があります。
自転車の補助輪を外して乗るときを思い出していただくと、想像がつきやすいと思います。始めは、後ろで自転車を支えてあげることも必要なことと、新入社員の成長支援も一緒です。

具体的に、「新入社員とのコミュニケーション量を担保し、質を高めるため」には、4つの方法があります。

・オンボーディング
・日報
・OJT
・1on1

4つの全ての方法が、技術的成長・精神的成長の両方に促すことが可能です。

オンボーディング

オンボーディングでは、「段階的な技術的成長を得られる育成計画を立てること」と、「精神的成長は、新入社員と現場社員の信頼関係を形成し、安心してチームに参画できるようにすること」が重要です。

「段階的な技術的成長を得られる育成計画を立てること」で、本人は成長実感を持て、やりがいや成長意欲を持てます。そうすると、より学ぶ意識も強くなっていきます。下記のような育成計画を立てるとよいでしょう。

【参考】営業チームの新入社員向け 1か月の育成計画例
※ 当社「OJTトレーナー研修」テキストの一部
クリックで拡大

オンボーディングでは、段階的な技術的成長を得られる育成計画を立てることが重要です。

次に、「精神的成長は、新入社員と現場社員の信頼関係を形成し、安心してチームに参画できるようにすること」が重要です。
信頼関係ができていなく、安心してチームに所属していなければ、上司・トレーナーのフィードバックを素直に受け付けません。特に知識やスキルなど分かりやすいものではなく、人としてまだまだ未熟な若者は、精神的成長の指摘はなかなか受け止められないとも言われています。

歓迎会なども信頼関係を創る一つ方法ですが、相互インタビューなどすることもお勧めです。

【参考】 相互インタビューシート
※ 当社の新入社員研修を導入いただいたお客様にプレゼントしているものです。

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※ 当社オンボーディングツールから一部抜粋

フィードバックを素直に受け止めてもらうためにも、「精神的成長は、安心してチームにジョインできるためにも、新入社員と現場社員の信頼関係を形成すること」が重要です。

【参考】成功循環モデル

「関係の質」が良くなれば、「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」と良くなっていき、さらにまた「関係の質」が上がり、好循環になると言われています。ただし、これは悪循環にもなるとも言われているので、新入社員のオンボーディングはとても重要です。そして最もアプローチしやすいのは、「関係の質」だと言われています。

下記のような新入社員とトレーナーの関係を想像していただくとわかりやすいと思います。
【パターン①: 新入社員Aさんと、トレーナーCさんは、とても信頼関係がある】
ある日、トレーナーCさんが、周りからはパワハラと捉えられてもおかしくないほどの叱責を、新入社員Aさんに行います。ただし、新入社員Aさんは「Cさんが言っているのだから頑張ろう」と思います(思考の質)。そして、実際に行動に表し、愚直に頑張ります(行動の質)。そして結果が出ます(結果の質)。さらに、新入社員AさんとトレーナーCさんの関係の質は上がっていきます。

【パターン②: 新入社員Aさんと、上司Dさんは、まだ信頼関係ができていない】
ある日、突然上司がDさんになりました。トレーナーCさんと新入社員Aさんとの関係を見ていた上司Dさんは、少しくらい厳しくしても新入社員Aさんは大丈夫だろうと思い、同じように厳しく新入社員Aさんに接します。新入社員Aさんは、上司Dさんの厳しさに対しては不快感を持っています(思考の質)。そして、実際に行動も嫌々行い、時には行わないということが起きます(行動の質)。そして結果は出ません(結果の質)。新入社員Aさんと上司Dさんの関係の質は下がっていきます。このようなことから、成功循環モデルを好循環にしていくことが必要です。

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※ 当社ファシリテーター育成コースより抜粋

日報

日報では、「技術的成長・精神的成長」の振り返りができる内容にし、必ず上司・トレーナーがフィードバックすることが重要です。日々の小さな変化を振り返ることで、成長に気付くことが可能になり、その成長を加速させていきます。

例えば、当社では新入社員の日報の項目は、下記の内容を書いてもらうことが多いです。

① 昨日のアウトプットと、スケジュールとの差分 (技術的成長がメイン)
② 本日のタスクとスケジュール(技術的成長がメイン)
③ 意識したこと(技術的成長・精神的成長)
④ 周りに与えたポジティブな影響(技術的成長・精神的成長)
⑤ 周りに与えたネガティブな影響(技術的成長・精神的成長)
⑥ ポジティブな影響を受けたこと(技術的成長・精神的成長)

(サンプル)
■昨日〇/〇の主な業務(8H)
・営業会議 1H
・コラム骨子作成 2.5→2H
・〇〇さま打ち合わせ(準備含む)2H
・Twitter投稿 0.5→1H
・メルマガ作成 1H
・その他 1H
メール対応、日報、朝礼

■本日〇/〇の主な業務(8H)
・週次会議 2.5H
・研修レポートのすり合わせ 0.5H
・コラム作成 2H
・1on1 1H
・請求書確認、送付 0.5H
・Twitter投稿 0.5H
・その他 1H
メール対応、PULL数値確認、日報、朝礼

■振り返り
・意識したこと
Twitterの質をあげる(分かりやすく伝える)
・改善が必要なこと
コラムを書く際の相手目線
・周りに与えたポジティブな影響
〇〇さま打ち合わせで、レポートが分かりやすいと言ってもらえたこと
・周りに与えたネガティブな影響
Twitterの投稿に対して、十分な調査をせずに、ツイートのレビューを行ったこと
・ポジティブな影響を受けたこと
〇〇様との打ち合わせで、新入社員の○○さんが活躍しているという話を聴けたこと

上記内容をもとに、トレーナーと共に朝礼を行い、その際にフィードバックをするようにしています。本人も内省から、日々の変化を感じることができ、上司・トレーナーからも適切なフィードバックができるので、「技術的成長・精神的成長」へのアプローチが可能です。

OJTと1on1

OJTと1on1では、「技術的成長・精神的成長」の両方を、上司・トレーナーが意識して、コミュニケーションをとることが必要です。

「技術的成長・精神的成長」の両方を意識しないと、片方が強くなり、片方が弱くなるケースがあります。「2.新入社員が自律自走するための成長に必要な2つの要素」でお伝えしたとおり、片手落ちになります。

よくあるケースとして、エンジニアの方は技術的成長が強くなり、営業の方は精神的成長が強くなる傾向があります。これが続くと、自組織のカルチャーになっていきますので、注意が必要です。顧客目線がない組織になったり、精神論が強い組織になったりするケースがあります。まず、自身がどちらの傾向が強いのかを知るだけでもいいでしょう。

組織のカルチャーにも影響していくので、OJTと1on1では、「技術的成長・精神的成長」の両方を上司・トレーナーが意識することが必要です。

【参考】 1on1の品質を上げるためにも、パルスサーベイを利用するのもよい

※ パルスサーベイとは、社員の状態を把握するツールの一つです。
簡単な質問を短期スパンで繰り返し回答いただき、継続的にその数値の推移を測ります。

1on1で何を話したらいいか、何を聞いたらいいか分からない方も多いかと思います。 その際、新入社員と話すための題材があると話しやすいです。 パルスサーベイを行い、その数値を見ながら話すのもよいでしょう。

【パルスサーベイGrowthのサンプル】

クリックで拡大

アーティエンスでは、新入社員・若手社員向けのパルスサーベイサービスGrowthを提供しています。ご興味がある方は、お問い合わせください。
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③人事が新入社員の成長のために働きかけること

人事が新入社員が自律自走するための成長に働きかけることは、「新入社員が自律自走できるための導線を多く創る」ことです。

新入社員の自律自走を促すためには、手取り足取りという文脈ではなく、新入社員が当事者意識と主体性を持つための仕組みを創ることで、自律自走を加速させていくことが必要です。手取り足取りにしてしまうと、受け身を加速させてしまいます。
具体的には、「新入社員が自律自走できるための導線を多く創る」ためには、4つの方法があります。

①研修(配属前研修・フォロー研修・OJTトレーナー研修)
②オンボーディング支援
③自己啓発支援
④人事との1on1・フォロー面談

※ ここでの「人事との1on1・フォロー面談」は配属後のケースです。

4つの全ての方法を、それぞれ説明していきます。

研修(配属前研修・フォロー研修・OJTトレーナー研修)

研修では、「技術的成長・精神的成長」の両方を人事は意識して、企画・設計をすることが必要です。

「上司・トレーナーが新入社員の成長のために働きかけること」の「OJTと1on1」と同様に、両方を意識しないと、片方が強くなり、片方が弱くなるケースがあります。「2)新入社員が自律自走するための成長に必要な2つの要素」でお伝えしたとおり、片手落ちになります。

よくあるケースとして、IT企業は技術的成長に注力し、営業会社・サービス業は精神的成長に注力する傾向が見られます。こちらも、自組織のカルチャーに、より影響を与えます。「技術至上主義になり顧客への関心やチーム力への関心が弱まる」組織や、「精神論に逃げてしまう組織だと、新入社員・若手社員が逃げ出す」組織になりかねません。

研修の内容は、「技術的成長・精神的成長」の両方を意識して、人事は企画や設計をしていく必要があります。

オンボーディング支援

オンボーディングでは、「技術的成長・精神的成長」の両方を人事は意識して企画・設計し、配属先の上司・トレーナーへの支援をすることが必要です。

オンボーディング支援の中に、「技術的成長・精神的成長」の両方を人事は意識して企画・設計をすると、自然に上司・トレーナーは「技術的成長・精神的成長」の両方にアプローチします。「技術的成長・精神的成長」の重要度は、上司・トレーナーによってバラツキが出ますが、仕組みで一定レベルはバラツキを抑えることが可能です。

例えば、下記のシートは当社のオンボーディングのツールです。下記のような知識・スキルの習得のマッピングシートなどを用いれば、技術的成長を促すことが可能です。なお「半年間の育成テーマ(目標・課題)」の部分に精神的成長を入れています。

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オンボーディング支援でも、「技術的成長・精神的成長」の両方を意識して、人事は企画や設計することで、現場の上司・トレーナーの重要度のばらつきを抑えることができます。

自己啓発支援

自己啓発では、「技術的成長・精神的成長」の両方を人事は意識して企画・設計し、新入社員の自発性を刺激することが必要です。自己啓発支援は、強制にはならないようにしないと、自己学習は促進されませんし、自律自走を促せなくなってしまいます。

例えば、新入社員への課題図書などに関しても、どのように渡すかを工夫するだけでも、新入社員の自発性を刺激することが可能です。入社式に経営者からの熱いメッセージを添えたり、配属前に現場の上司からの期待のメッセージと共に渡したりすることも一つの方法です。

下記コラムに詳細を記載していますので、こちらも参考にしてください。
【新入社員育成のプロが厳選】新社会人におすすめ本16選!成長につながる渡し方

自己啓発の福利厚生をただ用意するのではなく、「技術的成長・精神的成長」の両方を人事は意識して企画・設計し、新入社員の自発性を刺激することが必要です。

人事との1on1・フォロー面談

※ ここでの人事との1on1・フォロー面談は配属後のケースです。

人事との1on1・フォロー面談では、「精神的成長」を特に人事は意識して企画・設計して、新入社員に対して、中立的にフォローを行うことが必要です。

人事との1on1は、現場で活用する知識・スキルを持っていない人事は「技術的な成長への支援」はなかなか難しいですし、新入社員自身も技術的成長を人事に求めていないでしょう。新入社員は、現場での不満や不安などを話したいと思うでしょうし、中立的な立場として聞いてもらうことを求めています。

例えば、当社のお客様のIT企業さま(社員数1,500名)の事例です。

フォロー研修の際に人事との面談との面談を設けていました。その際、ある新入社員から、「今のチームがあわないため、異動したい。異動ができなければ、退職したい」という話がありました。

人事の方は、「異動を検討する」や「一旦上司に確認する」などではなく、ひたすら新入社員の話を聞いたそうです。 そうすると、新入社員から、「チームに合わないのではなく、テレワークで孤独だ」という話が出てきました。そのため、孤独を解消するために、自分自身が何をできるかを一緒に考えたそうです。本人も、気恥ずかしそうにしながら、「まだやれることがあるので。頑張ります」という話をされたそうです。 ※ もちろん現場の上司にも状況を伝えて、フォローをお願いしました。

このように、まずは中立的な立場で話を聞きながらも、精神的成長にアプローチするとよいでしょう。

4)新入社員の自律自走を阻害し、成長を止めてしまう3つの原因

新入社員の成長を止めてしまう原因は、大きく3つあります。

①組織・上司・トレーナーから、新入社員に対して、「考える余地」を与えない
②上司・トレーナーから、新入社員に対して、適切なフィードバックがされない
③新入社員が、自組織でのキャリアを描けない

それぞれ説明していきます。

①組織・上司・トレーナーから、新入社員に対して、「考える余地」を与えない

このケースは、二つのタイプがあります。 一つは、組織がルールを厳格化をしているケースです。
ルールが強すぎるため、考える必要が無くなってしまいます。

仕組化・マニュアル化通りしか行わない職場や、決まったことをひたすら行う工場勤務です。 決まったことはできますが、それ以上のことはできないという状況が起きます。

もう一つは、上司・トレーナーが良かれと思って、懇切丁寧にOJTを行うケースです。すべて上司・トレーナーからの指示があるので、新入社員はそれだけを行えばいいという認知になります。

この二つで共通しているのは、組織・上司・トレーナーから、新入社員に対して、「考える余地」を与えないため、新入社員の成長を阻害しています。

【参考】組織がルールを厳格化しているケースの弊害と対策 ルールや仕組みができている組織は、効率的に生産性(結果・成果)を高めることが可能ですが、二つの弊害があります。一つは、新入社員が成長を感じることができず、離職してしまうケースです。もう一つは、管理職・中堅社員になったときに、考えることができなくなります。

対策としては、新入社員に対して、何かしらのプロジェクトにアサインする等を行うといいでしょう。 それだけでも考える部分を渡すことができます。

【参考】上司・トレーナーが良かれと思って、懇切丁寧にOJTを行うケースの弊害と対策 新入社員と上司・トレーナーとの関係性は高まりますが、上司・トレーナーへの依存度が高くなり、受け身が助長され、自律自走を促す成長はできません。対策としては、育成計画で新入社員自身が考える部分を創るといいでしょう。

②上司・トレーナーから、新入社員に対して、適切なフィードバックがされない

このケースは、二つのタイプがあります。 一つは、フィードバックが行われないというケースです。

フィードバックが行わなければ、新入社員は何が良くて、何が悪いのかわかりませんし、また成長実感が持てません。よくある状況としては、テレワークなどで新入社員の状況を把握できる機会が少ないので、フィードバックができないというものです。

もう一つは、ネガティブフィードバックが中心になるというケースです。 ネガティブフィードバックが中心だと、モチベーション低下や自信が無くなるということが起きます。上司・トレーナーが良かれと思って改善点を伝えているという場合が多いですが、新入社員からするとまたダメ出しがあるという認識になり、素直に聞けなくなります。

この二つで共通しているのは、上司・トレーナーから、新入社員に対して、適切なフィードバックがされないため、新入社員の成長を阻害しています。

【参考】フィードバックが行われないというケースの弊害と対策 二つの弊害があります。 一つは、新入社員のエンゲージメントが高まらず、退職してしまうということです。
もう一つは、孤独感を持ち、離職やメンタルヘルスの問題を持ってしまうケースです。

対策としては、「))新入社員が自律自走するための成長に働きかけられる3つのアプローチ」の「上司・トレーナーが新入社員の成長のために働きかけること」の内容を行い、コミュニケーションの量と質を高めることです。日報をもとに、毎日15分でいいので1on1を行うのもよいでしょう。

【参考】ネガティブフィードバックが中心になるというケースの弊害と対策 上司・トレーナーとの信頼関係が構築できず、仕事や職場への適合感・貢献感が持てず、離職やメンタルヘルスの問題を持ってしまうケースです。

対策としては、OJTトレーナー研修など部下育成方法を学んだり、最近の若手の傾向や新入社員が成長している成功事例などを聞き、真似をするということから始めてもよいでしょう。

③新入社員が、自組織でのキャリアを描けない

このケースは、二つのタイプがあります。 一つは、自身が望んでいるキャリアを描けないというケースです。

自身が望んでいるキャリアを描けないと、成長イメージや成長予感は持てません。
よくある状況としては、企画を行いたいなと思って入ったが、営業になるなどです。このままでは、企画はずっと行えないのではないとかいう不安を持ちます。

もう一つは、キャリア形成の支援がないと感じるケースです。
新入社員から自身のキャリア像を明確に持っていることは少ないですが、研修などの機会を通して、自身のキャリア形成への支援を、組織に対して求めています。

日本の人事部白書2019では、育成環境が整っている企業ほど、離職率が低いという結果が出ています。
こちらは、冒頭でお伝えした辞めていく若手社員の動向として、「自身のキャリアを考えた上で辞めている」がトップとも関連性はあるでしょう。「組織から支援がされない」から「成長できない」、だから「辞める」という論理です。

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※ 「日本の人事部白書 2019」より抜粋

この二つで共通しているのは、組織が、新入社員に対してキャリア形成の支援ができないと成長できない状況を生み出し、離職率も高めてしまいます。

【参考】自身が望んでいるキャリアを描けないというケースの弊害と対策 弊害としては、やる気が起きなく、職場になじめなず、辞めていくということが起きるでしょう。 対策としては、東京経済大学コミュニケーション学部准教授小山 健太氏が提唱するスパイラルキャリア論で言われる積極的適応と言われる状態に持っていくことが重要です。

新入社員は、大小関わらずリアリティ・ショックを受けると言われています。
この時に、無理やり職場に適応する消極的適応ではなく、自身のキャリアが思い通りに行かなくても、上司・トレーナーの力を借りながら、キャリア観を再構築していくということです。

例えば、先ほどの例で始めに企画職につけなくても、上司・トレーナーからの実体験(特に失敗談などを乗り越えた話)をもとに、将来企画職に行くためにも営業の経験は素晴らしいものになるであったり、営業自体が企画であるなどの話を伝えていくと効果があるでしょう。

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※ 東京経済大学コミュニケーション学部准教授小山 健太氏が提唱するスパイラルキャリア論資料の一部抜粋

下記コラムで、他の対策なども記載しておりますので、良ければご覧ください。
若手社員によくある離職理由「やりたい仕事じゃない」のフォロー施策とは?

【参考】キャリア形成の支援がないと感じるケースの弊害と対策 弊害としては、会社は何も支援をしてくれないと感じ、エンゲージメントは下がっていくでしょう。
そして、離職率も上がっていきます。

対策としては、「新入社員が自律自走するための成長に働きかけられる3つのアプローチ」の「上司・トレーナーが新入社員の成長のために働きかけること」と、「人事が新入社員の成長のために働きかけること」を行える範囲で実施していくことが必要です。

下記コラムも参考にしていただければと思います。
新入社員を伸ばす上司が実践している教え方│成功に導くためのポイントとは?

新入社員研修成功事例集

5)まとめ

新入社員が一年目が終わったときに成長した状態とは、新入社員が自律自走している状態です。

新入社員が自律自走するための成長には、「技術的成長」と「精神的成長」の二つの要素があり、人事・経営者は組織として、下記の3つのアプローチを企画し、行う必要があります。

①新入社員本人が成長するために行うこと
②上司・トレーナーが新入社員の成長のために働きかけること
③人事が新入社員の成長のために働きかけること

そうすれば、一年後には、新入社員が自律自走するための成長を遂げているでしょう。
新入社員の成長に関して、ご相談があれば、ぜひ当社までご連絡ください。

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