OJTとOFF-JTの違いを活かし、育成効果を高める方法

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「OJTとOFF-JTって、どっちもやるべき?」
「それぞれ、どう使い分けたらいいのか分からない…」

このようなお悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とOFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)は、いずれも社員の成長を支援するための育成手法です。
しかし、それぞれの特徴や得意な領域、連携の仕方を理解していないと、せっかくの育成が効果的に機能しない可能性もあります。

本コラムでは、OJTとOFF-JTの違いを改めて整理し、それぞれの特性を活かして連動させる方法をご紹介します。あわせてOJTとOFF-JTの質を高める方法もお伝えします

限られた時間やリソースの中でも、育成効果を高めるためのヒントがきっと見つかります。
OJTとOFF-JTの違いを理解して育成の質を高め、社員の成長を促し、組織の成長につなげていきましょう。

監修者プロフィール

迫間 智彦

X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

1)OJTとOFF-JTの違いとは?特性比較

OJTとOFF-JTの大きな違いは、職場で行うか職場を離れて行うかという「実施場所と方法」です。どちらも社員の成長と自律を促すための育成手法ですが、目的や効果的な活用場面、注意点が異なります。

OJTは実務の中で1対1で指導するスタイルで、個別の成長支援に向いています
一方、OFF-JTは研修やセミナーなどを通じて1対多数で教育を行う方法で、知識の土台や専門スキルを一括で学ぶのに適しています

OJT OFF-JT
目的 トレーニー(育成される側)の成長と自律促進
実施状況 実務中(職場内) 実務外(職場外・研修会場など)
指導方法 1対1(トレーナーとトレーニー)  1対多数(講師と受講生)
効果的な
活用場面
・育成のコストを抑えたいとき
・実務を通じて具体的なスキルを教えたいとき
・個々の状況に応じた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき
・知識の土台を築きたいとき
・専門性の高い内容を教えたいとき
・複数人に一貫した教育を行いたいとき
難しいこと ・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築
・実践との接続
・個別対応
・育成コスト

※トレーナーとは、社員の成長のために仕事で必要なスキルや知識を教える役割の人です。
※トレーニーとは、育成を受ける側の人のことを指します。

このように、OJTは「現場での実践的な育成」に、OFF-JTは「体系的な知識の習得」に強みがあります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることで、育成の質を大きく高めることができます。

OJTとOFF-JTについて、詳しく説明します。

OJTとは

OJT(On-the-Job Training)は、職場の実務を通じてトレーナーがトレーニーに1対1で指導する育成方法です。

個別性が高く、即戦力となるスキルの習得に最適ですが、運用には一定の工夫と支援が求められます。

OJT
目的 トレーニーの成長と自律を促すこと
実施状況 実務中(職場内)
指導方法 1対1(トレーナーとトレーニー)
効果的な活用場面 ・育成のコストを抑えたいとき
・実務を通じて具体的なスキルを教えたいとき
・個々の状況に応じた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき
難しいこと ・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築

OJTが効果的に機能する場面は以下の通りです。

● 育成のコストを抑えたいとき

OJTは、現場での実務時間内に先輩社員が育成を担うため、外部研修のような追加費用がかかりません。たとえば10名の新入社員に外部研修を実施すると数十万円かかるケースでも、OJTであればコストを抑えて育成を始められます。
ただし、体系的な知識が不足しやすいため、必要に応じてOFF-JTと組み合わせることが重要です。

● 実務を通じて具体的なスキルを教えたいとき

OJTは、資料の作り方やクライアント対応など、実務でしか身につかないスキルを教えるのに適しています。現場で一緒に作業を進めながら、細かい判断やコツを伝えることができるため、学んだ内容をそのまま仕事で活かしやすくなります。

● 個々の状況に応じた育成が必要なとき

トレーニーごとのスキルレベルや得意・不得意に合わせて、育成内容や仕事の任せ方を調整できます。たとえば、資料作成が苦手な社員には少しずつ任せる範囲を広げる、発言が得意な社員には会議で発言機会を与えるなど、柔軟なアプローチが可能です。

● 縦のつながりを強化したいとき

OJTでは日々の関わりを通じて、先輩と後輩の信頼関係が育まれます。業務のやり方だけでなく、組織の価値観や文化も自然と共有され、チームとしての一体感を高めるきっかけになります。後輩を育てる経験を通じて、トレーナー自身の成長にもつながります。

このように、OJTは、実務を通じて個々に合わせた指導ができ、育成コストを抑えながら即戦力を育てられる手法です。現場での具体的なスキル伝達や、縦のつながりを強化したいときに特に効果を発揮します。柔軟性が高く、組織の文化や価値観を自然に伝えられる点も大きな魅力です。

一方、OJTでつまずきやすいポイントは以下の通りです。

● 統一された教育が難しい

トレーナーによって教え方や伝える内容に差が出やすく、育成の質にバラつきが生まれます。教えないまま「見て覚えて」スタイルになってしまうケースもあり、効果的な育成が進まないことがあります。

● 論理的・体系的な指導が難しい

現場での指導は「目の前のこと」に偏りがちで、背景や目的を含めて体系的に伝えることが難しくなります。たとえば「報連相してね」と言われるだけで、何のために・どのように行うかが理解できず、曖昧なままになってしまうことも。

● 育成時間の確保が困難

トレーナーは通常業務と並行して育成を担うため、時間や余裕がなくなりやすいです。育成が後回しになり、トレーニーへの関わりが薄くなると、成長が遅れる要因となります。

● 関係性が築けていないと育成効果が下がる

信頼関係がないと、指導内容がうまく伝わらなかったり、トレーニーが質問や相談をしにくくなったりします。関係性が希薄なままでは、学びの質やモチベーションにも影響が出やすくなります。

OJTには、このような課題があります。これらを放置すると、学習効果が限定的になり、育成の質が下がってしまう恐れがあります。だからこそ、仕組み化やトレーナー支援など、組織的なサポートが欠かせません。


OJTは、費用をかけずに実践的・個別的な育成ができる優れた手法ですが、運用の仕組みやトレーナー支援が不十分だと、教育効果が限定的になります。
だからこそ、OJTの「導入」だけでなく、「仕組み化」や「関係構築」も含めた設計が、育成の質を左右します。

OFF-JTとは

OFF-JT(Off-the-Job Training)は、職場を一時的に離れて行う研修やセミナー、eラーニングなどの育成方法です。

複数人に一貫した知識やスキルを提供しやすく、体系的な学びや専門性の高い内容を習得させるのに適しています。ただし、実務との接続やコスト面での配慮が求められます。

OFF-JT
目的 トレーニーの成長と自律を促すこと
実施状況 実務外(職場外・研修会場など)
指導方法  1対多数(講師と受講生)
効果的な活用場面 ・知識の土台を築きたいとき
・専門性の高い内容を教えたいとき
・複数人に一貫した教育を行いたいとき
難しいこと ・実践との接続
・個別対応
・育成コスト

OFF-JTが効果的に機能する場面は以下の通りです。

● 知識の土台を築きたいとき

OFF-JTは、理論やフレームワークなど、体系的な知識をしっかり学ぶのに最適です。たとえば問題解決やコミュニケーション、ロジカルシンキングなど、実務に直結する“考え方の型”を身につけることで、応用力のある社員を育てることができます。

● 専門性の高い内容を教えたいとき

コンプライアンスやキャリア開発、リーダーシップなど、職場内のOJTではカバーしにくい専門的なテーマを扱いたいときに有効です。外部の専門家から最新情報や実践的知識を得られる点も魅力です。

● 複数人に一貫した教育を行いたいとき

OFF-JTは1対多の形式で行われるため、多くの社員に同じ内容を一斉に届けることができます。研修終了後に共通言語が生まれるため、チーム間のコミュニケーションがスムーズになる効果も期待できます。

このように、OFF-JTは「基礎力を整える」「幅広く学ばせる」目的に最適な手法です。実務に入る前に共通認識をつくることができ、組織全体の土台強化に役立ちます。

一方、OFF-JTでつまずきやすいポイントは以下の通りです。

● 実務との接続が難しい

研修で得た知識が、現場の業務でどう活かせるのかが見えづらくなるケースがあります。学んで終わりにならないよう、職場での活用イメージを明確に持たせる工夫が必要です。

● 個別対応がしにくい

一斉形式の研修では、受講者一人ひとりのスキルや理解度に合わせた柔軟な対応が難しくなります。質問しづらい、置いていかれる、といった不安が生まれやすい点も課題です。

● 育成コストがかかる

外部講師の招聘費、教材費、研修時間中の業務停止など、さまざまなコストが発生します。内容に見合った効果が得られないと、費用対効果が見合わなくなるリスクもあります。


OFF-JTは、社員に対して一貫した知識やスキルを短時間で広く提供できる、非常に有効な育成手法です。特に、基本的な考え方や専門知識を学ばせたいとき、共通認識を持たせたいときに効果を発揮します。

一方で、実務とのつながりが弱くなりやすく、学びが「現場で使われないまま」終わってしまうことも。個別性の欠如やコストの高さも考慮しながら、現場フォロー(OJT)と組み合わせて活用することで、学びを定着させ、育成効果を最大化できます。


OJTとOFF-JTは、いずれも社員の成長と自律を目的とした育成手法ですが、それぞれに強みと課題があります。

だからこそ、両者を連動させて活用することが重要です。
それぞれの役割を理解し、自社の状況や育成目標に応じて適切に使い分けることで、育成の質を大きく高めることができます。

2)OFF-JTとOJTの「繋ぎ」を工夫し、育成効果を高める

OJTとOFF-JTは、それぞれ異なる強みを持つ育成手法です。どちらか一方に偏るのではなく、役割の違いを活かして連動させることで、育成の質は飛躍的に高まります。

特におすすめなのは、まずOFF-JTで「考え方の型」を共有し、その後OJTで学んだことを活かして「実践力」を磨くという流れです。

先にOFF-JTを行うことで、トレーナーが基本的な概念や原則を繰り返し説明する必要がなくなり、OJTではより具体的な実務指導に集中できます。

また、OFF-JTで共通の知識や姿勢をインプットしておくことで、組織全体として一貫性のある育成がしやすくなり、「共通言語」をもとにしたコミュニケーションやOJTがしやすくなるというメリットもあります。

そのため、まずはOFF-JTで基礎や考え方を学び、その後OJTの中で定着を図る仕組みを設けることが重要です。

学びを現場で活かし続けるためには、以下のようなリマインドの仕組みが効果的です。

バトンメール®
日報
トレーナーや現場社員からのフォロー
フォローアップ研修

それぞれの方法について、詳しくご紹介します。

バトンメール®

アーティエンスでは研修後のフォローとして、バトンメール®を推奨しています。バトンメール®は、アーティエンスが開発した、研修後のフォローツールです。

受講生4~5名のグループになり、1週間に1回、「研修で学んだことをこんな風に現場で使ったよ」という内容を書いたメールを書いて、次の人に回していくというものです。(メールでなく、ビジネスチャットツールなどでも大丈夫です。)

バトンメール®を行うことで、研修の学びを自身で内省する時間を作ることができ、また、チーム学習も行われるため、学びの質をより高め、学びの定着を期待できます

日報

日報で、OFF-JTで学んだことをどう活かしたのかを記載する方法です。日報に書くため、仕事を行う中で研修で学んだことを活かせないか意識しやすくなります

例えば「研修で学んだことを今日の仕事の中でどのように活かしましたか?」という設問を日報の中に設けることで、無意識的にも研修で何を学んだのかを思い出すことにつながり、リマインドの効果が生まれます。

研修で学んだことを思い出す回数や、テキストを見直す回数が増えると何度も思い出すため記憶に定着しやすく、学びを定着させることにつながります。

トレーナーや現場社員からのフォロー

OFF-JTの内容を現場社員に周知して、トレーナーや現場社員が学んだことを活かした育成を行えるようにしましょう。

例えば、トレーニーが参加したロジカルシンキング研修のテキストを見て、どのようなことを学んだのかを知っていると、実務でロジカルシンキングを活かせる場所を教えることができます。そして、そこでどのように活用するのかを理解することで、OFF-JTで学んだことを実務に活かせるようになり、トレーニーの成長を促すことができます。

アーティエンスでは、現場社員の方にも後輩や部下、トレーニーがどのようなことを研修で学んだのかを知ってもらうために、研修の様子と内容がわかるレコードを作成しています。

※当社が作成した研修レポートの一部

当社で作成したレコード資料を共有していただくことで、研修で学んだことや、様子がわかるため、OJTでの育成に活かしやすいです。OFF-JTの内容を現場社員に周知することで、組織全体で学習効果を高めることができます。

フォローアップ研修

フォローアップ研修を行うことで、忘れてしまってた学びを思い出し、成長につなげることができます。

例えば、当社の上司との協働体感研修では、ビジネススキル(要件定義、タスク分解、スケジューリング、報連相、問題再発防止)を活用しながら、上司役である講師とシミュレーションワークを行います。その中で、自分たちの強みや弱みを探求し、現場での活用法を考えます。

学び直しながら、どのように現場で仕事のスピードや質を高めていくかを探求する機会を設けることで、成長を促すことができます。

【関連記事】新入社員フォローアップ研修の目的と内容例


OJTとOFF-JTは、どちらか一方だけでは不十分です。OFF-JTで土台をつくり、OJTで実践を通して深める。この“連動”があることで、学びは現場に根づき、育成効果は格段に高まります

特に、OFF-JTの内容を忘れさせない工夫を取り入れることで、学んだことが定着し、実務での成果にもつながります。

限られた時間とリソースの中で、育成の成果を最大化するためにも、OJTとOFF-JTを切り離すのではなく、「つなげる設計」を意識しましょう。

3)「OFF-JTの品質」を高め、OJTとの連携を強化し、育成効果を最大化する

OJTとOFF-JTを効果的に連動させるためには、まずOFF-JTの質を高めることが欠かせません

OFF-JTの質を高めるためにすべきことは下記の3つです。

実践的なワークを取り入れる
学んだことを現場で活かすイメージをする
受講生の状態に応じて柔軟に対応する

順番に説明します。

実践的なワークを取り入れる

OFF-JTの質を高めるには、講義中心ではなく実践的なワークを積極的に取り入れることが重要です。知識やスキルは「聞いただけ」では定着しづらく、「自分でやってみる」ことで初めて身につくためです。

アメリカ国立訓練研究所の研究でも、講義だけでは学習定着率が5%しかないのに対し、自ら体験した場合は75%まで上がるというデータがあります。

アーティエンスの研修では、実践の比率を7~8割とし、受講者が手を動かして学ぶ構成にしています。こうすることで、実務でもすぐに使える形で知識が定着しやすくなります。

単なる知識提供にとどまらず、受講者が体験を通じて学べる構成にすることで、OFF-JTの学びは格段に効果的になります

学んだことを現場で活かすイメージをする

OFF-JTでは、学んだことを現場でどう活かすかを具体的にイメージさせる時間を設けることが欠かせません。受講者が実務に応用するイメージを持っていないと、せっかくの学びが現場で活かされずに終わってしまうためです。

アーティエンスの研修では、実践ワークの後に「この学びを現場でどう使うか」を言語化してもらう時間を設けています。これにより、実務で同じような場面が訪れたときに、研修で得た学びをすぐに思い出し、行動に移しやすくなります。

「やって終わり」ではなく、「実務でどう使うか」を考える時間を設けることで、OFF-JTの学びは現場で生きる力になります

受講生の状態に応じて柔軟に対応する

OFF-JTを効果的に行うには、受講者の状態に応じて柔軟に対応する姿勢も大切です。
受講者が集中できていなかったり、モチベーションが低い状態では、いかに良い内容であっても学びは深まらないためです。

アーティエンスでは、あらかじめ伝えるべきポイントを3つに絞っておきつつ、当日の状況に応じて進行を調整しています。たとえば、ワーク時間を延長したり、集中力が下がってきたら短い休憩を挟んだりと、受講者の状態を見て柔軟に対応します。こうした工夫が、質の高い学びにつながります。

計画通りに進めることよりも、受講者が学べる状態かどうかを優先して対応することで、OFF-JTの学習効果は大きく向上します


OJTとOFF-JTはそれぞれ独立した育成手法ではなく、相互に連動させることで真価を発揮します。
だからこそ、これらの3つのポイントを意識して、まずはOFF-JTの設計と運営の質を丁寧に磨いていくことが重要です。

4)「OJTの質」を高めて、OFF-JTの学びを強化

OJTの質を高めるためには、OJT単体で完結させようとするのではなく、OFF-JTとの違いを踏まえて連動させることがポイントです。
ここでは、OJTの質を高めるうえで組織として取り組みたい4つの観点を紹介します。

トレーナーの育成に対する想いを醸成する
トレーナーの育成スキルを高める
トレーナーとトレーニーの関係性を築く
トレーニーの背景を理解しようとする

トレーナーの育成に対する想いを醸成する

OJTの質は、トレーナーの育成に対する想いに大きく左右されます。いくらOFF-JTで基本知識を学んでも、現場での関わりに熱量がなければ育成効果は限定的になります。だからこそ、育成に対して前向きな気持ちを持てる状態を整えることが重要です。

たとえば、トレーナーに選出された際に表彰や期待の言葉を伝える、評価制度に反映するなど、「育成を担うことが誇りになる」仕組みを用意しましょう。
また、「OJTを行う意義」や「育成を通して得られる学びやキャリアの広がり」などについて自分なりに考えられるようにすることも、想いを育てる鍵になります。

トレーナーの育成スキルを高める

OJTでは、単に経験のある社員が教えるだけでは効果が上がりません。育成スキルが不足していると、いくらOFF-JTで共通言語を学んでいても、現場での伝え方にばらつきが出てしまいます。

具体的には以下の4つのスキルを高めることが重要です。

育成計画作成スキル:育成の目的と道筋を明確にし、指導に一貫性を持たせる
ティーチングスキル:伝える力を高め、後輩の理解度を向上させる
フィードバックスキル:行動改善と強化を促し、成長を加速させる
コーチングスキル:自律性を育み、指示不要な状態へと導く

これら4つのスキルを高めることで、OJTでの育成の質を高められます

【参考コラム】
【管理職が部下育成ですべき5つの行動】長期的な組織の成長を促す

トレーナーとトレーニーの関係性を築く

OJTの成果は、人と人との関係性にも大きく依存します。OFF-JTで得た知識を現場で活かすには、安心して質問や相談ができる関係が土台になります。

そのために、次のような支援策が有効です。

・トレーナーの業務量調整と役割への期待を明確にする

・OJTトレーナー・トレーニー両者に対して1on1の機会を設け、定期的に状態を把握する

・パルスサーベイ等で関係性のギャップを可視化する

・合同研修で感謝や悩みを伝え合い、相互理解を深める

トレーナーの業務量調整と役割への期待を明確にする

OJTの質を高めるためには、トレーナーが育成にしっかり向き合える時間と動機づけが必要です。トレーナー自身の業務が多すぎると、どうしても育成が後回しになります。
そこで、業務量の調整を行うとともに、「なぜあなたがトレーナーに選ばれたのか」を明確に伝え、役割への納得と誇りを持ってもらうことが重要です。

OJTトレーナー・トレーニー両者に対して1on1の機会を設け、定期的に状態を把握する

トレーナーとトレーニーの関係は、ちょっとしたすれ違いでも、それが積み重なると信頼の低下につながることがあります。
そうしたズレを早期に解消するためにも、月に1回など定期的に1on1の場を設けることが重要です。
お互いの困りごとや違和感を率直に言葉にできる場を持つことで、関係性を健全に保ち、必要なサポートをタイムリーに行うことができます。

パルスサーベイ等で関係性のギャップを可視化する

トレーナーとトレーニーの間で、「できている」「理解している」といった認識にズレがあることは少なくありません。パルスサーベイなどの簡易調査を定期的に行い、双方の認識のギャップを可視化することで、対話のきっかけをつくることができます。

アーティエンスで開発したパルスサーベイを実施した企業を見ると、多くの場合でOJTトレーナーとトレーニーで認識の差が起きています。

※ パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施し、その推移結果から組織や従業員の状態を把握する調査手法のことです。

見えなかったことをこのように視覚的にすることで、ズレを認識でき、調整していくことができます。

合同研修で感謝や悩みを伝え合い、相互理解を深める

トレーナーとトレーニーが一緒に参加する合同研修を通じて、お互いの立場や感情を知ることができます。

たとえば、アーティエンスが実施している新入社員・OJTトレーナー合同研では、OJTトレーナーが「トレーニーはそんなことを気にしていたのか」と新たな気づきを得る場面が多く見られます。
一方でトレーニーは、「自分のためにここまで頑張ってくれていたんだ」と気づいたり、細かい成長を見守ってもらっていたことに感謝を抱くことがよくあります。
こうした相互の理解と感謝が生まれることで、関係性が見直され、双方の成長がより促進されていきます。

【参考コラム】
新入社員の教育担当に必要な4つの教育スキルと、悩み解決Q&A

トレーニーの背景を理解しようとする

トレーニーである、若手社員や新入社員の背景を理解しようとすることも必要です。トレーナーとトレーニーで持っている価値観が異なる場合があるためです。価値観が異なっている場合は、お互いの意見を理解することが難しくなります。

価値観が異なることを認識できていないと、お互いの意見に対して「なぜそんなことするの?」という怒りや呆れの感情が湧いてきて、不快感を感じることになります。このときに「普通はこうでしょ」「社会人として〇〇できないのはありえない」など自分の価値観で相手に伝えてしまっては、お互い納得できません。

一方、価値観が異なることを認識しておくと、「あなたはそんな考え方を持つんだね、なるほど」と理解はできないかも知れませんが受け入れることはできます。この状態になって初めて、解決策を考えられるようになります。

お互いの価値観は全く異なっているという前提を持って接し、価値観が異なることに出会ったとき、その言動に至った背景を考えたり確認して歩み寄ることが大切です


OJTとOFF-JTは、それぞれの強みを活かして連動させることで、育成の質が飛躍的に高まります。
だからこそ、OJTの質を高めたいと考えるときには、OJTの中だけを見直すのではなく、OFF-JTとどう連動させるかという視点を持つことが重要です。

5)まとめ |アーティエンスはOJTとOFF-JTどちらの観点からもサポート

OJTとOFF-JTの大きな違いは、職場で行うか職場を離れて行うかという「実施場所と方法」です。
どちらも社員の成長と自律を促すための育成手法ですが、目的や効果的な活用場面、注意点が異なります。

OJTは実務の中で1対1で指導するスタイルで、個別の成長支援に向いています。
一方、OFF-JTは研修やセミナーなどを通じて1対多数で教育を行う方法で、知識の土台や専門スキルを一括で学ぶのに適しています。

OJT OFF-JT
目的 トレーニーの成長と自律を促すこと
実施状況 実務中(職場内) 実務外(職場外・研修会場など)
指導方法 1対1(トレーナーとトレーニー)  1対多数(講師と受講生)
効果的な活用場面 ・育成のコストを抑えたいとき
・実務を通じて具体的なスキルを教えたいとき
・個々の状況に応じた育成が必要なとき
・縦のつながりを強化したいとき
・知識の土台を築きたいとき
・専門性の高い内容を教えたいとき
・複数人に一貫した教育を行いたいとき
難しいこと ・統一した教育
・論理的・体系的な指導
・育成時間の確保
・トレーナー、トレーニーの関係性の構築
・実践との接続
・個別対応
・育成コスト

それぞれの強みや課題を理解しないまま運用してしまうと、「教えているつもりなのに成長しない」「現場で活かされない」といった“育成の空回り”に陥る恐れもあります。

だからこそ重要なのは、「OJTとOFF-JTの違いを活かして、つなげる設計」です。

OFF-JTで基礎や考え方を学び、OJTで実践を通じて定着させる。この連動があることで、学びは現場に根づき、成果につながっていきます。

アーティエンスでは、OJTトレーナー向けの研修をはじめ、さまざまな階層や目的に合わせた研修を用意しています

育成効果を高めたい、自社に合った連動の仕組みを整えたい──そんなときは、ぜひアーティエンスにご相談ください
貴社の課題や現場の状況にあわせて、OJT・OFF-JT双方を効果的に設計・支援いたします。

OJTとOFF-JTの違いを理解して育成の質を高め、社員の成長を促し、組織の成長につなげていきましょう。

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