精神的成長|今の新入社員にあった新入社員教育の最適な方法とは

更新日:

作成日:2023.2.14

やる気のある男女社員

「新入社員教育、どのように行えばいいのだろう?学生時代をコロナ禍で過ごした新入社員にあわせた方法はあるのか?」

このような課題意識を持って、本コラムにたどり着いたのではないでしょうか。

新入社員の教育は、大前提として新入社員に2つの成長を促すことが大切です。2つの成長とは「技術的成長」と「精神的成長」です。
「技術的成長」と「精神的成長」
技術的成長:スキルや技術が身に付くこと
精神的成長:物事への意識・捉え方が変わる、意欲や意識の向上などの内面的な変化

技術的成長と比較すると、精神的成長は実感しにくいと言われています。ただし、精神的成長が得られると、仕事に対するモチベーションが向上し自身のキャリアをより主体的に捉えられるようになります。そして、さらに技術的成長も促進されます。そのため、新入社員の教育においては、技術的成長も精神的成長の両方高めていくアプローチが必要です。

本コラムでは、

新入社員教育の内容
・新入社員教育の方法
・新入社員教育のスケジュール
・新入社員教育の際に注意する「最近の新入社員の特徴」

をお伝えします。

本コラムを最後までお読みいただくと、新入社員教育に必要な基礎知識と、最近の新入社員の教育の際に気を付けるべき点と対応方法を知ることができます。
これらの内容をもとに、ぜひ御社にマッチした新入社員教育を行っていただければと思います。

監修者プロフィール

山下 絢加

2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。

1. 新入社員の教育内容と方法、スケジュール

新入社員の教育を考えるためには、技術的成長・成長的成長機会を、どのような内容・方法で渡すかを決め、スケジュールに落としていく必要があります。順番にお伝えします。

1-1. 新入社員の教育に必要な内容を選定する

技術的成長と精神的成長を高めることのできる内容を選定します。
新入社員教育において、よく必要とされる内容は下記です。

【技術的成長よりの内容】

技術的成長全体に関わるスキル
・省察

業務遂行
・一般的なビジネススキル
・ロジカルシンキング
・プレゼンテーション
・問題解決力
・ビジネスマナー
・コスト意識(会計知識)
・コンプライアンス

関係性の構築
・コミュニケーション
・チームビルディング

専門知識・スキル

【精神的成長よりの内容】

精神的成長全体に関わるスキル
・内省

社会人としてのマインドセット
・社会人としての意識醸成

キャリア開発・「目指したい姿」の探求
・振り返りやフォロー

メンタルヘルス

これらの内容を参考にして、新入社員教育において技術的成長と精神的成長を促していくといいでしょう。

次に、新入社員教育の方法をお伝えしていきます。

1-2. 新入社員教育の内容にあった方法を選択する

新入社員を教育する方法は主に次の3つです。

・OFF-JT(Off the Job Training)
・OJT(On the Job Training)
・SD(Self Development)

それぞれ説明します。

OFF-JT(Off the Job Training)

Off-JTとは、OJTに対して、職場を離れて、講習や研修などを行う人材教育のことを指します。Off-JTの投資対効果を高めていくためには、研修の現場で学んだことが、仕事の現場で一般化されて役立てられるような工夫を行うことが非常に重要です。

【参考コラム】
【実例あり】新入社員研修に必要な6つの内容と効果を高める5つのポイント

OJT(On the Job Training)

OJTとは、組織の上司や先輩が、部下や後輩に対して具体的な仕事を与え、その仕事を通して、業務に必要な知識・技術・考え方などを指導し、修得させることを指します。

【参考コラム】
【OJT研修】効果を高めるための目的・内容・進め方

SD(Self Development)

SDとは「自己啓発」、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTと大きく異なるのは、原則として企業に強制力がない点です。企業は、「自己啓発支援制度」などとして社員に学ぶ機会を提供できますが、学習内容の選択や頻度の設定は社員の意思に委ねる形になります。

SD

これら3つの方法のうち、新入社員の教育内容に合わせてどの方法が適切かを選択し、新入社員の技術的成長・精神的成長を促します。基本的には、OFF-JTやSDでスキルをインプットし、日々の業務の中で実践(アウトプット)していく際にOJTで指導をする流れになります。

自組織の新入社員の成長を促すために、何のスキルを、どのような方法で渡すかを決めていき、新入社員の技術的成長と精神的成長を高められる新入社員教育を考えていきましょう。

また「新入社員研修の担当者向け|研修設計の基本や効果を高めるポイントを解説」の記事では、新入社員研修の担当者になった方向けに、研修内容を決めるためのポイントを解説しています。
同時に、どのようなポイントを意識すれば研修効果を高められるかを解説していますので、ぜひ参考にしてください。

1-3. 新入社員教育のスケジュールに決める

次に、新入社員教育のスケジュールを決めます。スキルは一度にたくさん渡しても、新入社員のインプットが追いつかず、効果が薄くなってしまいます。よい新入社員教育とは、言えません。

新入社員が不安や課題感を感じているタイミングでスキルを渡すことで、学びの理解が深くなります。そのため、自組織の新入社員は、いつどのような悩みや不安を抱えているのかを理解して新入社員教育のスケジュールを決めていくことが大切です。
新入社員が、いつどのような悩みや課題を感じているのかについて知る時に、参考にしていただきたいのが次の資料です。

これは、当社の調査に基づいて作成した、新入社員がいつどのような課題を感じるのかをまとめた資料です。組織によって配属時期が異なるため、多少のズレはありますが、基本的にはこのようなタイミングで課題や不安を感じていることが分かりました。

不安や悩みが起きるタイミングに学ぶ機会を合わせられると、新入社員が主体的に学ぼうとする姿勢を強められるため、その分技術的成長・精神的成長も促しやすいです。ぜひ、タイミングを意識して、新入社員教育のスケジュールを立てられるようにしましょう。

【参考】アーティエンスの新入社員研修の公開講座スケジュールに関して

アーティエンスの新入社員研修の公開講座スケジュールは、上記の課題感にあわせた研修プログラムを予定しています。一年間受講される企業さまもいれば、上記の課題意識の強い内容の月一日のみ研修を受講される場合もあります。

このように、課題にあわせて、外部研修なども利用されるとよいでしょう。

2. 最近の新入社員の特徴と、意識すべき教育方法

新入社員の教育を行う際に、最近の新入社員の特徴を意識すると、成長を更に促すことができます。当社でインタビュー調査や専門家の見解をまとめたところ、2023年度の新入社員には3つの特徴があると考えられます。

・BeとDoの乖離
・社会人としてのスタンスの違いが大きい
・コミュニケーション方法の違いによる関係性作りの難しさ

この3つの特徴を踏まえて、教育していくことが必要です。
それぞれ説明していきます。

2-1. BeとDoの乖離

多様な“理想のあり方=Be”と“実際の業務=Do”との乖離が発生する傾向が最近の新入社員には見られます。多様な価値観の重要性を尊重する教育が行われますが、義務と権利の”義務”への意識が弱いため、自身の理想(権利)に執着することが見られます。

そのため理想と現実を紐付けるための教育機会が必要になります。

例えば、新入社員の「ありたい」という内側からの変容を促して、実際の業務に必要なスキルの指導を取り入れるという方法があります。他にも、ありたい姿を実現するために今何をすればいいのかを考える中で、今行っている実務が大切だと気づくようになると言うような意識の変化を促せると良いです。

2-2. 社会人としてのスタンスの違いが大きい

学生生活において活動的だった人と消極的だった人の傾向が、コロナ禍によりはっきりと二分化しています。そのため、学生生活において活動的だった人は「学生から社会人への切り替え」に関して比較的スムーズに移行できていますが、学生生活において消極的だった人は、「学生から社会人への切り替え」に関して比較的スムーズに移行できないケースが見られます。

この時の対応方法として、社会人として大切なことを理解する機会を作ることが重要です。
例えば、当社の社会人の自覚研修では次のような問いを投げて、新入社員同士で考え、言語化してシェアしてもらうことで、社会人としてのスタンスを持てるように働きかけています。

※ 当社 社会人の自覚研修テキストより一部抜粋

社会人としてのスタンスは、一方的に説明を伝えても、受け手の新入社員にとっては納得しきれない部分もあるため、新入社員自身で考えてもらうことがポイントです。

2-3. コミュニケーション方法の違いによる関係性作りの難しさ

世代ごとに期待する反応や意思疎通が叶わず、お互いにストレスや認知のギャップが発生しています。これは、コロナ禍によりコミュニケーション方法に変化が出たためです。新入社員は、オンライン授業などが主流であり、またコロナ禍によりサークルなどに参加できず、全般的に人間関係を構築する経験が少なかったため、既存社員が当たり前だと思っているコミュニケーションが通じないケースが出てきています。

この状況に対応するには、人事やOJTトレーナーなど受け入れ側の支援も行い、新入社員との関係性を構築するためのスキルを渡していくことが必要です。特に、新入社員の育成に影響を与えるOJTトレーナーへのスキルの提供は新入社員の育成と密に影響するため、検討すると良いでしょう。

またオンボーディングの支援も大切になります。Feldman, D. C. (1977)の調査によると、新入社員が職場の仲間に受け入れられたと感じる(受容感)には、平均2.7カ月かかるという研究結果があります。そのため、入社後3か月間は研修を通して丁寧に育成し、受け入れの土台をつくっていくことを推奨します。

OJT研修について詳しく知りたい方は、下記のコラムもご覧ください。

OJT研修の内容によって「人が育つ組織をつくる」ための3つのポイント

オンボーディングについて詳しく知りたい方は、下記のコラムで詳しく説明しています。
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント

これらの特徴を踏まえた教育を行い、新入社員の成長を促せるようにしましょう。

3)最近の新入社員にあわせた新入社員教育の事例

当社で、研修やそのほか新入社員の育成フォローをお手伝いさせていただいている事例をご紹介します。

【企業情報】
・業種:IT業界(システム開発、改修、保守)
・規模:約400名

4月 5月 6月 7月 8-9月 10月 11-3月
技術的成長 研修 ビジネススキル研修
上司との協働体感研修
専門スキル研修
OJT 実務を通しながら、新入社員の技術的成長を支援
精神的成長 研修 社会人の自覚研修 成長力強化研修 1年目フォローアップ研修
OJT 1on1を通して、新入社員の精神的成長を支援
パルスサーベイGrowthによって新入社員の状態を把握

例年、新入社員研修を実施させて頂いているお客様のため、昨年度の振り返りから出てきた課題意識をお客様と話し合い、改善する方法で新入社員の教育の方向性を決めていきました。

特に、同期との繋がりが弱く自分たちからコミュニケーションを活発にとらないという課題があったため、その課題に適した成長力強化研修を7月に実施しました。その結果、同期との対話によって不安の解消や気づき、発見に繋がったという感想をいただきました。

こちらのお客様は、専門的なスキルを扱う職種のため、技術的成長はOJTで行い、フォローが弱くなる精神的成長について定期的に研修を取り入れて成長を促すような設計になっています。

また、パルスサーベイGrowthという、月に一度、新入社員が自身の仕事を振り返るツールを活用していただいていました。Growthでは、毎月同じ10の設問に回答していただき、数値の変化やフリーコメントの内容をみて、新入社員の変化に気づき、フォローできるようになっています。

テレワークも増えたことで、新入社員の変化に気がつくことが難しいため、このようなツールを活用していただき、都度フォローしたことで、精神的成長を妨げている要因を解消していくことができました。このように、技術的成長と精神的成長のバランスを取った教育を行うことで、新入社員は成長していくことができます。

4)まとめ

本コラムでは、「技術的成長と精神的成長」を促すための新入社員教育に関して、お伝えしました。

具体的には、下記内容をお伝えしました。

・新入社員教育の内容
・新入社員教育の方法
・新入社員教育のスケジュール
・新入社員教育の際に注意する「最近の新入社員の特徴」

新入社員教育に必要な基礎知識や最近の新入社員の注意点と対応を知ることができたのではないでしょうか。ぜひこのコラムで学んだことから、新入社員教育を行っていただければと思います。

新入社員教育で、お悩みがある場合は、お気軽にお問い合わせください。