【成功事例あり】ベンチャー企業の経営会議を変える!

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「ベンチャー企業において大切な経営会議を良くしていかないといけないのに、どこをどう改善したらいいのかわからない」

ベンチャー企業の方とお話していると、

・経営会議で対立が起きて意思決定が延期になる
・会議を早く終わらせることばかりに意識が向いて結果的に質の低いアウトプットになる
・社長の正解を探す会議になっている

というようなお悩みをよく伺います。

実際、株式会社客家が2022年にベンチャー企業を対象に実施した、「会議の質」に関する実態調査によると、会議の質の低下によって、生産性の低下などネガティブな影響が起きていることがわかります。

※引用:約5割の企業がコロナ禍における「会議の質の低下」が「生産性の低下」を招くと実感。コミュニケーション不足などが要因か|人事のプロを支援するHRプロ

ベンチャー企業において、生産性の低下は企業の存続にも関わる大きな問題のため、できるだけ早く会議の質を高める必要があります

そこで本コラムでは、ベンチャー経営会議を効果的に進める具体的な方法や、よくある課題と解決策、成功事例までをお伝えします。

経営会議の質が高まることで経営会議での意思決定が早くなり、事業と組織の成長が加速化していくことを実感できるようになります。

執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1)ベンチャー企業における効果的な経営会議の進め方

ベンチャー企業における効果的な経営会議の進め方について、会議の準備、会議中、会議後のフェーズごとに説明します。

会議までの準備 経営会議の目的・目標・アジェンダを設定し共有する
経営会議において必要な資料を共有し事前に確認してもらう
役割と責任範囲を明確化する
会議中 経営会議の目的・目標・アジェンダを口頭で確認する
会議のルールを確認する
チェックインをする
ファシリテーターがアジェンダに則って進行する
議事録係は速記する
会議後 チェックアウトをする
議事録を共有する
進行を確認する
コミット力を維持する

会議までの準備

ベンチャー企業は、リソースが限られている場合が多いです。経営会議は人も時間も使うもののため、できる限り効率的に進められるように丁寧な準備が必要です。具体的にすべきことを3つお伝えします。

・経営会議の目的・目標・アジェンダを設定し共有する
・経営会議を行う上で知っておいてほしい資料を共有し事前に確認してもらう
・役割を明確にしておく(ファシリテーター、議事録、参加者に期待すること)

経営会議の目的・目標・アジェンダを設定し共有する

経営会議の効率を高めるためには、会議の目的・目標・アジェンダを定めて、事前に共有することが必要です。「なぜ会議を行なうのか」「この会議で何を達成すればいいのか」という会議を行なう意味が明確になると、参加者が皆同じゴールに向かって進められるためです。また、そのための具体的な流れが明確になっていると、目的・目標からブレることなく会議を進められます

一つの例として、アーティエンスがあるお客様の経営会議でファシリテーションを行った際に設定した目的・目標・アジェンダをご紹介します。

目的
新規事業開発を通して、〇〇グループがよりチャレンジする風土を創る

目標
・新規事業開発を通して、成し遂げたいこと(共有ビジョン)のすり合わせ
・○○PJにおけるマーケティング戦略の仮案策定
・各部署の役割分担の決定
・スケジュールの仮決定

アジェンダ
・チェックイン
・前回の振り返り
・各チームからの情報共有とSTPの決定
・Phase1のゴール設定(仮)
・各部門の役割分担
・スケジュールの仮決定
・チェックアウト

このような明確な目的・目標・アジェンダを設定し、事前に参加者に共有しておくことで、参加者は準備を行えます。

特にベンチャー企業では効率やスピード感が大切なため、経営会議の目的・目標を達成できる最短ルートを作れるようにしておきましょう

もしかしたら事前準備に時間をかけることが勿体無いと感じるかもしれませんが、適切な準備なしに質の良い会議は行えません。目的・目標・アジェンダのない会議は、その場で出た発言に流されやすく、本来の目的・目標が見えなくなってしまうこともよくあります。

そのようなブレがなく、会議に必要な情報を収集したり、心の準備が整った状態で経営会議に参加できる状態を作れると、質の高い意思決定を行いやすいです。

経営会議において必要な資料を共有し事前に確認してもらう

経営会議の目的・目標を達成するために必要な資料についても事前に共有し、確認してもらうことが必要です。情報が不足していると経営会議で適切な判断を行えません。また、前提となる情報の説明を会議中に行うとそこに時間がかかってしまい、議論する時間が少なくなってしまいます。

特にベンチャー企業の経営会議では、選択する意思決定によって経営状況に大きな影響があるため、参加者が皆納得できる結論を導き出すために多くの時間がかかりやすいです。議論をする時間を多く取れるようにするためにも、会議に必要な情報は事前に共有しておきましょう

あらかじめ共有しておいた方が良い情報としては、例えば次のようなものがあります。

・データによる分析結果
・専門家・有識者の意見
・ステークホルダーの考え

このような、前提となる情報や、読み込みが必要な情報は、会議の前に頭に入れておいてもらうことで、経営会議の参加者の余計な時間を奪うことなく、スムーズな意思決定が行われます。

【参考】経営会議の始めに30分準備時間を取る
経営会議に前に30分ほど、資料の読み込みの時間を取ってもいいでしょう。この時間を取ることで、必要な情報のインプットや思考の整理が可能です。

ただし、この時の注意点としては、パソコンを閉じたり、スマートフォンの操作を禁止にすることです。この30分の時間を、自身の仕事をしてしまうことも予想されるためです。そのため情報のインプットは、印刷物などで行うといいでしょう。

インプットに30分かからないということもあるかもしれませんが、考える時間に費やすことで、反応的な発言が少なくなります。

役割と責任範囲を明確化する

経営会議での役割と責任範囲を明確にしておくことも重要です。各参加者が自分の役割と責任を果たそうという意識が強まるためです。

ここでいう役割は2種類あります。
1つ目は、ファシリテーターや議事録など、会議の進行に関する役割のことです。これらの役割を担う際には、そのための準備が必要なため、事前に定めて伝えておく必要があります。

【参考コラム】
具体例あり|会議の議事録に必要な【2つの条件】と記載時のポイント
ファシリテーターとは?何をする人?重要性やメリット・必要なスキルを詳しく解説

2つ目は、会議においてどの立場からの意見を出してほしいか、という意味での役割です。例えば、営業の管掌役員と、マーケティングの管掌役員では、担当の境界線があいまいになることが多いですが、経営会議においてそれぞれの担当部分を明確にしておくことで、情報収集の抜け漏れや、責任の所在がわかりやすくなります。

このように、経営陣が各自の役割と責任範囲を理解できていると、積極的に貢献しやすくなり、組織全体のコミットメントと責任感が増します。結果として質の高い経営会議となります。

【参考】経営会議におけるファシリテーターの重要性

経営会議にファシリテーターを置くと、参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場が創られるため、会議のスピードと質が高まります。
ファシリテーターの役割を担う人は、その時に扱う経営会議の内容に応じて社内の人か社外の人かを使い分けられると良いでしょう。

社内ファシリテーターと社外ファシリテーターの特徴は次の通りです。

  メリット
デメリット
社内ファシリテーター
・組織の文化や背景、現状の課題をよく理解している

・信頼関係が築かれていると良い場が創りやすい

・外部のファシリテーターを雇う費用が不要になる

・客観的な進行が難しい場合がある(なあなあになったり、力関係の意思決定が起きる)

・新しい視点や革新的なアイデアが出にくくなる

社外ファシリテーター
・ファシリテーションの専門知識と技術を持っているため、特定の技法やツールを駆使して効率的に会議を進行できる

・組織内の人間関係や利害関係に左右されず、客観的に議論を進行しやすい

・多様な経験や知識を持ち込むことで、新しい視点やアイデアを引き出せる

・組織の文化や背景の理解が必要な場合はヒアリングの時間がかかる

・初対面の外部ファシリテーターに対して抵抗感を持つ場合がある

・費用がかかる

このような特徴があるため、次のように使い分けられると良いでしょう。

社内ファシリテーターは、状況報告や進捗確認など定例の経営会議の場が効果的に影響しやすいです。

社外ファシリテーターは、組織変革の時期や戦略会議など重要な意思決定や新しい視点が求められる場面で活用するのが効果的です。また、コンフリクトマネジメントや変革期における会議など、客観的で中立な進行が求められる場合にも適しています

会議中

ベンチャー企業では、議論すべきことがさまざまな場合が多いです。そのため、効率的に進めることに重きを置きがちですが、参加者同士の関係性が整っていないと、率直な意見が出ず、質の良い結論を導き出せません。そのため、会議の前後に関係性を深める時間を設けることがポイントです。その点を踏まえた具体的な流れは、次の通りです。

経営会議の目的・目標・アジェンダを口頭で確認する
   ↓
会議のルールを確認する
   ↓
チェックインをする
   ↓
アジェンダに則って進行する
   ↓
チェックアウトをする

それぞれ説明していきます。

経営会議の目的・目標・アジェンダを口頭で確認する

まずは経営会議の目的・目標・アジェンダを口頭で確認します。事前に連絡はしていますが、ベンチャー企業の皆さんは多くの仕事を並行して行なっているため、リマインドも兼ねて口頭で伝えることで、今回の会議の目的・目標を改めて意識しやすくなります

伝え方としては、下記の内容をそのまま読み上げるだけで大丈夫です。変更点や、追加したいアジェンダがあるかもしれないので、始めに確認を取ってもいいでしょう。

目的
新規事業開発を通して、〇〇グループがよりチャレンジする風土を創る

目標
・新規事業開発を通して、成し遂げたいこと(共有ビジョン)のすり合わせ
・○○PJにおけるマーケティング戦略の仮案策定
・各部署の役割分担の決定
・スケジュールの仮決定

アジェンダ
・チェックイン
・前回の振り返り
・各チームからの情報共有とSTPの決定
・Phase1のゴール設定(仮)
・各部門の役割分担
・スケジュールの仮決定
・チェックアウト

会議のルールを確認する

経営会議でのルールを設けておくと、会議がスムーズになったり軌道修正がしやすくなります。

ベンチャー企業での経営会議では、重要な意思決定について話す機会が多いと思いますので、力強く物事を前に進めていく会議の際に活用できるルールの例を紹介します。

 本日のルール※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより抜粋

このようなルールを会議に取り入れることで、お互いの状況に配慮しながらも、時には衝突を乗り越えて、コミット高く物事を前に進められるようになります

【参考コラム】プロファシリテーターが伝授!失敗しないグランドルールの作り方と扱い方

チェックインをする

チェックインとは会議におけるアイスブレイクの一つです。会議に入る前に一人一言話します。お互いの背景が分かり、相手への理解が深まるため、関係の質が上がる効果があります。

例えば、「体調が優れない」という発言をした方がいたら、他の参加者はフォローしようという考えが生まれるかもしれません。この時にチェックインを行わない場合は、「体調が悪い人」という認知ではなく、「(体調がすぐれないにもかかわらず)機嫌の悪い人」という認知になり、行動もフォローではなく、そっけないものになるかもしれません。

ベンチャー企業では、この時間を無駄に感じて省いてしまっている場合もありますが、参加者同士の関係性が築けていると、率直な意見が伝えやすくなります。その結果、その後のアウトプットの質がよりよくなっていきやすいです。効率化を重視しているベンチャー企業にとっては疑いたくなるかもしれませんが、ぜひ試してみてください。

チェックインの具体的な進め方については「『例文』付きで今すぐできる!会議での効果的なチェックイン・チェックアウトの進め方」をご覧ください。

ファシリテーターがアジェンダに則って進行する

チェックインが終わったら、その後はアジェンダに則って会議を進行していきます。ファシリテーターは良いアウトプットと、参加者のコミットを促し、場の質を高めることを意識します

良いアウトプットと、参加者のコミットを促す方法は、「無駄を排除し効率的な会議を実現|今すぐできる!無駄な会議が変わる施策11選」のコラムをご覧ください。

なお、アジェンダ通りに進まない場合もしばしばあります。その際はファシリテーターが勝手に判断するのではなく、下記を参考に参加者に対して問いを投げて、参加者の思いを汲み取ることを意識しましょう。

●意見が出ない場合
意見が出ない場合は、現状を確認することから始めます。例えば「しばらく沈黙が続いていますが、今後の進め方を一緒に考えてたいので今の皆さんの状況を教えていただけますか。」などです。その反応を見て、今後の進め方を決めていきます。

なお、意見が出ない場合に使える方法を3つ紹介します。

1、考えるポイントを明確にする
考えるポイントがわからずに意見を考えられない状態の可能性がある場合に効果的です。
例:「〇〇についてクライアントの視点からどう見えるかを考えてみましょう」

2、付箋を使う
発言することに緊張感や怖さを感じている場合に効果的です。付箋を使って意見を出してもらう際は、内省の時間を少し設けて、参加者が言語化する時間を作りましょう。

3、バトンを回す
誰も口を開こうとしない場合は、ファシリテーターからバトンを回していく方法もあります。ペンをバトン代わりにして、バトンが回ってきた人が発言するようにします。注意点としては「指名」という言葉を使わないことです。指名という言葉を伝えると、受け身になってしまいます。そのため「次に意見を聞きたい人にバトンを回してもらえますか」と伝えましょう。

●議論が脱線する場合
脱線すること自体が悪いわけではありません。ただ、会議の目的とズレてしまうと目的を達成できなくなってしまうため、議論すべきテーマを確認しましょう。例えば、次のように尋ねてみるなどです。
「〇〇についての議論から少し脱線しているように感じますが、◇◇という会議の目標を達成するために、このまま△△について扱ってもいいですし、〇〇の話に戻してもいいですし、どのように進めていきたいですか」

●意見が対立した場合
対立構造を視覚化し、現状を整理していくことで、場が動きやすくなります。お互いの想いを汲み取り、統合できるポイントを探していきます。
可視化の方法は「ファシリテーションを支える6つのフレームワークを知ろう│注意点にも言及」のコラムをご覧ください。

●時間をオーバーしている場合
時間をオーバーしていることを伝えて、どのように進めるかを確認しましょう。例えば、「予定の時間をオーバーしていますが、このまま〇〇について扱い、△△については次の会議で扱うようにしますか?」ということを伝えるなどです。

●時間があまりそうな場合
時間が余ることを伝えて、深めたいことや他に議論したいことがないか確認しましょう。例えば、「○分時間が余っていますが、伝え忘れたことや、他に議論したいことはありますか。(しばらく待つ)ないようでしたら少し早めですが会議を終わりにしますか。」と伝えるなどです。

議事録係は速記する

経営会議の議事録係となった人は、会議中に議事録を完成させるつもりで速記します。ベンチャー企業は仕事量が多いため、議事録を後回しにしていくと、議事録をすぐに共有できずに、会議で決まったことが実行されないということもおきかねません。

速記での議事録でもわかりやすい議事録を作成するためには、事前の準備や書き方のコツを理解しておく必要があります。

準備としては、会議前に会議中に議事録を取りやすいフォーマットを作成しておきます。そして会議中はそのフォーマットを用いてロジカルシンキングを使いながら速記します。

<会議の議事録の書き方に関するポイント>

速記するためのポイント
・略語を自分の中で決めておく
・インデントを活用する
・記号を用いて簡略化する(矢印、○×など)

ロジカルシンキングを用いる際のポイント
・結論を明確にする
・内容のレベル感を合わせる
・抜け漏れが無いようにする

理解しやすい議事録にするためのポイント
・主語と述語を丁寧に捉える
・事実と意見を分ける
・数字を正確に捉える
・担当者を明確にする

見やすく書くためのポイント
・適度な余白がある
・重要な箇所に下線をつけたり太文字にする

議事録を読む際に「会議で決まったこと/TO DOが明確に記載されている」ことと「会議の要点が正しく・わかりやすくまとまっている」ことを意識して記載しましょう。

おすすめのフォーマット例や具体的な書き方については「具体例あり|会議の議事録に必要な【2つの条件】と記載時のポイント」のコラムをご覧ください。

チェックアウトをする

経営会議の最後はチェックアウトして終えます。チェックアウトとは、会議の終わりに今感じていることや今後について参加者全員が発言をする時間です。会議が締まるだけでなく、改めて、今日決まったこと、課題の理解が深まるなどの効果があります

例えば「会議を通して〇〇の大切さに気がついたので、この点を意識して新規プロジェクトを進めていこうと感じました」というような内容が出てくるとします。このような内容は、本人の意思決定されたことへの主体性が強めたり、この内容を聞いた他のメンバーの会議の理解を深めることにつながります。

他にも会議では伝えられなかったことを伝える方もいます。例えば「会議で〇〇さんが発言されていた△△についてとても共感したので、営業のメンバーに伝えようと思います」などです。このような内容と伝えることで関係性が育まれます。

このような率直な思いも含めてチェックアウトで出てくる内容を全て受け止めて、会議を締められるようにします。

会議後

経営会議では、さまざまなことが判断されていきます。会議で決まったことをそのままにせず、行動に移していくことが重要です。そのために必要なことは、次の3つです。

・議事録を共有する
・進行を確認する
・コミット力を維持する

議事録を共有する

経営会議が終わったらできるだけ早い段階で議事録を共有します。会議の参加者がすぐに議事録を把握できると参加者がTO DOを進めやすくなります。

また、議事録は速記で記載しているため、誤字脱字や日本語の「てにをは」などのミスが出ますが、早い段階で共有された議事録については許されることが多いです。

進行を確認する

決定事項やTO DOの進行を都度確認します。仕事量の多いベンチャー企業は、タスク管理ツールなどを用いて、参加者全員が状況を確認できる状況を作ると、コミュニケーションがスムーズになります。

コミット力を維持する

ベンチャー企業では、経営会議ではコミット力高く取り組もうと意気込んでいたものの、他の業務に押されて後回しにされていってしまうなどしてコミット力が弱くなってしまっていくことがよくあります。

そのような状態を回避するために、バトンメール®をすることをおすすめします。

バトンメール®は、アーティエンスが開発した、会議後や研修後のフォローツールです。

4~5名のグループになり、1週間に1回、会議で決めたことについて実践してみた経験や、難しさを感じていることなどを書いて、次の人に回していきます。実施方法はメールではなく、チャットなどでも大丈夫です。

※ 当社資料より一部抜粋

会議後に参加者と一緒にバトンメール®を行うと、会議での意思決定を度々思い出すため、会議の熱量を維持しやすいです。また、会議後の行動変容・認知変容を、会議の参加者同士で促すこともできます。

ベンチャー企業における効果的な経営会議の進め方についてお伝えしました。まずはこの形式で試してみて、徐々に自組織にあうやり方を見つけていっていただけたらと思います。

2)ベンチャー企業での経営会議で起こりうる5つの課題と対応方法

ベンチャー企業での経営会議で起こりうる下記5つの課題の対応方法についてお伝えします。

・社長しか意見を言わない
・創業時から在籍している役員と、後から参画した役員で対立が起きる
・スピードを重視するあまり、意思決定の質が低い
・現場を考慮しない決定によって意思決定されたことがうまく進まない
・経営陣のプレッシャーが強く、不都合な情報を隠す

これらの課題が解決できると、質の良い経営会議になっていきます。

社長しか意見を言わない

ベンチャー企業での経営会議では、社長が創業者であり、強力なリーダーシップを持つ場合が多いです。そのため、社長しか意見を言わないという状況が起きやすいです。

しかしそのような状態では、そのような状態では次のような理由から質の高い経営会議を行えません。

・社長一人の意見だけでは視点が偏ってしまい、全てのリスクやチャンスを十分に考慮できない
・多様な意見が交わされることで、新しいアイデアや革新的な解決策が生まれるため、新たな発想が生まれにくい
・他の経営メンバーが自分の意見を表明する機会がなくなり、チーム全体の士気が下がる
・社長依存になり主体性が育まれない

このような状態にならないようにする方法として次の2つのことが挙げられます。

・会議のルールに「一人の人が話しすぎない」というルールを入れる
・ファシリテーターを入れる

会議のルールに「一人の人が話しすぎない」というルールを入れる

ルールなどがないと「社長、少し話しすぎです」ということを伝えづらい場合が多いでしょう。そのため会議のルールに「一人の人が話しすぎない」というルールを入れて指摘しやすいようにしておきます。すると社長が一人で話しすぎていると感じた時に「社長、話を遮ってしまうようで申し訳ないのですが、一人の人が話しすぎないというルールなので、私の意見も出していいですか」などとルールに則って声をやすくなります。

ファシリテーターを入れる

ファシリテーターがいる場合は、ファシリテーターから声をかけてもらうことで話しすぎを防げます。例えばファシリテーターが「社長からの意見が多いので、他の人の意見も聞かせてもらいますか」などと声をかけることで、他の参加者が話せる環境を作れます。

ただ、これら2つの対策は、短期的な対策に過ぎません。そもそも、社長しか意見を言えない環境になってしまっている原因としては、心理的安全がない状態であるため、長期的な対策として社長と経営陣の関係性を高めることも必要です。
このことについては、下記コラムをご覧ください。

【参考コラム】
管理職に必要な心理的柔軟性とは~心理的安全性を創る第一歩~
社員の【忖度】が生むマイナス効果とは?組織が取り組むべき具体的な対策

創業時から在籍している役員と、後から参画した役員で対立が起きる

ベンチャー企業での経営会議では、創業時から在籍している役員と、後から参画した役員で対立が起きる状況も生まれやすいです。

創業時から在籍している役員は、企業の立ち上げ時からのビジョンやミッション、価値観に深くコミットしていることが多いです。後から参画した役員は、創業時からの歴史なども知りません。役員で参画している以上、コミットは高く組織をよくしようと、新しい価値観ややり方を行おうとします。この時にズレが出て対立が起きます。

この対立自体が悪いことではありません。対立・衝突があり、新しい素晴らしいものが生まれます。ただこの対立が敵対関係になってしまうケースがあります。

例えば、
「(創業時から在籍している役員が)組織のことを何もわかっていないのに、机上の空論を押し付けてきている。うまくいくはずがない」
「(後から参画した役員が)組織をよくしたいと言っているのに、何も変わらない。言っていることと、やっていることが違う」
などです。

関係がこじれ、お互いへの信頼関係もなくなり、協力しなくなります。対立・証取が、敵対関係になっていきます。

このような状況を打破するためにも、経営会議で創業メンバーと外部パートナーで対立が起きた場合は、相互理解を促すことが必要です。それぞれの価値観を知るための問いを丁寧に扱い、それぞれが見えている世界(メンタルモデル)を紐解いていくことで、相互に理解し合えるようにしていきます。

メンタルモデルの理解を行う際の会議のプロセスとしては、次の流れをおすすめします。

ファシリテーター研修より一部抜粋

メンタルモデルの理解は、その人自身の信念や生き方にも通じることがあるため、扱い方には注意が必要です。そのため、ファシリテーターに入ってもらって会議を進めてもらうことをおすすめします。

それぞれが見えている世界(メンタルモデル)を理解し合えると、協力体制が生まれ、ベンチャー企業にとってにとって最適な意思決定を行なっていけます

スピードを重視するあまり、意思決定の質が低い

ベンチャー企業での経営会議では、スピードを重視するあまり、意思決定の質が低いという状況が起きます。

現在のような急速に変化する世界の中で生き残りをかけていると、迅速な意思決定が必要です。質より行動することが大切なこともあります。しかしとても重要な判断もスピードを重視してしまうと、必要な情報収集や分析が不十分になり、結果として質の低い成果しか出せなくなります。質の低い意思決定を実行することで、状況が悪化することもあります。

このような状態にならないようにするためには、外部ファシリテーターを入れたり、意思決定のルールを決めることが必要です。
 
外部ファシリテーターを入れると、質の低い意思決定に対して、本当にその内容で問題ないのか、という確認が入るため、一度立ち止まれます

意思決定のルールとは、会議での意思決定プロセスを明確にし、公平性と透明性を確保するための枠組みです。例えば、投票によって意思決定を行うのか、全会一致を目指すのか、リーダーが最終判断を下すのかといった基本的なルールが決まっていないと、なんとなくで意思決定されてしまいます。

経営会議で用いられるルールとしては、次のような内容が考えられます。

・議論と対話を徹底的に行い、合意形成を行う
正解がないことに対する意思決定や、関係者のコミットメントが重要な意思決定を行う際に有効です。

・最終的には管掌役員が決定する
管掌者の専門分野である事柄について意思決定する際や、意見がまとまらい中で迅速な意思決定をしなければいけないときに有効です。責任の所在もはっきりします。

・多数決で決める
異なる意見が強く合意形成が難しい場合に多数決を用いることで、参加者の意見を反映した意思決定ができます。ただ、場合によっては、賛成しなかった人が納得しきれず、仕事へのコミットメントが低下してしまう可能性があるため、十分なフォローも必要です。

・経営トップが決める
迅速な対応が求められう場合や、組織の経営に関わる重要な意思決定を行う際に有効です。ただ、独裁的な判断になる可能性もあるため、注意が必要です。

経営会議において、どのルールで意思決定するのかを事前に決めておくことで、意思決定の内容を確認する時間が設けられるため、質の低い意思決定になることを防げます

また判断保留を設けることが必要な場合もあります。判断保留というのは意思決定をあえてしないということです。意思決定を寝かせることで、よりよい意思決定が可能になります。この時の注意点として、いつまでには必ず意思決定を行うということは決めておきましょう。

現場を考慮しない決定をしてしまい、意思決定されたことがうまく進まない

ベンチャー企業での経営会議では、現場を考慮しない決定をしてしまい、意思決定されたことがうまく進まないという状況が起きます。

経営陣が現場とのコミュニケーションを十分に取っていないと、現場の課題やニーズを正確に把握できないため、現実と乖離した決定が行われます。その結果、意思決定されたことが現場の状況に合わず、うまく進められないという状況になります。

例えば新規事業の開始タイミング、大きなプロモーションをかけるタイミングなどは、追加の仕事になるケースが多く、現場の仕事量が増えます。そのため、現場の状況を把握できていないと、現場の社員が疲労していき、意思決定したことがスムーズに進まなくなる可能性が高いです。通常の業務も、新しい取り組みも、両方ともうまくいかないというケースがあります。

このような現場と経営陣との乖離を防ぐためには、経営会議の前に事前に現場の声を聞くことが必要です。経営会議で意思決定したいことが明確になったら、適切な意思決定をするために必要な現場の声を洗い出し、ヒアリングするところから始めます。ヒアリングした情報をまとめ、現場の声としての意見が見えてきたら、その情報を経営会議の前に経営会議の参加者に共有し、目を通しておいてもらいましょう。

経営会議までのプロセスを整理すると次のようになります。

経営会議で意思決定したいことを明確にする
  ↓
現場からどのような声をヒアリングすべきかを洗い出す
  ↓
現場にヒアリングする
(具体的な話を聞きたい時はインタビュー形式、多くの意見を欲しい場合はフォームへの入力形式がおすすめです)
  ↓
ヒアリングした情報を整理して、現場の声をまとめる
  ↓
経営会議に参加する人へ、現場の声を事前共有し、会議までに目を通してもらう
  ↓
経営会議

経営会議を行うまでに、上記のプロセスを実行する必要があるため、その日程を加味した上で経営会議の日付を設定するようにしましょう。

ただ、現場に寄り添うことはとても重要ですが、現場の声を拾い過ぎた意思決定にならないように注意は必要です。経営者としては、ビジョン・戦略がパワフルに進むためにはどうしたらいいかという前提を踏まえて意思決定をしていく必要があります。

経営陣のプレッシャーが強く、不都合な情報を隠す

ベンチャー企業において経営陣は企業の成功や失敗に直接責任を持つ立場です。そのため経営会議における経営陣のプレッシャーが強く、不都合な情報を隠す、ということが起きます。

特にベンチャー企業では投資家や株主、従業員などから成長が期待され、それに応じた成果を示さなければなりません。このため、経営陣は成功への期待と同時に、失敗のリスクを避けたいというプレッシャーを感じることがあります。

ただ、そのために不都合な情報を隠していてしまっては、後から取り返しのつかないような大きな問題に発展してしまう可能性もあります。

不都合な情報を隠すということは、不都合な情報を言うことに怖さを感じているということです。そして怖さを感じるのは、ミスを許さない文化や、心理的安全性の無さが影響しています。

ミスを許さない文化をなくして心理的安全性を高めるためには、トップの社長がミスを罰するのではなく、学びの機会として捉え、自らもミスを認める姿勢を示すことが重要です。社長がオープンで率直なコミュニケーションを促進することで他の経営陣もミスを報告しやすくなります。

ベンチャー企業だからこそ、挑戦が必要ですし、挑戦すれば失敗もあります。失敗を許せる文化を創っていく必要があります。

組織の文化を変えるのは時間がかかることですが、ベンチャー企業だと人数が少ない組織が多いため、一人が変わるとどんどんと変化が見られるようになります。できるだけ早い段階で取り組み、事業の発展を行っていきましょう。

ベンチャー企業ではこのような5つの課題が起きやすいですが、それらに対して今回紹介した対応方法を行い、経営会議の質を高めていきましょう。

【関連記事】会議を改善する19の具体策|質の高い会議で生産性向上

3)ベンチャー企業の経営会議の成功事例

2つの経営会議の事例をお伝えします。

事例①経営陣の意思が統一されておらず経営会議の質が低下していた状態からの変容

項目 詳細
規模 200名程度のメーカー
参加者 経営陣(役員のみ)
期間 一年間
目的 ・経営陣の関係の質の向上(適切な衝突)
・認知のずれをなくする
・意思決定の質と、行動を高める
内容 毎月の定例会議で、戦略の実行と振り返りを行う
得られた効果 ・衝突するべきことは、衝突する
・経営陣の言っていることが統一された
・戦略を実行する意識と行動が強化された

当社が経営会議のファシリテーションに入る前には、下記のような問題がありました。

・お互い言いたいことは言わないが、陰で愚痴が多い
・自身の役割には口を出さないでほしい
・現場では、経営者によって言っていることが違うので、混乱が起きている
・戦略も思い付きで変わり、やりっぱなしになっていることもあった

このような状態で経営陣のまとまりがない状態だったため、まずは、経営陣の意思統一をするためのワークショップを行い、その後毎月の経営会議に入ることになりました。

ワークショップでコロナ禍での経営陣の成功体験を振り返り、その上でお互いへのリクエストを確認しました。お互い伝えるべきことを伝えたことで、経営陣の関係性構築を促せたため、その後の経営会議が以前よりはスムーズになります

とはいえ、今までまとまりのない状態だったため、始めはお互い遠慮している場面もありました。ファシリテーターが本当にこのまま現場で戦略を実行できるかなど、経営陣のコミットを確認したことにより、経営陣の本音やチームとして一体感が出てきました

今では問題なく、意見を戦わせるようになり、経営会議で決まったことは、現場でしっかり実行するようになりました。また戦略を振り返り、成功・失敗を明確にし、そこから何を学ぶかを大切にし、言語化していきました。

その結果、止まっていた「新規事業推進」や、「社内システムの導入」が、再度進み始めました。

一年間の契約でいったん先方で進めることが可能になりましたが、必要なときにスポットでご支援しています。

事例②組織崩壊の一歩手前の状態から解決に進むための一歩を進める

項目 詳細
規模 30名程度の商社
参加者 経営陣と、幹部社員
期間 1日間
目的 現場にある課題の洗い出しと、解決への優先順位を決める
内容 ・ビジョン・戦略を再度確認し、全員の認識のずれをなくす
・経営判断として、どの課題から解決するかを考え、解決策まで考察する
得られた効果 ・戦略のアップデート
・短期・中長期の課題解決策の考察

当社が経営会議のファシリテーションに入る前には、下記のような問題がありました。

・途中から参画した役員の発言が強すぎる
・日々多くの課題が多く、目の前の仕事に追われている
・IPOを目指しているが、何も前に進んでいない

当日、午前中の戦略の確認はスムーズに進んでいきましたが、課題の洗い出しでは、場が荒れていきました。
多くの問題は、「途中から参画した役員」がきっかけで起きているということが場に出てきました。そして、社長も見て見ぬをふりをしているという状況もありました。

会社の一年間の業務の振り返りを、ファシリテーターが丁寧に促していきました。

そのことにより、途中から参画した役員のセクハラ・パワハラも明るみに出てきます。
途中から参画した役員は怒り出し、その会議から途中で出ていきました。また社長は、他の幹部社員からのフィードバックに青ざめています。

「組織崩壊の一歩手前ですよ」と、ある幹部社員が泣きながら勇気をもって伝えました。

経営判断として、下記の判断を行いました。

途中から参画した役員は、現場と距離を置くこと
・課題の優先順位も必要だが、その前にセクハラ・パワハラの受けていた社員のフォローをすること
・組織図を変えることで、短期的な課題・中長期的な課題に対応していくこと

中立な立場であるファシリテーターが経営会議に介入して、経営陣が感じていた素直な想いを出してもらうことで、ベンチャー企業として、スピード感ある判断ができ、その後はスムーズに問題は解決されていきました

その後、社長との1on1でのご支援と、社員教育と会議へのファシリテーションで、引き続きご支援を行っています。

4)まとめ|ベンチャー企業の経営会議の質を高めるにはファシリテーターが効果的

ベンチャー企業における効果的な経営会議の進め方について、会議の準備、会議中、会議後のフェーズごとに説明しました。

会議までの準備 経営会議の目的・目標・アジェンダを設定し共有する
経営会議において必要な資料を共有し事前に確認してもらう
役割と責任範囲を明確化する
会議中 経営会議の目的・目標・アジェンダを口頭で確認する
会議のルールを確認する
チェックインをする
ファシリテーターがアジェンダに則って進行する
議事録係は速記する
会議後 チェックアウトをする
議事録を共有する
進行を確認する
コミット力を維持する

まずはこの形式で試してみて、徐々に自組織にあうやり方を見つけていっていただけたらと思います。

ベンチャー企業での経営会議で起こりうる5つの課題への対応策もお伝えしました。

課題 対応方法
社長しか意見を言わない ・会議のルールに「一人の人が話しすぎない」というルールを入れる
・ファシリテーターを入れる
創業時から在籍している役員と、後から参画した役員で対立が起きる 相互理解を促す
スピードを重視するあまり、意思決定の質が低い ・外部ファシリテーターを入れる
・意思決定のルールを決める
現場を考慮しない決定によって意思決定されたことがうまく進まない 経営会議の前に事前に現場の声を聞く
経営陣のプレッシャーが強く、不都合な情報を隠す ミスを罰するのではなく、学びの機会として捉える

ベンチャー企業ではこのような5つの課題が起きやすいですが、それらに対して今回紹介した対応方法を行い、経営会議の質を高めていきましょう。

ベンチャー企業の経営陣の方は、仕事への想いや熱が強く、多くの仕事量があるため、とても強いエネルギーを持っている方が多いですが、そのことによって見えている視野が狭くなってしまっている場合もあります。
狭い視野の中で経営会議を行うと、見落としあったり、冷静に物事が見えなくなってしまうことがあります。

そうならないように適切な意思決定を行えるようにするためにも、経営会議にファシリテーターを入れることをおすすめします。
特に外部ファシリテーターに入ってもらうと、第三者としての目線が加わるため、自分たちだけでは気がつけなかったことへの気づきを得やすいです。

アーティエンスでは、経営会議のファシリテーターのご依頼も受けております。過去にもさまざまな実績がございますので詳細について知りたい方はお気軽にご連絡ください

なお内部にファシリテーターを置きたい場合は、ファシリテーション研修を実施しておりますので、当社オリジナルのワークで実践しながら必要なスキルを身につけていっていただけたらと思います。

経営会議の質を高めて経営会議での意思決定が早くなり、事業と組織の成長が加速化していくことを実感していきましょう。