ロールプレイング研修|企画~実践、効果を最大化させるポイントを徹底解説

更新日:

作成日:2023.9.25

研修 ロープレ ロールプレイング

「研修の中でロールプレイングを取り入れたいけど、ポイントはあるのか?」
「研修でロールプレイングをもっと効果的に行いたい。どうすれば…?」

本コラムは、このようなお悩みをお持ちの方におすすめのコラムです。

ロールプレイングは、「役割(role)」と「演じる(play)」を組み合わせた言葉で、略してロープレとも呼ばれています。ロールプレイングでは、現場に近い場面設定の基、各々が役割を演じながら、実践的にスキルや知識の習得を目指します。

本コラムでは、ロールプレイングの目的や企画~実施までの流れ、その中で気をつけるべきことをお伝えいたします。お読みいただくことで、効果的なロールプレイングの実施方法がわかります。

※ アーティエンスでは、ロールプレイングを取り入れたさまざまな研修を提供しています。
代表的な3コンテンツを掲載します。詳しい内容・資料請求は、各ページをご覧くださいませ。

ビジネススキル研修
ロジカルシンキング研修
育成担当者・OJTトレーナー研修

監修者プロフィール

近藤 ゆみ

アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。
youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

  

1)研修でロールプレイングをする目的

研修でロールプレイングの手法を取り入れる目的は、より実践に近い形式で学び、スキルや知識の習得に繋げていくためです。

スキルや知識を学ぶ際には、講義として講師や登壇者から教えてもらう方法もありますが、講義だけでは、知識やスキルを知っているだけで実際に使うことまでできません。また、講義を受けるだけだと学習定着率が低く、アメリカ国立訓練研究所の研究によると、講義を受けるだけだと学習定着率が5%と言われています。

一方、ロールプレイングとして、現場でよく起きる状況を再現して受講者自身が実施すると、自ら体験することになり、学習定着率が75%まで高まります。
また、ロールプレイングで体験した状況と似たような状況に遭遇したときに、スムーズに対応できます。

他にも、実際に体験してみることで、新たな疑問や気づきが生まれて、より深い学びを得られることも期待できます。
ロールプレイングは役割の異なる人になりきって体験します。そのため、相手の立場になったときにどのように感じるのか、という他者理解にもつながります。そして、お互いにフィードバックをすることで、自分では気が付かなかった視点についても知ることができます。

このように、ロールプレイングは受講者が場面や設定に入り込み、現場に近い状態で学ぶことでより実践的な学びを与えることができます受講者に対してスキルや知識を知っているだけでなく、現場での活かし方を学んでほしいときに効果的な手法です。

2)研修でロールプレイングを行う流れ

研修でロールプレイングを行う際の企画〜実施までの流れを紹介します。ロールプレイングは、リアルな場面や役割を設定し、学ぶ機会を作ることが大切です。そうすることで効果的な学びにつなげることができます。

企画段階

目的の設定

企画段階で大切なことは、ロールプレイングを実施する目的を明確にすることです。その目的を軸として詳細の場面や役割を決めていきます。

場面・役割設定

学んでほしいスキルを現場のどのような場面で活用することが多いか検討します。そして、その場面によくいる人や、会話を書き出し、役割やセリフを決めていきます。
ロールプレイングで学んだことを現場で活かしやすくするためには、できるだけリアルな場面と役割、セリフを用意することが大切です。そのため、関係する部署でのヒアリングをして、リアルな情報を収集して設定しましょう。想像だけで設定すると的外れな内容になってしまいがちなので注意が必要です。
人物の設定も、入社○年目の〇〇部配属の〇〇さん、などできるだけ具体的にすることで、ロールプレイングを行うときにイメージしやすくなり、役になりきりやすくなります。

資料作成

研修本番で使用する資料を作成します。当日、受講者が場面や役割、セリフを理解しやすいように意識することが大切です。例えば、セリフの資料を作成する際は、人の画像と吹き出しをつけると、会話のセリフだということが視覚的にわかりやすくなります。

【参考コラム】【企画書の実例あり】研修企画の創り方:ゴールからスケジュールまで

研修本番

目的の説明

ロールプレイングをすることで何を学んでほしいのかを受講者に伝えましょう。その内容が自分に必要だと思えるほど、主体的な参加が促され、ロールプレイングの効果が高まります。
なお、研修前に事前ワークとして、受講者に、ロールプレイングをすることで何を習得したいか、どのような状態になることを目指したいかを言語化することができると、より目的意識を持って主体的な行動が期待できます。

場面・役割の説明

ロールプレイングの場面と役割の説明をします。受講者が場面と役割を正しく理解できているかで効果に影響するためです。世界観や設定の解説は時間をかけて丁寧に行い、受講者が場面や役割をイメージしやすいように意識しましょう。

実施方法の説明・質問受付

ロールプレイングの実施方法を説明します。誰が何役をするのか、何分で実施するのか、何を意識して実施するのかなどを伝えます。その後、不明点があれば質問を受け付けます。受講者が迷いなくワークに取り組める状態を作ることが必要です。

実践

実践の時間には、受講者の様子を見てまわりましょう。講師が見て回ることで適度な緊張感が生まれ空気が緩みにくくなります。ロールプレイングを知り合いと行うと、恥ずかしさもあってふざけてしまう人がいたり、なれ合いになってしまう場合があるためです。
真剣度が低い場合は、ロールプレイングを行う目的に意味を感じられていなかったり、研修に”参加させられている”という認識を持っている可能性があります。そうならないように、受講者が「確かにロールプレイングをして学んでおいた方がいいな」と思えるような目標を設定して伝えることことを意識しましょう。
なお、受講者の実施の様子を見ていてうまく動けていない部分があれば、その点について補足説明するなどフォローを行うことも必要です。

フィードバック

ロールプレイングを実施した後は、受講者同士でフィードバックをし合います。自分で認識できていない点に気付き、改善していくためです。ただ、他者にフィードバックすることに抵抗感があり、「良かったです」とだけ伝えているケースも少なくありません。

ロールプレイング研修の効果を高めるために、事前に、フィードバックの観点や伝え方のポイントを伝えたり、また、フィードバックシートなどを作成しておくことも一つの方法です。

※フィードバックのより詳しい内容は、次章で解説します。

振り返り

ロールプレイングを振り返り、気づきやモヤモヤを共有します。他の人の気づきやモヤモヤを聞くことで自分はそれに対してどう思うのかを考えることにつながるためです。

受講者にモヤモヤがあると、良いロールプレイングができなかったのではないかと不安になりやすいですが、モヤモヤは学びの度合いを高める効果もあります。人は曖昧性を嫌う性質があり、モヤモヤを何とかクリアにしようと考え続けるためです。そのため、講師からすぐに答えを渡すのではなく、モヤモヤを深めるための【問い】を投げることも効果的です。

このように研修でロールプレイングを実施する際は、企画から実施まで丁寧に行うことが必要です。そうすることで、現場で活かせるスキルを身につけることができます。

3)研修でロールプレイングを成功させるポイント

ロールプレイングの研修を成功させるポイントとして、下記の内容があります。

・ロールプレイングの目的を明確にする
・場面・役割の設定を明確にする
・ロールプレイング実施前に質問の時間を設ける
・オブザーバー役を設ける
・フィードバックの観点・伝え方を伝える

順番に説明します。

ロールプレイングの目的を明確にする

研修でロールプレイングを成功させるためには、ロールプレイングの目的を明確にすることが必要です。目的の明確化により、受講者は研修の意味や必要性を理解し、スキルの向上に集中できるようになるためです。また、講師や登壇者も、明確な目的があることで、目的を軸にした伝え方やフィードバックを行いやすくなります。

例えば、営業研修においてロールプレイングの目的を「効果的な顧客対応力を向上させること」と設定すると、受講者はその目的を達成できるように主体的にロールプレイングに参加を促すことができます。一方、目的が不明確な場合は、受講者だけでなく講師も研修の方向性を見失う可能性があります。

ロールプレイングの目的を明確にし、受講者と講師、登壇者が共有することで、研修の効果を最大化し、目的を達成する研修を実施できます。

場面・役割の設定を明確にする

ロールプレイングの成功には、場面と役割の設定が明確であることが不可欠です。受講者に演じるべき状況と役割を理解してもらい、リアルなシナリオを再現しやすくするためです。リアルな状況をイメージしてロールプレイングをすることで、研修の目的を達成しやすくなり、受講者はスキルや行動の向上を実感しやすくなります。

例えば、カスタマーサポート研修において、場面を「クレーム対応の電話応対」と設定し、役割を「顧客」と「サポート担当者」に明確に割り当てるとします。その場合は、どの商品に対してのクレームなのか、顧客の家族関係や年齢、性格はどのような人か、サポート担当者は入社何年目の人かなど、よくある事例と重なるように細かく状況を設定します。そして、顧客がどのような言葉で話すのか、それに対してうまく対応をしたサポート担当者はどのような言動をしていたのかをリサーチして、シナリオに落とし込んでいきます。

このようにロールプレイングの場面と役割設定を明確にすることで、受講者の研修体験を最適化し、スキルの向上に貢献します

ロールプレイング実施前に質問の時間を設ける

ロールプレイングの成功には、質問の時間を設けることが重要です。質問時間を設けることで、受講者は場面や役割、実施方法についての疑問点や不明点を解消し、迷いなくロールプレイングに取り組むことができるためです。

受講者が迷いなくロールプレイングに取り組めるように事前に準備はしていきますが、受講者にうまく伝わらない部分が出てくる可能性があります。ロールプレイングで学びを得てもらうことが目的のため、ロールプレイングに集中して参加できる状況を作れるようにしましょう。

このようにロールプレイングを実施する前に質問の時間を設けることで、受講者がロールプレイングに集中できる状況をつくり、研修をより有効的なものにすることで参加者のスキル向上に寄与します。

オブザーバー役を設ける

ロールプレイングの成功には、オブザーバー役を設けることもポイントです。オブザーバー役は、ロールプレイングの過程を客観的に評価し、フィードバックを提供できるためです。オブザーバーがいることで、受講者は自身で見えていない言動やスキルに対する視点を得ることができ、より良くしていくことができます。

また、オブザーバーも、他者が行なっているロールプレイングを見ることで、客観的に状況を見ることができ、新たな気づきを得ることができます。

このように、オブザーバー役の存在は、ロールプレイングの研修で新しい気づきを得たり、視野が広がることに貢献し、受講者の成長につなげることができます。

フィードバックの観点・伝え方を伝える

フィードバックの観点と伝え方を受講者に伝えておくこともロールプレイングを成功させるためのポイントです。フィードバックによって自分では気が付かなかかったことへの気づきを得られるためです。
フィードバックと聞くとネガティブなイメージを持つ人も多いですが、適切なフィードバックは成長を促進し、学習の効果を最大化します。

ロールプレイングでのフィードバックの観点や伝えで意識すべきことは以下の通りです。

フィードバックの観点

・自分が役として実施した人の視点で考えたときに、相手の言動をどう感じるか
・実施した言動でクライアントやチーム、組織にポジティブな影響を与えられているか
・ダメなところを見つけるのではなく、より良くできそうなところはないか

これらを研修の目的と合わせて、具体的にすることで、フィードバックをしやすくなります。
例えば、営業研修においてロールプレイングで「効果的な顧客対応力を向上させること」が目的の場合は、「クライアントの立場に立ったときに一緒に仕事をしてみたいと思うか」にするなどです。

フィードバックの伝え方のポイント

・gooodポイント→より良くするためのポイント→gooodポイントの順で伝える
 (改善点をよかったポイントで挟んで伝えることでフィードバックの内容を和らげる)
・改善点について決めつけではなく提案の形もしくは「私はこう思いました」という形で伝える
 (フィードバックの内容を受け取るか否かは本人に委ねる)

ロールプレイングの研修でフィードバックの観点と伝え方を強化することで、参加者のスキル向上につながるため、学びの多い研修となります。

このような5つのポイントを意識して、ロールプレイングを行うことで、目的を達成できる研修を実施できます。

4)アーティエンスのロールプレイング事例

当社は多くの研修でロールプレイングの手法を用いています。今回はその中から2つの研修の事例を紹介します。

事例1:ビジネスマナー研修

ビジネスマナー研修では、マナーを身につけるためにロールプレイングを実施して言動を覚えられるようにしています。ビジネスマナーについて知識は知っている人も実際にやってみると難しさを感じている人が多いです。

例えば、来客・訪問対応に必要な名刺交換や受付の対応、部屋への案内や見送り方などを学ぶためにグループ内で役割を交代しながらロールプレイングを実施します。その際は、受講者がイメージしやすいように動画を見てもらい、その後テキストの内容に沿ってそれぞれの役割を演じるような流れにしています。

ロールプレイングに主体的に参加してもらえるように、なぜビジネスマナーを身につけるべきなのかを研修のはじめに考える時間を設けています。当社ではワールド・カフェという手法で、マナーとは何か?について対話を通して、理解を深めています。そのため、受講者がマナーの大切さや、マナーを身につける意味を自分なりに理解できており、ロールプレイングにより主体的に参加してくれます。

※ワールド・カフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、少人数に分かれたテーブルで自由な対話を行う対話手法の一つです。

他にも、動画で良い例を見てもらう前に、実はよくない例の動画を見てもらい、ビジネスマナーに関する間違いを探してもらう、ということを行なっています。そうすることで、こんなカッコ悪い社会人にはなりたくないという思いが生まれ、マナーを身につけたいという思いが強まるためロールプレイングへの参加意識も強くなります。

このように、ロールプレイングの設定や役割を明確にすることはもちろん、ロールプレイングに主体的に参加してもらう設計を行うことで、ロールプレイングに真剣に取り組み、良い学びにつなげることができます。

事例2:育成担当者・OJTトレーナー研修

育成担当者・OJTトレーナー研修では、ティーチング・フィードバック・コーチングといった基本スキルを学ぶために、リアルな場面を設定して、こんな時どのように対応するかを考え、学んでもらいます。

例えば、フィードバックのロールプレイングを実施する際は、若手社員とOJTトレーナーそれぞれの状況を具体的に記載した資料をお互いが見えないように役割の人に渡して、その状況になりきって実施してもらいます。 

1回目が終わった後に役を交換して相手の状況を知ると、こんなにも相手のことが見えていなかったのかと驚かれる人が多いです。
OJTトレーナーが育成される側の若手社員役になることで、今まで見えていなかったことが見えるようになり、自分の育成に改善が必要なことを知ることで育成への変化が促されます。

ロールプレイングでは自分以外の視点に立つことになるため、今まで意識していなかった相手の視点が見えるようになり、そこから大きな気づきを得る人が多くいます。

ちなみに、育成担当者・OJTトレーナー研修のロールプレイングは、ストーリー内の部下たちの行動や成長度合いが受講者の方のワークの結果によって変わります。育成に対してきちんとしたアウトプットが出来なかった為に、身に沁みる結末になることもあります。

ここまでリアルな場面・役割設定を行うことで、視野が広がり、変化を促すことができます。


アーティエンスでは、ロールプレイングの効果を高める設計をした研修を多く取り扱っています。ロールプレイングの設計方法や、具体的は研修内容について興味のある方はお気軽にお問い合わせください

【参考】ロールプレイングの種類一般的にロールプレイングは4種類あります。研修の目的によって種類を使い分けることでより研修行を高めることができます。

●ケース型ロールプレイング
ケース型ロールプレイングは、特定の場面を想定し、顧客の業種や立場、課題などの細かい条件が設定された状況の中でロールプレイングを行います。実際の業務シチュエーションに似た状況をイメージして、疑似体験をし、スキルを身につけるために使用されます。

●問題解決型ロールプレイング
問題解決型ロールプレイングは、過去に起きた問題をテーマに実施するロールプレイングです。過去に起きた問題に対してさまざまな役割になって協議し、新たな解決策を見出すことで、失敗を防ぎ今後に活かすことができます。

●モデリング型ロールプレイング
モデリング型ロールプレイングでは、受講者のモデルとなってほしい人を真似するロールプレイングです。組織として評価している人がどのような言動をとっているのかを知り、真似することで、より良い仕事の仕方を学ぶことができます。

●グループロールプレイング
グループロールプレイングは、グループごとに分かれ、グループ内で役割を変えながら繰り返し実施します。同じ役割になった時の他の人の言動を見ることで、自分にない考えを取り入れることもできます。また、すべての役割を体験することになるため、視野を広げやすいです。

【参考コラム】新入社員研修でグループワークを活用!効果的なやり方と注意点管理職研修におけるグループワークを成功させる方法|準備から実施まで

5)まとめ〜アーティエンスの研修ではロールプレイングを取り入れ、学びの理解をサポート〜

本記事ではロールプレイングの目的を確認した上で、ロールプレイングの企画から実施までの流れ、その中で気をつけるべきことをお伝えしました。

研修でロールプレイングの手法を取り入れる目的は、すぐに実務に活かせるスキルを身に着けるためです。ロールプレイングは受講者が場面や設定に入り込み、現場に近い状態で学ぶことでより実践的な学びを与えることができます。受講者に対してスキルや知識を知っているだけでなく、現場での活かし方を学んでほしいときに効果的な手法です。

研修でロールプレイングを行う際には、企画から実施まで丁寧に行うことが必要です。そうすることで、現場で活かせるスキルを身につけることができます。

ロールプレイングの研修を成功させるために、下記のポイントを意識しましょう。

・ロールプレイングの目的を明確にする
・場面・役割の設定を明確にする
・ロールプレイング実施前に質問の時間を設ける
・オブザーバー役を設ける
・フィードバックの観点・伝え方を伝える

この5つのポイントを意識して、ロールプレイングを実施することで、目的を達成できる研修を実施できます。

なお、アーティエンスの研修ではロールプレイングを取り入れ、学びの理解をサポートしています。ロールプレイングを実施することで、学んだことを現場ですぐ活かしやすくなります。

是非お気軽にお問い合わせください。4