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【事例あり】ロールプレイを扱う研修で、成果を出す設計と運営のコツ
更新日:
「せっかく研修を実施しても、現場で活かされていない」
「ロールプレイングを取り入れたいが、形だけで終わらないか不安」
――そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
実は、研修効果を現場につなげる上で「知識のインプット」だけでは不十分です。
人は“自分が体験したこと”を通じて初めて学びを行動に移すことができます。そこで有効なのが、実際の業務場面を想定して体感するロールプレイング研修です。
適切に設計されたロールプレイングは、受講者に「わかった」ではなく「できた」という実感を与え、研修後すぐに現場で活かせるスキル定着を促します。
本記事では、ロールプレイングを研修に取り入れる目的を確認し、企画・実施時に意識すべきポイントを解説します。また、アーティエンスがどのようにロールプレイングを研修で取り入れているのかも紹介します。
ロールプレイングを効果的に取り入れ、研修を単なる学びの場ではなく、受講者が現場で実際に行動を変えていくための実践の場にしましょう。
※ アーティエンスでは、ロールプレイングを取り入れたさまざまな研修を提供しています。
代表的な3コンテンツを掲載します。詳しい内容・資料請求は、各ページをご覧くださいませ。
>ビジネススキル研修
>ロジカルシンキング研修
>育成担当者・OJTトレーナー研修
目次
1)研修でロールプレイングをする目的は現場での行動変化
ロールプレイングを研修に取り入れる目的は、現場に近い形式で学び、学んだスキルや知識を実際に使えるようにするためです。
講義形式で知識を学ぶだけでは「知っている」にとどまり、現場で活用できるレベルにまで習得するのは難しいです。
実際、アメリカ国立訓練研究所の調査によると、講義だけの学習定着率は5%に過ぎないとされています。一方、ロールプレイングのように自ら体験を伴う学習では、定着率が75%にまで高まると報告されています。

さらに、ロールプレイングには以下のような効果もあります。
・実際の場面に近い練習を通じて、現場でもスムーズに対応できる
・体験する中で新たな疑問や気づきが生まれる
・役割を演じることで相手の立場を理解できる
・相互フィードバックによって、自分では気づけなかった視点を得られる
このように、ロールプレイングは受講者が場面に入り込み「実践的に学ぶ」ことを可能にする手法です。
スキルや知識を現場で活かしてほしいときに、非常に有効なアプローチと言えます。
2)ロールプレイングを扱う研修の企画段階で押さえる3つのポイント
ロールプレイングを効果的に行うためには、企画段階で以下のポイントを押さえることが重要です。
1. 目的の設定
2. 場面・役割とロールプレイングの種類を設定
3. 資料の作成
順番に解説します。
2-1. 目的の設定
まず最初に「なぜロールプレイングを実施するのか」という目的を明確にします。
目的を軸に、扱う場面や役割を決めていくことで、研修全体の設計がブレずに進められます。
目的の具体例は以下のようなイメージです。
・管理職研修:「部下のモチベーションを引き出すフィードバック力」や「部下を放置しないマネジメント習慣の定着」
・接客業:「顧客満足度を高める応対力」や「クレーム時に感情的にならず冷静に対応する力」
目的が「スキルを高める」では抽象的すぎるため、「〇〇の場面で、△△ができるようになる」と具体化することが大切です。
2-2. 場面・役割とロールプレイングの種類を設定
次に、目的に適した現場での活用シーンを特定します。学んでほしいスキルは、どのような場面で使われているのかを検討し、具体化していきます。
例えば以下のようなイメージです。
・管理職研修:「部下へのフィードバック力を強化する」ことを目的にし、場面を「評価面談」や「業務ミスの指導」に設定
・接客業の研修:「クレーム対応スキルを身につける」ことを目的にし、実際の事例を再現
場面が決まったら、受講者全員が共通理解できるよう、さらに具体化していきます。その際のポイントは以下の通りです。
・役割や会話を具体化する
場面に登場する人物や典型的な会話を洗い出し、役割やセリフを設定する。
・リアルさを重視する
関係部署にヒアリングして実際の情報を収集すると、現場感のある設定になる。想像だけで作ると的外れになるリスクがある。
・人物像を具体的にする
「入社3年目の営業部のAさん」のように細かく設定すると、参加者がイメージしやすく、役になりきりやすくなる。
このように場面や役割の設定を具体的に行うことで、参加者が実際の業務を想像しながら取り組めるようになります。
さらに、ロールプレイングの種類を理解して選択することで、場面設定の精度が高まります。
一般的にロールプレイングには4つの種類があります。研修の目的に合わせて使い分けることで、効果をより高めることができます。
● ケース型ロールプレイング
特定の場面を想定し、顧客の業種・立場・課題など細かい条件を設定した状況で行います。実際の業務に近いシチュエーションを疑似体験することで、必要なスキルを身につけることができます。
● 問題解決型ロールプレイング
過去に起きた問題をテーマに実施します。さまざまな役割を演じながら協議し、新たな解決策を導き出すことで、同じ失敗を繰り返さず今後に活かせるようになります。
● モデリング型ロールプレイング
組織の中で評価されている人をモデルとして真似る手法です。優れた人材がどのような言動をしているのかを理解し、模倣することで、より良い仕事の進め方を学べます。
● グループロールプレイング
グループに分かれて役割を交代しながら繰り返し実施します。自分以外のやり方や視点に触れることで新しい気づきを得られます。さらに全ての役割を体験できるため、視野を広げる効果もあります。
【参考コラム】
新入社員研修でグループワークを活用!効果的なやり方と注意点
管理職研修で効果倍増!グループワークを成功させる徹底ガイド
このように、リアルな場面設定と適切なロールプレイングの種類を組み合わせることで、参加者は自分の現場をイメージしながら主体的に学べるようになり、研修効果が最大化されます。
2-3. 資料の作成
最後に、研修当日で使用する資料を整えます。受講者がすぐに場面を理解し、役になりきれるようにすることが大切です。
具体的には、以下のような工夫ができます。
・セリフ資料には、人のイラストや写真に吹き出しをつけて会話形式で提示する
・役割カードを作り、演じる人物の特徴(年齢・役職・立場など)を簡潔に書く
・場面シナリオを1枚にまとめ、参加者全員が同じイメージを持てるようにする
資料は「分かりやすさ」と「現場での再現性」の両方が重要です。
見やすく整えるだけでなく、現場の状況が頭に浮かぶようなリアルさを意識すると、学習効果が大きく高まります。
この3つを企画段階でしっかり押さえておけば、受講者が実際の現場をイメージしながら主体的に取り組めるロールプレイング研修を設計できます。
【参考コラム】【事例付】社員研修の企画、何から始める?4ステップで迷いを解消!
3)ロールプレイングを扱う研修の効果的な進め方とポイント
ロールプレイング研修を成果につなげるには、進行のステップを丁寧に設計することが重要です。意識するべきポイントとともに解説します。
| 流れ | 意識すべきポイント |
|---|---|
| 1. 目的の説明 | 目的を具体的にし、受講者と講師で共有すること |
| 2. 場面・役割の説明 | リアルな場面設定を用意してイメージしやすくする |
| 3. 実施方法の説明・質問受付 | 疑問を解消し、安心して取り組める状態にすること |
| 4. 実践 | 真剣に取り組める環境と、客観的に学べる仕組みを用意すること |
| 5. フィードバック | 具体的で前向きな意見交換を促す工夫をすること |
| 6. 振り返り | 曖昧さを放置せず、自分で考えるプロセスを促すこと |
1. 目的の説明|目的を具体的にし、受講者と講師で共有すること
ロールプレイングを通じて「何を学んでほしいのか」を受講者に伝えます。
目的がはっきりしていれば、受講者は研修の意味を理解し、主体的に参加できるようになります。また講師にとっても、目的を基準に進行やフィードバックを行いやすくなります。
一方で、目的が曖昧では、受講者だけでなく講師自身も研修の方向性を見失いかねません。
意識すべきポイントは、目的を具体的にし、受講者と講師の双方で共有することです。
例えば、営業研修でロールプレイングの目的を「効果的な顧客対応力の向上」と設定し、それを受講者に伝えることで、参加者は目的を意識しながら取り組めるようになり、狙い通りの学びにつながりやすくなります。
さらに、研修前に「何を習得したいか」「どんな状態を目指すか」を事前ワークで言語化させると、目的意識が一層高まり、行動も主体的になります。
このようにロールプレイングの目的を明確にし、受講者と講師が共有することで、研修の効果を最大化し、目的を達成する研修を実施できます。
2. 場面・役割の説明|リアルな場面設定を用意してイメージしやすくする
受講者が状況をリアルにイメージできるよう、場面や役割を丁寧に説明します。
受講者が場面と役割を正しく理解できているかで効果に影響するためです。世界観や設定の解説は時間をかけて丁寧に行い、受講者が場面や役割をイメージしやすいように工夫しましょう。
そのためにも、場面・役割の設定を受講者が「自分の現場で起こりうること」と思えるほどリアルに設定することが意識すべきポイントです。
例えば、カスタマーサポート研修で「クレーム対応の電話応対」を場面に設定し、役割を「顧客」と「サポート担当者」に割り当てたとします。
その際は、クレームの対象商品や顧客の年齢・性格・背景、担当者の経験年数などを具体的に設定します。
さらに、顧客が使う言葉や、優れた担当者の言動パターンをリサーチし、シナリオに落とし込むことで、よりリアルな演習になります。
このようにロールプレイングの場面と役割設定を明確にし、丁寧に説明することで、ロールプレイングの効果を高められます。
3. 実施方法の説明・質問受付|疑問を解消し、安心して取り組める状態にすること
ロールプレイングを始める前に、進め方を丁寧に説明し、不明点があれば質問を受け付けます。実施方法や場面設定に疑問が残ったまま実施すると、学びが半減するためです。
特に以下の点については、受講者が混乱しないように丁寧に伝える必要があります。
・誰がどの役割を担うのか
・何分間実施するのか
・何を意識して行うのか
意識すべきポイントは、疑問を残さず、受講者が安心して取り組める状態を整えることです。
これにより集中してロールプレイングに参加できます。
4. 実践|真剣に取り組める環境と、客観的に学べる仕組みを用意すること
実施中は講師が見て回り、適度な緊張感を保ちます。
ロールプレイングを知り合い同士で行う場合、恥ずかしさからふざけてしまったり、なれ合いになってしまうことがあります。そのため、講師は場を引き締めつつ、目的の再確認や補足説明で学びを支援することが大切です。
また、学びを深めるためにはオブザーバー役を設けることが効果的です。
オブザーバーはロールプレイングを客観的に観察し、演者にフィードバックを提供します。これにより、演じた本人は自分では気づけない改善点や強みを知ることができます。
さらに、オブザーバー自身も他者の取り組みを観察する中で新たな視点や気づきを得られます。
意識すべきポイントは、真剣に取り組める環境をつくり、客観的な気づきを得られる仕組みを用意することです。
そうすることで、演じる側は自分では気づけない改善点を知り、オブザーバーは客観的な視点から新たな学びを得ることができます。演じる側と観察する側の双方が成長できる 双方向の学習効果が生まれ、研修全体の質を一段と高められます。
5. フィードバック|具体的で前向きな意見交換を促す工夫をすること
ロールプレイング後は受講者同士でフィードバックを行い、改善点や良かった点を共有します。これは、互いの気づきを深め、実践力を高めるためです。
ただし、多くの受講者は「良かったです」といった感想に留まってしまいがちです。そのため、事前にフィードバックの観点や伝え方のポイントを伝える、あるいはフィードバックシートを用意するなどの工夫が効果的です。
フィードバックの観点は以下の3つについて伝えると良いでしょう。
フィードバックの観点
・自分がその場にいた立場で考えたとき、相手の言動をどう感じたか
・その言動がクライアントやチーム、組織にポジティブな影響を与えているか
・「ダメなところ探し」ではなく、もっと良くできそうな点はどこか
これらを研修の目的に沿って具体化すると、より的確なフィードバックが可能になります。
例えば、営業研修で「効果的な顧客対応力の向上」が目的なら、「クライアントの立場に立ったときに、一緒に仕事をしてみたいと思うか」をフィードバックの観点にするなどです。
フィードバックの伝え方のポイントは以下の2点を伝えましょう。
フィードバックの伝え方のポイント
・goodポイント → 改善ポイント → goodポイント の順で伝える
改善点を良い点で挟むことで、受け手が受け入れやすくなります
・改善点は「決めつけ」ではなく「提案」や「私はこう思いました」という形で伝える
受け取るかどうかは本人に委ね、主体性を尊重します
意識すべきポイントは、具体的で前向きなフィードバックを促す仕掛けを用意することです。
観点や伝え方を明確にすることで、受講者は互いに成長を後押しし合えるようになり、学びの質が格段に高まります。
6. 振り返り|曖昧さを放置せず、自分で考えるプロセスを促すこと
最後に、気づきやモヤモヤを共有し合います。他の人の気づきやモヤモヤを聞くことで「自分はどう考えるか」を深めるきっかけになるためです。
モヤモヤは「できなかった証拠」ではなく、むしろ学びを深めるサインです。人は曖昧さを解消しようと考え続ける性質があるため、成長の機会になります。
講師はすぐに答えを与えるのではなく、「なぜそう思った?」「他にどんな方法がある?」といった問いを投げかけ、受講者に考えさせましょう。
意識すべきポイントは、モヤモヤを学びの種として扱い、自分で考えるプロセスを促すことです。
そうすることで、受講者は「研修での学びを自分の言葉で整理できる」だけでなく、「次に現場でどう活かすか」を主体的に考えられるようになり、研修効果の定着と実務への応用につながります。
ロールプレイング研修は、この流れを踏まえ、それぞれのステップで「意識すべきポイント」を押さえることが成功のカギです。
企画から実施まで丁寧に進めることで、受講者は現場で使えるスキルを確実に身につけられます。
4)【事例紹介】アーティエンスがロールプレイングを活用している研修例
アーティエンスは学んだスキルや知識を現場で繋げる研修を実施しているため、多くの研修でロールプレイングの手法を用いています。今回はその中から2つの研修の事例を紹介します。
事例1:ビジネスマナー研修
アーティエンスのビジネスマナー研修では、知識を学ぶだけでなく、ロールプレイングを通じて実際の言動を身につける工夫をしています。
ビジネスマナーの基本を知っていても、いざ実践すると難しさを感じる人は多いためです。
例えば、来客・訪問対応で必要となる名刺交換や受付の対応、部屋への案内や見送りなどを、受講者同士が役割を交代しながら練習します。
実施にあたっては、受講者がイメージしやすいように、まず動画を見てもらい、その後テキストの流れに沿って役割を演じてもらう流れにしています。

さらに、研修の冒頭で「なぜビジネスマナーを身につけるべきなのか」を考える時間を設けています。当社では「ワールド・カフェ」という手法を取り入れ、少人数の対話を通して「マナーとは何か?」を自分の言葉で考えてもらいます。
※ワールド・カフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気で少人数の対話を行う学びの手法です。
これにより、受講者はマナーの大切さを自分なりに理解でき、ロールプレイングにも主体的に参加するようになります。
他にも、マナーに関する良いお手本の動画を見せる前に、あえて「よくない例」の動画を見てもらい、間違い探しを行うワークも取り入れています。
受講者に誤りを探してもらうことで、「こんな社会人にはなりたくない」という感情が生まれ、マナーを身につけたいという意欲が高まりやすいためです。
このように、ロールプレイングの場面や役割を明確にするだけでなく、受講者が主体的に参加したくなる設計を組み込むことで、ロールプレイングに真剣に取り組み、より質の高い学びへとつなげることができます。
事例2:育成担当者・OJTトレーナー研修
育成担当者・OJTトレーナー研修では、ティーチング・フィードバック・コーチングといった基本スキルを習得するために、リアルな場面を設定し「こんなとき、どう対応するか」を考えながら学んでいきます。
例えば、フィードバックのロールプレイングでは、若手社員役とOJTトレーナー役に分かれ、それぞれの状況を詳しく記した資料を個別に配布します。互いに相手の状況を知らないまま課題に取り組むことで、実際の現場に近い緊張感と気づきが生まれます。

1回目が終わったあと役を交代すると、多くの受講者が「相手のことをこんなにも見えていなかったのか」と驚きます。OJTトレーナーが若手社員の役を経験することで、今まで気づけなかった相手の視点が見え、自身の育成方法に改善が必要だと実感し、行動変化につながります。
ロールプレイングは、自分以外の立場に立つことで相手の視点を理解でき、大きな気づきにつながるのが特徴です。
さらに、育成担当者・OJTトレーナー研修のロールプレイングは、受講者のワーク結果によってストーリー内の部下の行動や成長度合いが変化する仕組みになっています。適切なアウトプットができなければ、心の痛む結末を体験することもあります。
このようにリアルな場面・役割設定を行うことで、受講者の視野が広がり、育成に対する意識や行動の変化を促すことができます。
アーティエンスでは、ロールプレイングの効果を高める設計をした研修を多く取り扱っています。
ロールプレイングの設計方法や、具体的は研修内容について興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
5)まとめ|アーティエンスの研修ではロールプレイングを取り入れ、学びの理解をサポート
ロールプレイングは、受講者が「知識を知っている」にとどまらず、「実際にできる」状態へと成長するために欠かせない研修手法です。
目的を明確にし、リアルな場面設定と適切な種類を選び、丁寧に設計して実施することで、受講者は主体的に学び、現場で活かせるスキルを確実に身につけることができます。
アーティエンスでは、ビジネスマナー研修やOJTトレーナー研修をはじめ、多様なプログラムでロールプレイングを取り入れ、学びを現場での行動変容につなげています。
「研修を実施したけれど、現場でなかなか活かされていない」
「受講者がもっと主体的に学び、成長する場をつくりたい」
そんな課題をお持ちの方は、ぜひアーティエンスにご相談ください。貴社の目的や現場に合わせた最適な研修設計をご提案いたします。
ロールプレイングを効果的に取り入れ、研修を単なる学びの場ではなく、受講者が現場で実際に行動を変えていくための実践の場にしましょう。






