成果につながる！新入社員研修の5つの目的と設定方法【事例あり】

「今年の新入社員研修、例年の焼き直しになっていないか」
「現場配属後につながる手応えが薄い」——そんな不安はありませんか。

多くの企業で、新入社員研修の“目的”が曖昧なままカリキュラムだけが先行し、「やった感」はあるのに成果につながらない、という悩みを耳にします。
忙しい中で準備を進めるほど、全体設計より“実施”が優先になりがちです。

そこで本コラムでは、新入社員研修の5つの目的を整理し、さらに目的を“自社らしく”設計するための2つの視点を、実際の事例とともにご紹介します。

新入社員一人ひとりの小さな一歩は、やがて組織全体の大きな前進になります。
新入社員研修の目的を適切に設定し、あなたの会社らしい研修を実現することで、未来の成果を共につくっていきましょう。

１）新入社員研修の5つの目的と研修内容

新入社員研修の目的は、新入社員が職場に早く馴染み、成果を生み出すために必要なスキルとマインドを身につけてもらうことにあります。

その目的をさらに細分化すると、5つの目的に分かれます。

本章では、この5つの目的と、目的を達成するために有効な研修内容を紹介します。

企業理念や社風を理解する

新入社員研修の大きな目的のひとつは、企業理念や社風を理解し浸透させることです。
企業理念や社風は、社員全員が共通して持つべき価値観です。これを理解できていないと、組織として同じ方向を向いて働くことが難しくなります。

さらに、理念や社風への共感が薄れると、仕事の目的や重要性を正しく理解できず、新入社員は納得感のないまま単なるタスク実行者になってしまう可能性があります。

一方で、共通の価値観や文化を持てれば、組織内のコミュニケーションが円滑になり、協力関係の構築にも大きく貢献します。

理念や社風の理解を深めるために、新入社員研修では次のような取り組みが有効です。

新入社員研修で企業理念や価値観、社風や文化を浸透させることで、組織への適応性と一体感を高め、新入社員が主体的に行動できる土台を築くことができます。

社会人としての自覚を持つ

社会人としての自覚を持ってもらうことも、新入社員研修の大きな目的のひとつです。
社会人としての自覚が信頼を得るために不可欠で、仕事を続けていく上での基盤になるためです。

自覚がないと、仕事への責任感や倫理的な行動が欠け、結果として業務を継続することが難しくなります。

例えば、時間管理やスケジュールを守らない、仕事を軽視する姿勢をとるなど、品質や効率性に悪影響を及ぼすことが考えられます。
こうした問題を防ぐためには、新入社員が学生から社会人への意識転換を行い、社会人として求められるルールや期待に慣れることが必要です。

そのために新入社員研修では、以下のような取り組みが効果的です。

新入社員研修を通じて社会人としての役割や責任を自覚させることで、信頼される行動を取るための基盤を築くことができます。

仕事に必要なスキルを習得する

新入社員研修の目的として、仕事を進める上で必要なスキルの習得もあげられます。
スキルが身についていないと、プロジェクトの遅延や意思疎通・業務連携の誤解などが起こり、業務の効率性や品質に直接的な悪影響を及ぼします。

一方で、適切なスキルを身につけた新入社員は自信を持ち、積極的に業務へ取り組むことができ、その姿勢が組織全体の成果にもつながります。

そのため、新入社員研修では次のようなプログラムが有効です。

新入社員研修を通じて業務遂行に必要な知識や技術を習得させることで、新入社員は即戦力として活躍できる基盤を築くことができます。

周囲との共創・協働を意識する

周囲との共創・協働を意識し、コミュニケーションを活性化させることも、新入社員研修の目的のひとつです。
仕事は一人で完結するものではなく、周囲と協力し合いながらコミュニケーションを通じて進めていくものだからです。

相手を理解し、適切な情報共有や意見交換を行うことで円滑なコミュニケーションが実現し、問題解決や意思決定がスムーズに進みます。
また、共創・協働を意識することで、個々のスキルやアイデアを集結させてより良い成果を生み出せるだけでなく、自己中心的な思考から利他的な思考への切り替えも促され、より質の高い仕事につながります。

新入社員研修で共創・協働を学ぶには、次のような取り組みが有効です。

協力や協働の意識を持ち、円滑なコミュニケーションを築くことは、新入社員個人の成長に加えて、組織全体の成功にも大きく貢献します。

経験を振り返り、自己成長につなげる

新入社員研修の目的のひとつに、経験を振り返り自己成長につなげることがあります。新入社員は日々の業務に追われ、自主的に振り返りの時間を確保できていないことが多いためです。

しかし、振り返りは新入社員の成長に欠かせません。振り返りを行うことで次のような効果が期待できます。

・失敗や課題から学びを得て改善行動につなげられる
・自身の成長や変化を実感し、自信を醸成できる
・強みや可能性、弱みや課題を認識し、適切な目標設定やキャリアプランを策定できる

こうしたプロセスはすべて自己成長に直結します。だからこそ、研修の中で意識的に振り返りの時間を設けることが重要です。

振り返りを支援する施策としては、以下のような研修が効果的です。

新入社員研修で振り返りの時間を設けることで、新入社員は学びを自分の成長に結びつけ、自信と主体性を持ってキャリアを築く基盤を整えることができます。

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このように、新入社員研修は「組織に早く慣れるための導入プログラム」ではなく、「新入社員が長期的に活躍するための土台づくり」の場です。

これら5つの目的を達成する新入社員研修を実施することで、新入社員一人ひとりが組織の一員として自信を持ち、成果を出し続けられる人材へと育っていきます。

２）【事例あり】新入社員研修の目的を“自社らしく”設計する方法

新入社員研修の目的は、組織ごとの状況や方針によって大きく異なります。
アーティエンスでは、お客様と対話を重ねながら、自社に合ったオリジナルの目的を一緒に設計しています。

今回はその一例として、次の2つの方法で目的を設定した事例をご紹介します。

・組織全体の育成コンセプトから新入社員研修の目的を設定する方法
・1年後の新入社員のゴールイメージから逆算して目的を設定する方法

「他社はどのように新入社員研修の目的を設定しているのか？」を知ることで、自社オリジナルの研修設計を考えるヒントにしていただければと思います。

1. 組織全体の育成コンセプトから新入社員研修の目的を設定

新入社員研修の目的を組織全体の育成コンセプトを各階層に落とし込み、その延長線上で設定していきます。

新入社員研修の目的設定までの流れは次の通りです。

従業員数約200名の老舗食品メーカーで、新入社員研修を実施した例を紹介します。

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1）組織全体の育成コンセプトを設定

従業員数約200名の老舗食品メーカーでは、100年以上続く歴史の中で年功序列が強く、さらにコロナ禍を経て受け身の姿勢が目立つようになっていました。
「正しくやることが正義」という風土が根強く、社員は失敗を恐れて挑戦できない状態でした。

しかし「このままでは時代に取り残されてしまう」という危機感が高まり、弊社との対話を通じて、最終的に 「共に変わるために、一歩を踏み出す」 という組織全体の育成コンセプトを策定しました。

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2）各階層ごとの育成コンセプトを設定

組織全体の育成コンセプトをもとに、管理職層、中堅層、新入社員層など、各階層に合わせた育成コンセプトを設定しました。
これにより、全員が同じ方向を向きながらも、それぞれの立場で何をすべきかを明確にできました。

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3）新入社員研修の目的を設定

新入社員の階層ごとのコンセプトは 「『共に変わるために、一歩を踏み出す』に対して、自分ができることを考える」 としました。

そこから新入社員研修の目的を、「自分ができることを考えられるようになるために必要な知識とスキルを身につける」 と設定しました。

その後、目的を達成するために必要な内容を検討し、1年間の研修計画を策定していきました。

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このように、組織全体の育成コンセプトから新入社員研修の目的へと落とし込むことで、組織全体が同じ方向を向いて進むことが可能になります。

2. 1年後の新入社員のゴールイメージから逆算して新入社員研修の目的を設定

新入社員研修の目的は、1年後にどのような人材になっていてほしいかというゴールイメージから逆算して考えることもできます。

新入社員研修の目的設定までの流れは次の通りです。

従業員数約2,500名の地方銀行で、新入社員研修を実施した例を紹介します。

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1）１年後の新入社員のゴールイメージ設定

打ち合わせの際に「新入社員研修が終わった後、新入社員にどのような人材になってほしいですか？」と質問したところ、「他者から任せられる人間です」という答えがありました。
ただし、1か月間の研修だけでこの状態に到達するのは現実的ではないため、1年後のゴールを「１年後に他者から任せられる人材になること」と設定しました。

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2）半年後のゴールイメージ設定

1年後のゴールを実現するために、半年後の状態を中間地点として設定しました。
「任せられる人材」になるために、まずは「上司や先輩からの信頼を得られる行動姿勢を育てること」が必要になるのではないか、と先方との対話を通して明確にしていきました。

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3）1ヶ月後のゴールイメージ設定

半年後の姿からさらに逆算し、研修直後の1ヶ月後のゴールを明確化しました。
ここでは「基本的な業務を理解し、主体的に学ぶ姿勢を持って行動できること」が目標とされました。

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4）配属直後のゴールイメージ設定

1ヶ月後のゴールイメージを踏まえて、配属直後には「積極的に他者に働きかける人」という姿をゴールに設定しました。
単に受け身で教わるのではなく、自ら動き、周囲に関わっていける新入社員像をイメージしています。

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5）4月1週目〜4週目までの新入社員研修の目的設定

最後に、配属直後のゴールを達成するために、入社直後1か月間の研修目的を細分化しました。
研修の内容や順番を調整し、段階的にゴールへ近づける設計を行いました。具体的には、基礎的なビジネスマナーや職場理解から始め、徐々に積極的な関わりを実践できるように研修を組み立てました。

 

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このように１年後の理想像から逆算して目的を設定するプロセスを踏むことで、研修目的がより明確になり、ゴールに到達できる状態をつくることができます。

※お客様と共に作成した大切な内容のため、一部情報を変更して掲載しております。

なお「【事例付き】新入社員研修の内容例！成功のカギを深掘り解説」の記事では、新入社員に対して、どのような研修を実施するべきであるかを解説しています。

具体的な研修内容の事例や効果を高めるためのポイントもご紹介しておりますので、研修を成功させるためにもぜひ参考にしてください。

３）失敗しない！新入社員研修の目的設定で押さえるべき2つのポイント

自社オリジナルの新入社員研修の目的を設定する際に、特に意識したいのは次の2点です。

・組織の目的と同じ方向性を向けていること
・新入社員が成長をイメージできる内容になっていること

順に説明します。

組織の目的と同じ方向性を向けていること

新入社員研修の目的は、必ず組織全体の目的と同じ方向性を向いていることが重要です。
新入社員研修が組織の目的を達成するために必要な人材像と一致していなければ、研修の成果が組織全体の成長につながらないためです。

もし研修だけに焦点が当たり、組織全体を俯瞰できていないと、新入社員研修の目的と組織の目的の間にズレが生じてしまいます。

例えば、人材紹介サービス会社の組織目的が「企業と個人の幸せのマッチングを増やす」であるなら、その目的を実現できる人材を育成する必要があります。

新入社員研修で設定する目的は、新入社員の成長につながり、さらに2年目以降の成長へと発展し、最終的には組織全体の目的に結びついていくことが理想です。

新入社員研修の目的を組織全体の目的と結びつけることで、社員の成長ステップが組織の成長につながる一貫性のある育成体系を実現できます。

新入社員が成長をイメージできる内容になっていること

新入社員研修の目的は、新入社員自身が成長をイメージできる内容にすることも重要です。
「自分もそうなりたい！」と感じられる目的であれば、研修に対するモチベーションが高まり、主体的に取り組む姿勢を引き出せるためです。

新入社員研修の効果を高めるうえで、本人の主体性は大きな鍵となります。

例えば、「仕事の基礎を身につけて、スムーズに仕事ができるようになる」という目的よりも、「仕事の基礎を身につけて、相手に喜んでもらえる仕事ができるようになる」とした方が、新入社員の理想像に寄り添った内容となり、共感を得やすくなります。

新入社員が「自分の目指す姿」と結びつけて目的を捉えられるように設定することで、成長の可能性を実感し、研修へのモチベーションを高められます。その結果、研修の目的達成にもつながります。

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組織視点からは、一貫した育成体系を築くことで、社員の成長がそのまま組織の成長につながります。
新入社員視点からは、「自分もそうなりたい」と思える目的を掲げることで、主体性やモチベーションを引き出し、研修効果を高めることができます。

この両面を意識して目的を設計することで、組織と新入社員が同じ方向を向き、互いに成長を実感できる研修を実現できます。

４）まとめ｜“自社らしい”目的設計で、新入社員の力を未来の成果へ

本コラムでは、新入社員研修の5つの目的（理念・社風の理解／社会人としての自覚／業務スキルの習得／共創・協働の促進／振り返りによる自己成長）を整理しました。

あわせて、それを自社らしく設計するための2つの視点も紹介しました。

① 組織の目的との整合
② 本人が成長をイメージできること

ポイントは、新入社員研修を「単なる導入イベント」と捉えないことです。
長期的に活躍するための土台づくりとして位置づけ、組織のゴールから一貫して落とし込むことが大切です。

まずは、自社の経営目的や人材要件と、新人研修の目的が一直線に結びついているかを確認してみましょう。もしズレがあれば修正し、今後の育成や次年度の改善につなげることができます。

アーティエンスでは、お客様の状況に合わせて、組織のゴールから階層別のコンセプト設計とカリキュラム化を行い、“自社らしさ”を核とした新入社員研修を構築します。
さらに、運用と改善の伴走として、振り返り指標の設計、定点レビュー、翌年への改善提案まで継続的にサポートしています。

「自社の目的に合う新人研修に作り替えたい」「今年から逆算設計でやり直したい」など、具体的なアイデアの壁打ちも歓迎です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

新入社員一人ひとりの小さな一歩は、やがて組織全体の大きな前進になります。
新入社員研修の目的を適切に設定し、あなたの会社らしい研修で未来の成果をつくりましょう。