ブラザーシスター制度【導入マニュアル】|注意点を押さえて新入社員の育成をサポート

更新日:

作成日:2023.8.30

ブラザーシスター制度

「ブラザーシスター制度って導入した方がいい?」
「ブラザーシスター制度を導入する上での注意点を知りたい」

このような思いをお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

ブラザーシスター制度とは、新入社員と同じ部署にいる年齢の近い社員を兄(ブラザー)、姉(シスター)に見立てて、仕事の進め方から悩み相談など、業務だけではなくメンタル面のフォローまで行う制度のことです。

ブラザーシスター制度の導入で得られる効果から、新入社員の育成サポートとしてブラザーシスター制度を検討する組織が多いです。しかし、ブラザーシスター制度には導入する上での難しさもあります。

そこで、本記事ではブラザーシスター制度の効果と難しい点を提示した上で導入を進めたい組織ができる限りトラブルを抑えて導入するためのマニュアルをお伝えします。

ブラザーシスター制度をうまく活用して新入社員の育成フォローへとつなげていきましょう。

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    1)ブラザーシスター制度の4つの効果

    ブラザーシスター制度には主に4つの効果があります。

    ・早期離職の防止
    ・成長促進
    ・エンゲージメント向上
    ・先輩社員の育成スキル向上

    早期離職の防止

    ブラザーシスター制度は早期離職の防止に効果的です。ブラザー・シスターが新入社員のサポート役としてアドバイスや相談に答えることで、早期離職の原因となる新入社員の不安や問題解決を助けることができるためです。

    新入社員は特に最初の数ヶ月は不安や適応困難を感じやすく、これが早期離職の原因となることがあります。

    例えば、新入社員が業務に対して自信を持てずに悩んでいる場合、悩みに寄り添い、ブラザー・シスターが自身の経験をもとに適切なアドバイスを提供することで、悩みが軽減していきます。悩みが軽減されると仕事へのモチベーションが向上し、早期離職のリスクを減少することになります。

    このように、ブラザーシスター制度によって、新入社員は安心感を得て組織に定着しやすくなり、早期離職を防ぐ効果が期待されます。

    【参考】1年以内の離職率
    厚生労働省が令和4年10月に発表した、新規学卒者の離職状況の調査によると、令和3年3月の卒業者が入社1年以内(令和4年3月31日まで)に離職した割合は、全体平均で14.3%でした。最終学歴別にみると、次のようになります。

    ・高卒 平均・・・16.6%
    ・短大等卒 平均・・・18.3%
    ・大学卒 平均・・・12.2%

    ※ 新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況を元に算出

    成長促進

    ブラザーシスター制度は新入社員の成長を促進する効果があります。仕事の具体的な進め方など細かい部分について相談できるためです。

    新入社員の状態に合わせた個別指導ができるため、些細なことも確認しやすいです。また、新入社員が今難しいと感じる仕事は、過去にブラザー・シスターが乗り越えてきた仕事と重なる部分も多く、具体的なアドバイスを受けやすくなります。

    例えば、新入社員が議事録の取り方に難しさを感じている場合を考えます。この悩みをブラザー・シスターに聞いてみると、ブラザー・シスターが共感してくれて、具体的なポイントを教えてもらえるでしょう。

    学生時代は議事録を取る経験が少なく、数年前のブラザー・シスターも同じ難しさを感じていることが多いです。そのブラザー・シスターがさまざまな経験の中でベストなスタイルを見つけられている時期だからこそ、新入社員に具体的なアドバイスをすることが出来ます。

    このようにブラザーシスター制度は、新入社員が難しいと感じることと、ブラザー・シスターがこの間まで本人も悩んでいたことが重なる部分が多いため、具体的なアドバイスをすることができます。そしてその結果、新入社員の成長を推進させることにつながります。

    エンゲージメント向上

    ブラザーシスター制度は新入社員のエンゲージメント向上に寄与する効果があります。ブラザー・シスターとのつながりを通じて、組織や先輩が自分を受け入れようとしてくれていることを実感できるためです。
    ブラザー・シスターとの会話で良い時間が作られていると、その分頑張ろうという思いが強くなり、モチベーションや成長意欲が高まることを期待できます。

    例えば、新入社員が週次のランチミーティングとして、ブラザー・シスターと自由に会話できる時間を持てているとします。その際に、ブラザー・シスターは自身の経験や失敗談を共有したり、新入社員は率直な質問を投げかけることが出来ます。こうしたコミュニケーションを通じて、新入社員は組織内での受け入れ感を感じ、自分の存在が重要であることを理解していけるようになります。

    このように、ブラザーシスター制度は新入社員が組織内での関与感と熱意を向上させる手段として機能し、エンゲージメントの向上に繋がります。

    【参考コラム】
    【Q&A付】新入社員のメンター|4つの役割で組織への安心感をもたらす

    先輩社員の育成スキル向上

    ブラザーシスター制度は、先輩社員(ブラザー・シスター)の育成スキルを向上する効果があります。新入社員にわかるように物事を整理して伝えたり、自分の仕事の仕方を改めて考えるきっかけになるためです。

    例えば、新入社員から先輩との関係性について相談を受けたとします。しかし普段の仕事の中で特に意識していることがないと、そのような問いを受けて初めて、自分は先輩とどのように関わっているかを改めて考えることになります。
    自分の言動を言語化し、新入社員に適切な内容をアドバイスしようと考える過程の中で、ブラザー・シスター自身にとっても気づきがあり、相談に答えるプロセスの中で自然と育成スキルが磨かれていきます。

    このようにブラザーシスター制度は、先輩社員(ブラザー・シスター)の育成スキルを向上させることにも繋がり、組織全体の人材育成にもポジティブな影響を与えます。

    ブラザーシスター制度が上手く活用できると、これら4つの効果を得ることが出来ます。

    2)ブラザーシスター制度の難しいところ

    ブラザーシスター制度には、メリットだけではなく難しいところもあります。特に難しさを感じるのは次の3点です。

    ・ブラザーシスターと新入社員との相性
    ・ブラザーシスターへの業務負荷
    ・ブラザー・シスター側の指導スキル

    順番に説明します。

    ブラザーシスターと新入社員との相性

    ブラザーシスター制度の難しいところとして、ブラザー・シスターと新入社員の相性が挙げられます。お互いの相性が合わない場合、適切なコミュニケーションや理解が難しく、新入社員の成長やモチベーションにかえって悪影響を与える可能性があるためです。

    例えば、新入社員が積極的で自己主張が強い一方、ブラザー・シスターが控えめな性格の場合、意見の食い違いや理解不足が生じることがあります。これにより、新入社員は適切なアドバイスを得られず、ブラザー・シスターは指導が難しくなるため、お互いにとってネガティブな影響を与え合ってしまうことになります。

    これを解決するためには、組織は相性を考慮したペアリングを行うと同時に、コミュニケーションスキルや柔軟性を育成するトレーニングを提供することが重要です。相性の調整とブラザー・シスターへの支援をすることで、ブラザーシスター制度の効果を得られるようになります。

    ブラザーシスターへの業務負荷

    ブラザーシスター制度の難しさの一つは、ブラザー・シスターへの業務の負担です。ブラザー・シスターは自身の業務に加えて、新入社員の教育や質問への対応などの業務も担当する必要があるためです。そのため、ブラザー・シスターの負担が増加するおそれがあります。

    ブラザー・シスターが自身の業務に忙殺されている中で、新入社員からの質問や相談が頻繁に発生すると、ブラザー・シスターは新入社員の対応を後回しせざるを得なくなり、適切なタイミングでフォロー出来なくなってしまう可能性があります。

    この問題を軽減するためには、組織はブラザー・シスターの負担を考慮し、ブラザー・シスターの通常業務の負担を軽減する対策を講じることが必要です。ブラザー・シスターがゆとりを持てる状態でいることで、新入社員からの相談事にいつでも対応できるようになり、ブラザーシスター制度の効果を得られるようになります。

    ブラザー・シスター側の指導スキル

    ブラザーシスター制度の難しさとして、ブラザー・シスターが新入社員へ指導スキルも挙げられます。指導する側が自身の知識や経験を適切に伝えるためには、コミュニケーションや教育スキルが必要です。しかし、これらのスキルがブラザー・シスターに備わっているわけではありません。また、新入社員とのコミュニケーションの適切な取り方や、理解しやすい説明方法を見つけることも難しいことがあります。

    例えば、専門的な機械の操作方法について新入社員に教える場合、専門的な知識をできる限り分解して分かりやすく説明する必要があります。しかし、教える側に知識があっても、指導内容が抽象的な場合や、伝え方が端的でない場合は、新入社員の理解が十分に得られないことがあります。
    また、ブラザー・シスターは知識を教えたりアドバイスすることはできても、新入社員が自立できるようになることを意識して、必要に応じて教えすぎないことや自分で考えてもらうように促すことはさらに難しいです。

    この問題を解決するためには、ブラザー・シスターに適切な指導スキルやコミュニケーション能力を磨く機会を提供し、教育プログラムやトレーニングを通じてサポートすることが重要です。また、ブラザー・シスターが定期的に先輩に相談したり、新入社員との関わりについてのフィードバックやアドバイスを受ける機会を設けることも必要です。そうすることで、新入社員もブラザー・シスターも成長することが出来ます。

    【参考コラム】
    【OJT研修】効果を高めるための目的・内容・進め方
    なぜ「OJTは意味がない」と言われるのか?うまくいかない企業が見落としているポイント

    このように、ブラザーシスター制度には、主に3つの難しいところもあります。これらが起きることを理解し、組織として適切なフォローを行うことが必要です。

    【参考】ブラザーシスター制度とメンター制度、OJT制度との違い

    ブラザー・シスター制度 OJT制度 メンター制度
    指導対象 新入社員 全社員 新入社員、若手社員
    指導役の部署 同じ部署の先輩社員(年齢が近い) 同じ部署の先輩社員(年齢不問) 別部署の先輩社員
    サポート範囲 実務指導、メンタル面 実務指導 メンタル面

    3)ブラザーシスター制度 導入マニュアル

    ブラザーシスター制度を導入するまでの流れを説明します。全体の流れとしては以下の通りになります。

    1、ブラザーシスター制度を導入する目的・目標を設定
    2、最低限の運用ルールを設定
    3、ブラザーシスターの選出・ペアリング
    4、社内への周知
    5、ブラザーシスターの育成
    6、定期的な制度の見直し・改善
    7、目標の振り返り・改善

    順番に説明します。

    1、ブラザーシスター制度を導入する目的・目標を設定

    ブラザーシスター制度を導入する目的・目標を設定します。目的・目標が定まっていないと、次のような問題が生じる可能性があるためです。

    運用の混乱:目的が定まっていないため、ブラザーシスター制度の運用方法や役割が曖昧になり、運用の混乱が生じる可能性があります。

    意義の欠如:新入社員やブラザー・シスターがなぜこの制度が導入されたのか、どのような成果を期待されているのか理解できないまま、活動の意義を感じにくくなります。

    効果測定の難しさ:目標がないため、制度の効果を評価する際の基準が欠如し、成果や効果の測定が難しくなります。

    参加者のモチベーション低下:参加者が制度の目的や価値を理解できないまま活動すると、参加者のモチベーションが低下し、有意義な成果が出にくくなります。

    したがって、ブラザーシスター制度を導入する前に、明確な目的・目標を設定し、それに基づいた計画を立てることが重要です。

    例えば、営業を担当する新入社員の円滑な社会人への適応支援を目指す場合は、次のような目的・目標が考えられます。

    ■目的:新入社員が早期に馴染み、成果を生みやすくする
    ■目標:先輩の力を借りながら9月末までに一人で新規の相談から提案、受注までできる状態になり、3月末までに既存顧客との信頼関係を構築しながら継続案件で300万、新規顧客から200万、商品を販売している

    このように目的・目標を明確にすることで、ブラザーシスター制度を効果的に実施できるようになります。

    2、最低限の運用ルールを設定

    ブラザーシスター制度の運用方法を設定します。基本的には新入社員のフォローをできる体制をブラザー・シスターと話し合って各ペアごとに実施してもらえれば問題ありません。ただし、最低限実施すべきラインについては人事側で設定しましょう。

    また、ブラザー・シスターに任せっきりになってしまうと負担が大きくなってしまうため、レポートを提出してもらうことで周囲がフォローできる体制にしておくことも必要です。

    以下に最低限実施してほしい面談の運用ルールについて説明します。

    面談の頻度・時間

    面談の頻度は、各ペアで話し合って決めてもらうことになりますが、最低でも月1回は面談の時間を設けるようにしましょう。時間もその時の業務量に合わせて各ペアで調整してもらって良いですが、目安は1時間です。
    新入社員は業務については積極的に相談しやすいですが、業務以外の話については話すタイミングがわからないという人もいます。そのため、面談の時間を設けることは大切です。

    【参考】面談時の座り方少しカジュアルな雰囲気で話せる場所を選びましょう。座る位置は、対面で向かい合って座るよりも、下記図のようにL字の位置で座ることをおすすめします。対面だと心理的な圧迫を感じやすくなりますが、L字のだと自然と視線がずらせ、お互いにリラックスして面談に臨めます。

    アジェンダ

    面談のアジェンダは人事で作成しておきましょう。アジェンダを作成しておくことで、新入社員のフォローにつながる意味のある時間を作りやすくなります。

    【アジェンダ例】
    ・チェックイン
    ・目的・目標の確認
    ・新入社員から課題や相談したいことの共有
    ・アドバイスや解決策の提案
    ・アクションプランを設定
    ・チェックアウト

    上記の例を参考に、相手のニーズや状況に合わせて柔軟にカスタマイズすることが大切です。

    面談後の報告書

    面談後の報告書フォーマットも人事で作成しておきましょう。この報告書を見て、人事やブラザー・シスターの上司は必要に応じてフォローを行います。

    【例】ブラザー・シスターが人事に提出する報告書の例

    上記の例を参考に、面談の目的や状況に合わせて柔軟にカスタマイズしてみてください。

    ブラザーシスターと新入社員の組み合わせを変更するタイミング

    ブラザーシスターと新入社員の組み合わせを変更するタイミングは事前に定めておきましょう。問題が起きたときに変更できる可能性があることを、新入社員もブラザー・シスターも知っておくことが必要です。

    もしハラスメントが起きた場合は、即変更を行う必要があります。
    ブラザーシスターと新入社員が良い関係を築けておらず、意味のない時間となってしまっている場合は、ブラザーシスター、新入社員へのヒアリングを行い、対応の検討が必要です。
    新入社員から話を聞いてくれない、話しづらいなどの意見がある場合は、そのブラザーシスターと人事で面談をして今後の対応を検討することになります。

    そのほかにも、変更が必要なタイミングが起きた時に都度追加していき、精度を高めていきましょう。

    ブラザーシスター制度の運用するために、最低限行ってほしいことについては事前に定めておく必要があります。

    3、ブラザーシスターの選出・ペアリング

    ブラザー・シスターを選出し、新入社員とのペアリングを行います。ブラザー・シスターは、新入社員のローモデルとなってほしい人を選出すると良いです。新入社員がローモデルとなってほしい人と接触回数が増えることで、ポジティブな影響を受けやすくなるためです。

    また、新入社員とブラザー・シスターの相性も考慮する必要があります。そのため、ブラザー・シスターを選出し、新入社員とのペアを決める人は、お互いの人間性をよく知っている人が担当しましょう。両者の情報が少ない場合は、その近くにいる人にヒアリングをして情報を収集しましょう。

    なお、ローモデルとなってほしい人は、高い成果を出していることが多く、自身の業務が忙しい場合も多いです。その際は、1対1でなくブラザー・シスターを社員2人と新入社員1名とする方法もあります。

    ブラザーシスターの選出とペアリングは特に慎重に行いましょう。

    4、社内への周知

    1〜3の内容が固まったら社内への周知を行います。社内全体として、このような取り組みを行っていることを認知してもらうことが必要だからです。
    ブラザーシスター制度の取り組みや、ブラザー・シスターとなる人のことを全社員が知ることで、ブラザーシスターの業務量の調整を行いやすくなります。

    5、ブラザーシスターの育成

    ブラザーシスターの育成を行います。新入社員のフォローには、適切なコミュニケーションスキルや知識が必要になるためです。
    具体的には、以下のことを学ぶ場を設けることをお勧めします。

    ・ティーチング
    ・フィードバック
    ・コーチング
    ・アドバイスの仕方
    ・ストレスの種類や対応
    ・キャリアの考え方

    ティーチング

    ティーチングとは、話し手が 知識・技術・意欲・考え方を新入社員に伝え、それにより新入社員は必要とされるスキル・スタンス を体得し、かつ業務遂行に向けての行動が強化されることです。そのため、ティーチングの結果として「部下の行動が強化されたか」に注目することが大切になります。

    指導をするというと、一方的に伝えるようなイメージを持ちやすいですが、相手の認識・理解があって初めて成り立ちます。ただ伝えればいいのではなく、相手が理解できるように伝えるということを意識して指導をしましょう。

    ティーチングについて詳しく知りたい方は、【具体例から学ぶ】部下育成のためのティーチングとコーチングの使い方をご覧ください。

    フィードバック

    フィードバックは、何らかの出来事に対して改善や強化を行うことができるため、日々の業務を成長に繋げていくことができます。新入社員へのフィードバックで大切なことは次の3つです。

    1)課題を明確に把握したうえで、フィードバックができたか
    2)新入社員の行動を(是正し)強化する為の指導方針を取れているか
    3)部下がフィードバック内容を納得し、行動するように伝えられるか

    新入社員はフィードバックについてネガティブなイメージを連想しがちです。「フィードバック」という言葉を聞くだけで、人間は不安や居心地の悪さを感じ、「闘争・逃走反応」といったストレス反応が起こることが、脳科学の分野でも証明されています。そのため、新入社員育成におけるフィードバックの考え方や効果的に行うためのポイントを理解しておくことが必要です。

    フィードバックについて詳しく知りたい方は、新入社員育成のカギ!フィードバックする時に知っておきたい5つのポイントをご覧ください。

    コーチング

    コーチングは、(上司から部下への)一方通行ではなく、双方向でのコミュニケーションから課題を見出し、解決していく手法です。そのため、新入社員の自律・自走を促すことに繋がります。
    一方的に答えを「与える」のではなく、相手(部下)から答えを「引き出す」機会を持ち、かつ行動に移させることが大切です。

    コーチングについて詳しく知りたい方は、【具体例から学ぶ】部下育成のためのティーチングとコーチングの使い方をご覧ください。

    アドバイスの仕方

    新入社員へアドバイスする際、2つのポイントを意識することが必要です。2つのポイントというのは、
    ① 指示ではなく新入社員の成長を願ったアドバイスであること
    ②アドバイスが新入社員にとってもメリットがあると感じられること です。

    2つのポイントを意識して新入社員へアドバイスを行えると、新入社員の成長を促すことに繋がります。
    新入社員へのアドバイスの仕方について詳しく知りたい方は、新入社員が受け止めるアドバイスとは?│アドバイスのフローまで解説をご覧ください。

    ストレスの種類や対応

    新入社員はさまざま要因からストレスを感じています。新入社員がどのようなことにストレスを感じ、それに対する対応策を知っていることでフォローしやすくなります。

    新入社員のストレスの元となる要因は、大きく次の4つです。

    1、環境の変化
    2、人間関係の変化
    3、仕事の疲れ
    4、周囲からの評価

    新入社員がストレスを感じている時の対応としては、次の3つを推奨します。

    1、新入社員が休める時間を作る
    2、ネガティブに感じていることを全部吐き出せる人や場所を作る
    3、ストレスの元となっている課題を解決する

    この内容についてより詳しい情報を知りたい方は、新入社員のストレス|4つの要因と改善方法を詳しく解説をご覧ください。

    キャリアの考え方

    新入社員からは、自分がやりたい仕事ではないことに対する悩み相談も受けることが多いです。その時に知っておいていただきたいキャリアの考え方を2つご紹介します。

    ●計画的偶発性理論
    予期せぬ出来事がキャリアをつくるということを理解して、意図的に行動してチャンスを増やし、何かしら出来事が起きたときは努力をすることでキャリアが築かれていくという考え方です。ジョン・D・クランボルツ氏によって1999年に発表されました。

    ●キャリア・ドリフト
    キャリアの大枠を決めたら、後は状況に流されてみることも必要という理論です。節目ごとにキャリアを見直し、それ以外は流れに身を任せて、流された場所で最大限の努力をしていくと次のキャリアに繋がっていくという考え方です。神戸大学 大学院経営学研究科 教授の金井壽宏氏が提唱したキャリア理論の一つになります。

    これらの考え方をブラザー・シスターが知っていることで、フォローの仕方が変わってくるでしょう。この考え方についてより詳しく知りたい方は若手社員によくある離職理由「やりたい仕事じゃない」のフォロー施策とは?をご覧ください。

    このように、ブラザーシスターが新入社員と良い関係を築き、フォローできる状態になるための育成機会を設けることが必要です

    6、定期的な制度の見直し・改善

    ブラザーシスターや、新入社員へにヒアリングして、定期的にブラザーシスター制度の見直しを行い、必要に応じて改善していきます。

    具体的に実施して行く中で、運用方法を設定した時には見えてこなかったことが出てくるため、それらを生かしてより良い制度にアップデートして行くことが必要です。

    7、目標の振り返り・改善

    目標を設定していたタイミングで、目標の振り返りと改善を行いましょう。目標と達成できたのか、できていないとしたら何が問題だったのかを振り返ることで、より良いブラザーシスター制度にアップデートして行くことが出来ます。

    ※ 新入社員の人数が多くて、いきなり社内全体への導入が難しい場合は、ブラザーシスター制度の必要性が高そうな部署やチームに声をかけて小さく始めてみましょう。その中で、改善点が見つかり、より制度を高くした状態で社内全体に導入することができます。
    また、ブラザーシスター制度を取り入れている部署やチームから、この制度は良さそうだという口コミが回ってくると、その制度に主体的になっていくことも期待できます。

    このような流れでブラザーシスター制度を導入することで、スムーズで良い効果を得られるようになります。アップデートし続ける意識を持って、自組織にあったブラザーシスター制度にしていきましょう。

    4)【事例】ブラザーシスター制度の導入で離職率を軽減

    アーティエンスでご支援させていただいている美容器具メーカー様が、退職率の改善にメンター制度を導入し、導入から3年後には退職者の割合が大幅に減ったという事例を4つのステップでお伝えします。

    【企業情報】
    業種:美容器具メーカー
    規模:300名程度

    1、現状の整理・課題

    採用では優秀層と言われる新入社員が入社するものの、現場のメンバーを見て幻滅し、3年~5年で退職してしまう、ということが起きていました。

    2、課題の深掘り

    クライアントの人事の方や経営陣と一緒に課題を見にいったところ、「孤独感」と「成長する機会」がポイントとなっていることが見えてきました。

    下記の図は、本質的な課題をクライアントと一緒に探す際に作成したものです。

    成長する機会がないことで、新入社員や若手が次々と退職していました。退職が続くと、組織が新入社員や若手社員の育成支援に力を入れても退職するから意味がないと思うようになり、新入社員や若手社員に成長する機会を与えようとしていませんでした。そして、組織全体として、新入社員や若手社員はどうせやめてしまうからという認識が浸透し、新入社員と若手社員はますます孤独になっていった、という状態でした。

    3、対策方法の検討・実行

    「孤独感」と「成長する機会」を解決するために次の2つの対策案を実施することにしました。

    1、孤独感をなくすために、先輩社員と成長できる機会をつくる→ブラザーシスター制度の導入
    2、成長する機会を創るために、成長している実感を持たせる機会をつくる→他社との合同研修

    対策 ポイント
    孤独感の解消 ブラザーシスター制度の導入 ・ブラザーシスター制度により、組織とのつながりを強化する
    ・ブラザーシスターが、OJT研修により育成マインドを醸成し、育成スキルを学ぶ
    ・人事がブラザーシスターとの月一の面談を行い、後方支援を行う
    ・ブラザーシスターになることをステータスとする
    成長する機会 階層別研修
    (メンター制度)
    ・定期的な研修実施をすることで、成長実感・予感を促す
    ・他社との合同研修により、自己認知を広げ、成長実感と成長意欲を上げる
    ・スキル・人としての成長の両側面にアプローチする

    ブラザーシスター制度の一環として、月1回ランチ会を会社持ちで実施したり、ペアによっては週1程度1on1を30分程度設けること行いました。

    4、結果と振り返り

    ブラザーシスター制度を導入し、他社との合同研修を行うようになってから3年後には、新入社員・若手社員の退職割合が大幅に減少し、自組織にいることに誇りを持って仕事をできるようになりました。

    特に、ブラザーシスターとして新入社員の悩みを聞いたり、フォローしてくれる人をつくったことで、孤独感が解消され、退職を選ぶのではなく、まだこの会社で頑張ってみようと思えるようになった、という方が多くいました。

    このように、新入社員にとってブラザーシスターの存在は大きく、ブラザーシスター制度の導入によって退職者の削減にも効果を生み出すことができます。

    5)まとめ〜アーティエンスはブラザーシスターへの育成指導研修をサポート〜

    本記事ではブラザーシスター制度の効果と難しいところを提示し、その上で導入を進めたい組織ができる限りトラブルを抑えられるようにするための導入マニュアルをお伝えしました。

    ブラザーシスター制度には主に4つの効果があります。

    ・早期離職の防止
    ・成長促進
    ・エンゲージメント向上
    ・先輩社員の育成スキル向上

    ただ、ブラザーシスター制度には、メリットだけではなく難しいところもあります。特に難しさを感じるのは次の3点です。

    ・ブラザーシスターと新入社員との相性
    ・ブラザーシスターへの業務負荷
    ・ブラザー・シスター側の指導スキル

    これらが起きることを理解し、組織として適切なフォローを行うことが必要です。
    ブラザーシスター制度を導入するまでの全体の流れとしては以下の通りになります。

    1、ブラザーシスター制度を導入する目的・目標を設定
    2、最低限の運用ルールを設定
    3、ブラザーシスターの選出・ペアリング
    4、社内アナウンス
    5、ブラザーシスターの育成
    6、定期的な制度の見直し・改善
    7、目標の振り返り・改善

    このような流れでブラザーシスター制度を導入することで、スムーズで良い効果を得られるようになります。アップデートし続ける意識を持って、自組織にあったブラザーシスター制度にしていきましょう。

    なお、アーティエンスでは、ブラザー・シスターへの育成サポートとして、育成担当者・OJTトレーナー研修を実施しています。
    当社の研修は、ブラザー・シスターからの一方通行な指導ではなく、新入社員の主体性と当事者意識を引き上げ、最終的に新入社員の自律自走を促していけるような育成スキルをお伝えしています。

    当社の育成担当者・OJTトレーナー研修について、詳しい情報を知りたいという方は、お気軽にご連絡ください

    ブラザーシスター制度をうまく活用して新入社員に抱いている課題を解決できるようにしましょう。

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