ファシリテーターの役割とは?|【プロセス別】役割達成のためにできること

更新日:

作成日:2023.3.10

 会話をしているビジネスマンたち  「ファシリテーターの役割とは?」
「ファシリテーターの役割は、会議の場面で変わる?」

このような意識を持って、本コラムにたどり着いたのではないでしょうか。

弊社では、ファシリテーターの役割とは「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人であると考えています。

一般的には「会議を進行する人=ファシリテーター」という認識も多いですが、専門家としては、間違いではないが、正しいとは言い切れないと思っています。

本コラムでは上記で述べた「ファシリテーターの役割」について専門家目線で詳しく説明していきます。

最後までお読みいただくと、ファシリテーターの役割の理解が深まり、ファシリテーターとして、自信はどのような役割を行えば良いかが見えてくるでしょう。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

1)ファシリテーターの役割は「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人

アーティエンスでは、ファシリテーターの役割を「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人と定義しています。

【参考コラム】ファシリテーターとは?何をする人?重要性やメリット・必要なスキルを詳しく解説

一般的に言われている「会議の進行を円滑にすすめ、目的を達成できるよう、中立的な立場から働きかける役割を担う人」では物足りないと思っています。

なぜなら、ファシリテーターに期待されることは、「場の目的・目標を、力強く達成するための働きかけ」だからです。ファシリテーターは、導いたり指導することはありません。一方で、「自分たちで考えてね」と進行役を務めるだけでもありません。参加者と困難を共にし、乗り越えていく存在である必要があります。

例えば、「会議の進行を円滑にすすめ、目的を達成できるよう、中立的な立場から働き掛ける役割を担う人」の場合だと、会議において、特に問題もなく、意思決定がされて実施されるということを想像されると思います。「会議の場ではスムーズに進み、特に問題もなく、意思決定がされ、時間通り終わる」という状況が想像できるでしょう。ただし、このケースでは、現場に戻ってから、実行が弱くなる場合があります。それは、会議の場で反対意見やネガティブな感情が出ないまま終わっているケースがあるためです。

「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人の場合は、時には参加者同士がぶつかりながらも、チームとしての強さを高め、現場での実行レベルが高まっていくでしょう。  

2)役割を全うするためにファシリテーターに求められること

ファシリテーターが役割を全うするために求められることが2つあります。

①会議やワークショップの場を安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在
②「会議やワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性とコミット」を最大限高める働きかけ

それぞれ詳しく説明していきます。

会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在

ファシリテーターが役割を全うするためには、会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在である必要があります。

なぜなら、ファシリテーターに対して強い不信感があったり、それが続いた状態だと、議論・対話の場をホールドすることはできません。また、ファシリテーターが目立ってしまうと、本来「促進者」という立場であるファシリテーターが、主役になってしまい、参加者は受け身になってしまいます。

具体例として、「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在」と、「会議・ワークショップの場で、目立たない存在」の良い例と悪い例をお伝えします。

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在」の良い例

・穏やかで、この人には何を話しても受け止めてもらえるという安心感がある
・参加者がやる気がなくても、否定などしない
・ファシリテーターに対して参加者が反発しても、慌てずに受け止める
・参加者同士が衝突しても、慌てずに受け止める
・誰かの味方をするなどがなく、中立的にふるまう

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在」の悪い例

・落ち着きがなく、自分の考えている通りに進めたいという姿勢が見える
・参加者にやる気がないと、無理やりモチベーションをあげようとしたり必要以上に共感する
・ファシリテーターに対して参加者が反発した際に、論破しようとする
・参加者同士が衝突しても、慌ててしまったり、強引に仲裁しようとする
・上位役職者や声の大きい人の見方になる

「会議・ワークショップの場で、目立たない存在」の良い例

・参加者が議論・対話の中心になっている
・必要以上に、会議・ワークショップの場に介入しない
・問いを投げ、参加者の探求・内省を深める
・教えるということはなく、一意見として情報提供をする
・場に出てきたものを提示するのみに留める

「会議・ワークショップの場で、目立たない存在」の悪い例

・参加者が議論や対話にフィードバックしたり、自身が議論・対話の中心になる
・細かく会議やワークショップの場に介入し、指示が多い
・自身の答えに持っていくような問いを投げる
・教える
・場に出てきたものを提示し、自身の考えを決めつけて伝える

このように、ファシリテーターの役割として、会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在である必要があります。

「会議やワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性とコミット」を最大限高める働きかけ

ファシリテーターの役割として、「会議やワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性とコミット」を最大限高める働きかけを行う必要があります。

なぜなら、会議・ワークショップには目的・目標があり、それを達成することが必要です。そして、参加者の関係性とコミットが高くなっていかなければ、目的・目標の達成は難しいでしょう。仮に一部の人のみで達成した場合は、チーム力・組織力は高まらず、一部の人に依存したチームになっていくでしょう。

具体例として、「会議・ワークショップの目的・目標の達成」と、「参加者の関係性・コミットを最大限高める」の良い例と悪い例をお伝えします。

「会議・ワークショップの目的・目標の達成」の良い例

・会議やワークショップの目的・目標の達成に向けた場のデザイン(企画・準備など)ができている
・会議やワークショップの目的・目標を、参加者に対して明確に提示できている
・会議やワークショップの目的・目標の達成のための介入(問いなど)ができている
・必要に応じて、会議やワークショップの目的・目標をアップデートできる
・会議やワークショップ後にも、目的・目標の達成のためのフォローができる。企画者にフォローの方法などを提示できる

「会議・ワークショップの目的・目標の達成」の悪い例

・会議やワークショップの目的・目標の達成に向けた場のデザイン(企画・準備など)ができていない
・会議やワークショップの目的・目標の達成を、提示できていない。もしくは参加者が理解できていない
・会議やワークショップの目的・目標の達成のための介入(問いなど)ができない。もしくは無駄な介入がある
・会議やワークショップの目的・目標をアップデートする必要があっても、始めに創ったものに対して固執する
・会議やワークショップ後にも、目的・目標の達成のためのフォローをしない

「参加者の関係性・コミットを最大限高める」の良い例

・参加者の関係の質を注意を払い、高める働きかけをする
・参加者の当事者意識・主体性を解放する
・参加者が勇気をもって、オープンに話せる
・参加者が自分たちで決める状況を創る
・参加者の相互作用によって、コミットを高める

「参加者の関係性・コミットを最大限高める」の悪い例

・参加者の関係の質に注意を払わない
・参加者が受け身になる指示命令が多い
・参加者が迎合・忖度の発言になる ・答えを提示し、押し付ける
・参加者がやらされ感を持つ。もしくは一部の人のみがやる気になっている

ファシリテーターの役割として、「会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミットを最大限高める」働きかけを行う必要があります。

3)【プロセス別】ファシリテーターが役割を達成するためにできること

「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人という役割を達成していくために、会議やワークショップの5つのプロセスにおいて、どのようなことをすべきかを説明します。

【会議・ワークショップの5つのプロセス】
・共有
・発散
・混沌
・収束
・決定(共有)

会議・ワークショップの5つのプロセスと、下記2つのポイントをもとに、それぞれ説明していきます。

①会議やワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在
②「会議やワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット」を最大限高める働きかけ

(参考) 会議・ワークショップの5つプロセスに関して

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※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「共有」でファシリテーターができること

「共有」でのファシリテーターの役割 ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」として

ファシリテーターとしての役割を簡単に伝えます。参加者は、どのような立ち位置になるかを知ることができ、一定レベルの安心感を与えることが可能です。

例えば、「中立的な役割であり、本日の目的・目標を達成するための議論・対話を深めていくためのお手伝いをします」などの役割を事前に伝えておくといいでしょう。その時、簡単な自己紹介もしましょう。権威付けは必要ありません。名前と自身がなぜここにいるのかを、伝える程度に留めましょう。

「共有」でのファシリテーターの役割の一つ目として、「会議やワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」としての土台を創っていきます。

「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」として

「会議・ワークショップの目的・目標の提示」と、「参加者の関係性を(少しでも)高めていくこと」を行います。

まずは、会議・ワークショップの目的・目標を伝えていきます。参加者は、会議・ワークショップの場の目的・目標を知ることが可能です。会議・ワークショップのデザインによっては、目的・目標を先に伝えておくこともよいでしょう。

例えば、スクリーンがあるのであれば、目的・目標を見せて説明します。スクリーンがなければ、ホワイトボードに書いたり、配布資料などを渡すのもいいでしょう。目的・目標を言語化し、しっかり提示することが必要です。

次に、「参加者の関係性を(少しでも)高めていく」ための働きかけを行います。関係性を高めていくと、その後の議論・対話の質が上がっていきます。

関係の質を上げていく方法として、多くの方法がありますが、当社ではチェックインというものをおすすめしています。

チェックインでは、一人一言、自分の話したいことを話します。一言話すことで、お互いの背景が分かります。相手への理解も深まり、関係の質が上がる効果があります。

例えば、「体調がすぐれない」という発言をした方がいたら、他の参加者はフォローしようという考えが生まれるかもしれません。チェックインを行わずその状況が共有されていなければ、会議やワークショップ中に顔をしかめた場面で「体調が悪い人」という認知ではなく、「機嫌の悪い人」という認知になり、関係性が悪くなるかもしれません。このようにチェックインは、とてもパワフルなものです。

ただし、チェックインには注意点があります。話すテーマを決めたり順番を決めると、参加者が受け身になったり、オープンにならない場合があります。話すテーマや順番を決めると、その場の枠組みが決まり、ファシリテーターの指示のもと参加するという意味付けが強くなります。
ファシリテーターの指示の強さを参加者が感じると、ファシリテーターの答えを探すようになります。

そのためチェックインは、自由度が高く実施するほうが場創りに関しては望ましいです。チェックインに時間がかかりすぎるケースも出てくるので、当社ではチェックインの前に下記ルールを説明して、実施します。  チェックイン ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

なお参考として、下記コラムではチェックインも含めて、アイスブレイクをいくつかご紹介していますので、こちらもご確認ください。
【効果的なアイスブレイク9選】質の高いファシリテーションの始め方

「共有」でのファシリテーターの役割の二つ目は「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」としての一歩として、「会議やワークショップの目的・目標」を、参加者は知ることができ、関係の質も(少しでも)上げていく働きかけをします。

「発散」でファシリテーターができること

「発散」でのファシリテーターの役割 ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」として

「何を話してもいい」という安心感を伴った話しやすい雰囲気を創り、「ファシリテーターがコントロールしているのではなく、参加者が自発的に話す場」を創ります。

まずは、「何を話してもいい」という安心感を伴った話しやすい雰囲気を創っていきます。そうすると、いつもより少し踏み込んだ話なども出てきますし、言いづらいことを勇気を持って伝える方も出てくるでしょう。

ファシリテーターからは、正解・不正解がないということを伝えていくといいでしょう。OARR(※)というファシリテーションのフレームワークのルールにおいて、「率直に伝える」などの記載を行うのもいいでしょう。

(参考)OARRとは
OARRを使うことで、会議やワークショップの場の質が上がります。会議やワークショップを行う際、目的や進め方などをOARRに沿って言語化していくことで、参加者の意識が統一されます。

「OARR(オール)」とは、デイビッド・シベッツ氏が提唱した「会議やワークショップをスムーズに進める」ためのフレームワークで、ファシリテーションする際には必ず知っておいてほしいフレームワークであり、テクニックです。

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※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

次に「ファシリテーターがコントロールしているのではなく、参加者が自発的に話す場」としての働きかけを行います。指名をしたり、指示をしすぎると、受け身になり、やらされ感が出ます。

例えば「○○さんから話してください」と言うと、その時点で受け身の姿勢が強くなります。そのため「本日、一番朝早く起きた人から、口火を切ってもらいましょうか」という働きかけにすると、ファシリテーターが意図して指名したと、参加者は受けとめません。

「発散」でのファシリテーターの役割の一つ目として、「何を話してもいい」という安心感を伴った話やすい雰囲気を創り、「ファシリテーターがコントロールしているのではなく、参加者が自発的に話す場」を創っていきます。

「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」として

「参加者の共通の想いを創っていくこと」と、「会議・ワークショップの目的・目標のためにさまざまなアイディアを出すこと」を行います。

まずは、目的・目標に沿って、参加者の共通の想いを創っていきます。これを、共有ビジョンという言い方をします。自分たちが、この会議・ワークショップの目的・目標に対して、最高のゴールは何かということを探求し、参加者で創っていきます。一部の人がビジョンを落とすのではなく、参加者で創っていくということが重要です。最高のゴールという表現が苦手な方もいるので、最高の状態という表現を使うこともあります。

例えば、ファシリテーターから「みなさんが、このプロジェクトが終わった後に、どうなっていたら最高だと言えますか?一旦制約条件は無くしてみましょう」などと伝えてもいいでしょう。

最高のゴールや状態ができれば、最高のゴールを達成するために、そして会議・ワークショップの目的・目標のためにさまざまなアイディアを出していきます。

「発散」でのファシリテーターの役割の二つ目では、「何を話してもいい」という安心感を伴った話やすい雰囲気を創り、「ファシリテーターがコントロールしているのではなく、参加者が自発的に話す場」にするための働きかけを行います。

「混沌」でファシリテーターができること

 「混沌」でのファシリテーターの役割 ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」として

「衝突や対立などが起きても落ち着いていること」と、「答えを提示せず探求を促す」存在である必要があります。

まずは、混沌では、対立関係が浮き彫りになり、衝突が起きたり、また時にはファシリテーターに対して攻撃的になることもありますが、この時にフラットに対応することが必要です。ここで動揺したり、ファシリテーターがどちらかに肩入れをしたりすると、参加者からの信用はなくなります。あくまでも冷静に中立的な立場で対応していく必要があります。

対立と衝突が起きたときは、背景を紐解きながら、事実と感情などを紐解いていくといいでしょう。また、ファシリテーターに対して攻撃的になった場合は、まずは受けとめることが重要です。その後は、そのことに関して、ぜひ他の参加者にも聞いてみるといいでしょう。そうすると、彼らの認知が見えてくる場合があります。

例えば、筆者が経験した事例ですが、ある一部上場企業のリーダーシップ開発のプロジェクトでの話をお伝えします。「こんな研修、意味がない」とファシリテーターである私に攻撃をしてきた参加者がいました。そのあと、私から「みなさんはどうですか?」と聞いたところ、他の参加者も「あなたに言われたからやっているんだ」などという発言が出てきました。ただし、しばらくすると、一人の方からは、「(参加者の意見に対して)私は、ずっと違和感があった。私がこの会社でしたいことは、もっと世の中の役に立つ製品を創りたい」という発言をしました。その時点で、場が静まり返り、その後のワークショップでは、みなさんの取り組み姿勢や、発言内容は大きく変わっていきました。

このように攻撃された場合や、衝突があったときでも、ファシリテーターは落ち着いて対応していく必要があります。

(参考) 対立や衝突があった時こそチャンス
対立や衝突があった時こそチャンスです。そのチームや組織の状況が明確に分かり、より根本的な対応が可能になるためです。それが、組織の変革や人の変容に繋がり、とても価値の高い組織開発・人材開発が行われていると言っていいでしょう。

対立や衝突を可能な限り避けようとするファシリテーターは、半人前と言ってもいいでしょう。

次に「答えを提示せず探求を促す」ための働きかけを行います。参加者が、自分たちで考え抜いて出した施策に関しては、チームの結束力もコミットが高まります。

具体的には、問いを投げたり、他社事例や学術的な内容を渡すといいでしょう。そのことで探求する・考えるための材料を得ることが可能です。

「混沌」でのファシリテーターの役割の一つ目として、「衝突や対立などが起きても落ち着いていること」と、「答えを提示せず探求を促す」存在である必要があります。

「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」として

「対立・衝突を言語化や可視化する」と、「会議・ワークショップの目的・目標を再提示し、全体最適を促す」ことを行います。まずは、「対立・衝突を言語化や可視化」していきます。対立・衝突を言語化・可視化することで、共通の認識になります。

例えば、下記のような図を使って、自部署や他部署がどの場所にいるのかを、伝えてもらうといいでしょう。(今回は例として、営業部と開発部にしています。) 自部署や他部署がどの場所にいるのか このように自分たちの認知を可視化することで、「なぜその場所なのか?」という対話が可能になります。

次に「会議・ワークショップの目的・目標を再提示し、全体最適を促す」ことが必要です。あくまでも、会議・ワークショップは、目的・目標を達成するための場だからです。

そのために、全体最適を促していくことで、チームの一体感とコミットを高めます。ただし、全体最適のために犠牲になる部署・チームや人も出てくるでしょう。その時に必要なのが、「犠牲になった部署・チームや人が誰なのか?」ということを全体で認知することです。そのことにより、全体で適切なフォローが可能になります。

「混沌」でのファシリテーターの役割の二つ目では、「対立・衝突を言語化や可視化する」と、「会議・ワークショップの目的・目標を再提示し、全体最適を促す」ための働きかけを行います。

「収束」でファシリテーターができること

 「収束」でのファシリテーターの役割 ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」として

「参加者の一体感を促し、自分たちで考えること」を促す存在である必要があります。混沌を乗り越えたことにより、より生成的なアイディアが生まれてきます。誰が創ったというのではなく、私たちが創ったという意識を皆で持っていくといいでしょう。

その考えをもとに、参加者自身で状況や施策を整理し、適応解(やってみる価値のある施策)を決めていきます。必要に応じて、評価をする際のマトリックスの軸の提示などはしてもいいでしょう。

「収束」でのファシリテーターの役割の一つ目として、「参加者の一体感を促し、自分たちで考えること」を促す存在である必要があります。

「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」として

「ロジックと情熱があるか」を確認します。ロジックだけでは絵に描いた餅になりますし、情熱だけでは実現可能性の低い施策になってしまいます。「さらに考える点はないか?抜け漏れはないか?」と確認したり、「○○部署はどう感じているか?現場はついてくるか?」などと問いかけるといいでしょう。

「収束」でのファシリテーターの役割の二つ目では、「ロジックと情熱があるか」を確認するための働きかけを行います。

「決定(共有)」でファシリテーターができること

 「決定(共有)」でのファシリテーターの役割 ※ 当社、ファシリテーター研修資料より一部抜粋

「会議・ワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在」として

「最後まで落ち着いていてフラット」な存在である必要があります。あくまで「『場の目的・目標を達成するために参加者が高いコミットを持つこと』を促す共創・協働を行う人」という立場を忘れずに、対応します。

最後に、変に盛り上げたり、自身の意見や考えを強くぶつけると、ファシリテーターが主役になり、場が台無しになります。無理やり拍手させたり、ファシリテーター自身のメッセージを強く打ち出したりなどです。

「決定(共有)」でのファシリテーターの役割の一つ目として、「最後まで落ち着いていてフラット」な存在である必要があります。

(参考)会議・ワークショップのクロージングの仕方
「チェックアウト」として、一人一言感想を言って終わりにするといいでしょう。「チェックイン」で始まっていれば、「チェックアウト」も自然にできます。ファシリテーターもチェックアウトに参加し、「『場の目的・目標を達成するために参加者が高いコミットを持つこと』を促す共創・協働を行う人」という立場で、一言感想を伝えるのは問題ありません。

なお、研修の場合は、講師からの一言が必要な場合が多いので、その時は参加者(受講者)の行動変容が少しでも加速されるメッセージを伝えていきましょう。

「『会議・ワークショップの目的・目標の達成と、参加者の関係性・コミット』を最大限高める働きかけ」として

最後に、再度「その意思決定は、目的・目標が達成できたか」と、「本当にコミットできたか」を確認します。この二つを確認しないと、せっかく考えた施策が現場で実行されなかったり、中途半端な対応になります。

具体的に、「その意思決定は、本当に目的・目標を達成できますか?」、「今回の施策に関して、みなさんのコミット度合いは、点数で表すと10点中何点ですか?その理由は?」などと聴くといいでしょう。

「決定(共有)」でのファシリテーターの役割の二つ目では、「その意思決定は、目的・目標が達成できたか」と、「本当にコミットできたか」を確認するための働きかけを行います。

4)まとめ

ファシリテーターの役割とは「参加者が目的・目標を達成するために、参加者のコミットが高まる場」を創る人です。

そのためには、ファシリテーターに求められることは、下記の二つです。

・会議やワークショップの場を、安心して預けられる存在でありながら、目立たない存在
・「会議やワークショップの目的・目標と、参加者同士の関係性とコミット」を最大限高める働きかけ

この考えをもとに、ファシリテーションのプロセス時(共有~決定まで)で求められることを実施していただければと思います。

本コラムを読んで、あなたがファシリテーターの役割を全うしていただければ嬉しく思います。

アーティエンスでは、ファシリテーション研修も実施しているので、ご興味がある方はぜひご連絡ください。