新入社員教育のコスト削減をしたい!という時に検討すべき5つの観点

更新日:

作成日:2023.7.6

新入社員教育 コスト削減

「新入社員の教育をしっかり行いながらも、コストを削減するにはどうしたらいいのだろう…」

このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

産労総合研究所の「2022年度(第46回)教育研修費用の実態調査」によると、従業員1人あたりの教育研修費用について、2021年度の予算額は40,896円だったのに対し、実績額は29,904円となっています。この結果から、教育にコストをかけたいと思っても、事情によって削減が求められてしまう、という現実がわかります。
上記は組織全体の金額ですが、新入社員の教育についても、さまざま事情からコスト削減を求められることも多いでしょう。

そこで本コラムでは、新入社員の教育の質を維持しながらもコストを削減するためのポイントをお伝えします。ただコストを下げることを目的とするのではなく、新入社員の教育の質を担保した上でどのような工夫ができるのかについて、ヒントを得ることができるでしょう。

監修者プロフィール

近藤 ゆみ

アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。



新入社員研修成功事例集

1)新入社員教育のコスト削減で検討すべき5つの観点

新入社員教育のコスト削減で検討すべき観点は以下の5点です。

・研修の実施方法(内製or外注)
・研修の実施形式(講師派遣型or公開講座)
・OJTトレーナー向けの教育
・オンボーディングの充実さ

・定期的且つタイムリーなフォロー

順番に説明します。

研修の実施方法(内製or外注)

まず検討すべきは、新入社員研修を内製で行うか、研修会社などで外注するかという観点です。それぞれについて品質面とコスト面でのメリットとデメリットを表にまとめました。
一般的に内製化の方がコスト削減できますが、社内で全て準備・運営を行うため、人事や社内講師などの人的コストが多く発生します。

内製 外注
品質面でのメリット ・自組織にあわせた内容で実施できる ・高い指導力が保証されており、外部の視点や専門知識を得られる
品質面でのデメリット ・外部の視点が加わらず、時代とそぐわなかったり、視野が狭くなる場合がある
・社内講師の場合、講師のレベルに差が出る
・研修内容が社風とマッチするかわからない
コスト面でのメリット ・人件費・会議室代・交通費・備品などから必要なものしかかからない ・人事の時間を削減し、他の業務に時間(=給与)を使用できる
コスト面でのデメリット ・追加の金額は必要ないが、人事が研修準備のために必要な時間(=給与)が必要 ・研修費が必要

コスト削減の観点でおすすめなのは、社会人基礎スキルは外注で実施し、組織風土・ビジョンの浸透、独自性の強いスキル・知識の習得は、内製で実施するというやり方です。

内製・外注ぞれぞれのメリット・デメリットを考慮し、2つを組み合わせることで、不要なコストの削減につながります。

研修の実施形式(講師派遣型or公開講座)

研修の実施形式は、1社に対して行う講師派遣型と複数社の新入社員が合同で行う公開講座の大きく2つの分類されます。それぞれについて品質面とコスト面でのメリットとデメリットを表にまとめました。

講師派遣型
公開講座
品質面でのメリット ・公開講座の内容に加えて、自組織に合ったカスタマイズが可能 ・学ぶ内容に抜け漏れがない
・厳しい内容を伝えても、会社へのダメージが弱い
品質面でのデメリット 特になし 基本、カスタマイズ不可
コスト面でのメリット ・新入社員の人数が多い組織だと割安になることがある
(1日10万~100万円程度)
・講師派遣型よりコストを抑えられる
(1人1日無料~5万円程度)
コスト面でのデメリット ・公開講座よりも割高になることが多い ・新入社員の人数が多い組織では、講師派遣型と同額程度になることもある

組織の規模や品質として求めるものによって、適切な研修の実施形式は異なります。自組織の研修の実施形式が、適切な選択になっているか確認することでコストの削減につながります。

OJTトレーナー向けの教育

OJTトレーナーの質も新入社員の教育コストに大きく関わっています
OJTトレーナーに育成スキルがあると、新入社員の教育を適切に行うことができ、指導が伝わっていなかったことによるやり直しを防ぎ、新入社員の自立を促すことができるためです。新入社員が早く自立できるようになると、自然とOJTトレーナーが自分の仕事に使う時間を確保できるようになります。その結果、OJTトレーナーは成果を高めやすくなり、OJTトレーナーの時間(=給与)をより利益を産むために使うことができるようになります。

OJTトレーナーが育成のスキルを高めて、新入社員の育成の質を高められると、OJTトレーナーはその分自分の仕事ができるためコストの削減につながります。

オンボーディングの充実さ

オンボーディング(※)を充実させることも、新入社員教育のコスト削減に影響します。

※オンボーディング:新入社員の受け入れ~定着・即戦力化のプロセスのことを指します。

組織に対する安心感や信頼感を持ちながら仕事をできる環境を作れないと、不安や緊張の感情が大きくなり、退職を考えてしまうためです。
新入社員は、1人で仕事を進めることは難しく、必ず誰かの助けが必要になるためです。安心して相談できる人や、挑戦してもフォローしてくれると思える先輩がいないと、行動しづらくなり、仕事が進まないという状況になってしまいます。その結果、今の職場は自分には合わないという考えに至り、退職を決めてしまうという可能性もあります。

そのため、オンボーディングを充実させて組織との関係性がうまく築くことができると、新入社員の仕事のスピードや成長を促し、退職を防止できるため、コスト削減につながります。

定期的且つタイムリーなフォロー

新入社員の状態を定期的に把握し、タイムリーにフォローできると、新入社員教育のコスト削減につながります。
フォローのタイミングが遅くなり、気がついた時には新入社員は退職の意思を固めていると、今までの育成コストが無駄になってしまうためです。新入社員の退職は、コストに大きく関わるため、できる限り抑えられる方が、コスト削減につながります。

新入社員を定期的にフォローするための具体的な施策については、次章で事例とあわせて詳しく解説していきます。

2)新入社員教育のコスト削減をしながらも成功した事例 

当社のお客様(IT系企業・新入社員25名程)で、新入社員教育の品質を維持しながらもコスト削減につながった事例をご紹介します。

本お客様では、新入社員の多くが配属後は「客先常駐型」且つテレワーク中心となり、人事側からはなかなか新入社員の様子が見えにくい状況にありました。そこで、新入社員の定期的な状況把握とフォローのために、当社のGrowthというサーベイツールを導入いただくことになりました。4月・7月・10月と定期的に当社新入社員研修を実施しつつ、月に1回のGrowthサーベイで新入社員の状態を見て、必要に応じてフォローを行っています。

※当社の新入社員研修をご導入いただくと、1年間無料でご利用いただけます。

パルスサーベイGrowthとは
若手・新入社員に必要とされるセルフマネジメント力の醸成とリーダーシップ発揮の意識醸成を目的とした、月1回の振り返りツールです。

パルスサーベイGrowthでは、当事者意識を育む設問のため、サーベイ回答により自身と自組織を統合して考えていきます。そして、自組織でのやりたいことを育んでいきます。また組織側も、出てきた結果を探求し意味づけすることで、自社の傾向分析・育成企画につなげ、組織としてやりたいことにつなげていきます。

パルスサーベイGrowthに関する詳細はこちら

以前あった出来事です。配属から1か月ほど経ったタイミングで、新入社員の一人のGrowthにて「誰にも相談できなくて精神的にも辛い」といったコメントが確認できました。

コメント発見後すぐに、現場上長へ報告し、上長が新入社員・トレーナーそれぞれと1on1ミーティングを実施し、状況把握・改善を行うことができました。
その結果、翌月のGrowthコメントでは「トレーナーだけじゃなく、斜め上の先輩にも頼りながら業務を進めていきたい」といったコメントがあり、新入社員のモチベーションが持ち直ったと伺っています。

このように、Growthを活用することで、新入社員の状況変化にタイムリーに気付き、素早く適切にフォローを実施したことで、離職率も前年度から大きく改善が見られました。
離職者を出さずに新入社員を大切に育成することで、やがて活躍をしてくれるようになるため、Growthの無料活用が、大きなコスト削減になっていると感じていらっしゃるようです。

3)新入社員教育コストの費用対効果を高めるためのポイント

新入社員教育コストの費用対効果を高めるためのポイントをご紹介します。

時代の流れや環境変化に適応した教育内容を実施する

研修内容やOJTでの教育方針が、時代や環境の変化に適応しているか否かは、費用対効果を高めるためのポイントです。時代遅れのことをしていても、意味はありません。

例えば、最近の新入社員の傾向として、フィードバックに対して嫌なものという認識をしている方が多いです。そのため、当社では2023年度からフィードバックの受け止め方についてもお伝えしました。(脳科学においても、フィードバックという言葉を聞いただけで、嫌悪感が出るという結果が出ています。)

他にも以下のような内容は時代によって変わりやすい内容です。

・新入社員の傾向
・マナー
・働き方、それに応じた連絡ツールなどの取り扱い方
・コンプライアンス

新入社員教育の目的やゴールを事前にすり合わせる

外部で研修を委託する場合や、現場でOJTトレーナーに育成を任せる際は、新入社員育成の目的を伝えて、研修後や配属1年後などのゴールを丁寧にすり合わせましょう。

当社でも、研修を行う際は、目的と現状を丁寧に確認するところから始めています。お話を聞いて、より効果のありそうな研修内容を紹介することもありますし、コンテンツの内容を調整することもあります。
研修会社や講師は、新入社員にとって、そして組織にとってより良い学びを提供することを大切にしている人が多いため、ぜひ積極的に巻き込んでいきましょう。

新入社員研修後はリマインドやフォローを丁寧に行う

研修後に研修で学んだことを定着させるためのリマインドを行うことも、教育の費用対効果を高めるポイントです。人は、思い出すことをしないと忘れていってしまうためです。

人の忘却のメカニズムの研究として、「1日後には34%、1か月後には21%しか記憶した内容を覚えていない」という研究結果(Ebing Housの忘却曲線)があります。 エビングハウスの忘却曲線
画像参照:エビングハウスの忘却曲線


この実験は無意味な単語を覚え、その後の記憶の定着率を表した実験結果のため、意味のある内容にはそのまま適応できませんが、1日経てばかなりの部分を忘れてしまうことは確かでしょう。 教育での学びを記憶に留めるだけでなく、認知・行動変容へと繋げていくには、定期的なリマインドは不可欠です。 具体的なリマインド例を紹介します。

時期 実施内容 補足
直後 振り返りシートの記載 自分の言葉で学んだことを言語化することで記憶に定着させます
1週間後 人事から内定者に対して、学びの概要や資料の一部を共有する 少し目に入るだけでも、リマインド効果はあると言われています
2週間後~ バトンメール®を開始し、内定者同士で交流や刺激をし合う 他者の意見を聞くことで、視野が広がります

バトンメール®︎とは
バトンメール®︎とは当社が開発したツールで、バトンのように特定のグループの中でメールを回し、受講生同士でリフレクションし合います。(グループチャット等でも実施可能です)

【バトンメール®の具体的な進め方】
1. 新入社員に対して「本を読んでの気付き・発見・モヤモヤ」などを共有し合うための“問い”を考え、メール文言を作成します。
2. 新入社員をグループ(4~6人)に分けます。
3. 各グループのなかで1名指定し、その方からバトンメール®をスタートします。
4. メールを作成し、グループメンバー全員にメールを送ります。
5. メールの文末に、次にメールを送ってほしい人を指名します。
6. 指名された人は、次の1週間内にメールを作成し、グループメンバー全員に送ります。
7. メールの文末に、次にメールを送ってほしい人を指名します。
※ 6~7を繰り返します。

【バトンメール®を実施する際のポイント】
・文頭でアイスブレイクを入れる
・メールの順番は新入社員に任せる
・人事もCCに入れ、メール送付が遅れている場合は声掛けをする
・終了時期を決める

OJTトレーナーの育成スキル習得をサポートする

OJTトレーナーに育成スキルを身につけてもらうことも、長期的に見ると費用対効果を高めることにつながります。新入社員に対するOJTでの教育がうまく機能していない場合は、OJTトレーナーの育成スキルを高めることで解決できることもあるためです。

なんとなくのやり方でOJTを行うと、人によっての個人差も大きくなりますし、自分の育成方法が正しいのかの確認ができず不安な思いを抱えるOJTトレーナーもいます。
当社のOJTトレーナー研修では、新入社員の教育に必要な育成計画、ティーチング、フィードバック、コーチングを、ケーススタディを通して学びます。
新入社員に対するOJTでの教育がうまく機能していない場合は、OJTトレーナーの育成スキルを高めることで解決できることもあるため、検討してみましょう。

今以上のコスト削減が難しいという場合は、ぜひ今の教育の質を高める、という意識を持って改善ポイントを見つけてみましょう。

4)まとめ

本記事では、新入社員の教育の質を維持しながらもコストを削減するためのポイントをお伝えしました。自社でも実施できそうな取り組みがありましたら、ぜひ取り組んでみて下さい。

冒頭でも触れましたが、人材育成は、組織が成長していくための投資であり、むやみやたらなコスト削減は組織の成長を阻んでしまう可能性もあります。コスト削減しなからも、育成の質を高める、という意識で取り組んでいただければ幸いです。

また、新入社員の教育をしっかり行いたいのにコストが限られている…という場合も、ぜひ一度お問い合わせください。限られた中でベストな選択ができるように、一緒に考えましょう。

研修でお悩みの方へ

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