管理職研修で現場が動かない…を解消する!研修設計と運営のコツ

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管理職研修をやっても、現場が変わらない…」
「研修後しばらくすると、結局いつも通りに戻ってしまう…」

そんな悩みを感じていませんか?

人事としては組織をよくしたい思いがあっても、管理職の意識が動かない、行動が変わらない──。この壁の前で足が止まってしまう方は少なくありません。

でも実は、管理職研修は “やり方次第で” 組織の流れを大きく変えられる施策です。
単なるスキル学習ではなく、管理職の認知・行動・関係性を動かすことができれば、離職低下、新サービス創出、組織風土づくりにまでつながります

本コラムでは、管理職研修を「意味があるもの」に変える方法を、以下のポイントで分かりやすく解説します。

・成果につながる管理職研修とは何か
・効果を最大化する企画と実施の進め方
・管理職研修の種類や費用感
・よくある質問への具体的な回答

実際に本コラムの内容で設計した企業では、ストレス改善と新サービス成功を生む変化が起きています。

もし今、「本当に変わる管理職研修をつくりたい」「研修を起点に組織を前進させたい」そう思っているなら、このコラムが必ず役に立ちます。

ここから一緒に、“変わる管理職研修” を実現する方法 を見ていきましょう。

執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

目次

1.管理職研修で「自分たちは変われる」と確信を持つことが研修効果につながる

管理職研修の最大の成果は、知識の習得ではありません。
「自分たちのマネジメントは変えられる」「組織を良くできる」という確信を持てる状態をつくることです。

どれだけ研修内容が良くても、「うちは無理」「現場に戻ったらできない」と思っている限り、行動は1ミリも変わりません。
逆に、“自分たちは変われる”という実感が生まれた瞬間、管理職は主体的に動き出し、現場の変化は一気に加速します。

では、その“確信”はどのように生まれるのでしょうか。
ポイントは次の3つです。

① やらされ感ではなく、「自分の課題だ」と自分事化できること

役割の重要性や組織の期待を理解し、「これは自分のチームの話だ」と腹落ちすることで、行動のエンジンが入ります。

② 理解できるだけでなく、「変わりたい」と思える内容であること

単なる知識インプットでは変化は起きません。
現場の課題とつながり、「この状態を変えたい」「こういう管理職でありたい」と、本人の内側から動機が生まれる設計が必要です。

③ 小さくても“変わっている実感”をその場で得られること

研修の場で、
・行動の違い
・思考の切り替え
・チームでの気づき を体験として得ることで、「自分でもできる」という自己効力感が高まり、研修後の行動につながります。

研修企画側が意図的に設計すべきは、この3要素をどう高めるかです。
これから3つの要素をおさえた研修企画の進め方を紹介します。

2. 効果の高い管理職研修の進め方ガイド

管理職研修の効果を高めるには、「企画 → 準備 → 運営 → フォロー」のプロセスを一貫したストーリーで設計することが重要です。

順番に説明します。

ステップ1. 企画 :組織の真の課題に目を向ける

企画フェーズでは、まず「研修ありき」で考えるのではなく、組織の“今ある課題”と“目指したい状態”を正しく捉えることから始めます。

真の課題がつかめていないまま研修を実施すると、

・表面的な「いい話」で終わる
・一部の管理職だけが動き、組織全体には波及しない
・「また研修か」と、やらされ感を強めてしまう といった状態になりがちです。

そこで、企画は次の3つのプロセスで進めると整理しやすくなります。

企画のプロセス 内容
① 真の課題の把握 課題を洗い出し、関連性を整理し、「本当にテコ入れすべきポイント」を特定する
② コンセプトと要件定義の決定 管理職研修で実現したい状態を言語化し、「目指す姿」を明確にする
③ 研修内容の決定 コンセプト・要件定義を起点に、具体的なプログラム・テーマを設計する

ここからは、それぞれのポイントを詳しく見ていきます。

企画①|真の課題の把握

最初のステップは、「現場で何が起きているか」を立体的に捉えることです。

1. 課題をすべて洗い出す

まずは、次のような情報から、気になっていること・困りごとを出し切ります

・人事・経営・現場マネージャーへのヒアリング
・エンゲージメントサーベイ・ストレスチェック・人事データ
・離職理由・面談記録・評価フィードバックの傾向 など

この段階では粒度はバラバラでOKです。とにかく「全部出す」ことを優先します。

2. 課題の関連性を整理する

次に、洗い出した課題同士のつながりを整理します。

・何が原因で、何が結果になっているのか
・どの課題が、他の課題を生み出しているのか
・特に“詰まり”になっているポイントはどこか といった観点で、因果関係や構造を見ていきます

「システムシンキング」「魚の骨(特性要因図)」などの構造を可視化するフレームワークを使うと、個別の出来事ではなく、“パターン”としての課題が見えやすくなります。

3. 真の課題(レバレッジポイント)を特定する

関連性を整理したうえで、
・ここが変わると、他の課題にも波及しそうなポイント
・少ない投資で大きな変化を生み出せそうなポイント を、レバレッジポイント(テコ入れポイント)として特定します。

管理職研修で扱うテーマは、このレバレッジポイントときちんと結びついていることが重要です。

ここでの「真の課題の把握」が甘いと、わかりやすいけれど本質からズレたテーマの研修になりやすく、効果が出にくくなります。

企画②|コンセプトと要件定義の決定

真の課題が見えてきたら、次に
・研修を通じて、何を実現したいのか(コンセプト)
・どのような変化が起きていれば成功と言えるのか(要件定義)
を決めていきます。

コンセプト:管理職研修を通して、何を成し遂げたいか?

コンセプトは、「この研修は何のために存在するのか?」を一言で表したものです。

・どんな管理職像を増やしたいのか
・どんな組織状態に近づけたいのか
・経営や人事として、何を一番大事にしたいのか

といった観点から、短いフレーズで言語化しておくと、企画・準備・運営・フォローのすべてで“軸”になります。

要件定義:Before/Afterを明確にする

要件定義は、コンセプトをもう一段細かくしたものです。

・研修前後で、管理職の意識・行動がどう変わっているか(研修要件)
・数ヶ月後、現場でどんな変化・成果が見られるか(効果要件) を、できるだけ具体的に言葉にします。

企画③|研修内容の決定

最後に、①真の課題と ②コンセプト/要件定義をもとに、具体的な研修内容を設計します。

検討する主なポイントは、例えば次の通りです。

・どの順番でテーマを扱うと、管理職が“自分事化”しやすいか
・講義・対話・ワーク・フィードバックなど、どんな組み合わせが効果的か
・1回完結ではなく、どのくらいの期間・回数で設計するか
・自社の文脈を理解し、現場の本音を引き出せる講師はどのようなタイプか

大事なのは、「カリキュラムの寄せ集め」ではなく、「目指す姿に向けたストーリー」として設計することです。

より詳しい内容は、下記コラムをご覧ください。
管理職研修の必要性を見極める軸と、実施を妨げる要因への対策を紹介

なお、管理職研修は、できるだけ早い段階で経営者を巻き込むことが成功の鍵です。
企画が完成に近づくほど内容が複雑になり、意図が正しく伝わらないことが増えるためです。その結果、狙いが理解されずに却下されたり、経営者の意向に合わせた別の研修に置き換わってしまうケースもあります。

また、要件定義を一緒に考えることで、研修後の変化を経営者自身が具体的にイメージできるようになります。すると研修の効果を感じやすくなり、次の施策にもつなげやすくなります。

理想は、課題の洗い出しの段階から関わってもらうことです。
難しい場合は、進捗報告や短い口頭での共有を積み重ねることで、巻き込み度合いを高めましょう。
忙しい経営者であっても、管理職研修が組織に大きな影響を与えることを伝え、当事者意識を持ってもらうことが重要です。

ステップ2. 準備 :研修受講への意識を上げていく

準備フェーズでは、管理職が「参加するだけの研修」ではなく、“自分ごととして参加する研修”になるように、事前の仕掛けを整えることが大切です。

特に重要なのが、研修実施案内と事前ワークの2つです。

① 研修実施の案内

案内文は、ただの「お知らせ」ではなく、管理職の意欲を高めるための重要なコミュニケーションです。
研修の背景・目的・期待する状態をわかりやすく伝え、「これはいつもの研修とは違う」と感じてもらうことで、当日の参加姿勢が大きく変わります

案内の質が高いほど、管理職の関心が高まり、研修への当事者意識も強まります。

より詳しい内容は、研修前の挨拶の詳しい内容は下記コラムをご覧ください。
研修挨拶は研修挨拶は、投資対効果が高い!│「場面・立場・階層」別で説明

② 事前ワークの配布

事前ワークは、管理職の負担にならない範囲で、“自分の現状を振り返る”きっかけをつくることが目的です。
簡単な問いでも、研修前にほんの少し立ち止まることで、研修当日の学びの質が大きく高まります。

また、事務局・講師側も事前ワークから現場の状況を把握できるため、研修内容をより最適化できます。

事前課題に関して、さらに詳しい内容を知りたい方は、下記コラムをご覧ください。
【即効性あり】事前・事後課題で管理職研修が変わる!

ステップ3. 運営 :当事者意識の醸成・柔軟な対応を行う

研修の運営で最も大切なのは、管理職の当事者意識を高めながら、場に合わせて柔軟に進めることです。
どれだけ良い企画や準備が整っていても、当日の運営が“一方通行の場”になってしまうと、学びは深まりません。

特に以下の3つへの意識は重要です。

① 一方的な「正解提示型」ではなく、現場の声を取り入れる

管理職は現場を最も理解している存在です。
そのため、講師が「管理職はこうあるべきだ」と押し付けるような進行になると、抵抗感が生まれ、当事者意識が下がります。

運営では、現場で起きていることや管理職自身の課題認識を丁寧に扱いながら、“現場のリアリティ”と研修目的を結びつけて進めることが重要です。

② 研修の場で出てきたテーマを大切に扱う

研修中には、参加者同士の本音や、現場の課題が生々しく語られることがあります。
その内容が研修スケジュールと異なっていても、そこで生まれた気づきやテーマは、参加者にとって非常に価値が高いものです。

予定に沿うだけでなく、必要に応じて進行を調整しながら、「今この場で必要な対話」を大事に扱う柔軟さが求められます。

③ 目的から逸れないよう、全体をファシリテートする

柔軟に進めるとはいえ、場が感情的になりすぎたり、議論が散漫になると、研修の目的から外れてしまいます。
そこで重要なのが、参加者の発言を受け止めつつ、目的に戻すファシリテーションです。

「今の話を踏まえて、目指す状態にどうつなげていくか」
という視点を常に持ちながら進めることで、場の安全性と成果の両方を確保できます。

ステップ4. フォロー :内省とチーム学習で意識・行動変化を加速する

研修後のフォローは、管理職の意識・行動変容を定着させるための重要なプロセスです。
人は日常業務に戻ると、変化に気づきにくくなり、元のやり方に戻りがちです。

だからこそ、研修後のフォローによって 「自分は変われている」「チームも変化している」という実感を持つことが必要です。

フォロー施策は、大きく ①定期的な内省②対話を通じたチーム学習 の2つに分けられます。

① 定期的な内省の機会をつくる

管理職自身が、自分の行動や状況を振り返る時間を定期的に持つことが重要です。
ただし、過度なレポート提出は逆効果になりやすいため、負担の少ない形で継続できる仕組みが望ましいです。

たとえば、研修の様子を記録したレポートなどを人事から送付し、思い出す機会を作るような仕掛けが有効です。

② 対話を通じて変化を自覚する場を設ける

研修から一定期間が経つと、変化していても本人は気づけないことがよくあります。
そのため、管理職同士が集まり、互いの実践や変化を共有する“対話の場”を設けると、自分の変化やチームの変化を客観的に認識しやすくなります。

他者の経験を聞くことで刺激や学びが生まれ、「自分もまた変わっていける」という自己効力感にもつながります。

これらを意図的につなげて設計することで、管理職が「自分たちは変われる」と実感できる研修となり、組織全体の行動変容へとつながっていきます。

3. 【事例】ストレス改善と新サービス成功を生んだ管理職研修実施までのプロセス

この事例は、社員数200名規模の企業が管理職研修を実施し、ストレスチェックの大幅改善と新サービスの収益化につながったプロセスをまとめたものです。

ステップ1|企画:真の課題を特定する

最初は「ストレスチェックが悪いので改善したい」という相談から始まりました。
しかし、人事・現場・データをすべて並べてみると、課題は一つではなく、以下の状況が明らかになりました。

・新規サービスは立ち上がるが収益化しない
・失敗が続き現場が疲弊している
・管理職が“個人の力”に頼り、チームとして機能していない

この複雑さを整理するために、課題同士の因果を可視化していくと、経営陣のスピードに現場が追いつけておらず、そのズレが失敗やストレスを生む構造になっていることが明確になりました。離職や精神的負荷の背景もここにありました。

そこで、「個人で抱え込む働き方を変えること」と「失敗を肯定的に扱える文化を育てること」の二つが、最も効果の大きいテコ入れポイントとして浮かび上がりました。

そしてコンセプトと要件定義を以下のように設定しました。

このテーマを踏まえ、今回の研修プログラムは、コンセプト・要件定義で導き出した、

・管理職同士のチーム力を高めて、チーム内外に良い影響を与える
・自部署のチーム力を高めて、共創機会を増やす
・部下と向き合い共に成長する

を実現するための研修を設計しました。

講師もストレス対処の専門家ではなく、組織変革を扱えるファシリテーターを選びました。

ステップ2|準備:管理職の当事者意識を高める

研修案内文では、経営者から「今回はいつもの研修とは違う」というメッセージを伝えるため、以下のような内容を伝えました。

これにより、管理職の関心度が高まり、「参加しなければならない」ではなく「参加したい」に近い状態をつくることができました。

事前ワークはあえて負担を少なくし、管理職の今の状況が見える問いだけに絞りました。しかし、実際に提出された回答は「特になし」や短文が多く、経営陣はショックを受け、落胆すら感じられる空気もありました。

※実際のアンケート

ただ、この段階で現状を把握できたことは大きな意味がありました。表面上の“やっている感”ではなく、本当にどこから変えるべきかが明確になったからです。

企画チームは、ここから「本来の力をどう解放するか」を共通テーマに、当日まで準備を進めていきました。

ステップ3|運営:現場の声を扱い、柔軟に進める

研修初日は予定通り順調に進みましたが、二日目で場の空気が大きく揺れました。
マーケティング・営業の管理職が、ロジスティック部の管理職に対して不満を一気にぶつけ始めたのです。ロジスティック側は怒りと悔しさで顔を赤らめ、他の管理職も息をのむ緊張感に包まれました。

ここで、誰かをなだめたり、場をそのまま丸め込むのは簡単です。しかし、それでは根本は変わりません。そこで研修を一度止め、全員で対話の時間を取りました。

話し合う中で分かったのは、「誰が悪いか」という問題ではなく、部署同士が自分の視点でしか動けておらず、組織としての連携が欠けていたという構造でした。問題の原因を個人に押し付けず、構造として扱えたことで、場は静かながらも深い学びへと変わっていきました。

最終的には、全員が今後のアクションと気づきを言葉にして終了表情は穏やかでしたが、内側にしっかり火が灯っている空気がありました。

ステップ4|フォロー:内省とチーム学習で変化を定着させる

研修後は、忙しさに流されて変化を忘れないよう、負担感の少ない定期的な内省機会を設けました。レポートのような重い課題ではなく、短く書ける振り返りやバトンメール®の形式で、継続しやすい仕組みにしました。

バトンメール®の進め方

一定期間が経ってからフォロー研修を実施すると、最初は「自分は変われなかった」というネガティブな声も出ました。

しかし、管理職の一人が「部下へのインタビューで、自分の変化を他者の言葉で気づいた」という体験を共有したことで、空気が一変しました。

そこから次々と、「そういえば以前よりこう動けている」「周りの反応が変わっていた」と気づきが広がっていきました。日々の忙しさで見えなくなっていた変化が、対話を通じて輪郭を持ち始めたのです。

プロジェクト終了後、人事からは「現場の空気が明らかに変わった」「業績にも良い兆しがある」と報告が届きました。ストレスチェックだけでなく、新サービスの収益化も始まり、組織全体の流れが好転し始めていました。


この事例は、表面的な「ストレス改善」ではなく、組織構造の課題を丁寧に紐解き、管理職が“変われる実感”を持つことで組織全体に変化が広がったプロセスです。
企画・準備・運営・フォローを一貫したストーリーで設計したことで、管理職の行動が変わり、部門間連携やサービス収益化など事業成果にもつながりました。

このように管理職研修は、正しく設計すれば組織を前へ進める力にできます。

4. 管理職研修の種類

管理職研修は大きく4種類に分かれ、それぞれ目的も内容もまったく異なります。
「どの種類を選ぶか」で研修効果は大きく変わるため、自社の課題に合ったタイプを選ぶことが重要です。

管理職研修の種類 研修目的 研修内容例
新任管理職研修 新任管理職としての役割理解とスキル習得を促す ・役割理解研修
・部下育成(OJT / 1on1 / コーチング)
・チーム目標設定
・管理
次世代リーダー育成(上級管理職)研修 経営層候補として必要な視座と知識を養う ・戦略思考 / 事業開発 / マーケティング
・財務・会計理解
・問題解決(クリティカル / システムシンキング)
パフォーマンス向上研修 現場の課題解決と成果向上につなげる ・部下育成(OJT / 1on1)
・チーム力向上
・リーダーシップ研修
・ファシリテーション研修
労務・コンプライアンス管理研修 リスクマネジメントと組織の安全性を確保する ・人事労務管理
・メンタルヘルス
・コンプライアンス

① 新任管理職研修|役割理解と基本スキルを固める研修

新しく管理職になった人が、必要な“土台”を固める研修です。
扱う内容は、たとえば次のようなものです。

・管理職の役割(「プレイヤー」から「マネジメント」への切り替え)
・目標設定や進捗管理の基本
・部下育成の基礎(OJT・1on1・コーチングの使い分け)
・チーム運営に必要なコミュニケーション
・トラブル・判断に迷う場面のケーススタディ

ただし、受講者の課題に合っていなかったり、役割の“腹落ち”が起きないままでは成果がでにくい研修です。

② 次世代リーダー育成(上級管理職)研修|経営層候補を育てる研修

将来の部長・役員候補など、より高い視点で組織を動かせる人材を育てるための研修です。

扱う内容は以下の通りです。

・戦略思考・事業開発(市場分析・戦略立案)
・財務・会計の理解(PL/BSの読み方、投資判断)
・経営判断に必要なクリティカルシンキング・システムシンキング
・組織変革・チェンジマネジメント
・新規事業や組織課題のプレゼン・レビュー

ただし、一般論だけの講義型や現場の役割と乖離した内容だと、“持ち帰れる学び”にならず実践につながりません。

③ パフォーマンス向上研修|現場の課題をダイレクトに解決する研修

いま管理職が抱えている課題を、具体的に解決するための研修です。
テーマは企業によって変わりますが、例えば以下のような内容です。

・部下育成の強化(1on1、フィードバック、動機づけ)
・チーム力向上(関係性構築、心理的安全性、チームワーク)
・リーダーシップ(関わり方、任せ方、巻き込み力)
・ファシリテーション(会議設計、対話スキル、合意形成)
・部門間連携や業務改善など、実際の現場課題を扱うワーク

ただし、現場の課題設定が曖昧だったり、研修内容と現場の状況がズレていると、学びが活かされず成果が出にくい研修です。

④ 労務・コンプライアンス管理研修|リスクを最小化する研修

管理職として避けて通れない「守り」の知識を扱う研修です。
内容としては、次のようなものがあります。

・労務管理(勤怠、労働時間管理、ハラスメント防止)
・メンタルヘルス対応(部下の不調の早期察知、初動対応)
・コンプライアンス(法律・規則、情報管理、SNSリスクなど)
・トラブル事例を使ったケーススタディ
・管理職としてのリスク回避行動

ただし、現場で運用する仕組みがないと「知っただけ」で行動に結びつかず終わりやすいという難しさがあります。


管理職研修を成功させるには、4種類の違いを理解し、自社の課題に最も合ったタイプを選ぶことが不可欠です。
「何を学ばせるか」ではなく、「どんな変化を起こしたいか」から逆算して種類を選びましょう。

5. 管理職研修の費用

管理職研修の費用は 一律ではなく、研修のゴール(目的)によって相場が大きく変わります。

管理職研修と一口に言っても、役割理解を目的とする研修と、組織課題の解決や行動変容を目的とする研修では、必要な内容・講師の専門性・設計工数がまったく違うためです。
そのため、目的によって費用帯が変動します。

管理職研修のゴールは大きく3つに分けられ、一般的な相場は次のようになります。

ゴール 形式 費用相場 内容・特徴
知識のインプット 動画見放題 数千円/人 低コストで手軽に学べる、個人学習で完結する内容。
講師派遣(2~4時間) 5~15万円/クラス 産業医や顧問社労士が講師を担うような内容。
スキル習得 公開講座(2~8時間) 1~5万円/人 受講者が少人数で、企業を問わず必要な内容。
講師派遣(4~8時間) 10~80万円/クラス 自組織オリジナルのカリキュラムや自組織内で完結させたい内容。
組織課題の解決 研修+コンサル型 数百万円~数千万円 長期間の取り組み。組織変革や着実なスキル実践まで目指す内容。

※詳細な相場は下記の参考コラムで確認できます。
管理職研修の費用相場は?研修費用を最適化するための5つのステップ

管理職研修の費用は「何を解決したいのか」「どんな状態を目指すのか」が明確になるほど適切に判断できます。
まずは目的を整理し、必要な投資レベルを見極めることが重要です。

6. 管理職研修に関する質問への回答

管理職研修で、絶対行ってはいけないポイントをお伝えいたします。

Q. 管理職研修が「意味がない・ムダ」と言われてしまう。どうすればいい?

「意味がない」と言われるのは、研修後に認知変容・行動変容が起きていないからです。

よくある原因は、経営者の考えをそのまま押し付けているだけ、受講者の課題や現場の状況と研修内容がズレている、一回きりでフォローがない、といったパターンです。

まずは、自社の管理職研修がどのパターンに当てはまっているかを整理し、「何を変えたいのか」という目的、現場の課題とのつながり、事前・事後フォローを見直していくことが大切です。

Q. 研修が盛り上がったのに「効果がない」と言われてしまう…なぜ?

研修当日がどれだけ盛り上がっても、フォローがなければ多くは“一過性”で終わってしまいます
実際に、ラグビーを使ったチームビルディング研修を実施した企業では、参加者の満足度は高かったにもかかわらず、フォローをしなかったことで経営者から「効果が全くない」と判断されてしまった例がありました。

詳しく聞くと、社員同士の雑談が増えるなど小さな変化はちゃんと起きていたのですが、それを拾い、継続させる仕組みがなかったのが原因でした。

研修の効果を定着させるには、負担の少ない振り返りや短いフォローの場など、日常の中で内省と行動を続けられる仕組みづくりが欠かせません

Q. 管理職研修の必要性を、経営者や管理職本人たちに理解してほしい…どうすれば?

必要性を理解してもらうためには、なぜ必要だと思われていないのか(反対意見)を明らかにすることが大切です。

経営者や事業責任者からは、「費用対効果がわからない」「現場が忙しくて無理」「過去にやって意味がなかった」といった“やらない理由”が出やすく、必要性が伝わりにくくなりがちです。

そこで効果的なのが、人事だけで企画を進めず、対話しながら一緒に作る“共創型”の進め方です。背景や狙いを共有しながら進めることで、経営層の納得感と当事者意識が大きく変わります。

また、管理職本人も、「忙しい」「研修は意味がない」といったネガティブな気持ちを抱えやすい立場です。
そのため、事前に以下のような働きかけをすることで、受け止め方が前向きになります。

・想定されるネガティブ反応をあらかじめ把握しておく
・研修の目的や意義を丁寧に伝える
・研修前に経営者・事業責任者のメッセージを届ける
・実務とのつながりを感じられる設計にする
・研修で生まれた前向きな気持ちを自分の言葉で整理してもらう

管理職研修は「押し付ける」のではなく、「なぜ必要か」を一緒に理解し合うプロセスづくりがカギになります。

Q. 管理職研修の企画中。何かいいネタはない…?

管理職研修を企画する際に「どんなアプローチがあるのか」を幅広く知っておくことは、とても大切です。ネタを多く知っているほど、自組織の課題に最適な研修を設計できるようになるからです。

代表的な“研修ネタ”としては、次のような12のパターンがあります。

①講義・動画鑑賞
②ケーススタディ・シミュレーションワーク
③対話・議論
④講演
⑤ビジネスゲーム
⑥寸劇・インプロ
⑦アクションラーニング
⑧合宿
⑨ラーニングジャーニー
⑩スポーツ・アウトドアなどのアクティビティ
⑪モノづくり
⑫人材開発・組織開発のトレンド

それぞれ特徴が異なるため、
・どのような学習体験をつくりたいか
・管理職にどんな気づきや行動変容を起こしたいか
を踏まえて組み合わせると、企画の質が一気に上がります

詳しい内容は「管理職研修のネタに困らない!今すぐ使える12のアイデア」で確認できます。

Q. 管理職研修の事前課題や事後課題はやった方がいいの?内容は?

結論として、事前課題・事後課題はやった方が研修効果は高まります
ただし、管理職はとても忙しいため、「負担を増やさない設計」が絶対に必要です。

重要なのは、“普段のマネジメント業務と研修内容をつなぐ(ブリッジさせる)こと” です。

たとえば、以下のようなことがおすすめです。

・事前:今のチームの課題を簡単に書く
・事後:研修内容で気づいたことを、具体的な行動に落とし込む
・日常:短い内省やミニレポートで小さな変化を継続する

重いレポートではなく、「短く、負担なく、実務とつながる課題」を設計すると定着がぐっと進みます

Q. 中小企業でも、大企業と同じ管理職研修で効果は出るの?

結論としては、「そのまま真似しても、期待した効果は出にくい」です。
中小企業は大企業よりも事業・人員の余裕が少なく、常に事業課題・組織課題のインパクトを強く受けます。

だからこそ、「有名なプログラムを導入するか」ではなく、「自社の事業課題・組織課題を解く手段として、どんな管理職研修が適切か」という順番で考えることが大切です。

Q. 管理職研修はオンラインでも効果を出せる?

オンラインでも、設計と準備次第で十分に効果は出せます
ただし、リアルと同じプログラムをそのままオンラインに載せると、コミュニケーションの制約や集中のしづらさから、学びが浅くなりがちです。

オンライン用に進行やワークの設計を見直し、オンライン登壇に慣れた講師・スタッフを用意し、事前案内などで参加意欲と受講環境を整えることで、リアルと遜色ない学びの場をつくることができます。

Q. 合宿型の管理職研修を実施したい。どんな点に気をつけるべき?

合宿型研修は、非日常の場で関係性や意識を大きく動かしやすい一方で、負荷も高く、設計を誤ると逆効果になりやすい形式です。
目的があいまいなまま「とにかく合宿で追い込む」のように進めると、心理的安全性が損なわれたり、「やらされた感」だけが残るリスクがあります。

なぜ合宿でやるのか、その時間で何を得たいのか、終わった後に現場でどう活かすのかまで含めて設計し、安全性と負荷のバランスを丁寧に考えることが重要です。

Q. 管理職に“厳しめ”の研修を実施したい。注意点はある?

「厳しい研修」は、短期間で大きな変化を促したいときに選ばれがちですが、やり方を間違えると反発や離職、関係悪化につながるリスクがあります。
大事なのは、「なぜ厳しくする必要があるのか」「どこをどう変えたいのか」をまず言語化し、その目的に本当に“厳しさ”が適した手段かどうかを見極めることです。

目的と対象を明確にしたうえで、「強い刺激」だけでなく「安心して本音を出せる場」や「現場で支えるフォロー」まで含めて設計することが欠かせません。

Q. 管理職候補向けに研修を実施する場合、何を押さえればいい?

管理職候補向け研修の目的は、「一般社員から管理職への橋渡しを、前もってしておくこと」です。
管理職に必要な役割は多岐にわたるため、すべてを詰め込むのではなく、自社で特に重視したい役割(例:部下育成、チームで成果を出す、経営方針を自分ごと化する 等)に絞り、その役割を果たすための「意識」と「基本スキル」を扱うことがポイントになります。

昇格後にいきなり“ぶっつけ本番”にならないよう、「管理職になるとはどういうことか」を事前に体感・言語化できる場として設計していくと効果的です。

Q. 管理職研修の資料を作りたい。構成や作り方のポイントは?

管理職研修の資料は、「読み物」ではなく「行動が変わるためのガイド」です。
そのため、まず研修の目的とゴール(何ができるようになってほしいのか)を明確に示し、次に現状の課題と理想の状態を対比させ、「なぜ変わる必要があるのか」を腹落ちさせる流れが有効です。

そのうえで、必要な考え方やフレームワーク、具体的なケースや問い、現場で試すアクション例を整理し、「研修後に資料を見返すだけで、自分の行動を振り返り・修正できる」構成を意識すると、資料が生きたツールになります。

7. まとめ|管理職研修ならアーティエンスがおすすめ

管理職研修を丁寧に設計・運営すると、管理職は「自分たちは変われる」という確かな実感を得られます。

効果の高い管理職研修にするためには、次のプロセスを踏むことが欠かせません。

・企画: 組織の本質的な課題を正しく捉える
・準備: 管理職の当事者意識と受講モチベーションを高める
・運営: 予定調和にせず、現場の本音と向き合う場をつくる
・研修後フォロー: 内省とチーム学習で行動変容を継続させる

この流れを丁寧に積み重ねることで、組織課題の解決や成果向上へと結びついていきます。
さらに、その変化を経営陣が目で見て実感できれば、人材開発や組織づくりへの関心と投資意欲も高まり、企画側との連携もぐっと強くなります。

アーティエンスでは、研修企画の初期段階から並走し、組織の課題に合わせた管理職研修をご一緒にデザインしています。
ご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください

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