管理職研修の資料とは、管理職の行動が変わるためのもの

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管理職研修 資料

管理職研修の資料とは、管理職の行動が変わるための役割の一つを担うものです。

その役割を果たすために、管理職研修の資料を創っていく必要があります。

本コラムでは、管理職研修の資料を、「管理職の行動が変わるための役割の一つを担うもの」と捉えて、「管理職研修の資料の役割から、管理職研修の構成・作り方、よくある質問」までをお伝えします。

本コラムを最後までお読みいただくと、良い管理職研修の資料とは何かを知り、管理職研修の資料の作り方を理解できます。

監修者プロフィール

迫間 智彦

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

目次

1. 管理職研修の資料とは、管理職の行動が変わるためのもの

管理職研修の資料とは、管理職の行動が変わるためのものです。
管理職研修を実施する目的は、“管理職の役割認識”と“目の前の課題(管理職本人・組織・事業)の解決”のどちらかです。この目的を達成するには、管理職の行動が変わることが必須です。管理職研修の資料は、「管理職の行動が変わる」ためのものでなければなりません

例えば、管理職研修の役割をあるべき論として押し付ける内容ではなく、管理職がその役割に対して、前向きに変わろうと思う内容でなければなりません。「管理職は強くなければならない」というメッセージよりも、「管理職が中心となって、チームメンバーで共にこんなを乗り越えていく」という文脈の方が、今の時代の管理職にはフィットし、また管理職も前向きになります。

このように管理職研修の資料とは、管理職の行動が変わるためのものです。

(参考)管理職研修の目的をより詳しく知りたい方へ
【事例有り】意義ある管理職研修に導く目的設定ガイド|目的明確化までのポイント解説(参考)管理職の役割をより詳しく知りたい方へ
管理職の役割と責任│変化するビジネス環境に対応するために必要なこと

2. 管理職研修の資料の構成

管理職研修の資料の構成は、下記のようにすることで「管理職の行動変化」を促していきます。

・研修の目的・・・研修の目的を伝えることで、管理職に期待していることが明確になる
・目次・・・管理職研修の全体像の理解ができる
・問いかけ・・・問いかけを行うことで、管理職が当事者意識を持ちやすい
・講義・・・問いかけに対しての解説を行うことで、研修への参加姿勢を高める
・ワーク・解説・・・ワークを行うことで、現場の仕事につなげていく
・まとめ・・・何を学んだかを振り返り、学習の質を上げていく

事例を通じて、それぞれ詳しく解説します。

2-1. 研修の目的│研修の目的を伝えることで、管理職に期待していることが明確になる

管理職が、「何のために研修を受けるか」ということを、資料内で明確に提示することが必要です。管理職は、とても忙しく研修に対して、後ろ向きな感情を持っているケースが多いです。目的を伝えないと、研修に対して後ろ向きな感情は変わりません。そのためこの研修が、「何のために行うのか」ということを伝えていく必要があります。可能であれば、経営者からのメッセージを研修前に伝えていくといいでしょう。※ 管理職研修の目的を伝えただけでは、後ろ向きな感情のすべては解決されませんが、少しでも管理職研修に対して前向きになっていくような働きかけを多くし続ける必要があります。

実際の研修の目的の事例をお見せします。Webコンテンツ事業を行っている企業(200名規模)での管理職研修の事例です。※  「2. 管理職研修の資料の構成」では、Webコンテンツ事業を行っている企業(200名規模)での管理職研修の事例を用いていきます。

本事例では、経営者が研修一日目は参加し、研修の目的の背景などをストーリーテリング(※)という手法を用いて、伝えていきました。そしてその内容を、管理職と対話していくという方法を取っていきました。

※ストーリーテリングとは
自身の経験や想いをオープンに、かつ、人間味を持ってストーリーとして伝える方法。抽象的な単語や情報を羅列するよりも、相手の記憶に残りやすく、得られる理解や共感が深い。組織の理念やビジョンなどを、メンバーに浸透・動機づける際に活用されることが多い。(ストーリーで話す方法と論理的・数値的に話を伝える方法とでは、人の記憶の残りやすさに最大22倍差が生じるとの研究結果もある。(スタンフォード大学 Jennifer Aaker教授))

下記が研修風景です。

本事例は、丁寧に研修の目的を伝えていきましたが、このように「管理職がの行動」が変わるためにも、管理職研修の目的を資料内で明確に提示することが重要です。

(参考)研修での挨拶をより詳しく知りたい方へ
【場面別・立場別】研修における挨拶とは?具体的な内容・注意点についても説明

2-2. 目次│管理職研修の全体像の理解ができる

管理職が、「管理職研修の全体像を理解する」ことで、「研修の目的をどのように達成するか」を理解できます。この時点で、研修が自身の役に立つかどうかを判断しますので、丁寧に作成し資料の始めに入れるといいでしょう。
本事例(Webコンテンツ事業企業)の目次を、お見せします。

このように研修で何を扱って、目的を達成していくかを提示していくことが必要です。
そうすれば、管理職が目次を通して、「管理職研修の全体像を理解する」ことで、「研修の目的をどのように達成するか」を理解できます。丁寧に作成し資料の始めに入れるといいでしょう。

2-3. 問いかけ│問いかけを行うことで、管理職が当事者意識を持ちやすい

研修資料の始めに管理職に対して、問いかけを行うといいでしょう。簡単なものでも、問いかけを行うことで、管理職が自分事として考えるようになります。いきなり研修に入るような資料ではなく、問いかけをワンクッション入れることで、研修を受け身ではなく、研修に参加するというマインドを創っていきます。本事例(Webコンテンツ事業企業)の事例での冒頭の問いかけを、お見せします。

この問いかけをもとに、グループワークを行ってもらいます。グループワークの後に、どのような話が出たかをシェアしてもらい、講師からそのシェアした内容をもとに、コメントを伝えます。その後に、解説を行います。今回の問いに対しての解説は下記のような内容を伝えていきました。

・渡り鳥の先頭は、どの鳥かということは決まっていない
・疲れたら、他の鳥に変わる。状況にあわせて、渡り鳥はリーダーシップを発揮する鳥が変わる
・私たちの世界においても、このようにリーダーシップは、一人の人が発揮するのではなく、状況にあわせて全員で発揮することが重要

問いかけに対して、自分たちで考えながら、管理職研修の目的とつなげていきます。

2-4. 講義│問いかけに対しての講義を行うことで、研修への参加姿勢を高める

問いかけとつながりを持った講義を行っていきます。問いかけで、管理職研修に対して当事者意識・主体性が育まれるので、受講姿勢に前向きな変化が出てきます。
※ ネガティブな感情を持っている人でも、少し変化が出ます。

その問いかけと繋がる講義をしていきます。本事例(Webコンテンツ事業企業)での講義資料を一部お見せします。この資料では、問いかけとのつながりを持ちながら、研修の目的である「管理職が中心になって、全員がリーダーシップを発揮する」ための重要性を伝えていきます。

このように問いかけに対しての講義を行う研修資料にすることで、研修への参加姿勢を高めていくことが可能です。

2-5. ワーク・解説│ワークを行うことで、現場の仕事につなげていく

研修に対しての受講姿勢が変わり始めたところで、「現場で使える」や「現場とのつながりがある」という実感を持つようになります。現場との連動を持てなければ、研修に対して、一気に後ろ向きになり、研修に対して冷めていきます。

本事例(Webコンテンツ事業企業)でのワークの資料を一部お見せします。この資料では、問いかけ・講義とのつながりを持ちながら、ワークを通して研修の目的である「管理職が中心になって、全員がリーダーシップを発揮する」ためを、現場の仕事とつなげていきます。

本事例では、このワークで研修の目的を強く伝えるという意図もありましたが、経営者のストーリーや経営者との対話を通して、現場の連動が強くなっていきました。そしてこの後の研修により前向きに参加していくようになりました。

このワークを通して、管理職研修が現場でつながっているということを理解していきます。

2-6. まとめ│何を学んだかを振り返り、学習の質を上げていく

最後にまとめとして、何を学んだかを振り返り、学習の質を上げていくことが必要です。振り返りがなければ、何が学びだったか分かりません。そのため振り返りができる資料を創ることが必要です。

本事例(Webコンテンツ事業企業)での振り返りに関しては、下記のようになっています。

なお研修後のレポートとして、下記内容も実施しています。

最後にまとめとして、振り返りを行うことで、学習の効果が高まります。

(参考)管理職研修の事後課題をより詳しく知りたい方へ
管理職研修の成果を高める事前課題・事後課題とは?具体例やメリット・デメリットも解説(参考)管理職研修のレポートをより詳しく知りたい方へ
【事例あり】管理職研修のレポート|目的と内容

3. 管理職研修の資料の作り方

管理職研修の資料を作成するための手順は、次の7ステップです。

■ステップ1:紙に資料の構成を下書きする
■ステップ2:レイアウト、使用する色、フォントを決める
■ステップ3:各ページに記載したい要素を入れる
■ステップ4:各ページのレイアウトを整える
■ステップ5:見直す
■ステップ6:他の人に見てもらいフィードバックをもらう
■ステップ7:アップデートして完成

ステップ1:紙に資料の構成を下書きする

まずは、手書きでどんな内容を記載するか、タイトルや概要を作成します。

はじめから、パワーポイントなどで作成しても良いですが、パワーポイントで作成すると、各ページの要素を決める前に、細かいレイアウトにこだわってしまうことがあるため、そうならないためにも紙で下書きを作成することをおすすめします。


ステップ2:レイアウト、使用する色、フォントを決める

ここからパワーポイントなど、資料を作成するツールを使って作成していきます。

レイアウトとメインで使用する色、そしてフォントは、意図的に変化を促したい箇所以外は統一している方が見やすくなるため、基本的には全ページ統一します。これらに関しては、後から変更すると修正が大変になりますので、この段階で確定しておくことをおすすめします。推奨フォントは、MSPゴシック、メイリオ、游ゴシックなどです。


ステップ3:各ページに記載したい要素を入れる

上の段階で決めたレイアウト、色、フォントを使用して内容を作成していきます。
ポイントとしては、管理職が現場でのイメージがついたり、活用できる内容にする必要があります。

※ 当社、管理職のための目標設定・管理研修のテキストより
現場で活用イメージがついたり、実際の現場で使用できるものであれば、管理職の変化を促すことができる資料になっていくでしょう。


ステップ4:各ページのレイアウトを整える

各ページに入れたい要素がまとまったら、より見やすく、理解してもらいやすいようにレイアウトを整えます。

例えば、文字が羅列しているとパッと見て何が書かれているのかがわからず、振り返りもしづらくなるため、図やイラスト、余白をうまく活用できないか検討してみてください。

※ 当社、管理職のための目標設定・管理研修のテキストより

細かいところですが、文字の中心や先頭が揃っているか、フォントサイズや図形のサイズは同じか、なども意識しましょう。ここが、振り返りをしやすい資料になるかの大事なポイントです。


ステップ5:見直す

全てのページが完成したら、始めからスライドを確認し、気になる箇所を修正します。

管理職が印刷物を見る場合は印刷して、パソコン上で見る場合は、研修を受けながら資料を開くことを意識したサイズ感で確認します。そうすることで、実際の見やすさを確認ができます。用語の書き方が統一されていないということはよくあるため、注意して見直します。


ステップ6:他の人に見てもらいフィードバックをもらう

完成した管理職研修の資料を初見の人にみてもらい、フィードバックしてもらいます。
管理職が始めて見たときに分かりやすく理解できそうか、振り返りしやすいか、ということを軸に確認してもらうと、相手もフィードバックしやすく、また具体的な内容を伝えてくれると思います。できれば3名程度には見てもらえると良いかと思います。


ステップ7:アップデートして完成

フィードバックでもらった箇所を修正し、アップデートしていきます。
この資料が、管理職研修で使用され、日々の業務の中でも繰り返し活用されることを意識して、より良くしていけると管理職の学びや現場での活用度も深まることでしょう。

このように7つのステップの手順で、振り返りしやすい管理職研修の資料を作成しましょう。

4. 管理職研修の資料作成の際によくある質問

下記によくある質問をまとめましたので、参考にしてください。

Q1 : 現場でも管理職研修の資料をもとに復習してほしいが、どのような方法があるのか?

現場で活用できるように工夫するといいでしょう。間違っても、勉強という文脈してはいけません。あくまで現場で活用するということが、管理職の変化を生み出します。
下記は当社の管理職のための目標設定・管理研修のテキストですが、現場で活用できるようにしています。

このような資料にすることで、現場でも活用されていきます。

Q2 : 書籍を活用して、管理職研修を行ってもいいのでしょうか?

もちろん活用いただいて構いません。ただし、書籍の内容を補足するような資料を作成された方が良いでしょう。

例えば、当社が経営者向けの勉強会で「学習する組織 入門」を用いましたが、下記のような目次を基に、資料を創っていきました。対話だけの読書会でしたら、それほど資料の必要性はありませんが、研修の場合は書籍を補足する資料は作成された方が進みやすくなります。

Q3 : 資料の文字数は、どの程度がいいのでしょうか?

資料の目的によって、変わります。新任管理職に対して、インプットをしっかり行ってほしい場合は、ページ数も文字量も多くなるでしょう。対話中心の研修の場合は、ページ数も文字数も少なくなります。
研修の目的にあわせて変えていくことが必要です。

Q4 : リアルで行う研修と、オンラインで行う研修で、資料に違いはありますか?

大きな変更点はありません。ただしフォントのみ注意が必要です。オンライン研修の場合は、視覚障がい者への負担軽減のためのフォントにするといいでしょう。
当社では、「BIZ UDP明朝 Medium」を利用しています。

Q5 :  悪い管理職研修の資料とは、何ですか?

管理職の行動が変わらないものです。管理職の行動が変わらなければ、管理職研修を行った意味が無くなるためです。
具体的には、下記2つを注意したほうがいいでしょう。

・勉強で終わってしまう資料
・あるべき論を押し付ける資料

それぞれ説明していきます。

勉強で終わってしまう資料

勉強で終わってしまう資料は、良い資料とは言えません。実践的でなければ、管理職の行動は変わりません。よくあるケースとしては、内製で創った資料と、時代遅れの研修です。内製でつくったものだと、書籍のコピーをしているケースがよく見られます。そうすると、勉強で終わってしまうことがあります。また時代遅れの研修は、講師が教えるという文脈が強いため、勉強になってしまうことが多くあります。

あるべき論を押し付ける資料

あるべき論を押し付ける資料は、良い資料とは言えません。管理職の当事者意識・主体性を止めてしまうためです。管理職がやる気を無くし、研修への受講姿勢も悪くなります。エンゲージメントが下がる場合もあります。

研修をもとに、無理やり管理職の行動を変えようとする研修もあります。一瞬はよくなることもあります。ただしダイエットのリバウンドのようにあとで問題が起きてくることが多いです。これは、システムリベンジという現象です。組織開発をするときによくある現象です。

まとめ

本コラムでは、「管理職研修の資料」に関して、お伝えしました。
管理職研修で最も重要なことは、管理職の行動が変わるための役割の一つを担うものとして捉えることです。

本コラムでは具体的に

・管理職研修の資料の役割
・管理職研修の構成
・管理職研修の作り方

をお伝えしました。「良い管理職研修の資料とは何か」と、「管理職研修の資料の作り方」を理解いただけたはずです。

管理職研修をさらに詳しく知りたいという方や、管理職研修の導入を考えている方は、お気軽に当社までご連絡ください。