ファシリテーターが苦手な人へ。これをするだけで会議が良くなるお助けポイント17選

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「ファシリテーターを任されるけど、苦手意識があって自信を持てない…」

このようなお悩みをお持ちの方も多いと思います。

ファシリテーターについて詳しい知識を持つ人は少なく、自己流で進めている方が多いです。
また、社内に優れたファシリテーターがいることも稀で、どうすればより良いファシリテーターになれるのか分からないままの状態かもしれません。

しかし、本コラムで紹介する17選を実施すれば、自信をもってファシリテーターとしての役割を果たせるようになるはずです。

ファシリテーターに対する苦手意識を克服し、明日からの会議を良くしていきましょう。

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執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

目次

1)ファシリテーターが苦手な人向け|いますぐできるお助けポイント17選

ファシリテーターが苦手な人向けに、会議前・会議中・会議後に意識すること、そして、ポイントをお伝えします。

意識すること ポイント
会議前の準備 1 会議の目的・目標・アジェンダを明確にする 参加者には事前に共有しておく
2 レイアウトを整える 会議に適したレイアウトにする
3 備品を準備する 備品は少し多めに用意しておく
4 空調を適切にする 温度や湿度が参加者の思考に影響します
5 自身の状態を整える 自身がフラットに物事を見れる状態を整える
会議中 6 オープニングを丁寧に行う 目的・目標・アジェンダについて説明する
7 チェックイン 参加者の状態を確認する
8 ルールを説明する なぜルールを設けているのか、という背景を伝えるようにする
9 フレームワークを使う 状況を整理するときに役立つ
10 意見を出しやすくする 付箋を使う、問いを投げる
11 意見を受け止める 意見に対して否定や評価をしない
12 意見を確認する 理解しづらい意見の際に、要約や補足をすることで認識の齟齬をなくす
13 チェックアウト 参加者の状態を確認する
会議後 14 議事録を送る できるだけ早く共有する
15 参加者からフィードバックをもらう 改善点だけではなく、良かった点・リクエストも聞く
16 バトンメール®をする 会議後の行動変容・認知変容を、会議の参加者同士で促す
17 会議を振り返り次の会議のデザインを行う 反省をどのように次に活かすかを考える
その他 18 他のファシリテーターから学ぶ 他のファシリテーターがどのような言動をしているのかを観察することで新たな気づきを得られ、自身の成長に繋げる

1-1. 【会議前の準備】会議の目的・目標・アジェンダを明確にする

会議の目的・目標・アジェンダを明確にして、参加者に事前に共有しておきましょう。話し合いの焦点が目的からブレたり、議題から逸れることを防ぐためです。

会議の目的・目標・アジェンダが明確になっていないと、参加者が会議の目的や議題に沿った情報や意見を持ち寄ることが難しく、適切な意見を出し合えなかったり、関係のない話題で議論が膨らんだりしてしまいます。すると会議が効率的に進まず、ファシリテーターとしての役割を果たせていないように感じやすいです。

そのような状態になることを防ぐために、会議の目的・目標・アジェンダを定めて、「なぜ会議を行なうのか」「この会議で何を達成すればいいのか」という会議を行なう意味が明確にすることが大切です。

例えば、アーティエンスが経営会議を行う際に設定した目的・目標・アジェンダは次のような内容です。

目的
新規事業開発を通して、〇〇グループがよりチャレンジする風土を創る

目標
・新規事業開発を通して、成し遂げたいこと(共有ビジョン)のすり合わせ
・個包装機PJにおけるマーケティング戦略の仮案策定
・各部署の役割分担の決定
・スケジュールの仮決定

アジェンダ
・チェックイン
・前回の振り返り
・各チームからの情報共有とSTPの決定
・Phase1のゴール設定(仮)
・各部門の役割分担
・スケジュールの仮決定
・チェックアウト

このような情報を会議の参加者に事前に共有し、また、会議の最初にもファシリテーターが読み上げて確認し、共通認識を持った状態で会議に入れるようにします。

すると、会議の参加者が全員同じ方向を向いて歩めるため、会議が進みやすく、会議の質も高まります。

事前の共有方法としては、メールやビジネスチャットなどで、会議のインビテーション(招待状)として送る方法がやりやすくておすすめです。

1-2. 【会議前の準備】レイアウトを整える

会議に適したレイアウトを整えることも大切です。会議の内容に適したレイアウトは、参加者が議題に集中しやすくし、効率的な議論を促進するためです。

例えば、ブレインストーミングとしていろんな意見を出していきたいという際に、コの字形式のレイアウトにしていると、意見を活性化することは難しいです。
島形式や、バズ部形式のほうがいいでしょう。
参加者がどのように座るかで意見の出やすさなどが変わるため、会議の効率さに影響します

レイアウトはさまざまあるため、下記の図や表にまとめている特徴を参考に、会議の内容に適切なレイアウトを選択しましょう。

※ 当社、ファシリテーション研修のテキストより一部抜粋

【参考】レイアウトごとの特徴

お薦めの場面 場によって生まれる状況 注意点
スクール形式 講義・講演など かしこまった雰囲気を作れ、話を聞く・勉強するという文脈になりやすい 「先生・生徒」や「講演者・聴講者」という分断が生まれ、上下の関係が生まれる
コの字形式 プレゼン・上程会議など プレゼンターの話を評価判断するという文脈になりやすい 評価する人・評価される人という分断が生まれ、共創・協働は起きにくい
島形式 会議・研修(一つの島で少人数)など 議論・対話を行いやすい場を創ることで、アウトプットを出すという文脈になりやすい 島の中で人と人の距離がある場合は分断が生まれ、共創・協働が起きにくい
シアター形式 ワークショップ・講演など 人との距離感が近いのでやわらかい雰囲気になり、リラックスして話を聞くという文脈になりやすい ・人との距離が近すぎるときは、嫌悪感を持つ人も出てくることがある
・メモを取る場合、クリップボードなどを用意する
バズ形式 ワークショップ・会議など 人との距離感が近いのでやわらかい雰囲気になり、リラックスして対話するという文脈になりやすい ・人との距離が近すぎるときは、嫌悪感を持つ人も出てくることがある
・メモを取る場合、クリップボードなどを用意する
・スクリーンを見る際は、スピーカーからのアナウンスが必要になる
・対話を促すために、経験豊富なファシリテーターが必要になる
サークル形式 ワークショップ・会議など 人との距離感が近いのでやわらかい雰囲気になり、リラックスして対話するという文脈になりやすい ・人との距離が近すぎるときは、嫌悪感を持つ人も出てくることがある
・メモを取る場合、クリップボードなどを用意する
・スクリーンを見る際は、スピーカーからのアナウンスが必要になる
・対話を促すために、経験豊富なファシリテーターが必要になる

1-3. 【会議前の準備】備品を準備する

備品を準備しておくことも、ファシリテーターとして会議をスムーズに進めるために必要です。会議中に備品の用意に時間がかかると、参加者の集中力が途切れ、会議の進行に支障が生じるためです。

例えば、会議が始まるまでにプロジェクターやスクリーンの準備が整っていないと、その設定に会議開始から2分程度は、会議の参加者が待機の時間を過ごすことになります。また、印刷物の資料が揃っていないと、他の場所に取りに行って配布するという時間が必要になり、会議が中断されてしまいます。

そのため準備を丁寧に行うことを意識しましょう。

事前に必要な備品や資料を確認し、不足や不備がないように事前に準備を行います。また、会議室の設備や備品の状態を確認し、問題があれば早めに修理や補充を行うことも必要です。

備品は会議の内容によって変わりますが、備品の例を参考までに紹介します。

※ 当社、ファシリテーション研修のテキストより一部抜粋

会議の目的によって必要な備品をリスト化し、当日の準備がスムーズに行えるようにしておきましょう。何枚使うか予想できない用紙や付箋などの備品は少し多めに用意しておくと安心です。

1-4. 【会議前の準備】空調を適切にする

空調を適切に設定しておくことも、場を良くするためのポイントです。過度の暑さや寒さは、参加者の快適性に影響を与えるためです。

暑すぎると集中力が低下し、寒すぎると身体が凝りやすくなります。また、空気がモヤっとしていると集中しづらくさせます。

そのため、会議の場が適切な温度になるように空調を設定し、議論が熱くなるなどして空気が重くなってきたら適宜換気もするようにしましょう

1-5 【会議前の準備】自身の状態を整える

ファシリテーターが会議の場に入る前に、状態を整えることが必要です。状態を整えないと、視野狭窄になってしまい、フラットに物事を見れなくなるためです。

例えば、会議のファシリテーションに入る前に、クレーム対応をしていて、そのクレームがまだ続いている状態だと、そのことが気になってしまいます。そのため、アウトプットを高めていくための思考が回らなかったり、参加者同士の関係性がどうなっているかを感じることも難しいでしょう。

大事な会議の場であれば、30分前には状態を整えるといいでしょう。難しい場合は、5分前でも構わないので、深呼吸をするなどが必要です。

ファシリテーターの態度やエネルギーは参加者に影響を与えるため、会議の少し前に時間を設けて自身がフラットに物事を見られる状態を整えるようにしましょう

1-6. 【会議中】オープニングを丁寧に行う

会議でのオープニングを丁寧に扱うことも意識しましょう。会議全体の雰囲気や進行に大きな影響を与える重要な部分だからです。

オープニングで今回の会議で向かう方向を適切に伝えて理解してもらえると、その後の流れがスムーズになります。

そのためには、目的・目標・アジェンダについて、わかりやすく説明する必要があります。事前に共有をしていることではありますが、会議前にあらためて言葉で確認することで、参加者が会議の目的を理解し、議論や活動に焦点を合わせるための基盤が築かれます。また時には、参加者から目的・目標の変更を伝えられることがあります。その際は、臨機応変に対応するとよいでしょう。

会議の参加者が自分が会議に参加している意味を認識し、主体的に参加しようという意識になることで、会議の質が高まります。

1-7.【会議中】チェックイン

会議ではチェックインを行うこともおすすめです。チェックインとは、会議やワークショップの始めに「その場に入る」ために用いられる導入ワークやアイスブレイクのことを指します。
会議のはじめに、今の正直な気持ちや気になっていることなどをありのままに1分程度で話してもらいます。

チェックインを行うと、参加者の発言・態度などをファシリテーターが観察できますファシリテーターが観察することで、その後参加者へのフォローや、会議やワークショップへの介入・進め方を考えることが可能です

また、チェックインは参加者にとっても、次の2つの視点でポジティブな影響を与えます。

・話す準備になることと
・関係性が高まること

チェックインの場で一度話すことで、自分の話を受け入れてもらえる体験ができるため、発言や対話がしやすくなります。そして、チェックインで参加者の状態を理解し合えるため、関係性の向上にも繋がります

具体的なチェックインのやり方は、10名程度まででしたら全員一言話してから、会議・ワークショップ・研修に入ります。人数が多い場合や、時間がない場合は、3~4名のグループに分かれて、チェックインを行い、その後、数グループにどんな話をしたかを共有してもらうといいでしょう。

ただ、チェックインには注意点もあります。

それは事前に話すテーマを決めたり、順番を決めないことです。事前に話すテーマを決めたり順番を決めると、参加者が受け身になったり、オープンにならない場合があります。

話すテーマや順番を決めると、その場の枠組みが決まり、ファシリテーターの指示のもと参加するという意味付けが強くなります。ファシリテーターの指示が強くなるように、参加者が感じると、ファシリテーターの答えを探すようになります。そのためチェックインは、自由度高く実施する方が場創りに関しては望ましいです。

なお、アーティエンスでは、チェックインの前に下記ルールを説明して、実施します。

※ 当社、ファシリテーション研修のテキストより一部抜粋

チェックインを行うことで、ファシリテーターが参加者や場の状況が見えるため、会議の場をホールドでき、結果的に場の質が上がっていきます。

1-8. 【会議中】ルールを説明する

会議の場でのルールを設けて説明しておくことで、ファシリテーターとして場作りがしやすくなります。ルールを設けることで、会議の進行や参加者の行動を調整しやすくなるためです。

例えば、グランドルールで「相手の意見の良し悪しをジャッジするように聞くのではなく、探究する姿勢で聴く」という内容を設けるとしましょう。すると意見に対しての否定的なコメントをするのではなく、なぜそのように考えたのか、という背景を理解しようとする場が創られていきます。

アーティエンスでは、会議の内容に合わせてルールを変えていますが、例えば以下のようなルールを設けることもあります。

ルールの内容は会議で何を求めるかによって調整が必要です。具体的なルールの作り方についてはこちら「プロファシリテーターが伝授!失敗しないグランドルールの作り方と扱い方」のコラムをご覧ください。

なお、ルールを設ける際は「ルールがなぜ大切か」を伝えることがとても重要です。ルールが、大切なものだという認知になると、自然とルールが守られるようになるためです。ルールを設けている背景を含めて説明することで会議の場が整います。

1-9. 【会議中】フレームワークを使う

会議の情報量が多く理解が難しくなってきた時や、議論が停滞してしまったときなどは、フレームワークを用いて状況を整理するようにしましょう。参加者間での共通理解が促進され、議論が前進しやすくなります

下記の4つは、会議やワークショップの際に使い勝手がいいフレームワークになりますので、ご紹介します。

・分かっていることと、分からないこと
・マトリックス
・プロセス図
・KPT

以下にそれぞれ説明します。

「分かっていることと、分からないこと」

対話・議論の始めに活用することでお互いの背景が分かります。背景が分かることで、参加者の認知が広がり、議論や対話を深く行うための準備段階として活用できます。

具体的には、下記のような表を用意して、個人で考えてもらい、その後まずは「わかっていること」について順番を決めずにシェアし、次に「わからないこと」を順番を決めずにシェアしてもらいます。そして出来上がった表を見て、感想や質問、伝えたいことを話すと、お互いの背景がわかるため、後の対話や議論の際に影響を与えられます。
 分かっていることと分からないこと

マトリックス

万能型のフレームワークです。議論・対話の整理から意思決定まで、さまざまな場面で活用が可能です。

例)意思決定を行う際のマトリックス

議論したいことについてマトリックスで整理することで、理解しやすくなり、意見が出やすくなります。

プロセス図

万能型のフレームワークです。事業の推進のゴール設定や、振り返りなどさまざまな場面で活用が可能です。

例えば、新規事業のゴールを設定する会議の場合は、次のようなプロセス図になります。

プロセスをわかるように可視化することで、イメージしやすくなり、より良い意見が出やすくなります。

KPT

振り返りの際に用いるフレームワークです。
KEEP(続けるもの)、PROBLEM(改善するもの)、TRY(次回チャレンジするもの)を洗い出して、次回をより良いものにしていきます。

これらのフレームワークの具体的な使い方については「ファシリテーションを支える6つのフームワークを知ろう│注意点にも言及」をご覧ください。

フレームワークを用いて状況を整理することで、場が動き出します

1-10.【会議中】意見を出しやすくする

意見が出なくて停滞してしまっている場合は、意見を出しやすくするための支援をしましょう。意見が出ない状態が続くと、議論が進まず会議の成果が得られないためです。

意見が出ることで、参加者間での情報の共有や理解が促進されます。異なる視点や意見が交わされることで、問題解決や意思決定に近づいていけます。

参加者が大勢の前で発言することに緊張してそうだと感じたら、発言してもらうのではなく、付箋に書いて皆が見える場所に貼り出す方法をとりましょう。そうすることで、共通点が見えてきたり、意外な視点からの意見に気づくなどして議論を発展させられます。
 
なお、オンラインで実施する際は、JamboardやGoogleスライドなどを活用することで、同じようなことが実施できます。

※アーティエンス主催のセミナーのJamboard

また、参加者が意見を出せるようにするために問いを投げることも一つの方法です。例えば、「ユーザーの立場になったときにどう思いますか?」「納期とクオリティーを維持するためにどうすればいいでしょうか?」などです。このように考えるポイントが提示されると、自分なりの意見が出てきやすいです。

1-11.【会議中】意見を受け止める

出てきた意見に対して、評価や否定をすることなく、ただ受け止めることも意識すると良い場になりやすいです。意見を否定されることがないと感じた参加者は、自由に考えや意見を表明しやすくなるためです。

会議の参加者の中には、今まで自分の発言に対して笑われたり、怒られたり無視されるなどして、意見を言うことに対して恐怖感を感じている人もいるかもしれません。そのような人が安心できる場を作るためにも、ファシリテーターは評価や判断、否定をすることなく、出てきた意見をまず受け止めましょう

具体的には、
・「○○さんから、このような意見がありましたが、みなさんどう思われますか?」
・「○○さんは、そのように思われるのですね。よければ、さらに背景を教えてもらえますか?」
などです。

このように一度意見を受け止めるといいでしょう。

1-12.【会議中】意見を確認する

出てきた意見に対して、自分の認識が正しいか不安になったり、理解が難しくなった時は、要約や補足をすることで意見を確認することも必要です。認識に齟齬があったり、理解できていないのにわかったようなふりをすると、後から話が噛み合わなくなる可能性があるためです。

参加者がお互いの意見をスムーズに理解しあえる状態を作ることで、相乗効果が促進され、より良い意見につながります。

具体的には、
・「〇〇ということで合っていますか?」
・「私は〇〇と理解しましたが、それで正しいですか?」
といった形で、話を要約して確認を求めると良いでしょう。
これにより、他の参加者も話の内容を理解しやすくなります

ファシリテーターが自分の理解が不完全であることを率直に伝えることで、他の参加者も同様に理解の不足を認識し、より明確なコミュニケーションができるようになります。また、他の参加者も「分からないときは分からないと言っていいんだ」という安心感を持てるようにもなります。

1-13.【会議中】チェックアウト

会議の終わりにはチェックアウトをしましょう。チェックアウトとは、研修やワークショップの終わりに今の気持ちや、言い残したこと、今後についてなど、自分の気持ちを一言ずつ発言していくことです。

ファシリテーターとしては、チェックアウトの内容やその時の表情などを観察することで、参加者の状態を把握し、会議の場がどうだったのかを振り返られます

また、参加者としては、会議を振り返る時間となったり、気になっていることが解消されることで、安心感を持って会議を終われるようになるなどの効果があります

例えば、会議で意見を出せなかった人がいたとします。その事実だけ見ると、「〇〇さんは会議で意見を言わない人だ」という固定概念が作られてしまう可能性があります。しかしチェックアウトで「皆さんの意見を理解することで精一杯で、自分なりの意見を出せず申し訳なかったです」と伝えることで、周囲の人はそうだったんだと認識できます。

このように、チェックアウトの時間は、ファシリテーターにとっても参加者にとっても意味のある時間となります。

1-14.【会議後】議事録を送る

会議後は議事録を送りましょう。できるだけ情報が新鮮なうちに早く共有すると良いです。参加者が議事録を受け取ることで、会議の内容や結果が全員に共有され、透明性が確保されます
※ 速記であることを伝え、TO DOなど以外は、誤字脱字があることや日本がおかしいことの了承を会議中に得て、丁寧に書くよりもスピード感を重視されたほうがいいです。

なお、ファシリテーターをやりながら議事録を書くのは難しいため、議事録は他の人に依頼しておきましょう。議事録がわかりにくかったり、抜け漏れがないようにするために、次のことを意識してもらうと良いです。

・議事録のテンプレート作成
・ロジカルシンキングを用いて速記
・次の会議につながる書き方を意識

議事録のテンプレートとして、以下の欄は設けておきましょう。

・会議名
・会議の日付
・会議の参加者
・会議の目的・目標
・アジェンダ
・会議の内容(アジェンダ別に記載)
・会議で決まったTO DO(担当者と納期を忘れない)
・次回に持ち越すテーマ

会議前に記載できるところは記載しておきます。

会議中は、ロジカルロジカルシンキングを用いて速記します。
具体的には、下記内容を意識しながら行うといいでしょう。

・主語と述語の確認
・事実と意見の明確化
・前提・背景・根拠の明確化
・議論・対話のレベル感の統一
・話をグルーピングし、MECEの確認
・メッセージの明確化や、事実・根拠の確認

これらの内容が記載されていると、抜け漏れなく振り返りがしやすいため、次回の会議の目標やアジェンダを考えやすくなります。

1-15.【会議後】参加者からフィードバックをもらう

会議の場に対して、参加者からフィードバックをもらうことも苦手を克服するために効果的です。参加者からのフィードバックを受けることで、参加者の満足度やニーズを理解し、会議の質の向上に繋げられます
また、参加者からのフィードバックを受けることは、信頼関係の構築にも役立ちます。

フィードバックをもらう視点としては、次のようなところです。
・改善点
・良かった点
・リクエスト

改善点については、言いづらさを感じる人が多いため、自分の成長のためにアドバイスをしてほしいということを伝えた上でフィードバックをもらいましょう。また、「もう少しこうしてくれたら話しやすかった」とか「〇〇の伝え方について理解できていたか気になるんだけど、どうでしたか?」など、具体的な視点を伝えるのも良いです。

参加者からのフィードバックをもらえると、自身のファシリテータースキルが大きく向上して行きます

1-16.【会議後】バトンメール®をする

会議後に参加者と一緒にバトンメール®を行うと、会議で決まったことが実施されない、ということを防げます。また、会議後の行動変容・認知変容を、会議の参加者同士で促すこともできます。

バトンメール®は、アーティエンスが開発した、会議後や研修後のフォローツールです。
参加者4~5名のグループになり、1週間に1回、会議で決めたことについて実践してみた経験や、難しさを感じていることなどを書いて、次の人に回していくというものです。

※ 当社資料より一部抜粋

実施方法はメールではなく、チャットなどでも大丈夫です。

バトンメール®を行うと、会議での意思決定が実行されやすくなり、会議をやった意味を感じないとか、無駄な会議という状態にならなくなります

1-17.【会議後】会議を振り返り次の会議のデザインを行う

今回行った会議について自身で振り返り、次に繋げるようにします。良質な振り返りをすることで、新たな知見を得たり、他でも応用できる気づきを得られるためです。

振り返りによって成長が促されるということは、組織行動学者のデビッド・アレン・コルブが「経験学習サイクル」として提唱した考え方でです。経験を次に生かすためのプロセスを次の図のように理論化しました。

会議後に参加者から受け取ったフィードバックを大切に扱うことで、より良い教訓を生み出すことにつながります。また、自身で感じた小さな変化や良い変化にも目を向けることで、自分の成長を実感でき、モチベーションを向上させられます。

毎回の会議で振り返りを丁寧に行い、そこで得た知見を次の会議でどのように生かしてより良い場にしていくかを考え続けられると、ファシリテーターに対して面白さややりがいを感じ、他の人からも評価されるようになるでしょう。

2)ファシリテーターが悩みやすい苦手の克服方法

ファシリテーターが悩みやすい苦手の克服方法について、メンテナンスとタスクの視点からお伝えします。メンテナンスとは参加者の関係の質のこと、タスクとは会議のアウトプットのことです。

メンテナンス(参加者の関係の質)に関する苦手でよく聞くのは次の4つです。
・参加者同士の関係性が悪い
・立場がある人しか発言していない
・会議やワークショップにコミットしていない
・自分のことしか考えていない

また、タスク(会議でのアウトプット)に関する苦手でよく聞くのは次の4つです。
・参加者の思考が浅い
・アウトプットが出ない
・アンラーニングできない
・意思決定されたことが実行されない

これらの苦手が解消され、参加者の一体感と良いアウトプットの二つが高い水準にあると、よいファシリテーションを実践できたと言うことができるため、苦手感がなくなるでしょう。

2-1. メンテナンス(参加者の関係の質)│参加者同士の関係性が悪い

参加者同士の関係の質が悪いために、会議の場を良くすることが難しい、という状況が発生すると、対応が難しく苦手意識を持ちやすいです。
参加者同士の関係が悪い場合、コミュニケーションがスムーズに行われず、意見の交換や情報共有が妨げられるためです。

信頼関係が希薄だと、他者の意見を尊重し建設的な議論を行うことが難しくなるため、会議の雰囲気が悪化したり、議論が停滞しやすくなって、会議の効果が低下します。

「参加者同士の関係性が悪い」に対する克服方法

参加者同士の関係性が悪いに対する克服方法として、まずファシリテーターがそのことを冷静に受け止められる状態を整えましょう
「参加者同士の関係性が悪くて緊張する」「あの会議にファシリテーターとして入るのはちょっと怖い」というような状態でいると、自身が参加者の雰囲気に飲まれてしまいます。
「参加者同士の関係性は良くなさそうだな」とその状態をただ受け止め、その上で対策できることを行います。

例えば、ルールの中に次の内容を入れるという対応ができます。

・相手の話の良し悪しをジャッチするように聞くのではなく、探究する姿勢で聴く
・ダメ出しの場・犯人探しの場ではなく、共創・協働を意識し行動する
・部分最適ではなく全体最適を考える
・決まったことに対して、後出しで不満は言わない(よりよくするための意見はOK)

このようなルールを入れて大切に扱うことで、批判しているような意見が出てきた時に、ルールが守られていないので言い方を変えて伝えてほしいと伝えたり、他の視点を渡して考えてもらえるようになります。

他にも、参加者同士で対立が起きている場合は、対立構造を可視化して、現状を参加者に理解してもらう時間を作ることも一つの方法です。対立構造が起きているという現状と、ゴールを可視化することで、ゴールを達成するためにどうしていくといいかを考える時間を設けると、協力し合う必要があることを受け入れられるようになっていくかもしれません。
 
対立構造を可視化する方法としては、例えば、ホワイトボードや投影しているスライドの新しいページに賛成反対などの記載をしたり、対立関係がわかりやすくなるように座る位置を変えるなどです。
こうすることで現在の対立状態が理解しやすくなります。

参加者同士の関係性が悪いと、そのことに緊張したり不安になったりして、ファシリテーター自身の状態が乱れやすくなります。そのため、参加者の関係性が悪いという状態がただある、と受け止め、その上で会議の目的を達成するためにできることを考えましょう

2-2. メンテナンス(参加者の関係の質)│立場がある人しか発言していない

役職の異なる人が参加していると、立場がある人しか発言しない、という会議も生まれます。役職の低い人が役職の上の人に気を使い、立場が上の人の意見に賛同するだけになったり、立場が上の人の正解を探そうとするようになったり、立場が下の方だから意見を言わない、というような状態が起きます。

他にも、上司が先に意見を言うことで、似たような意見を持っていた後輩が発言できなくなる状況も生まれます。

この状態になると参加者全員が納得するアウトプットを生み出すことが難しくなるため、苦手と感じる人も多くいます。

「立場がある人しか発言していない」に対する克服方法

立場がある人しか発言していないという場合は、次のような方法で対応できます。

・準備段階:いつもと違う場所で話すことを促す。または座席はくじでランダムにする
・会議中:「対等で自由な立場で参加してもらう」というルールを設けて伝える

     口頭ではなく付箋で発言してもらう

会議での座席で役職の上の人が上座になっていると、役職の関係性が会議中にも反映されやすくなります。そのため、座席はくじでランダムに決めたり、円型にするなどできる限り上下関係を感じさせないレイアウトを意識して設置しましょう。

そして会議中は、全員が平等な立場ということを伝えるメッセージを随所に出して行きます。その際にルールで「対等で自由な立場で参加してもらう」ということを定めておくと、自由に参加できていないと感じた時にそのルールのことを再度伝えて、平等であるという意識を思い出してもらいやすくなります。

また、口頭では伝えづらそうな場合は、付箋に書いて共有する方法を取るのも良いでしょう。全員が意見を出し、共有するため、自動的に対等に意見を言える状態を作れます。

特に上下関係の激しい組織では、このような状態が起こりやすいため、これらの方法を用いて克服できるようにしましょう。

【参考コラム】
必見!会議で「意見を言わない人」を巻き込むための具体的な進行術

2-3. メンテナンス(参加者の関係の質)│会議にコミットしていない

参加者の参加意欲が弱く、参加者が会議にコミットできていない状態が続くことで苦手意識を持っている方もいます。

参加者が積極的に参加せず、コミットメントが不足している場合、会議の生産性が低下するためです。議論が停滞し、意思決定が遅れたり、問題解決が困難になったりすることがあります。また、チーム全体の結束力も低下します。

「会議にコミットしていない」に対する克服方法

参加者が会議にコミットしていない場合は、まず会議の目的をあらためて丁寧に確認しましょう。今行っている会議が、何のためのものなのかを理解できていないと、参加意欲が高まらないためです。

また、会議の中で自身の役割やタスクの一部を担ってもらうことも効果的です。会議の中でやらなければいけないことがあることで、集中してもらいやすくなります。具体的には、司会や議事録を依頼したり、所属部署や専門分野の視点からの意見を求めるなどです。

他にも、必要に応じて、参加者それぞれのコミット度合いを確認したり、コミット力を高めるためにどうしたらいいかを考える時間を設けることも一つの方法です。

例えば、ファシリテーターから参加者に対して次のように伝えます。

「今、参加者の皆さんの参加意欲が弱いように私は感じています。皆さんは今、どのくらいの意欲を持って会議に参加していますか。70%くらいでしょうか。それとも30%程度でしょうか。その数字を100%に近づけるためには、どうすればいいか教えてもらえますか。」

このようにコミット度合いを数字で表すと、自分が会議に向き合えていなかったことが自覚しやすくなり、改善方法を考えやすくなります。

2-4. メンテナンス(参加者の関係の質)│自分のことしか考えていない

会議で自分のことしか考えていないために、意思決定ができず、苦労する場合もあります。

最終的なプロジェクトやワークショップのゴールを意識せず、いかに自分の負担を減らせるか、楽にできるかに頭を使っていると、他の参加者に配慮ができず、関係性が悪化したり、TO DOを押し付け合うようなことが起こるためです。

チーム全体が協力し合ってプロジェクトのゴールを達成することが難しくなります。

「自分のことしか考えていない」に対する克服方法

参加者が自分のことしか考えていない場合は、会議の目的を再度確認する時間をとりましょう。会議の目的を再確認することで、参加者は再び全体の目標や目的にフォーカスできるようになります。また、会議の目的を明確にすることで、参加者は自身の役割や貢献がどのように全体の目標に貢献するのかも意識しやすくなります。

それでも改善されない場合は、自分のことしか考えていないような意見を出す人に対して、背景を質問してみましょう。例えば「意見を出してくれてありがとうございます。そのように考える背景を聞いてみてもいいですか。」などと伝えます。そして返ってきた答えに対して、「なるほど。〇〇さんは、そうすることが全体最適につながると考えているんですね。」などと伝えます。

すると、意見を出した人の中で、自分の意見と全体最適が繋がっているのかに意識が向き、そのズレに気づくようになるかもしれません。

このように参加者が自分のことしか考えていない場合は、最終的なゴールを意識してもらうように促すことが必要です。

2-5. タスク(会議でのアウトプット)│参加者の思考が浅い

参加者の思考が深まりきっていないと、本質的な意思決定が導き出されないため、ファシリテーターとしての実力不足を感じやすくなります。議論の深さが不足すると、意思決定の質が低下します。そしてそれは、成果の質の低下にも影響します。

「参加者の思考が浅い」に対する克服方法

参加者の思考が浅いと感じる場合は、思考を深める問いを投げたり、考える視点を渡すようにしましょう

例えば、参加者の様子を見て「この施策は本当に現実的ですか?現場のメンバーのコミットの観点が抜け落ちているように見えます」というようなことをフィードバックすることで、参加者に気づきを与え、思考を促せます。

他にも、「今はクライアントの観点からの話だったと思いますが、ユーザーにとってはどうでしょうか。」など考える視点を渡すと、思考が深まりやすいです。

このように、ファシリテーターから見て抜けていると感じる観点について、問いや考える視点を渡すことで、思考を深め、より本質的な意思決定ができるように促しましょう。

2-6. タスク(会議でのアウトプット)│アウトプットが出ない

会議で意思決定が時間内に終わらないことが多いと、ゴールを達成できなかったという結果となるため、ファシリテーターとして苦手意識を感じやすくなります。

ファシリテーターは参加者に適切な意思決定を促す責任を感じ、その達成が困難である場合に自身の能力や役割に対して不安を抱きやすいです。

実際、意思決定が時間内に終わらないと、参加者は会議の長さや効果に対する不満を持つ可能性があります。

「アウトプットが出ない」に対する克服方法

会議の中でアウトプットが出ない場合は、客観的な状態を伝えて、どうしたらアウトプットを出せるのかを考えてもらいましょう

例えば、「このままの状態ではこの会議の間に、〇〇というゴールを達成することが難しそうに私は感じています。会議の目的を達成するためには、残りの○分の時間をどのように使うと良いでしょうか」という問いを投げるなどです。

その答えとして、延長したいという声が出てきて皆が賛成するようであれば、時間を決めて延長しても良いです。また、今日のゴールを一旦変更して、別日に続きを行う方法をとってもいいでしょう。

ただ、アウトプットが出ていないということを参加者に自覚してもらい、アウトプットを出す意識を強く持ってもらうためにも、参加者自身で対応を考えてもらう方が良いです。

2-7. タスク(会議でのアウトプット)│アンラーニングできない

参加者がアンラーニングできない状態に対して、ファシリテーターとしての難しさを感じることもあります。アンラーニングとはこれまでの価値観・知識・スキルなどを一旦手放し、新たに学びを得ていくことを指します。
アンラーニングできないと、対話の停滞や解決策の限定、協力関係の損なわれ、成果の低下などの問題が生じる可能性があるためです。

参加者自身の固定観念や過去の経験に固執すると、新しいアイデアや視点を受け入れることが難しくなり、対話が停滞し、議論が進まなくなります。

「アンラーニングできない」に対する克服方法

参加者がアンラーニングできていないと感じた場合は、その旨を率直に出してみることをお勧めします。参加者自身は、何かを手放せていないことを自覚できていないためです。

例えば、「〇〇について、××という前提で話されているように感じていますが、××を変えることは難しいのでしょうか。」などです。
一時的に「それはルールだから」などの意見も出てくるかもしれませんが、「そのルールは〇〇より大切なことですか」など問いを重ねていくと、参加者自身もなぜそのルールを守らないといけないのかがわからなくなり、新たな視点を取り入れやすくなります。

組織改革に関する会議の際は、組織内で常識となっていることに気づいていない場合も多いです。そのため、外部のファシリテーターに入ってもらうことをおすすめします。

2-8. タスク(会議でのアウトプット)│意思決定されたことが実行されない

会議の場はよかったものの、その後、意思決定されたことが実行されないと、変化が見られないため、ファシリテーターとしての苦手意識を感じやすいです。基本的に会議をすることがゴールではなく、会議はその先の目的に向けて動けるようになるための場だからです。

会議では「やるぞ!」という雰囲気だったのに、次の日には後回しにされてしまう場合も多いです。

「意思決定されたことが実行されない」に対する克服方法

意思決定されたことが実行されない場合は、随時、進捗・効果を確認するようにしましょう。そのためには、適切なスケジューリングを立てて、それぞれの役割が明確になっていることが必要です。
実行に向けての計画やスケジュールが立てられていないと、決定事項が漠然としたままになり、実際の行動に移されないためです。
納期と具体的なアウトプットイメージを設定し、実行すべきタスクに対して必要な時間や関わる人、必要なものの手配などを洗い出します。すると会議の参加者がそれぞれいつまでに何をすべきかが明確になるため、実行しやすくなります。

その上で、ファシリテーターから随時、状態を確認する連絡を入れることで、実行が促されます。

人は誰しも楽をしたいと考えるため、具体的な日付と行動内容を決めて、それを確認する人を設けることで、意思決定を実行段階まで持っていけるようになります。

3)ファシリテーターへの苦手意識を克服し、得意になると起きること

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になると、場が良くなり、関係性やアウトプットの質、そして成果の質も高まります。

具体的には、次のようなことが起こり始めます。

・参加者の満足度向上
・チームの協力関係の強化
・意思決定の質の向上
・自身の評価の向上

詳しく説明します。

参加者の満足度向上

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になることで、参加者の満足度が向上します。
ファシリテーターの働きかけによって参加者がより主体的に参加できます。自身の意見を積極的に表明でき、貢献感を実感できます。また、自己肯定感や自己効力感も育まれます

例えばファシリテーターの働き掛けによって、今まで発言がなかったメンバーが、発言したとします。その発言がチームの意思決定に大きな影響を与えたとすると、本人の自信にもつながります。メンバーは、次も発言しようという前向きな行動が生まれます。

このように、ファシリテーターのレベルが高まると、参加者はより主体的に参加し、自身の意見を積極的に表明できる環境が整うため、参加者の満足度が向上します

チームの協力関係の強化

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になることで、チームの協力関係が強化されます。ファシリテーターが参加者のコミュニケーションを円滑にし、メンバー間の対立が減少するためです。

例えば、険悪なチームがあったとします。「お互い言いたいことがあっても、言わない。ただ非公式な場では、愚痴や文句が言う」状態です。ファシリテーターが、会議の場でお互いの意見を引き出し、場に出します。それを整理し、お互いの誤解をなくしたり、建設的な未来を共に描くことで、チーム力が上がっていくことがあります。

このように、ファシリテーターが適切なスキルを持ち、参加者間のコミュニケーションを円滑にし、また適切な対立や摩擦を起こすことで、チームの協力関係が強化されます

意思決定の質の向上

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になることで、意思決定の質が向上します。参加者が自由に意見を交換することで異なる視点や情報を考慮できるためです。

例えば、「いつも役職の高い人の意見で決まる」や、「なんとなく決まる(玉虫色)」などになることを避けることができます。また、「意思決定するまでに適切な衝突を起こすことで、言った・言わないがなくなる」や、「コミットがない状態から逃がさない」などの意思決定を行えるようになります。

このように、ファシリテーターが苦手意識を克服すると、参加者の納得後が高くなり、力強い意思決定を促すことが可能になります

自身の評価の向上

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になることで、ファシリテーター自身の評価が向上する、ということも起こります。会議の質の向上は、成果の質の向上にもつながるためです。

ファシリテーターが状況に合わせて会議を扱うことで進行がスムーズになり、問題解決や意思決定を行うプロセスが効果的に進行します。その結果、会議の成果が向上し、組織やプロジェクトの目標に対する達成度も高まります。

また、参加者が自身の意見や提案が適切に扱われ、議論が公平かつ建設的に進行することを感じると、社員からファシリテーターに対する信頼や評価が高まり、組織内での地位や評価にもポジティブな影響を与えます。

このように、ファシリテーターが成果の質につながる会議の質を高めることで、参加者や組織からの評価が向上します

ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になると、場が良くなり、関係性やアウトプットの質、そして成果の質も高まります。そしてそのような良い変化が見えてくると、自信を持てるようになり、ファシリテーターとしての役割にやりがいを感じ、ますます素晴らしいファシリテーターになっていけます。ファシリテーターの苦手を克服し、良い循環を生み出せるようになりましょう。

4)まとめ|ファシリテーターの育成はアーティエンスにお任せ!

本コラムでは、ファシリテーターに苦手意識のある方のために、会議前・会議中・会議後に意識することとポイントをお伝えしました。

意識すること ポイント
会議前の準備 1 会議の目的・目標・アジェンダを明確にする 参加者には事前に共有しておく
2 レイアウトを整える 会議に適したレイアウトにする
3 備品を準備する 備品は少し多めに用意しておく
4 空調を適切にする 温度や湿度が参加者の思考に影響します
5 自身の状態を整える 自身がフラットに物事を見れる状態を整える
会議中 6 オープニングを丁寧に行う 目的・目標・アジェンダについて説明する
7 チェックイン 参加者の状態を確認する
8 ルールを説明する なぜルールを設けているのか、という背景を伝えるようにする
9 フレームワークを使う 状況を整理するときに役立つ
10 意見を出しやすくする 付箋を使う、問いを投げる
11 意見を受け止める 意見に対して否定や評価をしない
12 意見を確認する 理解しづらい意見の際に、要約や補足をすることで認識の齟齬をなくす
13 チェックアウト 参加者の状態を確認する
会議後 14 議事録を送る できるだけ早く共有する
15 参加者からフィードバックをもらう 改善点だけではなく、良かった点・リクエストも聞く
16 バトンメール®をする 会議後の行動変容・認知変容を、会議の参加者同士で促す
17 会議を振り返り次の会議のデザインを行う 反省をどのように次に活かすかを考える
その他 18 他のファシリテーターから学ぶ 他のファシリテーターがどのような言動をしているのかを観察することで新たな気づきを得られ、自身の成長に繋げられます

これらの中でできることから始めていくと、会議の質が高まることを実感できると思います。

また、ファシリテーターが悩みやすい苦手については、メンテナンスとタスクの観点から8つのことについて克服方法をお伝えしました。

悩み 克服方法
メンテナンス(参加者の関係の質) 参加者同士の関係性が悪い ファシリテーターがそのことを冷静に受け止められる状態を整える
立場がある人しか発言していない ・準備段階
いつもと違う場所で話すことを促す。または座席はくじでランダムにする

・会議中
「対等で自由な立場で参加してもらう」というルールを設けて伝える

口頭ではなく付箋で発言してもらう

会議やワークショップにコミットしていない ・会議の目的をあらためて丁寧に確認する
・参加者それぞれのコミット度合いを確認する
自分のことしか考えていない ・会議の目的を再度確認する
・意見の背景を質問する
タスク(会議でのアウトプット) 参加者の思考が浅い 思考を深める問いを投げたり、考える視点を渡す
アウトプットが出ない 客観的な状態を伝えて、どうしたらアウトプットを出せるのかを考えてもらう
アンラーニングできない アンラーニングできていないことを率直に出してみる
意思決定されたことが実行されない 随時、進捗・効果を確認する

ファシリテーターが抱えやすい悩みも、今回紹介した方法を行うことで克服できるようになりますので、これらのことを意識して実践を重ねていきましょう。

今回紹介した方法を実践していき、ファシリテーターへの苦手意識を克服し得意になると、場が良くなり、関係性やアウトプットの質、そして成果の質も高まります。
ファシリテーターに対する苦手意識をなくし、自信を持ってファシリテーターとしての役割を全うできるようになりましょう。

なお、アーティエンスでは、ファシリテーターに対する苦手意識をなくし、苦手を克服するために必要なスキルをお渡しするファシリテーション研修を実施しています

ファシリテーション研修は、こんな方におすすめです。

・スムーズな会議の進行を実現したい
・全員が参加しやすい会議を作りたい
・会議の終わりには明確な結論とアクションプランを出したい
・無駄な会議を削減したい

このようなお悩みを抱えている方のお力になれるスキルをお渡ししていますので、ファシリテーション研修に興味のある方は、お気軽にご相談ください

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